(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機半導体が、縮合多環芳香族基を有し、前記縮合多環芳香族基中の環数が4つ以上であり、前記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、前記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、及び、フェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物。
前記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、前記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子が含まれる、請求項4〜6のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本発明において、「移動度」とは、キャリア移動度の意味である。キャリア移動度とは、電子移動度及びホール移動度のいずれか、又は、双方を意味する。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい。
【0023】
(有機半導体膜形成用組成物)
本発明の有機半導体膜形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、有機半導体と、式B−1で表される有機溶媒とを含有することを特徴とする。
【0024】
【化7】
式B−1中、Rはアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、ビニル基を表す。
【0025】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、有機半導体と、上記特定構造の有機溶媒とを含有することにより、得られる有機半導体膜の膜均一性及び移動度に優れることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
詳細な効果の発現機構については不明であるが、上記有機溶媒は高分子化合物の使用をせずに、又は、使用を低容量としても、付与に好適な粘度を達成することができるため、結晶化の際に塗膜が不均一になりにくく、膜均一性の高い有機半導体膜が形成され、移動度にも優れるものと推定される。
【0026】
<有機半導体>
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、有機半導体を含有する。
上記有機半導体は、縮合多環芳香族基を有し、上記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、上記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、上記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択される少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体(以下、「特定有機半導体」又は「成分A」ともいう。)であることが好ましい。
また、成分Aにおける縮合多環芳香族基中の部分構造には、アントラセン環は含まれないことが好ましい。上記部分構造にアントラセン環を含まない場合、理由は不明であるが、得られる有機半導体膜の膜均一性及び移動度に優れる。
なお、縮合多環芳香族基とは、芳香族環が複数縮合して得られる基である。
芳香族環としては、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環)及び芳香族複素環(例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、イミダゾール環)が挙げられる。
【0027】
成分A中には、縮合多環芳香族基(縮合多環芳香族構造)が含まれるが、この基が主成分として含まれることが好ましい。ここで主成分とは、縮合多環芳香族基の分子量の含有量が、成分Aの全分子量に対して、30%以上であることを意図し、40%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、溶解性の点から、80%以下であることが好ましい。
縮合多環芳香族基は、複数の環が縮合して形成される環構造であり、芳香族性を示す。
成分Aにおける縮合多環芳香族基中の環数は4以上であることが好ましく、有機半導体としての移動度の観点から、4〜9がより好ましく、4〜7が更に好ましく、5又は6が特に好ましい。
また、上記縮合多環芳香族基中、少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1種の原子を含み、有機半導体としての移動度の観点から、2〜6つの環が上記原子を含むことが好ましく、2〜4つの環が上記原子を含むことがより好ましい。
また、有機半導体としての移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、上記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子を有することが好ましい。ヘテロ原子の種類は特に制限されず、O原子(酸素原子)、S原子(硫黄原子)、N原子(窒素原子)、Se原子(セレン原子)などが挙げられる。
成分Aにおける縮合多環芳香族基中には、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造が含まれる。なお、上記部分構造としては、アントラセン環は含まれないことが好ましい。
また、成分Aは、有機半導体としての移動度の観点から、チオフェン環構造及び/又はセレノフェン環構造を少なくとも有することが好ましく、チオフェン環構造を少なくとも有することがより好ましく、成分Aが有する複素環構造が全てチオフェン環構造であることが更に好ましい。
【0028】
上記縮合多環芳香族基としては、有機半導体としての移動度の観点から、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択されたいずれか少なくとも1つの構造を含み、2つ以上のチオフェン環を含み、環数が4つ以上の縮合多環芳香族基が好ましい。中でも、部分構造として、ベンゼン環を含み、2つ以上のチオフェン環とを含み、環数が4つ以上の縮合多環芳香族基がより好ましい。
また、上記縮合多環芳香族基としては、有機半導体としての移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中のチオフェン環の数は、3つ以上が好ましく、3〜5つがより好ましく、3〜4つが更に好ましく、3つが特に好ましい。
また、有機半導体としての移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中の環数は、4〜6つが好ましく、5〜6つがより好ましく、5つが更に好ましい。上記縮合多環芳香族基としては、2つのベンゼン環と、3つのチオフェン環とを含み、かつ、環数が5つである縮合多環芳香族基であることが特に好ましい。
【0029】
更に、縮合多環芳香族基としては、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1種の原子を含む環(複素環。好ましくは、チオフェン環)と、ベンゼン環とが交互に縮合(縮環)した基(縮合してなる基)が好ましく挙げられる。
【0030】
成分Aとしては、有機半導体としての移動度の観点から、式1〜式16のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、式1〜式16のいずれかで表される1種以上の化合物であることがより好ましい。
本発明の組成物中には、1種のみの成分Aが含まれていても、2種以上の成分Aが含まれていてもよい。
【0035】
式1中、A
1a及びA
1bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R
1a〜R
1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
1a〜R
1fのうち少なくとも1つが下記式Wで表される基である。
−L
W−R
W (W)
式W中、L
Wは下記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表し、R
Wはアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、トリアルキルシリル基を表す。
【0037】
式L−1〜式L−25中、*はRとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表し、式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
Nは水素原子又は置換基を表し、R
siはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式2中、X
2a及びX
2bはそれぞれ独立に、NR
2i、O原子又はS原子を表し、A
2aはCR
2g又はN原子を表し、A
2bはCR
2h又はN原子を表し、R
2iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、R
2a〜R
2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
2a〜R
2hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式3中、X
3a及びX
3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR
3gを表し、A
3a及びA
3bはそれぞれ独立に、CR
3h又はN原子を表す。R
3a〜R
3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
3a〜R
3hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式4中、X
4a及びX
4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、R
4a〜R
4j、R
4k及びR
4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式Wで表される基を表し、かつ、R
4a〜R
4j、R
4k及びR
4mのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基であり、ただし、R
4e及びR
4fのうち少なくとも一方が上記式(W)で表される基である場合はR
4e及びR
4fが表す上記式WにおいてL
Wは上記式L−2又は式L−3で表される二価の連結基である。
【0038】
式5中、X
5a及びX
5bはそれぞれ独立に、NR
5i、O原子又はS原子を表し、A
5aはCR
5g又はN原子を表し、A
5bはCR
5h又はN原子を表し、R
5iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R
5a〜R
5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
5a〜R
5hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式6中、X
6a〜X
6dはそれぞれ独立に、NR
6g、O原子又はS原子を表し、R
6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R
6a〜R
6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
6a〜R
6fのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式7中、X
7a及びX
7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
7iを表し、X
7b及びX
7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R
7a〜R
7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
7a〜R
7iのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式8中、X
8a及びX
8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
8iを表し、X
8b及びX
8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R
8a〜R
8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
8a〜R
8iのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
【0039】
式9中、X
9a及びX
9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R
9c、R
9d及びR
9g〜R
9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式Wで表される基を表し、R
9a、R
9b、R
9e及びR
9fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
式10中、R
10a〜R
10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
10a〜R
10hのうち少なくとも1つは上記式Wで表される置換基を表し、X
10a及びX
10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
10iを表し、R
10iはそれぞれ独立に、水素原子又は上記式Wで表される基を表す。
式11中、X
11a及びX
11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
11nを表し、R
11a〜R
11k、R
11m及びR
11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
11a〜R
11k、R
11m及びR
11nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式12中、X
12a及びX
12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
12nを表し、R
12a〜R
12k、R
12m及びR
12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
12a〜R
12k、R
12m及びR
12nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
【0040】
式13中、X
13a及びX
13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
13nを表し、R
13a〜R
13k、R
13m及びR
13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
13a〜R
13k、R
13m及びR
13nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式14中、X
14a〜X
14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
14iを表し、R
14a〜R
14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
14a〜R
14iのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式15中、X
15a〜X
15dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
15gを表し、R
15a〜R
15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
15a〜R
15gのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式16中、X
16a〜X
16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
16gを表し、R
16a〜R
16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
16a〜R
16gのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
【0043】
式1において、A
1a及びA
1bはそれぞれ独立に、S原子(硫黄原子)、O原子(酸素原子)又はSe原子(セレン原子)を表す。A
1a及びA
1bはS原子又はO原子であることが好ましい。また、A
1a及びA
1bは互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
式1において、R
1a〜R
1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R
1a〜R
1fのうち少なくとも1つが後述する式Wで表される基である。
【0044】
式1で表される化合物は、後述する式Wで表される基以外のその他の置換基を有していてもよい。
式1のR
1a〜R
1fがとりうる置換基の種類は特に制限されないが、以下に説明する置換基Xが挙げられる。置換基Xとしては、後述する式Wで表される基、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む。)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。なお、本明細書の式1〜式16においては、「置換基」としては、上記置換基Xが好ましく挙げられる。
これらの中でも、後述する式Wで表される基以外の基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜3の置換又は無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のメチルチオ基、フェニル基がより好ましく、フッ素原子、炭素数1〜3の置換又は無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のメチルチオ基が特に好ましい。
【0045】
式1で表される化合物中において、R
1a〜R
1fのうち、式Wで表される基以外のその他の置換基の個数は0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
また、これら置換基は、更に上記置換基を有していてもよい。
中でも、R
1c〜R
1fはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、置換若しくは無置換のメチルチオ基であることが好ましい。
【0046】
次に、式Wで表される基について説明する。
−L
W−R
W (W)
式W中、Lは下記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基、又は、二以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表す。
【0048】
式L−1〜式L−25中、*はR
Wとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表す。より具体的には、例えば、式1で表される化合物においては、波線部分は式1で表される骨格を形成する環と結合する。なお、後述するように、式Wが他の化合物に含まれる場合、波線部分は各化合物の骨格を形成する環と結合する。
なお、L
Wが式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基が2つ以上結合した二価の連結基を表す場合、一方の連結基の*が、他方の連結基の波線部分と結合する。
式L−13〜式L−24におけるR’の結合位置及びR
Wとの結合位置*は、芳香環又は複素芳香環上の任意の位置をとることができる。
式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R
Nは水素原子又は置換基を表す。R
siはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式L−1及び式L−2中のR’はそれぞれL
Wに隣接するR
Wと結合して縮合環を形成してもよい。
【0049】
これらの中でも、式L−17〜式L−21、式L−23及び式L−24のいずれかで表される二価の連結基は、下記式L−17A〜式L−21A、式L−23A及び式L−24Aで表される二価の連結基であることがより好ましい。
【0051】
ここで、置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、式Wにおける−R
W単独と解釈することもでき、式Wにおける−L
W−R
Wと解釈することもできる。
本発明では、主鎖が炭素数N個の置換又は無置換のアルキル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で式Wにおける−L
W−R
Wと解釈することとし、具体的には「式WにおけるL
Wに相当する式L−1で表される基1個」と「式WにおけるR
Wに相当する主鎖が炭素数N−1個の置換又は無置換のアルキル基」とが結合した置換基として解釈する。例えば、炭素数8のアルキル基であるn−オクチル基が置換基の末端に存在する場合、2個のR’が水素原子である式L−1で表される基1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。
一方、本発明では、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で、式WにおけるR
W単独と解釈する。例えば、−(OCH
2CH
2)−(OCH
2CH
2)−(OCH
2CH
2)−OCH
3基が置換基の末端に存在する場合、オキシエチレン単位の繰り返し数vが3のオリゴオキシエチレン基単独の置換基として解釈する。
【0052】
L
Wが式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した連結基を形成する場合、式L−1〜式L−25のいずれかで表される2価の連結基の結合数は、2〜4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0053】
式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24中の置換基R’としては、上記の式1のR
1a〜R
1fがとりうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも、式L−6中の置換基R’はアルキル基であることが好ましく、式L−6中のR’がアルキル基である場合は、アルキル基の炭素数は1〜9であることが好ましく、4〜9であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、5〜9であることが更に好ましい。式L−6中のR’がアルキル基である場合は、アルキル基は直鎖アルキル基であることが、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
R
Nは水素原子又は置換基を表し、R
Nとしては、上記の式1のR
1a〜R
1fがとりうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも、R
Nとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
R
siはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、アルキル基であることが好ましい。R
siがとりうるアルキル基としては、特に制限はないが、R
siがとりうるアルキル基の好ましい範囲は、Rがトリアルキルシリル基である場合にトリアルキルシリル基がとりうるアルキル基の好ましい範囲と同様である。R
siがとりうるアルケニル基としては、特に制限はないが、置換又は無置換のアルケニル基が好ましく、分枝アルケニル基であることがより好ましく、アルケニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。R
siがとりうるアルキニル基としては、特に制限はないが、置換又は無置換のアルキニル基が好ましく、分枝アルキニル基であることがより好ましく、アルキニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。
【0054】
L
Wは、式L−1〜式L−5、式L−13、式L−17若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基、又は、式L−1〜式L−5、式L−13、式L−17若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基が2以上結合した二価の連結基であることが好ましく、式L−1、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基、又は、式L−1、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基が2以上結合した二価の連結基であることがより好ましく、式L−1、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基、又は、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基とを結合した二価の連結基であることが特に好ましい。
式L−3、式L−13又は式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基が結合した二価の連結基は、式L−1で表される二価の連結基がR
W側に結合することが好ましい。
また、L
Wは、化学的安定性、キャリア輸送性の観点から式L−1で表される二価の連結基を含む二価の連結基であることが特に好ましく、式L−1で表される二価の連結基であることがより特に好ましく、L
Wが式L−1で表される二価の連結基であり、R
Wが置換又は無置換のアルキル基であることが最も好ましい。
【0055】
式Wにおいて、R
Wは置換又は無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、置換若しくは無置換のトリアルキルシリル基を表す。
式Wにおいて、R
Wに隣接するL
Wが式L−1で表される二価の連結基である場合は、R
Wは置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基であることが好ましく、置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式Wにおいて、R
Wに隣接するL
Wが式L−2又は式L−4〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基である場合は、R
Wは置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式Wにおいて、R
Wに隣接するL
Wが式L−3で表される二価の連結基である場合は、R
Wは置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0056】
R
Wが置換又は無置換のアルキル基の場合、炭素数は4〜17であることが好ましく、6〜14であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。Rが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
R
Wがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
これらの中でも、式WにおけるR
WとL
Wの組み合わせとしては、式1中、L
Wが式L−1で表される二価の連結基であり、かつ、R
Wが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基であるか、あるいは、L
Wが式L−3、式L−13又は式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基が結合した二価の連結基であり、かつ、R
Wが直鎖のアルキル基であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
L
Wが式L−1で表される二価の連結基であり、かつ、R
Wが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基である場合、R
Wが直鎖の炭素数7〜14のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点からより好ましく、直鎖の炭素数7〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
L
Wが式L−3、式L−13又は式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基が結合した二価の連結基であり、かつ、R
Wが直鎖のアルキル基である場合、R
Wが直鎖の炭素数4〜17のアルキル基であることがより好ましく、直鎖の炭素数6〜14のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、直鎖の炭素数6〜12のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点から特に好ましい。
一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、R
Wが分枝アルキル基であることが好ましい。
R
Wが置換基を有するアルキル基である場合の置換基としては、ハロゲン原子などを挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、R
Wがフッ素原子を有するアルキル基である場合はアルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。ただし、R
Wは無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0057】
R
Wがオキシエチレン基の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基の場合、Rが表す「オリゴオキシエチレン基」とは本明細書中、−(OCH
2CH
2)
v−OYで表される基のことを言う(オキシエチレン単位の繰り返し数vは2以上の整数を表し、末端のYは、水素原子又は置換基を表す。)。なお、オリゴオキシエチレン基の末端のYが水素原子である場合はヒドロキシ基となる。オキシエチレン単位の繰り返し数vは、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
オリゴオキシエチレン基の末端のヒドロキシ基は封止されていること、すなわちYが置換基を表すことが好ましい。この場合、ヒドロキシ基は、炭素数が1〜3のアルキル基で封止されること、すなわち、Yが炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、Yがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0058】
R
Wが、シロキサン基、又は、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基の場合、シロキサン単位の繰り返し数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることが更に好ましい。また、ケイ素原子(Si原子)には、水素原子やアルキル基が結合することが好ましい。ケイ素原子にアルキル基が結合する場合、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基が結合することが好ましい。ケイ素原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基又は水素原子が結合してもよい。また、オリゴシロキサン基を構成するシロキサン単位はすべて同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。
【0059】
R
Wに隣接するL
Wが式L−3で表される二価の連結基である場合、R
Wが置換又は無置換のトリアルキルシリル基であることも好ましい。R
Wが置換又は無置換のトリアルキルシリル基である場合は、その中でも、シリル基の置換基としては、置換又は無置換のアルキル基であれば特に制限はないが、分枝アルキル基であることがより好ましい。ケイ素原子に結合するアルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基やイソプロピル基が結合することが好ましい。ケイ素原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基が結合してもよい。R
Wがアルキル基上に更に置換基を有するトリアルキルシリル基である場合の置換基としては、特に制限はない。
【0060】
式Wにおいて、L
W及びR
Wに含まれる炭素数の合計は5〜18であることが好ましい。L
W及びR
Wに含まれる炭素数の合計が上記範囲の下限値以上であると、キャリア移動度が高くなり、駆動電圧が低くなる。L
W及びR
Wに含まれる炭素数の合計が上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒に対する溶解性が高くなる。
L
W及びR
Wに含まれる炭素数の合計は、5〜14であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましく、8〜12であることが特に好ましい。
【0061】
式1で表される化合物中において、R
1a〜R
1fのうち、式Wで表される基の個数は1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
【0062】
本発明では、式1において、R
1a及びR
1bのうち少なくとも1つが式Wで表される基であることが好ましい。式1における置換位置として、これらの位置が好ましいのは、化合物の化学的安定性に優れ、最高被占軌道(HOMO)準位、分子の膜中でのパッキングの観点からも好適であるためであると考えられる。特に、式1において、R
1a及びR
1bの2箇所を置換基とすることにより、高いキャリア濃度を得ることができる。
また、式1において、R
1c〜R
1fがそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、置換若しくは無置換のメチルチオ基であることが好ましい。
【0063】
本発明では、有機半導体膜の移動度の観点から、式1で表される化合物は、式1Aで表される化合物であることが好ましい。
【0065】
式1Aにおいて、A
1a、A
1b及びR
1b〜R
1fの定義は、上述した式1中における定義と同義である。また、式1AにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。
【0066】
式1で表される化合物は、有機半導体膜の移動度の観点から、式1Bで表される化合物であることが好ましい。
【0068】
式1Bにおいて、A
1a、A
1b及びR
1c〜R
1fの定義は、上述した式1中における定義と同義である。また、式1BにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式1Bにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0069】
式1で表される化合物は、有機半導体膜の移動度の観点から、式1Cで表される化合物であることが好ましい。
【0071】
式1Cにおいて、A
1a、A
1b及びR
1d〜R
1fの定義は、上述した式1中における定義と同義である。また、式1CにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。R
Cはそれぞれ独立に、水素原子又はアリール基を表す。
【0072】
式1で表される化合物は、有機半導体膜の移動度の観点から、式1Dで表される化合物であることが好ましい。
【0074】
式1Dにおいて、A
1a、A
1b、R
1d及びR
1eの定義は、上述した式1中における定義と同義である。また、式1DにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式1Dにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。R
Dはそれぞれ独立に、水素原子又はアリール基を表す。
【0077】
式2中、X
2a及びX
2bはそれぞれ独立に、NR
2i(>N−R
2i)、O原子又はS原子を表す。X
2a及びX
2bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X
2a及びX
2bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
X
2a及びX
2bは、同じ連結基であることが好ましい。X
2a及びX
2bはいずれもS原子であることがより好ましい。
R
2iは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
R
2iがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0078】
式2中、A
2aは、CR
2g又はN原子を表し、A
2bは、CR
2h又はN原子を表し、R
2g及びR
2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。A
2aがCR
2gであるか、A
2bがCR
2hであることが好ましく、A
2aがCR
2gであり、かつA
2bがCR
2hであることがより好ましい。A
2a及びA
2bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
式2において、R
2eとR
2gとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式2において、R
2fとR
2hとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
【0079】
式2中、R
2a〜R
2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つは式Wで表される置換基を表す。
R
2a〜R
2hがそれぞれ独立に、とりうる置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
R
2a〜R
2hがそれぞれ独立に、とりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、式Wで表される置換基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、式Wで表される基がより好ましく、後述の連結基鎖長が3.7Å以下の基及び式Wで表される基が特に好ましく、式Wで表される基がより特に好ましい。
【0080】
式2で表される化合物中、R
2a〜R
2hのうち、式Wで表される基は1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
R
2a〜R
2hのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R
2e又はR
2fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
【0081】
R
2a〜R
2hのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0082】
R
2a〜R
2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。
ここで、連結基鎖長とはC(炭素原子)−R結合におけるC原子から置換基Rの末端までの長さのことを指す。構造最適化計算は、密度汎関数法(Gaussian03(米ガウシアン社)/基底関数:6−31G
*、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZ)を用いて行うことができる。なお、代表的な置換基の分子長としては、プロピル基は4.6Å、ピロール基は4.6Å、プロピニル基は4.5Å、プロペニル基は4.6Å、エトキシ基は4.5Å、メチルチオ基は3.7Å、エテニル基は3.4Å、エチル基は3.5Å、エチニル基は3.6Å、メトキシ基は3.3Å、メチル基は2.1Å、水素原子は1.0Åである。
【0083】
R
2a〜R
2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。
R
2a〜R
2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとりうる置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
R
2a〜R
2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
R
2a〜R
2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
R
2a〜R
2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとりうる置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0084】
式2で表される化合物は、下記式2A又は式2Bで表される化合物であることが好ましく、高移動度の観点からは、式2Aで表される化合物であることが特に好ましい。
【0086】
式2A中、X
2a及びX
2bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表し、A
2aはCR
2g又はN原子を表し、A
2bはCR
2h又はN原子を表し、R
2a〜R
2e、R
2g及びR
2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、式2AにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。
【0087】
式2B中、X
2a及びX
2bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表し、A
2aはCR
2g又はN原子を表し、A
2bはCR
2h又はN原子を表し、R
2a〜R
2d、R
2g及びR
2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、式2BにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式2Bにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0090】
式3において、R
3a〜R
3f並びに後述するR
3g及びR
3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R
3a〜R
3hのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。
R
3a〜R
3hで表される置換基としては、上記置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
R
3a〜R
3fがそれぞれ独立にとりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又は、式Wで表される置換基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、又は、式Wで表される基がより好ましい。
【0091】
式3において、X
3a及びX
3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR
3g(>N−R
3g)を表し、R
3gは水素原子又は置換基を表す。Xは、S原子、O原子であることが好ましい。式3において、X
3a及びX
3bは、同じであることが好ましい。
R
3gは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4〜12のアルキル基であることが特に好ましい。R
3gが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
R
3gがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0092】
式3において、A
3a及びA
3bはそれぞれ独立に、CR
3h又はN原子を表し、CR
3hを表すことが好ましい。式3において、A
3a及びA
3bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
R
3hは連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
R
3hは、水素原子、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、水素原子、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
R
3hが炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとりうる置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。R
3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
R
3hが炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。R
3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、又は、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
R
3hが炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。R
3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、又は、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
R
3hが炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとりうる置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。R
3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、又は、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0093】
式3で表される化合物が、式3A、式3B又は式3Cで表される化合物であることが好ましく、式3A又は式3Bで表される化合物であることがより好ましく、高溶解性の観点からは、式3Aで表される化合物であることが特に好ましく、一方で高移動度の観点からは、式3Bで表される化合物であることが特に好ましい。
【0095】
式3Aにおいて、X
3a及びX
3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR
3gを表し、A
3a及びA
3bはそれぞれ独立に、CR
3h又はN原子を表す。R
3a〜R
3e、R
3g及びR
3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R
3eは式Wで表される基ではない。式3AにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。
【0096】
式3Bにおいて、X
3a及びX
3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR
3gを表し、A
3a及びA
3bはそれぞれ独立に、CR
3h又はN原子を表す。R
3a〜R
3d、R
3g及びR
3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。式3BにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式3Bにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0097】
式3Cにおいて、A
3a及びA
3bはそれぞれ独立に、CR
3h又はN原子を表す。R
3a〜R
3f及びR
3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。式3CにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式3Cにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0100】
式4中、X
4a及びX
4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。
X
4a及びX
4bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが好ましく、X
4a及びX
4bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点からより好ましい。X
4a及びX
4bは、同じ連結基であることが好ましい。X
4a及びX
4bはいずれもS原子であることが特に好ましい。
【0101】
式4中、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。4p及び4qがそれぞれ独立に、0又は1であることが移動度と溶解性を両立する観点から好ましく、4p=4q=0又は4p=4q=1であることがより好ましい。
【0102】
式4中、R
4a〜R
4k及びR
4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、式Wで表される基を表し、かつ、R
4a〜R
4k及びR
4mのうち少なくとも一つは式Wで表される基であり、ただし、R
4e及びR
4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合は、R
4eとR
4fとが表す式Wにおいて、L
Wは上記式L−2又は式L−3で表される二価の連結基である。なお、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0103】
R
4e及びR
4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合は、すなわちR
4e及びR
4fのうちいずれか一方でも水素原子でもなくハロゲン原子でもない場合に相当する。
R
4e及びR
4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合、R
4e及びR
4fが表す式Wにおいて、L
Wは上記式L−3で表される二価の連結基であることが好ましい。
R
4e及びR
4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合、R
4e及びR
4fは、いずれも式Wで表される基であることが好ましい。
なお、R
4e及びR
4fがともに水素原子又はハロゲン原子の場合、R
4a〜R
4d、R
4g〜R
4k及びR
4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基であり、かつ、R
4a〜R
4d、R
4g〜R
4k及びR
4mのうち少なくとも1つ以上は式Wで表される基となる。
【0104】
式4中、R
4a〜R
4k及びR
4mが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子又は塩素原子であることがより好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
【0105】
式4で表される化合物中、R
4a〜R
4k及びR
4mのうち、ハロゲン原子は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0106】
式4で表される化合物中、R
4a〜R
4k及びR
4mのうち、式Wで表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
R
4a〜R
4k及びR
4mのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はない。その中でも、本発明では、式4中、R
4a、R
4d〜R
4g、R
4j、R
4k及びR
4mがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子であり、R
4b、R
4c、R
4h及びR
4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基であり、かつ、R
4b、R
4c、R
4h及びR
4iのうち少なくとも1つは式Wで表される基であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
本発明では、R
4a、R
4c〜R
4h及びR
4jがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R
4b及びR
4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基であり、かつ、少なくとも1つは式Wで表される基であることがより好ましい。
本発明では、R
4b及びR
4iがともに式Wで表される基であり、かつR
4c及びR
4hがともに水素原子又はハロゲン原子であるか、R
4c及びR
4hがともに式Wで表される基であり、かつR
4b及びR
4iがともに水素原子又はハロゲン原子であることが更に好ましい。
本発明では、R
4b及びR
4iがともに式Wで表される基であり、かつR
4c及びR
4hがともに水素原子又はハロゲン原子であるか、R
4c及びR
4hがともに式Wで表される基であり、かつR
4b及びR
4iがともに水素原子又はハロゲン原子であることが特に好ましい。
式4において、2以上のR
4a〜R
4k及びR
4mは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
【0107】
式4で表される化合物は、下記式4A又は式4Bで表される化合物であることが好ましく、高キャリア移動度と高溶解性を両立する観点からは、式4Aで表される化合物であることが特に好ましい。
【0109】
式4A中、X
4a及びX
4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R
4a、R
4c〜R
4h及びR
4jがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R
4b及びR
4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基であり、かつ、少なくとも1つは式Wで表される基であり、ただし、式Wで表される基がアルキル基である場合は、式Wで表される基は、炭素数4以上18以下の直鎖アルキル基又は炭素数4以上の分岐のアルキル基に限る。
式4B中、X
4a及びX
4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R
4a、R
4d〜R
4g、R
4j、R
4k及びR
4mがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子であり、R
4b、R
4c、R
4h及びR
4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基を表し、かつ、少なくとも1つは式Wで表される基を表す。
【0112】
式5中、X
5a及びX
5bはそれぞれ独立に、NR
5i、O原子又はS原子を表す。X
5a及びX
5bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X
5a及びX
5bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
5a及びX
5bは、同じ連結基であることが好ましい。X
5a及びX
5bはいずれもS原子であることがより好ましい。
R
5iは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
R
5iがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0113】
式5中、A
5aはCR
5g又はN原子を表し、A
5bはCR
5h又はN原子を表し、R
5g及びR
5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。A
5aがCR
5gであるか、A
5bがCR
5hであることが好ましく、A
5aがCR
5gかつA
5bがCR
5hであることがより好ましい。A
5a及びA
5bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0114】
式5において、R
5eとR
5gとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式5において、R
5eとR
5iとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式5において、R
5fとR
5hとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式5において、R
5fとR
5iとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
【0115】
式5中、R
5a〜R
5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
5a〜R
5hのうち少なくとも1つが式Wで表される基である。
なお、R
5a〜R
5hで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0116】
式5で表される化合物中、R
5a〜R
5hのうち、式Wで表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
R
5a〜R
5hのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R
5e又はR
5fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
R
5a〜R
5hのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
【0117】
R
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
R
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
R
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとりうる置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
R
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、又は、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
R
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
R
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとりうる置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、又は、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0118】
式5で表される化合物は、下記式5A又は式5Bで表される化合物であることが好ましく、高移動度の観点からは式5Aで表される化合物であることが特に好ましい。
【0120】
式5A中、X
5a及びX
5bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表す。A
5aは、CR
5g又はN原子を表し、A
5bはCR
5h又はN原子を表す。式5A中のA
5a、A
5b、R
5g及びR
5hは、式5中のA
5a、A
5b、R
5g及びR
5hとそれぞれ同義である。
式5A中、R
5a〜R
5e、R
5g及びR
5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
5eは式Wで表される基ではない。
式5A中のR
5a〜R
5e、R
5g及びR
5hが置換基を表す場合、この置換基の好ましい範囲は、式5中のR
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の好ましい範囲と同様である。
式5AにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。
【0121】
式5B中、X
5a及びX
5bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表す。A
5aは、CR
5g又はN原子を表し、A
5bはCR
5h又はN原子を表す。式5B中のA
5a、A
5b、R
5g及びR
5hは、式5中のA
5a、A
5b、R
5g及びR
5hとそれぞれ同義である。
式5B中、R
5a〜R
5d、R
5g及びR
5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。式5B中のR
5a〜R
5d、R
5g及びR
5hが置換基を表す場合、この置換基の好ましい範囲は、式5中のR
5a〜R
5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の好ましい範囲と同様である。
式5BにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式5Bにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0124】
式6中、X
6a〜X
6dはそれぞれ独立に、NR
6g、O原子又はS原子を表し、R
6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
X
6a〜X
6dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X
6a〜X
6dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X1〜X4は、同じ連結基であることが好ましい。X
6a〜X
6dはいずれもS原子であることがより好ましい。
R
6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
R
6gがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0125】
式6中、R
6a〜R
6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つは式Wで表される基を表す。
なお、R
6a〜R
6fで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
これらの中でも、R
6a〜R
6fがそれぞれ独立にとりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、又は、アルキルチオ基、式Wで表される基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、又は、式Wで表される基がより好ましく、後述の連結基鎖長が3.7Å以下の基、又は、式Wで表される基が更に好ましく、式Wで表される基が特に好ましい。
【0126】
式6で表される化合物中、R
6a〜R
6fのうち、式Wで表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
R
6a〜R
6fのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R
6c〜R
6fであることが好ましく、R
6e又はR
6fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点からより好ましい。
【0127】
R
6a〜R
6fのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
R
6a〜R
6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
R
6a〜R
6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
R
6a〜R
6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとりうる置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
R
6a〜R
6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
R
6a〜R
6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
R
6a〜R
6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとりうる置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0128】
式6で表される化合物は、下記式6A又は式6Bで表される化合物であることが好ましく、高移動度の観点からは、式6Aで表される化合物であることが特に好ましい。
【0130】
式6A中、X
6a〜X
6dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表し、R
6a〜R
6c、R
6A及びR
6eはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
6a〜R
6c、R
6A及びR
6eは、式Wで表される基ではなく、R
Wは炭素数5〜19のアルキル基を表し、L
Wは上記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の上記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表す。
式6B中、X
6a〜X
6dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表し、R
6a、R
6b、R
6B及びR
6Cはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
Wはそれぞれ独立に、炭素数5〜19のアルキル基を表し、L
Wはそれぞれ独立に、上記式L−1〜式L−25)のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の上記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表す。
なお、上記置換基としては、上述した置換基が挙げられる。
【0133】
式7中、X
7a及びX
7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
7i(>N−R
7i)を表し、X
7b及びX
7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表す。X
7a〜X
7dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X
7a〜X
7dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
7a〜X
7dは、同じ連結基であることが好ましい。X
7a〜X
7dはいずれもS原子であることがより好ましい。
【0134】
式7中、R
7a〜R
7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
7a〜R
7iのうち少なくとも1つが式Wで表される基である。
なお、R
7a〜R
7iで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R
7iは、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数5〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
R
7iがアルキル基を表す場合、直鎖のアルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖のアルキル基であることが、HOMO軌道の重なりの観点から好ましい。
【0135】
式7で表される化合物中、R
7a〜R
7iのうち、式Wで表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
R
7a〜R
7iのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R
7d又はR
7hであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R
7d及びR
7hがより好ましい。
式7のR
7a〜R
7iのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
R
7a〜R
7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
R
7a〜R
7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
R
7a〜R
7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとりうる置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
R
7a〜R
7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
R
7a〜R
7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
R
7a〜R
7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとりうる置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0136】
式7で表される化合物は、下記式7A又は式7Bで表される化合物であることが好ましく、高移動度の観点からは、式7Bで表される化合物であることが特に好ましい。
【0138】
式7A中、X
7a及びX
7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR9を表し、X
7b及びX
7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R
7a〜R
7g及びR
7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、ただし、R
7dは式Wで表される基ではない。式7AにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。
式7B中、X
7a及びX
7cはそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子又はNR
7iを表し、X
7b及びX
7dはそれぞれ独立にS原子、O原子又はSe原子を表し、R
7a〜R
7c、R
7e〜R
7g及びR
7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、式7BにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式7Bにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0141】
式8中、X
8a及びX
8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
8iを表し、X
8b及びX
8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表す。X
8a〜X
8dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X
8a〜X
8dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
8a〜X
8dは、同じ連結基であることが好ましい。X
8a〜X
8dはいずれもS原子であることがより好ましい。
【0142】
式8中、R
8a〜R
8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
8a〜R
8iのうち少なくとも1つが式Wで表される基である。
なお、R
8a〜R
8iで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R
8iは、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数5〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
R
8iがアルキル基を表す場合、直鎖のアルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖のアルキル基であることが、HOMO軌道の重なりの観点から好ましい。
【0143】
式8で表される化合物中、R
8a〜R
8iのうち、式Wで表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
R
8a〜R
8iのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R
8c又はR
8gであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R
8c及びR
8gがより好ましい。
また、式8のR
8a〜R
8iのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0144】
R
8a〜R
8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
R
8a〜R
8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
R
8a〜R
8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとりうる置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
R
8a〜R
8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
R
8a〜R
8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとりうる置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
R
8a〜R
8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとりうる置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0145】
式8で表される化合物は、下記式8A又は式8Bで表される化合物であることが好ましく、高移動度の観点からは、式8Bで表される化合物であることが特に好ましい。
【0147】
式8A中、X
8a及びX
8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
8iを表し、X
8b及びX
8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R
8a〜R
8f及びR
8hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、ただし、R
8cは式Wで表される基ではない。式8AにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。
式8B中、X
8a及びX
8cはそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子又はNR
8iを表し、X
8b及びX
8dはそれぞれ独立にS原子、O原子又はSe原子を表し、R
8a、R
8b、R
8d〜R
8f及びR
8hはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、式8BにおけるL
W及びR
Wの定義は、式W中の上記L
Wと及びR
Wとそれぞれ同義である。また、式8Bにおいて2つのL
W及び2つのR
Wはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0150】
式9中、X
9a及びX
9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。中でも、S原子が好ましい。
R
9c、R
9d及びR
9g〜R
9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される置換基を表す。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
R
9a、R
9b、R
9e及びR
9fは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。なお、R
9a、R
9b、R
9e及びR
9fで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。
なお、R
9c、R
9d及びR
9g〜R
9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基(ただし、L
Wは式L−3、式L−5、式L−7〜式L−9、式L−12〜式L−24のいずれかで表される基である。)を表すことが好ましい。中でも、R
9c、R
9d及びR
9g〜R
9jは、水素原子がより好ましい。
なお、L
Wとしては、式L−3、式L−5、式L−13、式L−17又は式L−18のいずれかで表される基であることが好ましい。
R
9a〜R
9iのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表すことが好ましい。
【0151】
式9で表される化合物中、R
9a〜R
9iのうち、式Wで表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
R
9a〜R
9iのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R
9b又はR
9fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R
9b及びR
9fがより好ましい。
また、式9のR
9a〜R
9iのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
【0154】
式10中、R
10a〜R
10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
10a〜R
10hのうち少なくとも1つは式Wで表される基を表す。なお、R
10a〜R
10hで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
中でも、R
10a〜R
10hはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を表し、R
10a〜R
10hのうち少なくとも1つは、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。
式10のR
10a〜R
10hは、R
10b及びR
10fのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基であることがより好ましく、R
10b及びR
10fのいずれもが、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基であることが更に好ましく、置換若しくは無置換のフェニルチオ基又は下記群Aから選ばれるヘテロアリールチオ基であることが特に好ましく、置換若しくは無置換のフェニルチオ基又は下記式A−17、式A−18、式A−20で表されるヘテロアリールチオ基であることが最も好ましい。
【0155】
アリールチオ基としては、炭素数6〜20のアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、ナフチルチオ基又はフェニルチオ基がより好ましく、フェニルチオ基が特に好ましい。
ヘテロアリールチオ基としては、3〜10員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、5又は6員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基がより好ましく、下記群Aが特に好ましい。
【0157】
群A中、R”及びR”
Nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
群A中、R’はそれぞれ独立に、水素原子又は式Wで表される基を表すことが好ましい。
群A中、R”
Nは、置換基を表すことが好ましく、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基、アルキル基で置換されたアリール基、又は、アルキル基で置換されたヘテロアリール基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基、又は、炭素数1〜4のアルキル基で置換された5員のヘテロアリール基が特に好ましい。
【0158】
アルキルオキシカルボニル基としては、炭素数1〜20のアルキル基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は、2〜15がより好ましく、5〜10が特に好ましい。
【0159】
アリールオキシカルボニル基としては、炭素数6〜20のアリール基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アリール基の炭素数は、6〜15がより好ましく、8〜12が特に好ましい。
【0160】
アルキルアミノ基としては、炭素数1〜20のアルキル基にアミノ基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は、2〜15がより好ましく、5〜10が特に好ましい。
R
10a〜R
10hのうち、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基以外の置換基(以下、他の置換基ともいう。)は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
【0161】
X
10a及びX
10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
x(>N−R
x)を表す。X
10a及びX
10bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
10a及びX
10bは、同じ連結基であることが好ましい。X
10a及びX
10bは、いずれもS原子であることがより好ましい。
R
xはそれぞれ独立に、水素原子又は式Wで表される基を表す。式Wで表される基の定義は上述の通りである。
【0164】
式11中、X
11a及びX
11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
11nを表し、R
11a〜R
11k、R
11m及びR
11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
11a〜R
11k、R
11m及びR
11nのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
【0165】
式11中、X
11a及びX
11bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
11a及びX
11bは、同じ連結基であることが好ましい。X
11a及びX
11bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式11のR
11a〜R
11k及びR
11mは、R
11c及びR
11iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R
11c及びR
11iのいずれもが、置換若しくは無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
【0168】
式12中、X
12a及びX
12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
12nを表し、R
12a〜R
12k、R
12m及びR
12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
12a〜R
12k、R
12m及びR
12nのうち少なくとも1つは式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
【0169】
式12中、X
12a及びX
12bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
12a及びX
12bは、同じ連結基であることが好ましい。X
12a及びX
12bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式12のR
12a〜R
12k及びR
12mは、R
12c及びR
12iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R
12c及びR
12iのいずれもが、置換又は無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
【0172】
式13中、X
13a及びX
13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
13nを表し、R
13a〜R
13k、R
13m及びR
13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
13a〜R
13k、R
13m及びR
13nのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0173】
式13中、X
13a及びX
13bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
13a及びX
13bは、同じ連結基であることが好ましい。X
13a及びX
13bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式13のR
13a〜R
13k及びR
13mは、R
13c及びR
13iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R
13c及びR
13iのいずれもが、置換若しくは無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
【0176】
式14中、X
14a〜X
14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
14iを表し、R
14a〜R
14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
14a〜R
14iのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R
14a〜R
14hの少なくとも1つが式Wで表される基であり、R
Wがアルキル基である場合には、L
Wは式L−2〜式L−25のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0177】
式14中、X
14a〜X
14cのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
14a〜X
14cは、同じ連結基であることが好ましい。X
14a〜X
14cはいずれもS原子であることがより好ましい。
R
Wがアルキル基である場合のL
Wとしては、式L−2〜式L−5、式L−13、式L−17、又は、式L−18のいずれかで表される基が好ましく、式L−3、式L−13、又は、式L−18のいずれかで表される基がより好ましい。
式14のR
14a〜R
14hは、R
14b及びR
14gのうち少なくとも1つが、式Wで表される基であることが好ましく、R
14b及びR
14gのいずれもが、式Wで表される基であることがより好ましい。
【0180】
式15中、X
15a〜X
15dはそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子又はNR
15gを表し、R
15a〜R
15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
15a〜R
15gのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0181】
式15中、X
15a〜X
15dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
15a〜X
15dは、同じ連結基であることが好ましい。X
15a〜X
15dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式15のR
15a〜R
15fは、R
15b及びR
15eのうち少なくとも1つが、式Wで表される基であることが好ましく、R
15b及びR
15eのいずれもが、式Wで表される基であることがより好ましい。
【0184】
式16中、X
16a〜X
16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR
16gを表す。R
16a〜R
16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
16a〜R
16gのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R
16c及びR
16fは、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基(ただし、L
Wは、式L−3、式L−5、式L−7〜式L−9、式L−12〜式L−24のいずれかで表される基である。)であることが好ましい。R
16a、R
16b、R
16d、R
16e及びR
16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表すことが好ましい。
なお、式16において、L
Wは、式L−3、式L−5、式L−7〜式L−9、式L−12〜式L−24のいずれかで表される基であり、R
16c及びR
16fが式Wで表される基の場合、式L−3、式L−5、式L−13、式L−17、式L−18のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0185】
式16中、X
16a〜X
16dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X
16a〜X
16dは、同じ連結基であることが好ましい。X
16a〜X
16dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式16のR
16a〜R
16fは、R
16a及びR
16dのうち少なくとも1つが、式Wで表される基であることが好ましく、R
16a及びR
16dのいずれもが、式Wで表される基であることがより好ましい。
また、R
16c及びR
16fは、水素原子であることが好ましい。
【0186】
成分Aは、上記縮合多環芳香族基における縮合多環芳香環上に、アルキル基を有することが好ましく、炭素数6〜20のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数7〜14のアルキル基を有することが更に好ましい。上記態様であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
また、成分Aは、上記縮合多環芳香族基における縮合多環芳香環上に、1つ以上のアルキル基を有することが好ましく、2〜4つのアルキル基を有することがより好ましく、2つのアルキル基を有することが更に好ましい。上記態様であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
【0187】
成分Aの合成方法は、特に制限されず、公知の方法を参照して合成できる。上記式1〜式16で表される化合物の合成方法としては、例えば、Journal of American Chemical Society,116, 925(1994)、Journal of Chemical Society, 221(1951)、Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、Tetrahedron,2002,58,10197、特表2012−513459号公報、特開2011−46687号公報、Journal of Chemical Research.miniprint,3,601−635(1991)、Bull.Chem.Soc.Japan,64,3682−3686(1991)、Tetrahedron Letters,45,2801−2803(2004)、欧州特許公開第2251342号明細書、欧州特許公開第2301926号明細書、欧州特許公開第2301921号明細書、韓国特許公開第10−2012−0120886号公報、J.Org.Chem.,2011,696、Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、J.Org.Chem.,2013,78,7741、Chem.Eur.J.,2013,19,3721、Bull.Chem.Soc.Jpn.,1987,60,4187、J.Am.Chem.Soc.,2011,133,5024、Chem.Eur.J.2013,19,3721、Macromolecules,2010,43,6264−6267、J.Am.Chem.Soc.,2012,134,16548−16550などが挙げられる。
【0188】
なお、有機半導体における移動度の観点から、成分Aは、式1〜式9、式14、又は、式15のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、式1〜式9、又は、式15で表される化合物を少なくとも1種含むことがより好ましい。
【0189】
以下に成分Aの好ましい具体例を示すが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0194】
成分Aの分子量は、特に制限されないが、分子量が3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることが更に好ましく、850以下であることが特に好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、溶媒への溶解性を高めることができる。一方で、薄膜の膜均一性の観点からは、分子量は300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましく、400以上であることが更に好ましい。
【0195】
本発明の有機半導体膜形成用組成物における成分Aの含有量は、組成物全質量に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.2〜5.0質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、塗布性に優れ、容易に有機半導体膜を形成することができる。
【0196】
<有機溶媒>
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、式B−1で表される有機溶媒(以下、「成分B」ともいう。)を含む。
【0197】
【化47】
式B−1中、Rはアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又は、ビニル基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記アルキル基は置換されていてもよいが、無置換のアルキル基であることが好ましい。
また、Rはアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0198】
本発明に用いられる有機溶媒の沸点は、140〜300℃であることが好ましく、200〜240℃であることがより好ましい。沸点が上記範囲であれば、フレキソ印刷法により組成物を基板上に印刷した場合に印刷適正に優れ、膜均一性が良好な有機半導体膜を得ることができる。
有機溶媒の沸点は、1気圧(760mmHg、1.013×10
5Pa)下で測定した沸点であり、常法に従って測定される。また、成分Bの沸点として、各種文献に記載の値を採用してもよい。
なお、本発明に用いられる有機溶媒は、室温(25℃)で液体である。すなわち、本発明に用いられる有機溶媒の融点は25℃以下である。
【0199】
有機溶媒としては、2−メチルベンゾチアゾール(沸点:238℃)、2−フルオロベンゾチアゾール(沸点:98℃)、2−クロロベンゾチアゾール(沸点:141℃)が挙げられ、2−メチルベンゾチアゾールが好ましい。
【0200】
成分Bは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中の成分Bの含有量は、組成物の全質量に対して、75〜99.5質量%であることが好ましく、90〜99.5質量%であることがより好ましく、95〜99.5質量%であることが更に好ましい。
【0201】
本発明において、成分Bと併用して、成分Bには該当しない、その他の溶媒を使用してもよい。
その他の溶媒の含有量は、成分Bの組成物中の含有量を100質量部としたとき、100質量部未満であり、50質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましく、3質量部以下であることが特に好ましく、その他の溶媒を含有しないことが最も好ましい。
【0202】
その他の溶媒としては、公知の溶媒を用いることができる。
具体的には、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン等のアミド・イミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒が挙げられる。
【0203】
その他の溶媒は、1種単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、その他の溶媒としては、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒及び/又はエーテル系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジクロロベンゼン又はアニソールがより好ましく、o−ジクロロベンゼンが特に好ましい。
【0204】
<高分子化合物>
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、高分子化合物を含むことが好ましい。高分子化合物の種類は特に制限されず、公知の高分子化合物が挙げられる。高分子化合物の好適態様としては、ベンゼン環を有する高分子化合物(ベンゼン環基を有する単量体単位を有する高分子)が好ましい。ベンゼン環基を有する単量体単位の含有量は特に制限されないが、全単量体単位中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、100モル%が挙げられる。
上記高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルシンナメート、ポリ(4−ビニルフェニル)、又は、ポリ(4−メチルスチレン)などが挙げられる。
なお、高分子化合物の数平均分子量は特に制限されないが、1万〜200万が好ましく、2万〜60万がより好ましい。なお、本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定され、分子量既知のポリスチレンで換算される。
上記高分子化合物を含有することにより、有機半導体膜形成用組成物の粘度を調整することができる。
【0205】
高分子化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
高分子化合物の含有量は、有機半導体膜形成用組成物全質量に対して、0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.005〜5.0質量%であることがより好ましく、0.01〜2.0質量%が更に好ましく、0.1〜1.5質量%であることが更に好ましい。
【0206】
(その他成分)
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、その他成分として、公知の添加剤等を含有してもよい。本発明の有機半導体膜形成用組成物におけるその他成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、膜形成性に優れ、得られる有機半導体の膜均一性及び移動度により優れる。
【0207】
<組成物>
本発明の有機半導体膜形成用組成物には、少なくとも有機半導体及び有機溶媒が含まれる。
本発明の有機半導体膜形成用組成物中における有機半導体の含有量は特に制限されないが、膜均一性及び移動度が優れる点で、組成物全質量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.2〜5質量%であることが更に好ましい。
本発明の有機半導体膜形成用組成物中における有機溶媒の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物全質量に対して、75〜99.5質量%が好ましく、90〜99.95質量%がより好ましく、95〜99.9質量%が更に好ましい。
本発明の有機半導体膜形成用組成物中における高分子化合物の含有量は、膜均一性及び移動度がより優れる点で、その含有量は組成物全質量に対して、0〜10.0質量%が好ましく、0〜5.0質量%がより好ましく、0〜2.0質量%が更に好ましく、0〜1.5質量%が特に好ましい。
【0208】
組成物の粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れると共に、塗布性がより優れる点で、3〜100mPa・sが好ましく、5〜50mPa・sがより好ましく、10〜30mPa・sが更に好ましい。
本発明における粘度は、25℃での粘度である。
粘度は、振動式粘度計(VM−10A、(株)セコニック製)を用いて測定した。
【0209】
組成物の製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、有機溶媒中に所定量の有機半導体、及び、必要に応じて高分子化合物を同時又は逐次に添加して、適宜撹拌処理を施すことにより、所望の組成物を得ることができる。
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、インクジェット印刷用、又は、フレキソ印刷用であることが好ましく、フレキソ印刷用有機半導体形成用組成物であることがより好ましい。
【0210】
<有機半導体膜、及び、有機半導体素子、並びに、それらの製造方法>
本発明の有機半導体膜及び本発明の有機半導体素子は、本発明の有機半導体膜形成用組成物を用いて製造されたものであることが好ましい。
上記組成物を用いて有機半導体膜を製造する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、組成物を所定の基材上に付与して、必要に応じて乾燥処理を施して、有機半導体膜を製造する方法が挙げられる。
本発明の有機半導体膜の製造方法、及び、本発明の有機半導体素子の製造方法は、有機半導体膜形成用組成物を基材上に付与する付与工程、及び、乾燥工程を含むことが好ましい。乾燥工程は、塗布された有機半導体膜形成用組成物から成分Bを含む有機溶媒を除去する工程であることが好ましい。
なお、上記基材には、基板、及び、基板上に形成された電極や絶縁膜が含まれる。
上記付与工程において、基材上に組成物を付与する方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、及び、ドクターブレード法などが挙げられ、インクジェット印刷法、又は、フレキソ印刷法が好ましい。
なお、フレキソ印刷法としては、フレキソ印刷版として感光性樹脂版を用いる態様が好適に挙げられる。態様によって、組成物を基板上に印刷して、パターンを容易に形成することができる。
なお、上記基板上には、電極や、絶縁膜が形成されていることが好ましい。
【0211】
上記乾燥工程において、乾燥処理は、使用される有機半導体膜及び有機溶媒の種類により適宜最適な条件が選択される。中でも、得られる有機半導体膜の移動度及び膜均一性により優れ、生産性に優れる点で、加熱温度としては30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましく、加熱時間としては10〜300分が好ましく、30〜180分がより好ましい。
【0212】
形成される有機半導体膜の膜厚は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、10〜500nmが好ましく、30〜200nmがより好ましい。
【0213】
上述した組成物より製造される有機半導体膜は、優れた移動度を示すと共に、サンプル間での移動度のバラツキが小さい(つまり、ロット間での移動度のバラツキが小さい)。また、組成物の保存安定性に優れる。
【0214】
上記有機半導体膜は、有機半導体素子に好適に使用することができ、有機トランジスタ(有機薄膜トランジスタ)により好適に使用することができる。
【0215】
有機半導体素子としては、2端子、3端子、4端子、又は、5端子の有機半導体素子であることが好ましく、2端子、又は、3端子の有機半導体素子であることがより好ましい。
本発明の有機半導体膜形成用組成物を用いた有機半導体素子は、光電機能を用いない素子であり、わずかに光ったり、逆に光で電流が変わったりする場合もあるが、この機能を利用しないものとする。
光電機能を積極的に用いる場合、有機物が光で劣化する可能性があり、好ましくない。
2端子素子としては、整流用ダイオード、定電圧ダイオード、PINダイオード、ショットキーバリアダイオード、サージ保護用ダイオード、ダイアック、バリスタ、トンネルダイオード等が挙げられるが、これらのみに限られない。
3端子素子としては、バイポーラトランジスタ、ダーリントントランジスタ、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、ユニジャンクショントランジスタ、静電誘導トランジスタ、ゲートターンサイリスタ、トライアック、静電誘導サイリスタ等が挙げられるが、これらのみに限らない。
好ましくは、整流用ダイオード、及び、トランジスタ類が挙げられ、電界効果トランジスタがより好ましく挙げられる。
【0216】
本発明の有機半導体膜形成用組成物を用いた、有機薄膜トランジスタの一態様について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の有機半導体素子の一種である有機薄膜トランジスタの一態様の断面模式図である。
図1において、有機薄膜トランジスタ100は、基板10と、基板10上に配置されたゲート電極20と、ゲート電極20を覆うゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30のゲート電極20側とは反対側の表面に接するソース電極40及びドレイン電極42と、ソース電極40とドレイン電極42との間のゲート絶縁膜30の表面を覆う有機半導体膜50と、各部材を覆う封止層60とを備える。有機薄膜トランジスタ100は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタである。
なお、
図1においては、有機半導体膜50が、上述した組成物より形成される膜に該当する。以下、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び封止層並びにそれぞれの形成方法について詳述する。
【0217】
<基板>
基板は、後述するゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などを支持する役割を果たす。
基板の種類は特に制限されず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、セラミック基板などが挙げられる。中でも、各デバイスへの適用性及びコストの観点から、ガラス基板又はプラスチック基板であることが好ましい。
プラスチック基板の材料としては、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)又は熱可塑性樹脂(例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォンなど)が挙げられる。セラミック基板の材料としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイドなどが挙げられる。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダガラス、カリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルミケイ酸ガラス、鉛ガラスなどが挙げられる。
【0218】
<ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極>
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の材料としては、例えば、金(Au)、銀、アルミニウム(Al)、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、タンタル、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属;InO
2、SnO
2、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性の酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン等の導電性高分子;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等の半導体;フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料などが挙げられる。中でも、金属であることが好ましく、銀、アルミニウムであることがより好ましい。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の厚みは特に制限されないが、20〜200nmであることが好ましい。
【0219】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を形成する方法は特に制限されないが、例えば、基板上に、電極材料を真空蒸着又はスパッタする方法、電極形成用組成物を塗布又は印刷する方法などが挙げられる。また、電極をパターニングする場合、パターニングする方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法;マスク蒸着法などが挙げられる。
【0220】
<ゲート絶縁膜>
ゲート絶縁膜の材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリベンゾキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー;二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物;窒化珪素等の窒化物などが挙げられる。これらの材料のうち、有機半導体膜との相性から、ポリマーであることが好ましい。
ゲート絶縁膜の材料としてポリマーを用いる場合、架橋剤(例えば、メラミン)を併用するのが好ましい。架橋剤を併用することで、ポリマーが架橋されて、形成されるゲート絶縁膜の耐久性が向上する。
ゲート絶縁膜の膜厚は特に制限されないが、100〜1,000nmであることが好ましい。
【0221】
ゲート絶縁膜を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極が形成された基板上に、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法、ゲート絶縁膜材料を蒸着又はスパッタする方法などが挙げられる。ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法(バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法)を使用することができる。ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布してゲート絶縁膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0222】
<有機半導体膜>
本発明の有機半導体膜は、上述した組成物より形成される膜である。
有機半導体膜の形成方法は特に制限されず、上述した組成物を、ソース電極、ドレイン電極、及び、ゲート絶縁膜上に付与して、必要に応じて乾燥処理を施すことにより、所望の有機半導体膜を形成することができる。
【0223】
<封止層>
本発明の有機薄膜トランジスタは、耐久性の観点から、最外層に封止層を備えることが好ましい。封止層には公知の封止剤を用いることができる。
封止層の厚みは特に制限されないが、0.2〜10μmであることが好ましい。
【0224】
封止層を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極とゲート絶縁膜とソース電極とドレイン電極と有機半導体膜とが形成された基板上に、封止層形成用組成物を塗布する方法などが挙げられる。封止層形成用組成物を塗布する方法の具体例は、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法と同じである。封止層形成用組成物を塗布して有機半導体膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0225】
また、
図2は、本発明の有機半導体素子の一種である有機薄膜トランジスタの別の一態様の断面模式図である。
図2において、有機薄膜トランジスタ200は、基板10と、基板10上に配置されたゲート電極20と、ゲート電極20を覆うゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30上に配置された有機半導体膜50と、有機半導体膜50上に配置されたソース電極40及びドレイン電極42と、各部材を覆う封止層60を備える。ここで、ソース電極40及びドレイン電極42は、上述した本発明の組成物を用いて形成されたものである。有機薄膜トランジスタ200は、トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタである。
基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び封止層については上述のとおりである。
【0226】
上記では
図1及び2において、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、ボトムゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタの態様について詳述したが、本発明の組成物はトップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、トップゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタにも適用できる。
なお、上述した有機薄膜トランジスタは、電子ペーパー、ディスプレイデバイスなどに好適に使用できる。
【実施例】
【0227】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0228】
本実施例で使用した化合物を以下に記載する。
<有機半導体>
下記式A−1で表される構造の有機半導体(合成品)を使用した。合成法は、特開2009−190999に記載の方法に従った。
【0229】
【化48】
【0230】
<有機溶媒>
・2−メチルベンゾチアゾール(353−00142、和光純薬工業(株)製)
・ベンゾチアゾール(B0092、東京化成工業(株)製)
・テトラリン(アルドリッチ社製)
<高分子化合物>
・ポリ(α−メチルスチレン)(数平均分子量40万、アルドリッチ社製)
【0231】
(有機半導体膜形成用組成物の調製)
表1及び2に示す有機半導体、表1及び2に示す有機溶媒、及び、高分子化合物としてポリ(α−メチルスチレン)を、表1及び2に示す所定比率(組成物全質量に対する質量比)で硝子バイヤルに秤量し、ミックスローター(アズワン(株)製)で10分間撹拌混合した。0.5μmメンブレンフィルターでろ過することにより、有機半導体膜形成用組成物を得た。
【0232】
(有機トランジスタの製造)
以下の要領で、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機トランジスタを形成した。
【0233】
<ゲート電極形成>
無アルカリ硝子基板上(5cm×5cm)に、銀ナノインク(H−1、三菱マテリアル(株)製)をDMP2831(1ピコリットルヘッド)を用いたインクジェット印刷することにより、幅100μm、膜厚100nmの配線パターンを形成し、その後、200℃、90分間、ホットプレート上、大気下で焼成し、ゲート電極配線を形成した。
【0234】
<ゲート絶縁膜形成>
ポリビニルフェノール(Mw25000、アルドリッチ社製)5質量部、及び、メラミン5質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部を撹拌混合し、0.2μmメンブレンフィルターでろ過することで、溶液を作製した。得られた溶液を、ゲート電極を作製した硝子基板上に滴下し、スピンコート(1,000rpm、120秒)により、コートし、150℃にて30分加熱して、膜厚500nmのゲート絶縁膜を形成した。
【0235】
<ソース電極及びドレイン電極形成>
上記絶縁膜コートされた基板中央上に、パターンを複数個有するメタルマスクを載せ、UVオゾンを30分照射することで、マスク開口部を親水処理表面に改質した。なお、メタルマスクには、光を遮断するマスク部と、開口部がある。改質部分周辺に、DMP2831(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)を用いたインクジェット印刷により、チャネル長50μm、チャネル幅320μmのソース電極・ドレイン電極パターンを形成した。得られた基板をN
2雰囲気下(グローブボックス中、酸素濃度20ppm以下の環境)にて、ホットプレート上200℃で90分焼成して、膜厚200nmのソース電極及びドレイン電極が形成された。
【0236】
<有機半導体膜の作製>
有機半導体膜は、インクジェット法又はフレキソ印刷法により作製した。各実施例又は比較例において、表1及び2中の印刷方法の欄の「IJ」はインクジェット印刷法で作製したことを、「FL」はフレキソ印刷法により作製したことを、それぞれ示している。
【0237】
〔インクジェット印刷法〕
上記で作製した組成物(表1及び2の組成物)をソース電極及びドレイン電極を形成した基板上に、インクジェット法によりコートした。インクジェット装置としては、DMP2831(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)、10pLヘッドを用い、吐出周波数5Hz、ドット間ピッチ20μmでベタ膜を形成した。そのまま、60℃下室温で2時間乾燥することで、ソース電極及びドレイン電極間に有機半導体膜を作製し、有機トランジスタを製造した。
【0238】
〔フレキソ印刷法〕
上記で作製した組成物(表1及び2の組成物)をソース電極及びドレイン電極を形成した基板上に、フレキソ印刷法によりコートした。印刷装置として、フレキソ適性試験機F1(アイジーティ・テスティングシステムズ(株)製)を用い、フレキソ樹脂版として、AFP DSH1.70%(旭化成(株)製)/ベタ画像を用いた。版と基板間の圧は、60N、搬送速度0.3m/秒で印刷を行った後、そのまま、60℃下で2時間乾燥することで、ソース電極及びドレイン電極間に有機半導体膜(膜厚:100nm)を作製し、有機トランジスタを製造した。
【0239】
<膜均一性>
有機半導体膜形成用組成物をインクジェット印刷又はフレキソ印刷により付与し、乾燥を行うことにより得られた有機半導体膜を、膜厚測定計(DEKTAK)により任意の3箇所を選んで膜厚測定を行った。得られた3点の膜厚について、そのバラツキ評価を行った。具体的には、3点の膜厚の測定値を算術平均して平均値Xを求め、その後、平均値Xと各点の膜厚の値との「差」を算出して、その「差」の平均値Yを算出して、(平均値Y/平均値X)×100という式により、バラツキを求めた。
なお、有機半導体形成用組成物の付与は、上記トランジスタの製造における有機半導体膜の形成と同様の方法で行った。
評価基準は以下のとおりである。なお、実用上、評価がAA〜Bであることが好ましい。
AA:膜厚バラツキ5%未満。
A:膜厚バラツキ5%以上10%未満。
B:膜厚バラツキ10%以上20%未満。
C:膜厚バラツキ20%以上
【0240】
<電荷移動度>
有機半導体膜形成用組成物をインクジェット印刷又はフレキソ印刷により付与し、乾燥を行うことにより得られた有機半導体膜について、半導体測定装置B2900A(アジレント社製)により5箇所の電荷移動度測定を行い、その平均移動度を算出した。なお、このときの測定条件は以下の通りであった。
チャネル長L: 20μm
ドレイン電圧Vd:−15V
なお、有機半導体形成用組成物の付与は、上記トランジスタの製造における有機半導体膜の形成と同様の方法で行った。
評価基準は以下のとおりである。なお、実用上、評価がAA〜Bであることが好ましい。
AA:平均移動度が0.7cm
2/V・s以上
A:平均移動度が0.6cm
2/V・s以上0.7cm
2/V・s未満
B:平均移動度が0.5cm
2/V・s以上0.6cm
2/V・s未満
C:平均移動度が0.5cm
2/V・s未満
【0241】
【表1】
【0242】
【表2】
【0243】
実施例1〜9において得られた有機トランジスタは、移動度バラツキが少ないという点で優れており、信頼性の高い装置であることが分かった。