(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機金属化合物膜は、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属アシレート化合物、金属イソシアネート化合物及びアミン系有機金属化合物の群から選択される1種類又は2種類以上の材料から形成される、
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0012】
(半導体装置の製造方法)
先ず、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、説明する。
図1に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例のフロー図を示す。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、
S10:被処理体上にパターニングされたレジストの表面を覆うように、弾性を有し、かつ、前記レジストと相溶性がない被膜を形成する被膜形成工程と、
S20:前記被膜が形成された前記被処理体を加熱する加熱工程と、
を有する。
【0014】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法は、その他の工程を含んでも良い。その他の工程としては、例えば、加熱処理後の被処理体を冷却する冷却工程や、加熱処理後の被処理体から被膜を除去する被膜除去工程が挙げられる。
【0015】
各々の工程について、
図2から
図5を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態において、形成されるレジストパターンがラインパターンである場合について説明するが、ホールパターンであっても同様の技術を適用可能であり、本発明はこの点において限定されない。
【0016】
図2から
図5に、本実施形態の半導体装置の製造方法のフローを説明するための概略図を示す。
【0017】
[被膜形成工程(S10)]
前述した通り、被膜形成工程は、被処理体30上に予めパターニングされたレジスト32(レジストパターン32と呼ぶことがある)の表面を覆うように、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がない被膜34を形成する工程である(
図2(b)、
図3(c)、
図4(b)及び
図5(b)参照)。
【0018】
本実施形態において、「レジスト32の表面を覆う」とは、被膜34がレジスト32の上面32a及び側面32bを覆うことを指す。このとき、
図2(b)及び
図3(c)に示すように、隣り合うレジストパターン32間の空間の一部が被膜34で埋められた状態となっていても良いし、
図4(b)に示すように、隣り合うレジストパターン32間の空間の全部が被膜34で埋められていても良い。また、
図5(b)に示すように、レジスト32の表面が被膜34に覆われていれば、被処理体30のレジスト32が形成されている面における、レジスト32が形成されていない露出部30aを、被膜34が完全に覆うように形成されていなくても良い。しかしながら、被膜34が露出部30aを完全に覆うように形成されていることが好ましい。被膜34が露出部30aを完全に覆うように形成されていることが好ましい理由については、後述する加熱工程(S20)で説明する。
【0019】
被処理体30としては、特に制限はなく、例えば基板、若しくは、基板上に1種類又は2種類以上の下地層を形成したものなどを使用することができる。
【0020】
下地層の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば有機系BARC(Bottom Anti Reflective Coating)膜(Si含有のものを含む)、TEOS(テトラエトキシシラン:Tetraethoxysilane)膜、SOG(Spin On Glass)膜、SiON膜又はLTO(Low Temperature Oxide)膜等を用いることができる。
【0021】
図2(a)、
図3(a)、
図4(a)及び
図5(a)で示される、被処理体30へのレジストパターン32の形成方法の一例について、簡単に説明する。先ず、被処理体30の上に、例えば露光装置を組み込んだ塗布現像装置を用いたスピンオンにより、レジスト32を塗布する。レジスト32を塗布した被処理体30は、レジスト32中の溶媒を除去してレジスト分子を均一に分散させるために、プリベーク処理される。その後、フォトリソグラフィ技術により、レジスト32が所定のパターンに露光処理される。なお、露光処理の前に、周辺露光処理により余分なレジストを除去しても良い。露光後の被処理体30は、感光部分を拡散させるためにポストエクスポージャーベーク(PEB)処理された後、現像処理が行われる。現像処理が行われた被処理体30は、レジスト32の密着性を向上させるために、ポストベーク処理が施され、レジストパターン32が形成される。なお、前述した通り、本実施形態において、レジストパターン32は、ホールパターンであっても良いし、ラインパターンであっても良い。また、レジスト32の膜厚やパターニングされたレジスト32のピッチは、特に制限はなく、当業者が適宜選択することができる。
【0022】
このレジストパターン32が形成された被処理体30に対して、本実施形態の被膜形成工程では、
図2(b)、
図3(c)、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がない被膜34を、レジスト32の表面を覆うように形成する。
【0023】
被膜34の形成方法としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がない被膜34を形成することができれば特に限定されない。例えば
図2、
図3及び
図4に示すように、レジスト32の表面に被膜34となる材料を成膜することにより、レジスト32の表面に被膜34を形成する被膜形成方法が挙げられる。また、例えば
図5に示すように、レジスト32の表層を変質させることにより、レジスト32の表面に被膜34を形成する被膜形成方法が挙げられる。
【0024】
先ず、レジスト32の表面に被膜34となる材料を成膜することにより、レジスト32の表面に被膜34を形成する被膜形成方法について説明する。
【0025】
レジスト32の表面に被膜34となる材料を成膜することにより、レジスト32の表面に被膜34を形成する被膜形成方法としては、スピン塗布法、ミスト塗布法、気相蒸着法、蒸着重合法、無電解めっき法等が挙げられる。
【0026】
スピン塗布法を利用して被膜34を形成する場合、レジストパターン32が形成された被処理体30に対して、被膜34の材料の前駆体溶液を塗布し、ゾルゲル法等により被膜34を形成することができる。この場合、被膜34としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がないものであれば、特に限定されないが、例えば有機ケイ素化合物膜、有機金属化合物膜又はこれらの混合膜が挙げられる。有機ケイ素化合物膜を成膜するための前駆体溶液としては、シリコンアルコキシド化合物、シリコンキレート化合物、シリコンアシレート化合物、シリコンイソシアネート化合物、アミン系有機シリコン化合物及び/又はシランカップリング剤を含む前駆体溶液等が挙げられる。また、有機金属化合物膜を成膜するための前駆体溶液としては、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属アシレート化合物、アミン系有機金属化合物及び/又は金属イソシアネート化合物等を含む前駆体溶液等が挙げられる。なお、前駆体溶液中に含まれる金属化合物は、チタン、ジルコニウム、タングステン、アルミニウム、タンタル、ハフニウム、銅又はパラジウムを主成分として含む金属化合物であることが好ましい。
【0027】
また、スピン塗布法を利用して被膜34を形成する場合、レジストパターン32が形成された被処理体30に対して、被膜34の材料の水溶液を塗布し、乾燥させることにより被膜34を形成することができる。この場合、被膜34としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がないものであれば、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーを成膜するための水溶液としては、これらの水溶性ポリマーを含む水溶液が挙げられる。
【0028】
ミスト塗布法を利用して被膜34を形成する場合、レジストパターン32が形成された被処理体30(
図3(a))に対して、ミスト化した被膜34の材料の溶液(以下「ミスト溶液」という。)を吹き付けることにより塗膜341を形成(
図3(b))する。その後、塗膜341を乾燥させ、溶媒を揮発させることによりミスト溶液の溶質が被膜34を形成する(
図3(c))。この場合、被膜34としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がないものであれば、特に限定されないが、例えば有機ケイ素化合物膜、有機金属化合物膜又はこれらの混合膜が挙げられる。有機ケイ素化合物膜を成膜するための前駆体溶液としては、シリコンアルコキシド化合物、シリコンキレート化合物、シリコンアシレート化合物、シリコンイソシアネート化合物、アミン系有機シリコン化合物及び/又はシランカップリング剤を含む前駆体溶液等が挙げられる。また、有機金属化合物膜を成膜するための前駆体溶液としては、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属アシレート化合物、アミン系有機金属化合物及び/又は金属イソシアネート化合物等を含む前駆体溶液等が挙げられる。
【0029】
なお、前駆体溶液中に含まれる金属化合物は、チタン、ジルコニウム、タングステン、アルミニウム、タンタル、ハフニウム、銅又はパラジウムを主成分として含む金属化合物であることが好ましい。
【0030】
また、ミスト溶液としては、レジスト32と相溶性があるものを用いることが好ましい。このとき、レジストパターン32の表層のみがミスト溶液に溶けるように、レジストパターン32へのミスト付着量を調整する。これにより、後述する加熱工程(S20)を行う前に、レジストパターン32のラフネスをある程度小さくすることができる。
【0031】
気相蒸着法を利用して被膜34を形成する場合、レジストパターン32が形成された被処理体30に対して、被膜34の材料の気相の前駆体を供給することにより被膜34を形成することができる。この場合、被膜34としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がないものであれば、特に限定されないが、例えば有機ケイ素化合物膜、有機金属化合物膜又はこれらの混合膜が挙げられる。有機ケイ素化合物膜を成膜するための前駆体としては、シリコンアルコキシド化合物、シリコンキレート化合物、シリコンアシレート化合物、シリコンイソシアネート化合物、アミン系有機シリコン化合物及び/又はシランカップリング剤を含む前駆体ガス等が挙げられる。また、有機金属化合物膜を成膜するための前駆体としては、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属アシレート化合物、アミン系有機金属化合物及び/又は金属イソシアネート化合物等を含む前駆体ガス等が挙げられる。なお、前駆体ガス中に含まれる金属化合物は、チタン、ジルコニウム、タングステン、アルミニウム、タンタル、ハフニウム、銅又はパラジウムを主成分として含む金属化合物であることが好ましい。
【0032】
蒸着重合法を利用して被膜34を形成する場合、例えば蒸発用ボートに充填された材料(第一原料モノマー及び第二原料モノマー)を加熱して、第一原料モノマーと第二原料モノマーとの蒸気が等モルずつ同時に飛ぶようにして、又はシャッター等を用いて各々の蒸気が等モルずつ時間をずらして飛ぶようにして、レジストパターン32が形成された被処理体30に対して蒸着重合せしめる。これにより、レジストパターン32が形成された被処理体30に被膜34を形成することができる。この場合、被膜34としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がないものであれば、特に限定されないが、例えばポリイミド膜、ポリアミド膜、ポリアゾメチン膜、ポリ尿素膜又はこれらの混合膜が挙げられる。これらの膜を形成するための材料としては、芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ等が挙げられる。なお、これらの材料に加えて、シランカップリング剤を用いてよい。
【0033】
気相蒸着法及び蒸着重合法による被膜形成は、常圧下で行っても良いし、真空下で行っても良い。これらの方法は、レジスト32の高さやピッチ幅に関わらず、レジストパターン32に対してコンフォーマルな被膜34を形成しやすい点で好ましい。
【0034】
なお、以上に例示した被膜形成方法により形成された被膜34は、レジスト32のパターンに対して、コンフォーマルに成膜することが好ましい。コンフォーマルな被膜34を形成した場合、隣り合うレジストパターン32の間の空間が被膜34で埋められた場合と比較して、後述する加熱工程(S20)において、被膜34の形状がレジスト32の変形に追従して変形しやすくなり、LER、LWRをより効果的に改善することができる。
【0035】
次に、レジスト32の表層を変質させることにより、レジスト32の表面に被膜34を形成する被膜形成方法について説明する。
【0036】
レジスト32の表層を変質させることにより、レジスト32の表面に被膜34を形成する被膜形成方法としては
、浸潤、脱保護等が挙げられる。
【0037】
レジスト32の表層を変質させることにより、レジスト32の表面に被膜34を形成する被膜形成方法を用いると、レジストパターン32の表層のみに被膜34が形成され、露出部30aには被膜34が形成されないため、エッチング処理前に被膜34を除去する工程が不要となる点で好ましい。
【0038】
浸潤を利用して被膜34を形成する場合、レジストパターン32が形成された被処理体30に対して、レジスト32の表層を被膜34に変質させる溶液を供給し、浸潤させることにより被膜34を形成することができる。この場合、被膜34としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がないものであれば、特に限定されないが、例えば有機金属化合物膜が挙げられる。溶液としては、例えば金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属アシレート化合物、アミン系有機金属化合物及び/又は金属イソシアネート化合物等を含む溶液等が挙げられる。なお、溶液中に含まれる金属化合物は、チタン、ジルコニウム、タングステン、アルミニウム、タンタル、ハフニウム、銅又はパラジウムを主成分として含む金属化合物であることが好ましい。
【0042】
脱保護を利用して被膜34を形成する場合、レジストパターン32が形成された被処理体30に対して、露光する、又は酸発生剤を供給することにより被膜34を形成することができる。この場合、被膜34としては、弾性を有し、かつ、レジスト32と相溶性がないものであれば、特に限定されないが、脱保護されることによってガラス転移温度Tgが脱保護される前よりも高くなるレジスト表層が挙げられる。露光するときに用いられる光としては、レジスト32のパターニングのときに使用した光の波長よりも短ければ、特に限定されないが、例えば184nm、172nm、157nm、146nm、126nmの波長を有する光であることが好ましい。これにより、レジストパターン32の表層のみを変質させることができる。酸発生剤としては、オニウム塩溶液等の酸性溶液が挙げられる。
【0043】
脱保護による被膜形成は、浸潤によるレジストパターン32の膨張がなく、レジストパターン32の寸法変動が比較的小さい点で好ましい。
【0044】
[加熱工程(S20)]
加熱工程は、
図2(c)、
図3(d)、
図4(c)及び
図5(c)で示すように、被膜34が形成された被処理体30を、加熱する工程である。
【0045】
図6に、本実施形態の加熱工程を説明するための概略図を示す。より具体的には、
図6(a)は、被膜形成工程(直)後のレジスト32の上面図の一例であり、
図6(b)は、加熱工程後のレジスト32の上面図の一例である。
【0046】
図6(a)に示されるように、被膜形成工程直後のレジスト32の側面32bの表面は、凹凸を有する。これは、レジストパターン32を形成する際の、露光処理時に被処理体30に照射される光の波動的性質によるものと考えられている。
【0047】
本実施形態において、加熱されたレジスト32は、分子の熱運動が激しくなり、熱膨張すると共に、剛性と粘度が低下して流動性が増す。流動性が増したレジスト32は、エネルギー状態がより安定である、より表面積が小さい形状へと変形しようとするため、その側面32bが平滑化する。このとき、被膜34、被処理体30及びレジスト32の接触部32cは固定されているため、レジスト32の流動性が増してもレジストパターン32は裾引きを起こすことがない。その結果、隣接するレジスト32間のピッチ幅を維持したまま、レジスト32をスムージングすることができる。即ち、本実施形態の半導体装置の製造方法は、処理の前後でレジストパターン32の線幅の変動が小さいプロセスであると言える。なお、前記接触部32cがより強固に固定されるようにするため、被処理体30の露出部30aを完全に覆うように被膜34を形成することが好ましい。
【0048】
また、被膜34は弾性を有するため、レジスト32の平滑化に追従するように被膜34も平滑化する。その結果、レジスト32は、
図6(a)の状態から
図6(b)の状態へと、その側面32bの荒れがスムージングされるように変形する。したがって、LER及びLWR、又は、CERが小さいレジストパターンを形成することができる。
【0049】
加熱方法としては、特に限定されないが、例えばヒータ加熱等の抵抗加熱、ランプ加熱等の輻射加熱、誘導加熱、誘電加熱を用いることができる。
【0050】
なお、レジスト32を加熱する温度としては、レジスト32が炭化しない温度以下の温度であれば、特に制限はないが、レジスト32のガラス転移点以上の温度とすることが好ましい。例えば、レジスト32のガラス転移点が150℃である場合には、約150℃〜300℃に加熱することが好ましい。レジスト32のガラス転移点以上の温度に加熱することにより、レジスト32の流動性がより大きくなり、前述のスムージングの効果がより大きくなるため、好ましい。
【0051】
[その他の工程]
本実施形態の半導体装置の製造方法は、上述の工程に加えて、その他の工程を有していても良い。その他の工程としては、加熱処理後の被処理体を冷却する冷却工程や、加熱処理後の被処理体から被膜を除去する被膜除去工程が挙げられる。
【0052】
本実施形態の半導体装置の製造方法に関わらず、半導体装置の製造過程においては、一般的に、加熱された被処理体30は冷却後に次工程に搬送される。この場合、被処理体30の冷却は、自然冷却でも良いが、冷却モジュールを用いて冷却することが好ましい。特に、レジスト32として化学増幅型レジストを使用する場合、加熱処理の後に速やかに冷却処理を実施しないと、現像線幅が膨らんでしまうという問題が生じることがある。なお、冷却モジュールとしては、レジスト形成時などに使用される、公知のホット/クーリングプレート(CHP)ユニット等を使用することができる。
【0053】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法は、被膜除去工程を含んでも良い。半導体装置の製造過程において、レジスト32が形成された被処理体30は、このレジストパターン32をマスクとして、ドライエッチング処理が施される。被膜形成工程においてコンフォーマルな被膜34を形成した場合には、
図2(d)に示すように、このドライエッチング処理によって被膜34を除去した後、被膜34が除去されて露出したレジスト32をマスクとして、同様に露出した下地膜(被処理体30)をエッチングしても良い。
【0054】
ドライエッチングによる被膜34の除去の代わりの方法として、薬剤を用いた湿式の除去処理によって被膜34を除去しても良い。被膜34を除去する洗浄液としては、水、フッ酸等の酸性水溶液、アルコール等の有機溶媒等を使用することができる。
【0055】
(半導体製造装置)
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を実施可能な、半導体製造装置について、図を参照して説明する。なお、ここでは、レジスト液塗布から現像処理までを一貫して実施するレジストパターン形成モジュールと、被処理体に被膜を形成する成膜モジュールと、レジストを熱処理する加熱モジュールとを有する半導体製造装置を例に挙げて説明する。
【0056】
図7に、本実施形態の半導体製造装置の一例の概略平面図を示し、
図8に同概略斜視図を示し、
図9の同概略側面図を示す。なお、以後、
図7のX軸方向を装置の左右方向とし、Y軸方向を装置の前後方向とし、X軸方向において、
図7の上側を左方とし、下側を右方とし、Y軸方向において、装置の後述するS1側を前方とし、後述するS4側を後方とする。
【0057】
本実施形態の半導体製造装置100は、キャリアブロックS1と、処理ブロックS2と、インターフェイスブロックS3と、露光装置S4とを備える。
【0058】
キャリアブロックS1は、被処理体の一例であるウエハWが1枚又は複数枚密閉収納されたキャリア120を搬入出する領域である。キャリアブロックS1には、キャリア120を複数個載置可能な載置台121と、この載置台121の後方(
図7中、Y方向)の壁面に設けられる開閉部122と、トランスファアームCとが設けられている。
【0059】
トランスファアームCは、開閉部122を介してキャリア120からウエハWを搬出入可能であり、進退自在、昇降自在、鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0060】
キャリアブロックS1の後方には、筐体124にて周囲を囲まれる処理ブロックS2が接続されている。
【0061】
処理ブロックS2には、複数個の単位ブロックが鉛直方向に配列して構成される。
図8で例示する実施形態では、下方側から、レジスト液の塗布処理を行うための第1の単位ブロックB1、レジスト膜の現像処理を行うための第2の単位ブロックB2、前述した本実施形態の被膜形成処理を行う第3の単位ブロックB3、被膜が形成されたウエハを加熱する第4の単位ブロックB4、被膜を除去する第5の単位ブロックB5が割り当てられている。しかしながら、本実施形態の半導体製造装置100は、上述の構成に限定されない。例えば、被膜が形成されたウエハを加熱する第4の単位ブロックB4は、第3の単位ブロックB3の後述するサブモジュールとして設けられていても良い。また、他の単位ブロックが追加で割り当てられていても良い。例えばウエハWに反射防止膜などの下地を形成するための他の単位ブロックが割り当てられていても良い。また、上述の単位ブロックB1〜B5の配置順は他の順番であっても良い。
【0062】
処理ブロックS2の略中央には、キャリアブロックS1とインターフェイスブロックS3とを接続するための、処理ブロックS2の前後方向に伸びるウエハWの搬送領域R1が形成されている。
【0063】
一例として、搬送領域R1の右側には、単位ブロックB1〜B5の各々に対応して、メインの処理を実行するメインモジュールM1〜M5が配置される。また、搬送領域R1の左側には、各々のメインモジュールによるメイン処理の前後に、加熱又は冷却等のサブの処理を実行する1つ又は複数のサブモジュールSb
11〜Sb
5N(Nは1以上の整数)が配置されている。メインモジュールMxに対応するサブモジュールSb
x1〜Sb
xNは、鉛直方向に多段に棚状に配置されていても良いし、処理ブロックS2の前後方向に直列して配置されていても良い。
【0064】
サブモジュールSb
11〜Sb
5Nの具体例としては、ウエハWの位置合わせを行うアライメントユニット(ALIM)、ウエハWの搬出入を行うエクステンションユニット(EXT)、レジスト液塗布後のウエハWのプリベーキング等の加熱処理を行うホットプレートユニット(HP)、冷却処理を行うクーリングプレートユニット(COL)、ウエハWに対して加熱/冷却処理を行うホット/クーリングプレートユニット(CHP)、レジスト液とウエハWとの密着性を向上させるための疎水化処理ユニット(AD)、ウエハWのエッジ部のみを選択的に露光するための周縁露光装置などである。なお、各々のサブモジュールは、公知のユニットを使用することができるため、本明細書では、その詳細な構造の説明を省略する。
【0065】
搬送領域R1には、メインアームA1〜A5が配置されており、各々のメインアームは、単位ブロックB1〜B5の各々のブロック内の全てのモジュール間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。各々のメインアームA1〜A5は、進退自在、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在に構成されている。
【0066】
搬送領域R1のキャリアブロックS1と隣接する領域は、第1のウエハ受け渡し領域R2となっている。領域R2には、
図7に示すように、トランスファアームCと、各々のメインアームA1〜A5とがアクセス可能な位置に、棚ユニットU1が設けられると共に、この棚ユニットU1に対してウエハWの受け渡しを行うための受け渡しアームD1が設けられる。
【0067】
棚ユニットU1は、
図9に示されるように、各単位ブロックB1〜B5のメインアームA1〜A5との間でウエハWの受け渡しを行うように、受け渡しステージTRS1〜TRS5が設けられている。
図9に示す例では、単位ブロックB1〜B5の各々に対して、1個以上例えば2個の受け渡しステージが設けられ、受け渡しステージが多段に積層された受け渡しステージ群が形成されている。
【0068】
受け渡しアームD1は、受け渡しステージTRS1〜TRS5に対してウエハWの受け渡しを行うことができるように、進退自在及び昇降自在に構成されている。
【0069】
搬送領域R1のインターフェイスブロックS3と隣接する領域は、第2のウエハ受け渡し領域R3となっている。領域R3には、
図7に示すように、各々のメインアームA1〜A5がアクセス可能な位置に、棚ユニットU2が設けられると共に、この棚ユニットU2に対してウエハWの受け渡しを行うための受け渡しアームD2が設けられる。
【0070】
棚ユニットU2は、
図9に示されるように、各単位ブロックB1〜B5のメインアームA1〜A5との間でウエハWの受け渡しを行うように、受け渡しステージTRS6〜TRS10が設けられている。
図9に示す例では、単位ブロックB1〜B5の各々に対して、1個以上例えば2個の受け渡しステージが設けられ、受け渡しステージが多段に積層された受け渡しステージ群が形成されている。
【0071】
受け渡しアームD2は、受け渡しステージTRS6〜TRS10に対してウエハWの受け渡しを行うことができるように、進退自在及び昇降自在に構成されている。
【0072】
処理ブロックS2における棚ユニットU2の後方側には、インターフェイスブロックS3が設けられ、インターフェイスブロックS3の後方側には露光装置S4が設けられている。インターフェイスブロックS3には、処理ブロックS2の棚ユニットU2と露光装置S4とに対してウエハWの受け渡しを行うためのインターフェイスアームEが配置されている。
【0073】
インターフェイスアームEは、処理ブロックS2と露光装置S4との間でのウエハWの搬送手段をなすものであり、各単位ブロックB1〜B5の受け渡しステージTRS6〜TRS10に対してウエハWの受け渡しを行う。そのため、インターフェイスアームEは、進退自在、昇降自在、鉛直軸回りに回転自在に構成される。
【0074】
本実施形態の半導体製造装置100は、5段に積層された単位ブロックB1〜B5の間で、受け渡しアームD1と受け渡しアームD2とによって、各々、受け渡しステージTRS1〜5とTRS6〜10を介して、自由にウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0075】
また、本実施形態の半導体製造装置100は、各処理ユニットのレシピの管理や、ウエハWの搬送経路のレシピの管理や、各処理のメインモジュールM1〜M5及びサブモジュールSb
11〜Sb
5Nにおける処理や、メインアームA1〜A5、トランスファアームC、第1及び第2の受け渡しアームD1,D2、インターフェイスアームEの駆動制御を行うコンピュータからなる制御部130を備えている。この制御部130において、単位ブロックB1〜B5を使用してウエハWを搬送させ、処理を行う。
【0076】
上述した本実施形態の半導体製造装置100における、本実施形態の被膜形成工程を実行する成膜モジュールにおける、塗布ユニットの構成について、説明する。
【0077】
図10に、本実施形態の被膜形成工程を実施可能な塗布ユニットの概略構成図の一例を示す。
図10で説明する塗布ユニット140は、後述する第1の実施形態で採用した、スピン塗布法を利用して被膜34を成膜する場合の、塗布ユニットの一例である。また、この塗布ユニットは、上述した
図7〜
図9の半導体製造装置において、被膜形成処理を行う第3の単位ブロックB3のメインモジュールM3に採用することができる。
【0078】
塗布ユニット140は、基板保持部142を有する。基板保持部142は、スピンチャックであり、真空吸着によりウエハWを水平に保持するように構成されている。基板保持部142は、駆動部144により鉛直軸回りに回転可能、かつ、昇降可能に構成されている。また、基板保持部142の周囲には、ウエハWから基板保持部142に上下方向に跨るカップ146が設けられ、このカップ146の底面には、排気管148やドレイン管150等の廃液部が設けられている。
【0079】
塗布ユニット140は、被膜34の前駆体を含む塗布液を供給するためのノズル152を有する。ノズル152は、ウエハWのほぼ回転中心に設けられ、移動機構154により、塗布ユニット140の長さ方向に沿って設けられたガイド部材156に沿って移動自在、かつ、昇降自在に構成されている。
【0080】
また、塗布ユニット140は、メインアームA3の搬送領域に臨む面に形成されたウエハWの搬入出口158を有し、搬入出口158には、開閉シャッタ160が設けられている。
【0081】
本実施形態の半導体装置の製造方法において、予め所定のレジストパターン32が形成されたウエハWは、先ず、メインアームA3により、搬入出口158を介して基板保持部142に受け渡される。そして、駆動部144により基板保持部142を回転させると共に、ノズル152からウエハWのほぼ回転中心に、塗布液を供給する。供給された塗布液は、遠心力によりウエハWの径方向に広がり、塗布液は、レジストパターン32の表面を覆うように供給される。
【0082】
塗布後のウエハWは、塗布液の振り切り処理、乾燥処理を経た後、メインアームA3によって、搬入出口158を介して塗布ユニット140から所定のサブモジュール(例えば
ホット/クーリングプレートユニット等)へと搬出される。そして、焼成処理等が施され、被膜34の形成が終了する。
【0083】
被膜34が形成されたウエハWは、ホット/クーリングプレートユニット等の加熱モジュールによって、好ましくはレジストのガラス転移点以上の温度に加熱され、本実施形態の半導体装置の製造方法を終了する。
【0084】
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置の製造方法が、粗さ特性及び線幅特性に優れたレジストパターンを得られることを実証した実施形態について、説明する。
【0085】
8インチの半導体ウエハ上に、下地膜として反射防止膜(BARC)を成膜した。次に、このBARC上に、レジストを塗布、露光及び現像処理し、所定のレジストパターン(ラインパターン)を得た。なお、レジストは、ガラス転移点が約150℃のものを使用した。このとき、得られたレジストパターンのLERは3.80nmであった。
【0086】
次に、このレジストパターンが形成されたウエハに、上述した塗布ユニット140を用いて、回転数1000rpm、塗布時間10秒の塗布条件でTSAR−100(東京応化工業株式会社製)を塗布した。次に、回転数1000rpm、時間10秒の条件で塗布液を振り切り、回転数2000rpm、時間10秒、次いで、回転数3000rpm、時間10秒の条件で塗布液を乾燥させた。その後、塗布液を焼成して、弾性を有し、かつ、前記レジストと相溶性がない被膜を成膜した。
【0087】
被膜が形成されたウエハに対して、100℃、150℃、200℃又は300℃の温度条件で加熱処理した。次に、加熱したウエハを冷却し、次いで、0.5%のフッ酸水溶液で1分間洗浄することで被膜を除去(剥離)した。被膜除去後のウエハについて、レジストのLERを測定した。
【0088】
図11に、第1の実施形態における、加熱工程の温度とLERとの間の関係を説明するための概略図を示す。
図11における横軸は、加熱工程における熱処理の温度であり、横軸は得られたレジストのLERである。
【0089】
図11に示されるように、弾性を有し、かつ、レジストと相溶性がない被膜を形成した後に、被膜が形成された被処理体を加熱することによって、得られるレジストのLERを低減できることを確認した。
【0090】
また、このLERを低減する効果は、加熱工程における加熱温度を高くするにつれて、大きくなる傾向にあった。特に、加熱工程において、レジストのガラス転移点以上(本実施形態においては約150℃以上)に加熱した実施形態においては、レジストのLERは非常に小さい値となった。これは、より高温、好ましくレジストのガラス転移点以上の温度に加熱することにより、レジストの流動性が大きくなるためである。
【0091】
図12に、第1の実施形態における、ウエハのSEM像の一例を示す。より具体的には、
図12(a)は、レジスト形成後(LER=3.80nm)のウエハの上面SEM像であり、
図12(b)は、被膜形成工程、加熱工程(加熱温度=100℃)及び被膜除去工程を施した後のウエハの上面SEM像であり、
図12(c)は、被膜形成工程、加熱工程(加熱温度=200℃)及び被膜除去工程を施した後のウエハの上面SEM像である。また、
図12(d)は、レジスト形成後(LER=3.80nm)のウエハの斜視SEM像であり、
図12(e)は、被膜形成工程、加熱工程(加熱温度=100℃)及び被膜除去工程を施した後のウエハの斜視SEM像であり、
図12(f)は、被膜形成工程、加熱工程(加熱温度=200℃)及び被膜除去工程を施した後のウエハの斜視SEM像である。
【0092】
また、
図12には、各々の実施形態における、レジストのCD値と、LER値を示している。なお、
図12中の「LLER」は、
図12のSEM像のレジストにおける、左側の側面のLER値を意味する。
【0093】
図12に示されるように、本実施形態の半導体装置の製造方法は、LERを低減可能であると共に、CD値の変動が少ないプロセスであることがわかる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態の半導体装置の製造方法は、形成されるレジストパターンがラインパターンである場合について説明したが、ホールパターンであっても同様の技術を適用可能であり、本発明はこの点において限定されない。