【文献】
E.Topak et al.,"Compact Topside Millimeter-Wave Waveguide-to-Microstrip Transition",IEEE Microwave and Wireless Components Letters,2013年10月17日,Vol.23,No.12,pp.641-643
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ミリ波等の周波数が高い無線通信分野では、伝送損失が少ないという利点を有することから伝送線路として導波管を利用する事が多い。一方で、主要回路部分はマイクロストリップ線路やコプレーナ線路等の平面伝送線路で構成されている。このため、平面伝送線路を伝送される電力と、導波管を伝送される電力とを相互に変換可能な平面伝送線路・導波管変換装置が必要となる。
【0003】
このような平面伝送線路・導波管変換装置としては、例えば、特許文献1および非特許文献1に開示される技術がある。非特許文献1では、整合素子にパッチアンテナを用いて、コプレーナ線路と電磁的に結合し変換を行うため、特許文献1に示されているバックショートと呼ばれる部品を削減し、小型化が可能である。しかし、パッチアンテナを用いるため、比誘電率が2.2の基板でも、比帯域が約3%程度(反射特性<−20dB)であるという問題がある。
【0004】
非特許文献1に示されている式から、以下の関係が導き出される。
【数1】
【0005】
ここで、BWは帯域幅を示し、QはQ(Quality)値を示し、tは基板の厚みを示し、εrは基板の比誘電率を示している。式(1)から、帯域幅は基板厚みに比例し、比誘電率に反比例する事がわかる。つまり、基板が薄く、比誘電率が高い場合には、帯域幅が減少する。
【0006】
ミリ波では、小型化のため、アルミナ等の比誘電率が7〜10程度と高く、かつ、薄い基板を用いることが多い。仮に、特許文献1と同様の方式を採用した場合、電磁界解析を用いて解析すると、基板厚みが同様でも、比帯域が3.2%から0.32%程度まで1/10程度も減少するため、アルミナ基板等の高誘電体で特許文献1のような方式を採用する事が困難となる。
【0007】
このような問題点を解決するために、広帯域化を目的とした技術が開示されている。
【0008】
特許文献2に開示された技術では、整合素子であるパッチアンテナの個数を増やし、それぞれのパッチアンテナを共振周波数から上下にずれた周波数で共振させることで広帯域化を図っている。このような構成によれば、比帯域を3.2%から7.2%まで増加させ、約2.25倍の改善を図ることができる。
【0009】
特許文献3に開示された技術では、導波管と整合素子の間に空洞共振器を設けることで二重共振を発生させ、広帯域化を図っている。このような技術によれば、比帯域を3.2%から7.2%まで増加させ、約2.25倍の改善を図ることができる。
【0010】
特許文献4に開示された技術では、アルミナ基板の高誘電率に起因して生じるコプレーナ線路とパッチアンテナの間の電磁結合の弱体化を、コプレーナ線路とパッチアンテナをスルーホールによって結合することで改善している。このような技術では、60GHzで通過特性が−2.2dB、反射特性が−19.2dBとなっていた。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
(A)実施形態の基本構成の説明
図1は、本発明の実施形態の基本構成を説明するための図である。この
図1に示すように、本発明の実施形態の基本構成では、導波管200、誘電体板210、導体板220、誘電体板230、および、導体板240を有している。なお、導体板220(後述する整合素子222を含む)、誘電体板230、および、導体板240(後述する平面伝送線路242を含む)はこの順に積層されて1枚の積層基板を構成する。ここで、導波管200は、直方体形状を有する金属部材201の中央部に導波路202が形成されて構成される。誘電体板210は、後述するように導波管200の導波路202内に配置される。導体板220は、導電性の板状部材によって構成され、中央に開口部221を有する。開口部221内には導電性の板状部材によって構成される整合素子222が配置されている。また、開口部221の周辺には複数のスルーホール223が形成されている。誘電体板230は、板状の誘電体によって構成され、導体板220に形成された複数のスルーホール223に対応した位置にスルーホール231が複数形成されている。導体板240は短絡板として機能し、中央部に切り込み240aが形成された導電性の板状部材によって構成される。切り込み240aの内部には、線形形状を有する平面伝送線路242が配置される。導体板240の内周には複数のスルーホール241が形成されている。
【0030】
図2は、
図1に示す実施形態の基本構成の各部の詳細な構成例を示す図である。
図2(A)は、
図1に示す誘電体板230上に配置された導体板240の詳細な構成例を示している。この例では、誘電体板230の比誘電率はεrとされ、導体板240に形成されたスルーホール241の直径はφとされ、隣接するスルーホール241の間隔はdとされ、平面伝送線路242の短手方向の幅はwtとされ、平面伝送線路242と切り込み部240aとの間隔はgとされている。
【0031】
図2(B)は、
図1に示す導体板220の詳細な構成例を示している。この例では、導体板220に形成された開口部221の長手方向の長さはaとされ、短手方向の長さはbとされている。また、開口部221内に配置されている整合素子222の幅は、横方向(
図2の横方向)がw1とされ、縦方向(
図2の縦方向)がw2とされている。
【0032】
図2(C)は、
図1に示す実施形態の基本構成を
図1に示すA−Aで切断した場合の断面図の一例を示している。この例では、導体板220と導体板240は、複数のスルーホール223,231,241によって電気的に接続されている。これにより、導体板220と導体板240は同電位になる。また、誘電体板230の厚さはtとされ、平面伝送線路242と整合素子222とが重複する長さはρとされ、誘電体板210の厚さはTとされ、誘電体板210と整合素子222の間隔はLとされている。なお、
図1および
図2は、理解を容易にするための模式図であり、各部の寸法は実際のものとは異なっている。
【0033】
(B)実施形態の基本構成の動作の説明
つぎに、
図1および
図2に示す基本構成の動作について説明する。本発明の基本構成の各部の寸法を以下のように設定した場合の特性をシミュレーションによって求めた。
【0034】
W1:1.085mm
W2:1.085mm
ρ :0.195mm
wt:0.27mm
g :0.1mm
t :0.127mm
a :3.1mm
b :1.55mm
φ :0.2mm
d :0.5mm
T :0.3mm
L :0.1mm
【0035】
以上のようにパラメータを設定し、電界分布のシミュレーションを行った結果を
図3に示す。また、同様にパラメータを設定し、誘電体板210を除外した場合の電界分布をシミュレーションした結果を
図4に示す。
【0036】
図3および
図4とも、
図2(B)において、整合素子222が配置された面における電界分布を示す。
図3および
図4の比較から、本実施形態では、整合素子222の周辺の電界強度が低下している。
【0037】
図5は、導波管200と平面伝送線路242との間の透過量をシミュレーションによって求めたグラフである。なお、この
図5において、実線は、本発明の基本構成において誘電体板210および誘電体板230として、比誘電率が9.9の誘電体(例えば、アルミナ)を用いた場合の透過特性を示し、破線は
図1に示す誘電体板210を有しない従来の構成に対して比誘電率が2.2の誘電体を用いた場合の透過特性を示し、一点鎖線は
図1に示す誘電体板210を有しない従来の構成に対して比誘電率が9.9の誘電体を用いた場合の透過特性を示している。この図に示すように、比誘電率が9.9のアルミナ等の部材を用いた場合、従来の構成では−1.7dBであった透過量を、本実施形態では−0.5dBに改善することができる。このことから、本実施形態では、比誘電率が高い誘電体を使用した場合でも、損失を少なくすることができる。
【0038】
図6は、導波管200と平面伝送線路242との間の反射量をシミュレーションによって求めたグラフである。なお、この
図6において、実線は本発明の基本構成において誘電体板210および誘電体板230として比誘電率が9.9の誘電体を用いた場合の反射特性を示し、破線は
図1に示す誘電体板210を有しない従来の構成に対して比誘電率が2.2の誘電体を用いた場合の反射特性を示し、一点鎖線は
図1に示す誘電体板210を有しない従来の構成に対して比誘電率が9.9の誘電体を用いた場合の反射特性を示している。この図に示すように、比誘電率が9.9のアルミナ等の部材を用いた場合、従来の構成では0.32%であった比帯域(=帯域幅(反射量:−20dB以下)/中心周波数)を、1.5%に改善することができる。このことから、本実施形態では、比誘電率が高い誘電体を使用した場合でも、従来に比較して約4.5倍もの広帯域化を実現することができる。
【0039】
以上に説明したように、本実施形態の基本構成では、整合素子222を挟んで誘電体板230の反対側に誘電体板210を配置したことにより
、損失を少なくするとともに、比帯域を広帯域化することができる。また、誘電体板210と整合素子222の間に空隙を形成して空気による層を配置することで
、損失をさらに少なくするとともに、比帯域をさらに広帯域化することができる。また、本実施形態の基本構成では
、導体板240の切り込み240aに配置された平面伝送線路242と整合素子222とを、互いに接近して配置することに
より広帯域かつ低損失の平面伝送線路・導波管変換装置を得ることができる。
【0040】
なお、以上の例では、T=0.3mmおよびL=0.1mmの場合を例に挙げて説明したが、T=0.3mmおよびL=0mmの場合には比帯域が0.61%になり、T=0.2mmおよびL=0.2mmの場合には比帯域が1.06%になり、T=0.2mmおよびL=0.3mmの場合には比帯域が1.03%になるので、このような設定によっても低損失化および広帯域化を実現することができる。
【0041】
図7は、本発明の第1実施形態に係る平面伝送線路・導波管変換装置の構成例を示す分解斜視図である。また、
図8は、
図7に示す平面伝送線路・導波管変換装置1を矢印B−Bによって切断した場合の断面を示す断面図である。
図7に示すように、本発明の第1実施形態に係る平面伝送線路・導波管変換装置1は、導波管10、積層基板20、金属板
31、および、積層基板40を有している。
【0042】
ここで、導波管10は、直方体形状を有する金属部材11の中央部に導波路12が形成されて構成される。導波管10の上面(
図7の上側の面)には、ネジ51,52の先端が挿入され、これらのネジ51,52を係止するためのネジ穴13,14が形成されている。
【0043】
積層基板20は、表(おもて)面(
図7の上側の面)と、裏面(
図7の下側の面)に導体板22,23がそれぞれ形成された、例えば、比誘電率が9.9程度のアルミナの誘電体板21によって構成される。導体板22には、中央部が導波路12と同じ形状を有する開口部22aが形成されている。
図7の右側に示すように、導体板23にも、中央部に導波路12と同じ形状を有する開口部23aが同様に形成されている。なお、誘電体板21には、開口部は形成されていない。開口部22a,23aの周辺には、複数のスルーホール26が形成されている。この複数のスルーホール26は、導体板22,誘電体板21、および、導体板23を貫通するように形成されている。また、導波管10に形成されたネジ穴13,14に対応する位置には、ネジ穴24,25が形成されている。このネジ穴24,25も導体板22,誘電体板21、および、導体板23を貫通するように形成されている。
【0044】
金属板
31は、導電性を有する板状部材によって構成される。金属板
31の中央部には、導波管10の導波路12に対応する形状を有する開口部32が形成されている。また、導波管10に形成されたネジ穴13,14に対応する位置には、ネジ穴33,34が形成されている。
【0045】
積層基板40は、表面(
図7の上側の面)と、裏面(
図7の下側の面)に導体板42,43がそれぞれ形成された、例えば、比誘電率が9.9程度のアルミナの誘電体板41によって構成される。導体板42は、X方向の幅は誘電体板41よりも狭くなるように構成されるとともに、中央部に切り込み部42aが形成されている。この切り込み部42a内には、切り込み部42aの形状よりも小さい矩形形状を有する導電性の金属部材によって構成された平面伝送線路46が配置されている。
図7の右側に示すように、導体板43には、導波路12と同じ形状を有する開口部43aが形成されている。開口部43aの中央部には、開口部43aよりも小さい面積を有する導電性の金属部材によって構成される整合素子48が配置されている。開口部43aの周辺には、複数のスルーホール47が形成されている。この複数のスルーホール47は、導体板42,誘電体板41、および、導体板43を貫通するように形成されている。また、導波管10に形成されたネジ穴13,14に対応する位置には、ネジ穴44,45が形成されている。このネジ穴44,45も導体板42,誘電体板41、および、導体板43を貫通するように形成されている。
【0046】
以上のような構成を有する、積層基板20、金属板
31、および、積層基板40は、この順番に重ねた状態で、ネジ51,52によって、導波管10にネジ止めされる。
【0047】
この結果、
図8に示すように、導波管10の上側(
図8の上側)には、積層基板20、金属板
31、および、積層基板40が重ねて配置される。積層基板20の導体板22,23は、開口部22a,23aと導波路12が一致するように配置されている。また、金属板
31および積層基板40も開口部32および開口部43aが導波路12と一致するように配置されている。導波路12の突き当たりには、誘電体板21が配置され、さらにその奥には誘電体板41が配置されている。また、誘電体板41の裏側(
図8の下側)には、整合素子48が配置されている。積層基板20に形成された複数のスルーホール26は、導体板22,23を電気的に接続する。積層基板40に形成された複数のスルーホール47は、導体板42,43を電気的に接続する。なお、誘電体板21の厚さはTとされ、また、整合素子48と誘電体板21の間隔はLとされる。また、
図7および
図8は、理解を容易にするための模式図であり、各部の寸法は実際のものとは異なっている。
【0048】
(D)第1実施形態の動作の説明
つぎに、
図7に示す第1実施形態の動作について説明する。第1実施形態では、基本構成と同様にパラメータを設定した場合であって、T=0.3mmおよびL=0.1mmに設定した場合には、電界分布は
図3と同様の状態となる。また、透過特性および反射特性も
図5および
図6に示す実線と同様の特性となる
。第1実施形態の場合も、広帯域化および低損失化を実現することができる。
【0049】
図9は、
図7に示す第1実施形態において、誘電体板41の厚さt=0.1mmとし、装荷する誘電体板21の厚さTと、整合素子48と誘電体板21の間隔をLとした場合に、TとLを変化させた場合の比帯域の変化を示す図である。この図において、列方向はTを示し、この例ではT=0,0.1,0.2,0.3,0.4の場合が示されている。また、行方向はLを示し、この例ではL=0,0.1,0.2,0.3の場合が示されている。なお、T=0は、誘電体板21を有しない場合であり、従来の構成を示している。この例では、T=0の場合の比帯域は0.61%となっている。図中にハッチングが施されている領域は、従来の構成の比帯域0.61%に比較して、特性が改善していることを示している。
【0050】
以上の結果を、変数c(=0.1mm)を用いて表すと、効果が得られるのは以下の範囲であることが明らかになった。
(1)L=0の場合、 T=3c
(2)L=cの場合、 c≦T≦3c
(3)L=2cの場合、 T=2c
(4)L=3cの場合、 T=2c
【0051】
また、Tを基準にすると、効果が得られるのは以下の範囲である。
(5)T=2cの場合、
1c≦L≦
3c
【0052】
以上から、整合素子48を挟んで誘電体板41の反対側に誘電体板21を配置するようにしたので
、損失を少なくするとともに、比帯域を広帯域化することができる。また、誘電体板21と整合素子48の間に空隙を形成して空気による層を配置することで
、損失をさらに少なくするとともに、比帯域をさらに広帯域化することができる。また、整合素子48と誘電体板21の距離Lと、誘電体板21の厚さTが所定の関係を有するように設定することで、比帯域を広帯域化することができる。さらに
、導体板42の切り込み42aに配置された平面伝送線路46と整合素子48とを、互いに接近して配置することにより互いに電磁的に結合させるとともに、誘電体板41以上の厚さを有する誘電体板21を配置することで
、広帯域かつ低損失の平面伝送線路・導波管変換装置を得ることができる。
【0053】
(E)第2実施形態の説明
図10は、本発明の第2実施形態の構成例を示す図である。なお、
図10において、
図7に示す第1実施形態に対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図10に示す第2実施形態では、
図7と比較すると、積層基板20と金属板
31が除外され、積層基板70,80,90が追加されている。また、積層基板40の裏面から導体板43が除外され、整合素子48だけが残されている。さらに、
図12に示す実施形態では、誘電体板41,71,81,91は、例えば、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)等の板状部材によって構成される。
【0054】
ここで、積層基板70は、誘電体板71の表面および裏面に導体板72,73がそれぞれ積層形成され、中央に導波路12に対応する形状の開口部74が導体板72,73および誘電体板71を貫通するように形成されている。また、開口部74の周辺には複数のスルーホール77と、ネジ穴75,76が形成されている。
【0055】
積層基板80は、誘電体板81の表面に導体板82が積層形成されている。導体板82の中央には導波路12に対応する形状の開口部82aが形成されている。なお、誘電体板81には開口部は形成されていない。開口部82aの周辺には複数のスルーホール85と、ネジ穴83,84が形成されている。
【0056】
積層基板90は、誘電体板91の表面に導体板92が積層形成され、中央に導波路12に対応する形状の開口部93が導体板92および誘電体板91を貫通するように形成されている。また、開口部93の周辺には複数のスルーホール96と、ネジ穴94,95が形成されている。
【0057】
以上のような構成を有する、積層基板70〜90および積層基板40は、この順番に重ねた状態で、ネジ51,52によって、導波管10にネジ止めされる。
【0058】
この結果、
図11に示すように、導波管10の上側(
図11の上側)には、積層基板70〜90および積層基板40が重ねて配置される。なお、
図11は、
図10に示す平面伝送線路・導波管変換装置1を矢印C−Cによって切断した場合の断面を示す断面図である。積層基板70は、開口部74と導波管10の導波路12が一致するように配置されている。また、積層基板80は、開口部82aと導波路12が一致するように配置され、積層基板90は、開口部93と導波管10の導波路12が一致するように配置されている。導波路12の突き当たりには、誘電体板81が配置され、さらにその奥には誘電体板41が配置されている。また、誘電体板41の裏側(
図11の下側)には、整合素子48が配置されている。積層基板70,80,90に形成された複数のスルーホール77,85,96は、導体板73,72,82,92を電気的に接続する。積層基板70,80,90,40に形成された複数のスルーホール77,85,96,47は、導体板73,72,82,92,42を電気的に接続する。なお、誘電体板81の厚さはTとされ、また、整合素子48と誘電体板81の間隔はLとされる。また、
図10および
図11は、理解を容易にするための模式図であり、各部の寸法は実際のものとは異なっている。
【0059】
以上に示すような本発明の第2実施形態も、前述した基本構成および第1実施形態と同様に、整合素子48を挟んで誘電体板41の反対側に誘電体板81を配置するようにしたことにより
、損失を少なくするとともに、比帯域を広帯域化することができる。また、誘電体板81と整合素子48の間に空隙を形成して空気による層を配置することで
、損失をさらに少なくするとともに、比帯域をさらに広帯域化することができる。また
、導体板42の切り込み42aに配置された平面伝送線路46と整合素子48とを、互いに接近して配置することにより互いに電磁的に結合させるとともに、誘電体板41以上の厚さを有する誘電体板81を配置することで
、広帯域かつ低損失の平面伝送線路・導波管変換装置を得ることができる。
【0060】
(F)第3実施形態の説明
図12は、本発明の第3実施形態の構成例を示す図である。なお、
図12において、
図7に示す第1実施形態に対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図12に示す第3実施形態では、
図7と比較すると、積層基板20に配置されている平面伝送線路46が平面伝送線路49に置換されている。これ以外の構成は、
図7の場合と同様である。ここで、平面伝送線路49は、その一部の幅が拡大された整合回路49aを有している。このような整合回路49aを設けることで、インピーダンスの整合を図ることができる。
【0061】
図13は、
図12に示す第3実施形態をD−Dで切断した場合の断面図である。
図13に示すように、導波管10の上側(
図13の上側)には、積層基板20、金属板
31、および、積層基板40が重ねて配置される。積層基板20は、開口部22a,23aと、導波管10の導波路12が一致するように配置されている。また、金属板
31および積層基板40も開口部32および開口部43aが導波管10の導波路12と一致するように配置されている。導波路12の突き当たりには、誘電体板21が配置され、さらにその奥には誘電体板41が配置されている。また、誘電体板41の裏側(
図13下側)には、整合素子48が配置されている。積層基板20に形成された複数のスルーホール26は、導体板22,23を電気的に接続する。積層基板40に形成された複数のスルーホール47は、導体板42,43を電気的に接続する。なお、誘電体板21の厚さはTとされ、また、整合素子48と誘電体板21の間隔はLとされる。また、
図12および
図13は、理解を容易にするための模式図であり、各部の寸法は実際のものとは異なっている。
【0062】
以上に示すような本発明の第3実施形態も、前述した基本構成ならびに第1および第2実施形態と同様に、整合素子48を挟んで誘電体板41の反対側に誘電体板21を配置するようにしたことにより
、損失を少なくするとともに、比帯域を広帯域化することができる。また、誘電体板21と整合素子48の間に空隙を形成して空気による層を配置することで
、損失をさらに少なくするとともに、比帯域をさらに広帯域化することができる。また
、導体板42の切り込み42aに配置された平面伝送線路49と整合素子48とを、互いに接近して配置することにより互いに電磁的に結合させるとともに、誘電体板41以上の厚さを有する誘電体板21を配置することで
、広帯域かつ低損失の平面伝送線路・導波管変換装置を得ることができる。
【0063】
(F)第4実施形態の説明
図14は、本発明の第4実施形態の構成例を示す図である。第4実施形態は、パッチアンテナを用いた実施形態で、導波管110および積層基板120を有している。ここで、導波管110は、内部に導波路112を有する直方体形状の金属部材111によって構成される。積層基板120は、誘電体板121の上側(
図14の上側)の面には、整合素子123が中央部に配置され、その周りを囲むように導体板122が配置されている。整合素子123には平面伝送線路124が接続されている。また、積層基板120の下側(
図14の下側)の面には一面に導体板125が形成されている。なお、導体板122と導体板125は図示しないスルーホールによって相互に接続されている。
【0064】
図15は、
図14に示すE−Eで切断した場合の内部構造を示している。この図に示すように、導波管110の導波路112の底部には、誘電体板130が配置されている。なお、この誘電体板130は、例えば、比誘電率が9.9の誘電体(例えば、アルミナ)によって構成される。
【0065】
図16は、
図14に示すE−Eで切断した場合の断面図を示している。この図に示すように、誘電体板130は、整合素子123から距離L離間した位置に配置されている。また、誘電体板130の厚さはTとされている。導体板122と導体板125は、複数のスルーホール126によって電気的に接続されている。これにより、導体板122と導体板125は同電位となる。なお、
図14〜
図16は、理解を容易にするための模式図であり、各部の寸法は実際のものとは異なっている。
【0066】
図17は、第4実施形態の電界分布のシミュレーションの結果を示す図である。また、
図18は、
図14に示す構成から誘電体板130を除外した場合の電界分布のシミュレーションの結果を示す図である。
図17および
図18とも、整合素子123が配置された面における電界分布を示す。これらの
図17および
図18の比較から、第4本実施形態では、電界の強度が低くなっている。
【0067】
図19は、第4実施形態の透過特性を示す図である。この図において実線は第4実施形態の透過特性を示し、破線は従来技術(誘電体板130を除外した場合)の透過特性を示している。この図に示すように、第4実施形態では、誘電体板130を用いない場合に比較して、透過特性を1dB程度改善することができる。
【0068】
図20は、第4実施形態の反射特性を示す図である。この図において実線は第4実施形態の反射特性を示し、破線は従来技術の反射特性を示している。この図に示すように、第4実施形態では、誘電体板130を用いない場合に比較して、反射特性を約2倍程度広帯域化することができる。
【0069】
以上に説明したように、第4実施形態の場合でも、前述した基本構成ならびに第1、第2、および、第3実施形態と同様に、整合素子123を挟んで誘電体板121の反対側に誘電体板130を配置するようにした
。これにより、損失を少なくするとともに、比帯域を広帯域化することができる。また、誘電体板130と整合素子123の間に空隙を形成して空気による層を配置することで
、損失をさらに少なくするとともに、比帯域をさらに広帯域化することができる。
【0070】
(E)変形実施形態の説明
以上の各実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、基本実施形態では、誘電体板210は、アルミナとしたが、これ以外の誘電体を用いるようにしてもよい。また、誘電体板210と、誘電体板230の間は空気を満たした状態としたが、空気以外のガス(例えば、希ガス等)を満たすようにしてもよい。もちろん、液体の誘電体を満たすようにしてもよい。
【0071】
また、基本構成において各部の寸法を示したが、この寸法は一例であって、これらの数値のみに本発明が限定されるものではなく、目的に応じて寸法を変更するようにしてよい。
【0072】
また、第1実施形態では、
図9に示すように誘電体板21の厚さTと、整合素子48と誘電体板21の距離Lを変化させた場合の比帯域の変化を調べたが、
図9の結果は、誘電体板21としてアルミナを用い、また、前述した寸法の場合の例であるので、これ以外の寸法および誘電体を用いた場合には、これ以外の結果になる場合もあることはもちろんである。