(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239479
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】暗視野顕微鏡及び照明方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/10 20060101AFI20171120BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G02B21/10
G01N21/17 N
G01N21/17 A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-200623(P2014-200623)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-71162(P2016-71162A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】油屋 吉宏
(72)【発明者】
【氏名】納谷 昌之
【審査官】
瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−524174(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0306039(US,A1)
【文献】
特開2007−171186(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0146701(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0321696(US,A1)
【文献】
特開2004−163257(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0280404(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/038502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 − 21/36
G01N 21/00 − 21/01
G01N 21/17 − 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成され、一の面に蛍光色素及びポリマーを含む蛍光体と試料とが載置される導光部材と、
前記導光部材に載置された蛍光体に照射される励起光を出射する光源と、
試料を観察するための観察光学系とを備え、
前記励起光が前記蛍光体に照射されることで発生した蛍光は、導光部材内を全反射しつつ前記試料が載置された位置まで伝搬し、前記試料は、前記蛍光のエバネッセント光で照明され、
前記観察光学系は、前記励起光の波長の光を遮断し、前記蛍光の波長の光を透過する波長フィルタを含み、
前記導光部材は、端面のうちで、前記試料及び前記蛍光体が載置される面と、該試料及び蛍光体が載置される面に対向する面とを除く面の少なくとも1つに反射部材を有する、
暗視野顕微鏡。
【請求項2】
前記蛍光体と前記試料との間に、光源から出射した励起光、前記蛍光体から発せられた蛍光のうちで前記導光部材と反対側に放射したもの、及び、前記導光部材に入射した蛍光のうちで前記導光部材の界面で全反射せずに外部に出射したものの少なくとも1つが前記試料に入射するのを防ぐ遮光部を更に有する請求項1に記載の暗視野顕微鏡。
【請求項3】
前記遮光部は、前記導光部材の一の面に載置され、前記蛍光体を囲む筒状の遮光部と前記試料を囲む筒状の遮光部とのうちの少なくとも一方を含む請求項2に記載の暗視野顕微鏡。
【請求項4】
前記蛍光体を載置する位置と前記試料を載置する位置との間の距離が5mm以上50mm以下である請求項1から3何れか1項に記載の暗視野顕微鏡。
【請求項5】
前記反射部材は、前記導光部材の端面のうちで、前記試料及び前記蛍光体が載置される面と、該試料及び蛍光体が載置される面に対向する面とを除く面を取り囲む請求項1に記載の暗視野顕微鏡。
【請求項6】
前記反射部材は銀又はアルミニウムで形成される請求項1から5何れか1項に記載の暗視野顕微鏡。
【請求項7】
前記観察光学系は対物レンズを含み、該対物レンズは、前記導光部材の試料が載置される一の面とは反対側の面に配置される請求項1から6何れか1項に記載の暗視野顕微鏡。
【請求項8】
前記観察光学系は共焦点光学系を含む請求項1から7何れか1項に記載の暗視野顕微鏡。
【請求項9】
板状に形成され、一の面に蛍光色素及びポリマーを含む蛍光体と試料とを載置する導光部材の前記蛍光体が配置される個所に励起光を照射し、前記励起光が前記蛍光体に照射されることで発生した蛍光が導光部材内を全反射しつつ前記試料が載置された位置まで伝搬することにより生じるエバネッセント光により前記試料を照明し、
前記導光部材は、端面のうちで、前記試料及び前記蛍光体が載置される面と、該試料及び蛍光体が載置される面に対向する面とを除く面の少なくとも1つが反射可能であるように構成されている、
試料照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視野顕微鏡及び照明方法に関し、更に詳しくは、エバネッセント光により試料を照明する暗視野顕微鏡及び照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡の一種として、対物レンズに直接に照明光が入射しないように試料を照明し、試料が散乱した光を観察する暗視野顕微鏡が知られている。暗視野顕微鏡は、生体細胞などの屈折率差が小さいものを非染色で観察することができるという利点がある。暗視野顕微鏡として、暗視野専用の暗視野コンデンサ対物レンズを用いた対物レンズ利用型暗視野顕微鏡が知られている。一般に、暗視野コンデンサ対物レンズは高価であり、装置の低コスト化が困難である。
【0003】
暗視野顕微鏡の別の種類として、プリズム型暗視野顕微鏡も知られている。プリズム型暗視野顕微鏡では、光学系がプリズムを利用して構成されており、プリズムを介してレーザ光をカバーガラスに導入することで全反射をカバーガラス(導波路コア)界面に発生させ、その照明領域を対物レンズで観察する。プリズム型暗視野顕微鏡では、暗視野コンデンサ対物レンズなどの高価な光学素子は不要であり、装置の低コスト化が可能である。
【0004】
しかしながら、プリズム型暗視野顕微鏡でも、プリズムを利用することが必要であるし、全反射角となるように光を入射して導波させることが必要であることから、光学系の構成が複雑になる。また、光学設計に、非常に高精度な設計が求められる。これら問題に対しては、プリズムを用いずに光導波路コアに光を導入する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、光導波路コアに接するように液滴が配置され、その液滴内に光ファイバの先端が挿入される。光源から発射された光は、光ファイバの先端から液滴を介して光導波路コア内に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−163257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1では、光源から導波路コアに入射する光の波長と、導波路コアの界面で発生するエバネッセント光の波長とは同じである。つまり、光源の出射光の波長と、試料の照明光の波長とが同じである。光源の出射光が対物レンズなどを含む観察光学系に回り込むことがあり、観察する画像のSN比(Signal to Noise Ration)が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、観察する画像のSN比を向上させることが可能な暗視野顕微鏡及び試料照明方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、板状に形成され、一の面に蛍光色素及びポリマーを含む蛍光体と試料とが載置される導光部材と、導光部材に載置された蛍光体に照射される励起光を出射する光源と、試料を観察するための観察光学系とを備え、励起光が前記蛍光体に照射されることで発生した蛍光は、導光部材内を全反射しつつ試料が載置された位置まで伝搬し、試料は、蛍光のエバネッセント光で照明され、観察光学系は、励起光の波長の光を遮断し、蛍光の波長の光を透過する波長フィルタを含む暗視野顕微鏡を提供する。
【0009】
本発明の暗視野顕微鏡では、蛍光体と試料との間に、光源から出射した励起光、蛍光体から発せられた蛍光のうちで導光部材と反対側に放射したもの、及び、導光部材に入射した蛍光のうちで導光部材の界面で全反射せずに外部に出射したものの少なくとも1つ光が試料に入射するのを防ぐ遮光部を更に有することが好ましい。
【0010】
遮光部は、導光部材の一の面に載置され、蛍光体を囲む筒状の遮光部と試料を囲む筒状の遮光部とのうちの少なくとも一方を含むこととすることができる。
【0011】
導光部材において、蛍光体を載置する位置と試料を載置する位置との間の距離が5mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0012】
導光部材は、その端面のうちで、試料及び蛍光体が載置される面と、その載置面に対向する面とを除く面の少なくとも1つに反射部材を有していてもよい。
【0013】
上記反射部材は、導光部材の端面のうちで、試料及び蛍光体の載置面と、その載置面に対向する面とを除く面を取り囲むことが好ましい。
【0014】
上記反射部材は例えば銀又はアルミニウムで形成できる。
【0015】
観察光学系は対物レンズを含み、対物レンズは、導光部材の試料が載置される一の面とは反対側の面に配置されることが好ましい。
【0016】
観察光学系は共焦点光学系を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明は、板状に形成され、一の面に蛍光色素及びポリマーを含む蛍光体と試料とを載置する導光部材の蛍光体が配置される個所に励起光を照射し、励起光が蛍光体に照射されることで発生した蛍光が導光部材内を全反射しつつ試料が載置された位置まで伝搬することにより生じるエバネッセント光により試料を照明する試料照明方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の暗視野顕微鏡及び試料照明方法では、導光部材に蛍光体と試料とを載置し、蛍光体に励起光を照射して蛍光を発生させ、蛍光が導光部材を全反射しながら導光されることで生じるエバネッセント光により試料を照明する。この場合、励起光の波長とエバネッセント光の波長とが異なるため、試料を励起光の波長とは異なる波長の光で照明できる。本発明の暗視野顕微鏡では、観察光学系に含まれる波長フィルタによって励起光と試料の照明光とを容易に分離することができ、観察する画像のSN比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の暗視野顕微鏡を示すブロック図。
【
図3】蛍光が導光部材を伝搬する様子を示す断面図。
【
図4】導光部材の一面側に載置された試料と蛍光体とを示す断面図。
【
図5】比較例のダークライト顕微鏡を示すブロック図。
【
図6】端部に反射部材を有する導光部材を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の暗視野顕微鏡を示す。暗視野顕微鏡(エバネッセント散乱光顕微鏡)10は、光源11、ミラー12、導光部材13、対物レンズ14、ミラー15、レンズ16、ピンホール17、レンズ18、波長フィルタ19、レンズ20、及び受光部21を有する。導光部材13には、試料40と蛍光体41とが載置される。
【0021】
光源11は、蛍光体41に照射される励起光を出射する。光源11は、例えばレーザ光(連続光)を出射するレーザ光源である。励起光の出力は、例えば20mW〜40mWである。光源11から出射した励起光は、ミラー12で反射して蛍光体41に照射される。励起光の照射の仕方は任意であり、例えばミラー12を用いるのに代えて、光源11から出射した光を光ファイバを用いて導光し、光ファイバから蛍光体41に照射してもよい。光源11から出射した励起光を、蛍光体41に直接に照射してもよい。
【0022】
蛍光体41は、蛍光色素とポリマーとを含む。蛍光色素には、例えばローダミン6Gを用いることができる。ポリマーは、ポリマー種を溶媒で溶かしたものである。ポリマー種には、PMMA−EA(Poly(methyl methacrylate-co-ethyl acrylate))、PS(Polystyrene)、PS(Polycarbonate)、PVC(Polyvinyl chloride)、PMMA(Polymethyl methacrylate)、及びPS−PMMA(Polystyrene - Polymethyl methacrylate)などを用いることができる。溶媒には、トルエン、ジクロロエタン、及びクロロホルムなどを用いることができる。
【0023】
導光部材13は、板状に形成された透明基板である。導光部材13の材料には、例えばガラスが用いられる。通常のスライドガラスを導光部材13として用いてもよい。導光部材13の表面は、できるだけ凹凸がないことが好ましい。導光部材13の屈折率は例えば1.48から1.49程度である。導光部材13の一の面に、試料40と蛍光体41とが載置される。
【0024】
図2は、蛍光体41に対する励起光の照射を示している。蛍光体41に励起光が照射されると、蛍光体41は蛍光を発生する。蛍光体41から発生する蛍光の波長は、励起光の波長とは異なる。
【0025】
図3は、蛍光が導光部材13を伝搬する様子を示す。蛍光体41から発生した蛍光のうち、全反射条件を満たす角度成分の光が導光部材13内を全反射しながら伝搬する。これにより、導光部材13の表面にエバネッセント光が生じる。蛍光は、導光部材13内を全反射しつつ試料40が載置された位置まで伝搬され、導光部材13表面のエバネッセント光により試料40が照明される。
【0026】
蛍光体41から発生した蛍光のうち、全反射条件で導光部材13の界面に入射しない光の成分は、導光部材13から外部に出射し、試料40の位置まで伝搬するものはわずかである。また、光源11から出射した励起光は、そのほとんどが導光部材13をまっすぐ透過し、試料40の位置まで伝搬するものはごくわずかである。
【0027】
図4は、導光部材13の一面側に載置された試料40と蛍光体41とを示す。試料40と蛍光体41との間の距離dがあまり近すぎると、蛍光体41で発生した蛍光のうちで導光部材13の界面で全反射しない光の成分が、導光部材13から出射して、試料40や対物レンズ14に入射することがある。一方で、試料40と蛍光体41とが離れすぎていると、試料40を照明するエバネッセント光が弱くなる。試料40と蛍光体41との間の距離dは、5mm以上50mm以下が好ましい。距離dは、8mm以上20mm以下がより好ましい。距離dは、例えば試料40の中心線と、蛍光体41の中心線との間の距離と定義できる。
【0028】
ここで、蛍光体41に含まれるポリマーの量によっては、蛍光体41の形状が適切ではなくなり、蛍光体41で発生した蛍光が導光部材13の界面で全反射せず、従ってエバネッセント光が発生しないことがある。ポリマーの量は、蛍光体41で発生した蛍光に導光部材13を全反射する成分が含まれるように設定されることが好ましい。ポリマーの分子量は、用いるポリマー種によって適宜選定される。本発明者らが行った実験によれば、ポリマー種にPSを用いた場合は分子量280,000のとき、PMMAを用いた場合は分子量350,000のとき、PVCを用いた場合は分子量1,100,000のとき、PS−PMMAを用いた場合は分子量82,000のとき、エバネッセント光を発生させることができた。一方で、ポリマー種にPMMA−EAを用いた場合は分子量101,000のとき、PSを用いた場合は分子量35,000のとき、PMMAを用いた場合は分子量120,000のとき、PVCを用いた場合は分子量25,000のとき、PS−PMMAを用いた場合は分子量23,000のとき、エバネッセント光を発生させることができなかった。この実験から、ポリマー種の分子量は36,000〜1,100,000が適当である。
【0029】
図1に戻り、対物レンズ14、ミラー15、レンズ16、ピンホール17、レンズ18、波長フィルタ19、レンズ20、及び受光部21は、試料40を観察するための観察光学系を構成する。以下に説明する観察光学系は一例であり、観察光学系の構成は特に限定されない。本実施形態の暗視野顕微鏡における観察光学系の構成は、通常の顕微鏡における観察光学系の構成と同様でよい。
【0030】
試料40により散乱した散乱光は、対物レンズ14に入射する。一例として、対物レンズ14には倍率20倍のものが用いられる。対物レンズ14は、好ましくは導光部材13の試料40が載置された面の反対側に配置される。対物レンズ14の配置は特に限定されず、対物レンズ14が導光部材13の試料40が載置された面側に配置されていてもよい。対物レンズ14に入射した光は、ミラー15で反射してレンズ16に入射する。
【0031】
ピンホール17は、レンズ16の焦点距離の位置、及びレンズ18の焦点距離に配置されており、レンズ16、ピンホール17、及びレンズ18は共焦点光学系22を構成する。一例として、レンズ16の焦点距離は50mmであり、レンズ18の焦点距離は45mmである。共焦点光学系22を透過した光は、波長フィルタ19に入射する。波長フィルタ19は、光源11から出射した励起光を透過させず、蛍光体41で発生した蛍光を透過させる。波長フィルタ19は、少なくとも励起光を減衰させればよく、励起光の波長の光を完全に遮断することまでは要しない。波長フィルタ19を通った光は、レンズ20を介して受光部21で受光される。一例として、レンズ20の焦点距離は75mmである。受光部21には、例えばCCD(Charge Coupled Device)撮像デバイスが用いられる。ミラー15を用いずに、対物レンズ14の光軸上に、共焦点光学系22、波長フィルタ19、レンズ20、及び受光部21を並べて配置してもよい。
【0032】
なお、波長フィルタ19は、観察光学系において、受光部21に至る経路に挿入されていればよく、波長フィルタ19の位置は、上記した位置、すなわちレンズ18とレンズ20との間には限定されない。波長フィルタ19は、レンズ20と受光部21との間に配置されていてもよし、レンズ16とピンホール17との間、又はピンホール17とレンズ18との間に配置されていてもよい。波長フィルタ19は、受光部21から見て近い位置に設けられることが好ましい。
【0033】
試料40と蛍光体41の載置面には、蛍光体41を取り囲む中空の筒状の遮光部45と、試料40を取り囲む中空の筒状の遮光部46とを載置してもよい。遮光部45及び遮光部46は、遮光性を有する材料で形成される。試料の観察に際してノイズ光となる成分には、以下の3つの成分が考えられる。1つ目は、光源11の出射光、つまり蛍光に変換されなかった光である。2つ目は、蛍光に変換されたが、導光部材13に入射せず、後方(導光部材13と反対側)に放射した光である。蛍光はランバーシアンに放射し、後方に放射した光はノイズ光となる。3つ目は、蛍光に変換され、導光部材13に入射したが、導光部材13の界面で全反射せず、導光部材13から外部に出射した光である。遮光部45及び遮光部46は、これらノイズ光を抑制するために設けられる。
【0034】
なお、
図1では、蛍光体41を取り囲む遮光部45と試料40を取り囲む遮光部46とを用いる例を示したが、遮光部45及び遮光部46のうちの一方は省略してもよい。また、遮光部は、光源11の出射光、蛍光体41から後方に放射した光、及び導光部材13から出射した蛍光の少なくとも1つが試料40に入射するのを防げばよく、必ずしも試料40及び蛍光体41を取り囲んでいる必要はない。遮光部は、少なくとも試料40と蛍光体41との間に設けられていればよい。
【0035】
ここで、比較例として、光源の出射光を全反射させてエバネッセント光を発生させる暗視野顕微鏡(ダークライト顕微鏡)を説明する。
図5は、比較例のダークライト顕微鏡を示す。光源51から出射した光は、スライドガラス52に全反射条件で入射し、スライドガラス52の表面にエバネッセント光が発生する。スライドガラス52上には散乱体である観察物55が載置されており、CCD54は、観察物55で散乱した光を検出する。CCD54には、光源51から出射した光の一部が、直接に又はどこかで反射して入射することがある。観察物55にて生じた散乱光の波長は、光源51の出射光の波長と同一であり、光源51から入射した光と観察物55の散乱光とを分けることができない。
【0036】
本実施形態では、板状の導光部材13に試料40と蛍光体41とを載置し、蛍光体41に光源11が出射した励起光を入射させる。蛍光体41で発生した蛍光は、導光部材13を全反射しつつ試料40が載置された位置まで伝搬され、試料40は、蛍光が導光部材13を全反射することで発生したエバネッセント光で照明される。このような試料40の照明方法を採用することで、光源11の出射光の波長とは異なる波長のエバネッセント光で試料40を照明することができる。仮に光源11を出射した励起光が対物レンズ14以降の観察光学系に入射したとしても、波長フィルタ19を用いることで、試料40の散乱光から励起光を容易に分離可能である。これにより、光源11から出射した励起光によるノイズ成分を抑え、観察する画像のSN比を向上させることが可能となる。本実施形態では、プリズムを用いなくてもエバネッセント光を発生させることができ、光学系が複雑にならず、高精度な光学設計が要求されないという効果もある。本実施形態では、観察光学系は通常の顕微鏡と同様であり、簡易な構成で暗視野画像を得ることができる。また、遮光部により試料40に入射するノイズ光を抑制することで、観察画像のSN比を更に向上できる。
【0037】
なお、導光部材13は、端面のうちで、試料40及び蛍光体41が載置される面と、その載置面に対向する面とを除く面の少なくとも1つに反射部材を有していてもよい。
図6は、端面に反射部材を有する導光部材の上面図である。導光部材13は、その側面、つまり、試料40及び蛍光体41の載置面とそれに対向する面を除く4つの面に反射部材23を有する。反射部材23は、側面を取り囲むことが好ましい。反射部材23は、光反射率が高い材料、例えば銀やアルミニウムなどの金属で形成される。導光部材13内を全反射しつつ一方の端部側に伝搬した光は、反射部材23で反射して逆向きに伝搬する。反射部材23を設けることで、導光部材13内に光を閉じ込める効果を高めることができ、エバネッセント光を増強させることが可能となる。
【0038】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の暗視野顕微鏡及び試料照明方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
10:暗視野顕微鏡
11:光源
12:ミラー
13:導光部材
14:対物レンズ
15:ミラー
16:レンズ
17:ピンホール
18:レンズ
19:波長フィルタ
20:レンズ
21:受光部
22:共焦点光学系
23:反射部材
40:試料
41:蛍光体
45、46:遮光部