特許第6239484号(P6239484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239484光学フィルム、偏光板、画像表示装置、および、光学フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239484
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】光学フィルム、偏光板、画像表示装置、および、光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20171120BHJP
   G02B 1/12 20060101ALI20171120BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02B1/12
   B32B27/18 Z
【請求項の数】11
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-220014(P2014-220014)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-85424(P2016-85424A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】安藤 広敏
(72)【発明者】
【氏名】沖 和宏
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/084008(WO,A1)
【文献】 特開2013−103719(JP,A)
【文献】 特開2010−026222(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/024683(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/026454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00/5/136;5/30
G02B 1/10−1/18
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム支持体の一方の面に光学機能層を有し、
前記透明フィルム支持体の他方の面に、100nm以下の粒子径で、かつ粒子径の30%以上90%未満が、前記透明フィルム支持体内に入り込んだ粒子を備え、
前記透明フィルム支持体の膜厚方向に、前記透明フィルム支持体の他方の面の表面から前記透明フィルム支持体の中央部までに存在する粒子全体の数に対し、前記粒子の数が70%以上であり、
前記透明フィルム支持体の他方の面の表面形状曲線の中心面から20nm以上の高さを有する突起の数が1mmあたり1×10個以上である光学フィルム。
【請求項2】
前記透明フィルム支持体は、コア層と前記コア層の少なくとも片側に形成された外層と、を有する2層以上の層で形成されている請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記光学機能層は、液晶材料の配向状態を固定した層を有する請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光学機能層は、前記液晶材料の配向状態を固定した層と前記透明フィルム支持体との間に中間膜を備える請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記液晶材料の配向状態を固定した層は、前記液晶材料がホメオトロピック配向した状態で固定化された層である請求項3または4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記液晶材料の配向状態を固定した層は、前記液晶材料がホモジニアス配向した状態で固定化された層である請求項3または4に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記液晶材料の配向状態を固定した層は、前記液晶材料がツイスト配向した状態で固定化された層である請求項3または4に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムを有する偏光板。
【請求項9】
請求項8に記載の偏光板を有する画像表示装置。
【請求項10】
透明フィルム支持体に光学機能層を形成する工程と、
粒子径が100nm以下の粒子を、前記透明フィルム支持体が溶解、または、膨潤する溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、
前記分散液を、前記透明フィルム支持体の前記光学機能層の反対側の面に塗布する工程と、
前記透明フィルム支持体の膜厚方向に、前記透明フィルム支持体の他方の面の表面から前記透明フィルム支持体の中央部までに存在する粒子全体の数に対し、前記透明フィルム支持体に前記粒子の70%以上が、粒子径の30%以上90%未満が入り込んだ状態で前記分散液を乾燥する乾燥工程と、を有する光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記透明フィルム支持体は、2層以上の層を共流延方法により積層して形成する請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、偏光板、画像表示装置、および、光学フィルムの製造方法に係り、特に、ブロッキングの低減とリワーク性に優れた光学フィルム、および、光学フィルムの製造方法に関する。更に、この光学フィルムを有する偏光板、および、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示装置は、テレビ用途としては大画面化が求められ、1.3m以上の幅広フィルムが必要となってきている。また、携帯電話やノートパソコン用として基材(支持体)厚みが80μm以下の薄い基材が使用されるようになってきている。
【0003】
このように、液晶表示装置の大サイズ化のため、フィルムの基材が幅広となった場合、または、薄膜化のため、基材の厚みを薄くした場合、基材上にハードコート層や反射防止層、光学異方性層等の機能性層を形成して光学フィルムを作成した後、ロールを巻き取る際、フィルム同士の密着性が高いとブロッキングが発生することがある。ブロッキングが発生すると、巻き形状の悪化が生じたり、円周上に黒い帯状に見えるブラックバンドが発生していた。また、酷い場合には変形が生じ、収率の低下を招くばかりではなく、液晶表示装置への適応ができなくなることがあった。
【0004】
ブロッキングを防止するため、フィルム自体やバックコート層に微粒子を添加してフィルム表面に微小な凹凸をつけ、表面の摩擦係数を小さくすることが行われている。特に、バックコート層(塗布面側の層とは反対側の層)を形成する様々な技術が開示されている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1には、セルロースエステルと粒子を溶剤に溶解させた塗布液を、基材の裏面に塗布し、バックコート層を形成した光学フィルムが記載されている。このようにして形成された光学フィルムによれば、バックコート層の表面に微小な凹凸が形成され、ブロッキングを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−266231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、液晶表示装置は、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板は、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性材料からなる偏光子の両面に、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂フィルムを用いた偏光子保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せたものが用いられている。
【0008】
支持体にバックコート層を形成したフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、支持体とバックコート層との界面の密着が弱いと、偏光子と偏光子保護フィルムとの接着性が十分に発現しないことがある。また、偏光子と偏光子保護フィルムとの貼り合わせ時にシワが入った場合、偏光子から偏光子保護フィルムを剥がし、再度、偏光子保護フィルムを貼り直すことを行う。この貼り直しのことをリワーク性という。ここで、支持体とバックコート層との界面の密着性が弱いと、偏光子から偏光子保護フィルムを剥がした際に、支持体とバックコート層との界面で剥離することがある。この場合、偏光子保護フィルムのバックコート層が偏光子に貼り合わされた状態で剥離され、偏光子の粘着層ではなく、偏光子保護フィルムのバックコート層が表面にでることになる。したがって、再度、偏光子保護フィルムを貼り直したとしても、偏光子に貼り付かなくなり、リワーク性が悪化するという課題があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、フィルムの巻き取り時に発生するブロッキング等の故障を回避しつつ、偏光子保護フィルムとして使用したときの偏光子との接着性やリワーク性が向上した光学フィルム、偏光板、画像表示装置、および、光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、透明フィルム支持体の一方の面に光学機能層を有し、透明フィルム支持体の他方の面に、100nm以下の粒子径で、かつ粒子径の30%以上90%未満が、透明フィルム支持体内に入り込んだ粒子を備え、透明フィルム支持体の膜厚方向に、透明フィルム支持体の他方の面の表面から透明フィルム支持体の中央部までに存在する粒子全体の数に対し、100nm以下の粒子径で、かつ粒子径の30%以上90%未満が、透明フィルム支持体内に入り込んだ粒子の数が70%以上であり、透明フィルム支持体の他方の面の表面形状曲線の中心面から20nm以上の高さを有する突起の数が1mmあたり1×10個以上である光学フィルムを提供する。
【0011】
本発明によれば、突起の数を1mmあたり1×10個以上とすることで、ブロッキングを抑制することができる。また、粒子の配置を、100nm以下の粒子径の30%以上90%未満が、透明フィルム支持体内に入り込んで配置させているので、透明フィルム支持体の光学機能層と反対の面で偏光子に貼り付け、剥離を行っても、偏光子と透明フィルム支持体の界面で剥離することができ、リワーク性を向上させることができる。
【0012】
本発明の別の態様においては、透明フィルム支持体は、コア層とコア層の少なくとも片側に形成された外層と、を有する2層以上の層で形成されていることが好ましい。
【0013】
この態様によれば、透明フィルム支持体をコア層と外層の2層以上の層で形成することで、コア層と外層で材料等を変更することで、異なる機能、または、物性を付与することができる。
【0014】
本発明の別の態様においては、光学機能層は、液晶材料の配向状態を固定した層を有することが好ましい。
【0015】
この態様によれば、光学機能層が、液晶材料の配向状態を固定した層を有することで、偏光子保護フィルムとして用いることができる。
【0016】
本発明の別の態様においては、光学機能層は、液晶材料の配向状態を固定した層と透明フィルム支持体との間に中間膜を備えることが好ましい。
【0017】
この態様によれば、液晶材料の配向状態を固定した層と透明フィルム支持体との間に中間膜を備えることで、液晶材料の配向状態を固定した層において、液晶材料を効果的に配向させることができる。
【0018】
本発明の別の態様において、液晶材料の配向状態を固定した層は、液晶材料がホメオトロピック配向した状態で固定化された層であることが好ましい。
【0019】
本発明の別の態様において、液晶材料の配向状態を固定した層は、液晶材料がホモジニアス配向した状態で固定化された層であることが好ましい。
【0020】
本発明の別の態様において、液晶材料の配向状態を固定した層は、液晶材料がツイスト配向した状態で固定化された層であることが好ましい。
【0021】
これらの態様は、液晶材料の配向状態を限定したものであり、上記の配向状態を好ましく用いることができる。
【0022】
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の光学フィルムを有する偏光板を提供する。
【0023】
上記記載の光学フィルムは、偏光板に好適に用いることができる。
【0024】
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の偏光板を有する画像表示装置を提供する。
【0025】
上記記載の偏光板は画像表示装置に好適に用いることができる。
【0026】
本発明は前記目的を達成するために、透明フィルム支持体に光学機能層を形成する工程と、粒子径が100nm以下の粒子を、透明フィルム支持体が溶解、または、膨潤する溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、分散液を、透明フィルム支持体の光学機能層の反対側の面に塗布する工程と、透明フィルム支持体の膜厚方向に、透明フィルム支持体の他方の面の表面から透明フィルム支持体の中央部までに存在する粒子全体の数に対し、透明フィルム支持体に粒子の70%以上が、粒子径の30%以上90%未満入り込んだ状態で分散液を乾燥する乾燥工程と、を有する光学フィルムの製造方法を提供する。
【0027】
本発明によれば、透明フィルム支持体が溶解、または、膨潤する溶媒に粒子を分散させた分散液を、透明フィルム支持体に塗布することで、透明フィルム支持体上に、新たに膜を形成することなく凹凸を形成することができる。したがって、形成された膜のリワーク性を向上させることができる。また、粒子径の30%以上90%未満が入り込んだ粒子を透明フィルム支持体の膜厚方向に、透明フィルム支持体の他方の面の表面から透明フィルム支持体の中央部までに存在する粒子全体数の70%とすることで、透明フィルム支持体表面に凹凸を形成することができ、ブロッキングを抑制することができる。
【0028】
本発明の別の態様において、透明フィルム支持体は、2層以上の層を共流延方法により積層して形成することが好ましい。
【0029】
この態様によれば、透明フィルム支持体を2層以上の層で形成することで、それぞれの層に異なる機能、または、物性を付与することができる。また、2層以上の層を共流延方法により積層して形成することで、各層の密着性を向上させることができるので、偏光子への貼り付け、剥離を行っても透明フィルム支持体の層の間で剥離することを防止することができ、リワーク性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光学フィルム、偏光板、画像表示装置、および、光学フィルムの製造方法によれば、透明フィルム支持体の光学機能層と反対側の面に粒子により凹凸を形成することができるので、巻き取り時にフィルム同士が密着することを防止することができ、ブロッキングを防止することができる。また、粒子を透明フィルム支持体に入り込ませることで、凹凸を形成しているので、凹凸を形成するために、新たに膜を形成することなく凹凸を形成することができるので、リワーク性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】光学フィルムの構成を示す断面図である。
図2】光学フィルムの他の構成を示す断面図である。
図3】従来の光学フィルムの課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って、本発明に係る光学フィルム、該光学フィルムを有する偏光板、該偏光板を有する画像表示装置、および、光学フィルムの製造方法について説明する。なお、本明細書において、「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0033】
[光学フィルム]
図1は光学フィルムの構成を示す断面図であり、図2は光学フィルムの他の構成を示す断面図である。図1に示す光学フィルム1は、透明フィルム支持体2の一方の面に光学機能層3を有し、他方の面に透明フィルム支持体2内に入り込んだ粒子4を備える。図2に示す光学フィルム10は、透明フィルム支持体12がコア層13とコア層13の両面に形成された外層14の3層で形成されており、この透明フィルム支持体12の一方の面に光学機能層3を有し、他方の面に透明フィルム支持体12内に入り込んだ粒子4を備える。粒子4は、100nm以下の粒子径を有し、粒子径の30%以上90%未満が透明フィルム支持体2、12内に入り込んでいる。以下、それぞれの構成について説明する。
【0034】
<透明フィルム支持体>
(支持体材料)
光学フィルムの基材として用いられる透明フィルム支持体(以下、「支持体」ともいう)としては特に限定はされないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム(CAPフィルム)、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム、ポリアリレート系フィルムあるいはポリ乳酸系フィルム等を挙げることができるが、本発明には、セルローストリアセテートフィルム(TACフィルム) 等のセルロースアセテートフィルムが透明性、機械的性質、加工性等で好ましい。
【0035】
また、支持体に対し、機械的性質向上や光学的異方性発現を目的に延伸操作を実施することもできる。
【0036】
支持体としてセルロースアセテートフィルムを用いる場合、セルロースアセテートとしては、セルロースアセテート化合物、及び、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるアシル置換セルロース骨格を有する化合物が挙げられる。セルロースアセテートは、セルロースと酸とのエステルである。エステルを構成する酸としては、有機酸が好ましく、カルボン酸がより好ましく、炭素原子数が2〜22の脂肪酸がさらに好ましく、炭素原子数が2〜4の低級脂肪酸であるセルロースアセテートが最も好ましい。本実施形態に用いられるセルロースアセテート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアセテートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本実施形態のセルロースアセテートに対しては特に限定されるものではない。セルロースアセテートの平均置換度は2.0〜2.9であり、2.20〜2.85であることがより好ましい。置換度の異なる複数種のセルロースアセテートを混合して用いても良い。セルロースアセテートの平均置換度とは、ASTM−D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)における酢化度の測定方法から求められる酢化度(結合酢酸量)を、次式(1)で置換度に換算して算出した値である。
【0037】
DS=162×AV×0.01/(60−42×AV×0.01) (1)
上記式において、DSは平均置換度であり、AVは酢化度(%)である。本実施形態で好ましく用いられるセルロースアセテートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が上記の上限値以下であれば、セルロースアセテートのドープ溶液の粘度が高くなりすぎることがなく流延によるフィルム作製が容易にできるので好ましい。重合度が上記の下限値以上であれば、作製したフィルムの強度が低下する等の不都合が生じないので好ましい。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法{宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁(1962年)}により測定できる。この方法は特開平9−95538号公報にも詳細に記載されている。また、本実施形態で好ましく用いられるセルロースアセテートの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜4.0であることがさらに好ましく、2.3〜3.4であることが最も好ましい。
【0038】
(支持体添加物)
また、一般的にセルロースアセテートに添加可能な種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤、光学特性調整剤、剥離剤、劣化防止剤等)を加えて組成物とすることができる。
【0039】
−可塑剤−
フィルムの機械物性や加工適性を制御するために添加剤として可塑剤を用いることができる。セルロースアセテートフィルムに用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤等が挙げられる。好ましくはリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系化合物、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、より好ましくは多価アルコール系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤であり、更に好ましくはポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤であり、特に好ましくはポリエステルオリゴマー系可塑剤である。本実施形態において、可塑剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。可塑剤の含有量は、セルロースアセテートに対して0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましく、7〜15質量%であることが特に好ましい。
【0040】
−紫外線吸収剤−
紫外線吸収剤を含有させることによって、耐光性に優れた偏光子保護フィルムを得ることができる。本実施形態に有用な紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体(UV−1)、ベンゾフェノン誘導体(UV−2)、ベンゾトリアゾール誘導体(UV−3)、アクリロニトリル誘導体(UV−4)、安息香酸誘導体(UV−5)または有機金属錯塩(UV−6)等があり、それぞれ(UV−1)としては、サリチル酸フェニル、4−t−ブチルフェニルサリチル酸等を、(UV−2)としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、(UV−3)としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、(UV−4)としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−α−シアノ−β−(p−メトキシフェニル)アクリレート等を、(UV−5)としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、(UV−6)としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。
【0041】
−マット剤−
また、すべり性を改善するために、これら透明フィルム支持体を製造する際のドープ中に、シリカ等の微粒子(平均粒径0.005〜0.2μm)をマット剤として添加することもできる。マット剤としては、例えば日本アエロジル社製アエロジル200V、アエロジルR972V等を添加することができる。すべり性は鋼球での測定で、動摩擦係数0.4以下が好ましく、0.2以下であることが望まれる。
【0042】
マット剤をドープ中に過剰に添加すると、ヘイズ値が上昇するので好ましくなく、添加量は、ドープ中に0.01〜0.5質量%添加することが好ましい。また、ヘイズ値としては、3以下が好ましく、1以下がより好ましい。ここで、ヘイズとはフィルムの透明性に関する指標で、濁度(曇度)を表し、JIS−K−7136(プラスチック−透明材料のヘイズの求め方)における拡散透過光(Td)の全光線透過光(Tt)に対する割合(次式(2))から求められるものである。
【0043】
ヘイズ(%)=Td/Tt × 100 (2)
−光学特性調整剤−
光学特性調整剤としては、特に限定されるものではなく、その好ましい例には、芳香環含有化合物や液晶化合物、異方的な形状の化合物、といった光学異方性の大きな化合物が挙げられる。特に、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることが光学特性調整の観点で望ましい。少なくとも二つの芳香族環を有する化合物の分子量は、300ないし1200であることが好ましく、400ないし1000であることがより好ましい。少なくとも2つの芳香環を有する化合物としては、例えば特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2002−363343号公報に記載の棒状化合物、特開2005−134884及び特開2007−119737号公報に記載の液晶性化合物等が挙げられる。より好ましくは、上記トリアジン化合物又は棒状化合物である。少なくとも2つの芳香環を有する化合物は2種以上を併用して用いることもできる。
【0044】
−剥離剤−
セルロースエステルフィルムの剥離抵抗を小さくする剥離剤として、界面活性剤を添加することが好ましい。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。剥離剤の添加量はセルロースエステルに対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
【0045】
<透明フィルム支持体の製造方法>
本実施形態の透明フィルム支持体の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下に記載する溶液製膜法又は溶融製膜法により製造することが好ましく、溶液製膜法による製造がより好ましい。溶融製膜に関しては、例えば特開2006−348123号公報を、溶液製膜に関しては、例えば特開2006−241433号公報を参照し、製造することができる。
【0046】
支持体の製造方法について、セルロースアセテートフィルムを例に説明する。セルロースアセテートフィルムの製造は、まず、セルロースアセテートを溶媒に溶解させ、ドープを調製する。本実施形態では、溶液製膜法で製造されることが好ましく、具体的には、ポリマーを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜する。その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、延伸処理することで製造される。
【0047】
溶液製膜法では、セルロースアセテートの溶液を調製し、該溶液を支持体表面に流延し、製膜する。セルロースアセテート溶液の調製に用いる溶媒については、特に限定されない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤、ならびに非塩素系有機溶媒を挙げることができる。非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ペンチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0048】
セルロースアセテート溶液の調製時には、セルロースアセテートは、有機溶媒に10〜35質量%溶解させることが好ましい。より好ましくは13〜30質量%であり、特に好ましくは15〜28質量%である。このような濃度のセルロースアセテート溶液は、セルロースアセテートを溶媒に溶解する際に所定の濃度になるようにして調製してもよいし、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)を調製した後に、濃縮工程により上記濃度の溶液として調製してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアセテート溶液を調製した後に、種々の添加物を添加することで上記濃度のセルロースアセテート溶液として調製してもよい。例えば添加物として先述したマット剤を添加することができる。マット剤をセルロールアセテート溶液に分散させたドープを用いて後述する方法により製膜することで、製膜された支持体全体にマット剤がほぼ均一に分散して存在し、その中で支持体表面から少し突き出た一部のマット剤がすべり性を向上させる役割を果たす。マット剤を過剰に添加した場合、後述する流延工程で加圧型ダイの口金(スリット)からドープを流延する際に、口金にマット剤が付着しその部分のドープの均一な形成を阻害することから、ヘイズ値と共に適切な添加量である必要がある。
【0049】
セルロースアセテート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく、さらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施してもよい。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号等の各公報にセルロースアシレート溶液の調製法、が記載されており、本実施形態においてもこれらの技術を利用することができる。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系の溶媒を用いた調製方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)22頁〜25頁に詳細に記載されている。さらに、セルロースアセテート溶液の調製の過程で、溶液濃縮,ろ過等の処理が行われてもよく、それらについては、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0050】
ドープを調製後、ドープを濾材で濾過する。濾材の絶対濾過精度は、0.05mm以下が好ましく、0.005mm以下がさらに好ましい。下限については特に制限されないが、目詰まりによる生産性の低下から実質的には0.001mm以上である。
【0051】
ドープを濾材に通過させる際の温度は、30〜90℃であることが好ましく、32〜80℃であることがより好ましく、35〜75℃であることが特に好ましい。温度を30℃以上で濾過することでドープの粘度を下げることができ、効率よく濾過することができ、90℃以下とすることで、内容物の分解を防ぐことができる。
【0052】
濾過する際のドープの固形分濃度は、10〜25質量%であることが好ましく、12〜24質量%であることがより好ましく、14〜23質量%であることが特に好ましい。
【0053】
本実施形態のセルロースアセテートフィルムを製造する方法及び設備として、従来のセルロースアセテートフィルムの製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアセテート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡し、濾過をしてから最終調製をする。調整されたドープは固形分の析出や凝集によるゲル状体の発生等が起こらない様に管理された条件で保持され、このドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離,延伸等に分類される。
【0054】
また、溶液流延製膜は、共流延方法(以下、「共流延」ともいう)による同時又は逐次の多層流延製膜とすることが好ましい。図1に示すように、支持体が単層の場合は、金属支持体としての平滑なバンド上あるいはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアセテート溶液を流延してもよい。また、図2に示すように、支持体がコア層と外層の複数の層からなる場合についても、共流延により、同時又は逐次で、複数の溶液(セルロースアセテート溶液)を流延してもよい。複数のセルロースアセテート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報等に記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによってフィルム化してもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフィルム流延方法でもよい。更に、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
【0055】
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことにより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法を挙げることができる。流延するセルロースエステル溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアセテート溶液でもよく特に限定されない。コア層と外層の複数の層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアセテート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースエステル溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層等)を同時に流延することも実施しうる。なお、図2においては、コア層13とコア層13の両面に外層14が設けられた図で説明したが、外層14は、コア層13の少なくとも片側に設けられていればよい。
【0056】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアセテート溶液を押出すことが好ましく、その場合セルロースアセテート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。複数のセルロースアセテート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアセテート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。
【0057】
コア層13と外層か14らなる積層構造のセルロースエステルフィルムを製造する場合、共流延により、置換度の異なるセルロースアセテート溶液を共流延して製造することもできる。また、先述した可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加剤濃度が異なるセルロースアセテート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアセテートフィルムを作製することもできる。例えば、すべり性を向上させるマット剤は、ヘイズ値上昇を抑制する観点で表面層に多く、又は表面層のみに入れることが出来る。ここで、マット剤を表層面に過剰に入れると、先述した加圧型ダイの口金部へのマット剤付着による故障やヘイズ値の上昇に加えて、共流涎された異なるセルロールアセテート溶液の界面部分にマット剤が存在することで界面を乱し、均一な膜形成を阻害することから、適切なマット剤添加量が望ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤は表面層よりも内部層に多くいれることができ、内部層のみにいれてもよい。又、内部層と表面層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば表面層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、内部層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離剤を金属支持体側の表面層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、表面層に貧溶媒であるアルコールを内部層より多く添加することも好ましい。表面層と内部層のTgが異なっていても良く、表面層のTgより内部層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアセテートを含む溶液の粘度も表面層と内部層で異なっていても良く、表面層の粘度が内部層の粘度よりも小さいことが好ましいが、内部層の粘度が表面層の粘度より小さくてもよい。
【0058】
複数の層で形成された支持体を共流延により製膜することで、支持体の各層の密着性を向上させることができる。したがって、本発明の光学フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合において、偏光子への貼り付け、剥離を行っても支持体の層の間で剥離することを防止することができる。
【0059】
以上のようにして、溶融製膜法あるいは溶液製膜法等によって製造したセルロースアセテートフィルムに、延伸処理を施す。延伸は製膜工程中、オンラインで実施してもよく、製膜完了後、一度巻き取った後オフラインで実施してもよい。すなわち、溶融製膜の場合、延伸は製膜中の冷却が完了しない状態で実施してもよく、冷却終了後に実施してもよい。延伸処理は、130〜230℃で実施し、175〜220℃が好ましく、180〜210がより好ましい。延伸倍率は5%以上であり、5〜120%が好ましく、20〜110%がより好ましい。上限については特に制限はないが120%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式(3)を用いて求めたものである。
【0060】
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ・・・(3)
このような延伸は既知の延伸方法、例えば縦延伸、横延伸、及びこれらの組み合わせによって実施される。縦延伸は、(1)ロール延伸(出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸、自由端延伸ともいう)、(2)固定端延伸(フィルムの両端を把持し、これを長手方向に次第に早く搬送し長手方向に延伸)、等を用いることができる。さらに横延伸は、テンター延伸(フィルムの両端をチャックで把持しこれを横方向(長手方向と直角方向)に広げて延伸)、等を使用することができる。これらの縦延伸、横延伸は、それだけで行なってもよく(1軸延伸)、組み合わせて行ってもよい(2軸延伸)。2軸延伸の場合、縦、横逐次で実施してもよく(逐次延伸)、同時に実施してもよい(同時延伸)。 縦延伸、横延伸の延伸速度は5〜400%/minで実施し、40〜350%/minが好ましく、100〜300%/minがより好ましい。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
【0061】
このような延伸に引き続き、延伸による内部応力を開放する等の目的のため緩和工程等を行ってもよい。緩和工程を行う場合は、縦又は横方向に0%〜10%緩和することも好ましい。さらに、延伸に引き続き、150℃〜250℃で1秒〜3分熱固定することも好ましい。
【0062】
また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
【0063】
乾燥後得られる、セルロースアセテートフィルムの厚さは、使用目的によって異なり、20〜200μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましく、20〜50μmであることが特に好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0064】
本発明のセルロースアセテートフィルムは、長尺状に製膜してもよい。例えば、幅0.5〜3m(好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2m)、長さ1ロール当たり100〜10000m(好ましくは500〜7000m、さらに好ましくは1000〜6000m)で巻き取られた長尺状のフィルムとして製造することができる。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0065】
<支持体の光学機能層とは反対側にある粒子>
(粒子)
本実施形態は、支持体の一方の面に光学機能層を有し、他方の面には100nm以下の粒子径であって、かつ粒子径の30%以上90%未満が、支持体内に入り込んだ粒子を備える。支持体内に上記の条件で入り込んだ粒子の割合は、支持体の粒子を有する面(他方の面)の表面から支持体の膜厚に対し中央部までに存在する粒子全体の70%以上である。また、支持体の粒子を有する面(他方の面)の表面形状曲線の中心面から20nm以上の高さを有する突起の数が、1mmあたり1×10個以上である。なお、「支持体内に入り込んだ粒子の粒子径」は、「粒子を球形に近似し、支持体に対して垂直方向で、粒子の中心を通る粒子径」で判断する。また、「表面形状曲線の中心面」とは、「原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)等で測定される表面形状曲線とで囲まれた体積が上下で等しく、かつ、最小になる平面」のことを意味する。
【0066】
ブロッキングの抑制の観点で、支持体を製膜する際、表面にブロッキングの抑制効果が得られる突起の数が形成される量の粒子を添加することも考えられる。しかしながら、上述したように、粒子の数が多いとヘイズ値が上昇するので好ましくない。本実施形態においては、支持体の製膜後に、粒子を支持体に入り込ませて突起を形成しているので、支持体内に含まれる粒子の量を減らすことができ、ヘイズ値の上昇を防止することができる。
【0067】
用いる粒子として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。本実施形態では、二酸化珪素を含むことで、透明性が高くなるため、好ましく用いられる。
【0068】
用いる粒子のサイズとしては、ブロッキング防止効果を高めるとともに、透明性を確保するため、粒子径(直径)が100nm以下の微粒子であることが好ましい。また、下限は、30nm以上とすることが好ましい。粒子の粒子径は、例えば、カーボン膜付きグリッドに粒子を付着させ、JOEL製JEM−1010でTEM観察を行い、得られたTEM像から粒子径を測定することができる。
【0069】
これらの粒子は、例えば粉体粒子として、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。また溶媒に分散した粒子として、例えばメタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、MEK−ST−L、MEK−ZL、MIBK−ST、MIBK−ST−L、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0070】
(溶媒)
本実施形態においては、支持体の光学機能層とは反対側の面に、上記粒子を支持体に埋め込ませながら配置させる。配置させる方法としては、粒子が支持体表面に少し埋まりながら配置できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では支持体を溶解、または、膨潤させる溶媒に粒子を分散させた液を塗布し乾燥させることにより、粒子を配置する方法が好ましい。支持体に液が塗布されることで、支持体表面が溶解、あるいは軟化し粒子の一部が支持体に沈み込み、その後に乾燥させて溶媒のみを揮発させることで、粒子の一部が支持体に埋まるとともに、ほかの部分が支持体の表面から突出するようになる。支持体を溶解または膨潤しない溶媒を使用した場合には、粒子が支持体とくっつかないことから、その後のプロセス中に粒子が支持体から脱離し、ブロッキング抑制効果を低下させてしまうことから好ましくない。粒子が支持体から脱離することを防止し、ブロッキング抑制効果を維持するため、粒子径の30%以上を支持体に沈み込ませることが望ましい。一方、粒子を沈み込ませすぎると、支持体表面からの突出がなくなることでブロッキング抑制効果を低下させてしまうことから好ましくなく、粒子径の90%未満に抑えることが望ましい。
【0071】
突起の密度に関して、鋭意検討の結果、粒子表面の表面形状曲線の中心面から20nm以上の高さを有する突起の数が1mmあたり1×10個以上存在させることが望ましい。また、突起の数の上限は、粒子径によって変化するため、粒子径によって適宜調整する必要がある。例えば、粒子径30nmの場合は、上限を1mmあたり1×1011個以下とすることで、ヘイズの増加を抑えることができる。
【0072】
本実施形態においては、上記のようなプロセスを経て、粒子径の30%以上90%未満が支持体内に入り込んでいる粒子の数が、支持体の粒子が配置されている面の表面から支持体の膜厚に対し中央部までに存在する粒子全体の70%以上を占めることが、ヘイズやブロッキング性、リワーク性の観点で望ましい。粒子の粒子径の支持体内への入り込み量、および、粒子径の30%以上90%未満が支持体内に入り込んでいる数(割合)の調製は、溶媒の種類、粒子分散液の塗布から乾燥工程までの時間を制御することで行うことができる。
【0073】
上記方法にて粒子を配置する際に使用する溶媒としては、支持体を溶解または膨潤させる溶媒を含む。さらに支持体表面の溶解および軟化状態を制御するため、支持体を溶解または膨潤させない溶剤を適宜混合してもよい。支持体を溶解または膨潤させる溶媒と、支持体を溶解または膨潤させない溶媒を組み合わせて用いることで、粒子が支持体内に入り込む量を制御することができる。
【0074】
ここで、支持体を溶解する溶媒とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの支持体を該溶媒の入った15cc(15×10−6)の瓶に室温下(25℃)で60秒浸漬させて取り出した後に、浸漬させた溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析したとき、支持体のピーク面積が400mV/sec以上である溶媒のことを意味する。若しくは24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの支持体を該溶剤の入った15ccの瓶に室温下(25℃)で24時間経時させ、適宜瓶を揺らす等して、フィルムが完全に溶解して形をなくすものも、支持体に対して溶解能を有する溶媒を意味する。また、支持体を膨潤する溶媒とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの支持体を該溶媒の入った15ccの瓶に縦に入れ、25℃で60秒浸漬し、適宜該瓶を揺らしながら観察し、折れ曲がりや変形が見られる溶媒を意味する(フィルムが膨潤することで、膨潤した部分の寸度が変化し、折れ曲がりや変形として観察される。膨潤しない溶媒では折れ曲がりや変形といった変化が見られない)。
【0075】
支持体としてセルロースアセテートを用いた場合に溶解または膨潤させる溶媒としては、特開2008−112177号公報の[0026]段落に記載された溶剤を用いることができる。例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等の炭素数が3〜12のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の炭素数が3〜12のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等の炭素数が3〜12のエステル類、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
支持体としてセルロースアセテートを用いた場合に溶解または膨潤させない溶媒としては、特開2008−112177号公報の[0027]段落に記載された溶剤を用いることができる。例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、1−ペンタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、酢酸イソブチル、炭化水素類(トルエン、キシレン)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
粒子を含む分散液に含まれる微粒子は、微粒子分散液に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0078】
<粒子の配置方法>
粒子分散液はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて支持体の表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましく、2〜20μmであることがさらに好ましい。
【0079】
粒子分散液を塗布する順番は、光学機能層を形成する前でも後でも構わないが、先に塗布することが望ましい。また、2回以上に分けて微粒子分散液を塗布することもできる。
【0080】
粒子分散液を塗布し、支持体に粒子を設置した場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.3%以下であることがさらに好ましい。
【0081】
<光学機能層>
本実施形態では、光学機能層として液晶材料の配向状態を固定した層を有することが好ましい。また、中間膜を有し、中間膜上に液晶材料の配向状態を固定した層を有してもよい。液晶材料の配向状態に関しては、ホメオトロピック配向、ホモジニアス配向、ツイスト配向のいずれかの形態、あるいは、これらの組み合わせの形態をとることができる。以下、詳細に説明する。
【0082】
[中間膜]
(中間膜材料)
中間膜は液晶材料の配向を制御するために用いられ、極性基を有する樹脂を含有することにより、液晶材料の配向状態を固定した層において、液晶化合物を効果的に配向させることができる。そのため、中間膜の材料としては、極性基を含む樹脂材料が好ましい。例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を含む樹脂材料が好ましく、具体的にはポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリスルホン酸、ポリリン酸等が挙げられる。その中でも特に多価アルコール化合物の少なくとも1つの水酸基を(メタ)アクリロイル基で置換したアクリル化合物を含む材料であることが望ましい。
【0083】
多価アルコール化合物の水酸基を(メタ)アクリロイル基で置換したアクリル化合物は多官能アクリレートとして知られ、多官能であるために形成されるポリマーが立体構造を形成するため強固な構造が得られる。多価アルコール化合物の複数置換可能部位を(メタ)アクリロイル基で置換し、一部を水酸基のまま残した多官能アクリル化合物は、残った水酸基が極性基として機能し、かつ(メタ)アクリロイル基を複数有するため、上述の両者の材料の機能を具備するため、使用する材料の種類を減らすことができる。
【0084】
極性基を有するアクリル系樹脂は、極性基と(メタ)アクリロイル基を含有する化合物に由来する繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましい。極性基とは、互いに結合している2原子の電気陰性度の差が大きいことを示し、具体的には、水酸基、C=O、−COOH、−NH、−NO、−NH、−CN等が挙げられ、水酸基が好ましい。
【0085】
本実施形態における極性基を有するアクリル系樹脂は、極性基を有さない繰り返し単位を含んでいてもよいし、(メタ)アクリロイル基を含有する化合物に由来する繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。多価アルコール化合物の少なくとも1つの水酸基を(メタ)アクリロイル基で置換したアクリル化合物としては、支持体との密着性や膜強度が向上する観点から、1分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリル化合物であることが好ましい。1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基(重合性の不飽和二重結合)を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHを有する化合物が好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリル化合物である。中でも、多価アルコール(メタ)アクリロイル基が複数導入されたエステル類が好ましい。例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。1分子中に3つ以上の官能基を有する多官能アクリル化合物としては市販されているモノマーを用いることもできる。例えば、(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類としては、日本化薬(株)製KAYARAD PET30、KAYARAD DPHA、同DPCA−30、同DPCA−120を挙げることができる。また、ウレタンアクリレートとしては、新中村化学工業(株)製U15HA、同U4HA、A−9300、ダイセルUCB(株)製EB5129等を挙げることができる。
【0086】
(重合性化合物)
中間膜材料としてアクリル化合物を使用する場合には、必要に応じ、極性基と重合性基とを有する重合性化合物を用いることもできる。極性基と重合性基とを有する重合性化合物は、1分子中に1つ以上の重合性基と、1つ以上の極性基を同時に分子構造内に有する化合物が好ましく、2つ以上の重合性基と、1つ以上の極性基を同時に分子構造内に有する化合物がより好ましく、2つ以上の重合性基と、2つ以上の極性基を同時に分子構造内に有する化合物が最も好ましい。ここで、極性基とは、互いに結合している2原子の電気陰性度の差が大きいことを示し、具体的には、水酸基、C=O、−COOH、−NH、−NO、−NH、−CN等が挙げられ、水酸基が好ましい。極性基と重合性基とを有する化合物の割合が中間膜材料である多価アルコール化合物との合計に対して30質量%以上であることが好ましい。また、多価アルコール化合物の少なくとも1つの水酸基を(メタ)アクリロイル基で置換したアクリル化合物と、極性基と重合性基とを有する重合性化合物とは同一化合物が兼ねていてもよく、兼ねずにそれぞれの化合物の混合物であってもよい。極性基と重合性基とを有する重合性化合物の極性基はアクリル層の親水性または特定化合物との親和性を高めるために導入するために配合される。また、極性基の種類によっては支持体であるセルロースとの親和性が向上され、層間の密着性の向上も期待される。
【0087】
(光重合開始剤)
中間膜形成用組成物に、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類等が挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品等は、特開2009-098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。光重合開始剤の含有量は、中間膜形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、中間膜形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。中間膜の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm〜1000mJ/cmであることが好ましく、20mJ/cm〜200mJ/cmであることが更に好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下や0.1%以下の低酸素濃度化で光照射を実施してもよい。
【0088】
(溶媒)
中間膜は、支持体上に、直接又は他の層を介して、中間膜形成用組成物を塗布し、乾燥させることで形成することができる。ここで中間膜形成用組成物を塗布する場合は、支持体に対し溶解または膨潤する溶剤を用いることが好ましい。これは、支持体に対し溶解または膨潤する溶剤が、支持体を溶解または膨潤させることに伴い中間膜形成用組成物が支持体に浸透することで、支持体と中間膜との密着性に優れるためである。
【0089】
支持体としてセルロースアセテートを用いた場合に溶解または膨潤させる溶媒としては、先述したように、特開2008−112177号公報の[0026]段落に記載された溶剤を用いることができる。また、支持体としてセルロースアセテートを用いた場合に溶解または膨潤させない溶媒としては、先述したように、特開2008−112177号公報の[0027]段落に記載された溶剤を用いることができる。支持体を溶解または膨潤させない溶媒の添加量は、使用する全溶媒に対して90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0090】
中間膜形成用組成物は、有機溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製される。中間膜形成用組成物中の全溶媒量は、組成物中の固形分の濃度が好ましくは1〜70質量%の範囲、より好ましくは10〜65質量%の範囲、更に好ましくは15〜60質量%が好ましい。
【0091】
[中間膜形成方法]
中間膜の形成において、中間膜形成用組成物を支持体の表面に塗布することで形成することが好ましい。中間膜形成用組成物を支持体上に塗布する塗布方法として、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて支持体の表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましく、2〜20μmであることがさらに好ましい。
【0092】
[液晶材料の配向状態を固定した層]
液晶材料の配向状態を固定した層は、重合性液晶化合物と、所望により、後述する重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上、または中間膜上に塗布し、重合硬化することで形成することができる。また、配向状態の制御は、後述するように、(1)ホメオトロピック配向させるためには、後述する垂直配向制御剤の添加、(2)ホモジニアス配向させるためには、支持体あるいは中間膜表面へのラビング処理や水平配向制御剤の添加、(3)ツイスト配向させるためには、支持体あるいは中間膜表面をラビング処理した上で水平配向制御剤およびねじれ配向制御剤を添加、することにより行うことができる。
【0093】
(重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物としては剛直部を有する剛性基(メソゲン基と言われる)の端部に配向状態を固定するための重合性基を導入したものを用いることができ、種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる層を用いることもできる。なお本実施形態では、液晶材料の配向状態を固定した層は、該液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。重合性液晶化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。また、液晶性化合物は、ディスコティック液晶化合物でもよいし、棒状液晶化合物でもよい。
【0094】
本実施形態に使用可能なディスコティック液晶化合物の具体例としては、特開2009-97002号公報[0038]〜[0069]記載の化合物が挙げられる。また、トリフェニレン化合物で、波長分散の小さいディスコティック液晶性化合物としては、特開2007-108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられる。
【0095】
本実施形態に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。 重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報等に記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。
【0096】
塗布液中に含まれる重合性液晶化合物の量は、10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましく、25〜35質量%であることが特に好ましい。
【0097】
(重合開始剤)
配向させた液晶化合物は、配向状態を維持して固定する。固定化は、液晶化合物に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0098】
光重合開始剤の使用量は、液晶材料の配向状態を固定した層の形成用組成物の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることが更に好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、100mJ/cm〜800J/cmであることが好ましく、20mJ/cm〜50mJ/cmであることが更に好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下や0.1%以下の低酸素濃度化で光照射を実施してもよい。
【0099】
(溶媒)
溶媒は液晶化合物を溶解するものが好ましい。また、支持体に直接液晶材料の配向状態を固定した層を形成する場合には、支持体を溶解または膨潤するものが望ましい。これは、支持体に対し溶解または膨潤する溶媒が、支持体を溶解または膨潤させることに伴い液晶材料の配向状態を固定した層形成用組成物の一部が支持体に浸透することで、支持体と液晶材料の配向状態を固定した層との密着性に優れるためである。
【0100】
支持体としてセルロースアセテートを用いた場合に溶解または膨潤させる溶媒としては、先述したように、特開2008−112177号公報の[0026]段落に記載された溶剤を用いることができる。支持体としてセルロースアセテートを用いた場合に溶解または膨潤させない溶媒としては、先述したように、特開2008−112177号公報の[0027]段落に記載された溶剤を用いることができる。支持体を溶解または膨潤させない溶媒の添加量は、使用する全溶媒に対して90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0101】
液晶材料の配向状態を固定した層の形成用組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した塗布液として調製される。液晶材料の配向状態を固定した層の形成用組成物中の全溶媒量は、組成物中の固形分の濃度が好ましくは1〜70質量%の範囲、より好ましくは10〜65質量%の範囲、更に好ましくは20〜40質量%が好ましい。
【0102】
<液晶材料の配向状態を固定した層の形成方法>
液晶材料の配向状態を固定した層の形成は、組成物を支持体の表面に塗布することで行うことが好ましい。塗布方法として、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて支持体の表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましく、2〜20μmであることがさらに好ましい。
【0103】
また、塗布後は溶媒を乾燥させるため、かつ液晶化合物の配向を促進するため、液晶化合物が液晶相を示す温度まで昇温させることが好ましい。塗布後に乾燥装置を設置し、液晶相になる温度の上限、あるいは液晶相になる温度を超えた温度範囲まで昇温させるように温度を設定することが望ましい。
【0104】
<配向制御方法>
液晶材料の配向状態を固定した層の配向状態の制御は、(1)ホメオトロピック配向させるためには、垂直配向制御剤を塗布液中に添加、(2)ホモジニアス配向させるためには、支持体あるいは中間膜表面をラビング処理、(3)ツイスト配向させるためには、支持体あるいは中間膜表面をラビング処理した上で、ねじれ配向制御剤を添加、することにより行うことができる。以下、詳述する。
【0105】
(1)ホメオトロピック配向
(垂直配向制御剤)
液晶化合物をホメオトロピック配向させるために、液晶材料の配向状態が固定化された層に、ホメオトロピック配向を制御する添加剤として垂直配向制御剤を添加する必要がある。垂直配向制御剤は特に限定されない。なお、ホメオトロピック配向とは、液晶分子長軸と膜面が垂直であることをいうが、厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、垂直面とのなす傾斜角が30度未満の配向を意味するものとする。
【0106】
垂直配向制御剤として、下記一般式(I)で表されるオニウム化合物を含むことが好ましい。該オニウム化合物は、液晶化合物の配向膜界面におけるホメオトロピック配向を促進する垂直配向制御剤として作用するとともに、中間膜と液晶材料の配向状態を固定した層との界面の密着性改善にも寄与する。液晶材料の配向状態を固定した層は、必要に応じて、空気界面側の配向を制御する空気界面側垂直配向制御剤(例えば、フルオロ脂肪族基を有する繰り返し単位を含む共重合体)を含有していてもよい。
【0107】
一般式(I)で表されるオニウム化合物は、液晶化合物の中間膜界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶化合物の分子の中間膜界面近傍におけるチルト角(水平面とのなす角)を増加させる作用がある。
【0108】
【化1】
【0109】
一般式(I)中、環Aは含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオンを表し、Xはアニオンを表し;Lは二価の連結基を表し;Lは単結合又は二価の連結基を表し;Yは5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基を表し;Zは2〜20のアルキレン基を部分構造として有する2価の連結基を表し;P及びPはそれぞれ独立に重合性エチレン性不飽和基を有する一価の置換基を表す。
【0110】
環Aは含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオンを表す。環Aの例としては、ピリジン環、ピコリン環、2,2’−ビピリジル環、4,4’−ビピリジル環、1,10−フェナントロリン環、キノリン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラジン環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられ、好ましくは第4級イミダゾリウムイオン、及び第4級ピリジニウムイオンである。
【0111】
Xは、アニオンを表す。Xの例としては、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、ビニルスルホン酸イオン、アリルスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、p−ビニルベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、硫酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、p−ビニル安息香酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸化物イオン等が挙げられる。好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン、水酸化物イオンである。また、特に塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、メタンスルホン酸イオン、ビニルスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−ビニルベンゼンスルホン酸イオンが好ましい。
【0112】
は、二価の連結基を表す。Lの例としては、アルキレン基、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NRa−(但し、Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基またはアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の二価の連結基が挙げられる。Lは、炭素原子数が1〜10の−AL−、−O−AL−、−CO−O−AL−、−O−CO−AL−が好ましく、炭素原子数が1〜10の−AL−、−O−AL−がさらに好ましく、炭素原子数が1〜5の−AL−、−O−AL−が最も好ましい。なお、ALはアルキレン基を表す。
【0113】
は、単結合又は二価の連結基を表す。Lの例としては、アルキレン基、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NRa−(但し、Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基またはアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜10の二価の連結基、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−、−O−CO−AL−CO−O−等が挙げられる。なお、ALはアルキレン基を表す。Lは、単結合、炭素原子数が1〜10の−AL−、−O−AL−、−NRa−AL−O−が好ましく、単結合、炭素原子数が1〜5の−AL−、−O−AL−、−NRa−AL−O−がさらに好ましく、単結合、炭素原子数が1〜5の−O−AL−、−NRa−AL−O−が最も好ましい。
【0114】
は、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基を表す。Yの例としては、シクロヘキシル環、芳香族環または複素環等が挙げられる。芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ビフェニル環、ピレン環等が挙げられ、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環が特に好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環等が挙げられる。複素環は6員環であることが好ましい。Yで表される5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基はさらに置換基を有していてもよい。
【0115】
置換基の例としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)のアルキル基、炭素原子数が2〜12(より好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)のアルケニル基、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)のアルコキシ基等が挙げられる。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12(より好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)のアシル基または炭素原子数が2〜12(より好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)のアシルオキシ基で置換されていてもよい。アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0116】
で表される2価の連結基は、5又は6員環を2以上有する2価の連結基であるのが好ましく、2以上の環が、連結基で連結された構造を有するのがより好ましい。連結基の例については、L及びLが表す連結基の例や−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−等が挙げられる。
【0117】
Zは、炭素原子数2〜20のアルキレン基を部分構造として有し、−O−、−S−、−CO−、−SO−との組み合わせからなる2価の連結基を表し、アルキレン基は置換基を有していてもよい。2価の連結基の例としては、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基が挙げられる。Zが表すアルキレン基の炭素原子数は、2〜16であるのがより好ましく、2〜12であるのがさらに好ましく、2〜8であるのが特に好ましい。
【0118】
及びP、それぞれ独立に重合性エチレン性不飽和基を有する一価の置換基を表す。重合性エチレン性不飽和基を有する一価の置換基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−8)が挙げられる。即ち、重合性エチレン性不飽和基を有する一価の置換基は、(M−8)のように、エテニル基のみからなる置換基であってもよい。
【0119】
【化2】
【0120】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。上記式(M−1)〜(M−8)の中、(M−1)、(M−2)、(M−8)が好ましく、(M−1)又は(M−8)がより好ましい。特に、Pとしては(M−1)が好ましい。またPとしては、(M−1)又は(M−8)が好ましく、環Aが第4級イミダゾリウムイオンである化合物では、P2は(M−8)又は(M−1)であるのが好ましく、及び環Aが第4級ピリジニウムイオンである化合物では、P2は(M−1)であるのが好ましい。
【0121】
一般式(I)で表されるオニウム化合物は、下記一般式(I−1)及び(I−2)で表されるオニウム化合物が含まれる。
【0122】
【化3】
【0123】
一般式(I−1)及び(I−2)の各記号の定義は、一般式(I)中のそれぞれと同義であり;L及びLはそれぞれ独立に二価の連結基を表し;Y及びYはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい6員環であり;mは1又は2を表し、mが2の場合、二つのLおよび二つのYは、互いに同一でも異なっていてもよく;pは1〜10の整数を表す。
【0124】
は、二価の連結基を表し、Lの例としては、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−、−O−CO−AL−CO−O−である。なお、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基を表す。Lは、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−、−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
【0125】
は、二価の連結基を表し、Lの例としては、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−NH−CO−、−CO−NH−である。L4は、単結合、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−NH−CO−、−CO−NH−が好ましく、単結合、−O−CO−、−CO−O−がさらに好ましく、−O−CO−、−CO−O−が最も好ましい。
【0126】
及びYはそれぞれ独立に置換基を有していてもよい6員環を表し、6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。脂肪族6員環の例としては、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環等が挙げられる。芳香族環の例としては、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ビフェニル環、ピレン環等が挙げられる。6員複素環の例としては、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環、トリアジン環等が挙げられる。また、6員環に他の6員環または5員環が縮合していてもよい。Y及びY33は、シクロヘキサン環、ピリジン環、ピリミジン環、ベンゼン環が好ましく、ピリミジン環、ベンゼン環がさらに好ましく、ベンゼン環が最も好ましい。
【0127】
置換基の例としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5)のアルキル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基等が挙げられる。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。 式(I−1)及び(I−2)中、少なくとも1つのY3は、置換されたベンゼン環であるのが好ましく、1以上のハロゲン基、アルキル基又はアルコキシ基を有するベンゼン環であるのがより好ましく、2以上のアルキル基又はアルケニル基を有するベンゼン環であるのがさらに好ましい。
【0128】
mは1又は2の整数を表し、mが2の場合、二つのL及び二つのYは、異なっていてもよい。
【0129】
2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を表す。C2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH−)であることが好ましい。
【0130】
pは、1〜10の整数を表し、1〜5であることがさらに好ましく、1〜2であることが最も好ましい。
【0131】
一般式(I)で表されるオニウム化合物は、下記一般式(I−3)及び(I−4)で表されるオニウム化合物が含まれる。
【0132】
【化4】
【0133】
一般式(I−3)及び(I−4)の各記号の定義は、一般式(I−1)又は(I−2)中のそれぞれと同義であり;R’は、置換基を表し;bは、1〜4の整数を表す。
【0134】
R’の例は、一般式(I−1)又は(I−2)中のY及びYで表される6員環が有する置換基の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。即ち、R’はハロゲン基、アルキル基又はアルコキシ基であるのが好ましい。bは、1〜4の整数を表し、1〜3であることがより好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。
【0135】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示す。
【0136】
【化5】
【0137】
【化6】
【0138】
【化7】
【0139】
【化8】
【0140】
【化9】
【0141】
一般式(I)のオニウム化合物は、一般に含窒素ヘテロ環をアルキル化(メンシュトキン反応)することで合成することができる。
【0142】
これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、液晶化合物の分子を実質的に垂直に配向させ、ホメオトロピック配向とすることができる。
【0143】
垂直配向制御剤の使用量は、液晶化合物に対して(塗布液の場合は固形分)の0.001〜1質量%であることが好ましく、0.005〜0.5質量%であることがより好ましく、0.01〜0.1質量%であることが特に好ましい。
【0144】
(空気界面側垂直配向制御剤)
液晶化合物をホメオトロピック配向させるために、液晶材料の配向状態が固定化された層には、空気界面側垂直配向制御剤が添加されることが好ましい。空気界面側垂直配向制御剤として、フッ素原子を含有することが好ましく、下記フッ素系ポリマー(式(II)を部分構造として含む)又は一般式(III)で表される含フッ素化合物が好適に用いられる。
【0145】
まずフッ素系ポリマー(式(II)を部分構造として含む)について説明する。空気界面側垂直配向剤としては、フッ素系ポリマーが、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位と下記式(II)で表される繰り返し単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0146】
【化10】
【0147】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、Lは下記の連結基群から選ばれる2価の連結基又は下記の連結基群から選ばれる2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
【0148】
〔連結基群〕
[単結合、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO−、−P(=O)(OR)−(Rはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基]
Qはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表す。
【0149】
本実施形態に使用可能なフッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有するポリマーを用いることが好ましい。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、PTFE類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体等が挙げられる。フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
【0150】
フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環等を介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。
【0151】
フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられるフルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例として、特開2006-113500公報の段落[0110]〜[0114]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0152】
フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、500,000以下であるのがより好ましく、100,000以下であるのが更に好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
【0153】
フッ素系ポリマーは、液晶化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
【0154】
組成物中におけるフッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、液晶材料の配向状態を固定した位相差層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
【0155】
次に、下記一般式(III)で表される含フッ素化合物について説明する。
【0156】
一般式(III)
(R−L−(W)
式中、Rはアルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF基又はCFH基を有するアルキル基を表す。Lは(m+n)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)若しくはその塩、スルホ基(−SOH)若しくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}若しくはその塩を表し、nは1以上の整数を表す。
【0157】
一般式(III)にて表される含フッ素化合物の具体例として、特開2006-113500公報の段落[0136]〜[0140]に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はそれら具体例によってなんら制限されるものではない。
【0158】
なお、含フッ素化合物は、液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
【0159】
組成物中における含フッ素化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、位相差層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜3質量%であるのが更に好ましい。
【0160】
(2)ホモジニアス配向
(ラビング処理)
液晶化合物をホモジニアス配向させるために、液晶材料の配向状態を固定した層を塗布する前の工程にて支持体あるいは中間膜表面にラビング処理を行う必要がある。なおここでホモジニアス配向とは、液晶分子長軸と膜面が水平であることをいうが、厳密に水平であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が30度未満の配向を意味するものとする。
【0161】
ラビング処理は、ラビングローラーにより行うことができる。ラビングローラーは、外周表面にベルベット等のラビングシートが巻付けられており、これにより支持体あるいは中間膜表面がラビング処理される。ラビングローラーは回転速度を制御することができ、また任意のラビング角度に調整できるように、フィルムの進行方向に対して水平面で回転自在なことが好ましい。例えば、ラビングローラーをフィルムの進行方向に対して、ロールの長さ方向の中心位置を軸に回転させてラビング角度を調整し、この状態でフィルムを搬送装置によって一定張力、一定速度( 一般に5m/分以上)で搬送しながら、ラビングローラーをフィルムの搬送方向とは反対の方向に一定の回転速度で回転させる。これにより連続的にラビングを行なうことができる。このように連続的にラビングを行なうことにより、フィルムはエアフォイル効果により浮上して搬送されるので、フィルムが幅方向に動くことはなく、安定して、連続的にラビングを行なうことができる。ラビング時のフィルム搬送速度は、一般に2〜50m/分であり、ラビングローラーの直径は、一般に80〜500mm(好ましくは100〜200mm)であり、ラビングローラーの回転数は100〜3000rpmが好ましく、500〜1500rpmがより好ましい。100rpmよりも弱い回転数では、配向膜の規制力が弱く液晶が充分に配向しない場合がある。ベースラップ角は、4〜20度が好ましく、フィルムに対するテンションは、1〜2N/cm(フィルム幅)が好ましい。ラビングローラーは一般に1〜4本使用され、ラビングローラーの回転軸は、0〜45度の範囲で調整可能なことが好ましい。ラビングローラーの着脱は、ローラー上下装置により接合部等で任意に着脱できることが好ましい。
【0162】
ラビングした支持体あるいは中間膜の上から上記の液晶化合物を含む塗布液を塗布することにより、ラビング方向にホモジニアス配向した液晶材料の配向状態を固定した層を形成することができる。
【0163】
(水平配向制御剤)
液晶組成物中に、安定的に又は迅速にホモジニアス配向となるのに寄与する水平配向制御剤を添加することができる。水平配向制御剤の例として、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物を挙げることができる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。なお、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が30度未満の配向を意味するものとする。
【0164】
以下、配向制御剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物について、順に説明する。
【0165】
【化11】
【0166】
式中、R101、R102及びR103は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X101、X102及びX103は単結合又は二価の連結基を表す。R101〜R103で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X101、X102及びX103で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0167】
【化12】
【0168】
式中、R201は置換基を表し、m201は0〜5の整数を表す。m201が2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。R201として好ましい置換基は、R101、R102、及びR103で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。m201は、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0169】
【化13】
【0170】
式中、R301、R302、R303、R304、R305及びR306は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R301、R302、R303、R304、R305及びR306でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(X1)におけるR101、R102及びR103で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0171】
本実施形態において水平配向制御剤として使用可能な、上記記載の一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報の段落[0016]〜[0050]に記載されているような化合物や、特開2007−272185号公報の段落[0018]〜[0043]に記載されているような化合物等がある。例えば、下記に記載の化合物が用いられる。なお、これらの化合物に制限されるものではなく、また、これらと同様の機能を有する化合物を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもかまわない。
【0172】
【化14】
【0173】
液晶組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、液晶化合物の質量の0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
【0174】
(3)ツイスト配向
(ラビング処理)
液晶化合物をツイスト配向させるために、液晶材料の配向状態を固定した層を塗布する前の工程にて支持体あるいは中間膜表面にラビング処理を行う必要がある。なおここでツイスト配向とは、液晶分子長軸と膜面が水平で、かつ膜厚方向にらせん状にねじれていることをいう。
【0175】
ラビング処理の方法としては、上記(2)ホモジニアス配向させるためのラビング処理と同様の方法により行うことができる。
【0176】
(水平配向制御剤)
液晶組成物中に、安定的に又は迅速にツイスト配向となるのに寄与する水平配向制御剤を添加することができる。水平配向制御剤としては、上記(2)ホモジニアス配向に用いられる水平配向制御剤と同様の材料を用いることができる。ツイスト配向において、液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなる。液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、ツイスト配向の螺旋軸が膜面法線からずれるため、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示すため好ましくない。
【0177】
(光学活性化合物(カイラル剤))
液晶化合物をツイスト配向させるために、組成物中に光学活性化合物を含有することが好ましい。但し、液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、ツイスト配向を安定的に形成可能である場合もある。光学活性化合物は、公知の種々のカイラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(カイラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性液晶合物との重合反応により、液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0178】
液晶材料の配向状態を固定した層の形成用組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、カイラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すカイラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報や特開2002−179668号公報の段落0057〜段落0096に記載されているようなカイラル剤が用いられる。例えば、下記に記載の化合物が用いられる。なお、これらの化合物に制限されるものではなく、また、これらと同様の機能を有する化合物を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもかまわない。
【0179】
【化15】
【0180】
<リワーク性について>
本発明の光学フィルムを偏光子保護フィルムとして用いることでリワーク性を向上させることができる。図3は、従来の光学フィルム(偏光子保護フィルム)50を用いて、偏光子60への貼り付け、剥離を説明する図である。図3に示す光学フィルム50は、透明フィルム支持体2の一方の面に光学機能層3を有し、他方の面にバックコート層51を有する。このバックコート層51の表面にブロッキングを防止するための粒子4が設けられている。偏光板は、偏光子60に偏光子保護フィルム50を貼り合わせたものが用いられる。偏光子60は、偏光子(PVA:ポリビニルアルコール)層62、偏光子層62の表面に形成された表面フィルム層63からなり、偏光子層62の表面フィルム層63の反対側の面に粘着剤層61が設けられ、この粘着剤層61により、偏光子保護フィルムと貼り合わされる。しかしながら、偏光子保護フィルム50と偏光子60との貼り合わせ時にシワが入った場合、偏光子保護フィルム50を剥離し、再度貼り直すことが行われる(リワーク性という)。図3に示すように、偏光子保護フィルム50にバックコート層51を有する偏光子保護フィルムの場合、透明フィルム支持体2とバックコート層51の密着性が弱いと、偏光子保護フィルム50を剥離する際、偏光子60の粘着剤層61と偏光子保護フィルム50のバックコート層51の界面ではなく、透明フィルム支持体2とバックコート層51の界面で剥離する場合がある。この場合、透明フィルム支持体2とバックコート層51で貼り付けることができず、リワーク性が悪化するという問題がある。図1図2に示す本発明の光学フィルムにおいては、バックコート層を設けず、支持体2、12に粒子4を入り込ませているので、偏光子保護フィルムを剥離しても、偏光子の粘着剤層61と支持体の界面で剥離することができるので、リワーク性を向上させることができる。
【0181】
<偏光板>
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムを有し、一般的な方法で作製することができる。本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリケン化処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。偏光膜のもう一方の面には本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光子保護フィルムを用いてもよい。本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
【0182】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光子の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全ケン化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0183】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルム、又は偏光板を有する。本発明の光学フィルムは、層構成の設計によって反射型、透過型、半透過型LCD(liquid crystal display)あるいはTN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、OCB(optically compensated bend)型、HAN(hybrid−aligned nematic)型、VA(vertical alignment)型(PVA(patterned vertical alignment)型、MVA(multi−domain vertical alignment)型)、IPS(in−plane switching)型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
【0184】
2枚のセル基板と、それらの間に挟持され、電圧無印加状態ではセル基板近傍で基板にほぼ平行に配向している液晶層とを有する液晶セル、液晶セルのそれぞれ基板の外側に配置された一対の偏光板、一方の偏光板とセル基板との間に配置された第一の位相差板、及び他方の偏光板とセル基板との間に配置された第二の位相差板を備え、第一の位相差板の遅相軸が、それに隣り合うセル基板の内側近傍にある液晶分子の電圧無印加状態における長軸と直交するように配置されていることを特徴とする、横電界モードで動作する画像表示装置であって、第一の位相差フィルム、又は第二の位相差フィルムのいずれか一方が、本発明の光学フィルムであることが好ましい。また、画像表示装置の好ましい別の形態は、単位画素が配列される第1基板と、第1基板と対向する第2基板と、第1基板と第2基板の間に形成されて第1方向に配列された液晶層と、第1基板の外側に形成され、第1方向に平行な偏光透過軸を有する第1偏光板と、第2基板の外側に形成され、第1方向に垂直な偏光透過軸を有する第2偏光板とを含み、第1偏光板は、偏光機能を有するポリビニルアルコールフィルムと、ポリビニルアルコールフィルムの内部及び外部の表面上にあるトリアセチルセルロースフィルムもしくはアクリルフィルムとを備え、第2偏光板は、偏光機能を有するポリビニルアルコールフィルムと、ポリビニルアルコールフィルムの一方の面にあるトリアセチルセルロースフィルムもしくはアクリルフィルムと、ポリビニルアルコールフィルムの他面に形成された積層位相差フィルムを備え、積層位相差フィルムが本発明の光学フィルムである画像表示装置である。
【実施例】
【0185】
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものでなく、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
【0186】
以下の方法で、実施例1〜5、比較例1〜3のセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0187】
1.支持体の作製
(1)ドープ調整
[セルロースアシレート溶液の調整]
トリアセチルセルロース(置換度2.43)を合計100.0質量部、添加剤1を15質量部、添加剤2を3質量部、を固形分22質量%となるようにメチレンクロライドとメタノールの混合溶媒に溶解した。メチレンクロライドとメタノールの混合比は87%/13%とした。各材料をミキシングタンクに投入し、攪拌して各材料を溶解し、さらに90℃にて約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μの焼結金属フィルターでろ過した。
【0188】
【表1】
【0189】
【化16】
【0190】
[マット剤分散液の調製]
アエロジルR972を0.2質量部、メチレンクロライドを72.4質量部、メタノールを10.8質量部、セルロースアシレート溶液を10.3質量部となる量で混合した。
【0191】
[製膜用ドープ]
セルロースアシレート溶液を100質量部、及び、マット剤分散液を、セルロースアシレートに対して無機微粒子が0.02質量部となる量で混合し、成膜用ドープを調整した。
【0192】
(2)流延
上記の製膜用ドープを、バンド流涎機を用いて流延した。なお、バンドはSUS(Steel Use Stainless)性であった。
【0193】
(3)乾燥
流延されて得られたウェブ(フィルム)を、バンドから剥離後、パスロールを搬送させ、乾燥温度120℃で20分間乾燥した。なお、ここでいう乾燥温度とは、フィルムの膜面温度のことを意味する。
【0194】
(4)延伸
得られたウェブ(フィルム)をバンドから剥離し、クリップに挟み、固定端一軸延伸の条件で、延伸温度185℃および延伸倍率1.6倍でテンターを用いてフィルム搬送方向(MD(Machine Direction)方向)に直交する方向(TD(Transverse Direction)方向)に延伸した。この結果、厚み40μmの支持体を得た。
【0195】
2.中間膜の形成
[中間膜形成用組成物の調製]
下記に示す添加剤3(KAYARAD PET30(登録商標):日本化薬(株)製、質量平均分子量は298で、1分子中の官能基の数は3.4(平均))を70質量部、添加剤4(ブレンマーGLM(登録商標):日油(株)製)を30質量部、を固形分濃度が30質量%になるように酢酸メチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)の混合溶液に溶解させた。酢酸メチルとMIBKの比率は、65%/35%となるようにした。これらをミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して中間膜形成用組成物を調製した。中間膜形成用組成物固形分に対し、光重合開始剤(イルガキュア127(登録商標)、BASF社製)を4質量部含有させた。
【0196】
【化17】
【0197】
【化18】
【0198】
[中間膜形成方法]
この中間膜形成用組成物を支持体上に、ダイコーターを用いて塗布量6ml/mで塗布した。40℃で風乾燥した後、そのままの温度を維持しながら酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量20mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中間膜を形成した。得られた中間膜の膜厚は1.5μmであった。
【0199】
3.液晶材料の配向状態を固定した層の形成
[液晶材料の配向状態を固定した層の形成用組成物]
ホメオトロピック配向、ホモジニアス配向、ツイスト配向の液晶材料の配向状態を固定した層を形成するにあたり、それぞれ下記組成の液晶材料の配向状態を固定した層の形成用組成物を作成した。
【0200】
≪液晶材料の配向状態を固定した層用組成物(ホメオトロピック配向)の調製≫
下記の液晶化合物1を90質量部、下記の液晶化合物2を10質量部、下記の配向剤1を1質量部、下記の配向剤2を0.5質量部、下記の配向剤3を0.3質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907(登録商標)、チバガイギー社製)を3.0質量部、増感剤(カヤキュアーDETX(登録商標)、日本化薬(株)製)を1.0質量部、を固形分濃度33質量%になるようにメチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン(アノン)の混合溶媒に溶解した。MEKとアノンの混合比率は90%/10%とした。
【0201】
【化19】
【0202】
【化20】
【0203】
【化21】
【0204】
【化22】
【0205】
【化23】
【0206】
≪液晶材料の配向状態を固定した層用組成物(ホモジニアス配向・ツイスト配向)の調製≫
ホモジニアスは以降の場合には、上記の液晶化合物1を90質量部、上記の液晶化合物2を10質量部、下記の配向剤4を0.15質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3.0質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.0質量部、を固形分濃度33質量%になるようにメチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン(アノン)の混合溶媒に溶解した。MEKとアノンの混合比率は90%/10%とした。
【0207】
なお、ツイスト配向の場合には、上記素材に加え、下記のカイラル剤1を3.5質量部添加した。
【0208】
【化24】
【0209】
【化25】
【0210】
[液晶材料の配向状態を固定した層の形成方法]
ダイコーターを用いて塗布量5.5cc/mで塗布した。なお、ホモジニアス配向およびツイスト配向の液晶材料の配向状態を固定した層を形成する場合には、塗布する前に支持体、あるいは中間膜の表面にラビング処理を行った。ラビング処理は、ラビング布のついたラビングロールに、支持体をラップ角5°程度でラップさせながらラビング角度0°、ラビング回転数1500rpmで支持体にラビングを行った。塗布後、85℃の熟成温度で120秒間加熱し、液晶化合物を配向させた。また、中間膜を有さない場合(実施例3)は、乾燥及び液晶の配向性の観点から120℃で120秒間風をあてた。
【0211】
その後、その温度を40℃まで低下させ、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、光学フィルムを得た。
【0212】
4.支持体裏面の粒子配置
[粒子分散液の組成]
シリカ粒子分散液であるMEK-ST-L(粒子径50nm)(日産化学社製、添加量は表2に記載された突起数となるように調整)、酢酸メチル80質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)20質量部の混合液を作製した。なお、表2に示すように、粒子径を変更する場合には、粒子径100nm:MEK-ST-ZL(日産化学社製)、粒子径300nm:sicastar(ナカライテスク社製)に置き換えて使用した。また下記表のように酢酸メチルとMIBKの比率を変更する場合には、MEK-ST-L(日産化学社製)3質量部、酢酸メチル30質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)70質量部の混合液とした。また、バインダを添加する場合には、バインダとしてジアセチルセルロース(DAC、置換度2.15)を塗布液中に1質量%添加されるように調整を行った。
【0213】
[支持体への塗布方法]
粒子分散液を支持体の液晶材料の配向状態を固定した層と反対側の面に、ダイコーターを用いて塗布量14cc/m(14×10−6/m)で塗布した。液晶材料の配向状態を固定した層と支持体の間に中間膜を有する場合は、60℃で120秒間風をあてて乾燥した。
【0214】
5.評価
(1)支持体表面の中心面から20nm以上の高さを有する突起の1mmあたりの数
支持体表面の中心面から20nm以上の高さを有する突起の1mmあたりの数を、走査型プローブ顕微鏡(SPM(scanning probe microscope)、日立ハイテクノロジーズ社製)を使用して表面形状曲線を測定し、支持体表面の中心面から20nm以上の高さを有する突起の1mmあたりの数を画像解析から算出した。
【0215】
(2)粒子の厚み方向分布
サンプルの切片を作製し、走査透過型電子顕微鏡(STEM(scanning transmission electron microscope)、日立ハイテクノロジーズ社製、S−5500)にて、液晶材料の配向状態を固定した層と反対側の表面から、支持体の中央部まで観察範囲を移動させながら画像を取得し、その範囲内に存在する粒子をカウントして算出した。なお、判定は、以下のように行った。
【0216】
A:粒子径の30%以上90%未満の範囲で支持体に埋め込まれている粒子の割合が、観察範囲内の70%以上を占める
B:粒子径の30%以上90%未満の範囲で支持体に埋め込まれている粒子の割合が、観察範囲内の70%未満である
(3)ヘイズ
ヘイズは、JIS K7136:2000「透明材料のヘーズの求め方」に準じて、日本電飾株式会社製ヘーズメーターNDH 2000を用いて曇価の測定を行った。評価は、1.0未満を「A」、1.0以上を「B」とした。
【0217】
(4)偏光子との密着(リワーク性)
上記で作製した位相差フィルム試料を、ポリビニルアルコール系偏光子と、接着剤を用いて貼合し、且つ偏光子の反対側表面に、同様にして、富士フイルム(株)製、フジタックTD60UL(厚さ60μm)を貼合して、偏光板をそれぞれ作製した。位相差フィルムと偏光子とを貼合する際は、支持体であるセルロースアシレートフィルムの表面と偏光子の表面とを貼合した。偏光板の片面に粘着加工を施し、ガラス板に貼付け、試験サンプルとした。一つの角より対角線方向へ1mm/secの速度で90度方向へ剥離し、剥離位置の確認を行った。判定は以下のように行った。
【0218】
A:粘着剤とガラス板との界面で剥離
B:偏光子保護フィルムと偏光子との界面で剥離
(5)ブロッキング
作製した光学フィルムの液晶材料の配向状態を固定した層の面、および、支持体裏面を重ね合わせた。次いで、これらに1kgf/cmの圧力をかけて、50℃、60%RHの雰囲気下で30分間密着させた。その後、2枚の接フィルムの貼り付き状況から、下記の基準で判定した。
【0219】
A:2枚のフィルムがまったく張り付かず、すぐに剥離する
B:2枚のフィルムが張り付き、すぐに剥離しない
【0220】
【表2】
【0221】
結果を表2に示す。本発明の構成を満たす実施例1〜6は、ヘイズ、偏光子との密着、ブロッキングとも良好な結果を示した。突起数が1×10個/mmと少ない比較例1、3においては、ブロッキングが生じていた。また、粒子径が300nmである比較例2は、ヘイズ値が実施例より高い数値を示した。
【符号の説明】
【0222】
1、10…光学フィルム、2、12…透明フィルム支持体、3…光学機能層、4…粒子、13…コア層、14…外層、50…光学フィルム(偏光子保護フィルム)、51…バックコート層、60…偏光子、61…粘着剤層、62…偏光子(PVA)層、63…表面フィルム層
図1
図2
図3