(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239499
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】半導体積層基板、半導体素子、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20171120BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20171120BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20171120BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20171120BHJP
H01L 29/26 20060101ALI20171120BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20171120BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20171120BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20171120BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20171120BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/20
H01L29/26
H01L29/86 301D
H01L29/78 301B
H01L21/02 B
H01L21/205
【請求項の数】30
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-505046(P2014-505046)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2013057698
(87)【国際公開番号】WO2013137476
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-61213(P2012-61213)
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】梅野 和行
(72)【発明者】
【氏名】品川 達志
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】大友 晋哉
【審査官】
柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−100772(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/084431(WO,A1)
【文献】
特開2011−023642(JP,A)
【文献】
特開2010−232293(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/102044(WO,A1)
【文献】
特開2009−188252(JP,A)
【文献】
特開2012−243870(JP,A)
【文献】
特開2011−238685(JP,A)
【文献】
特開2011−119715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/02
H01L 21/20
H01L 21/205
H01L 21/336
H01L 29/26
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体積層基板であって、
Siからなる基板と、
積層半導体層と、を有し、
前記積層半導体層は、
前記基板に成長した、窒化物半導体からなり、前記基板に所定の反りを与える第一反り制御層であって、前記基板との界面となる最下層がAlN層である第一反り制御層と、
前記第一反り制御層上に成長した、該第一反り制御層の前記AlN層以外の部分よりも単位膜厚あたりの反り増加量が少ない窒化物半導体からなる第二反り制御層と、
前記第二反り制御層上に成長した窒化物半導体からなる活性層と、
を備え、
前記積層半導体層の全膜厚が4μm以上であり、
前記積層半導体層の成長後の室温における反り量が、曲率半径から計算して前記基板の直径が4インチで厚さが1mmの場合に±50μm以内の反り量に相当する値であり、
前記積層半導体層は、成長時に、前記基板の反りが、塑性変形する第一の反りを超えないように成長したものであり、
前記積層半導体層は、成長時に、前記基板の反りが、クラックが生じる第二の反りを超えないように成長したものであり、
前記積層半導体層は、成長終了時に、前記基板の反りが、前記第二の反りと、前記積層半導体層の成長温度−室温間の熱歪によるクラック発生を回避するための最低限界応力を発生させる第三の反りと、の間に収まるように成長したものであり、
前記積層半導体層の成長終了後に室温まで降温したものである
ことを特徴とする半導体積層基板。
【請求項2】
前記活性層の厚さが0.4μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体積層基板。
【請求項3】
当該半導体積層基板の前記積層半導体層の全膜厚に対して、前記活性層、前記第二反り制御層、および前記第一反り制御層の膜厚は、当該比が1:2:2である膜厚から±0.4μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体積層基板。
【請求項4】
当該半導体積層基板の外周部から幅10mmの領域を除いた領域でクラックが生じていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項5】
前記第一反り制御層は、量子サイズ効果を生じない程度に厚いAlxGa1−xN層と量子サイズ効果を生じない程度に厚いAlyGa1−yN層(ただし、x>y)とを複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項6】
前記第一反り制御層は、量子サイズ効果を生じない程度に厚いAlxGa1−xN層と量子サイズ効果を生じない程度に厚いAlyGa1−yN層(ただし、x>y)とを複数回繰り返し積層した構造を有し、かつそれらの界面にAl組成がxからyの間で段階的または連続的に傾斜して変化するAlGaN層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項7】
前記第一反り制御層は、膜厚20nm〜100nmのAlN層と膜厚100nm〜1000nmのGaN層とを複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項8】
前記第一反り制御層は、膜厚20nm〜100nmのAlN層と膜厚100nm〜1000nmのGaN層とを複数回繰り返し積層した構造を有し、かつそれらの界面にAl組成が段階的または連続的に傾斜して変化するAlGaN層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項9】
前記第一反り制御層は、
量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAlrGa1−rN層と膜厚4nm〜25nmのAlsGa1−sN層(ただし、r>s)とを複数回繰り返し積層した厚さ20nm〜500nmの層と、
膜厚100nm〜1000nmのAltGa1−tN層(ただし、t<0.3)と、
を複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項10】
前記第一反り制御層は、
量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAlrGa1−rN層と膜厚4nm〜25nmのAlsGa1−sN層(ただし、r>s)とを複数回繰り返し積層した、かつそれらの界面にAl組成がrからsの間で段階的または連続的に傾斜して変化するAlGaN層を設けたものである構造を積層した厚さ20nm〜500nmの層と、
膜厚100nm〜1000nmのAltGa1−tN層(ただし、t<0.3)と、
を複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項11】
前記第一反り制御層は、
Al組成がsからrに向かって段階的または連続的に増加する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層とAl組成がrからsに向かって段階的または連続的に減少する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層とを複数回繰り返し積層した厚さ20nm〜500nmのAlGaN層と、
膜厚100nm〜1000nmのAltGa1−tN層(ただし、t<0.3)と、
を複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項12】
前記第二反り制御層は、膜量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAluGa1−uN層と膜厚4nm〜25nmのAlvGa1−vN層(ただし、v<u)とを複数回繰り返し積層したものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項13】
前記第二反り制御層は量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAluGa1−uN層と膜厚4nm〜25nmのAlvGa1−vN層(ただし、v<u)とを複数回繰り返し積層したものであり、かつそれらの界面にAl組成がvからuの間で段階的または連続的に傾斜して変化する層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項14】
前記第二反り制御層は、Al組成がvからuに向かって段階的または連続的に増加する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層と、Al組成がuからvに向かって段階的または連続的に減少する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層とを複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項15】
前記第二反り制御層は、Al組成25%〜100%の範囲で表面方向に向けてAl組成が減少するようにAlGaNを積層した構造を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項16】
前記活性層は、GaNであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項17】
前記活性層は、炭素濃度が1×1016cm−3〜5×1019cm−3であり、表面に近いほど炭素濃度が少なくなる構造を有することを特徴とする請求項16に記載の半導体積層基板。
【請求項18】
前記活性層で炭素濃度が1×1017cm−3以下である領域が100nm以上であることを特徴とする請求項16または17に記載の半導体積層基板。
【請求項19】
前記第一反り制御層および前記第二反り制御層のそれぞれの平均炭素濃度が0.5〜5×1019cm−3であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項20】
前記活性層上に成長した、前記活性層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する半導体層または絶縁膜をさらに備え、前記活性層に二次元電子ガスを発生させたことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項21】
前記基板の厚さが結晶成長時に525μm〜1200μmであることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項22】
前記基板の外周部から幅20mmの領域を除いた領域で当該基板にスリップラインが生じていないことを特徴とする請求項1〜21のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項23】
前記基板中の酸素濃度が11.5×1017cm−3〜14.5×1017cm−3であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項24】
前記基板の中央部から外周部までにおける該基板中の酸素濃度の差が5%以内であることを特徴とする請求項23に記載の半導体積層基板。
【請求項25】
前記基板はオリエンテーションフラットを有さないことを特徴とする請求項1〜24のいずれか一つに記載の半導体積層基板。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか一つに記載の半導体積層基板を備えることを特徴とする半導体素子。
【請求項27】
半導体積層基板の製造方法であって、
Siからなる基板上に、窒化物半導体からなり、前記基板に所定の反りを与える第一反り制御層であって、前記基板との界面となる最下層がAlN層である第一反り制御層を成長し、
前記第一反り制御層上に、該第一反り制御層の前記AlN層以外の部分よりも単位膜厚あたりの反り増加量が少ない窒化物半導体からなる第二反り制御層を成長し、
前記第二反り制御層上に、窒化物半導体からなる活性層を成長し、
前記第一反り制御層、前記第二反り制御層、および前記活性層を含む積層半導体層の成長終了後に室温まで降温する、
ことを含み、
前記積層半導体層の成長時に、前記基板の反りが、塑性変形する第一の反りを超えないように前記積層半導体層を成長させ、
前記積層半導体層の成長時に、前記基板の反りが、クラックが生じる第二の反りを超えないように前記積層半導体層を成長させ、
前記積層半導体層の成長終了時に、前記基板の反りが、前記第二の反りと、前記積層半導体層の成長温度−室温間の熱歪によるクラック発生を回避するための最低限界応力を発生させる第三の反りと、の間に収まるように前記積層半導体層を成長させる、
ことを特徴とする半導体積層基板の製造方法。
【請求項28】
前記成長は有機金属気相成長法を用いて行い、かつ前記成長においてレーザ反射装置によって前記半導体積層基板の曲率半径から反りを測定することをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の半導体積層基板の製造方法。
【請求項29】
有機金属気相成長法を用いて、前記活性層を1000℃〜1080℃で成長し、前記第一反り制御層および第二反り制御層を900℃〜1000℃で成長することを特徴とする請求項27または28に記載の半導体積層基板の製造方法。
【請求項30】
請求項27〜29のいずれか一つに記載の方法で製造した半導体積層基板を用いて半導体素子を製造することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体積層基板、半導体素子、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐圧性が高く反りが小さい半導体素子の構成が開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−289956号公報
【特許文献2】特開2011−119715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造において半導体素子の電流コラプスを抑制するためには、活性層(たとえばGaN)に加わる電界を低減させるためにその膜厚を厚く成長したい。しかし、耐圧を増加させるために全膜厚を増加させた状態(たとえば、4μm以上)で活性層を厚く成長する場合、半導体積層基板におけるクラック密度の増加、およびこれに伴う半導体素子におけるリーク電流の増加が発生するという問題があった。また特許文献2に記載の構造においては全膜厚を増加させた状態(たとえば、4μm以上)でクラック密度の増加無しに反りの調整を任意に制御することが困難であることや、製造に時間がかかり製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、製造コストを低減し、クラック密度の増加なく電流リークおよび電流コラプスを抑制できる半導体積層基板、半導体素子、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る半導体積層基板は、半導体積層基板であって、Siからなる基板と、積層半導体層と、を有し、前記積層半導体層は、窒化物半導体からなる活性層と、前記基板と前記活性層との間に形成された、前記基板に所定の反りを与える第一反り制御層と、該第一反り制御層よりも単位膜厚あたりの反り増加量が少ない窒化物半導体からなる第二反り制御層とを含み、前記積層半導体層の全膜厚が4μm以上であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る半導体積層基板は、Siからなる基板と、積層半導体層と、を有し、前記積層半導体層は、前記基板上に成長した、窒化物半導体からなり、前記基板に所定の反りを与える第一反り制御層と、前記第一反り制御層上に成長した、該第一反り制御層よりも単位膜厚あたりの反り増加量が少ない窒化物半導体からなる第二反り制御層と、前記第二反り制御層上に成長した窒化物半導体からなる活性層と、を備え、前記積層半導体層の全膜厚が4μm以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、当該半導体積層基板の積層半導体層の全膜厚に対して前記活性層、前記第二反り制御層、および前記第一反り制御層の膜厚は、当該比が1:2:2である膜厚から±0.4μmの範囲であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、当該半導体積層基板の外周部から幅10mmの領域を除いた領域でクラックが生じていないことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層は、量子サイズ効果を生じない程度に厚いAl
xGa
1−xN層と量子サイズ効果を生じない程度に厚いAl
yGa
1−yN層(ただし、x>y)とを複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層は、量子サイズ効果を生じない程度に厚いAl
xGa
1−xN層と量子サイズ効果を生じない程度に厚いAl
yGa
1−yN層(ただし、x>y)とを複数回繰り返し積層した構造を有し、かつそれらの界面にAl組成がxからyの間で段階的または連続的に傾斜して変化するAlGaN層を設けたものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層は、膜厚20nm〜100nmのAlN層と膜厚100nm〜1000nmのGaN層とを複数回繰り返し積層したものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層は、膜厚20nm〜100nmのAlN層と膜厚100nm〜1000nmのGaN層とを複数回繰り返し積層した構造を有し、かつそれらの界面にAl組成が段階的または連続的に傾斜して変化するAlGaN層を設けたものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層は、量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAl
rGa
1−rN層と膜厚4nm〜25nmのAl
sGa
1−sN層(ただし、r>s)とを複数回繰り返し積層した厚さ20nm〜500nmの層と、膜厚100nm〜1000nmのAl
tGa
1−tN層(ただし、t<0.3)と、を複数回繰り返し積層したものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層は、量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAl
rGa
1−rN層と膜厚4nm〜25nmのAl
sGa
1−sN層(ただし、r>s)とを複数回繰り返し、かつそれらの界面にAl組成がrからsの間で段階的または連続的に傾斜して変化する層を設けたものである構造を積層した厚さ20nm〜500nmの層と、膜厚100nm〜1000nmのAl
tGa
1−tN層(ただし、t<0.3)と、を複数回繰り返し積層したものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層は、Al組成がsからrに向かって段階的または連続的に増加する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層とAl組成がrからsに向かって段階的または連続的に減少する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層とを複数回繰り返し積層した厚さ20nm〜500nmのAlGaN層と、膜厚100nm〜1000nmのAl
tGa
1−tN層(ただし、t<0.3)と、を複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第二反り制御層は量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAl
uGa
1−uN層と膜厚4nm〜25nmのAl
vGa
1−vN層(ただし、v<u)とを複数回繰り返し積層したものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第二反り制御層は量子サイズ効果を生ずる程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAl
uGa
1−uN層と膜厚4nm〜25nmのAl
vGa
1−vN層(ただし、v<u)とを複数回繰り返し積層したものであり、かつそれらの界面にAl組成がvからuの間で段階的または連続的に傾斜して変化する層を設けたものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第二反り制御層は、Al組成がvからuに向かって段階的または連続的に増加する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層と、Al組成がuからvに向かって段階的または連続的に減少する厚さが1nm〜25nmのAlGaN傾斜層とを複数回繰り返し積層した構造を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第二反り制御層は、Al組成25%〜100%の範囲で表面方向に向けてAl組成が減少するようにAlGaNを積層したものであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記活性層は、GaNであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記活性層は、炭素濃度が1×10
16cm
−3〜5×10
19cm
−3であり、表面に近いほど炭素濃度が少なくなる構造を有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記の活性層で炭素濃度が1×10
17cm
−3以下である領域が100nm以上であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記第一反り制御層および前記第二反り制御層のそれぞれの平均炭素濃度が0.5〜5×10
19cm
−3であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記活性層上に成長した、前記活性層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する半導体層または絶縁膜をさらに備え、前記活性層に二次元電子ガスを発生させたことを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記基板の厚さが結晶成長時に525μm〜1200μmであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記積層半導体層の成長後の室温における反り量が、曲率半径から計算して前記基板の直径が4インチで厚さが1mmの場合に±50μm以下の反り量に相当する値であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記基板の外周部から幅20mmの領域を除いた領域で当該基板にスリップラインが生じていないことを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記基板中の酸素濃度が11.5×10
17cm
−3〜14.5×10
17cm
−3であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記基板の中央部から外周部までにおける該基板中の酸素濃度の差が5%以内であることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る半導体積層基板は、上記の発明において、前記基板はオリエンテーションフラットを有さないことを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る半導体素子は、上記の発明の半導体積層基板を備えることを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る半導体積層基板の製造方法は、Siからなる基板上に、窒化物半導体からなり、前記基板に所定の反りを与える第一反り制御層を成長し、前記第一反り制御層上に、該第一反り制御層よりも単位膜厚あたりの反り増加量が少ない窒化物半導体からなる第二反り制御層を成長し、前記第二反り制御層上に、窒化物半導体からなる活性層を成長することを含むことを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る半導体積層基板の製造方法は、上記の発明において、前記成長は有機金属気相成長法を用いて行い、かつ前記成長においてレーザ反射装置によって前記半導体積層基板の曲率半径から反りを測定することをさらに含むことを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係る半導体積層基板の製造方法は、上記の発明において、有機金属気相成長法を用いて、前記活性層を1000℃〜1080℃で成長し、前記第一反り制御層および第二反り制御層を900℃〜1000℃で成長することを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係る半導体素子の製造方法は、上記の発明の方法で製造した半導体積層基板を用いて半導体素子を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、クラック密度の増加なく電流リークおよび電流コラプスを抑制できるという効果を奏し、かつ製造コストを低減できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る半導体積層基板の模式図である。
【
図2】
図2は、成長時間と半導体積層基板の反りとの関係を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態2に係る半導体積層基板の模式図である。
【
図3C】
図3Cは、第一反り制御層の層構造の別の例を示す図である。
【
図3E】
図3Eは、第二反り制御層の層構造の別の例を示す図である。
【
図3F】
図3Fは、第二反り制御層の層構造のさらに別の例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態3に係る半導体積層基板の模式図である。
【
図5】
図5は、実施の形態4に係る半導体積層基板の模式図である。
【
図6】
図6は、実施例に係る半導体積層基板の模式図である。
【
図7A】
図7Aは、4インチSi基板を用いた場合における成長時間と半導体積層基板の反りとの関係を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、
図6の実施例および単純な超格子バッファ層における基板方向リーク電流と面内方向のリーク電流とを示す図である。
【
図8】
図8は、積層半導体層成長後、室温降下後の直後の比較例の半導体積層基板の表面の写真を示す図である。
【
図9】
図9は、
図8から2ヶ月後の比較例の半導体積層基板の表面の写真を示す図である。
【
図10】
図10は、基板中の酸素濃度と、積層半導体層の成長中の反り最大値との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、酸素濃度が11.0×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板におけるSi(111)基板に対して回折条件g220に対して得られたX線トポグラフィの画像を示す図である。
【
図12】
図12は、酸素濃度が12.2×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板におけるSi(111)基板に対して回折条件g220に対して得られたX線トポグラフィの画像を示す図である。X線トポグラフィの画像を示す図である。
【
図13】
図13は、酸素濃度が15.0×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板におけるSi(111)基板に対して回折条件g220に対して得られたX線トポグラフィの画像を示す図である。X線トポグラフィの画像を示す図である。
【
図14】
図14は、酸素濃度が12.5×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板におけるSi(111)基板に対して回折条件g220に対して得られたX線トポグラフィの画像を示す図である。
【
図15】
図15は、実施の形態5に係るダイオードの模式図である。
【
図16】
図16は、実施の形態6に係る電界効果トランジスタの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、図面を参照して本発明に係る半導体積層基板、半導体素子、およびその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る半導体積層基板の模式図である。半導体積層基板10は、基板1と、第一反り制御層2と、第二反り制御層3と、活性層4とを備えている。第一反り制御層2と、第二反り制御層3と、活性層4とは、基板1上に、有機金属気相成長法で順次成長したものである。第一反り制御層2は基板1との界面となる最下層にAlN層2aを有している。
【0041】
第一反り制御層2は、膜厚あたりの反り増加量が大きな構造とする。第二反り制御層3は、膜厚あたりの反り増加量が第一反り制御層2に比べて小さな構造とする。これによって、第二反り制御層3の上に活性層4を積層することで、成長中の反りを調整してクラック発生を抑制することができる。また、活性層4の膜厚を厚くできるので、活性層に加わる電界を低減させることにより電流コラプスを抑制することができる。
【0042】
図2は、成長時間と半導体積層基板の反りとの関係を示す図である。なお、成長層(第一反り制御層2〜活性層4)の成長時には、基板は室温から成長温度まで昇温され、成長終了後には室温まで降温される。成長時間は各層の膜厚に比例する(ただし層の組成によって比例係数は異なる)。縦軸は成長中の各層における平均曲率半径であり、レーザ反射装置で測定できる。
図2において、図形6、7は反りの方向を示している。図形6は成長方向を上として積層基板が凸状に反り、図形7は凹状に反ることを示している。
【0043】
線L1は第一反り制御層2におけるAlN層2aとその他の部分との界面、線L2は第一反り制御層2と第二反り制御層3との界面、線L3は第二反り制御層3と活性層4との界面、線L4は活性層4の表面を示している。線L5(丸数字1)は、積層基板がそれ以上厚くなると塑性変形し、破断などが生じやすくなる、超えてはならない応力限界となる反り、線L6(丸数字2)は、積層基板がそれ以上厚くなると成長層(第一反り制御層2〜活性層4)にクラックが発生する、超えてはならない応力限界となる反り、線L7(丸数字3)は、成長温度−室温間の熱歪によるクラック発生を回避するために超えるべき最低限界応力を発生させる反りを示している。
【0044】
本実施の形態1では、成長終了時において、反り(曲率半径)を、線L6と線L7との範囲(矢印Ar1の示す範囲)に収めることができるので、クラック発生を抑制しつつ、活性層4の膜厚を厚くして、電流コラプスを抑制することができる。特に、4インチ(約100mm)口径の半導体積層基板の外周部から幅10mmの領域を除いた領域でクラックが生じないようにすることができる。また、4インチ口径の半導体積層基板に限らず、例えば6インチ(約150mm)口径の半導体積層基板のように、4インチ以上12インチ以下の口径を有する半導体積層基板において同様の効果を得ることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図3Aは、実施の形態2に係る半導体積層基板の模式図である。半導体積層基板10Aは、基板1Aと、基板1A上に順次成長された、第一反り制御層2Aと、第二反り制御層3Aと、活性層4Aと、半導体層5Aを備えている。
【0046】
基板1Aは、厚さが525μm〜1200μmのSi(111)基板であり、±10°の範囲で微傾斜していてもよい。
【0047】
第一反り制御層2Aは、膜厚20nm〜200nmのAlN層2Aaの上に、
図3Bに示すように量子サイズ効果を生じない程度に厚い膜厚100nm〜1000nmであり炭素をドープしたGaNからなるC−GaN層2A1と、量子サイズ効果を生じない程度に厚い膜厚20nm〜100nmのAlN層2A2とを複数回繰り返し積層した構造を有するものである。なお、AlNにドープされる炭素濃度はGaNよりも低く、かつ第一反り制御層での反り量を大きくするためにはC-GaNを100nm以上にすることが望ましい。また、C-GaNでのクラック発生を抑制させるためには1000nm以下であることが望ましい。なお、C−GaN層2A1およびAlN層2A2にAlおよびGaがそれぞれ含まれていても良いが、含まれていない場合に最も反りを増加できる効果を生じる。なお、第一反り制御層2Aの最上層には、表面が荒れたAlN層2A3があるため、第一反り制御層2Aの転位がそこで対消滅するので、これより上の層での転位密度を低減することができる。なお、AlN層2A3の代わりに、Al組成80%以上でかつ表面が荒れたAlGaN層や表面方向に向かって段階的にAl組成を減少させた多段AlGaN層を設けても良い。ここで多段AlGaN層は、少なくとも、最も基板側の領域にAl組成が80%以上である下部AlGaN層と、最も表面側の領域に多段AlGaN層上に形成される層と比べて同じか大きいAl組成を有する上部AlGaN層を備えていれば、転位密度を効果的に低減することができる。但し、多段AlGaN層上に形成される層が量子サイズ効果を生ずる程度に薄い層の積層構造の場合は、その積層構造の平均Al組成と比較するものとする。尚、下部AlGaN層と上部AlGaN層との間に段階的にAl組成が変化するように設けられた一つ以上の中間AlGaN層をさらに有していても良い。また、Al組成80%以上でかつ表面が荒れたAlGaN層および上記の多段AlGaN層は基板1Aと接するAlN層2AaとC−GaN層2A1との間に形成しても良い。また、第一反り制御層におけるC−GaN層2A1とAlN層2A2の界面において該構造中にピエゾ分極と自発分極による意図しないキャリア(二次元電子ガス)発生する場合がある。それによる基板1A方向に流れるリーク電流が増加するため、
図3Cに示すように、C−GaN層2A1とその上に形成されたAlN層2A2との界面に、C−GaN層2A1からAlN層2A2に向かってAl組成が段階的または連続的に増加するように形成された第一AlGaN傾斜層と、AlN層2A2とその上に形成されたC−GaN層2A1との界面に、AlN層2A2からC−GaN層2A1に向かってAl組成が段階的または連続的に減少するように形成された第二AlGaN傾斜層をさらに設けても良い。
【0048】
第二反り制御層3Aは、
図3Dに示すように、該構造中にピエゾ分極と自発分極による意図しないキャリア(二次元電子ガス)発生による電界遮蔽層を生じさせないために量子サイズ効果を生ずる程度に薄い膜厚1nm〜10nmのAl
uGa
1−uN層と膜厚15nm〜25nmのAl
vGa
1−vN層(ただし、v<u)とを複数回繰り返し積層した超格子構造を有する。なお、意図しないキャリア発生をさらに抑制し、面内方向に流れるリーク電流を抑制するために、
図3Eに示すようにAl
vGa
1−vN層とAl
uGa
1−uN層の間にAl組成がvからuに向かって段階的または連続的に増加する第三AlGaN傾斜層およびAl
uGa
1−uN層とAl
vGa
1−vN層の間にAl組成がuからvに向かって段階的または連続的に減少する第四AlGaN傾斜層をさらに設けてもよい。ここでいう連続的な増加または減少とは、単位厚さあたりのAl組成変化量が一定の場合に限らず、表面側に向かうにつれて変化量が増加する場合と減少する場合や連続的な増減を繰り返すような場合も含む。なお、この超格子構造における平均Al組成に相当するAlGaN層を単純に積層した場合には格子緩和により第二反り制御層における反りの増加が生じず
図2における線L7(丸数字3)より下方領域に相当し成長後に室温で半導体積層基板全面にクラックが生じる。また、第二反り制御層3Aは上記の構造に限らず、
図3Fに示すようにAl組成がvからuに向かって段階的または連続的に増加する厚さが1nm〜25nmの第五AlGaN傾斜層と、Al組成がuからvに向かって段階的または連続的に減少する厚さが1nm〜25nmの第六AlGaN傾斜層とを複数回繰り返し積層した構造としても良い。
【0049】
第一反り制御層2A、第二反り制御層3Aの平均炭素濃度は基板1A方向に流れる電流リークを抑制させるために0.5×10
19cm
−3以上が好ましく、炭素添加起因の欠陥によるリーク電流発生を抑制するために5×10
19cm
−3未満が好ましい。
【0050】
活性層4Aは、電流コラプスの原因である深い準位を形成する炭素の炭素濃度が電流コラプスに影響しない1×10
17cm
−3以下のu−GaNからなる。なお、活性層4Aに面内方向を流れるリーク電流を抑制するためにu−GaN層の下部に炭素濃度0.5×10
19cm
−3以上を含有するC−GaNを含んでいても良いが、電流コラプスを抑制するためにはu−GaNの膜厚を100nm以上にすることが好ましい。なお、C-GaN層はAl組成20%以下のC−AlGaN層としても良い。
【0051】
半導体層5Aは、活性層4Aのバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有するAlGaNからなる。半導体層5Aは、活性層4Aに二次元電子ガスを発生させるためのものである。半導体層5Aの代わりに活性層4Aのバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有する半導体もしくは絶縁膜を備えていても良い。
【0052】
半導体積層基板10Aは、第一反り制御層2Aよりも単位膜厚あたりの反り増加量が少ない第二反り制御層3Aを備えている。その結果、活性層4Aを厚く(たとえば0.4μm以上)でき、電流コラプスを抑制できる。また、第一反り制御層2Aの成長速度は、単純な超格子構造のバッファ層の成長速度と比べて早くすることができるため、製造時のコスト削減に有利である。また、基板方向のリーク電流も低減することができる。
【0053】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3に係る半導体積層基板の模式図である。半導体積層基板10Bは、
図3Aの半導体積層基板10Aにおいて、第二反り制御層3Aを第二反り制御層3Bに置き換えたものである。
【0054】
第二反り制御層3Bは、Al組成25%〜100%の範囲で表面方向に向けてAl組成が減少するような組成のAlGaN層3B1、3B2、3B3を積層した構造を有するものである。AlGaN層3B1、3B2、3B3の各層内でのAl組成は一定であるが、表面方向に向けて減少していてもよい。また、該構造中にピエゾ分極と自発分極による意図しないキャリア(二次元電子ガス)発生による電界遮蔽層を生じさせないために膜厚1nm〜10nmのAl
uGa
1−uNと膜厚4nm〜25nmのAl
vGa
1−vN(ただし、v<u)とを複数回繰り返し積層した超格子構造の平均Al組成をAlGaN層3B1、3B2、3B3に相当させるように積層させてもよい。これによって、表面に向かうにつれてバンドギャップが小さくなるので、第二反り制御層3B中での意図しないキャリア(二次元電子ガス)発生を抑制することができる。また、活性層4A内の貫通転位密度を低減する効果を有する。第二反り制御層中の二次元電子ガスの発生を抑制することで面内方向に流れるリーク電流をさらに低減することができる。
【0055】
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4に係る半導体積層基板の模式図である。半導体積層基板10AAは、
図3Aの半導体積層基板10Aにおいて、第一反り制御層2Aを第一反り制御層2AAに置き換えたものである。
【0056】
第一反り制御層2AAは、膜厚20nm〜200nmのAlN層2Aaの上に、膜厚100nm〜1000nmのAl
tGa
1−tN層2AA1(ただし、t<0.3)と、
図3Dと同様に量子サイズ効果を生じない程度に薄い、膜厚1nm〜10nmのAl
rGa
1−rN層と膜厚4nm〜25nmのAl
sGa
1−sN層(ただし、r>s)とを複数回繰り返し積層した厚さ20nm〜500nmのAlGaN層2AA2と、を複数回繰り返し積層した構造を有する。なお、Al
rGa
1−rN層とAl
sGa
1−sN層との界面にピエゾ分極と自発分極による意図しないキャリア発生を抑制し、基板1A方向に流れるリーク電流を抑制するために
図3Eと同じようにAl
rGa
1−rN層とAl
sGa
1−sN層の間にAl組成がsからrに向かって段階的または連続的に増加する第一AlGaN傾斜層およびAl
sGa
1−sN層とAl
rGa
1−rN層の間にAl組成がsからrに向かって段階的または連続的に減少する第二AlGaN傾斜層を設けてもよい。また、第一反り制御層3Aは上記の構造に限らず、膜厚20nm〜200nmのAlN層2Aaの上に、膜厚100nm〜1000nmのAl
tGa
1−tN層2AA1(ただし、t<0.3)と、
図3Fと同じようにAl組成がsからrに向かって段階的または連続的に増加する厚さが1nm〜25nmの第七AlGaN傾斜層とAl組成がrからsに向かって段階的または連続的に減少する厚さが1nm〜25nmの第八AlGaN傾斜層とを複数回繰り返し積層した厚さ20nm〜500nmのAlGaN層とを複数回繰り返し積層した構造としても良い。
【0057】
半導体積層基板10AAは、第一反り制御層2AAよりも単位膜厚あたりの反り増加量が少ない第二反り制御層3Aを備えている。その結果、活性層4Aを厚く(たとえば0.4μm以上)でき、電流コラプスを抑制できる。
【0058】
なお、上述した各半導体積層基板の積層半導体層(成長層)の全膜厚に対して、活性層、第二反り制御層、および第一反り制御層の膜厚は、当該比が1:2:2である膜厚から±0.4μmの範囲であれば、耐圧を維持した状態で電流リークならびに電流コラプスを抑制させるのに好適である。
【0059】
活性層、第二反り制御層、および第一反り制御層の膜厚は、当該比が1:2:2である膜厚から±0.4μmの範囲として全膜厚を増加させれば、クラック密度の増加なしに耐圧を増加させることができる。
【0060】
つぎに、
図6に模式図を示す実施例に係る半導体積層基板を製造した。半導体積層基板10Cは、
図3Aの半導体積層基板10Aにおいて、活性層4A、半導体層5Aを、それぞれ、活性層4C、半導体層5Cに置き換えたものである。
【0061】
半導体層5CはAl
0.25Ga
0.75Nからなる。活性層4Cは、C−GaN層4C1と、u−GaN層4C2とからなる。活性層4Cの炭素濃度は1×10
16cm
−3〜5×10
19cm
−3であり、表面に近いほど炭素濃度が少なくなる構造を有し、かつu−GaN層4C2は、炭素濃度が1×10
17cm
−3以下で厚さが0.1μm以上の領域である。ここで、チャネルに近い活性層4C2をu−GaN層とすることで、炭素が形成する深い準位を低減することができ、電流コラプスを一層抑制することができる。また、チャネルから離れた活性層4C1をC−GaN層とすることで高抵抗化し、リーク電流を低減することができる。
【0062】
第一反り制御層2Aの膜厚は2μm+40nm、第二反り制御層3Aの膜厚は2μm、C−GaN層4C1とu−GaN層4C2の膜厚の和は1.2μmである。積層半導体層(成長層)の全膜厚は5.3μmである。基板1Aの直径は4インチ、厚さは1mmである。
【0063】
この実施例では、有機金属気相成長法を用いて、上記の所望の炭素濃度に活性層の炭素濃度を低減させるために1000℃〜1080℃で成長し、第一反り制御層および第二反り制御層を上記の所望の炭素濃度を得るために900℃〜1000℃で成長した。
【0064】
図7Aは、成長時間と半導体積層基板の反りとの関係を示す図である。線L8は、第一反り制御層2AにおけるAlN層2Aaと他の部分との界面、線L9は第一反り制御層2Aと第二反り制御層3Aとの界面、線L10は第二反り制御層3Aと活性層4Cとの界面、線L11は活性層4Cと半導体層5Cとの界面を示している。線L13、L14は、それぞれ、第一反り制御層2Aと第二反り制御層3Aとの成長時間−反りの傾きを示している。第二反り制御層3Aは第一反り制御層2Aよりも単位膜厚(成長時間)あたりの反り増加量が少なくなっている。
【0065】
図7Aに示す実施例では、成長層の成長後に、矢印Ar2で示すように室温への降温過程を行ったところ、反りが約0μmまで抑制された。また、第一反り制御層2Aと同等の膜厚を超格子構造のバッファ層で行う場合と比較して30%成長時間を短縮でき原料であるトリメチルガリウムおよびアンモニアを30%節約でき、製造コストの低減に有効であった。
【0066】
図7Bは
図6の実施例および比較例(単純な超格子バッファ層)における基板方向リーク電流と面内方向のリーク電流とを示す図である。発明者等はクラックフリーでは無いが
図6の実施例と同一の膜厚となるように第一反り制御層2Aの代わりに第二反り制御層3Aの厚さを4μmとした半導体積層基板を比較例として作製し、クラックの無い部分において基板方向および面内方向のリーク電流とを比較した。その結果、
図7Bに示されるように面内方向のリーク電流は同等であるが、基板方向のリーク電流が本実施例において一桁減少する効果があった。比較例の場合、Al組成が高いAlGaN層もしくはAlN層に対しては炭素添加が困難になるためバッファ層中の残留キャリアが増加する一方、本実施例では第一反り制御層の大部分を高抵抗なC−GaN層が占めているため、残留キャリアが極めて低く、基板方向のリーク電流を抑制する効果を有している。
【0067】
ところで、
図7Aに示す室温への降温過程後に半導体積層基板が室温となったときに、半導体積層基板の反り量が曲率半径から計算して前記基板の直径が4インチで厚さが1mmの場合に±50μm以内であることが好ましい。
【0068】
ここで、比較例として、第一反り制御層2AのAlN層2Aaの膜厚を厚くし、厚くしたAlN層2Aaの膜厚相当分C−GaN層2A1の膜厚を薄くすることにより室温時の反り量の絶対値が曲率半径から計算して前記基板の直径が4インチで厚さが1mmの場合に50μmより大きい総膜厚5.2μmの半導体積層基板を作製した。そして、その表面の状態の経時変化を観察した。
【0069】
図8は、積層半導体層成長からの室温降下直後の比較例の半導体積層基板の表面の写真を示す図である。
図9は、
図8から2ヶ月後の比較例の半導体積層基板の表面の写真を示す図である。なお、
図8、9において右下に示す白い線は100μmを示すスケールである。
図8に示すように、室温降下直後の比較例の半導体積層基板の表面は綺麗な面であったが、2ヶ月後には白い線で示すクラックが多数発生していた。一方、実施例の半導体積層基板の表面の状態の経時変化を観察したところ、2ヶ月経過後も室温降下直後の表面状態から変化が無く、比較例のようなクラックの発生は見られなかった。
【0070】
なお、上記実施例、比較例では、基板の直径が4インチであるが、基板の直径が他の大きさである場合は、積層半導体層の成長後の室温における半導体積層基板の反り量が、曲率半径から計算して基板の直径が4インチで厚さが1mmの場合に±50μm以内の反り量に相当する値であることが好ましい。
【0071】
つぎに、本発明者らは、
図2、7Aに線L5で示す応力限界となる反りの値は、Si基板中の酸素濃度に依存して変動することを確認した。ここで、酸素濃度は、ASTM(American Society for Testing and Materials) F121−79の規定による酸素濃度とする。
【0072】
本発明者らは、基板の酸素濃度を変えた以外は上記の実施例と同じ条件で半導体積層基板を製造した。製造時、積層半導体層の成長中の基板の反りの最大値を測定した。
【0073】
図10は、基板中の酸素濃度と、積層半導体層の成長中の反り最大値との関係を示す図である。
図10に示すように、基板中の酸素濃度が11.5×10
17cm
−3〜14.5×10
17cm
−3の範囲にある場合は、反り最大値は150μm以下であったが、当該範囲を越えた酸素濃度の場合は、反り最大値が150μmを越えて大きくなっており、反り量が急激に増加した。
【0074】
図11は、酸素濃度が11.0×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板のX線トポグラフィ画像を示す図である。
図12は、酸素濃度が12.2×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板のX線トポグラフィの画像を示す図である。
図13は、酸素濃度が15.0×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板のX線トポグラフィの画像を示す図である。なお、
図11〜13中の白い箇所が基板中に生じたスリップラインの領域を示している。
図11に示すように酸素濃度が11.5×10
17cm
−3よりも小さい場合、Si基板内部全体にスリップラインが生じていた。このように酸素濃度が低い場合は、基板中にスリップ転位が発生し、基板が塑性変形してしまい、反り最大値がシリコンの物性から決まる反りの最大値である150μmを越えて大きくなってしまったと考えられる。一方、
図13に示すように酸素濃度が14.5×10
17cm
−3よりも大きい場合、基板中の酸素偏析によって酸素とシリコンとがクラスター欠陥を形成し、これによって基板の降伏応力が低下したと考えられる。そして、このような降伏応力の低下によって基板が塑性変形してしまい、反り最大値が150μmを越えて大きくなってしまったと考えられる。
【0075】
図11および
図13に示した半導体積層基板の室温での反りはSi基板が塑性変形していたため、成長中の反り量の最大値と同程度の反りであるのに対し、
図12に示した半導体積層基板はSi基板が弾性変形しているため室温で±50μm以内の反り量であった。また、基板の外周部から幅20mmの領域を除き、基板にスリップラインは生じていなかった。
【0076】
基板中の酸素濃度が11.5×10
17cm
−3〜14.5×10
17cm
−3の範囲にある場合は、基板の塑性変形は発生せず、基板が弾性変形するため、成長中の反り最大値は曲率半径から計算して基板の直径が4インチで厚さが1mmの場合における150μmの反り量に相当する値を超えないと考えられる。このように基板に塑性変形が発生しない場合は、半導体積層基板の反りを、室温に降温後に所望の反り量の範囲内に収まるように制御することができる。この基板中の酸素濃度範囲は膜厚4μm以上の半導体積層基板に好適である。なお、基板の中央部から外周部までにおける基板中の酸素濃度の差は、5%以内であることが好ましい。
【0077】
基板の厚さと半導体積層基板との曲率半径の関係は単純なバイメタル近似に従うと下記式(1)で表される。すなわち基板の厚みが厚くなると厚みに自乗で曲率半径が大きくなる。なお、曲率半径と反り量は下記式(2)に従う。すなわち基板の直径が大きくなるほど同じ曲率半径では反り量は大きくなる。式(1)および式(2)にしたがって本実施例から基板の厚さと直径に対して基板の降伏応力が類推できる。
【0078】
R=1/{6(αsub−αepi)ΔT}・(Esub/Eepi)・(tsub
2/tepi) ・・・ (1)
h=R[1−cos{d/(2R)}] ・・・ (2)
ただし、R:曲率半径、h:半導体積層基板の反り量、αsub:基板の熱膨張係数、αepi:積層成長層の熱膨張係数、ΔT:室温と成膜温度との温度差、tsub:基板厚さ、tepi:積層成長層の厚さ、Esub:基板のヤング率、Eepi:積層成長層のヤング率、d:基板の直径
【0079】
図14は、酸素濃度が12.5×10
17cm
−3の場合の半導体積層基板のX線トポグラフィの画像を示す図である。なお、
図14中の白い部分はスリップラインが生じた領域を示している。
図14の紙面左側にはオリエンテーションフラットが形成されている。
図14に白い矢印で示す部分にはスリップラインが形成されている。上述したようにこのようなスリップラインは半導体積層基板の反りを制御するためには好ましくない。しかしながら、直径4インチの基板の場合は、基板の外周部から幅20mmの領域にスリップラインが生じていても、基板の外周部から幅20mmの領域を除いた領域で基板にスリップラインが生じていなければ、反りの制御は可能である。また、
図14に示すように、オリエンテーションフラットの部分にはスリップラインが発生しやすいので、オリエンテーションフラットを有さない基板を用いることが、半導体積層基板の反りの制御上好ましい。オリエンテーションフラットを有さない基板の場合は、たとえばノッチやマーカを形成して、その結晶方向の特定を行うことができる。
【0080】
なお、上記実施の形態の半導体積層基板の半導体層状に適宜ショットキー電極やオーミック電極、絶縁膜を形成することで、電界効果トランジスタやショットキーバリアダイオードを製造することができる。
【0081】
図15は、本発明の実施の形態5に係るダイオードの模式図である。このダイオード100は、
図3Aに示す実施の形態2に係る半導体積層基板10Aの半導体層5A上に、半導体層5Aにショットキー接触するアノード電極101と、半導体層5Aにオーミック接触するカソード電極102とを形成した構成を有するショットキーバリアダイオードである。このダイオード100は、実施の形態2に係る半導体積層基板10Aを備えているので、耐圧600∨以上を有することができ、電流リークおよび電流コラプスが抑制され、かつ低コストなものである。
【0082】
図16は、本発明の実施の形態6に係る電界効果トランジスタの模式図である。この電界効果トランジスタ200は、
図3Aに示す実施の形態2に係る半導体積層基板10Aの半導体層5A上に、半導体層5Aにオーミック接触するソース電極201、ドレイン電極203と、半導体層5Aにショットキー接触するゲート電極202とを形成した構成を有する高移動度トランジスタ(HEMT)である。この電界効果トランジスタ200も、実施の形態2に係る半導体積層基板10Aを備えているので、耐圧600∨以上を有することができ、電流リークおよび電流コラプスが抑制され、かつ低コストなものである。
【0083】
また、電界効果トランジスタ200の構成をもとに、半導体積層基板10Aの半導体層5Aに開口部を設け、その開口部においてゲート電極202をゲート絶縁膜を介して活性層4Aに接続させるようにして、MOS型の電界効果トランジスタを構成してもよい。
【0084】
なお、第一反り制御層は、量子サイズ効果を生じない程度に厚いAl
xGa
1−xN層と量子サイズ効果を生じない程度に厚いAl
yGa
1−yN層(ただし、x>y)とを複数回繰り返し積層したものでもよい。
【0085】
また、第二反り制御層は、AlNとGaNとを複数回繰り返し積層したものでもよい。たとえば、AlNの膜厚は5nm、GaNの膜厚は20nmである。これによって平均Al組成は20%となる。また、平均Al組成を20%とするために、AlNの膜厚が1nm、GaNの膜厚が4nmとしてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係る半導体積層基板、半導体素子、およびその製造方法は、主に窒化物半導体からなる半導体積層基板および半導体素子に利用して好適なものである。
【符号の説明】
【0088】
1、1A 基板
2、2A、2AA 第一反り制御層
3、3A、3C 第二反り制御層
4、4A、4C 活性層
5A、5D 半導体層
10、10A、10AA、10B、10C 半導体積層基板
100 ダイオード
200 電界効果トランジスタ