特許第6239500号(P6239500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239500フィルム状接着剤用組成物及びその製造方法、フィルム状接着剤、並びに、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239500
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤用組成物及びその製造方法、フィルム状接着剤、並びに、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20171120BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171120BHJP
   C09J 171/12 20060101ALI20171120BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20171120BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20171120BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20171120BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20171120BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09J171/12
   C09J11/04
   C09J5/00
   C09J7/00
   C09C1/28
   C09C3/08
   H01L21/52 E
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-512642(P2014-512642)
(86)(22)【出願日】2013年4月24日
(86)【国際出願番号】JP2013062030
(87)【国際公開番号】WO2013161864
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-100831(P2012-100831)
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 稔
(72)【発明者】
【氏名】矢野 博之
(72)【発明者】
【氏名】大平 慎士
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080033(JP,A)
【文献】 特開2001−024005(JP,A)
【文献】 特開2003−253220(JP,A)
【文献】 特開2004−146620(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043764(WO,A1)
【文献】 特開2010−168470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C09C 1/28
C09C 3/08
C09J 5/00
C09J 7/00
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 171/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、かつ、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して35〜50質量%であり、
熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、
熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下である、
フィルム状接着剤用組成物の製造方法であり、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程と、
前記表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程と、
を含むことを特徴とするフィルム状接着剤用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程が、
前記シランカップリング剤を有機溶媒中に溶解させてシランカップリング剤溶液を得る工程と、
前記シランカップリング剤溶液中に前記球状シリカフィラーを分散させて前記球状シリカフィラーを前記シランカップリング剤で表面処理し、前記表面処理球状シリカフィラー(D)が前記有機溶媒中に分散された前記表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程と、
を含む工程であり、かつ、
前記シランカップリング剤の配合量が前記球状シリカフィラーの配合量100質量部に対して1〜5質量部であること、
を特徴とする請求項1に記載のフィルム状接着剤用組成物の製造方法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が、下記一般式(1):
3−n−Si(CH−CH=CH ・・・(1)
[式(1)中、Rはメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基からなる群から選択されるいずれか1つの加水分解性官能基を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表わされるビニル系シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤用組成物の製造方法。
【請求項4】
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して35〜50質量%であり、熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、かつ、熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下であるフィルム状接着剤用組成物を得る工程であって、前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて得られた表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程と、
前記フィルム状接着剤用組成物をフィルム状に成形してフィルム状接着剤を得る工程と、
を含むことを特徴とするフィルム状接着剤の製造方法。
【請求項5】
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して35〜50質量%であり、熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、かつ、熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下であるフィルム状接着剤用組成物を得る工程であって、前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて得られた表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程と、
前記フィルム状接着剤用組成物をフィルム状に成形してフィルム状接着剤を得る工程と、
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハの裏面に、前記フィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層を設ける第1の工程と、
前記ウェハとダイシングテープとを前記接着剤層を介して接着した後に、前記ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより前記ウェハ及び前記接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層から前記ダイシングテープを脱離し、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着せしめる第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化せしめる第4の工程と、
を含むことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤用組成物及びその製造方法、フィルム状接着剤、並びに、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体パッケージの製造過程における配線基板と半導体チップとの接着には、ペースト状接着剤が使用されてきた。しかしながら、近年では半導体パッケージの高機能化に伴ってパッケージ内部の高密度実装化が要求されており、樹脂流れや樹脂はい上がり等によって半導体チップやワイヤーパッド等の他部材が汚染されることを防止するため、フィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム)の使用が増加してきている。特に、アナログ用途の半導体パッケージとしては、記憶機能として働くメモリ等のディジタル用途の半導体パッケージと比較して、より小型の半導体チップが使用されており、パッケージ内部の配線ルールの微細化がさらに進んでいるため、配線基板の限られた領域内に半導体チップを精度よく接着することができるフィルム状接着剤の開発が求められている。
【0003】
半導体チップをフェイスアップの状態で配線基板に接着させる場合、通常、配線基板及び半導体チップは、金、銀、アルミ等の金属からなるボンディングワイヤーにより接続されるが、近年の金価格高騰が引き金となり、これらのボンディングワイヤーの中でも比較的低コストな銅ワイヤーの使用が増加してきている。前記ボンディングワイヤーによる接続は、通常、ボンディングワイヤーを100℃以上に加熱して金属を溶融させ、配線基板及び半導体チップと金属接合させるが、前記銅ワイヤーを用いる場合には特に高温に加熱することが必要であり、また、配線基板と半導体チップとの間の接着が不安定であると、小型の半導体チップを用いる場合には特に、ボンディングワイヤーの接合強度が不足しやすくなる傾向にあり、硬化後の高温での弾性率がより高いフィルム状接着剤の開発が求められている。
【0004】
さらに、一般的に、半導体パッケージは、その配線基板がリードとリフロー方式により直接はんだ付けされて装置等に実装されるが、このとき、半導体パッケージ全体が210〜260℃の高温にさらされるため、硬化後のフィルム状接着剤の内部に水分が存在していると、該水分が爆発的に気化してパッケージクラックが発生することがある。特に、半導体パッケージ中の半導体チップが小型化されて配線基板と半導体チップとの接着面積が小さくなるにつれてパッケージクラックは発生しやすくなる傾向にあるため、硬化後の吸水率がより低いフィルム状接着剤の開発が求められている。
【0005】
このようなパッケージクラックを抑制することを目的としたフィルム状接着剤としては、例えば、特開2000−200794号公報(特許文献1)において、吸水率が1.5体積%以下であるフィルム状接着剤(ダイボンディング材)が記載されている。しかしながら、同文献に記載のフィルム状接着剤は、高温での弾性率が低く、ボンディングワイヤーを十分な強度で接合することが困難であるという問題を有していた。
【0006】
また、フィルム状接着剤の弾性率を向上させ、吸水率を低下させる方法としては、シリカフィラーを多く含有させる技術が知られており、例えば、特開2005−19516号公報(特許文献2)の実施例においては、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、合成ゴムとを含有するフィルム状接着剤(ダイボンド用接着フィルム)において、平均粒径が0.5μm球状溶融シリカをフィラーとして添加することで高温における弾性率が高くなることが記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載されている球状溶融シリカのように粒径が小さいシリカフィラーは、その比表面積が大きいためにシリカフィラー同士の相互作用が強く、樹脂と混合させると凝集する傾向にあり、フィルム状接着剤の厚みを薄くする場合には特に、フィルム表面の外観が悪化するという問題を有していた。また、シリカフィラー表面のシラノール基が水を吸着してかえって吸水率の上昇がひきおこされるため、硬化後のフィルム状接着剤における吸水率を十分に低下させることができないという問題も有していた。
【0008】
さらに、含有させるシリカフィラーの粒径を小さくすると、一般に、フィルム状接着剤の流動性が低下、すなわち溶融粘度が上昇する傾向にあるが、フィルム状接着剤の被着体であるウェハ裏面や配線基板の表面は必ずしも平滑面ではないため、フィルム状接着剤の溶融粘度が上昇すると、被着体に加熱密着させる際にフィルム状接着剤と被着体との間の密着性が低下して両者の界面に空気が巻き込まれ、これが硬化後のフィルム状接着剤の接着力を低下させたり、パッケージクラックを発生させる原因になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−200794号公報
【特許文献2】特開2005−19516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、表面外観が良好であり、溶融粘度が十分に低く被着体との密着性に優れており、硬化後の弾性率が十分に高くかつ吸水率が十分に低いフィルム状接着剤を得ることが可能なフィルム状接着剤用組成物及びその製造方法、フィルム状接着剤、並びに、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フィルム状接着剤組成物の製造方法において、先ず、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラーを有機溶媒中に分散させて表面処理球状シリカフィラー分散液を得て、次いで、得られた前記表面処理球状シリカフィラー分散液に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及びフェノキシ樹脂を、前記表面処理球状シリカフィラーの含有量が特定の範囲内となるように混合することにより、均一に球状シリカフィラーが分散されたフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤が得られることを見出した。
【0012】
また、このように得られたフィルム状接着剤は、球状シリカフィラーの平均粒径が0.01〜2.0μmと小さいにもかかわらずフィルム形成時に凝集することがなく、厚みを薄くしてもフィルム表面外観が良好であり、さらに、溶融粘度が十分に低いために被着体との密着性にも優れることを見出した。また、前記フィルム状接着剤は硬化後の弾性率を200℃程度の高温においても十分に高く維持できるため、半導体チップと配線基板とを安定に接着させることができ、ボンディングワイヤーを十分な強度で接合できることを見出した。さらに、前記フィルム状接着剤は硬化後の吸水率が十分に低いため、半導体パッケージを実装する際のパッケージクラックの発生を十分に抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のフィルム状接着剤用組成物の製造方法は、
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、かつ、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して3550質量%であり、
熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、
熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下である、
フィルム状接着剤用組成物の製造方法であり、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程と、
前記表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程と、
を含むことを特徴とする製造方法である。
【0014】
本発明のフィルム状接着剤用組成物の製造方法においては、前記シランカップリング剤を有機溶媒中に溶解させてシランカップリング剤溶液を得る工程と、前記シランカップリング剤溶液中に前記球状シリカフィラーを分散させて前記球状シリカフィラーを前記シランカップリング剤で表面処理し、前記表面処理球状シリカフィラー(D)が前記有機溶媒中に分散された前記表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程と、を含む工程であり、かつ、前記シランカップリング剤の配合量が前記球状シリカフィラーの配合量100質量部に対して1〜5質量部であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のフィルム状接着剤用組成物の製造方法においては、前記シランカップリング剤が、下記一般式(1):
3−n−Si(CH−CH=CH ・・・(1)
[式(1)中、Rはメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基からなる群から選択されるいずれか1つの加水分解性官能基を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表わされるビニル系シランカップリング剤であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のフィルム状接着剤の製造方法は、
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して35〜50質量%であり、熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、かつ、熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下であるフィルム状接着剤用組成物を得る工程であって、前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて得られた表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程と、
前記フィルム状接着剤用組成物をフィルム状に成形してフィルム状接着剤を得る工程と、
を含むことを特徴とする製造方法である。
【0018】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して35〜50質量%であり、熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、かつ、熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下であるフィルム状接着剤用組成物を得る工程であって、前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて得られた表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程と、
前記フィルム状接着剤用組成物をフィルム状に成形してフィルム状接着剤を得る工程と、
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハの裏面に、前記フィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層を設ける第1の工程と、
前記ウェハとダイシングテープとを前記接着剤層を介して接着した後に、前記ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより前記ウェハ及び前記接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層から前記ダイシングテープを脱離し、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着せしめる第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化せしめる第4の工程と、
を含むことを特徴とする製造方法である。
【0019】
なお、本発明の構成によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来のシリカフィラーを含有するフィルム状接着剤用組成物の製造方法においては、樹脂成分にシリカフィラーと必要に応じてシランカップリング剤とを直接配合する、いわゆるインテグラント法が簡便なために広く用いられてきたが、このような方法ではシリカフィラー表面のシラノール基が多く残存するため、特に、粒径の小さいシリカフィラーを用いた場合にはシリカフィラー同士が凝集しやすくなり、得られるフィルム状接着剤の表面外観が悪化したり、硬化後の吸水率が増加すると本発明者らは推察する。また、このようなシリカフィラー同士の凝集による表面外観の悪化等を防止するために、強い剪断力をかけて凝集物を解砕することができるロール混練等の工程を前記インテグラント法に適用することが可能ではあるが、工程数が増加する上に、特に粒径の小さいシリカフィラーを用いる場合に十分な品質のフィルム状接着剤用組成物を得ることが困難となると本発明者らは推察する。
【0020】
これに対して、本発明のフィルム状接着剤用組成物の製造方法によれば、シリカフィラーとして、球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラーを用いるため、得られるフィルム状接着剤用組成物を用いることにより、表面のシラノール基が前記シランカップリング剤によって十分に処理された表面処理球状シリカフィラーを含有し、吸水率の増加によるパッケージクラックの発生が十分に抑制されたフィルム状接着剤を得ることができる。
【0021】
また、十分に表面処理された表面処理球状シリカフィラーは有機溶媒中に容易に分散されるため、これを有機溶媒中に分散させた表面処理球状シリカフィラー分散液に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及びフェノキシ樹脂等の樹脂成分を混合することで、粒径の小さい球状シリカフィラーであっても樹脂成分中に凝集することなく均一に分散させることができ、得られるフィルム状接着剤の表面外観が良好になると本発明者らは推察する。さらに、このような特定の組み合わせで樹脂成分中に表面処理球状シリカフィラーを分散させることにより、得られるフィルム状接着剤の溶融粘度が十分に低くなると本発明者らは推察する。
【0022】
さらに、本発明のフィルム状接着剤用組成物の製造方法によれば、凝集が抑制されることでより多くの球状シリカフィラーをフィルム状接着剤中に含有させることができるため、硬化後の高温での弾性率を高水準で維持することができると本発明者らは推察する。よって、このようなフィルム状接着剤は、特に、半導体チップをより薄型化・小型化させる場合においても、半導体チップと配線基板とを精度よく接着させることができ、ボンディングワイヤーの接合強度を高水準に維持することができ、パッケージクラックを十分に抑制することができると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、表面外観が良好であり、溶融粘度が十分に低く被着体との密着性に優れており、硬化後の弾性率が十分に高くかつ吸水率が十分に低いフィルム状接着剤を得ることが可能なフィルム状接着剤用組成物及びその製造方法、フィルム状接着剤、並びに、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0024】
したがって、本発明によれば、半導体チップをより薄型化・小型化させる場合においても、半導体パッケージの製造工程において、半導体チップと配線基板とを精度よく接着させることができ、ボンディングワイヤーの接合強度を高水準に維持することができ、パッケージクラックの発生を十分に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の半導体パッケージの製造方法の第1の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図2】本発明の半導体パッケージの製造方法の第2の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図3】本発明の半導体パッケージの製造方法の第3の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図4】本発明の半導体パッケージの製造方法のボンディングワイヤーを接続する工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図5】本発明の半導体パッケージの製造方法により製造される半導体パッケージの好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0027】
先ず、本発明のフィルム状接着剤用組成物及びその製造方法について説明する。本発明のフィルム状接着剤用組成物の製造方法は、
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、かつ、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して30〜70質量%であり、
熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、
熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下である、
フィルム状接着剤用組成物の製造方法であり、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程と、
前記表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程と、
を含む製造方法である。
【0028】
本発明に係るエポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を有する熱硬化性樹脂であり、このようなエポキシ樹脂(A)としては、重量平均分子量が300〜2000であることが好ましく、300〜1500であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると単量体や2量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。なお、本発明において、重量平均分子量とはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(商品名:HLC−82A(東ソー(株)製)、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelG2000HXL(東ソー(株)製)(2本)、G4000HXL(東ソー(株)製)(1本)、温度:38℃、速度:1.0ml/min)により測定され、標準ポリスチレン(商品名:A−1000、東ソー(株)製)で換算した値である。
【0029】
前記エポキシ樹脂(A)としては、液体、固体又は半固体のいずれであってもよい。本発明において前記液体とは、軟化点が50℃未満であることをいい、前記固体とは、軟化点が60℃以上であることをいい、前記半固体とは、軟化点が前記液体の軟化点と固体の軟化点との間(50℃以上60℃未満)にあることをいう。前記エポキシ樹脂(A)としては、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で低溶融粘度に到達することができるフィルム状接着剤を得られるという観点から、軟化点が100℃以下であることが好ましい。なお、本発明において、軟化点とは、軟化点試験(環球式)法(測定条件:JIS−2817に準拠)により測定した値である。
【0030】
前記エポキシ樹脂(A)において、硬化体の架橋密度が高くなり、結果として、熱硬化後の弾性率がより高くなり、より小型の半導体チップを使用した場合においても配線基板と半導体チップとの間のボンディングワイヤーの接合強度が高水準に維持される傾向にあるという観点から、エポキシ当量は500g/eq以下であることが好ましく、150〜450g/eqであることがより好ましい。なお、本発明において、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)をいう。
【0031】
前記エポキシ樹脂(A)の骨格としては、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、フルオレンビスフェノール型、トリアジン型、ナフトール型、ナフタレンジオール型、トリフェニルメタン型、テトラフェニル型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、トリメチロールメタン型等が挙げられるが、樹脂の結晶性が低く、良好な表面外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型であることが好ましい。
【0032】
前記エポキシ樹脂(A)としては1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いる場合には、例えば、組成物の粘度の調節がしやすく、フィルム状接着剤とウェハとを熱圧着せしめる工程(ウェハラミネート工程)を低温(好ましくは40〜80℃)で実施した場合においてもウェハとフィルム状接着剤との密着性が十分に発揮される傾向にあるという観点から、軟化点が50〜100℃であるエポキシ樹脂(a1)と軟化点が50℃未満であるエポキシ樹脂(a2)とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0033】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、室温で固体又は半固体であり、軟化点が50〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。軟化点が前記下限未満であると、得られるフィルム状接着剤の粘度が低下するため、常温においてフィルム形状を保持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるフィルム状接着剤において、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で低溶融粘度に到達することが困難となる傾向にある。
【0034】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、重量平均分子量が500を超えて2000以下であることが好ましく、600〜1200であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると単量体や2量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。
【0035】
このようなエポキシ樹脂(a1)の骨格としては、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型であることが好ましく、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0036】
前記エポキシ樹脂(a2)としては、フィルム状接着剤とウェハとを熱圧着せしめる工程(ウェハラミネート工程)を低温(好ましくは40〜80℃)で実施した場合においてもウェハとフィルム状接着剤との密着性が十分に発揮される傾向にあるという観点から、軟化点が50℃未満であることが好ましく、軟化点が40℃以下であることがより好ましい。このようなエポキシ樹脂(a2)としては、重量平均分子量が300〜500であることが好ましく、350〜450であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると単量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶融粘度が高くなるため、ウェハラミネート工程の際にウェハとフィルム状接着剤との密着性が低下する傾向にある。
【0037】
このようなエポキシ樹脂(a2)の骨格としては、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、オリゴマータイプの液状エポキシ樹脂であるビスフェノールA型、ビスフェノールA/F混合型、ビスフェノールF型、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型であることが好ましく、溶融粘度が低くより結晶性が低いという観点から、前記エポキシ樹脂(a2)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/F混合型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0038】
前記エポキシ樹脂(a1)及び前記エポキシ樹脂(a2)の割合としては、質量比(a1:a2)が95:5〜30:70であることが好ましく、70:30〜40:60であることがより好ましい。エポキシ樹脂(a1)の含有量が前記下限未満であると、フィルム状接着剤のフィルムタック性が強くなりカバーフィルムやダイシングテープから剥離しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると組成物の粘度が高くなり、得られるフィルム状接着剤の性状が脆くなる傾向にある。
【0039】
本発明に係るエポキシ樹脂硬化剤(B)としては、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類等の公知の硬化剤を用いることができるが、前記エポキシ樹脂(A)及び前記フェノキシ樹脂(C)が低溶融粘度となる温度範囲を超える高温で硬化性を発揮し、速硬化性を有し、さらに、室温での長期保存が可能な保存安定性の高いフィルム状接着剤用組成物が得られるという観点から、潜在性硬化剤を用いることが好ましい。前記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール類、ヒドラジド類、三弗化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン塩、及びこれらの変性物やマイクロカプセル型のものを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明に係るフェノキシ樹脂(C)は、重量平均分子量が10000以上の熱可塑性樹脂である。このようなフェノキシ樹脂(C)を用いることにより、得られるフィルム状接着剤において、室温におけるタック性や脆さが解消される。
【0041】
前記フェノキシ樹脂(C)としては、重量平均分子量が30000〜100000であることが好ましく、40000〜70000であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であるとフィルム状接着剤の支持性が弱くなり、脆弱性が強くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶融粘度が高くなる傾向にある。また、前記フェノキシ樹脂(C)としては、ガラス転移温度(Tg)が40〜100℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が前記下限未満であるとフィルム状接着剤の常温におけるフィルムタック性が強くなり、カバーフィルムやダイシングテープから剥離しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。
【0042】
前記フェノキシ樹脂(C)の骨格としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールA/F型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールA/S型、カルド骨格型等が挙げられるが、前記エポキシ樹脂(A)と構造が類似しているために相溶性がよく、また、溶融粘度が低く接着性もよいという観点からは、ビスフェノールA型であることが好ましく、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で低溶融粘度に到達することができるフィルム状接着剤が得られるという観点からはビスフェノールA/F型であることが好ましく、高耐熱性を有するという観点からはカルド骨格型であることが好ましい。このようなフェノキシ樹脂(C)としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとから得られるビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAとビスフェノールFとエピクロロヒドリンとから得られるビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂が挙げられる。前記フェノキシ樹脂(C)としては、これのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、例えば、YP−50S(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、YP−70(ビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、FX−316(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、及び、FX−280S(カルド骨格型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)等の市販のフェノキシ樹脂を前記フェノキシ樹脂(C)として用いてもよい。
【0043】
本発明に係る表面処理球状シリカフィラー(D)は、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理されたものである。
【0044】
前記球状シリカフィラーの平均粒径は0.01〜2.0μmであることが必要である。平均粒径が前記下限未満であるとシリカフィラーの比表面積がより大きくなることで、配合する樹脂との相互作用が強くなり、フィルム状接着剤の溶融粘度が上昇して被着体との密着性が低下しやすくなり、他方、前記上限を超えるとロールナイフコーター等の塗工機で薄型のフィルム状接着剤を製造する際に、フィルム表面外観にスジが発生しやすくなったり、フィルム状接着剤が設けられたウェハを半導体チップに切断する工程においてフィルム状接着剤による加工ブレードの摩耗率が大きくなる。また、前記球状シリカフィラーの平均粒径としては、厚さが5μm以下の極薄フィルム状接着剤を形成するという観点から、1.0μm以下であることが特に好ましい。
【0045】
なお、本発明において、平均粒径とは、粒度分布において粒子の全体積を100%としたときに50%累積となるときの粒径をいい、レーザー回折・散乱法(測定条件:分散媒−ヘキサメタりん酸ナトリウム、レーザー波長:780nm、測定装置:マイクロトラックMT3300EX)により測定した粒径分布の粒径の体積分率の累積カーブから求めることができる。また、本発明において、球状とは、真球又は実質的に角のない丸味のある略真球であるものをいう。
【0046】
このような球状シリカフィラーとしては、特に制限されないが、得られるシリカ粒子の形状が略真球状となり、粒径の調整が容易であるという観点から、VMC(Vaporized Material Combustion)法によりシリコン粉末を燃焼して得られたものであることが好ましい。前記VMC法とは、粉塵爆発の原理を利用するものであり、酸素を含む雰囲気中でバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に目的とする酸化物粒子を構成する金属粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて酸化物粒子を得る方法である。このようなVMC法によれば、瞬時に大量の酸化物粒子(シリカ粒子)が得られ、また、投入するシリコン粉末の粒径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ粒子の粒径を調整することが可能である。
【0047】
前記シランカップリング剤としては、特に制限されず、シランモノマー系、ビニルシラン系、メタクリルシラン系、エポキシシラン系、メルカトシラン系、サルファーシラン系、アミノシラン系、ウレイドシラン系、イソシアネートシラン系等のカップリング剤を使用することができるが、硬化後のフィルム状接着剤の吸水率をより低下させ、パッケージクラックの発生をより抑制することができるという観点から、水との親和性が強い官能基を持たないシランカップリング剤が好ましく、下記一般式(1):
3−n−Si(CH−CH=CH ・・・(1)
[式(1)中、Rはメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基からなる群から選択されるいずれか1つの加水分解性官能基を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表わされるビニル系シランカップリング剤であることがより好ましい。
【0048】
前記球状シリカフィラーを前記シランカップリング剤で表面処理する方法としては、前記球状シリカフィラーの粉体を攪拌しながらこれに気化させた前記シランカップリング剤を反応させる処理方法(処理方法I)、及び、有機溶媒中に溶解させた前記球状シリカフィラーに前記シランカップリング剤を添加して反応させる処理方法(処理方法II)が挙げられる。本発明においては、有機溶媒中に分散された状態で本発明に係る表面処理球状シリカフィラー(D)を得ることができ、そのまま本発明の製造方法に用いることができるという観点から、前記処理方法IIを採用することが好ましい。
【0049】
前記処理方法IIとしては、前記シランカップリング剤を有機溶媒中に溶解させてシランカップリング剤溶液を得る工程と、前記シランカップリング剤溶液中に前記球状シリカフィラーを分散させて前記球状シリカフィラーを前記シランカップリング剤で表面処理し、前記表面処理球状シリカフィラー(D)が前記有機溶媒中に分散された表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程とを含むことが好ましい。
【0050】
前記有機溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類;モノグライム、ジグライム等のエーテル類;及びこれらの混合物が挙げられ、本発明のフィルム状接着剤用組成物に用いる樹脂に応じて適宜選択することができる。また、前記シランカップリング剤溶液中のシランカップリング剤の濃度としても、特に制限されないが、20〜90質量%であることが好ましい。
【0051】
前記シランカップリング剤及び前記球状シリカフィラーの配合量としては、通常、用いる球状シリカフィラーの比表面積とシランカップリング剤の最小被覆面積とから、下記式:
シランカップリング剤配合量[g]=(球状シリカフィラー配合量[g]×球状シリカフィラー比表面積[m/g])/(シランカップリング剤の最小被覆面積[m/g])
により算出することができるが、本発明においては、前記球状シリカフィラー表面のシラノール基を十分に処理することができるという観点から、前記シランカップリング剤の配合量を過剰量とすることが好ましく、前記シランカップリング剤の配合量が前記球状シリカフィラーの配合量100質量部に対して1〜5質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることがさらに好ましい。前記シランカップリング剤の配合量が前記下限未満であると球状シリカフィラー表面のシラノール基が十分に処理されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると余剰のシランカップリング剤が半導体パッケージの製造過程やその実装過程等における加熱により揮発し、半導体チップやワイヤーパッド等の他部材を汚染するおそれが生じる。
【0052】
前記シランカップリング剤溶液中に前記球状シリカフィラーを分散させる方法としては、特に制限されず、例えば、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、ホモジナイザー等を用いて25〜70℃の温度において1〜100時間程度撹拌する方法が挙げられ、このような方法により、本発明に係る表面処理球状シリカフィラー(D)が前記有機溶媒中に分散された表面処理球状シリカフィラー分散液を得ることができる。
【0053】
本発明のフィルム状接着剤用組成物の製造方法は、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させて表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程と、前記表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合してフィルム状接着剤用組成物を得る工程とを含む。
【0054】
本発明に係る表面処理球状シリカフィラー分散液を得る工程においては、前記表面処理球状シリカフィラー(D)を有機溶媒中に分散させる。このような分散方法としては特に制限されず、あらかじめ表面処理が施された球状シリカフィラーを有機溶媒中で撹拌することにより分散させても、有機溶媒中で球状シリカフィラーを分散させつつ表面処理を施してもよいが、工程数が少ないという観点から、前記球状シリカフィラーを前記シランカップリング剤で表面処理する方法として、前記処理方法IIを採用し、得られた表面処理球状シリカフィラー分散液をそのまま用いることが好ましい。また、前記有機溶媒としては、特に制限されず、例えば、前記処理方法IIにおいて挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0055】
前記表面処理球状シリカフィラー分散液における前記表面処理球状シリカフィラー(D)の濃度としては、特に制限されないが、有機溶媒の割合が多くなるとフィルム状接着剤用組成物の粘度が低下し、フィルム状接着剤を形成する際にハジキやゆず肌といった外観不良が発生しやすくなる傾向にあるという観点から、40〜80質量%であることが好ましい。
【0056】
本発明に係るフィルム状接着剤用組成物を得る工程においては、前記表面処理球状シリカフィラー分散液に、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)を混合する。このような混合方法としては、特に制限されず、例えば、加温可能なプラネタリーミキサー、メカニカルスターラー等の機械を用いて、攪拌羽の回転速度10〜300rpmの条件で0.5〜5.0時間程度撹拌する方法が挙げられる。
【0057】
前記エポキシ樹脂(A)の配合量としては、得られるフィルム状接着剤用組成物における含有量が10〜60質量%となる量であることが好ましく、20〜50質量%となる量であることがより好ましい。含有量が前記下限未満であると得られるフィルム状接着剤の接着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるフィルム状接着剤の主成分がオリゴマーとなるため、少しの温度変化でもフィルム状態(フィルムタック性等)が変化しやすくなる傾向にある。
【0058】
前記エポキシ樹脂硬化剤(B)の配合量としては、通常、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して0.5〜50質量部であり、1〜10質量部であることが好ましい。配合量が前記下限未満であると硬化時間が長くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると過剰の硬化剤がフィルム状接着剤中に残り、残硬化剤が水分を吸着するため、フィルム状接着剤を半導体パッケージに組み込んだ後の信頼性試験において不良が起こりやすくなる傾向にある。
【0059】
前記フェノキシ樹脂(C)の配合量としては、得られるフィルム状接着剤用組成物における含有量が1〜30質量%となる量であることが好ましく、3〜20質量%となる量であることがより好ましい。含有量が前記下限未満であると得られるフィルム状接着剤のフィルムタック性が強くなり、カバーフィルムやダイシングテープから剥離しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。
【0060】
前記表面処理球状シリカフィラー(D)の配合量としては、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対する前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が30〜70質量%となる量であることが必要である。含有量が前記下限未満であると得られるフィルム状接着剤の吸水率が上昇してパッケージクラックが発生しやすくなり、また、高温における硬化後の弾性率が低下してボンディングワイヤーの接続不良が発生しやすくなって接合強度が低下する。他方、前記上限を超えると樹脂成分が少なくなるために被着体との接着力が低下する。また、前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量としては、得られるフィルム状接着剤の吸水率を低下させかつ高温における硬化後の弾性率を高くする一方で、配合するエポキシ樹脂による接着力等の特性を向上させる観点から、35〜50質量%であることが特に好ましい。
【0061】
このようにして、表面処理球状シリカフィラー(D)が均一分散された本発明のフィルム状接着剤用組成物を得ることができる。本発明のフィルム状接着剤用組成物は、
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、及び、平均粒径0.01〜2.0μmの球状シリカフィラーがシランカップリング剤で表面処理された表面処理球状シリカフィラー(D)を含有しており、かつ、
前記表面処理球状シリカフィラー(D)の含有量が前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の合計量に対して30〜70質量%であり、
熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaであり、
熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下である。
【0062】
また、本発明のフィルム状接着剤用組成物においては、表面処理球状シリカフィラー(D)が均一分散されているため、表面外観が良好なフィルム状接着剤を得ることが可能である。このような本発明のフィルム状接着剤用組成物においては、JISK5600−2−5(1999)に規定されるゲージとスクレーパーとからなるグラインドメータを用いて、前記フィルム状接着剤用組成物を試料として前記ゲージの溝に置き、前記スクレーパーを引き動かした際に実質的に線が観察されないことが好ましく、より具体的には、10〜100μmのゲージを用いた際に実質的に線が観察されないことがより好ましく、2.5〜25μmのゲージを用いた際に実質的に線が観察されないことが特に好ましい。なお、本発明において、実質的に線が観察されないとは、線が全く観察されないか、又は、試料面に現れた線の開始点のゲージ深さがゲージ最小値未満であることをいう。
【0063】
また、上記本発明の製造方法においては、さらに、前記有機溶媒を除去する工程を含むことが好ましい。前記有機溶媒を除去する方法としては、特に制限されず、例えば、前記フィルム状接着剤用組成物をさらに加熱しながら撹拌する方法が挙げられる。加熱条件としては、フィルム状接着剤用組成物の硬化開始温度未満でありかつフィルム状接着剤用組成物中における不揮発分濃度が所望の濃度となる程度であればよく、フィルム状接着剤の製造方法や、用いる有機溶媒及び樹脂の種類によっても異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、50〜150℃において0.1〜10.0時間程度であることが好ましい。また、このようにして得られるフィルム状接着剤用組成物としては、不揮発分濃度が40〜90質量%程度であることが好ましい。
【0064】
本発明のフィルム状接着剤用組成物としては、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)、及び前記表面処理球状シリカフィラー(D)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記有機溶媒;前記表面処理球状シリカフィラー(D)以外の充填剤、粘度調整剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、ブタジエン系ゴムやシリコーンゴム等の応力緩和剤等の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0065】
前記添加剤の中でも、得られるフィルム状接着剤の溶融粘度が低くなりすぎるとウェハを配線基板に熱圧着させる場合に樹脂流れや樹脂はい上がり等によって他の部材等を汚染しやすくなる傾向にあるという観点から、粘度調整剤を含有することが好ましい。前記粘度調整剤としては、ポリカルボン酸のアマイド系、変性ウレア系、ウレア変性ウレタン系、ウレア変性ポリアマイド系、ウレア変性ポリアマイド系の界面活性剤;疎水性ヒュームドシリカ等が挙げられる。本発明のフィルム状接着剤用組成物にこのような添加剤を含有させる場合、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)及び前記フェノキシ樹脂(C)と同じタイミングで添加することが好ましく、その配合量としては、得られるフィルム状接着剤用組成物における添加剤の含有量が3質量%以下となる量であることが好ましい。
【0066】
次いで、本発明のフィルム状接着剤について説明する。本発明のフィルム状接着剤は、上記本発明のフィルム状接着剤用組成物をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤であり、レオメーターにて20℃から10℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される80℃における溶融粘度が10000Pa・s以下であることを特徴とするものである。また、本発明のフィルム状接着剤においては、前記表面処理球状シリカフィラー(D)が均一分散されている。
【0067】
本発明のフィルム状接着剤の製造方法の好適な一実施形態としては、前記フィルム状接着剤用組成物を離型処理された基材フィルムの一方の面上に塗工し、加熱乾燥を施す方法が挙げられるが、この方法に特に制限されるものではない。
【0068】
前記離型処理した基材フィルムとしては、得られるフィルム状接着剤のカバーフィルムとして機能するものであればよく、公知のものを適宜採用することができ、例えば、離型処理されたポリプロピレン(PP)、離型処理されたポリエチレン(PE)、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。前記塗工方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター等を用いた方法が挙げられる。
【0069】
前記加熱乾燥は、前記フィルム状接着剤用組成物の硬化開始温度未満の温度で行う。このような温度としては、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、40〜100℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましい。温度が前記下限未満であるとフィルム状接着剤に残存する溶媒量が多くなり、フィルムタック性が強くなる傾向にあり、他方、硬化開始温度以上となると前記フィルム状接着剤用組成物が硬化してしまい、フィルム状接着剤の接着性が低下する傾向にある。また、前記加熱乾燥の時間としては、例えば、10〜60分間であることが好ましい。なお、フィルム状接着剤としたときの不揮発分濃度は95.0〜99.8質量%程度であることが好ましい。
【0070】
このように得られた本発明のフィルム状接着剤としては、厚さが1〜50μmであることが好ましく、配線基板表面の凹凸をより十分に埋め込むことができるという観点から、5〜40μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。厚さが前記下限未満であると配線基板表面の凹凸を十分に埋め込めず、十分な密着性が担保できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると製造時において有機溶媒を除去することが困難になるため、残存溶媒量が多くなり、フィルムタック性が強くなる傾向にある。なお、本発明のフィルム状接着剤用組成物において前記表面処理球状シリカフィラー(D)が均一分散されているため、本発明のフィルム状接着剤としては、厚さを1〜10μm程度としても表面外観を良好とすることが可能である。
【0071】
このような本発明のフィルム状接着剤は溶融粘度が十分に低く、被着体との密着性に優れる。前記溶融粘度としては、具体的には、レオメーターにて20℃から10℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される80℃における溶融粘度が10000Pa・s以下である。前記溶融粘度としては、10〜10000Pa・sであることがより好ましい。溶融粘度が前記下限未満であると、ウェハ裏面と接着させる際に樹脂流れや樹脂はい上がり等によって他の部材を汚染する傾向にあり、他方、溶融粘度が前記上限を超えると、フィルム状接着剤をウェハ裏面や凹凸のある配線基板の表面に接着させる際に被着体との界面に空気を巻き込みやすくなる傾向にある。
【0072】
本発明のフィルム状接着剤は、このような溶融粘度特性を有するため、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で被着体に圧着することが可能であり、被着体に対して優れた密着性を発揮する。なお、本発明において、溶融粘度とは、溶融樹脂の所定の温度における粘性抵抗を測定することにより得られる値であり、80℃における溶融粘度とは、レオメーター(商品名:RS150、Haake社製)を用い、温度範囲20〜100℃、昇温速度10℃/minでの粘性抵抗の変化を測定し、得られた温度−粘性抵抗曲線において温度が80℃のときの粘性抵抗をいう。
【0073】
また、本発明のフィルム状接着剤においては、熱硬化後の200℃での弾性率が20〜3000MPaである。前記弾性率としては、50〜1000MPaであることがより好ましい。弾性率が前記下限未満であると、配線基板と半導体チップとの間の接着が不安定となり、半導体チップを小型化する場合には特に、ボンディングワイヤーの接合強度が不足しやすくなる傾向にある。他方、前記上限を超えると、高温条件下における応力緩和能力が低下し、信頼性試験時に剥離不良が発生しやすくなる傾向にある。なお、本発明において、200℃での弾性率とは、動的粘弾性測定装置(商品名:Rheogel−E4000F、(株)ユービーエム製)を用いて、測定温度範囲30〜300℃、昇温速度5℃/min、及び周波数1Hzの条件下で測定したときの200℃における値をいう。
【0074】
さらに、本発明のフィルム状接着剤においては、熱硬化後の飽和吸水率が1.5質量%以下である。前記飽和吸水率としては、1.3質量%以下であることがより好ましい。飽和吸水率が前記上限値を超えると、半導体パッケージをリフロー方式によりはんだ付けする際に、ダイアタッチフィルム内部の水分の爆発的な気化によりパッケージクラックが発生しやすくなる傾向にある。なお、本発明において、飽和吸水率は、恒温恒湿器(商品名:PR−1J、エスペック(株)製)を用いて、熱硬化後のフィルム状接着剤を温度85℃、相対湿度85%RHにおいて100時間吸湿させた前後の質量を測定して算出することができる。
【0075】
前記熱硬化は、前記フィルム状接着剤用組成物の硬化開始温度以上の温度に加熱することにより行う。このような温度としては、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、120〜180℃であることが好ましく、120〜140℃であることがより好ましい。温度が硬化開始温度未満であると熱硬化が十分に進まず、熱硬化後のフィルム状接着剤の強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬化中にフィルム状接着剤中のエポキシ樹脂や硬化剤、添加剤等が揮発してフィルム状接着剤が発泡しやすくなる傾向にある。また、このような加熱時間としては、例えば、10〜180分間であることが好ましい。さらに、前記熱硬化においては、0.1〜10MPa程度の圧力をかけることがより好ましい。
【0076】
次いで、図面を参照しながら本発明の半導体パッケージの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1図5は、本発明の半導体パッケージの製造方法の各工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【0077】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、先ず、第1の工程として、図1に示すように、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハ1の裏面に、前記本発明のフィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層2を設ける。
【0078】
ウェハ1としては、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハを適宜用いることができ、例えば、シリコンウェハ、SiCウェハ、GaSウェハが挙げられる。接着剤層2としては、前記本発明のフィルム状接着剤を1層で単独で用いても2層以上を積層して用いてもよい。
【0079】
このような接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける方法としては、前記フィルム状接着剤をウェハ1の裏面に積層させることが可能な方法を適宜採用することができ、ウェハ1の裏面に前記フィルム状接着剤を貼り合せた後、2層以上を積層する場合には所望の厚さとなるまで順次フィルム状接着剤を積層させる方法や、フィルム状接着剤を予め目的の厚さに積層した後にウェハ1の裏面に貼り合せる方法等を挙げることができる。また、このような接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける際に用いる装置としては特に制限されず、例えば、ロールラミネーター、マニュアルラミネーターのような公知の装置を適宜用いることができる。
【0080】
接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける際には、前記フィルム状接着剤の溶融粘度が10000Pa・s以下となる温度以上でありかつ前記フィルム状接着剤の熱硬化開始温度未満である温度範囲内の温度において前記フィルム状接着剤をウェハ1の裏面に張り合わせることが好ましい。このような温度条件としては、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、40〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。温度が前記下限未満であると、接着剤層2とウェハ1との界面に空気が巻き込まれやすくなる傾向にあり、接着剤層2が2層以上積層したものである場合には、前記フィルム状接着剤の層間の接着が不十分になる傾向にある。他方、熱硬化開始温度以上となると前記フィルム状接着剤が硬化してしまい、配線基板に接着するときの接着性が低下する傾向にある。また、このような熱圧着の時間としては、例えば1〜180秒間程度であることが好ましい。
【0081】
また、接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける際には、0.1〜1MPa程度の圧力をかけることが好ましい。圧力が前記下限未満では、接着剤層2をウェハ1と貼り合わせるために時間がかかり、さらにはボイドの発生を十分に防止できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、接着剤層2のはみ出しを制御できなくなる傾向にある。
【0082】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第2の工程として、図2に示すように、ウェハ1とダイシングテープ3とを接着剤層2を介して接着した後に、ウェハ1と接着剤層2とを同時にダイシングすることによりウェハ1と接着剤層2とを備える接着剤層付き半導体チップ4を得る。
【0083】
ダイシングテープ3としては特に制限されず、適宜公知のダイシングテープを用いることができる。さらに、ダイシングに用いる装置も特に制限されず、適宜公知のダイシング装置を用いることができる。
【0084】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第3の工程として、図3に示すように、接着剤層2からダイシングテープ3を脱離し、接着剤層付き半導体チップ4と配線基板5とを接着剤層2を介して熱圧着せしめ、配線基板5に接着剤層付き半導体チップ4を実装する。
【0085】
配線基板5としては、表面に半導体回路が形成された基板を適宜用いることができ、例えば、プリント回路基板(PCB)、各種リードフレーム、及び、基板表面に抵抗素子やコンデンサー等の電子部品が搭載された基板が挙げられる。また、配線基板5として別の半導体チップを用いることにより、接着剤層2を介して半導体チップを複数個積層することもできる。
【0086】
このような配線基板5に接着剤層付き半導体チップ4を実装する方法としては特に制限されず、接着剤層2を利用して接着剤層付き半導体チップ4を配線基板5又は配線基板5の表面上に搭載された電子部品に接着させることが可能な従来の方法を適宜採用することができる。このような実装方法としては、上部からの加熱機能を有するフリップチップボンダーを用いた実装技術を用いる方法、下部からのみの加熱機能を有するダイボンダーを用いる方法、ラミネーターを用いる方法等の従来公知の加熱、加圧方法を挙げることができる。
【0087】
このように、本発明のフィルム状接着剤からなる接着剤層2を介して接着剤層付き半導体チップ4を配線基板5上に実装することで、電子部品により生じる配線基板5上の凹凸に前記フィルム状接着剤を追従させることができるため、ウェハ1と配線基板5とを密着させて固定することが可能となる。
【0088】
配線基板5と接着剤層付き半導体チップ4とを接着する際には、前記フィルム状接着剤の溶融粘度が10000Pa・s以下となる温度以上であってかつ前記フィルム状接着剤の熱硬化開始温度未満である温度において配線基板5と接着剤層付き半導体チップ4とを接着することが好ましい。このような温度条件下において配線基板5と半導体素子4とを接着することで、接着剤層2と配線基板5との界面に空気が巻き込まれにくくなる傾向にある。このような温度条件、時間条件及び圧力条件としては、前記第1の工程で述べたとおりである。
【0089】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第4の工程として、前記フィルム状接着剤を熱硬化せしめる。前記熱硬化の温度としては、前記フィルム状接着剤の熱硬化開始温度以上であれば特に制限がなく、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、120〜180℃であることが好ましく、120〜130℃であることがより好ましい。温度が熱硬化開始温度未満であると、熱硬化が十分に進まず、接着層2の強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬化過程中にフィルム状接着剤中のエポキシ樹脂、硬化剤や添加剤等が揮発して発泡しやすくなる傾向にある。また、前記硬化処理の時間としては、例えば、10〜180分間であることが好ましく、さらに、前記熱硬化においては、0.1〜10MPa程度の圧力をかけることがより好ましい。本発明においては、前記フィルム状接着剤を熱硬化せしめることにより、十分に高い弾性率及び低い吸水率を有する接着層2が得られ、配線基板5とウェハ1とが強固に接着された半導体パッケージを得ることができる。
【0090】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、図4に示すように、配線基板5と接着剤層付き半導体チップ4とをボンディングワイヤー6を介して接続することが好ましい。このような接続方法としては特に制限されず、従来公知の方法、例えば、ワイヤーボンディング方式の方法、TAB(Tape Automated Bonding)方式の方法等を適宜採用することができる。本発明のフィルム状接着剤からなる接着剤層2は、熱硬化後に十分に高い弾性率を発揮するため、1mm×1mmのサイズ以下の小型の半導体チップを用いた場合であっても、安定的にボンディングワイヤーを接続することが可能であり、結果として、十分なボンディングワイヤー接合強度を得ることができる。
【0091】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、図5に示すように、封止樹脂7により配線基板5と接着剤層付き半導体チップ4とを封止することが好ましく、このようにして半導体パッケージ8を得ることができる。封止樹脂7としては特に制限されず、半導体パッケージの製造に用いることができる適宜公知の封止樹脂を用いることができる。また、封止樹脂7による封止方法としても特に制限されず、適宜公知の方法を採用することが可能である。
【0092】
このような本発明の半導体パッケージの製造方法によれば、ウェハ1との界面及び配線基板5上の凹凸との界面をフィルム状接着剤からなる接着剤層2によって十分に埋め込むことができるため、ウェハ1と接着剤層2との間及び接着剤層2と配線基板5との間に空間を生じることなくウェハ1を配線基板5に固定することができる。
【0093】
また、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、前記本発明のフィルム状接着剤用組成物からなる本発明のフィルム状接着剤を用いるため、半導体チップをより薄型化・小型化させても、配線基板5に精度よく接着させることができ、かつ、十分なボンディングワイヤー接合強度を得ることができる。さらに、このような製造方法により得られる本発明の半導体パッケージは、ウェハ1と配線基板5との間の接着層2における吸水率が十分に低いため、装置等に実装される際にリフロー方式ではんだ付けされても、パッケージクラックの発生が十分に抑制される。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、溶融粘度、弾性率、飽和吸水率の測定、及びグラインドゲージ評価、フィルム表面外観評価、ワイヤーボンド性評価、パッケージクラック評価は、それぞれ以下に示す方法により実施した。
【0095】
(グラインドゲージ評価)
各実施例及び比較例において得られたフィルム状接着剤用組成物2gを、それぞれJISK5600−2−5(1999)に規定される10〜100μmのゲージとスクレーパーとからなるグラインドメータ(粒度ゲージ、(株)第一測範製作所製)のゲージの溝に置き、スクレーパーを引き動かした際に組成物表面に現れた線の開始点のゲージの深さの値を測定した。
【0096】
(フィルム表面外観評価)
各実施例及び比較例において得られたフィルム状接着剤用組成物を、厚さ50μmの離型処理されたPETフィルム上に塗布して温度100℃において10分間加熱して乾燥させ、厚さが5μmであるフィルム状接着剤を作製した。得られたフィルム状接着剤表面の外観を目視にて観察し、次の基準:
A:表面にスジ、凝集物が認められない
B:表面にスジ、凝集物が認められる
に従って評価した。
【0097】
(溶融粘度の測定)
各実施例及び比較例において得られたフィルム状接着剤を2.5cm×2.5cmのサイズに切り取って積層し、真空ラミネーター装置(商品名:MVLP−500、(株)名機製作所製)を用いて温度50℃、圧力0.3MPaにおいて10秒間貼り合わせ、厚さが300μmである試験片を得た。この試験片について、レオメーター(RS150、Haake社製)を用い、温度範囲20〜100℃、昇温速度10℃/minでの粘性抵抗の変化を測定し、得られた温度−粘性抵抗曲線から80℃における溶融粘度(Pa・s)を算出した。
【0098】
(弾性率の測定)
各実施例及び比較例において得られたフィルム状接着剤を5mm×17mmのサイズに切り取り、乾燥機を用いて温度180℃において1時間加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させた。熱硬化後のフィルム状接着剤について、動的粘弾性測定装置(商品名:Rheogel−E4000F、(株)ユービーエム製)を用いて、測定温度範囲30〜300℃、昇温速度5℃/min、及び周波数1Hzの条件下で測定を行い、100℃、200℃、250℃での各弾性率の値を求めた。
【0099】
(飽和吸水率の測定)
各実施例及び比較例において得られたフィルム状接着剤を1辺が50mm以上の四角片に切り取り、厚さが5mm以上になるように積層して直径50mm、厚さ3mmの円盤状金型の上に配置し、圧縮プレス成型機(商品名:ETA−D、(株)神藤金属工業所製)を用いて温度150℃、圧力2MPaにおいて10分間加熱した後、これを熱乾燥器中に配置して温度180℃で1時間さらに加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させ、直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を得た。この試験片の質量(W1)、及び恒温恒湿器(商品名:PR−1J、エスペック(株)製)を用いて、温度85℃、相対湿度85%RHにおいて100時間吸水させた後の質量(W2)をそれぞれ測定し、下記式:
飽和吸水率(質量%)={(W2−W1)/W1}×100
により飽和吸水率を求めた。
【0100】
(ワイヤーボンド性評価)
各実施例及び比較例において得られたフィルム状接着剤を、先ず、マニュアルラミネーター(商品名:FM−114、テクノビジョン社製)を用いて温度70℃、圧力0.3MPaにおいてダミーシリコンウェハ(アルミ蒸着シリコンウェハ、8inchサイズ、厚さ100μm)の一方の面に接着させた後、同マニュアルラミネーターを用いて室温、圧力0.3MPaにおいてフィルム状接着剤の前記ダミーシリコンウェハとは反対側の面上にダイシングテープ(商品名:G−11、リンテック(株)製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2−8−1H001、DISCO社製)を接着させた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2030−SE(DD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BB)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)を用いて0.5mm×0.5mmのサイズになるようにダイシングを実施して半導体チップを得た。
【0101】
次いで、ダイボンダー(商品名:SPA−300、(株)新川製)にて温度120℃、圧力4.1MPa(荷重100gf)、時間1.0秒の条件において前記半導体チップをリードフレーム基板(42Arroy系、凸版印刷(株)製)に熱圧着し、これを乾燥機中に配置して温度120℃で1時間加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させた。次いで、ワイヤーボンダー(商品名:UTC−3000、(株)新川製)を用いて、ステージ温度200℃で前記半導体チップ及び前記リードフレーム基板を金ワイヤー(商品名:ATシリーズ、25umΦ、新日鉄マテリアルズ(株)製)により接続し、前記半導体チップ表面のボールシェア強度をボンドテスター(商品名:シリーズ5000、デージ(株))を用いて測定し、以下の基準:
A:ボールシェア強度10mg/μm以上
B:ボールシェア強度10〜5mg/μm
C:ボールシェア強度5mg/μm以下
に従って評価した。
【0102】
(パッケージクラック評価)
前記ワイヤーボンド性評価の方法と同様に半導体チップ及び配線基板が金ワイヤーで接続された試験片を作製し、モールド装置(商品名:V1R、TOWA(株)製)を用いて、モールド剤(京セラ製、KE−3000F5−2)により試験片を封止し、温度180℃において5時間加熱して熱硬化させ、半導体パッケージを得た。恒温恒湿器(商品名:PR−1J、エスペック(株)製)を用いて、得られた半導体パッケージを温度85℃、相対湿度85%RHにおいて100時間吸水させた後、IRリフロー炉で温度240℃において10秒間加熱した。加熱後の半導体パッケージをダイヤモンドカッターで切断し、顕微鏡で観察してパッケージクラックが発生しているか否かを観察した。半導体パッケージは30個組立て、以下の基準:
A:全ての半導体パッケージにおいてパッケージクラックの発生が認められない
B:1個以上の半導体パッケージにおいてパッケージクラックが発生した
に従って評価した。
【0103】
(実施例1)
先ず、100mlのセパラブルフラスコ中において、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越シリコーン(株)製)1.5質量部(球状シリカフィラー100質量部に対して2質量部)を秤量して溶媒としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)32質量部中で温度50℃において2時間攪拌した。これに球状シリカフィラー(商品名:SO−C2、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)を74質量部を秤量して配合し、さらに2時間攪拌して表面処理球状シリカフィラー分散液を得た。
【0104】
次いで、得られた表面処理球状シリカフィラー分散液に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−011、重量平均分子量:1000、軟化点:70℃、固体、エポキシ当量:450、新日化エポキシ製造(株)製)55質量部、液体ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−128、重量平均分子量:400、軟化点:25℃以下、液体、エポキシ当量:190、新日化エポキシ製造(株)製)49質量部、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50S、重量平均分子量:60000、Tg:84℃、新日化エポキシ製造(株)製)28質量部、及び溶媒としてのメチルイソブチルケトン40質量部を秤量して配合し、500mlのセパラブルフラスコ中、温度110℃において2時間加熱攪拌して樹脂混合物を得た。
【0105】
次いで、この樹脂混合物280質量部を800mlのプラネタリーミキサーに移し、イミダゾール型硬化剤(商品名:2PHZ−PW、四国化成(株)製)9質量部を加え、室温において1時間攪拌混合した後、真空脱泡してフィルム状接着剤用組成物を得た。次いで、得られたフィルム状接着剤用組成物を厚さ50μmの離型処理されたPETフィルム上に塗布して温度100℃において10分間加熱して乾燥させ、200mm×300mm、厚さが5μmであるフィルム状接着剤を得た。
【0106】
(実施例2)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに代えてビニルトリメトキシシラン(商品名;KBM−1003、信越シリコーン(株)製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0107】
(実施例3)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに代えてビニルトリエトキシシラン(商品名;KBE−1003、信越シリコーン(株)製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0108】
(実施例4)
固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂に代えてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ECON−1020−80、重量平均分子量:1200、軟化点:80℃、固体、エポキシ当量:200、日本化薬(株)製)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0109】
(実施例5)
固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂に代えてトリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−501H、重量平均分子量:1000、軟化点:55℃、固体、エポキシ当量:167、日本化薬(株)製)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0110】
(実施例6)
固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂に代えてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名:XD−1000、重量平均分子量:1200、軟化点:70℃、固体、エポキシ当量:250、日本化薬(株)製)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0111】
(実施例7)
表面処理球状シリカフィラー分散液に、添加剤としてさらに疎水性ヒュームドシリカ(商品名:RY−200,日本アエロジル(株)製)を3質量部配合したこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0112】
(実施例8)
表面処理球状シリカフィラー分散液に用いるビニルトリメトキシシランの配合量を2.8質量部、メチルイソブチルケトンの配合量を60質量部、球状シリカフィラーの配合量を137質量部としたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0113】
比較例5
表面処理球状シリカフィラー分散液に用いるビニルトリメトキシシランの配合量を4.2質量部、メチルイソブチルケトンの配合量を90質量部、球状シリカフィラーの配合量を206質量部としたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0114】
比較例6
表面処理球状シリカフィラー分散液に用いるビニルトリメトキシシランの配合量を6.5質量部、メチルイソブチルケトンの配合量を140質量部、球状シリカフィラーの配合量を320質量部としたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0115】
(比較例1)
先ず、500mlのセパラブルフラスコ中に、ビニルトリメトキシシラン(名;KBM−1003、信越シリコーン(株)製)1.5質量部(球状シリカフィラー100質量部に対して2質量部)、球状シリカフィラー(商品名:SO−C2、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)を74質量部、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−011、重量平均分子量:1000、軟化点:70℃、固体、エポキシ当量:450、新日化エポキシ製造(株)製)55質量部、液体ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−128、重量平均分子量:400、軟化点:25℃以下、液体、エポキシ当量:190、新日化エポキシ製造(株)製)49質量部、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50S、重量平均分子量:60000、Tg:84℃、新日化エポキシ製造(株)製)28質量部、イミダゾール型硬化剤(商品名:2PHZ−PW、四国化成(株)製)9質量部、及びメチルイソブチルケトン40質量部を秤量して配合し、温度110℃において2時間加熱攪拌して樹脂混合物を得た。
【0116】
次いで、得られた樹脂混合物280質量部を800mlのプラネタリーミキサーに移し、室温において1時間攪拌混合した後、真空脱泡してフィルム状接着剤用組成物を得た。次いで、得られたフィルム状接着剤用組成物を厚さ50μmの離型処理されたPETフィルム上に塗布して温度100℃において10分間加熱して乾燥させ、200mm×300mm、厚さが5μmであるフィルム状接着剤を得た。
【0117】
(比較例2)
ビニルトリメトキシシランの配合量を11質量部、メチルイソブチルケトンの配合量を100質量部、球状シリカフィラーの配合量を549質量部としたこと以外は比較例1と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0118】
(比較例3)
表面処理球状シリカフィラー分散液に配合するビニルトリメトキシシランの配合量を0.3質量部、メチルイソブチルケトンの配合量を7質量部、球状シリカフィラーの配合量を15質量部としたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0119】
(比較例4)
表面処理球状シリカフィラー分散液に配合するビニルトリメトキシシランの配合量を0.7質量部、メチルイソブチルケトンの配合量を15質量部、球状シリカフィラーの配合量を34質量部としたこと以外は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤用組成物及びフィルム状接着剤を得た。
【0120】
実施例1〜及び比較例1〜において得られたフィルム状接着剤用組成物を用いたグラインドゲージ評価、フィルム表面外観評価、並びに、得られたフィルム状接着剤の溶融粘度、弾性率、飽和吸水率の測定、及びワイヤーボンド性評価、パッケージクラック評価を実施した結果をフィルム状接着剤用組成物の組成と共に表1に示す。なお、グラインドゲージ評価において「<10」は、線が観察されなかったことを示す。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜で得られたフィルム状接着剤用組成物は表面処理球状シリカフィラーが極めて均一に分散されており、また、これを用いて得られたフィルム状接着剤用組成物からなるフィルム状接着剤は表面外観が良好であり、80℃における溶融粘度が十分に低いことが確認された。さらに、熱硬化後の弾性率が十分に高くかつ吸水率が十分に低く、半導体パッケージの製造工程におけるボンディングワイヤーの接合強度も高水準であり、パッケージクラックの発生が十分に抑制されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上説明したように、本発明によれば、表面外観が良好であり、溶融粘度が十分に低く被着体との密着性に優れており、硬化後の弾性率が十分に高くかつ吸水率が十分に低いフィルム状接着剤を得ることが可能なフィルム状接着剤用組成物及びその製造方法、フィルム状接着剤、並びに、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージ及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0124】
したがって、本発明によれば、半導体チップをより薄型化・小型化させる場合においても、半導体パッケージの製造工程において、半導体チップと配線基板とを精度よく接着させることができ、ボンディングワイヤーの接合強度を高水準に維持することができ、パッケージクラックの発生を十分に抑制することが可能となるため、本発明は、半導体パッケージ内の半導体チップと配線基板との間や半導体チップと半導体チップとの間を接合するための技術として非常に有用である。
【符号の説明】
【0125】
1…ウェハ、2…接着剤層、3…ダイシングテープ、4…接着剤層付き半導体チップ、5…配線基板、6…ボンディングワイヤー、7…封止樹脂、8…半導体パッケージ。
図1
図2
図3
図4
図5