(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非環式アミン化合物が、ASTM D4739に従って試験される時に、前記非環式アミン化合物のグラム当たり少なくとも70mg KOHのTBN値を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のクランクケース潤滑剤組成物。
前記基油が、API群I油、API群II油、API群III油、API群IV油及びそれらの組み合わせから選択され、前記基油がASTM D445に従って100℃で試験される時に1〜20cStの範囲の粘度を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載のクランクケース潤滑剤組成物。
前記潤滑剤組成物中での任意の反応前に前記潤滑剤組成物を形成するために使用される前記非環式アミン化合物の全質量を基準として、少なくとも90質量%の前記非環式アミン化合物が、前記潤滑剤組成物において未反応のままである、請求項1から8までのいずれか1項に記載のクランクケース潤滑剤組成物。
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、一般的に潤滑剤組成物に関する。更に詳細には、本発明は、非環式アミン化合物を含む潤滑剤組成物、該潤滑剤組成物の形成方法、及び潤滑剤組成物の添加剤濃縮物に関する。
【0002】
発明の背景
それらの性能特性を改善するために、鉱油又は合成油に基づく潤滑剤組成物に安定剤を添加することが公知で且つ慣例である。酸化防止剤は特に重要な安定剤の一種である。潤滑剤組成物の酸化劣化は、潤滑剤組成物の酸化を触媒する窒素の酸化物の存在のために、エンジンの燃焼室において重要な役割を果たす。
【0003】
複数の従来のアミン化合物は、潤滑剤にとって効果的な安定剤である。これらの従来のアミン化合物は、燃焼プロセスの間に形成される酸の中和を助け得る。しかしながら、これらの従来のアミン化合物は、一般に、それらのフルオロエラストマーシールへの悪影響のために内燃機関で使用されていない。
【0004】
発明の要旨
本発明は、基油と非環式アミン化合物を含む潤滑剤組成物を提供する。非環式アミン化合物は、以下の式(I):
【化1】
(式中、R
1はそれぞれ独立して水素及び1〜17個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、R
1のうち少なくとも2つは独立して選択されたアルキル基であり、
R
2はそれぞれ独立してアルコール基、アルキル基、アミド基、エーテル基、及びエステル基から選択され、それぞれ1〜17個の炭素原子を有し、
R
3は水素及びアルコール基、アルキル基、アミド基、エーテル基、及びエステル基から選択され、それぞれ1〜17個の炭素原子を有する)
を有する。
【0005】
本発明は、特定の種類のアミン化合物、非環式アミン化合物による潤滑剤組成物の安定化を記載している。これらのアミン化合物を含む潤滑剤組成物は、燃焼プロセスの間に形成される酸の中和を助ける。
【0006】
発明の詳細な説明
潤滑剤組成物の一態様は、その中に分散した/溶解した基本的な材料の量であり、これは潤滑剤組成物の全塩基価(“TBN”)と呼ばれる。TBNは、任意の材料の塩基度と水酸化カリウムの塩基度とを相関させるために使用される産業基準の測定値である。この値は、2つのASTM滴定法、ASTM D2896及びASTM D4739によって測定される。殆どのTBNは、過塩基性金属石鹸の使用により導き出されるが、これらの石鹸は、ディーゼル微粒子フィルタなどの幾つかの新しいエンジン技術の問題を作り出した。これらの金属石鹸の使用を最小限にする配合物は、価値があり、「低SAPS油」と呼ばれる(SAPSは、硫酸灰分、リン及び硫黄を表す)。
【0007】
低SAPS呼称の要件は、本質的に潤滑剤組成物に見られる従来のカルシウム及びマグネシウム系洗浄剤の量を制限する。これらの従来の洗浄剤は、燃焼プロセスの間に形成され且つ潤滑剤組成物中の基油の酸化から生じる酸の中和を含む、多くの機能を有していた。しかしながら、これらの含まれ得る従来のカルシウム及びマグネシウム系洗浄剤の量の制限は、酸を中和する潤滑剤組成物の能力を低下させた。潤滑剤組成物の酸を中和する能力が低下した結果、潤滑剤組成物を更に頻繁に交換することが必要となった。
【0008】
本発明は、基油及び非環式アミン化合物を含む潤滑剤組成物を提供する。本発明はまた、潤滑剤組成物の形成方法及び該潤滑剤組成物を有する系の潤滑方法を提供する。更に、本発明は、非環式アミン化合物を含む潤滑剤組成物の添加剤濃縮物を提供する。潤滑剤組成物及びこれらの方法は更に以下に記載される。非環式アミン化合物は、潤滑剤組成物の全塩基価(TBN)の調整に有用である。非環式アミン化合物は、以下に記載されるような他の目的にも有用である。
【0009】
非環式アミン化合物は以下の式(I):
【化2】
を有する。式(I)中、R
1はそれぞれ独立して水素及び1〜17個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、ここでR
1のうち少なくとも2つは独立して選択されたアルキル基である。あるいは、R
1はそれぞれ独立して1〜12個、1〜10個、1〜8個、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基から選択され得る。R
1によって表されるそれぞれのアルキル基は直鎖状又は分枝鎖状であってよい。式(I)中、R
2はそれぞれ独立してアルコール基、アルキル基、アミド基、エーテル基、及びエステル基から選択され、それぞれ1〜17個の炭素原子を有する。R
2はそれぞれ独立して1〜15個、1〜12個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有してよい。R
2によって表されるそれぞれの基は、直鎖状又は分枝鎖状であってよい。R
3は、水素及びアルコール基、アルキル基、アミド基、エーテル基、及びエステル基から選択され、それぞれ1〜17個の炭素原子を有する。あるいは、R
3はそれぞれ、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有してよい。R
3によって表されるそれぞれの基は、直鎖状又は分枝鎖状であってよい。
【0010】
少なくとも2つのR
1によって表される基は、それぞれ独立して選択されたアルキル基である。あるいは、非環式アミン化合物のR
1によって表される少なくとも3つの、又は正確に4つの基は、独立して選択されたアルキル基である。
【0011】
特定の実施態様では、R
1、R
2及びR
3によって表される少なくとも1つの基は非置換である。あるいは、R
1、R
2及びR
3によって表される少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの基は非置換である。「非置換」に関しては、R
1、R
2及びR
3によって表される基が、ヒドロキシル、カルボキシル、酸化物、チオ、及びチオール基などのペンダント官能基を含まず、且つこれらの表される基が、酸素、硫黄及び窒素ヘテロ原子などの非環式ヘテロ原子を含まないことが意図されている。他の実施態様では、R
1、R
2及びR
3によって表される基は全て非置換である。あるいはまた、R
1、R
2及びR
3によって表される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの基が置換されていることが考えられる。「置換された」との用語は、R
1、R
2及びR
3によって表される基が、ヒドロキシル、カルボキシル、酸化物、チオ、チオール基、及びそれらの組み合わせなどの少なくとも1つのペンダント官能基を含むか、又はこれらの表される基が、酸素、硫黄、窒素、及びそれらの組み合わせなどの少なくとも1つの非環式ヘテロ原子を含むことを示す。
【0012】
例示的なR
1、R
2、及びR
3基は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、及びn−オクタデシル基から選択され得る。
【0013】
アミン化合物は非環式である。「非環式」との用語は、アミン化合物が環状構造を全く含まないことを意味することが意図されている。
【0014】
1つ以上の実施態様では、非環式アミン化合物が、100〜1200の範囲の平均分子量を有している。あるいは、非環式アミン化合物は、200〜800、又は200〜600の範囲の質量平均分子量を有する。非環式アミン化合物の質量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーなどの複数の公知技術によって測定され得る。
【0015】
1つ以上の実施態様では、非環式アミン化合物は非重合性である。「非重合性」との用語は、非環式アミン化合物が50個、40個、30個、20個又は10個よりも少ないモノマー単位を含む事実を意味する。
【0016】
1つ以上の実施態様では、非環式アミン化合物はリンを含まない。あるいは、非環式アミン化合物が窒素、水素、及び炭素原子からなることも考えられる。あるいは更に、非環式アミン化合物が、窒素、水素、酸素、及び炭素原子からなることも考えられる。更には、非環式アミン化合物が、潤滑剤組成物中の他の成分と塩又は錯体を形成しないことも考えられる。
【0017】
特定の実施態様では、非環式アミン化合物は、以下の化合物:
【化3】
を含む群から選択される。
【0018】
非環式アミン化合物は、潤滑剤組成物を形成するために、0.1〜10質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中で使用される。あるいは、非環式アミン化合物は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.5〜5質量%、又は1〜3質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中で使用される。
【0019】
あるいは、潤滑剤組成物が、添加剤濃縮物として配合される場合、アミン化合物は、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.5〜90質量%、1〜50質量%、1〜30質量%、又は5〜25質量%の範囲の量で含まれてよい。
【0020】
慣用のアミン化合物の従来の使用は、かかる慣用のアミン化合物と、様々な酸、酸化物、トリアゾール、及び他の反応性成分との反応生成物の形成を含んでいた。これらの用途では、慣用のアミン化合物は特定の反応によって消費されているので、最終的に形成された潤滑剤組成物は、多量の慣用のアミン化合物を含有しない。かかる従来の用途では、慣用のアミン化合物の全質量を基準として50質量%を上回る慣用のアミン化合物は、典型的には、潤滑剤組成物において様々な酸と反応する。対照的に、本発明の潤滑剤組成物と本発明の方法は、未反応の状態で多量の非環式アミン化合物を含有している。「未反応」との用語は、非環式アミン化合物の未反応部分が、潤滑剤組成物中の任意の成分と反応しない事実を意味する。従って、非環式アミン化合物の未反応部分は、潤滑剤組成物が内燃機関などの最終利用者用途で使用される前に潤滑剤組成物中に存在する場合、初期状態のままである。
【0021】
特定の実施態様では、潤滑剤組成物中での反応の前に、潤滑剤組成物を形成するために利用される非環式アミン化合物の全質量を基準として少なくとも90質量%の非環式アミン化合物が、潤滑剤組成物において未反応のままである。あるいは、潤滑剤組成物中での反応の前に、非環式アミン化合物の全質量を基準として少なくとも95質量%、96質量%、97質量%、98質量%又は99質量%の非環式アミン化合物が、潤滑剤組成物において未反応のままである。
【0022】
「潤滑剤組成物中での反応の前に」とのフレーズは、潤滑剤組成物中の非環式アミン化合物の量の基準を意味する。このフレーズは、非環式アミン化合物が、潤滑剤組成物中の他の成分と反応することを要求しない、即ち、非環式アミン化合物の全質量を基準として100質量%の非環式アミン化合物が、潤滑剤組成物中での反応前に、潤滑剤組成物において未反応のままである。
【0023】
一実施態様では、未反応のままである非環式アミン化合物のパーセンテージは、潤滑剤組成物中に存在する成分の全てが互いに平衡に達した後に決定される。潤滑剤組成物での平衡に達するのに要する時間は、広く変化し得る。例えば、平衡に達するのに必要な時間は、1分から数日、又は数週間までの範囲であり得る。特定の実施態様では、潤滑剤組成物において未反応のままである非環式アミン化合物のパーセンテージは、1分、1時間、5時間、12時間、1日、2日、3日、1週間、1ヶ月、6ヶ月、又は1年後に決定される。
【0024】
特定の実施態様では、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.1質量%未満、0.01質量%未満、0.001質量%未満、又は0.0001質量%未満の非環式アミン化合物と反応する化合物を含む。特定の実施態様では、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全質量の0.1質量%未満である、全体量の酸、無水物、トリアゾール及び/又は酸化物を含み得る。「酸」との用語は、従来の酸及びルイス酸の両方を含み得る。例えば、酸としては、カルボン酸、例えば、グリコール酸、乳酸及びヒドラシル酸(hydracylic acid);アルキル化コハク酸;アルキル芳香族スルホン酸;及び脂肪酸が挙げられる。例示的なルイス酸としては、アルキルアルミネート;チタン酸アルキル;モリブデンエステル化合物、例えば、チオカルバミン酸モリブデン及びカルバミン酸モリブデン;及び硫化モリブデンが挙げられる。「無水物」は、アルキル化無水コハク酸及びアクリレートによって例示される。トリアゾールは、ベンゾトリアゾール及びその誘導体;トルトリアゾール及びその誘導体;2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプトチアジアゾール、4,4’−メチレン−ビス−ベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾトリアゾール、サリチリデンプロピレンジアミン(salicylidenepropylenediamine)、サリチルアミノ(salicylamino)−グアニジン及びその塩によって表され得る。酸化物は、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド;金属酸化物;アルコキシル化アルコール;アルコキシル化アミン;又はアルコキシル化エステルによって表され得る。あるいは、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全質量を基準として0.01質量%未満、0.001質量%未満、又は0.0001質量%未満である、全体量の酸、無水物、トリアゾール、及び酸化物を含み得る。あるいは更に、潤滑剤組成物は、酸、無水物、トリアゾール、及び酸化物を含まなくてもよい。
【0025】
更に別の実施態様では、潤滑剤組成物は、基油及び非環式アミン化合物からなり得る、又は本質的にそれらからなり得る。潤滑剤組成物は、非環式アミン化合物の機能又は性能を損なわない1種以上の添加剤の他に基油及び非環式アミン化合物からなる、又は本質的にそれらからなり得ることも考えられる。潤滑剤組成物が基油及び非環式アミン化合物から本質的になる種々の実施態様では、潤滑剤組成物は、0.01質量%未満、0.001質量%未満、又は0.0001質量%未満の酸、無水物、トリアゾール、及び酸化物を含むか又はそれらを含まない。他の実施態様では、「本質的になる」との用語は、当業者によって認識されるような潤滑剤組成物の全体的な性能に著しく悪影響を及ぼす化合物を含まないことを記載している。例えば、潤滑剤組成物の全体的な性能に著しく悪影響を及ぼす化合物は、潤滑剤組成物のTBNブースト、潤滑性、シール適合性、腐食抑制能、又は酸性度に悪影響を及ぼす化合物によって説明され得る。
【0026】
上記の通り、非環式アミン化合物は、潤滑剤組成物のTBNを改善する。TBNは、任意の材料の塩基度を水酸化カリウムの塩基度と相関させるために使用される産業基準の測定値である。この値は、mg KOH/gとして報告されており、個々の添加剤についてASTM D4739に従って測定される。非環式アミン化合物のTBN値は、非環式アミン化合物の少なくとも70mg KOH/g、少なくとも100mg KOH/g、又は少なくとも150mg KOH/gである。
【0027】
一実施態様では、潤滑剤組成物は、アミン化合物から、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、又は更に100%の複合TBN(ASTM D4739に従って測定される)を誘導する。更には、特定の実施態様では、潤滑剤組成物は、0.5〜15mg KOH/g、1〜12mg KOH/g、0.5〜4mg KOH/g、1〜3mg KOH/gのTBN(ASTM D4739に従って測定される)を潤滑剤組成物に与えるアミン化合物の量を含む。
【0028】
潤滑剤組成物は、少なくとも1mg KOH/gの潤滑剤組成物のTBN値を有し得る。あるいは、潤滑剤組成物は、ASTM D2896に従って試験する場合、1〜15mg KOH/g、5〜15mg KOH/g、又は9〜12mg KOH/gの範囲の潤滑剤組成物のTBN値を有する。
【0029】
非環式アミン化合物は、フルオロエラストマーシールに対して非攻撃的である。フルオロエラストマーシールは、o−リング、燃料シール、バルブステムスティール、回転シャフトシート、シャフトシート、及びエンジンシールなどの様々な用途で使用され得る。フルオロエラストマーシールはまた、自動車、航空、アプライアンス、及び化学処理産業などの様々な産業で使用され得る。フルオロエラストマーは、ASTM D1418及びISO1629の下で、例えば、FKMの呼称に分類される。フルオロエラストマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VF2のVDF)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、TFEとプロピレンとのコポリマー並びにTFE、PMVE及びエチレンのコポリマーが挙げられる。フッ素含有率は、例えば、フルオロポリマーシールの全質量を基準として66〜70質量%の間で変化する。FKMは、ポリマー鎖上にフルオロ置換基及びパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルコキシ基を有するポリメチレン型のフッ素ゴムである。
【0030】
フルオロエラストマーシールと非環式アミン化合物との適合性は、CEC−L−39−T96で定義された方法で決定され得る。一般的に、従来のアミンは、フルオロエラストマー成分にとって非常に有害である。しかしながら、本発明のアミン化合物は、フルオロエラストマーシールとの適合性に関して肯定的な結果を示す。
【0031】
CEC−L−39−T96シール適合性試験は、シール又はガスケットを潤滑剤組成物において提供し、そこに含まれるシールを用いて潤滑剤組成物を高められた温度まで加熱し、そして高められた温度を一定時間にわたり維持することによって実施される。次にシールを取り出して乾燥させ、シールの機械的特性を評価し、潤滑剤組成物において加熱されなかったシール試験片と比較する。これらの特性のパーセンテージ変化は、シールの潤滑剤組成物との適合性を評価するために分析される。アミン化合物の潤滑剤組成物への導入は、他のアミン化合物に対して、潤滑剤組成物のシールを分解しようとする傾向を低下させる。
【0032】
特定の実施態様では、基油は、API群I基油、API群II基油、API群III基油、API群IV基油、API群V基油及びそれらの組み合わせから選択される。一実施態様では、基油としてはAPI群II基油が挙げられる。
【0033】
基油は、米国石油協会(API)基油互換ガイドラインに従って分類される。換言すれば、基油は、更に、5種の基油のうち1種以上を含むものとして記載され得る:群I(0.03質量%を上回る硫黄含有率、及び/又は90質量%未満の飽和分、粘度指数80〜119);群II(0.03質量%以下の硫黄含有率、及び90質量%以上の飽和分、粘度指数80〜119);群III(0.03質量%以下の硫黄含有率、及び90質量%以上の飽和分、119以上の粘度指数);群IV(全てポリアルファオレフィン(PAO));及び群V(他は全て群I、II、III、又はIVに含有されていない)。
【0034】
基油は、典型的には、100℃でのASTM D445に従って試験する時に1〜20cStの範囲の粘度を有する。あるいは、基油の粘度は、100℃でASTM D445に従って試験する時に、3〜17cSt、又は5〜14cStの範囲であり得る。
【0035】
基油は更に、自動車及びトラックのエンジン、2サイクルエンジン、航空機ピストンエンジン、並びに船舶及び鉄道のディーゼルエンジンを含む、火花点火及び圧縮点火された内燃機関のためのクランクケース潤滑剤として定義され得る。あるいは、基油は更に、ガスエンジン、定置出力エンジン、及びタービンで使用されるべき油として定義され得る。基油は更に、重荷重又は軽荷重エンジン油として定義され得る。
【0036】
更に他の実施態様では、基油は更に、それらの末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化、又は類似の反応によって修飾されている1種以上のアルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー及びそれらの誘導体を含み得る合成油として定義され得る。典型的には、これらの合成油は、油を形成するために更に反応され得るポリオキシアルキレンポリマーを形成するために、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合により調製される。例えば、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、平均分子量1,000を有するメチルポリイソプロピレングリコールエーテル;500〜1,000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル;及び1,000〜1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル)及び/又はモノ−及びそれらのポリカルボン酸エステル(例えば、酢酸エステル、混合されたC
3〜C
8脂肪酸エステル、又はテトラエチレングリコールのC
13オキソ酸ジエステル)も基油として利用され得る。
【0037】
潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、3質量%未満、1質量%未満、又は0.5質量%未満の硫酸灰分を含む低SAPS油であり得る。
【0038】
基油は、典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、70〜99.9質量%、80〜99.9質量%、90〜99.9質量%、又は85〜95質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、基油は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、70質量%、80質量%、90質量%、95質量%、又は99質量%を上回る量で潤滑剤組成物中に存在し得る。様々な実施態様では、潤滑剤組成物中の基油(存在する希釈剤又はキャリアオイルを含む)の量は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、80〜99.5質量%、85〜96質量%、又は90〜95質量%である。
【0039】
あるいは、基油は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.1〜50質量%、1〜25質量%、又は1〜15質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在し得る。
【0040】
潤滑剤組成物は、更に、潤滑剤組成物の種々の化学的及び/又は物理的特性を改善するために1種以上の添加剤を含み得る。1種以上の添加剤の具体例としては、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、金属不活性化剤(又は不動態化剤)、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、分散剤、洗浄剤、及び減摩添加剤が挙げられる。添加剤はそれぞれ単独で又は組み合わせて使用され得る。添加剤は、使用される場合、様々な量で使用され得る。潤滑剤組成物は、特定の用途に使用するための特定の性能課題を達成するために、更なる複数の補助成分を用いて製剤化され得る。例えば、潤滑剤組成物は、錆及び酸化配合物、油圧配合物、タービン油、及び内燃機関配合物であり得る。
【0041】
利用される場合、耐摩耗性添加剤は様々な種類があり得る。一実施態様では、耐摩耗性添加剤は、ジヒドロカルビル−ジチオリン酸塩、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛である。ジヒドロカルビル−ジチオリン酸塩は、以下の一般式:
[R
4O(R
5O)PS(S)]
2M
(式中、R
4及びR
5はそれぞれ独立して1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Mは金属原子又はアンモニウム基である)
によって表され得る。例えば、R
4及びR
5はそれぞれ独立してC
1〜20アルキル基、C
2〜20アルケニル基、C
3〜20シクロアルキル基、C
1〜20アラルキル基又はC
3〜20アリール基である。金属原子は、アルミニウム、鉛、錫、マンガン、コバルト、ニッケル、又は亜鉛を含む群から選択される。アンモニウム基は、アンモニア又は第一級、第二級又は第三級アミンから誘導され得る。アンモニウム基は、式R
6R
7R
8R
9N
+(式中、R
6、R
7、R
8、及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子又は1〜150個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表す)のものであってよい。特定の実施態様では、R
6、R
7、R
8、及びR
9は、それぞれ独立して、4〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し得る。
【0042】
あるいは、耐摩耗性添加剤としては、硫黄、リン、及び/又はハロゲン含有化合物、例えば、硫化オレフィン及び植物油、アルキル化トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、塩素化パラフィン、アルキル及びアリールジ−及びトリスルフィド、モノ−及びジアルキルホスフェートのアミン塩、メチルホスホン酸のアミン塩、ジエタノールアミノメチルトリルトリアゾール、ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチルトリルトリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールの誘導体、エチル3−[(ジイソプロポキシホスフィノチオイル)チオ]プロピオネート、トリフェニルチオホスフェート(トリフェニルホスホロチオエート)、トリス(アルキルフェニル)ホスホロチオエート及びそれらの混合物(例えば、トリス(イソノニルフェニル)ホスホロチオエート)、ジフェニルモノノニルフェニルホスホロチオエート、イソブチルフェニルジフェニルホスホロチオエート、3−ヒドロキシ−1,3−チアホスフェタン3−オキシドのドデシルアミン塩、トリチオリン酸5,5,5−トリス[イソオクチル2−アセテート]、2−メルカプトベンゾチアゾールの誘導体、例えば、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−2−メルカプト−1H−1,3−ベンゾチアゾール、エトキシカルボニル−5−オクチルジチオカルバメート、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
利用される場合、耐摩耗性添加剤は、様々な量で使用され得る。耐摩耗性添加剤は、典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.1〜20質量%、0.5〜15質量%、1〜10質量%、0.1〜1質量%、0.1〜0.5質量%、又は0.1〜1.5質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、耐摩耗性添加剤は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、20質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、1質量%未満、又は0.1質量%未満の量で存在し得る。耐摩耗性添加剤は、それぞれ添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在し得る。
【0044】
利用される場合、酸化防止剤は、様々な種類のものであり得る。好適な酸化防止剤としては、アルキル化モノフェノール、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルウンデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデカ−1’−イル)フェノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0045】
好適な酸化防止剤の更なる例としては、アルキルチオメチルフェノール、例えば2,4−ジオクチルチオメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−エチルフェノール、2,6−ジドデシルチオメチル−4−ノニルフェノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペート及びそれらの組み合わせも利用され得る。
【0046】
更には、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(3,6−ジ−sec−アミルフェノール)、4,4’−ビス−(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、及びそれらの組み合わせも使用され得る。
【0047】
また、アルキリデンビスフェノール、例えば、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、及びそれらの組み合わせも、酸化防止剤として潤滑剤組成物で利用され得ることが考えられる。
【0048】
O−、N−及びS−ベンジル化合物、例えば、3,5,3’,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオールテレフタレート、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート、及びそれらの組み合わせも利用され得る。
【0049】
ヒドロキシベンジル化マロネート、例えば、ジオクタデシル−2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)−マロネート、ジ−オクタデシル−2−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−マロネート、ジ−ドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、及びそれらの組み合わせも酸化防止剤としての使用に適している。
【0050】
トリアジン化合物、例えば、2,4−ビス(オクチルメルカプト)−6−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、及びそれらの組み合わせも使用され得る。
【0051】
酸化防止剤の更なる例としては、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、例えば、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ベンジルホスホネート、例えば、ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ3−メチルベンジルホスホネート、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のモノエチルエステルのカルシウム塩、及びそれらの組み合わせも利用され得る。更に、アシルアミノフェノール、例えば、4−ヒドロキシラウラニリド、4−ヒドロキシステアラニリド、オクチルN−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバメートも利用され得る。
【0052】
[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と、一価又は多価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、及びそれらの組み合わせとのエステルも使用され得る。更に、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と、一価又は多価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、及びそれらの組み合わせとのエステルが使用され得ることが考えられる。
【0053】
好適な酸化防止剤の更なる例としては、窒素を含むもの、例えば、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジンが挙げられる。他の好適な酸化防止剤の例としては、アミン系酸化防止剤、例えば、N、N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、Ν,Ν’−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、4−(p−トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−アリルジフェニルアミン、4−イソプロポキシジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、例えば、p,p’−ジ−tert−オクチルジフェニルアミン、4−n−ブチルアミノフェノール、4−ブチリルアミノフェノール、4−ノナノイルアミノフェノール、4−ドデカノイルアミノフェノール、4−オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4−メトキシフェニル)アミン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス[(2−メチル−フェニル)アミノ]エタン、1,2−ビス(フェニルアミノ)プロパン、(o−トリル)ビグアニド、ビス[4−(1’,3’−ジメチルブチル)フェニル]アミン、tert−オクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、モノ−及びジアルキル化tert−ブチル/tert−オクチルジフェニルアミンの混合物、モノ−及びジアルキル化イソプロピル/イソヘキシルジフェニルアミンの混合物、モノ−及びジアルキル化tert−ブチルジフェニルアミンの混合物、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−4H−1,4−ベンゾチアジン、フェノチアジン、N−アリルフェノチアジン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,4−ジアミノブト−2−エン、N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリド−4−イル−ヘキサメチレンジアミン、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリド−4−イル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
好適な酸化防止剤の更なる例としては、脂肪族又は芳香族ホスフィット、チオジプロピオン酸又はチオ二酢酸のエステル、又はジチオカルバミン酸又はジチオリン酸の塩、2,2,12,12−テトラメチル−5,9−ジヒドロキシ−3,7,1トリチアトリデカン及び2,2,15,15−テトラメチル−5,12−ジヒドロキシ−3,7,10,14−テトラチアヘキサデカン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。更に、硫化脂肪酸エステル、硫化脂肪及び硫化オレフィン、及びそれらの組み合わせが使用され得る。
【0055】
利用される場合、酸化防止剤は様々な量で使用され得る。酸化防止剤は、典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01〜5質量%、0.1〜3質量%、又は0.5〜2質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、酸化防止剤は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、5質量%未満、3質量%未満、又は2質量%未満の量で存在し得る。酸化防止剤は、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在し得る。
【0056】
利用される場合、金属不活性化剤は様々な種類のものであってよい。好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、例えば、4又は5−アルキルベンゾトリアゾール(例えば、トルトリアゾール)及びその誘導体、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾトリアゾール及び5,5’−メチレンビスベンゾトリアゾール;ベンゾトリアゾール又はトルトリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル)トルトリアゾール及び1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール;及びアルコキシアルキルベンゾトリアゾール、例えば、1−(ノニルオキシメチル)ベンゾトリアゾール、1−(1−ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール及び1−(1−シクロヘキシルオキシブチル)トルトリアゾール及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
好適な金属不活性化剤の更なる例としては、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、例えば、3−アルキル(又はアリール)−1,2,4−トリアゾール、及び1,2,4−トリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル−1,2,4−トリアゾール;アルコキシアルキル−1,2,4−トリアゾール、例えば、1−(1−ブトキシエチル)−1,2,4−トリアゾール;及びアシル化3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール誘導体、例えば、4,4’−メチレンビス(2−ウンデシル−5−メチルイミダゾール)及びビス[(N−メチル)イミダゾール−2−イル]カルビノールオクチルエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な金属不活性化剤の更なる例としては、硫黄含有複素環化合物、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及びその誘導体;及び3,5−ビス[ジ(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−1,3,4−チアジアゾリン−2−オン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。金属不活性化剤の更に一層の例としては、アミノ化合物、例えば、サリチリデンプロピレンジアミン、サリチルアミノグアニジン及びそれらの塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
利用される場合、金属不活性化剤は様々な量で使用され得る。金属不活性化剤は、典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、金属不活性化剤は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.1質量%未満、0.7質量%未満又は0.5質量%未満の量で存在し得る。金属不活性化剤は、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.1質量%〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在し得る。
【0059】
利用される場合、防錆剤及び/又は摩擦調整剤は様々な種類のものであってよい。防錆剤及び/又は摩擦調整剤の好適な例としては、有機酸、それらのエステル、金属塩、アミン塩及び無水物、例えば、アルキル及びアルケニルコハク酸及びそれらのアルコール、ジオール又はヒドロキシカルボン酸との部分エステル、アルキル及びアルケニルコハク酸、4−ノニルフェノキシ酢酸、アルコキシ及びアルコキシエトキシカルボン酸、例えば、ドデシルオキシ酢酸、ドデシルオキシ(エトキシ)酢酸及びそれらのアミン塩の部分アミド、更にはN−オレオイルサルコシン、ソルビタンモノオレエート、ナフテン酸鉛、アルケニルコハク酸無水物、例えば、ドデセニルコハク酸無水物、2−カルボキシメチル−1−ドデシル−3−メチルグリセロール及びそれらのアミン塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。更なる例としては、窒素含有化合物、例えば、第一級、第二級又は第三級脂肪族又は脂環式アミン並びに有機酸及び無機酸のアミン塩、例えば、油溶性アルキルアンモニウムカルボキシレート、さらには1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−3−(4−ノニルフェノキシ)プロパン−2−オール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。更なる例としては、複素環式化合物、例えば、置換イミダゾリン及びオキサゾリン、及び2−ヘプタデセニル−1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリン、リン含有化合物、例えば、リン酸部分エステルのアミン塩又はリン酸部分エステル、及びジアルキルジチオリン酸亜鉛、モリブデン含有化合物、例えば、モリブデンジチオカルバメート及び他の硫黄及びリン含有誘導体、硫黄含有化合物、例えば、バリウムジノニルナフタレンスルホネート、カルシウム石油スルホネート、アルキルチオ−置換脂肪族カルボン酸、脂肪族2−スルホカルボン酸のエステル及びその塩、グリセロール誘導体、例えば、グリセロールモノオレエート、1−(アルキルフェノキシ)−3−(2−ヒドロキシエチル)グリセロール、1−(アルキルフェノキシ)−3−(2,3−ジヒドロキシプロピル)グリセロール及び2−カルボキシアルキル−1,3−ジアルキルグリセロール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
利用される場合、防錆剤及び/又は摩擦調整剤は様々な量で使用され得る。防錆剤及び/又は摩擦調整剤は、典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、防錆剤及び/又は摩擦調整剤は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.1質量%未満、0.7質量%未満、又は0.5質量%未満の量で存在し得る。防錆剤及び/又は摩擦調整剤は、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在し得る。
【0061】
利用される場合、粘度指数改善剤(VII)は様々な種類のものであってよい。VIIの好適な例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー及びポリエーテル類、及びこれらの組み合わせが挙げられる。利用される場合、VIIは様々な量で使用され得る。VIIは典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01〜20質量%、1〜15質量%、又は1〜10質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、VIIは、潤滑剤組成物の全質量を基準として、10質量%未満、8質量%未満、又は5質量%未満の量で存在し得る。VIIは、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.01〜20質量%、1〜15質量%、又は1〜10質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在し得る。
【0062】
利用される場合、流動点降下剤は様々な種類のものであってよい。流動点降下剤の好適な例としては、ポリメタクリレート及びアルキル化ナフタレン誘導体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
利用される場合、流動点降下剤は様々な量で使用され得る。流動点降下剤は典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、流動点降下剤は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.1質量%未満、0.7質量%未満、又は0.5質量%未満の量で存在し得る。流動点降下剤は、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在し得る。
【0064】
利用される場合、分散剤は様々な種類のものであってよい。分散剤の好適な例としては、ポリブテニルコハク酸アミド又はイミド、ポリブテニルホスホン酸誘導体及び塩基性マグネシウム、カルシウム及びバリウムスルホネート及びフェノレート、コハク酸エステル及びアルキルフェノールアミン(マンニッヒ塩基)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
アミン分散剤はポリアルケンアミンであってよい。ポリアルケンアミンとしてはポリアルケン部分が挙げられる。ポリアルケン部分は、同一又は異なる、直鎖状又は分枝鎖状のC
2〜6オレフィンモノマーの重合生成物である。好適なオレフィンモノマーの例は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチルブテン、1−ヘキセン、2−メチルペンテン、3−メチルペンテン、及び4−メチルペンテンである。ポリアルケン部分は、200〜10,000の範囲の数平均分子量M
nを有する。
【0066】
一構成では、ポリアルケンアミンはポリイソブテンから誘導される。特に好適なポリイソブテンは、末端二重結合の高い含有率を特徴とする「高反応性」ポリイソブテンとして知られている。好適な高反応性ポリイソブテンは、例えば、ポリイソブテン中の二重結合の合計数を基準として、70モル%を上回る、80モル%を上回る、85モル%を上回る、90モル%を上回る、又は92モル%を上回る末端ビニリデン二重結合の割合を有する、ポリイソブテンである。更に好ましいのは、特に均一なポリマーフレームワークを有するポリイソブテンである。均一なポリマーフレームワークは、少なくとも85質量%、90質量%、又は95質量%のイソブテン単位から構成されるそれらのポリイソブテンである。かかる高反応性ポリイソブテンは好ましくは、上記の範囲の数平均分子量を有する。更に、高反応性ポリイソブテンは、1.05〜7、又は1.1〜2.5の範囲の多分散性を有し得る。高反応性ポリイソブテンは、1.9未満、又は1.5未満の多分散性を有し得る。多分散性とは、数平均分子量M
nによって除算された質量平均分子量M
wの商を意味する。
【0067】
ポリアルケンアミンは、無水コハク酸から誘導された部分を含んでよく且つヒドロキシル基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を含んでよい。例えば、アミン分散剤は、300〜5000の範囲の数平均分子量を有する従来の又は高反応性ポリイソブテンと、無水マレイン酸との熱経路による又は塩素化ポリイソブテンを介する反応によって得られるポリイソブテンコハク酸無水物から誘導され得る。特に、脂肪族ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミンによる誘導体が注目されている。
【0068】
ポリアルケンアミンを製造するために、ポリアルケン成分は、それ自体公知の方法でアミノ化され得る。好ましいプロセスは、適切な窒素化合物の存在下でのヒドロホルミル化とそれに続く還元的アミノ化によりオキソ中間体の調製を介して進行する。
【0069】
アミン分散剤は、一般式:HNR
10R
11(式中、R
10及びR
11はそれぞれ独立して水素原子又は1〜17個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であってよい)によって表されるか、又はモノ又はポリヒドロキシル化されたそれらの類似体であってよい。アミン分散剤はまた、一般式Z−NH−(C
1〜C
6−アルキレン−NH)
m−C
1〜C
6アルキレン(式中、mは0〜5の範囲の整数であり、Zは水素原子又は1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ここでC
1〜C
6アルキレンはアルキル基の対応する橋かけされた類似体を表す)のポリ(オキシアルキル)基又はポリアルキレンポリアミン基であり得る。アミン分散剤はまた、1〜10個のC
1〜C
4アルキレンイミン基から構成されるポリアルキレンイミン基であってよいか、又はそれらが結合される窒素原子と一緒に、任意に1個〜3個のC
1〜C
4アルキル基によって置換され且つ任意にO又はNなどの1つの更なる環ヘテロ原子を有する任意に置換される5員〜7員の複素環である。
【0070】
好適なアルキル基の例としては、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル又はn−プロピル、n−、イソ−、sec−又はtert−ブチル、n−又はイソペンチル;さらにn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル及びn−オクタデシル、さらにその一分枝鎖状又は多分枝鎖状の類似体;さらに炭化水素鎖が1つ以上のエーテル橋を有する対応する基が挙げられる。
【0071】
好適なアルケニル基の例としては、一分枝鎖状又は多分枝鎖状の類似体、好ましくは、二重結合が炭化水素鎖中の任意に位置にあってよい、2〜18個の炭素原子を有するアルキル基の一分枝鎖状又は多分枝鎖状の類似体が挙げられる。
【0072】
C
4〜C
18シクロアルキル基の例としては、1〜3個のC
1〜C
4アルキル基によって置換されたシクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル及びそれらの類似体が挙げられる:C
1〜C
4アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソ−又はn−プロピル、n−、イソ−、sec−又はtert−ブチルから選択される。
【0073】
アリールアルキル基の例としては、単環式又は二環式の、4員〜7員の、特に6員の芳香族又は複素芳香族基、例えば、フェニル、ピリジル、ナフチル及びビフェニルから誘導されるC
1〜C
18アルキル基及びアリール基が挙げられる。
【0074】
一般式HNR
10R
11の適切な化合物の例は、アンモニア;第一級アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロペンチルアミン及びシクロヘキシルアミン;以下の
式の第一級アミン:CH
3−O−C
2H
4−NH
2、C
2H
5−O−C
2H
4−NH
2、CH
3−O−C
3H
6−NH
2、C
2H
5−O−C
3H
6−NH
2、C
4H
9−O−C
4H
8−NH
2、HO−C
2H
4−NH
2、HO−C
3H
6−NH
2及びHO−C
4H
8−NH
2;第二級アミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びジフェニルアミン;さらに以下の式の第二級アミン:(CH
3−O−C
2H
4)
2NH、(C
2H
5−O−C
2H
4)
2NH、(CH
3−O−C
3H
6)
2NH、(C
2H
5−O−C
3H
6)
2NH、(n−C
4H
9−O−C
4H
8)
2NH、(HO−C
2H
4)
2NH、(HO−C
3H
6)
2NH及び(HO−C
4H
8)
2NH;及び複素環式アミン、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン及びピペラジン、さらにそれらの置換誘導体、例えば、N−C
1〜6アルキルピペラジン及びジメチルモルホリン;並びにポリアミン及びポリイミン、例えば、n−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びポリエチレンイミン、さらにそれらのアルキル化生成物、例えば、3−(ジメチルアミノ)−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン及びN,N,N’,N’−テトラメチルジエチレントリアミンである。
【0075】
利用される場合、分散剤は様々な量で使用され得る。分散剤は、典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01〜15質量%、0.1〜12質量%、0.5〜10質量%、又は1〜8質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、分散剤は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、15質量%未満、12質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、又は1質量%未満の量で存在し得る。これらの分散剤は、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在し得る。
【0076】
利用される場合、洗浄剤は様々な種類のものであってよい。洗浄剤の好適な例としては、過塩基性又は中性の金属スルホネート、フェネート及びサリチレート、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
利用される場合、洗浄剤は様々な量で使用され得る。洗浄剤は、典型的には、潤滑剤組成物の全質量を基準として、0.01〜5質量%、0.1〜4質量%、0.5〜3質量%、又は1〜3質量%の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する。あるいは、洗浄剤は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、又は1質量%未満の量で存在し得る。洗浄剤は、典型的には、添加剤濃縮物の全質量を基準として、0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の範囲の量で添加剤濃縮物中に存在する。
【0078】
様々な実施態様では、潤滑剤組成物は、実質的に水を含まない、例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全質量を基準として、5質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満の水を含む。あるいは、潤滑剤組成物は、完全に水を含まなくてよい。
【0079】
上記の化合物の幾つかは、最終形態の潤滑剤組成物の成分が最初に一緒に添加された又は組み合わされたそれらの成分とは異なるように、該潤滑剤組成物と相互作用し得る。それによって形成された幾つかの生成物、例えば、本発明の潤滑剤組成物をその意図する用途で使用する際に形成された生成物は、容易に説明されない又は説明できない。それにも関わらず、全てのかかる改変、反応生成物、及び本発明の潤滑剤組成物をその意図する用途で使用する際に形成された生成物は、明らかに考慮されており、それによって本願明細書に含まれる。本発明の様々な実施態様は、上記のような、1つ以上の改変、反応生成物、及び潤滑剤組成物の利用から形成された生成物を含む。
【0080】
フルオロポリマーシールを含むシステムの潤滑方法も提供される。本方法は、フルオロポリマーシールと上記の非環式アミン化合物との接触を含む。非環式アミン化合物は基油に溶解されてよく、従って、本方法は、フルオロポリマーシールと潤滑剤組成物との接触を含み得る。フルオロポリマーシールを含むシステムは、内燃機関を含み得る。あるいは、フルオロポリマーシールを含むシステムは、潤滑剤組成物が使用される機器、例えば、コンベヤ、トランスミッション、ディーゼルエンジン、歯車装置、滑車、及び他の機械を含み得る。
【0081】
更に、潤滑剤組成物の形成方法が提供される。本方法は、上記の基油と非環式アミン化合物とを組み合わせることを含む。従って、アミン化合物は、それを基油に所望レベルの濃度で分散又は溶解させることによって基油に直接添加され得る。あるいは、基油は、アミン化合物が所望レベルの濃度で提供されるまで、撹拌と同時にアミン化合物に直接添加され得る。かかるブレンドは、周囲又は高められた温度で起こり得る。一実施態様では、1種以上の添加剤を濃縮物にブレンドし、その後、これを基油にブレンドして潤滑剤組成物を作る。濃縮物は、典型的には、濃縮物が所定量の基油と組み合わされる時に、潤滑剤組成物に望ましい濃度を与えるために配合されている。
【0082】
実施例
分散剤、洗浄剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、消泡剤、基油、耐摩耗添加剤、流動点降下剤及び粘度調整剤を含有する完全に配合された潤滑剤組成物を調製した。この潤滑剤組成物は、代表的な市販のクランクケース潤滑剤であり、「基準潤滑剤」として指定され、且つ異なるアミン化合物のシール適合性への効果を比較するためのベースラインとして使用されている。
【0083】
基準潤滑剤を様々な異なるアミン系化合物と組み合わせて、アミン系化合物のシール適合性への効果を決定した。本発明の実施例#1は、一実施態様による本発明のアミン化合物を含む。比較例#1〜3は、本発明の範囲外に入る他のアミン系化合物を含む。
【0084】
本発明の実施例#1の基準潤滑剤に添加される化合物は、tert−アミル−tert−ブチルアミンである。比較例#1の基準潤滑剤に添加される化合物は、1−ドデシルアミンであり;比較例#2の基準潤滑剤に添加される化合物はN−N−ジメチルシクロヘキシルアミンであり;且つ比較例#3の基準潤滑剤に添加される化合物は4−ベンジルピペリジンである。
【0085】
それぞれのアミン添加剤を、基準潤滑剤のTBNに対して3単位のTBNを提供するのに十分な量で添加した。得られた試料のそれぞれのTBNを、ASTM D4739及びASTM D2896(mg KOH/gの単位で)それぞれに従って測定した。追加量の基油をそれぞれの試料に添加して、同等の合計質量を与えた。基準潤滑剤及び本発明の例及び比較例のそれぞれについて添加された化合物の量を以下の表1に示す。
【表1】
【0086】
本発明の例及び比較例のシール適合性を、産業基準のCEC L−39−T96シール適合性試験を用いて評価した。CEC−L−39−T96シール適合性試験を、シール又はガスケットを潤滑剤組成物に送り、潤滑剤組成物をその中に含まれるシールと一緒に高められた温度まで加熱し、高められた温度を一定時間維持することによって実施する。次にシールを除去して乾燥させ、シールの機械的特性を評価し、潤滑剤組成物中で加熱されなかったシール試験片と比較する。これらの特性の変化パーセンテージを分析して、シールと潤滑剤組成物との適合性を評価する。それぞれの配合を、同じ条件下で2回試験した(実験#1及び実験#2)。シール適合性試験の結果を以下の表2及び表3に示す。
【表2】
【表3】
【0087】
表2及び表3に示されるように、本発明の実施例#1のシール適合性は、比較例#1〜3のシール適合性と比較して引張強度及び破断時伸びに関して改善された。更に詳細には、本発明の実施例#1の引張強度は−44%及び−49%であるが、比較例#1、2、3の引張強度は、それぞれ、−64%及び−70%;−75%及び−70%及び−69%であった。同様に、本発明の実施例#1の破断時伸びは、−67%及び−71%であったが、比較例#1、2、3の破断時伸びは、それぞれ、−100%及び−98%;−82%及び−78%、及び−75%及び−76%であった。
【0088】
この試験は、比較例#1〜3の組成物が、フルオロエラストマーシールの引張強度及び破断時伸びを本発明の実施例#1の組成物よりも遙かに大きな程度まで低下させたことを示す。
【0089】
アミン化合物(本発明及び比較)のそれぞれのTBNを、それぞれ、ASTM D4739(mg KOH/gの単位で)に従って測定した。結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0090】
表2〜4に示すように、本発明の実施例#1は、比較例#1〜3のTBN値に対して中央値のTBN値を示したが、本発明の実施例#1のシール適合性は、引張強度と破断時伸びに関して大幅に改善された。
【0091】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載された表現及び特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、これは添付の特許請求の範囲内に入る特定の実施態様の間で変化し得ることが理解されるべきである。様々な実施態様の特定の特徴又は態様を記載するための本願明細書に依存するマーカッシュ群に関しては、様々な、特別な及び/又は予期しない結果が、全ての他のマーカッシュ要素から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得られ得ることが理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素が、添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様に対して個別に及び/又は組み合わされて依存されてよく、適切な根拠を提供する。
【0092】
本発明の様々な実施態様を記載する際に依存する任意の範囲及び部分範囲は、独立して及びまとめて添付の特許請求の範囲内に入り、かかる値が明確にそこに記載されていない場合でも、そこにある整数値及び/又は小数値を含む、全ての範囲を記載し且つ考慮することも理解されるべきである。当業者は、列挙された範囲及び部分範囲が本発明の様々な実施態様を十分に記載し且つ可能にすることを容易に理解し、かかる範囲及び部分範囲が、関連する半分、3分の1、4分の1、5分の1等に更に線引きされ得ることを理解している。ほんの一例として、「0.1から0.9までの」範囲は、下3分の1、即ち、0.1〜0.3、中3分の1、即ち、0.4〜0.6、及び上3分の1、即ち、0.7〜0.9に更に線引きされてよく、これらは個々に且つまとめて添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様に対して個々に及び/又はまとめて依存されてよく且つ適切な根拠を提供する。
【0093】
更に、「少なくとも」、「それより高い」、「未満」、「以下」などの範囲を規定又は変更する用語に関しては、かかる用語が部分範囲及び/又は上限又は下限を含むことが理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、固有に少なくとも10〜35の部分範囲、少なくとも10〜25の部分範囲、25〜35の部分範囲などの部分範囲を含み、それぞれの部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様に対して個別に及び/又はまとめて依存されてよく且つ適切な根拠を提供する。最終的に、開示された範囲内の個別の数は、添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様に対して依存されてよく且つ適切な根拠を提供する。例えば、「1から9までの」範囲は、様々な個々の整数、例えば、3、並びに小数点(又は小数部)を含む個々の数、例えば、4.1を含み、これは添付の特許請求の範囲内の特別な実施態様に対して依存されてよく且つ適切な根拠を提供する。
【0094】
本発明は例示的に記載されており、使用された用語は限定ではなく説明の用語の範疇に入ることが意図されていることが理解されるべきである。本発明の多くの改変及び変更が、上記の教示に照らして可能であり、本発明は、特別に記載された以外の方法でも実施され得る。