(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを試料に走査する偏向器と、前記試料に対する荷電粒子ビームの走査によって得られる信号を記憶する画像メモリと、前記偏向器を制御する制御装置を備えた荷電粒子線装置において、
前記制御装置は、前記画像メモリに記憶される画像に含まれる画素に対応する試料上の位置に荷電粒子ビームを照射するときに比べて、前記画素間の前記荷電粒子ビームの走査を高速に行うよう前記偏向器を制御することを特徴とする荷電粒子線装置。
荷電粒子源と、当該荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを試料に走査する偏向器と、前記試料に対する荷電粒子ビームの走査によって得られる信号を記憶する画像メモリと、前記偏向器を制御する制御装置を備えた荷電粒子線装置において、
前記制御装置は、前記荷電粒子ビームを走査するときの走査速度及び照射点間間隔の少なくとも1つを、少なくとも2つの状態としたときに、それぞれの状態で得られる信号を評価し、当該評価結果が所定の条件を満たす前記走査速度及び前記照射点間間隔の少なくとも1つを、前記走査速度を一軸、前記照射点間間隔を他の一軸とするマップを表示する入力装置に表示された当該マップによる設定に基づいて、選択することを特徴とする荷電粒子線装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施例では主に、FOV内の微小な部位単位での帯電の影響を緩和すべく、ビームの走査速度及びビーム走査時の照射点間間隔を適正化した荷電粒子線装置について説明する。更に、走査速度及び照射点間間隔の少なくとも1つの最適条件を見出すことができる荷電粒子線装置について説明する。
【0013】
以下に説明する実施例では例えば、荷電粒子源から放出された荷電粒子ビームを集束する対物レンズと、当該荷電粒子ビームの走査位置を変更する偏向器と、前記走査偏向器の制御を行う制御装置と、試料を搭載するための試料ステージと、前記試料から放出される荷電粒子を検出する検出器とを備えた荷電粒子線装置であって、正規の観察に先立って、観察条件を設定するための条件設定動作として、荷電粒子ビームの走査速度と照射点の間隔を繰り返し変化させて複数のデータを取得し、それらのデータから測定部位にあった観察条件を選択できる荷電粒子線装置を説明する。
【0014】
走査速度と照射点の間隔を変化させつつ、見出した条件に基づいて観察条件を設定する事で、測定部位の信号量またはコントラスト比を改善できる。
【0015】
図1に荷電粒子線装置の一種である走査型電子顕微鏡の概略図を示す。電子銃1で発生した電子線2(電子ビーム)をコンデンサレンズ3で収束させ、最後に対物レンズ5で試料6上に収束させる。偏向器4で電子線2を試料の電子線走査領域の上を走査(以後、スキャンとも呼ぶ)させる。1次電子を2次元的に走査し、照射によって試料内で励起され、試料から放出される2次電子7を検出器8で検出し、電子の信号を画像に変換することで、試料の観測・計測を行う。
図1に例示するSEMは、画素ごとに検出信号を記憶する画像メモリを備えており、検出信号は当該画像メモリに記憶される。
【0016】
試料が誘電体である場合、SEM観察中の走査領域(FOV)内には2次元の帯電分布が形成される。SEMで主に検出している電子は、放出量が多く、エネルギーの小さい(〜数eV)2次電子であるため、表面に形成されるわずかな帯電の影響を受け易い。このため、帯電する試料のSEM観察では、照射時にどのような帯電分布が形成されているかによって得られる画像が変化する。表面の帯電分布を決定するパラメータとして、2次電子の放出量を左右する1次電子のエネルギー、電流量、電子線の走査順序および走査速度がある。
【0017】
照射場所の帯電に直接影響する1次電子エネルギー、電流量は、観察条件探索の主要パラメータである。試料表面が均一な材質である場合には、2次電子の放出量も一定であり、帯電制御は比較的行いやすいと考えるが、近年のデバイス構造の複雑化に伴い多種多様な材料を組み合わせてパターンが形成されることが多くなり、1次電子エネルギーと電流量のみでの帯電制御が困難になって来ている。一方、走査順序および走査速度は、照射によって蓄積された帯電の緩和の効果を反映するパラメータであり、発明者らの検討によって、これらのパラメータの適正化が、測定や検査にとって重要であるとの認識に至った。
【0018】
また、半導体デバイスの微細化に伴って、試料の帯電の画像への影響が顕著に現れてきている。従来のSEMでは、電子線の走査はXY共に一方向に対して行われる事が一般的であったが、FOV内の帯電の影響により、観察したい場所の検出信号量が微量である場合や、信号は検出できるが周囲のパターンとのコントラストが取れない場合がある。また、その一方で、深穴や深溝などアスペクト比(=深さ/穴径(または溝幅))の大きなパターンに対しては、正の帯電を利用して2次電子の検出量を増やすといった方法が取られているが、正帯電の分布によって穴底や溝底の像が歪む場合がある。
【0019】
これらの現象の発生を抑制するためには、試料表面の帯電分布を制御する事が有効と考えられるが、照射領域に含まれる観察パターンの形状、寸法は一定ではなく、どのような走査法が最適であるかを探索するには非常に多くの時間がかかる。また、パターンを形成する材料に関しても、製造プロセスの差によって帯電特性が異なる場合があり、或るプロセスのウェハでは良く見えるが、別のプロセスでは観察が困難な場合も発生する可能性がある。
【0020】
以下に、観察パターンに応じて、電子線の走査速度および照射点の間隔を変更することで、観察したい領域の検出信号量またはコントラスト比を改善する走査条件決定方法について、図面を用いて説明する。特に本実施例では、走査速度と照射点の間隔の2つのパラメータを変更させて、信号量またはコントラスト比の最適となる条件を探索する方法について説明する。
【0021】
図2に観察条件設定のためのフローチャートを示す。まず、観察パターンが含まれるように観察時の照射領域(FOV)を設定する。ここで、観察倍率および観察角度(観察パターンに対するFOVの角度)を指定する。次に、FOV内で測長(管理)を行う領域(ROI)を指定する。
【0022】
ここで、最適化するための指標として、ROIの平均信号量(輝度)か別途指定する場所とのコントラスト比、或いは別途指定する場所とのCNR(Contrast to Noise Ratio)、或いは別途指定する領域のシュリンク量のいずれかを指定する。コントラスト比を指定した場合には、ROIとコントラスト比を算出する領域を追加で指定する。CNRは、ノイズに対するROIのコントラストの大きさを表したものであり、コントラスト比を算出する領域に加え、ノイズ判定領域も指定する。シュリンク量を指標とした場合には、シュリンク量を判定する領域およびシュリンク量の許容値を指定する。材料によっては、電子線照射によるダメージで形状が変形することがあり、シュリンク量を指標とすることで、ダメージの少ない観察条件探索が可能である。指定したFOVに対して、走査速度と照射点の間隔を所定の条件分変更して、スキャンを実施する。ここで、走査速度はFOV内を走査する速度、照射点の間隔はFOV内のX方向とY方向の分割数に対応する。分割数が大きいほど照射点の間隔は狭くなる。例えばFOV内を512×512ピクセルで走査した場合、XYそれぞれの分割数が512であれば、照射点の間隔は1(連続)となる。各スキャンで結果得られた画像から、指標の値(平均信号量、コントラスト比、CNR、シュリンク量のいずれか)を抽出する。
【0023】
得られた結果は、
図3の下図に例示する2次元のマップで表示される。本例では、例えば
図3上図に例示したビア・トレンチパターンへの測定条件を抽出する例について説明する。本例では、ビア底の径を測定対象とすべく、ビア底をROIとして設定し、当該部分の信号量(輝度)やコントラスト(例えば他の指定部分との輝度差)を見出す例について説明する。
図3上図に例示するビアは、下層パターン302上に上層ラインパターン301を積層することによって構成されている。マップの軸は、走査速度と照射点の間隔であり、各条件の指標値を表示する。また、マップの各ボックスを、得られた信号量やコントラスト比に応じた輝度で表示する。例えば、マップの色が明るいほど、信号量またはコントラスト比が高いことを示すようにする。このような表示を行うことによって、適正な走査条件の組み合わせを容易に見出すことが可能となる。
【0024】
また、マップから、最も指標値の良い条件(例えば輝度やコントラストが最も高いボックス)を自動で設定することも可能であるが、オペレータが得られたマップ上から条件を選択しても良い。選択した条件の走査順序(スキャンするピクセルの番号、あるいはアニメーションによる照射点の変化)をオペレータは画面上に表示し、確認する事ができる。得られた走査速度および照射点間隔に関する観察条件は、装置のハードディスクまたはメモリ上に保存され、保存した観察条件を読み込んで測長のための測定を実施する。
【0025】
本観察条件は、レシピによる画像取得においても読み込みが可能であり、アドレッシングなどにより観察パターンの位置合わせを行うことで、同じ条件での観察が可能である。本実施例によれば、形状または材料コントラストが抽出困難なROIにおいても、最適な観察条件の有無を判定する事が可能となり、例えば半導体の製造工程において、より高精度かつ効果的なプロセス管理が可能となる。
【0026】
次に照射点の間隔を広げた際の走査順序の設定方法に関して、以下説明する。照射点の間隔は、FOV内をXY方向にM×Nのブロックに分割することで設定する。ここで、分割は画像のピクセル単位で実施する。取得する画像のピクセル数から分割数を設定する他、ブロックのサイズおよびピクセル数を基準に取得する画像のFOVおよびピクセル数を設定しても良い。
【0027】
図4に、6×9ピクセルの画像を3×3のブロックで分割した場合の例を示す。ここでは、3×3のブロックに対して、左上のブロック1から走査を開始した場合を示す。まず、ブロック1の左上ピクセル“1”を照射する。各ブロック内では同じ場所を照射するため、ブロックのサイズが照射点の間隔と一致する。各ブロックに対して、ピクセル“1”を照射する。その後、ブロック1に戻り、ブロック内の右下ピクセル“2”を照射する。ここでピクセル“2”を選択する基準として、各ブロックの過去に照射したピクセル“1”との距離を求め、帯電の影響が最も小さくなるピクセルを選択する。ここで、次の照射ブロックはブロック1であるが、ブロック内のピクセル選定は周囲にブロックが存在する条件で影響を評価する(例えば、
図4の5番目のブロックなど)。照射するピクセルと過去の照射ピクセルとの影響は以下の式(1)で表す。FOV内に複数の材料がある場合や形状(高さ)が異なる場合には、帯電の重み係数を掛けても良い。ここでは、各ブロックの(1,1)ピクセル“1”との距離を求め、その距離が最も遠いピクセルを次の照射点とする。
【0028】
第2の照射点である各ブロックのピクセル“1”を照射した後の第3の照射ピクセルは以下の式(2)を元に求める。過去の照射ピクセルとの距離の他、時間による緩和の係数を掛けている。これは直前に照射したピクセル“2”とその前に照射したピクセル“1”で帯電の影響を区別するためである。ここで、帯電の緩和係数tはオペレータが設定する事も可能である。同様に第4の照射ピクセルは式(3)で求める。
【0030】
以上の処理を各ブロックの全ピクセルに対して行い、FOV内の照射順序を決定する。材料特性や形状の重みづけを行わない場合は、ブロックのピクセル数によって照射順序は決定するので、予めブロックサイズに対応した照射順序をテーブル化しておいても良い。<走査信号>
図4に示す様な不連続な照射を行う際の走査信号を、
図5に例示する。
図5では、時間tを横軸としたときの
図4のブロック1のピクセル“1”からブロック4のピクセル“1”まで電子線を走査した際のXスキャン信号とYスキャン信号の推移を示している(各ピクセル間の移動は(a)(b)(c)と記載)。
図5で、VはXおよびY方向への最大偏向電圧を示す。なお、本例では静電偏向器を採用する例を説明しているため、偏向信号は電圧値で表記する。
【0031】
ピクセルの照射時間はΔtとし、Δtの照射時間に放出された電子を検出する。スキャン信号の傾きαは、スキャンの速度を表しており、傾きが大きいほど電子線の移動が高速におこなわれる。ピクセル間の移動は通常のスキャンよりも大きな傾きαを持つものとし、傾きが大きいほど電子線の移動が高速におこなわれる為、照射ピクセル間を移動する際に照射される電子の数を減らすことが可能である。照射する電流量と照射点の間隔(距離ΔL)から移動速度を求めても良い。また、パラメータである走査時間の変更は、ピクセルに照射する時間Δtの変更に対応する。ΔtとΔLを変更させることにより画像を取得する。上記のXYスキャン信号を用いることで、点による電子線の照射が可能となり、試料の材料および構造に応じて、表面の帯電状態を制御することが可能となる。
【0032】
図5を用いて説明したように、信号を検出(サンプリング)ときのビーム走査に対し、ピクセル間の移動のときのビーム走査の走査速度を高速に設定することにより、必要な信号を確保しつつ、ビーム照射による帯電の影響を緩和することが可能となる。特に、複数のピクセルを飛ばして走査する場合、1フレーム分の信号を得るために、同じ走査線軌道に複数回ビームが走査されるため、信号取得に用いられないビーム照射を極力抑制する本手法は極めて有効であると言える。
【0033】
図5に例示するような走査信号を用いた走査によれば、隣接する部分に連続的にビームを照射することによる帯電の蓄積の緩和と、同じ走査軌道を複数回ビーム走査することによる帯電の蓄積の緩和を両立させることができる。
<設計データとの連携>
走査電子顕微鏡の制御装置は、走査電子顕微鏡の各構成を制御すると共に、検出された電子に基づいて画像を形成する機能や、検出電子の強度分布に基づいて、予め設定したROIの平均信号量やコントラスト比を導出する機能を備えている。
図6に演算処理装置603を備えたパターン測定システムの一例を示す。
【0034】
本システムには、SEM本体601、当該SEM本体の制御装置602、及び演算処理装置603からなる走査電子顕微鏡システムが含まれている。演算処理装置603には、制御装置602に所定の制御信号を供給、及びSEM本体601にて得られた信号の信号処理を実行する演算処理部604と、得された画像情報や、レシピ情報を記憶するメモリ605が内蔵されている。なお、本実施例では、制御装置602と演算処理装置602が別体のものとして説明するが一体型の制御装置であっても良い。
【0035】
静電偏向器606によるビーム走査によって、試料から放出された電子、或いは変換電極にて発生した電子は、検出器607にて捕捉され、制御装置602に内蔵されたA/D変換器でデジタル信号に変換される。演算処理装置602に内蔵されるCPU、ASIC、FPGA等の画像処理ハードウェアによって、目的に応じた画像処理が行われる。
【0036】
演算処理部604には、入力装置613によって入力された測定条件等に基づいて、静電偏向器606の走査条件等の測定条件を設定する測定条件設定部608、入力装置613によって入力されたROI内の輝度やコントラストを得られた画像データから求める画像特徴量演算部609が内蔵されている。また、演算処理部604には、入力装置613によって入力された条件によって、設計データ記憶媒体612から設計データを読み出し、必要に応じて、ベクトルデータからレイアウトデータに変換する設計データ抽出部610が内蔵されている。また、取得された信号波形に基づいて、パターンの寸法を測定するパターン測定部611が内蔵されている。パターン測定部611では、例えば検出信号に基づいて、ラインプロファイルを形成し、プロファイルのピーク間の寸法測定が実行する。
【0037】
更に演算処理装置603とネットワークを経由して接続されている入力装置613に設けられた表示装置には、操作者に対して画像や検査結果等を表示するGUIが表示される。
【0038】
なお,演算処理装置603における制御や処理の一部又は全てを,CPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機等に割り振って処理・制御することも可能である。また、制御装置602と演算処理装置603を1の演算装置とするようにしても良い。また,入力装置613は,検査等に必要とされる電子デバイスの座標,パターンの種類、撮影条件(光学条件やステージの移動条件)を含む測定条件を、撮像レシピとして設定する撮像レシピ作成装置としても機能する。また、入力装置613は、入力された座標情報や、パターンの種類に関する情報を、設計データのレイヤ情報やパターンの識別情報と照合し、必要な情報を設計データ記憶媒体612から読み出す機能も備えている。
【0039】
設計データ記憶媒体612に記憶される設計データは、GDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。また、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。また、図形データは、設計データに基づいて形成されるパターンの理想形状を示す線分画像情報に替えて、露光シミュレーションを施すことによって、実パターンに近くなるような変形処理が施された線分画像情報であっても良い。
【0040】
測定条件設定部608では、
図2に例示したステップによって、適正な走査条件を設定する。例えば、入力装置613を用いて、設計データ抽出部610によって抽出された測定対象パターン近傍のレイアウトデータに、FOVの大きさ、FOVの位置(座標)、ROIの大きさ、及びROIの位置を設定することによって、装置の動作条件を自動で設定する。より具体的には、複数の走査速度条件と、複数の照射点間間隔条件の組み合わせ毎のFOV位置を決定する。このときFOV内のパターン構造が同じであり、且つ別の位置に位置する領域を複数選択し、FOVとして登録する。
【0041】
なお、設計データ抽出部610では、入力装置613によって入力された条件によって、設計データ記憶媒体612から設計データを読み出し、必要に応じて、ベクトルデータからレイアウトデータに変換することによって、レイアウトデータ上でのFOVやROIの設定を可能とする。
【0042】
測定条件設定部608では、前述の走査速度および照射点間隔の変更を実施する。また、画像特徴量演算部609は、取得された画像から、ROIの信号情報を抽出し、入力装置613の表示信号を生成する。画像特徴量演算部609は、検出信号に基づいて、走査条件ごとに事前に設定したROIの指標値(平均検出信号量または指定部位とのコントラスト比)を導出し、
図3に例示するような走査速度と照射間隔に対する指標値のマップを、入力装置613の表示画面等に表示させる。
【0043】
ROIの指定は、予め取得した画像(或いはレイアウトデータ)上で、行う。ROIは画像上の任意の2次元領域を指定することによって設定する。
図7は、SEMの動作条件を設定するためのGUI画面の一例を示す図である。特に、
図7に例示するGUI画面には、複数の走査条件の中から適正な走査条件を選択するための走査を行うときのSEMの動作条件を設定する設定部が設けられている。ビーム条件設定ウィンドウ701には、ビーム条件を設定するウィンドウが複数設けられている。
図7の例では、Location(座標)、Pattern Type(パターンの種類)、Vacc(ビームの加速電圧)、Number of Frames(積算フレーム数)、FOV(FOVの大きさ)、Probe Current(ビーム電流)、及びRotation Angle(走査方向)の設定が可能となっている。
【0044】
また、
図7に例示するGUI画面上には、走査速度設定部702、走査ブロック設定部703、画像評価パラメータ選択部704が設けられている。走査速度設定部702では複数の走査速度の選択が可能となっており、測定条件設定部608では、設定された走査速度の数、或いは設定された走査速度の数と照射点間間隔の組み合わせ分、走査条件を設定し、メモリ605等に登録する。走査ブロック設定部703では、ROIとして設定すべき領域の座標等を設定する。また、図示はしていないが、照射点間間隔条件の設定部を設けておき、試行したい照射点間間隔を選択的できるようにしても良い。また、Scan
Area Definitionのチェックボックスをチェックすることで、指定したROIのみを照射することも可能である。また、画像評価パラメータ設定部704では、評価対象となるROIをどのようなパラメータを用いて評価するかを決定する。
図7に例示するGUI画面では、測定対象となるROIとそれ以外のROIのコントラスト、或いはROIの輝度の2つのパラメータが選択可能となっている。ROIは設定画面705にて設定する。なお、ROI評価用のパラメータは例えばROI内の鮮鋭度等の分解能評価値とするようにしても良い。測定や検査の目的に応じて、他の画像評価パラメータを選択するようにしても良い。
【0045】
例えば、
図7のように観察対象がトレンチ内のビアであったとする。この時、ビアの底の信号量を増やしたいとした場合、ビア底をROIとしてカーソルボックスで指定する。この時最適化する指標として、ROIと周囲とのコントラスト比あるいはROIの平均信号量(輝度)がある。コントラストを選択した場合には、輝度を比較する領域Bをカーソルボックスでオペレータが指定する。この指標値を、走査速度(スキャンスピード)および照射の間隔(スキャンブロック)を変更して求める。走査速度およびブロック数は必要な条件をオペレータが設定する。走査速度およびブロック数共に複数条件を設定する事が可能である。
【0046】
上述のように、走査速度及び/又は照射点間間隔ごとに、ROIのパラメータを評価することによって、適正な走査条件を見出すことで、帯電の影響を抑制し、高精度な測定を行うことが可能となる。
【0047】
照射点の間隔を変更することで、特定部位の信号量を増加させる具体例に関して、以下に説明する。
図8にトレンチ内にビアが存在するビアイントレンチ形状を観察したシミュレーション結果を示す。ここでROIはビア底にある形状のコントラストである。パターンに対して、電子線を照射し、試料から検出される電子を各ピクセル毎にカウントし、検出電子像を形成した。また、シミュレーションでは、1次電子、および放出された2次電子による帯電の影響を考慮した。
【0048】
図5(a)から、通常の一方向のスキャン(−X→+X,+Y→−Y)では、スペースの中に形成された穴底の輪郭は判定できない。これに対し、FOV内を4×4ブロックに分割して電子線照射を行った。
【0049】
図5(b)では、穴底の輪郭が判定でき、ROIである穴底のコントラストが増加した。これは、照射点の間隔を変更する事により、表面の帯電が緩和されたためであり、観察場所に応じた観察条件最適化が有効であることを示している。本実施例に示す構造はスペースおよびラインが誘電体で構成されており、製造プロセスによって帯電の特性が変化する事がある。このような場合には、観察を行うウェハで最初の1回目のみ観察条件の最適化を行うことで、それ以降の観察に同条件を反映する事が出来る。また、走査速度や照射点間隔の変化から、例えば帯電の緩和など、試料の材料特性を予測する事が出来る。
【0050】
次に、ROIとそれ以外の領域で走査速度を変える例について、図面を用いて説明する。上述の実施例では、例えば
図5に例示したように、各画素に対応する試料上の位置に荷電粒子ビームを照射するとき(
図5の例では速度ゼロ)に比べて、前記各画素間の前記荷電粒子ビームの走査を高速に行うように偏向器を制御する例について説明した。これは、信号を取得すべき個所(各画素に対応する部分)ではビームの照射量を増大すべく、低速(停止を含む)で走査を行い、それ以外の個所では、帯電の蓄積を抑制すべく、高速で走査を行うことによって、測定に必要な信号の確保と、帯電の蓄積の両立を実現するためである。一方、パターン幅を測定するCD−SEM(Critical Dimension−SEM)は、パターン幅を測定するためのエッジ部分の情報は極めて重要であるのに対し、それ以外の部分は余り重要でない場合がある。そこで、以下に測定に要するROI部分は低速で走査し、それ以外の部分は高速で走査することによって、測定の高精度化と帯電の影響の低減を両立する走査法について説明する。
【0051】
図9は、FOV901内に、4つのホールパターン902が存在する例を示している。ここで、ホールパターン902のX方向の径を測定する場合、少なくともホールパターンの左右のエッジのS/Nを良くする必要がある一方で、それ以外の領域については、ある程度形状が判別できれば良い。むしろ、FOV内の帯電を抑制する観点から見れば、極力ビームを照射しない方が望ましい。
【0052】
そこで、低速走査領域(二次電子高効率検出領域)用のROI903を設定し、当該領域内は低速で走査を行い、それ以外の領域は高速で走査を行うことによって、帯電抑制と高精度測定の両立を実現する手法を提案する。ROI903内を選択的に低速走査(ROI903外を相対的に高速走査)することによって、測定対象パターンの概略を表現する画像の中に、高精度測長を可能とするROIを埋め込むことが可能となる。
【0053】
ROI内の走査速度は、例えばプロファイル波形のボトムとピーク間の高さの差が所定値(第1の閾値)より大きくなるような条件を選択すると良い。また、ROIにも過度なビーム照射を行わないようにするために、ボトムとピーク間の高さの差が所定値(第2の閾値)を超えないような条件を設定するようにしても良い。
【0054】
以上、本実施例によれば、多くの信号を取得したい領域を低速走査し、それ以外の領域を低速走査することによって、目的とする測定や検査の高精度化と、帯電の影響の抑制の両立を実現することが可能となる。
【0055】
図10は、試料のROIのみを照射して画像を形成する例を示している。観察パターンのアドレッシング後、倍率とピクセル数を決定すれば、ROIがどの領域に存在するかは判定できる。予め操作者がGUI上で一定の尤度を与えて、照射領域を指定しておくことで、ROIのみの情報を得られる。この際、通常の全面走査と同じ倍率で画像を出力することでROIの測長も行うことが可能である。このような観察は、帯電やシュリンク(ダメージ)が顕著な試料に有効である。