特許第6239647号(P6239647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239647
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】3次元構造の金属パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 38/18 20060101AFI20171120BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171120BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20171120BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20171120BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20171120BHJP
   H05K 3/20 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B32B38/18 F
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   H05B33/10
   B32B15/04 Z
   H05K3/20 Z
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-549289(P2015-549289)
(86)(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公表番号】特表2016-508893(P2016-508893A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】KR2014007137
(87)【国際公開番号】WO2015016678
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0091794
(32)【優先日】2013年8月1日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0099027
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ミ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ブ・ゴン・シン
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−545853(JP,A)
【文献】 特開2013−140800(JP,A)
【文献】 特表2010−533977(JP,A)
【文献】 特表2009−544169(JP,A)
【文献】 特開2005−085799(JP,A)
【文献】 特開2005−079472(JP,A)
【文献】 特開2003−077651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H05B 33/10
H05B 33/26
H05K 3/20
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容体上に、光熱変換層と、表面エネルギーが25mN/m以下の中間層と、金属層と、を順に含む金属パターン転写用フィルムの前記金属層を対向配置し、光熱変換層に光を照射すること、および
連続波(CW:continuous wave)方式のレーザで光熱変換層を照射することによって、凹凸構造を有する連続的な金属層全体を受容体に転写すること、を含み、
受容体がフレキシブル基板である、3次元構造の金属パターンの製造方法。
【請求項2】
光熱変換層は、染料、カーボンブラック、金属、金属酸化物または金属硫化物を含む、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項3】
金属硫化物は、Al、Bi、Sn、In、Zn、Ti、Cr、Mo、W、Co、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、ZrまたはTeの硫化物である、請求項に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項4】
光熱変換層は、染料、カーボンブラック、金属、金属酸化物または金属硫化物を含む樹脂組成物層である、請求項に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項5】
中間層がフッ素系化合物またはシリコン系化合物を含む、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項6】
中間層の厚さが0.5〜5μm範囲内である、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項7】
中間層の厚さが5〜100nm範囲内である、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項8】
金属層は、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、白金、タングステンまたはこれらの合金を含む、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項9】
金属パターン転写用フィルムは、光熱変換層と中間層との間に存在する遮断層をさらに含む、請求項1に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項10】
遮断層は熱可塑性物質または熱硬化性物質を含む、請求項に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項11】
遮断層は、アクリル系、ウレタン系、エステル系またはエポキシ系有機バインダを含む、請求項に記載の金属パターンの製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法により製造され、フレキシブル基板及び該フレキシブル基板上に形成された凹凸構造を有する連続的な金属層を含む、金属パターン積層体。
【請求項13】
請求項12に記載の金属パターン積層体を含む、電極層。
【請求項14】
請求項12に記載の金属パターン積層体を含む、金属配線。
【請求項15】
請求項13に記載の電極層を含む、有機電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元構造の金属パターンの製造方法、金属パターン積層体及び金属パターン積層体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
金属パターンは多様な用途で有用に用いられる。例えば、金属パターンは、デザインロゴ、カードデザイン、各種電子装備の電極や端面アンテナなどの形成に用いられる。例えば、金属パターンは電子素子の電極層として用いられる(特許文献1:特開2012−092388号公報)。
【0003】
最近では、フレキシブル(flexible)電子素子に対する関心が高まっており、電子素子の基板をハードなガラスベースの基板からフレキシブルな高分子ベースの基板に代替しようとする技術に対する需要が増えている。これに関連して、基板上に金属電極を形成する方法として多様な金属パターンの転写方法が用いられているが、フレキシブル基板はハード基板に比べて熱及び溶媒に対する耐久性が脆弱であるため金属パターンの電極層を形成するのに限界がある。さらに、フレキシブル電子素子の製造のために曲げと伸縮に耐えられる3次元形状の金属パターンの製造技術を必要とする。しかし、金属層の3次元形状を調節すると同時に、基板に3次元構造をそのまま転写するには制約がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−092388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、3次元構造の金属パターンの製造方法、金属パターン積層体及び金属パターン積層体の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な3次元構造の金属パターンの製造方法は、受容体上に、光熱変換層、中間層及び金属層を順に含む金属パターン転写用フィルムの上記金属層を対向配置し、光熱変換層に光を照射する工程を含んでもよい。本発明において、3次元構造の金属パターンは転写された金属パターンが凹凸構造を有する連続的な金属層であることを意味し、金属層の一部が受容体に転写された金属パターンとは区分される概念である。
【0007】
金属パターン転写用フィルムは、上述のように、光熱変換層、中間層及び金属層を順に含んでもよい。図1は、光熱変換層101、中間層102及び金属層103が順に形成された金属パターン転写用フィルムの例を示す図である。このような金属パターン転写用フィルムを用いる場合、例えば、図2に示すように、受容体201上に3次元構造の金属パターン202、すなわち凹凸構造を有する連続的な金属層を効果的に形成することができる。
【0008】
本発明において光熱変換層は、例えば、照射される光、例えば、赤外線−可視光線領域の光を吸収して前記光の一部を熱に変換させる機能性層を意味するものとする。光熱変換層としては、赤外線−可視光線領域の光を吸収して前記光の一部を熱に変換させる材料(以下、光吸収材料)を含む限り、特に制限なく選んで使用することができる。光吸収材料は多様に公知されていて、このような材料は特に制限なく前記光熱変換層として適用することができる。
【0009】
光吸収材料としては、例えば染料を用いることができる。例えば赤外線領域の光を吸収する染料が多様に開示されている。例えば、Matsuoka、M.、Infrared Absorbing Materials、Plenum Press、New York、1990及びMatsuoka、M.、Absorption Spectra of Dyesfor Diode Lasers、Bunshin Publishing Co.、Tokyo、1990、米国特許第4、772、583号、第4、833、124号、第4、912、141号、第4、948、776号、第4、948、777号、第4、948、778号、第4、950、639号、第4、940、640号、第4、952、552号、第5、023、229号、第5、024、990号、第5、286、604号、第5、340、699号、第5、401、607号またはヨーロッパ特許第321、923号と第568、993号などに開示されている染料が用いられる。また、Bello、K.A.などのJ.Chem.Soc.、Chem.Commun、452(1993)及び米国特許第5、360、694号などに開示された染料も用いられる。他の例示として、商標IR−99、IR−126及びIR−165として、American CyanamidまたはGlendale Protective Technologiseなどで販売されるIR吸収剤も用いられる。また、染料の外にも、例えば、米国特許第5、351、617号になどに開示された光吸収材料のようなIR−吸収伝導重合体などが用いられる。
【0010】
光吸収材料の他の例としては、カーボンブラック、金属、金属酸化物または金属硫化物などが例示される。例えば、周期律表のIb、IIb、IIIa、IVa、IVb、Va、Vb、VIa、VIb及びVIII族の金属元素またはその合金、またはIa、IIaまたはIIIb族の元素またはその合金や混合物などが例示され、例えば、Al、Bi、Sn、InまたはZn、またはその合金や、周期律表のIa、IIa及びIIIb族の元素またはその合金や、それらの化合物や混合物などが知られている。上記の好適な化合物としては、Al、Bi、Sn、In、Zn、Ti、Cr、Mo、W、Co、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zr及びTeなどの硫化物またはその混合物などが例示される。
【0011】
光熱変換層は、上記言及した材料だけを含むか、あるいは必要に応じて適切なバインダを一緒に含んでもよい。例えば、カーボンブラックのような上記言及した材料が分散されているバインダを用いて光熱変換層を形成することができる。使用可能なバインダの種類は、特に制限されず公知の樹脂組成物が用いられる。バインダとしては、例えば、フェノール樹脂(例えば、ノボラックまたはレゾール樹脂など)、ポリビニルアセテート、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、セルローズエーテルまたはエステル、ニトロセルローズ、ポリカーボネート及びその混合物などのような熱硬化剤、熱硬化可能な重合体または熱可塑性重合体などが用いられる。
【0012】
光熱変換層の厚さは、特に制限されず、目的とする物性を損傷しない範囲内で適切に選択することができる。光熱変換層は、例えば、約0.1〜2.0μm範囲内の厚さを有することができる。光熱変換層の厚さが前記範囲未満の場合はエネルギー吸収率が低く、光から熱に変換されるエネルギー量が少なくなるため膨張圧力は低くなり、前記範囲を超える場合は転写用フィルムと金属パターンを形成する受容体の基板間に生じる段差によるエッジオープン不良が発生する。
【0013】
本発明で中間層は、例えば、光照射時に金属層が受容体に転写される際に前記金属層の剥離力が調節できるように適切な表面エネルギーを有する機能性層を意味するものとする。中間層は、例えば、約25mN/m以下、24mN/m以下、23mN/m以下、22mN/m以下、21mN/m以下、20mN/m以下、19mN/m以下、18mN/m以下、17mN/m以下、16mN/m以下または15mN/m以下の表面エネルギーを有するように形成する。このような表面エネルギーは、例えば接触角測定装備から得たHOとCHとの接触角から固体表面エネルギーを決定する値とすることができる。金属層が形成される中間層の表面エネルギーが前記範囲を満たした場合、転写用フィルムの金属層から受容体に3次元構造の金属パターンを効果的に転写させることができる。
【0014】
中間層は、例えば、フッ素系またはシリコン系化合物を用いて形成される。このような化合物は、例えば、有機単分子膜により直接中間層を形成するか、またはフッ素系またはシリコン系樹脂が好適なバインダとともに配合されて高分子膜の形態で前記中間層を形成することができる。有機単分子物質の場合、例えば、シラン(silanes)の基本構造に、メチル基、直鎖(linear)または分枝鎖(branched)のアルキル基、フッ素化(fluorinated)アルキル基またはアリール基などの機能基を有する物質から選択して使用することができる。フッ素系またはシリコン系樹脂の場合、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートまたはポリエステルアクリレートなどのような光硬化性樹脂のバックボーンにフッ素を含む置換基をグラフティングした後、これを用いて中間層を形成するか、添加剤の形態として反応性または非反応性のフッ素系またはシリコン系添加剤を配合したバインダを用いて中間層を形成してもよい。前記フッ素系添加剤としては、例えば、ビニル基を有するフッ素系化合物や非反応性フッ素系化合物などが用いられ、シリコン系添加剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ジメチルポリシロキサン系及び変性ジメチルポリシロキサン系、メチルアルキルシロキサン系及び反応性を有したシリコンアクリレートなどが用いられる。例えば、BYK社のBYK−300、BYK−301、BYK−302などの商品名で知られた物質も使用可能である。
【0015】
中間層の厚さは、特に制限されず、目的とする物性を損傷しない範囲内で適切に選択することができる。中間層が、例えば、フッ素系またはシリコン系の高分子膜で形成された場合、約0.5〜3μm範囲内の厚さを有することができる。または中間層が、例えば、フッ素系またはシリコン系の有機単分子膜で形成された場合には約5〜100nm範囲内の厚さを有することができる。
【0016】
金属層を形成する素材は、特に制限されず、前記金属パターン転写用フィルムが適用される用途を考慮して適切に選択することができる。1つの例として前記金属層を形成する材料は、前記光熱変換層を形成する材料との関係で決定される。例えば、金属層の材料は、その沸点が前記光熱変換層を形成する材料の融点よりも低い材料とすることができる。金属層を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、白金、タングステン、クロムなどの金属またはこれらの合金が例示されるが、これに制限されない。
【0017】
金属層の厚さは、特に制限されず、目的とする用途または転写しようとする金属パターンの形態により適切に選択することができる。金属層は、例えば、約50nm〜1μm範囲内の厚さを有することができる。
【0018】
金属パターン転写用フィルムは、適切な支持基板をさらに含むことができ、前述の光熱変換層が前記支持基板上に形成され得る。支持基板としては、光熱変換層に照射される光、例えば赤外線領域の光が透過され、支持部材として作用することのできる公知の基板がすべて使用可能である。例えば、前記基板としては、無アルカリガラス基板のようなガラス基板、石英基板または透明樹脂基板などが用いられる。透明樹脂基板としては、例えば、PI(polyimide)フィルム、PEN(Polyethylene naphthalate)フィルム、PC(polycarbonate)フィルム、アクリルフィルム、PET(poly(ethylene terephthatle))フィルム、PES(poly(ether sulfide))フィルムまたはPS(polysulfone)フィルムなどのような公知のプラスチックフィルムが用いられ、その具体的な例は、特に制限されない。
【0019】
金属パターン転写用フィルムは、遮断層をさらに含むことができ、前記遮断層は光熱変換層と中間層との間に存在してもよい。本発明において遮断層は、例えば、転写過程で金属層が受容体に転写される際に前記光熱変換層の材料が一緒に転写されることを防止する機能性層を意味するものとする。図3は、光熱変換層101、遮断層301、中間層102及び金属層104を順に含む金属パターン転写用フィルムの例を示す図である。
【0020】
遮断層としては、例えば、転写過程で金属層が受容体に転写される際に前記光熱変換層の材料が一緒に転写されることを防止する材料が含まれる限り、特に制限なく選択して使用することができる。これにより、遮断層は転写過程で発生する汚染レベルや歪みを低減または防止することができる。また、遮断層は、光熱変換層から発生した熱が金属層に伝達され、金属層が熱により燃えることを防止することができる。
【0021】
遮断層は、有機及び/または無機バインダ材料を用いて形成することができる。例えば、遮断層は、高い熱的抵抗を有し、転写過程で光熱変換層とは殆ど反応しない材料を用いて形成することができる。使用可能な有機バインダ材料の例としては熱硬化性材料または熱可塑性材料のすべてが含まれる。遮断層の好適な材料としては、アクリル系、ウレタン系、エステル系またはエポキシ系有機バインダなどが例示される。例えば、前記材料は熱可塑性の前駆物質であって、前記光熱変換層上にコーティングされ、その後架橋されることができる。好適な熱可塑剤には、ポリスルホン、ポリエステルまたはポリイミドなどが含まれ、これらは通常のコーティング方式で光熱変換層に塗布される。
【0022】
遮断層の厚さは、特に制限されず、目的とする物性を損傷しない範囲内で適切に選択することができる。遮断層は、例えば、約0.05〜3μm範囲内の厚さを有することができる。
【0023】
3次元構造の金属パターンは、前記金属パターン転写用フィルムの金属層から転写されて受容体上に形成される。3次元構造の金属パターンは、上述のように、受容体上に金属パターン転写用フィルムの金属層を対向配置し、光熱変換層に光を照射する工程により製造される。
【0024】
3次元構造の金属パターンは、例えば光が照射された光熱変換層では、光の光エネルギーが熱エネルギーに変換され、熱エネルギーによって光熱変換層の体積膨張が生じ、体積膨張により金属層材料が影響を受けて前記金属層が受容体に転写されることで形成される。
【0025】
前記過程において照射される光の種類や光の照射方法は、特に制限されず、使用した光熱変換材料の種類などを考慮して好適な波長領域の光を公知の光源を用いて照射してもよい。この過程において光は光熱変化層の所定部位だけに選択的に照射することができ、例えば、スキャナーを用いて所望する位置と全体の照射面積及びスキャン形態を決定して照射するか、またはマスクを用いた照射方式で選択照射することができる。光熱変換層に光を照射することは、例えば、連続波(CW:Continuous Wave)方式のレーザを用いて行ってもよい。前記CW方式のレーザを照射する場合、例えば、前述の3次元構造の金属パターンの形成に最も好ましい。
【0026】
金属パターンが形成される受容体の種類は、特に制限されず、目的とする用途により適切に選択することができる。例えば、受容体は、ガラス基板や石英基板のような無機系基板であるか、PI(polyimide)基板、PEN(Polyethylene naphthalate)基板、PC(polycarbonate)基板、アクリル基板、PET(poly(ethylene terephthatle))基板、PES(poly(ether sulfide))基板またはPS(polysulfone)基板などのような公知のプラスチック基板とすることができる。1つの例として、前記受容体は、柔軟性(flexiblilty)を有するフレキシブル基板とすることができ、前記フィルムを適用することで、上記のようなフレキシブル基板においても、曲げと伸縮に耐えられる3次元構造の金属パターンを効果的に形成することができる。
【0027】
受容体上に転写される金属パターンは、上述のように3次元構造を有することができる。すなわち、転写過程で凹凸構造を有する金属層が受容体に転写され、前記転写された金属層は凹凸構造を有する連続的な金属層とすることができる。
【0028】
図4は、前記過程で連続的な金属パターン202が受容体201に転写されることを模写した図であって、支持基板401上に光熱変換層101、遮断層301、中間層102及び金属層103が順に形成されたフィルムを用いる転写過程の例を示す図である。図4のように、光熱変換層の素材及び/または金属層の沸点などの物性が調節された転写フィルムに、好適に選択された光が好適な箇所に選択的に照射されることで、凹凸構造を有する連続的な金属パターン202が受容体201上に形成される。
【0029】
本発明は、さらに金属パターン積層体に関する。例示的な積層体は、フレキシブル基板及び該フレキシブル基板上に形成された凹凸構造を有する連続的な金属層を含んでもよい。このような積層体は、例えば、前述の3次元構造の金属パターンの製造方法で形成され得る。これにより、積層体のフレキシブル基板及び金属層については、前記方法で前述の内容を同様に適用することができる。例示的な金属パターン積層体は、フレキシブル基板上に形成された金属パターンが3次元構造の凹凸構造を有すると共に、前記積層体は曲げと伸縮に対する耐久性に優れるために、フレキシブル電子素子の製造にも有用に用いられる。
【0030】
本発明は、さらに前記金属パターン積層体の用途に関する。積層体は、例えば、電極層または金属配線に有用に用いられる。また、前記電極層は、有機電子装置に適用されてフレキシブル電子素子の製造に有用に用いられる。前記電極層、金属配線または有機電子装置に金属パターン積層体が適用される場合、前記電極層、金属配線または有機電子装置などを構成する他の部品やその装置の構成方法は、特に制限されず、前記金属パターン積層体が用いられる限り、当該分野に公知されている任意の材料や方式がすべて採用され得る。
【発明の効果】
【0031】
本発明の方法によれば、3次元構造の金属パターンを受容体上に効果的に形成することができる。特に、本発明の方法によれば、フレキシブル基板のように金属パターンの転写が容易でない受容体の表面にも3次元構造の金属パターンを効果的且つ急速にパターン転写することができる。これにより製造された金属パターン積層体は、例えば、フレキシブル電子素子の電極層または金属配線に有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】金属パターン転写用フィルムの例を示す図である。
図2】3次元構造の金属層を受容体に転写した場合の例を示す図である。
図3】金属パターン転写用フィルムの例を示す図である。
図4】3次元構造の金属パターンの製造方法の例を示す図である。
図5】実施例1の転写過程において転写フィルムの金属層の表面イメージを示す。
図6】実施例1において3次元構造の金属パターンを受容体上に転写した表面イメージを示す。
図7】実施例1において3次元構造の金属パターンを受容体上に転写した側面イメージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施例を介して本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲は下記提示した実施例によって制限されない。
【0034】
測定例1.表面エネルギーの測定
接触角測定器、Drop shape Analyzer(DSA100、KRUSS GmbH)装置を用いて水(HO)とジヨードメタン(diiodomethane;CH)の液滴から得られた接触角からOwen−Wendt法により固体表面エネルギーを決定した。
【0035】
実施例1
金属パターン転写用フィルムの製造
支持基板であるPETフィルム上に、光熱変換層、遮断層、中間層及び金属層を順に形成して金属パターン転写用フィルムを製造した。前記光熱変換層はカーボンブラックを含む光熱変換層製造用の組成物を製造した後、バーコーティングにより2.5μmの厚さで支持基板上に形成し、遮断層は熱光化性ウレタン系物質を含む遮断層製造用の組成物を製造した後にバーコーティングにより15μmの厚さで光熱変換層上に形成し、中間層はフッ素系シリコン有機化合物の1つであるOPTOOLTM溶液(製造社:DAIKIN INDUSTRIES、Ltd)をスピンコーティングして約20nmの厚さで遮断層上に形成し(中間層の表面エネルギー:23mN/m)、金属層はアルミニウム金属をスパッタリングにより約100nmの厚さで中間層上に形成した。
【0036】
金属パターンの転写
レーザを用いた転写実験のために、1070nm CW(Continuous wave)50Wファイバーレーザ(fiber laser)を使用し、均一なパワーでレーザを照射するためにホモジナイザー(homogenizer)を通過した後、fθレンズ(f−theta lens)を通過して焦点面から約0.2mm×0.2mmのスクウェアビーム(square beam)を形成するようにした。受容体基板(PETフィルム)上に、前記金属パターン転写用フィルムの金属層を対向配置し、前記フィルムの支持基板側に前記IRレーザを1.6Wで0.5〜0.6m/sでスキャンして受容体基板上に金属パターンを転写した。図5は実施例1の転写過程で転写フィルムの金属層の表面イメージを示す。図5に示すように、転写過程で金属層の表面は光熱変換層の体積膨張に影響を受けて凹凸構造を有することになる。また、図6及び図7は、それぞれ実施例1において3次元構造の金属パターンを受容体上に転写した表面及び側面イメージを示す。図6及び図7に示すように、転写フィルム内の金属層は光熱変換層の体積膨張により膨らんだ部分だけを選択的に転写するのではなく、凹凸構造を有する連続的な金属層全体が転写されることを確認することができる。
【符号の説明】
【0037】
101 光熱変換層
102 中間層
103 金属層
201 受容体
202 金属パターン
301 遮断層
401 支持基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7