(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アノード;カソード;前記アノードと前記カソードの間の素子が使用される時に発光するリン光ドーパントでドープされた電荷輸送材料を含む電荷輸送層を備える有機発光素子であって、該素子は更に前記アノードと前記カソードの間の発光層を備え、前記素子から放射される光のCIE(x,y)座標のX座標値および/またはY座標値が、前記電荷輸送層が発光ドーパントでドープされていない対照素子のそれぞれのXまたはY座標値から0.05以下であり、前記電荷輸送層が前記発光層に隣接しており、前記発光ドーパントが前記電荷輸送材料と化学結合している、有機発光素子。
前記電荷輸送層および前記発光層を、前記アノードおよびカソードの一方の上に堆積し、前記アノードおよびカソードのもう一方を、前記電荷輸送層および前記発光層の上に堆積する段階を含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の有機発光素子を形成する方法。
堆積する予定の前記電荷輸送層および前記発光層の最初の層を、積層の後に架橋し、前記電荷輸送層および前記発光層のもう一方の層を、最初に堆積した層の上に溶媒中の溶液から積層する、請求項24に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の実施形態に従うOLEDの構造を説明する。OLEDは、透明なガラスまたはプラスチックの基板1、アノード2、カソード5、ならびにアノード2とカソード5の間に設けられる正孔輸送層3および発光層4を備える。さらなる層、例えば電荷輸送層、電荷注入層または電荷ブロッキング層などが、アノード2とカソードの間に設置されてよい。例えば、発光層4とカソード5の間に電荷輸送層を設けることができる。
【0039】
図2に関して、正孔はアノード2から注入され、電子はカソード5から注入される。正孔および電子は、発光層4の再結合領域4aで再結合を受けて、放射性崩壊を受ける励起子を生じる。
【0040】
しかし、正孔と電子の再結合により形成された励起子の全てが放射性崩壊を受けるものではなく、これらの励起子は素子寿命に有害となり得る。特に、一重項または三重項励起子は、発光層4から正孔輸送層3に移動する可能性がある。さらに、発光層4を通過して正孔輸送層に到達する電子から励起子が形成される可能性がある。これらの励起子は、正孔輸送層3の1つまたは複数の材料と相互作用する可能性がある。本発明者らは、この相互作用が素子の稼動寿命および/または効率を低下させ得ることを確認した。
【0041】
発光層からの励起子移動は、再結合領域4aが正孔輸送層3との間の界面に近い場合に起こり得る。さらに、三重項励起子は、一般に比較的長寿命の種であり、したがってたとえ再結合領域4aが正孔輸送層3と発光層4の間の界面から比較的離れていてもそれなりに正孔輸送層3に移動する可能性がある。
【0042】
図2は、励起子が発光層から移動する可能性のある正孔輸送層を有するOLEDを示す。電荷輸送層がOLEDの発光層とカソードの間に存在する場合(正孔輸送層は存在していてもしなくてもよい)、励起子が同様の有害作用を伴って電荷輸送層に等しく移動することがあり得ることは当然理解される。同様に、電荷輸送層に到達する正孔は、電子と再結合して電荷輸送層で励起子を形成することがあり得る。
【0043】
発光ドーパントを正孔輸送層2(および/または存在する場合、電子輸送層)に組み込むことにより、素子寿命を改良することができることを本発明者らは見出した。どのような理論にも縛られることを望むものではないが、この寿命の改良は、励起子が正孔輸送層で発光ドーパントによって吸収されることに起因すると考えられ、それはその後励起子にそのエネルギーを光の形で放出させる。
【0044】
発光ドーパントが電荷輸送層に存在しない対照素子と比較して、電荷輸送層から放射される光の色の、素子から放射される光の色への影響を最小限にするために、いくつかの手段をとることができる。これらの手段としては、限定されるものではないが次のものが挙げられる:
(i)そのドーパントによる発光量を最小限にするために、電荷輸送層にごく少量のドーパントしか供給しないこと。本発明者らは、驚くべきことに、非常に低い(1モル以下の)ドーピングレベルでさえ、寿命の劇的な増加が達成可能であることを見出した。
【0045】
(ii)発光層と電荷輸送層が接触している場合、例えば
図1および2に示されるような場合、電荷輸送層に到達する励起子の数を減らすために、発光層の再結合領域を、電荷輸送層と発光層の界面から離れた位置に置くこと。これは、当業者に公知の技法を用いて行うことができる。例えば、電荷輸送層の厚さを減らしてもよく、かつ/または発光層の厚さを増やしてもよい。
【0046】
(iii)発光層から放射される光と同じかまたは実質的に同じ色を有する光を放射するドーパントを電荷輸送層で使用すること。これは、例えば、発光層および電荷輸送層の両方で同じドーパントを使用すること、あるいは、同じであるかまたは実質的に同じ色の光を放射する異なるドーパントを使用することを必要とすることがある。
【0047】
これらの手段の各々は、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【0048】
電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送材料および発光ドーパントを含む。電荷輸送材料は、発光ドーパントの励起状態のエネルギー準位よりも高い、励起状態のエネルギー準位を有する。特に、蛍光発光ドーパントの場合には、一重項励起子を電荷輸送材料から蛍光発光ドーパントに移動させることができるように、電荷輸送材料の一重項励起状態のエネルギー準位(S
1)は、蛍光発光ドーパントのエネルギー準位よりも高くなければならない。電荷輸送材料の一重項準位は、ドーパントの一重項準位よりも少なくとも0.01eV、より好ましくは0.05eV、さらにより好ましくは0.1eVまたはそれ以上高くなければならない。同様に、リン光発光ドーパントの場合には、三重項励起子を電荷輸送材料からリン光t発光ドーパントに移動させることができるように、電荷輸送材料の三重項励起状態のエネルギー準位(T
1)は、リン光発光ドーパントのエネルギー準位よりも高くなければならない。電荷輸送材料の三重項準位は、リン光ドーパントの三重項準位よりも少なくとも0.01eV、より好ましくは0.05eV、さらにより好ましくは0.1eVまたはそれ以上高くなければならない。
【0049】
電荷輸送材料は、小分子、オリゴマー、ポリマー、デンドリマーまたはその他の材料であってよい。電荷輸送材料がポリマーである場合、それは共役もしくは非共役ポリマーであってよく、電荷輸送単位はポリマー主鎖またはポリマー側鎖に中に供給され得る。
【0050】
正孔輸送層は、低い電子親和力(2eV以下)および低いイオン化ポテンシャル(5.8eV以下、好ましくは5.7eV以下、より好ましくは5.6eV以下)を有する材料を含むことが好ましい。電子親和力およびイオン化ポテンシャルは、一般に、Shirota and Kageyama,Chem.Rev.2007,107,953−1010およびその中の参考文献に開示される方法によって測定される。
【0051】
正孔輸送ポリマーは、アリールアミン繰り返し単位、特に式(V)の繰り返し単位を含み得る:
【0052】
【化4】
上式で、Ar
1およびAr
2は、出現ごとに、独立に、置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール基から選択され、nは、1以上、好ましくは1または2であり、RはHであるかまたは置換基、好ましくは置換基であり、xおよびyは、各々独立に、1、2または3である。
【0053】
Rは、好ましくはアルキル、Ar
3、またはAr
3基の分枝鎖または直鎖、例えば−(Ar
3)
rであり、Ar
3は、出現ごとに、独立に、アリールまたはヘテロアリールから選択され、rは、少なくとも1で、1、2または3であってもよい。
【0054】
Ar
1、Ar
2およびAr
3のいずれかは、独立に、1個以上の置換基で置換されてよい。好ましい置換基は、以下から成る基R
3から選択される:
アルキル(1以上の隣接していないC原子は、O、S、置換N、C=Oおよび−COO−で置き換えることができ、前記アルキル基の1以上のH原子は、Fまたは1以上の基R
4で置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリールで置き換えることができる)、
1以上の基R
4で置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール、
NR
52、OR
5、SR
5、
フッ素、ニトロおよびシアノ;
この際、各々のR
4は、独立に、1以上の隣接していないC原子を、O、S、置換N、C=Oおよび−COO−で置き換えることのできるアルキルであり、前記アルキル基の1以上のH原子はFで置き換えることができ、各々のR
5は、独立に、アルキルおよび1以上のアルキル基で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールからなる群から選択される。
【0055】
Rは、架橋性基、例えばビニルもしくはアクリレート基などの重合可能な二重結合を含む基、またはベンゾシクロブタン基を含み得る。
【0056】
式(V)の繰り返し単位中のアリール基またはヘテロアリール基のいずれかは、直接結合または二価の連結原子もしくは基によって連結され得る。好ましい二価の連結原子および基としては、O、S;置換N;および置換Cが挙げられる。
【0057】
存在する場合、R
3、R
4または二価連結基の置換Nまたは置換Cは、独立に、出現ごとに、それぞれ、R
6がアルキルまたは置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリールである、NR
6またはCR
62であり得る。アリール基またはヘテロアリール基R
6の随意の置換基は、R
4またはR
5から選択され得る。
【0058】
1つの好ましい配置では、Rは、Ar
3であり、Ar
1、Ar
2およびAr
3の各々は、独立に、1以上のC
1−20アルキル基で置換されていてもよい。
【0059】
式1を満たす特に好ましい単位としては、式1〜3の単位が挙げられる:
【0060】
【化5】
上式で、Ar
1およびAr
2は、上に定義される通りであり;Ar
3は、置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリールである。存在する場合、Ar
3の好ましい置換基としては、Ar
1およびAr
2に関して記載される置換基、特にアルキル基およびアルコキシ基が挙げられる。
【0061】
Ar
1、Ar
2およびAr
3は、好ましくはフェニルであり、その各々は、独立に、上記の1個以上の置換基で置換されてよい。
【0062】
もう一つの好ましい配置では、式(V)のアリール基またはヘテロアリール基は、フェニルであり、各々のフェニル基は、1以上のアルキル基で置換されていてもよい。
【0063】
もう一つの好ましい配置では、Ar
1、Ar
2およびAr
3は、フェニルであり、その各々は、1以上のC
1−20アルキル基で置換されてよく、r=1である。
【0064】
もう一つの好ましい配置では、Ar
1およびAr
2はフェニルであり、その各々は、1以上のC
1−20アルキル基で置換されてよく、Rは、各々のフェニルが1以上のアルキル基で置換されてよい3,5−ジフェニルベンゼンである。
【0065】
さらにもう一つの好ましい配置では、Ar
1、Ar
2およびAr
3は、フェニルであり、その各々は、1以上のC
1−20アルキル基で置換されてよく、r=1であり、Ar
1およびAr
2は、OまたはS原子によって連結されている。
【0066】
一実施形態では、Ar
1、Ar
2およびAr
3は、各々フェニルであり、かつ、各々は、1以上のアルキル基、特にC
1−20アルキルで置換されていてもよい。
【0067】
具体的な正孔輸送単位としては、以下のものが挙げられる:
【0068】
【化6】
上式で、R
7は、出現ごとに、独立に、Hまたは置換基、例えばHまたはR
3である。
【0069】
例となる二極性基としては、以下のものが挙げられる:
【0070】
【化7】
上式で、R
7は、上に記載される通りである。
【0071】
このポリマーは、ホモポリマーであってよく、またはそれは、式(V)の繰り返し単位を99モル%、好ましくは70モル%まで、さらにより好ましくは50モル%までの量で含む共重合体であってよい。これらの百分率は、2種類以上の式(V)の繰り返し単位を使用する場合にポリマー中に存在するアリールアミン単位の総数に適用される。
【0072】
正孔輸送ポリマーが共重合体である場合には、適した共重合体としては、式(V)の繰り返し単位およびアリーレンもしくはヘテロアリーレン共繰り返し単位を含む共重合体が挙げられる。例となるアリーレン繰り返し単位は、例えば、Adv.Mater.2000 12(23)1737−1750に開示され、それには、J.Appl.Phys.1996,79,934に開示される1,4−フェニレン繰り返し単位;欧州特許第0842208号に開示されるフルオレン繰り返し単位;例えば、Macromolecules 2000,33(6),2016−2020に開示されるインデノフルオレン繰り返し単位;および、例えば、欧州特許第0707020号に開示されるスピロフルオレン繰り返し単位が含まれる。これらの繰り返し単位の各々は、置換されていてもよい。置換基の例としては、C
1−20アルキルまたはアルコキシなどの可溶化基;フッ素、ニトロまたはシアノなどの電子吸引基;およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を上昇させる置換基が挙げられる。
【0073】
特に好ましいアリーレン繰り返し単位は、置換されていてもよい2,7結合フルオレン、最も好ましくは式IVの繰り返し単位を含む:
【0074】
【化8】
上式で、R
1およびR
2は、独立にHまたは置換基であり、R
1およびR
2は、連結されて環を形成することができる。R
1およびR
2は、好ましくは、水素;1以上の隣接していないC原子を、O、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えることのできる、置換されていてもよいアルキル;置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリール、特に1以上のアルキル基で置換されているアリールもしくはヘテロアリール、例えばC
1−20アルキル;および、置換されていてもよいアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルからなる群から選択される。より好ましくは、R
1およびR
2の少なくとも1つは、置換されていてもよいアルキル(alky)、例えばC
1−C
20アルキル、またはアリール、特にフェニル、基を含む。R
1およびR
2は、各々、独立に、アリールもしくはヘテロアリール基の線状もしくは分枝鎖を含んでよく、それらの基の各々、例えば上記の式(Ar
3)
rの基は、独立に置換されてよい。
【0075】
R
1またはR
2がアリールまたはヘテロアリールを含む場合、好ましい随意の置換基としては、1以上の隣接していないC原子を、O、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えることのできるアルキル基が挙げられる。
【0076】
R
1および/またはR
2は、架橋性基、例えばビニルもしくはアクリレート基などの重合可能な二重結合を含む基、またはベンゾシクロブタン基を含み得る。
【0077】
置換基R
1およびR
2以外の、フルオレン単位の随意の置換基は、1以上の隣接していないC原子を、O、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えることのできるアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、フッ素、シアノおよびアリールアルキルからなる群から選択されることが好ましい。
【0078】
本明細書において使用される「アリール(エン)」および「ヘテロアリール(エン)」には、それぞれ、縮合および非縮合アリール基ならびに縮合および非縮合ヘテロアリール基の両方が含まれる。
【0079】
1以上のリン光放射体から発光が起こる場合、好ましいアリーレン繰り返し単位は、置換されていてもよいフェニレン繰り返し単位、例えば1,4−フェニレンなどである。フェニレン繰り返し単位は、上に記載される1以上の基R
1で置換されてよく、この際、各々のR
1は、独立に、出現ごとに、Hまたは置換基、例えばアルキル、例えば式(VII)の繰り返し単位である:
【0080】
【化9】
上式で、R
1およびR
2は、同じであるかまたは異なり、式(IV)の繰り返し単位に関して上に記載される通りである。
【0081】
共役電荷輸送ポリマーの作製に好ましい方法は、金属錯体触媒の金属原子が、アリールもしくはヘテロアリール基とモノマーの脱離基の間に挿入される「金属挿入」を含む。例となる金属挿入法は、例えば、国際公開第00/53656号に記載されるスズキ重合、および、例えば、T.Yamamoto,「Electrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」,Progress in Polymer Science 1993,17,1153−1205に記載されるヤマモト重合である。ヤマモト重合の場合、ニッケル錯体触媒が使用され、スズキ重合の場合、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0082】
例えば、ヤマモト重合による線状ポリマーの合成では、2個の反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、スズキ重合の方法によれば、少なくとも1個の反応性基は、ボロン酸またはボロン酸エステルなどのホウ素誘導体基であり、もう一方の反応性基は、ハロゲンである。好ましいハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素であり、最も好ましくは臭素である。
【0083】
したがって、本願を通じて説明される繰り返し単位は、適した脱離基を担持するモノマーから誘導されることが理解されるであろう。同様に、末端基または側基は、適した脱離基の反応によってポリマーに結合させることができる。
【0084】
スズキ重合は、レギオレギュラー、ブロックおよびランダム共重合体を調製するために使用することができる。特に、ホモポリマーまたはランダム共重合体は、一方の反応性基がハロゲンであり、もう一方の反応性基がホウ素誘導体基である場合に、調製することができる。あるいは、ブロックまたはレギオレギュラー(特にAB)共重合体は、第1のモノマーの両方の反応性基がホウ素であり、第2のモノマーの両方の反応性基がハロゲンである場合に調製することができる。
【0085】
ハロゲン化物の代替物として、金属挿入に関与する能力のあるその他の脱離基としては、トシレート、メシレートおよびトリフレートを含む基が挙げられる。
【0086】
電荷輸送層は、高い電子親和力(1.8eV以上、好ましくは2eV以上、さらにより好ましくは2.2eV以上)および高いイオン化ポテンシャル(5.8eV以上)を有する材料を含むことが好ましい。適した電子輸送基としては、例えば、Shirota and Kageyama,Chem.Rev.2007,107,953−1010に開示される基が挙げられる。
【0087】
電子輸送繰り返し単位には、式(II)を含む基が含まれる:
【0088】
【化10】
上式で、Ar
1およびAr
2は、上に定義される通りであり;rは、少なくとも1、好ましくは1〜3であり、Hetは、置換されていてもよい、高い電子親和力をもつヘテロアリール基を表す。Hetの随意の置換基は、Rに関して上に記載される通りである。Hetがアリールもしくはヘテロアリール基で置換されている場合、これは上記のように基−(Ar
3)rであり得る。
【0089】
適した高い電子親和力をもつヘテロアリールには、トリアジン、ピリミジン、オキサジアゾール、ピリジン、トリアゾール、トリアリールボラン、スルホキシドおよびシロール、特に1個以上の置換基で置換されたトリフェニルトリアジン、例えば1以上のC
1−20アルキル基で置換されたトリフェニルトリアジンが含まれる。
【0090】
例となる電子輸送基としては、以下のものが挙げられる:
【0091】
【化11】
上式で、R
7は、上に記載される通りである。
【0092】
その他の適した電子輸送材料としては、置換されていてもよいケトン、ジアリールスルホキシド、およびホスフィンオキシドが挙げられる。
【0093】
【化12】
上式で、R
7は、上に記載される通りである。
【0094】
その他の適した電子輸送材料としては、置換されていてもよいボラン、例えば以下のものが挙げられる。
【0095】
【化13】
上式で、R
7は、上に記載される通りである。
【0096】
ある種の基は、正孔輸送基と電子輸送基の両方の役割を果たすことができる。これらはいわゆる両極性基であり、それにはカルバゾール、特に、Ar
1、Ar
2およびAr
3のうちの2つが直接C−C結合で連結されたフェニル基である、式1、2または3の基が含まれる。両極性基は、一般におよそ2eVの電子親和力およびおよそ5.8eVのイオン化ポテンシャルを有する。その電子親和力およびイオン化ポテンシャルによって、電荷輸送層は、正孔および電子の一方を輸送し、かつ、正孔および電子のもう一方を遮断することができる。
【0097】
電荷輸送層において蛍光またはリン光発光ドーパントとして使用することのできる材料としては、置換されていてもよい式(III)の錯体:
【0098】
【化14】
を含む金属錯体が挙げられ、
上式で、Mは、金属であり;L
1、L
2およびL
3の各々は、配位基であり;qは、整数であり;rおよびsは、各々独立に0または整数であり;(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計は、Mで利用可能な配位座の数に等しい。上式で、aは、L
1の配位座の数であり、bは、L
2の配位座の数であり、cは、L
3の配位座の数である。
【0099】
重元素Mは、強いスピン軌道カップリングを誘導して、急速な項間交差および三重項またはそれよりも高い状態からの発光(リン光)を可能にする。適した重金属Mとしては:
−ランタニド金属、例えばセリウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウムおよびネオジムなど;ならびに
−d−ブロック金属、特に2列および3列のもの、すなわち、39〜48番および72〜80番の元素、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金および金。イリジウムが特に好ましい。
【0100】
f−ブロック金属に適した配位基には、酸素供与系または窒素供与系、例えばカルボン酸、1,3−ジケトナート、ヒドロキシカルボン酸、アシルフェノールおよびイミノアシル基を含むシッフ塩基などが含まれる。公知のように、発光ランタニド金属錯体は、金属イオンの第一励起状態よりも高い三重項励起エネルギー準位を有する増感基(群)を必要とする。発光は、金属のf−f遷移から生じるので、発光色は金属の選択によって決定される。鋭い発光は通常狭く、ディスプレイ用途に有用な純色の発光をもたらす。
【0101】
d−ブロック金属は、三重項励起状態からの発光に特に適している。これらの金属は、ポルフィリンまたは式(IV)の二座配位子などの炭素供与体または窒素供与体と有機金属錯体を形成する:
【0102】
【化15】
上式で、Ar
4およびAr
5は、同じであっても異なっていてもよく、独立に、置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリールから選択され;X
1およびY
1は、同じであっても異なっていてもよく、独立に、炭素または窒素から選択され;Ar
4およびAr
5は、縮合していてよい。X
1が炭素であり、Y
1が窒素である配位子が特に好ましい。
【0104】
【化16】
Ar
4およびAr
5の各々は、1個以上の置換基を有することができる。これらの置換基の2個以上を連結させて、環、例えば芳香環を形成することができる。特に好ましい置換基としては、国際公開第02/45466号、同第02/44189号、米国特許出願公開第2002−117662号および同第2002−182441号に開示されるような、錯体の発光をブルーシフトさせるために使用することができるフッ素またはトリフルオロメチル;特開2002−324679号に開示されるようなアルキル基またはアルコキシ基;国際公開第02/81448号に開示されるような、発光材料として使用された場合に錯体への正孔輸送を助けるために使用することのできるカルバゾール;国際公開第02/68435号および欧州特許第1245659号に開示されるような、さらなる基の付着のための配位子を官能化する働きをすることができる臭素、塩素またはヨウ素;ならびに、国際公開第02/66552号に開示されるような、金属錯体の溶液処理性を獲得または向上させるために使用することのできるデンドロンが挙げられる。
【0105】
発光デンドリマーは、一般に1以上のデンドロンと結合した発光コアを含み、この際、各々のデンドロンは、1つの分岐点および2以上の樹枝状の分岐を含む。好ましくは、デンドロンは、少なくとも部分的に共役し、コアおよび樹状分岐のうちの少なくとも1つは、アリールもしくはヘテロアリール基を含む。
【0106】
d−ブロック元素とともに使用するのに適したその他の配位子としては、ジケトナート、特にアセチルアセトナート(acac);トリアリールホスフィンおよびピリジンが挙げられ、その各々が置換されていてよい。
【0107】
主族金属錯体は、配位子に基づく発光、または電荷移動発光を示す。これらの錯体に関して、発光色は、配位子ならびに金属の選択によって決定される。
【0108】
広い範囲の蛍光低分子量金属錯体が公知であり、有機発光素子において実証されている[例えば、Macromol.Sym.125(1997)1−48、米国特許第5,150,006号、同第6,083,634号および同第5,432,014号参照]。二価もしくは三価金属に適した配位子としては:例えば酸素−窒素もしくは酸素−酸素供与性原子をもつオキシノイド、通常、置換基酸素原子をもつ環窒素原子、または置換基酸素原子をもつ置換基窒素原子もしくは酸素原子、例えば8−ヒドロキシキノレートおよびヒドロキシキノキサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナト(II)など、ベンザゾール(III)、シッフ塩基、アゾインドール、クロモン誘導体、3−ヒドロキシフラボン、ならびにカルボン酸、例えばサリシラトアミノカルボキシレートおよびエステルカルボキシレートなどが挙げられる。随意の置換基としては、発光色を変更することのできる(ヘテロ)芳香環上のハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリールまたはヘテロアリールが挙げられる。
【0109】
例となる非金属蛍光ドーパントとしては、広い一重項−三重項ギャップをもつ化合物が挙げられる。一重項エネルギーおよび三重項エネルギーは、基準となる文献、例えばS.L.Murov,I.Carmichael,G.L.Hug,Handbook of Photochemistry,2.Edition,Marcel Dekker Inc.,1993に記録されている。好ましくは、一重項−三重項ギャップは、0.7eVよりも広い。好ましい例としては、置換されていてもよいペリレンもしくはアントラセン、特に1以上のアルキルおよび/またはアリール(特にフェニル)基またはヘテロアリール基で置換されているペリレンもしくはアントラセンが挙げられる。
【0110】
例となる発光アントラセン繰り返し単位は、式(VIII)を有する:
【0111】
【化17】
上式で、d、eおよびfは、独立に、0、1、2または3であり、R
8、R9
4およびR
10は、出現ごとに、独立に、以下から選択される:
Ar(Arは、ハロゲン;CN;およびアルキルから選択される1以上の置換基で置換されていてもよいアリールもしくはヘテロアリールからなる群から選択され、前記アルキル基の1以上の隣接していないC原子は、O、S、N、C=Oおよび−C(=O)O−で置き換えられてよく、前記アルキル基の1以上のH原子は、ハロゲンで置き換えられてよい);および
アルキル(前記アルキル基の1以上の隣接していないC原子は、O、S、N、C=Oおよび−COO−で置き換えられてよく、前記アルキル基の1以上のH原子は、ハロゲンによるかまたはArによって置き換えられてよい)。
【0112】
例となるペリレンは、以下の式(IX)を有する:
【0113】
【化18】
上式で、R1’〜R4’は、随意の置換基、例えば、アルキル、例、C
1−20アルキル、置換されていてもよいアリール、例、置換されていてもよいフェニル、アルコキシ、チオエーテルおよびアミンからなる群から選択される置換基である。
【0114】
発光ペリレンがポリマーの繰り返し単位として存在する場合、それは、式(X)を有することがある:
【0115】
【化19】
上式で、R
5’は、直接結合であるか、または置換されていてもよい二価連結基、例えば置換されていてもよいフェニルである。
【0116】
別の例となる蛍光発光ドーパントは、式(XI)の繰り返し単位である:
【0117】
【化20】
上式で、Ar
1およびAr
3は、上に定義される通りであり、Ar6は、1以上の置換基、例えば置換されていてもよいアントラセンで置換され得る縮合芳香族もしくは複素芳香族基である。置換基は、上記の基R
3から選択され得る。
【0118】
発光ドーパントは、発光層の発光成分と実質的に同じ色を放射することができる。発光ドーパントは、発光層の発光成分と実質的に同じコア構造を有することができる;例えば、発光ドーパントは、1以上の置換基で置換されているコア構造(例えば、上記のペリレン基、アントラセン基または金属錯体)を含むことができる。同じ置換基の有無にかかわらず、同じコア構造が発光層の発光成分に存在し得る。
【0119】
電荷輸送層は、1以上の発光ドーパントを含有してよい。
【0120】
電荷輸送材料および発光ドーパントは、物理的に混合することができる。あるいは、発光ドーパントは、電荷輸送材料と化学的に結合することができる。高分子電荷輸送材料の場合、発光ドーパントは、例えば、欧州特許第1245659号、国際公開第02/31896号、同第03/18653号および同第03/22908号に開示されるように、ポリマー主鎖中の繰り返し単位として組み込まれたか、ポリマーの末端基として提供された、ポリマー主鎖に付着した置換基として化学結合され得る。
【0121】
この結合は、電荷輸送材料から発光ドーパントへの励起子のより効率的な移動をもたらすことができる。なぜならそれは、対応する混在系に利用できない分子内励起子移動経路を提供することができるためである。
【0122】
さらに、結合は、処理理由のために有益であり得る。例えば、発光ドーパントが低い溶解度を有する場合、それを可溶性の電荷輸送材料、特に電荷輸送ポリマーに結合させることは、発光ドーパントを電荷輸送材料によって溶液中に運ばせ、溶液処理法を用いる素子の二次加工を可能にする。さらに、発光ドーパントを電荷輸送材料に結合させることは、素子性能に有害であり得る相分離の影響を溶液処理された素子において防ぐことができる。
【0123】
電荷輸送層は、少なくとも10nmの厚さ、少なくとも15nmの厚さ、少なくとも20nmの厚さであってもよい。
【0124】
発光層
発光層での使用に適した発光材料としては、小分子、ポリマーおよびデンドリマー材料、ならびにその組成物が挙げられる。層3での使用に適した発光ポリマーとしては、ポリ(アリーレンビニレン)、例えばポリ(p−フェニレンビニレン)など、およびポリアリーレン、例えば:ポリフルオレン、特に、2,7結合9,9ジアルキルポリフルオレンまたは2,7結合9,9ジアリールポリフルオレン;ポリスピロフルオレン、特に2,7結合ポリ−9,9−スピロフルオレン;ポリインデノフルオレン、特に2,7結合ポリインデノフルオレン;ポリフェニレン、特にアルキルまたはアルコキシ置換ポリ−1,4−フェニレンなどが挙げられる。そのようなポリマーは、例えば、Adv.Mater.2000 12(23)1737−1750およびその中の参考文献に開示される通りである。
【0125】
本発明に従う素子中の発光材料として使用するためのポリマーは、好ましくは、上記の置換されていてもよいアリーレン繰り返し単位、特にフェニレン繰り返し単位、例えば上記の式(VII)の繰り返し単位、および/または上記の式(IV)のフルオレン繰り返し単位などから選択される繰り返し単位を含む。
【0126】
発光ポリマー、特に蛍光青色発光ポリマーは、上記のようなアリーレンまたはヘテロアリーレン繰り返し単位、およびアリールアミン繰り返し単位、特に上記のような式(V)の繰り返し単位を含むことができる。
【0127】
発光層は、発光材料だけで構成されてもよいし、この材料を1以上のさらなる材料と組み合わせて含んでもよい。特に、発光ポリマーは、正孔および/または電子輸送材料とブレンドしてもよいし、あるいは、例えば、国際公開第99/48160号に開示されるように、正孔および/または電子輸送材料と共有結合させてもよい。例となる正孔および/または電子輸送材料は、電荷輸送層に関して上に記載される材料から選択することができる。
【0128】
発光共重合体は、例えば、国際公開第00/55927号および米国特許第6353083号に開示されるように、発光領域と、正孔輸送領域および電子輸送領域のうちの少なくとも1つを含むことができる。正孔輸送領域および電子輸送領域のうちの一方だけが設けられる場合、エレクトロルミネッセンス領域が、正孔輸送および電子輸送機能性のもう一方も提供してよい。例えば、上記のようなアミン単位は、正孔輸送も発光機能性も提供することができる。発光繰り返し単位、および正孔輸送繰り返し単位と電子輸送繰り返し単位の一方または両方を含む発光共重合体は、前記単位を、米国特許6353083号のようにポリマー主鎖に、またはポリマー主鎖から垂下するポリマー側基に設けることができる。
【0129】
発光層は、ホスト材料および少なくとも1つの発光ドーパントを含んでよい。ホスト材料は、ドーパントの不在下で光自体を放つ、上記のような材料であり得る。ホスト材料およびドーパントを1つの素子で使用する場合、ドーパントだけが発光してもよい。あるいは、ホスト材料および1以上のドーパントが発光してもよい。白色光は、複数の光源からの発光、例えば、ホストと1以上のドーパントの両方からの発光または複数のドーパントからの発光によって生成することができる。発光ドーパントは、電荷輸送層に存在するドーパントに関して上に記載されるドーパントから選択することができる。
【0130】
蛍光発光ドーパントの場合、一重項励起子をホスト材料から蛍光発光ドーパントへ移動させることができるように、ホスト材料の一重項励起状態のエネルギー準位(S
1)は、蛍光発光ドーパントのエネルギー準位よりも高くなければならない。ホスト材料の一重項準位は、発光ドーパントの一重項準位よりも少なくとも0.01eV、より好ましくは0.05eV、さらにより好ましくは0.1eVまたはそれ以上高くなければならない。同様に、リン光発光ドーパントの場合には、三重項励起子をホスト材料から蛍光発光ドーパントに移動させることができるように、ホスト材料の三重項励起状態のエネルギー準位(T
1)は、リン光発光ドーパントのエネルギー準位よりも高くなければならない。ホスト材料の三重項準位は、リン光発光ドーパントの三重項準位よりも少なくとも0.01eV、より好ましくは0.05eV、さらにより好ましくは0.1eVまたはそれ以上高くなければならない。
【0131】
発光ドーパントは、ホスト材料と物理的に混合してもよいし、発光ドーパントと電荷輸送材料の結合に関して上に記載されるものと同じ方法で、ホスト材料と化学結合させてもよい。
【0132】
発光層は、パターニングされていてもパターニングされていなくてもよい。パターニングされていない層を含む素子は、例えば照明源として使用することができる。白色発光素子はこの目的に特に適している。パターニングされた層を含む素子は、例えば、アクティブ・マトリックス・ディスプレイであってもよいし、パッシブ・マトリックス・ディスプレイであってもよい。アクティブ・マトリックス・ディスプレイの場合、パターニングされたエレクトロルミネッセンス層は、パターニングされたアノード層およびパターニングされていないカソードと組み合わせて使用される。パッシブ・マトリックス・ディスプレイの場合、アノード層は、平行なストライプ状のアノード材料、ならびにアノード材料に垂直に配置された平行なストライプ状のエレクトロルミネッセンス材料およびカソード材料で形成され、この際、ストライプ状のエレクトロルミネッセンス材料およびカソード材料は、一般に、フォトリソグラフィによって形成されるストライプ状の絶縁材料(「カソードセパレータ」)によって分離されている。
【0133】
正孔注入層
導電性有機材料または無機材料から形成することのできる、導電性正孔注入層を、アノードから半導体ポリマーの1つまたは複数の層への正孔注入を支援するために、アノードと発光層の間に設けることができる。ドープされた有機正孔注入材料の例としては、置換されていてもよい、ドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特に欧州特許第0901176号および同第0947123号に開示されるポリスチレンスルホネート(PSS)などの電荷平衡化ポリ酸でドープされたPEDT、ポリアクリル酸またはフッ素化スルホン酸、例えばNafion(登録商標);米国特許第5723873号および同第5798170号に開示されるポリアニリン;ならびに、置換されていてもよいポリチオフェンまたはポリ(チエノチオフェン)が挙げられる。導電性無機材料の例としては、遷移金属酸化物、例えばJournal of Physics D:Applied Physics(1996),29(11),2750−2753に開示されるVOx、MoOxおよびRuOxなどが挙げられる。
【0134】
カソード
カソードは、エレクトロルミネッセンス層への電子の注入を可能にする仕事関数を有する材料から選択される。カソードと発光層の発光材料との間の有害な相互作用の可能性(特にカソードと発光層が直接接触している場合)などのその他の要因が、カソードの選択に影響を及ぼす。カソードは、アルミニウムの層などの単一材料で構成されてよい。あるいは、カソードは、複数の金属、例えば国際公開第98/10621号に開示されるようなカルシウムおよびアルミニウムなどの低仕事関数材料と高仕事関数材料からなる二層;国際公開第98/57381号、Appl.Phys.Lett.2002,81(4),634および国際公開第02/84759号に開示されるような元素バリウム;あるいは、電子の注入を助けるための金属化合物の薄層、特にアルカリまたはアルカリ土類金属の酸化物またはフッ化物、例えば国際公開第00/48258号に開示されるようなフッ化リチウムの薄層;Appl.Phys.Lett.2001,79(5),2001に開示されるようなフッ化バリウム;および酸化バリウムを含んでよい。素子への電子の効率的な注入をもたらすために、カソードは、好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。金属の仕事関数は、例えば、Michaelson,J.Appl.Phys.48(11),4729,1977において見出すことができる。
【0135】
カソードは、不透明であっても透明であってもよい。透明なカソードは、アクティブ・マトリックス素子に特に有利である。それはかかる素子において透明なアノードを通した発光が、発光画素の下に位置する駆動回路によって少なくとも部分的に遮られるためである。透明なカソードは、透明となるのに十分な薄さの電子注入材料の層を含む。一般に、この層の側面の導電率は、その薄さの結果として低くなる。この場合、電子注入材料の層は、インジウムスズ酸化物などの透明な導電性材料のより厚い層と組み合わせて使用される。
【0136】
透明なカソード素子は、透明なアノードを有する必要はなく(当然ながら、完全に透明な素子が望まれる場合は除く)、そのため、底部の発光素子に使用される透明なアノードが、アルミニウムの層などの反射性材料の層で置き換えられるか、または補われてよいことは、当然理解される。透明なカソード素子の例は、例えば、英国特許第2348316号に開示されている。
【0137】
封止
OLED素子は、水分および酸素に対して敏感な傾向がある。したがって、水分および酸素が素子中に侵入するのを防ぐために、基板は、良好なバリア特性を有することが好ましい。基板は、一般にガラスであるが、特に素子の柔軟性が望ましい場合は、代わりとなる基板を使用してもよい。例えば、基板は、交互になったプラスチック層とバリア層からなる基板を開示する米国特許第6268695号にあるようなプラスチックかまたは欧州特許第0949850号に開示される薄いガラスとプラスチックの積層体を含んでよい。
【0138】
素子は、水分および酸素の侵入を防ぐために封止材(図示せず)で封止されることが好ましい。適した封止材には、ガラスシート、適したバリア特性を有するフィルム、例えば二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、窒化ケイ素または例えば、国際公開第01/81649号に開示されるようなポリマーと誘電体を交互に積み重ねたものなど、あるいは、例えば、国際公開第01/19142号に開示されるような気密容器が挙げられる。透明なカソード素子の場合には、一酸化ケイ素または二酸化ケイ素などの透明な封止層をミクロンレベルの厚さに堆積することができるが、1つの好ましい実施形態では、そのような層の厚さは、20〜300nmの範囲内である。基板または封止材を透過し得るいずれの大気中の水分および/または酸素も吸収するためのゲッター材料を基板と封止材の間に配置してもよい。
【0139】
溶液処理
電荷輸送層および発光層は、真空蒸着および溶媒中の溶液からの堆積を含む、任意のプロセスによって堆積させることができる。これらの層の一方または両方がポリアリーレン、例えばポリフルオレンなどを含む場合、溶液の堆積に適した溶媒には、トルエンおよびキシレンなどのモノ−もしくはポリ−アルキルベンゼンが含まれる。特に好ましい溶液堆積技法には、印刷およびコーティング技法、好ましくはスピンコーティングおよびインクジェット印刷が含まれる。
【0140】
スピンコーティングは、発光材料のパターニングが不必要な素子、例えば照明用途または単純なモノクロ分割ディスプレイに特に適している。
【0141】
インクジェット印刷は、高情報量ディスプレイ、特にフルカラーディスプレイに特に適している。第1の電極の上にパターニングされた層を設け、一色(モノクロ素子の場合)または多色(マルチカラー、特にフルカラー素子の場合)印刷用のウェルを規定することによって、素子にインクジェット印刷することができる。パターニングされた層は、一般に、例えば、欧州特許第0880303号に記載されるように、ウェルを規定するようにパターニングされたフォトレジストの層である。
【0142】
ウェルの代わりの方法として、パターニングされた層の内部に規定されたチャネルにインクを印刷してもよい。特に、フォトレジストをパターニングすると、ウェルとは違って、複数の画素の上にまたがり、チャネル端で開閉することのできるチャネルを形成することができる。
【0143】
その他の溶液堆積技法としては、浸漬コーティング、ロール印刷およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0144】
隣接する電荷輸送層および発光層が、溶液処理によって形成される場合、当業者はこれらの層の混合を防ぐための技法、例えば、それに続く層を堆積する前に1つの層を架橋すること、または、これらの層の第1の層を形成した材料が、第2の層を堆積するために使用した溶媒に不溶性であるように、隣接する層の材料を選択することを承知しているであろう。
【実施例】
【0145】
正孔輸送ポリマーを、国際公開第00/53656号に記載されるように、スズキ重合によって以下のモノマーから形成した:
【0146】
【表1】
【実施例1】
【0147】
次の構造を有する素子を形成した:
ITO/HIL/HTL/EL/MF/Al/Ag
上式で、ITOは、インジウム−スズ酸化物アノードを表し;HILは、Plextronics,Inc社より入手した正孔注入材料から、50nmの厚さに形成した正孔注入層であり;HTLは、厚さ15nmの、正孔輸送ポリマー1を含むポリマーの正孔輸送層であり;ELは、下に図示される白色発光ポリマー1を含有する、厚さ65nmに形成されたエレクトロルミネッセンス層であり、MFは、金属フッ化物であり、MF(2nm)/Al(200nm)/Ag(100nm)の三層構造は、この素子のカソードを形成する。
【0148】
HIL、HTLおよびELは、各々、スピンコーティングとその後の溶媒の蒸発によって形成した。正孔輸送ポリマー1の堆積の後、ポリマー層を加熱してポリマーのベンゾシクロブタン基を架橋結合させ、ELのスピンコーティングの前にHTLを不溶性にした。
【0149】
発光ポリマー1は、下に図示されるモノマーの分子百分率を含む重合混合物のスズキ重合により形成した。重合は、国際公開第00/53656号に記載される通り実施した、そして、図示されるモノ臭素化イリジウム錯体を用いてポリマーをエンドキャップして白色発光ポリマーを形成した。
【0150】
【化21】
発光ポリマー1
【実施例2】
【0151】
正孔輸送層1の代わりに正孔輸送層2を使用したことを除いて、実施例1のように素子を作製した。
【0152】
比較例1
正孔輸送層1の代わりに比較正孔輸送ポリマー1を使用して、非放射性正孔輸送層を形成したことを除いて、実施例1のように比較素子1を作製した。
【0153】
CIE(x,y)座標および寿命(初期輝度5,000cd/m
2)を測定した。
【0154】
【表2】
上記の結果から分かるように、正孔輸送層に蛍光発光種を含めることによって、発光色は有意に変化せずに、素子の寿命が大幅に増大した。
【0155】
いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、正孔輸送層に蛍光発光種を含めることにより、正孔輸送層に一重項励起子の放射性崩壊の経路が与えられると考えられる。
【実施例3】
【0156】
正孔輸送層を正孔輸送ポリマー3から形成し、発光層を青色発光ポリマー2から形成したことを除いて、実施例1のように素子を作製した。これは以下のモノマーのスズキ重合によって形成した:
【0157】
【化22】
発光ポリマー2
比較目的のため、正孔輸送ポリマー3の代わりに比較正孔輸送ポリマー1を使用したことを除いて、素子実施例3のように比較素子2を作製した。
【0158】
【表3】
【実施例4】
【0159】
発光層を青色発光ポリマー3から形成したことを除いて、実施例1のように素子を作製した。これは以下のモノマーのスズキ重合によって形成した:
【0160】
【化23】
発光ポリマー3
比較目的のため、正孔輸送ポリマー1の代わりに比較正孔輸送ポリマー1を使用したことを除いて、素子実施例4のように比較素子3を作製した。
【0161】
【表4】
【実施例5】
【0162】
発光層を発光ポリマー5から形成し、正孔輸送層を正孔輸送ポリマー4から15nmの厚さに形成したことを除いて、実施例1のように素子を作製した:
【0163】
【表5】
【0164】
【化24】
発光ポリマー5
比較目的のため、放射性正孔輸送ポリマー4の代わりに非放射性比較正孔輸送ポリマー4を使用したことを除いて、実施例5に関して説明されている通り、比較素子5を形成した。
【実施例6】
【0165】
正孔輸送層を30nmの厚さに形成したことを除いて、実施例5に記載されるように素子を作製した。
【0166】
CIE(x,y)座標および寿命(初期輝度5,000cd/m
2)を測定した。
【0167】
【表6】
上記の結果から分かるように、正孔輸送層にリン光発光種を含めることによって、発光色は有意に変化せずに、素子の寿命が大幅に増大した。
【0168】
いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、正孔輸送層にリン光発光種を含めることにより、正孔輸送層に三重項励起子の放射性崩壊の経路が与えられると考えられる。
[実施例7および8]
【0169】
正孔輸送層を、正孔輸送ポリマー5(実施例7中)および正孔輸送ポリマー6(実施例8中)から形成し、発光層を、ホストポリマー1と発光ドーパント1を70:30w/wのブレンドで含む組成物から形成したことを除いて、実施例5に記載されるように素子を作製した。
【0170】
【表7】
【0171】
【化25】
ホストポリマー1
【0172】
【化26】
発光ドーパント1
比較目的のため、正孔輸送ポリマー5の代わりに比較正孔輸送ポリマー5を使用したことを除いて、実施例7について上に記載されるように比較例7を作製した。
【0173】
CIE(x,y)座標および寿命(初期輝度5,000cd/m
2)を測定した。
【0174】
【表8】
上記の結果から分かるように、正孔輸送層にリン光発光種を含めることによって、発光色は有意に変化せずに、素子の寿命が大幅に増大した。
【0175】
いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、正孔輸送層にリン光発光種を含めることにより、正孔輸送層において三重項励起子の放射性崩壊の経路が与えられると考えられる。
【0176】
本発明を、具体的な例となる実施形態に関して説明したが、本明細書に開示される特徴の様々な修正、変更および/または組合せは、以下の特許請求の範囲に示される発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかであることは当然理解される。