(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239893
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ウェット処理装置及びこれを備えた基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
H01L21/304 621Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-163841(P2013-163841)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-32803(P2015-32803A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 弘行
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−336285(JP,A)
【文献】
特開2008−028204(JP,A)
【文献】
特開2005−212085(JP,A)
【文献】
特開平09−207047(JP,A)
【文献】
特表2011−507237(JP,A)
【文献】
特開2003−229404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベースフレームと、
前記第1ベースフレームに隣接して配置される第2ベースフレームと、
前記第1ベースフレームの上面に設置される第1防水パンと、
前記第2ベースフレームの上面に設置される第2防水パンと、
前記第1防水パン又は前記第2防水パンに取り付けられ、前記第1防水パンと前記第2防水パンとの隙間を防水するように構成された、可撓性を有する構造体と、を備えた、基板を処理する基板処理装置に用いられるウェット処理装置。
【請求項2】
前記第1防水パンの端部は、前記第2防水パンの端部と少なくとも一部が平面視上重なるように構成され、
前記構造体は、前記第1防水パンの前記端部又は前記第2防水パンの前記端部に取り付けられた、請求項1に記載された、基板を処理する基板処理装置に用いられるウェット処理装置。
【請求項3】
前記第1防水パンの前記端部は、前記第2防水パンの前記端部よりも高い位置に配置された、請求項2に記載された、基板を処理する基板処理装置に用いられるウェット処理装置。
【請求項4】
前記構造体は、合成樹脂又は金属で形成され、前記第1ベースフレーム及び第2ベースフレームより剛性が小さい、請求項1ないし3のいずれか一項に記載された、基板を処理する基板処理装置に用いられるウェット処理装置。
【請求項5】
前記構造体は、板状、ブラシ状又はすだれ状に形成された、請求項1ないし4のいずれか一項に記載された、基板を処理する基板処理装置に用いられるウェット処理装置。
【請求項6】
前記第1ベースフレームは基板処理機を搭載可能に構成され、
前記第2ベースフレームは基板搬送機を搭載可能に構成された、請求項1ないし5のい
ずれか一項に記載された、基板を処理する基板処理装置に用いられるウェット処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載されたウェット処理装置を備えた、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割及び組み立て可能なウェット処理装置及びこれを備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハの製造工程においては、半導体ウェハ表面を研磨して平坦化するためにCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置が使用されている。
このCMP装置は、一般的に、研磨パッドを回転させる研磨テーブルと、基板(半導体ウェハ)を研磨パッドに押圧するためのトップリングと、研磨パッドをドレッシングするためのドレッシングリングとを備えている。CMP装置は、研磨材を含む研磨砥液をスラリーラインから研磨パッドの上面に供給し、トップリングが保持した基板を回転している研磨テーブル上の研磨パッドに接触させることで基板を研磨するとともに、ドレッシングリングを研磨パッドに接触させて、研磨後の研磨パッド表面の目立て・再生を行う。
【0003】
さらに、このCMP装置には搬送装置が併設されることがある。この搬送装置は、例えば、基板が収納されたカセットから基板を受け取って、CMP装置のトップリングに基板を受け渡す。処理が終了した基板は、再び搬送装置により受け取られ、例えば乾燥装置で乾燥された後、カセットに収納される。
【0004】
このCMP装置のように、処理工程に液体が用いられる基板処理装置では、液体の漏洩を防止するために防水パンを有するウェット処理装置が設けられている。
図6は従来のウェット処理装置の例を示す概略側面図である。
図6に示すように、ウェット処理装置100は、基板処理装置本体及び搬送装置を搭載するための、剛性の高いベースフレーム101を備え、ベースフレーム101の大きさに合わせた複数の防水パン102(ここでは二つ)が、その端部同士が重なるようにベースフレーム101上に配置されている。防水パン102は、基板処理に用いられた処理液を受け入れることができるように構成されており、装置外部へ処理液が漏洩することを防止している。
【0005】
このように、防水パン102を剛性の高いベースフレーム101上に配置することで、基板処理装置の半導体製造工場への輸送、搬入及び設置、さらに試運転を通じた防水パン102の破損等による防水機能の劣化を防止している。
さらに、このウェット処理装置の他、一つのベースフレーム上に複数の防水パンを互いに離間するように配置しつつ、その離間した防水パンの端部間を他の部材で覆うことも知られている。
【0006】
ところで、半導体製造工場は、SEMI−E72規格に定められた装置サイズと重量規格値を満たした装置のみが受け入れられるように設計されているので、被処理基板である半導体ウェハのサイズアップに伴い基板処理装置のサイズが大きくなってきている近年では、基板処理装置の半導体製造工場のクリーンルームへの搬入、クリーンルーム内での移動が困難になってきている。
【0007】
このため、装置サイズをSEMI−E72規格に適合させて、ウェット処理装置をクリーンルームへ搬送等するためには、ベースフレーム、防水パンを分割してサブモジュール化する必要がある。
しかしながら、基板処理装置のような半導体製造装置は、フットプリント(装置の占有
面積)最小化、及び生産性(時間当たりの処理基板枚数/フットプリント)最大化を達成すべく、装置構造が改良されているので、その装置構造は複雑であり、特にウェット処理装置を有する基板処理装置の場合は、ベースフレーム及び防水パンが複雑な構造を成している。
【0008】
このようなベースフレーム、防水パンを分割した場合、分割されたベースフレーム、防水パンをクリーンルームに搬入して組み立てるにあたり、防水パンの分割部の防水機能の確保、及び組み立ての容易さが要求される。
【0009】
図7は、従来の分割されたベースフレーム及び防水パンを備えたウェット処理装置の組み立て工程を示す図である。
図7aに示すように、ウェット処理装置110は、第1のベースフレーム111と、第2のベースフレーム112とを有している。また、第1のベースフレーム111上には、第1のベースフレーム111の大きさに合わせた第1の防水パン113が配置され、第2のベースフレーム112上には、第2のベースフレーム112に大きさに合わせた第2の防水パン114が配置されている。
【0010】
この第1の防水パン113及び第2の防水パン114は、第1のベースフレーム111及び第2のベースフレーム112によって支持されることで形状を維持しているので、第1のベースフレーム111及び第2のベースフレーム112から分離することは困難である。また、上述したように、ウェット処理装置を有する基板処理装置の場合は、ベースフレーム及び防水パンが複雑な構造を成している、即ち、本従来例では第1のベースフレーム111及び第2のベースフレーム112の高さが互いに異なり、これに合わせて防水パンの形状も湾曲して構成されている。
【0011】
このため、分割された防水パンが破損しないように、この分割されたベースフレーム及び防水パンを組み立てるためには、
図7bに示すように第1のベースフレーム111を例えば図示しないクレーンなどで吊り上げて、
図7cに示すように第1の防水パン113及び第2の防水パン114が互いに接触しないように、第1のベースフレーム111を第2のベースフレーム112に隣接させる。
続いて、
図7dに示すように、第1の防水パン113の端部が第2の防水パン114の端部に対して上から重なるように、第1のベースフレーム111を下す。
【0012】
以上で説明したように、分割されたベースフレーム及び防水パンを連結・組み立てする工程は、ベースフレーム構造体同士を連結させる工程と、防水パンの分割面を合わせる工程を伴うので、防水パンの分割面を破損させないようにベースフレームを連結することは極めて困難且つ手間のかかる作業となる。また、分割された防水パンの端部同士を重ねただけでは、端部間に隙間が生じるので、防水効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−207047号公報
【特許文献2】特開平9−234688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、その一つの目的は、分割されたベースフレーム及び防水パンを有するウェット処理装置の防水性を向上させることである。また、他の一つの目的は分割されたベースフレーム及び防水パンを有するウェット処理装置の組み立てを容易に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るウェット処理装置は、第1ベースフレームと、前記第1ベースフレームに隣接して配置される第2ベースフレームと、前記第1ベースフレームの上面に設置される第1防水パンと、前記第2ベースフレームの上面に設置される第2防水パンと、前記第1防水パン又は前記第2防水パンに取り付けられ、前記第1防水パンと前記第2防水パンとの隙間を防水するように構成された、可撓性を有する構造体と、を備える。
【0016】
本発明の別の形態に係るウェット処理装置は、前記第1防水パンの端部が、前記第2防水パンの端部と少なくとも一部が平面視上重なるように構成され、前記構造体が、前記第1防水パンの前記端部又は前記第2防水パンの前記端部に取り付けられる。
【0017】
本発明の別の形態に係るウェット処理装置は、前記第1防水パンの前記端部が、前記第2の防水パンの前記端部よりも高い位置に配置される。
【0018】
本発明の別の形態に係るウェット処理装置は、前記構造体が、合成樹脂又は金属で形成され、前記第1ベースフレーム及び第2ベースフレームより剛性が小さい。
【0019】
本発明の別の形態に係るウェット処理装置は、前記構造体が、板状、ブラシ状又はすだれ状に形成される。
【0020】
本発明の別の形態に係るウェット処理装置は、前記第1ベースフレームは基板処理機を搭載可能に構成され、前記第2ベースフレームは基板搬送機を搭載可能に構成される。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る基板処理装置は、上記ウェット処理装置を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、分割されたベースフレーム及び防水パンを有するウェット処理装置の防水性を向上させることができる。また、分割されたベースフレーム及び防水パンを有するウェット処理装置の組み立てを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係るウェット処理装置を備えたCMP装置を模式的に示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係るウェット処理装置の概略側面図である。
【
図3】本実施形態に係るウェット処理装置の組み立て工程を説明する図である。
【
図4】第1の防水パンの端部に取り付けられた別の構造体の平面図である。
【
図5】第1の防水パンと第2の防水パンの形状の例を示す平面図である。
【
図6】従来のウェット処理装置の例を示す概略側面図である。
【
図7】従来のウェット処理装置の組み立て工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願発明の実施形態に係るウェット処理装置及びこれを備えた基板処理装置を図面に基づいて説明する。以下で説明する図面においては、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下の実施形態では、基板処理装置の一例としてCMP装置を説明するが、これに限られず、基板処理装置は、例えば洗浄装置(ウェハ、レチクル、カセット用等)やメッキ装置など、処理工程に液体を用いる基板処理装置を含む。
【0025】
図1は、本実施形態に係るウェット処理装置を備えたCMP装置を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、このCMP装置1は、第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B、第3研磨ユニット3C及び第4研磨ユニット3Dと、第1研磨ユニット3A及び第2研磨ユニット3Bに基板を搬送するための第1搬送機構2Aと、第3研磨ユニット3C及び第4研磨ユニット3Dに基板を搬送するための第2搬送機項2Bと、を有している。さらに、CMP装置1は、第1研磨ユニット3A、第2研磨ユニット3B及び第1搬送機項2Aにおいて基板処理時に発生する液体を受けるためのウェット処理装置10と、第3研磨ユニット3C、第3研磨ユニット3D及び第2搬送機項2Bにおいて基板処理時に発生する液体を受けるためのウェット処理装置11と、を有している。
【0026】
第1研磨ユニット3Aは、研磨面を有する研磨パッド20が取り付けられた研磨テーブル30Aと、ウェハを保持しかつウェハを研磨テーブル30A上の研磨パッド20に押圧しながら研磨するためのトップリング31Aと、研磨パッド20に研磨液やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための研磨液供給ノズル32Aと、研磨パッド20の研磨面のドレッシングを行うためのドレッサ33Aと、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体または液体(例えば純水)を霧状にして研磨面に噴射するアトマイザ34Aとを備えている。
【0027】
同様に、第2研磨ユニット3Bは、研磨パッド20が取り付けられた研磨テーブル30Bと、トップリング31Bと、研磨液供給ノズル32Bと、ドレッサ33Bと、アトマイザ34Bと、を備え、第3研磨ユニット3Cは、研磨パッド20が取り付けられた研磨テーブル30Cと、トップリング31Cと、研磨液供給ノズル32Cと、ドレッサ33Cと、アトマイザ34Cと、を備え、第4研磨ユニット3Dは、研磨パッド20が取り付けられた研磨テーブル30Dと、トップリング31Dと、研磨液供給ノズル32Dと、ドレッサ33Dと、アトマイザ34Dと、を備えている。
【0028】
第1搬送機項2Aは、第1研磨ユニット3A及び第2研磨ユニット3Bに隣接して配置された、第1リニアトランスポータ6を有している。この第1リニアトランスポータ6は、研磨ユニット3A,3Bが配列する方向に沿った4つの搬送位置(図中右から順に第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4とする)の間で基板を搬送する機構である。
【0029】
また、第2搬送機項2Bは、第3研磨ユニット3C及び第4研磨ユニット3Dに隣接して配置された、第2リニアトランスポータ7を有している。この第2リニアトランスポータ7は、研磨ユニット3C,3Dが配列する方向に沿った3つの搬送位置(図中右から順に第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7とする)の間で基板を搬送する機構である。
【0030】
基板は、第1リニアトランスポータ6によって研磨ユニット3A,3Bに搬送される。第1研磨ユニット3Aのトップリング31Aは、トップリングヘッドのスイング動作により研磨位置と第2搬送位置TP2との間を移動する。従って、トップリング31Aへの基板の受け渡しは第2搬送位置TP2で行われる。同様に、第2研磨ユニット3Bのトップリング31Bは研磨位置と第3搬送位置TP3との間を移動し、トップリング31Bへの基板の受け渡しは第3搬送位置TP3で行われる。第3研磨ユニット3Cのトップリング31Cは研磨位置と第6搬送位置TP6との間を移動し、トップリング31Cへの基板の受け渡しは第6搬送位置TP6で行われる。第4研磨ユニット3Dのトップリング31Dは研磨位置と第7搬送位置TP7との間を移動し、トップリング31Dへの基板の受け渡しは第7搬送位置TP7で行われる。
【0031】
第1搬送位置TP1には、図示しない搬送ロボットから基板を受け取るためのリフタ12が配置されている。基板はこのリフタ12を介して図示しない搬送ロボットから第1リニアトランスポータ6に渡される。また、第1リニアトランスポータ6と、第2リニアトランスポータ7との間にはスイングトランスポータ12が配置されている。このスイングトランスポータ12は、第4搬送位置TP4と第5搬送位置TP5との間を移動可能なハンドを有しており、第1リニアトランスポータ6から第2リニアトランスポータ7への基板の受け渡しは、スイングトランスポータ12によって行われる。基板は、第2リニアトランスポータ7によって第3研磨ユニット3C及び/または第4研磨ユニット3Dに搬送される。
【0032】
本実施形態にかかるCMP装置1のウェット処理装置10,11は、半導体製造工場のクリーンルームへの搬出入を行うために分割可能に構成されている。
図2は、本実施形態に係るウェット処理装置10の概略側面図である。
図示のようにウェット処理装置10は、
図1に示した第1研磨ユニット3A及び第2研磨ユニット3B(基板処理機)を搭載可能に構成された第1のベースフレーム13と、
図1に示した第1搬送機構2A(基板搬送機)を搭載可能に構成され、第1のベースフレーム13と隣接して配置された第2のベースフレーム14とを備えている。また、第1のベースフレーム13の基板処理機を搭載する搭載面13aには、搭載面13aの大きさ(占有面積)に合わせた第1の防水パン15が配置され、第2のベースフレーム14の基板搬送機を搭載する搭載面14aには、搭載面14aに大きさ(占有面積)に合わせた第2の防水パン16が配置されている。
【0033】
第1のベースフレーム13の搭載面13aの外周側(図中左側)には、上方に突出して形成された凸部13bが設けられ、第1の防水パン15は、搭載面13a及び凸部13bの形状に合わせて湾曲し、且つ搭載面13aの第2のベースフレーム14と隣接する側(図中右側)の端部15aが搭載面13aから垂れ下がるように形成されている。これにより、第1の防水パン15で受けた基板処理機からの処理液は、端部15aから第2の防水パン16へ流れ込むように構成されている。
【0034】
第2のベースフレーム14の搭載面14aは、第1のベースフレーム13の搭載面13aよりも低く形成されており、その外周側(図中右側)には、上方に突出して形成された凸部14bが設けられている。第2の防水パン16は、搭載面14a及び凸部14bの形状に合わせて湾曲し、且つ搭載面14aの第1のベースフレーム13と隣接する側(図中右側)の端部16aは、上方に湾曲している。これにより、第2の防水パン16は、第1の防水パン15から流れ込んだ処理液及び第2の防水パン16で受けた処理液が外部へ流出することを防止している。
【0035】
第1の防水パン15及び第2の防水パン16は、平面視で略矩形状に形成されている。ここで、平面視とは、第1の防水パン15及び第2の防水パン16が第1のベースフレーム13と第2のベースフレーム14に配置された状態で、各ベースフレームの搭載面と平行な平面で各防水パンを視ることを意味する。
【0036】
第1の防水パン15の端部15aは、第2の防水パン16の端部16aと少なくとも一部が平面視上重なるように構成されており、端部15aの高さは、端部16aよりも高くなるように形成されている。
第1の防水パン15の端部15aには、可撓性を有する板状構造体17が設けられている。板状構造体17は、第1の防水パン15の端部15aと第2の防水パン16の端部16aとの隙間を覆うように構成されており、第1の防水パン15の端部15aと第2の防水パン16の端部16aとの間を防水することができる。
【0037】
板状構造体17の形状は、本実施形態では長方形である。また、板状構造体17が湾曲しやすいように、板状構造体17には、第1の防水パン15の端部15aと略平行(図中奥行き方向)に複数のスリットが形成されている。
板状構造体17は、例えば、接着、溶接、リベット接合、ねじ接合により、第1の防水パン15の端部に取り付けられている。
【0038】
第1の防水パン15及び第2の防水パン16の材質は、例えば硬質塩化ビニル(PVC)や、ステンレス等の金属から構成されている。
板状構造体17は、第1の防水パン15及び第2の防水パン16の材質よりも剛性の小さいものであって、柔軟性がある材質、例えば軟質の塩化ビニル、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ゴム、プラスチックなどの合成樹脂、または金属から形成される。また、板状構造体17は、第1の防水パン15及び第2の防水パン16の材質よりも剛性の小さい公知の材料から成る織物、不織布又はこれらの織物および不織布に樹脂を含有させた板状(シート状)の構造体であってもよい。
【0039】
以下、ウェット処理装置10の組み立て工程について説明する。
図3は、分割されたウェット処理装置10の組み立て工程を説明する図である。
図3aに示すように、第1のベースフレーム13と第2のベースフレーム14に、予め夫々第1の防水パン15及び第2の防水パン16が設置されている状態で、第1のベースフレーム13と第2のベースフレーム14がクリーンルーム等に搬入される。また、第1の防水パン15の端部15aには、予め板状構造体17が取り付けられている。
【0040】
ウェット処理装置10を組み立てる際は、例えば図示しないクレーン等で第1のベースフレーム13を吊り上げながら、第2のベースフレーム14へ隣接するように移動させて配置する(
図3b参照)。または、第1のベースフレーム13を吊り上げることなくスライドさせて、第2のベースフレーム14へ隣接するように移動させてもよい。
このとき、第1の防水パン15の端部15aの高さが、第2のベースフレーム14の端部14aの高さよりも高く構成されているので、第1のベースフレーム13を第2のベースフレーム14に隣接するように移動させても、第1の防水パン15の端部15aが第2のベースフレーム14の端部14aに接触することがなく、各防水パンの破損を確実に防止することができる。
【0041】
第1の防水パン15の端部15aに取り付けられた板状構造体17は、第2の防水パン16の端部16aと接触して湾曲する(
図3b参照)。
このとき、板状構造体17は、第1の防水パン15及び第2の防水パン16の材質よりも軟質な材質で形成されているので、第2の防水パン16と接触しても、第2の防水パンを破損させることがない。また、板状構造体17は、可撓性を有している、即ち湾曲可能な程度に柔軟性を有しており、必要に応じて変形して、第2の防水パン16と接触しても破損しないように構成されている。また、板状構造体17には、上述したようにスリットが形成されているので、より柔軟に湾曲することができ、板状構造体17と第2の防水パン16との接触による互いの破損をより確実に防止することができる。
【0042】
第1のベースフレーム13が、組み立て完了位置に移動されると、湾曲した板状構造体17は、元の形状に戻ると共に、第2の防水パン16の端部16aに覆いかぶさる(
図3c参照)。これにより、第1の防水パン15の端部15aと第2の防水パン16の端部16aとの隙間を確実に防水することができる。
【0043】
本実施形態に係るウェット処理装置10によれば、第1の防水パン15及び第2の防水
パン16との隙間を板状構造体17により確実に防水することができ、且つ、第1の防水パン15及び第2の防水パン16を破損させることなく、容易に組み立てることができる。
また、第1の防水パン15の端部15aが、第2の防水パン16の端部16aと少なくとも一部が平面視上重なるように構成され、この端部15aに板状構造体17が取り付けられているので、第1の防水パン15が受けた処理液が、板状構造体17を介して確実に第2の防水パン16へ流れ込むので、処理液の漏洩を防止することができる。
さらに、予め第1の防水パン15に板状構造体が取り付けられた状態で、ウェット処理装置10の組み立てを行うことができるので、現場で板状構造体17を取り付ける必要がなく、現場での作業時間を短縮することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、板状構造体17は、第2の防水パン16には固定されないが、必要に応じて、接着、溶接、リベット接合、ねじ接合等によって、第2の防水パン16に取り付けてもよい。
また、本実施形態では、板状構造体17は、相対的に高い位置に配置された第1の防水パン15の端部15aに取り付けられているが、これに代えて第2の防水パン16の端部16aに取り付けるようにしてもよい。この場合は、板状構造体17は、第2の防水パン16の端部16aに取り付けられた状態で鉛直方向に自立可能な程度の剛性を有する材料が選択される。
【0045】
さらに、板状構造体17に代えて、例えば、複数の可撓性を有する棒状体又は円筒体の端部を第1の防水パン15の端部15aに取り付け、密に並べてブラシ状に形成された構造体17(
図4a参照)や、複数の可撓性を有する棒状体又は円筒体が面内方向に連結してすだれ状に形成された構造体17(
図4b参照)を設けてもよい。なお、ブラシ状の構造体17およびすだれ状の構造体17は、上記板状構造体17と同様に、第1の防水パン15及び第2の防水パン16の材質よりも剛性の小さいものであって、柔軟性がある材質、例えば軟質の塩化ビニル、PFA、PTFE、ゴム、プラスチックなどの合成樹脂、または金属から形成することができる。
【0046】
本実施形態では、第1の防水パン15の端部15aと第2の防水パン16の端部16aとは、平面視で略矩形状に形成されているが、より複雑な形状であってもよい。例えば、
図5に示すように、端部15a及び端部16aが互いに矩形状に入り組む形状であったり(
図5aないし
図5d参照)、端部15a及び端部16aの一部が互いに鋭角状に入り組む形状であったり(
図5e及び
図5f参照)、端部15a及び端部16aの一部が互いに円弧状に入り組む形状であってもよい(
図5g及び
図5h)。これらの場合、板状構造体17は、図示破線で示すように、端部15aの形状に沿って端部15aに取り付けられる。このように板状構造体17が端部15aの形状に沿って設けられることで、端部15aと端部16aとの隙間の防水を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 CMP装置、2A 第1搬送機構、2B 第2搬送機構、3A 第1研磨ユニット、3B 第2研磨ユニット、3C 第3研磨ユニット、3D 第4研磨ユニット、6 第1リニアトランスポータ、7 第2リニアトランスポータ、10,11,100,110 ウェット処理装置、13,111 第1のベースフレーム、13a 搭載面、13b 凸部、14,112 第2のベースフレーム、14a 搭載面、14b 凸部、15,113 第1の防水パン、15a 端部、16,114 第2の防水パン、16a 端部、17 板状構造体、 20 研磨パッド、30A,30B30C,30D 研磨テーブル、31A,31B,31C,31D トップリング、32A,32B,32C,32D 研磨液供給ノズル、33A,33B,33C,33D ドレッサ、34A,34B,34C,34D アトマイザ、102 防水パン。