(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239917
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】蛍光検出装置、光学センサ装置及び有価紙面の鑑別方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20171120BHJP
G07D 7/12 20160101ALI20171120BHJP
G07D 7/00 20160101ALI20171120BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G07D7/12
G07D7/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-200406(P2013-200406)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-199242(P2014-199242A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-539468(P2013-539468)
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100168767
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】七尾 勉
(72)【発明者】
【氏名】日口 慎介
【審査官】
伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−037418(JP,A)
【文献】
特開2012−023110(JP,A)
【文献】
特開2012−190253(JP,A)
【文献】
特開2003−077025(JP,A)
【文献】
特開2013−185022(JP,A)
【文献】
特開2005−196627(JP,A)
【文献】
特開2007−063403(JP,A)
【文献】
特表2013−509036(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0090485(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−21/83
G07D 7/00
G07D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を媒体に照射して、媒体に埋め込まれた蛍光物質の蛍光を検出する蛍光検出装置において、
紫外光を照射する紫外光LED光源と、前記紫外光LED光源から媒体に照射され、媒体から反射された、蛍光を含む反射光を受光する受光部とを備え、前記媒体と前記受光部の間には透光カバーが設けられているが、前記媒体と前記受光部の間に紫外光を遮断する紫外光カットフィルターは設けられておらず、前記紫外光LED光源から照射される紫外光のピーク波長が250nm以上、350nm以下であり、前記受光部が、少なくとも可視光域の感度を有し、かつ、その短波長の検出感度端が350nmより長いことを特徴とする蛍光検出装置。
【請求項2】
前記透光カバーは、青板ガラス、白板ガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス又は石英ガラスから選択されることを特徴とする請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項3】
前記透光カバーが青板ガラスであり、前記紫外光LED光源から照射される紫外光のピーク波長が300nm以上、350nm以下である請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項4】
前記受光部に用いられる検出素子がシリコンフォトダイオードであり、その最高感度波長が600〜1000nmの間に存在し、350nm以下の波長の光に対する感度が前記最高感度の5%以下、好ましくは3%以下である請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項5】
前記透光カバーが、波長が350nmより短い紫外光を透過する硼珪酸ガラスであることを特徴とする請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された蛍光検出装置を含む光学ラインセンサ装置であって、前記紫外光LED光源から紫外光を有価紙面に照射し、該有価紙面に埋め込まれた蛍光物質から反射された蛍光を、等倍レンズを経て、前記受光部で検出することを特徴とする光学ラインセンサ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された蛍光検出装置を含む光学スポットセンサ装置であって、前記紫外光LED光源から紫外光を有価紙面に照射し、該有価紙面に埋め込まれた蛍光物質から反射されたスポット状の蛍光を、前記受光部で検出することを特徴とする光学スポットセンサ装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7の装置を用いて、該蛍光検出装置の紫外光LED光源から紫外光を有価紙面に照射し、該有価紙面に埋め込まれた蛍光物質から反射された蛍光を、前記蛍光検出装置の受光部で検出し、該検出信号にもとづいて前記有価紙面の真偽を判定することを特徴とする有価紙面の鑑別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光検出装置に関し、特に有価証券、紙幣、クレジットカード等(以下、有価紙面又は媒体という)の鑑別を目的とする光学スポットセンサ装置又は光学ラインセンサ装置(以下まとめて「光学センサ装置」という)に好適に用いられる蛍光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の印刷技術や複写技術の目覚ましい性能向上に伴い、紙幣、有価証券、クレジットカード等の偽造がますます精巧になってきており、これらを的確に判別して排除することが社会秩序を維持するために重要視されている。特にATM、紙幣処理機、釣り銭機、券売機など紙幣を取り扱う機器において、より高速で高性能な真偽判定目的の鑑別システムが強く求められてきている。
【0003】
これら紙幣や有価証券の鑑別方法として、光学センサ装置によるパターン識別が、従前より用いられてきている。光学センサ装置には、特定位置の情報により金種や真偽判定を行う光学スポットセンサ装置と、紙幣全体の情報を取り出し、より精度の高い鑑別を行う光学ラインセンサ装置がある。光学ラインセンサ装置は紙幣や有価証券の面全体の画像情報を取得しその画像情報を鑑別の対象にするのに対して、光学スポットセンサ装置は紙幣や有価証券の固定部位の情報を取得して簡易的に鑑別する装置である。
【0004】
光学ラインセンサ装置には、縮小レンズとミラー及びCCDを組み合わせた縮小光学ラインセンサ装置と、セルフォックレンズ(セルフォックは商標名である)などの等倍光学系を用いた密着型光学ラインセンサ装置とがある。縮小光学系はシステム単価が安く、解像度を容易に調整できる、焦点深度が深いという長所がある反面、センサの容積が大きくなることやホコリや異物によるトラブルが多いという欠点がある。そこで、最近はメンテナンスの容易な密着型光学ラインセンサ装置が広く使われてきている。
【0005】
一方、有価紙面は最近、偽造防止を目的として、紫外光照射によって蛍光を発するインク、繊維、スレッドなどが、有価紙面の所定の部位に埋め込まれ、真偽判定の目印として利用可能になっている。
そこでATMや紙幣処理機などの、有価紙面を鑑別する画像処理装置においては、該画像処理装置に用いられる光学センサ装置に紫外光を光源とした蛍光検出装置を設置することが望まれるようになってきている。
【0006】
この蛍光検出装置は、光源部に紫外光を発光するLEDなどを採用し、それを透光カバーと樹脂製若しくは金属製のケースとからなる収納容器に収納している。蛍光検出装置は、透光カバー上に有価紙面を高速で走らせながら、透光カバーを通して該有価紙面に前記LEDから紫外光を照射し、受光部において該有価紙面から
発光した蛍光(可視光および赤外光を含む)をフォトダイオードなどで検出する。該有価紙面の鑑別は、この受光信号をもとにして行われる。
【0007】
蛍光検出装置の光源として、冷陰極管、ハロゲンおよびキセノンランプ、紫外光LED等が使用可能であるが、特に最近は小型で可視光成分が少なく輝度が向上した紫外光LEDが好んで使用されている。また受光部を構成する検出素子としては、シリコンフォトダイオード、CCD素子、検出素子部を内蔵したセンサIC、アモルファスシリコン素子などが用いられている。
【0008】
しかし、(1)蛍光物質が組み込まれている有価紙面の部位(以下、目印という)に紫外光を当てても、そこから
発光した蛍光出力が微弱であるために有価紙面の鑑別が可能な検出感度を確保できない場合がある。(2)紫外光LEDなどの紫外光光源そのものに、微弱な可視光成分が含まれている場合があり、このような紫外光を有価紙面に照射すると、反射された該可視光成分が目印の蛍光に混在して、目印の蛍光検出感度を低下させる場合がある。(3)有価紙面の目印でなく、紙基材そのものが紫外光照射によって蛍光を発する場合があり、これが、目印の蛍光のコントラストを低下させ、目印の蛍光検知能力を阻害する。
【0009】
そこで、本出願人が出願した下記特許文献1に記載されているように、紫外光光源と有価紙面の間に、紫外光LEDの可視光成分を遮断する可視光カットフィルターを装着し、さらに紫外光が照射された有価紙面と蛍光信号の受光部との間に、紫外光成分を遮断する紫外光カットフィルターを装着した構成が知られている。このカットフィルターを用いた構成により、より精度の高い蛍光検出を行い、有価紙面の精密な真偽判定機能を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-190253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願の発明者は、さらに種々の紫外光光源を用いて、従来よりもさらに精度の高い有価紙面の蛍光検出装置を検討した結果、従来より簡単な構造でありながらも、従来と同等の、若しくは、より精度の高い蛍光検出が可能となる構成を見出し、本発明に到達した。
本発明は、紫外光を用いた蛍光検出装置、光学センサ装置及び有価紙面の鑑別方法に係るもので、従来に比べて簡易な構造を用いながら、有価紙面の精度の高い蛍光検出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、発光部に発光ピーク波長が250〜350nm、好ましくは300〜350nmの紫外光LED光源を用い、受光部として350nmより短い波長に対する検出感度が極めて小さいフォトダイオードを用いることで、前述の可視光カットフィルターおよび紫外光カットフィルターを用いなくとも、有価紙面の蛍光をさらに高精度に検出することができる蛍光検出装置を提供するものである。
【0013】
本発明に適する紫外光LEDは、中心波長が250nm〜350nmで、発光強度が強く、この波長より長い波長、特に可視光をできるだけ含まないLEDである。従来、窒化ガリウム系の360〜380nm波長域の紫外光LEDが性能および価格も実用的であり、既に有価証券の鑑別用途に採用開始されているが、さらなる短波長の紫外光LEDも研究が進められており、本発明では、このようなさらに短波長の紫外光LEDを採用する。
【0014】
発光ピーク波長が350nmより長いLEDを用いると、蛍光物質が組み込まれている目印の部位の蛍光よりも、有価紙面の紙基材自身からの蛍光が相対的に強くなり、目印の蛍光検出のコントラストが弱まって、精度の高い蛍光検出が困難となる。また、このような紫外光LEDの発光には、微弱ながらも可視光が混在する場合があり、これも目印の蛍光検出感度を阻害する。
【0015】
例えば従来より用いられている発光ピーク波長が370nm近傍の紫外光LEDであるとピーク波長が可視光域に近いため、発光のテール部が可視光域に伸びて可視光成分が含まれる場合がある。そこでこの影響を排除するために可視光カットフィルターをLED発光部に装着して蛍光感度を高める必要がある。
図4は、実施例と比較例で使用した、ピーク波長が365nmと310nmの紫外光LEDのスペクトル強度の測定結果である。この図が示すように、発光ピーク波長が350nmより短い波長のLEDを用いると前記テール部が可視光域から離れるので、紫外光に含まれる可視光成分が格段に少なくなる。このため、有価紙面から反射した紫外光に含まれる可視光に比べて有価紙面から発生する蛍光のコントラストが相対的に強くなるため、通常の用途では、特に可視光カットフィルターを用いなくても十分に明瞭な蛍光信号が得られる。
【0016】
他方、発光ピーク波長が250nmより短いLEDを用いると、波長が短くなるにつれて発光強度が弱<なるため有価紙面から十分な強度の蛍光が得られなくなったり、蛍光検出装置と組み合わせる透光カバーとして、波長の短い紫外光を透過させるために石英ガラスなどの特殊で高価なガラスを使う必要が生じたりする場合がある。したがって、本発明では、発光ピーク波長が250nmより長いLEDを用いることとしている。
【0017】
このように、本発明の目的を達するには、必要なピーク波長と発光強度のバランスが取れたLEDを選択する必要がある。本発明では、発光ピーク波長が250〜350nm紫外光LEDを用いる。
この場合には、透光カバーとして、建築用途などに幅広く用いられている汎用のソーダライムガラス(通称:青板ガラス)は、少量含まれる鉄分が当該紫外光の透過を阻害するため好ましくないので、鉄分を除去した高透明ガラス(通称:白板ガラス)、液晶表示素子向けの無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、そして石英ガラスなどから適宜選択することができる。
【0018】
図6に、所定厚さの青板ガラス、白板ガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラスの波長透過率を調べたグラフを掲載する。この中では、青板ガラスの短波長側の透過端の波長がもっとも長く、白板ガラス、硼珪酸ガラスの短波長側の透過端の波長がそれよりも短くなっている。白板ガラス、硼珪酸ガラスであれば、波長300nmの付近までの紫外光を透過させるため、本発明の蛍光検出装置に使用できることがわかる。また石英ガラスは短波長側の透過端の波長がもっと短く、広い範囲の紫外光に対して透過性がある。
【0019】
透光カバーとして、高価な石英ガラスではなく汎用のガラスで紫外光を透過するガラスを選択する場合は、これらのガラスの透過性を加味して300〜350nmの発光ピークを有する紫外光LEDを選択することが特に好ましい。
一方、本発明に用いられる蛍光検出を行う受光部は、短波長感度端が350nmより長い特性を有することが必要であり、この特性によって、有価紙面で反射した紫外光と紫外光によって発光した蛍光のうち、蛍光のみを選択的に検出することが可能になる。
【0020】
また、この検出特性によって、従来のように、媒体と受光部の間に紫外光を遮断する紫外光カットフィルターを設置する必要がなくなり、構造およびコストにおいても有利な受光部を実現することができる。
本発明の目的を達成するためには受光部に用いられる受光素子として、短波長検出端が350nmより長いシリコンフォトダイオードが特に好適である。「短波長感度端が350nmよりも長い」とは、実質的には、通常600〜1000nmの間にある最高感度に対して、350nm以下の波長の光に対する感度が5%以下好ましくは3%以下であることを意味する。
【0021】
このような受光部は、本発明に用いるLEDから発光する紫外光に対する感度が乏しいために、従来より用いられている紫外光を遮断するための紫外光フィルターがなくても、有価紙面の蛍光だけを精度高く検出することを可能にする。
前記シリコンフォトダイオードの波長感度は、熱拡散あるいはイオン注入法などによって形成される光電効果を有する拡散層の深さや保護膜の透過率を調整することなどによって決定される。汎用のシリコンフォトダイオードの短波長感度端は通常340〜370nm付近にあり、特別の工程を付加することなく、従来の製造方法の範囲内で、本発明に用いるシリコンフォトダイオードを安定して入手することができる。
【0022】
可視光および赤外光域の蛍光に対して高感度を有しながら、350nm以下の紫外光に対しては低感度であることが本発明の蛍光検出装置における受光部の特徴であるが、この特徴をさらに高度に補完する種々の技術も本発明は排除しない。
例えば、有価紙面の蛍光が非常に微弱であるために、そのコントラストを特別に際立たせる必要がある場合には、LED光源部に、従来の可視光カットフィルターを付加して紫外光に含まれる少量の可視光までも徹底的に取り除いたり、さらに(あるいは)紫外光カットフィルターを付加して受光部に入る350nm以上の少量の紫外光も徹底的に取り除いたりすることも本発明の範囲内で可能である。
【0023】
さらに、シリコンフォトダイオードの保護膜として紫外光に対するフィルター特性を有する窒化珪素膜を採用したり、信頼性を確保するために用いられる透明な保護樹脂として、350nm付近以下の光に対して透過率が低下するシリコーン樹脂を選ぶなどして、従来のように紫外光カットフィルターを別途設けることなく、シリコンフォトダイオードの検出特性を補完することによって、所望の高度な感度特性を得ることも可能である。
【0024】
本発明の蛍光検出装置と組み合わせる等倍レンズとして、350nmより短波長の紫外光に対する透過性が乏しいガラス製の等倍レンズ(例えば、日本板硝子株式会社製セルフォックレンズ、セルフォックは商標名である)は、本発明の蛍光検出装置の蛍光検出特性を補完できるために特に好適である。
有価紙面の真偽判定のためには、本発明の蛍光検出装置を単独で用いることも可能であるが、通常は本発明の蛍光検出装置を、光学センサ装置の構成要素として用いられる場合が多い。例えば光学ラインセンサ装置では、直線状に配列した紫外光LED光源から紫外光を有価紙面に照射し、該有価紙面に埋め込まれた蛍光物質の目印から
紫外光によって発光した蛍光を、等倍レンズを経て、直線状に配列した受光部で受光して検出する。
【0025】
光学スポットセンサ装置では、紫外光LED光源から紫外光を有価紙面にスポット状に照射し、該有価紙面に埋め込まれた蛍光物質の目印から
紫外光によって発光した蛍光を、レンズを経て、受光部で受光して検出する。この方法により安価で簡易な有価紙面の鑑別が可能となる。
そして、このような光学センサ装置を用いた画像処理装置は、該検出信号を処理して該有価紙面の真偽を判定する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、(1)紫外光の波長が短くなるほど、有価紙面に埋め込まれた蛍光物質の目印から発光する蛍光は、下地の紙基材から発光する蛍光よりも相対的に強くなり、目印と基材の蛍光コントラストは大きくなる。反面、紫外光の波長が短くなるほど、LED光源の発光効率および発光強度が低下する。そこで、発光ピーク波長が250〜350nmのLEDを用いることによって、有価紙面上の蛍光物質の蛍光量が増加し、基材自身から発光する蛍光に対するコントラストが増加して、目印の蛍光を効率よく検出することができ、鑑別機能が向上する。
【0027】
(2)受光部に、波長が350nmより短い紫外光に対する感度が極めて小さいフォトダイオードを用いることによって、従来のように、有価紙面から反射されたLED光源の紫外光を紫外光カットフィルターで遮断しなくとも、有価紙面の可視および赤外光の蛍光のみを効率良く検出することが可能となる。
(3)従来より用いられているピーク波長370nm付近の紫外光LED光源に比べて、発光ピーク波長が250〜350nmのLED光源の紫外光に含まれる可視光はわずかあり、従来のように、光源部に可視光カットフィルターを付加する必要はない。
【0028】
(4)発光ピーク波長300〜350nmの紫外光光源を用いることで、光学センサ装置の構成材料の一つである透光カバーとして安価なカバーガラスを採用することができる。
(5)有価紙面の蛍光が非常に微弱である場合には、LED光源部に、従来の可視光カットフィルターを付加して紫外光に含まれる少量の可視光までも徹底的に取り除いたり、さらに(あるいは)紫外光カットフィルターを付加して受光部に入る350nm以上の少量の紫外光も徹底的に取り除いたりして、その蛍光信号のコントラストを強くし、有価紙面の蛍光検出精度を一段と高くすることも可能である。
【0029】
本発明における上述の、又はさらに他の利点、特徴及び効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】有価証券や紙幣などの媒体Sの画像を検出する光学ラインセンサ装置を示す断面図である。
【
図2】実装基板20とその上面に設置された複数の発光素子Tとを含む紫外光LED光源22の構造を示す斜視図である。
【
図3】媒体Sの光学特性を検出する光学スポットセンサ装置を示す断面図である。
【
図4】実施例で用いた紫外光LED光源の発光素子の発光スペクトル強度を示すグラフである。
【
図5】実施例で用いたシリコンフォトダイオードの感度スペクトルを示すグラフである。
【
図6】所定厚さの青板ガラス、白板ガラス、碩珪酸ガラス、石英ガラスの波長透過率を調べたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の蛍光検出装置の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、有価証券や紙幣など(以下「媒体S」という)の画像を検出する光学ラインセンサ装置を示す断面図である。光学ラインセンサ装置は、媒体Sを×方向に直線状に搬送するための紙幣搬送路11に対向配置された検出ユニット12を有している。紙幣搬送路11は、媒体Sを搬送方向xに沿わせた姿勢で直線状に真っ直ぐ搬送するものである。
【0032】
検出ユニット12は、長さ方向(
図1における紙面に垂直なy方向)の寸法が厚さ方向(
図1におけるz方向)の寸法及び幅方向(
図1におけるx方向)の寸法に比してかなり長く、細長い形状をなしている。検出ユニット12は、上方向に開口部が設けられた細長い箱状の筐体16と、この筐体16にその開口部を閉塞させるように取り付けられた細長い板状の透光カバー17と、筐体16の中に収納されたユニット本体とで構成される。
【0033】
筐体16の材料は、紫外光の照射に対して耐久性があり、また紫外光が照射されても蛍光を発しない金属、樹脂などの物質であることが好ましい。例えば、金属であれば鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮などである。金属そのものであれば蛍光を発しないが、表面にコートされる防錆材によっては蛍光する場合があり、実際に紫外光を照射して蛍光の有無を確認して使用することが望ましい。樹脂を用いるならば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ナイロン、ABS、飽和および不飽和ポリエステルなどの汎用樹脂が採用可能である。樹脂においても同様に、添加される充填材や安定剤、顔料、UV吸収剤などから蛍光を発する場合があり、蛍光の有無を確認後採用することが好ましい。
【0034】
透光カバー17は、紫外光及び可視光が透過するガラス等の透明材料で形成されている。この透光カバー17の材質・構造は、用いられる紫外光LEDの波長を透過する材質であればよく、限定されないが、例えば鉄分を除去した透明度の高い白板ガラス、液晶表示素子向けの無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラスなどから選択することができる。
【0035】
検出ユニット12の中は、上下2つの部屋U、Vに分かれ、上の部屋Uには、透光カバー17を介して媒体Sに紫外光を照射する位置に、紫外光LED光源22を収納している。下の部屋Vには、媒体Sからの
紫外光によって発光した蛍光を入射する位置に、受光部24が設置されている。この受光部24は、その画像検出方向(+z方向)を透光カバー17に向けている。そして2つの部屋U、Vにまたがって、媒体Sの画像を結像するためのロッドレンズアレイ23が設置されている。ロッドレンズアレイ23は、受光部24に対面して配置され、媒体Sの蛍光画像を受光部24の感光面上に等倍の正立像として結像させるためのレンズ素子である。
【0036】
透光カバー17、ロッドレンズアレイ23、受光部24、紫外光LED光源22ともに、検出ユニット12の形状に合わせて、長さ方向(y方向)の寸法が厚さ方向(z方向)の寸法及び幅方向(x方向)の寸法に比してかなり長くなっている。
受光部24は、蛍光画像の検出素子とドライバ部とを一体化させたセンサICチップを配列し、これを基板上に実装したものである。ドライバ部は検出素子を駆動するためのバイアス電流を作成し供給する回路部分である。また、検出素子の光検出信号を読み取り鑑別処理するICチップ状の信号処理部33が設けられている。
【0037】
ロッドレンズアレイ23は、観測する画像の検出エリア(受光部24をロッドレンズアレイ23の一方の焦点としたときのロッドレンズアレイ23の他方の焦点)を、透光カバー17の外表面よりも所定距離外側に設定しており(
図1においてこの検出エリアをPで示す)、この検出エリアPから出てロッドレンズアレイ23の中心軸(光軸)を通る直線はz軸に平行となり、受光部24の感光面に到達する。
【0038】
以上の構成により、受光部24は、ロッドレンズアレイ23を介して、透光カバー17の外側に設定された検出エリアPに存在する画像の正立像を結像することができる。
本発明に用いられる受光部24の波長感度特性は、所望の波長域に対しては感度ができるだけ高く、逆に照射されたLEDの紫外光波長に対してはできるだけ感度が低いことが必要である。好ましい波長感度特性は、具体的には、可視光および赤外光領域(400nm〜1100nm)に感度を有し、波長350nm以下の短波長側に感度を持たない特性を有する。波長感度の傾斜は急峻なほど好ましく、具体的には、受光部24の最高感度波長が600〜1000nmの間に存在し、350nm以下の波長の光に対する感度が前記最高感度の5%以下、好ましくは3%以下である。
【0039】
受光部24の検出素子に用いられるフォトダイオードの材料には、通常の光センサに用いられるシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砥素、インジウムリン単結晶およびアモルファスシリコンなどが使用可能であるが、このうち可視光および赤外光に対しては高い感度を有しながら、350nmより短い短波長に対する感度を所望のレベルまで低くすることが容易に調整できることから、シリコンフォトダイオードが特に好ましい。
【0040】
またフォトダイオードの構造としては、PNフォトダイオード、PINフォトダイオード、ショットキバリアフォトダイオード、アバランシェフォトダイオードが知られているが、いずれの構造にても、350nm以下の短波長のフォト感度が十分に低ければ使用可能である。
通常のシリコンフォトダイオードは波長190nmから1100nm(紫外光から赤外光まで)幅広い波長域に感度を有しており、その波長感度はそれぞれのデバイス構造を工夫することで調整可能であることが知られている。
【0041】
例えばPNフォトダイオードの場合、光電子のキャリアがない空乏層の厚さを厚くして短波長の光がP層内で吸収され発生したキャリアを閉じこめることで短波長域の波長感度を調整することができる。PINフォトダイオードにおいてはI層の厚みを厚くすることやバイアス電圧を制御することで任意の短波長の感度を調整することが可能である。
さらにはフォトダイオードの表面に用いられる保護膜(図示せず)の材質を、通常用いられている酸化珪素に代えて、窒化珪素や酸化チタンなど、所望の短波長での遮光性を有する素材を採用することで、本発明に必要な350nmより短い短波長感度が小さい検出素子を得ることもできる。
【0042】
当然ながらこれらの検出素子は、前記のセンサICチップ内に設けられるフォトダイオードアレイやCCD素子においても適用が可能である。
ユニット本体内の上の部屋Uには、検出エリアPに向けて斜めに紫外光を照射することのできる細長い形状の紫外光LED光源22が設けられている。この紫外光LED光源22は、ユニット本体の長さ(y)方向に沿って、受光部24及びロッドレンズアレイ23等と平行な状態で筐体16に取り付けられている。
【0043】
この紫外光LED光源22は、
図2に概略示すように、実装基板20に紫外光を照射する複数の発光素子Tを所定間隔で搭載したものである。
発光素子Tが発光する紫外光は、波長が短くて発光強度が強いほど蛍光出力が大きく得られる。この発光素子Tは、好ましくは紫外光のピーク波長が250nm以上、350nm以下の紫外光の発光が可能なLED素子であり、所定の電極端子を備え、それらはワイヤーボンディング等の配線(
図2参照)によって基板20に接続されている。
【0044】
ピーク波長が250nm以上、350nm以下の発光素子Tとして、アルミニウム・ガリウム・インジウムなどの窒化物を発光用半導体として用いた250〜350nmにピーク波長を有するLED素子や、ダイヤモンドを発光半導体として用いた紫外光LED素子が発表されており、それらを使用することができる。
しかしながら、本発明に使用する紫外光LED素子には、上述の紫外光ピーク波長だけでなく、可視光や赤外の成分を含まない、もしくは可視光や赤外の成分の混在割合ができるだけ小さいことも要求されるので、あらかじめスペクトル強度を測定して、これらの特性を満足する紫外光LED素子を選択しなければならない。
【0045】
本発明の蛍光検出装置は、
図1に示した光学ラインセンサ装置に限定的に適用されるものではない。イ列えば光学スポットセンサ装置にも適用することができる。
図3は、光学スポットセンサ装置を示す断面図であり、
図12の中に現れる部材と同じ部材には同一の参照符号を付している。
光学スポットセンサ装置が光学ラインセンサ装置と異なる点は、検出エリアPがライン状でなくスポット状になっていることである。このため、光学スポットセンサ装置の検出ユニット13及びそれを構成する各部品は、必ずしも長さ方向(
図1における紙面に垂直なy方向)の寸法が厚さ方向(
図1におけるz方向)の寸法及び幅方向(
図1におけるx方向)の寸法に比して長い形状をなしているわけではない。
【0046】
この光学スポットセンサ装置においても、
図3に示すように、紫外光LED光源22の発光素子から出射された紫外光は、透光カバー17を透過し、媒体Sに照射される。媒体Sは、この照射光による励起に基づいて蛍光を発し、その蛍光は、受光部24によって検出される。なお、
図3では、
図1のロッドレンズアレイ23に対応する結像素子は受光部24の中に設置されているので、図には表れていない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例と比較例により本発明をさらに具体的に説明する。
紫外光LED光源、長尺体状のガラス製セルフォックレンズ(セルフォックは商標名である)、IC内蔵シリコンフォトダイオード素子を用意した。
紫外光LED光源は、発光素子を、長さ約200mmのプリント基板上に16個直線上に配列したものである。シリコンフォトダイオードも長さ約200 mm のプリント基板上に直線上に配列した。
【0048】
印刷された蛍光体の蛍光強度は、紙幣毎に異なるため、一枚の20ユーロ紙幣を基準媒体として固定して用いた。該媒体の表面に、紫外光LEDから紫外光を照射し、この蛍光発光を、ガラス製セルフォックレンズを介して、シリコンフォトダイオードからなる受光部に結像した。
実施例では、ユ一ロ紙幣の旗部、星部および印刷画像の無い下地部分の蛍光強度を測定し、従来の構成の測定結果と比較した。
【0049】
良く知られているように、20ユ一ロ紙幣の旗部は可視光の下では青色であるが、紫外光を当てると旗全体が緑色になり、旗中央部の星印は橙色になる。また、紙幣基材の印刷されていない下地部分は紫外光を当てると青色の蛍光を発する。
紫外光LED光源の発光素子は、発光ピークが365nmのものと、310nmのものとを用意した。
図4は、波長範囲250から700nmにおいて測定した、2つの発光素子の発光スペクトル強度(対数スケール)を示すグラフである。紫外光LEDに流す電流の値は20mAとした。このグラフから、365nmの発光素子と比べて、310nmの発光素子は可視光成分が大幅に少ないことがわかる。
【0050】
二種類の発光素子は、蛍光の強度が違うので、蛍光強度を示す蛍光信号出力の絶対値では比較できない。そこで、旗部の緑色蛍光と下地の青色蛍光との蛍光信号出力の比を表す蛍光強度比R1、および旗中央部の星印の橙色蛍光と旗部の緑色蛍光との蛍光信号出力の比を表す蛍光強度比R2を評価値とした。
実際の有価紙面の真偽判定においては、蛍光画像の認識に必要な蛍光強度があれば、蛍光強度自身よりも目印の特徴を高精度に検出できるかどうかを表す蛍光強度比のR1やR2などの方が重要である。
【0051】
さらにオプションとして、紫外光LED光源に装着する可視光カットフィルターを用意した。この可視光カットフィルターは、400nmよりも長い波長の光をカットする特性を持つ。
シリコンフォトダイオードには、実施例、比較例ともに、
図5に示すように、350nmから1100nmに感度を有するものを使用し、電荷蓄積時間は3.65m秒にセットした。
【0052】
紫外光LEDをカバーする透光カバーとして、いわゆる青板ガラスと、硼珪酸ガラスとを用意した。
またオプションとして、シリコンフォトダイオードもしくはセルフォックレンズに装着する紫外光カットフィルターを用意した。この紫外光カットフィルターは、410nmよりも短い波長の光をカットする特性を持つ。
【0053】
蛍光検出性能を評価するため、前記旗部の緑色蛍光と下地の青色蛍光の蛍光強度比R1、および旗中央部の星印の檀色蛍光と旗部の緑色蛍光の蛍光強度比R2を測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、比較例2は、365nmの紫外光LEDを使用し、さらに可視光カットフィルターと紫外光カットフィルターとを組み合わせた、従来の蛍光検出装置に近い構成となっている。旗部と下地の蛍光強度比R1=1.25、星印と旗部の蛍光強度比R2=1.32である。
310nmの紫外光LEDを採用し、これらの光学フィルターを用いない本発明の蛍光検出装置を用いた実施例4は、旗部と下地の蛍光強度比R1=2.55、星印と旗部の蛍光強度比R2=4.81である。
【0056】
実施例4は、R1、R2ともに比較例2よりもはるかに大きく、可視光カットフィルターや紫外光カットフィルターを用いなくとも、本発明の蛍光検出装置では、従来の装置に比べて、はるかに大きな蛍光画像のコントラストが得られ、蛍光画像の特徴を高精度に検出できることを示している。
また、実施例3が示すように、実施例4に紫外光カットフィルターを加えて、410nm以下の紫外光を徹底的に除去すると、蛍光強度比R1が大きくなり、蛍光画像の特徴をさらに高精度に検出できる。
【0057】
実施例2は、実施例4から珊珪酸ガラスを取り除いた構成となっている。これらの比較から、透光カバーとして硼珪酸ガラスを用いても蛍光信号出力の低下は僅かであり、R1およびR2もあまり変わらないことが分る。
実施例1は、実施例2に可視光カットフィルターと紫外光カットフィルターを装着した構成である。可視光カットフィルターによって紫外光に含まれる400nm以上の少量の可視光および赤外光を徹底的に除き、紫外光カットフィルターによって紙幣の反射光に含まれる410nm以下の紫外光を徹底的に除くと、R2がさらに大きくなっている。すなわち、これらのフィルターを付加することによって、蛍光画像の特徴を一段と高精度に検出できる。
【0058】
比較例3は、比較例2と比べて、波長310nmの紫外光LEDを使用している。しかしながら、紫外光を吸収する青板ガラスを使用しているために、R1はかえって低下し、1よりも小さくなっており、旗部が紙幣の下地部分に埋もれて識別しにくくなっている。
比較例1は、比較例2から可視光カットフィルターを除いた構成となっているが、R1、R2ともに低下し、とくにR1は1よりも小さくなり、旗部が紙幣の下地部分に埋もれて識別しにくくなっている。したがって、従来の装置では、目印の蛍光画像を識別するためには、可視光カットフィルターおよび紫外光カットフィルターがともに必要である。
【符号の説明】
【0059】
12、13 検出ユニット
17 透光カバー
22 紫外光LED光源
24 受光部
33 信号処理部
T 発光素子
S 有価証券、紙幣などの媒体