特許第6239954号(P6239954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239954成膜方法、絶縁基板の製造方法、及びモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239954
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】成膜方法、絶縁基板の製造方法、及びモジュール
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/54 20060101AFI20171120BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 31/0749 20120101ALI20171120BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 31/0445 20140101ALI20171120BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171120BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C23C14/54 D
   B32B37/00
   H01L31/06 460
   H01L31/04 420
   H01L31/04 530
   B32B7/02 104
   B32B15/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-246368(P2013-246368)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-105387(P2015-105387A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】古屋 英二
(72)【発明者】
【氏名】小山 良介
(72)【発明者】
【氏名】仁木 栄
(72)【発明者】
【氏名】柴田 肇
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−092858(JP,A)
【文献】 特開2007−266626(JP,A)
【文献】 特開平05−306460(JP,A)
【文献】 米国特許第04214015(US,A)
【文献】 特開2000−222707(JP,A)
【文献】 再公表特許第2003/045554(JP,A1)
【文献】 特開平07−258825(JP,A)
【文献】 特開2003−305601(JP,A)
【文献】 特開2010−135049(JP,A)
【文献】 特開2012−238789(JP,A)
【文献】 特開平05−006991(JP,A)
【文献】 特開2004−255511(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/039853(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
B32B 7/02
B32B 15/04
B32B 37/00
H01L 31/0445
H01L 31/0749
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に薄膜を形成する方法において、
前記基板を第1温度まで加熱した後、前記基板に前記薄膜の第1層を厚さ100nm〜1μmで成膜し、前記第1温度の加熱により前記基板上のガス化可能な不純物をガス化して前記第1層から追い出して前記第1層に第1のピンホールを形成し、
前記第1層が成膜された前記基板を洗浄することなく前記第1温度より低い第2温度まで冷却して、前記基板の線膨張係数と前記第1層の線膨張係数の違い及び内部応力により前記基板上に付着したダストを外側に押し出して前記第1層に第2のピンホールを形成し、
前記第1層の表面に前記薄膜の第2層を成膜して前記第1のピンホールと前記第2のピンホールを埋めることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
導電材料からなる基板に絶縁薄膜を形成する絶縁基板の製造方法において、
前記基板を第1温度まで加熱した後、前記基板に前記絶縁薄膜の第1層を厚さ100nm〜1μmで成膜し、前記第1温度の加熱により前記基板上のガス化可能な不純物をガス化して前記第1層から追い出して前記第1層に第1のピンホールを形成し、
前記第1層が成膜された前記基板を洗浄することなく前記第1温度より低い第2温度まで冷却して、前記基板の線膨張係数と前記第1層の線膨張係数の違い及び内部応力により前記基板上に付着したダストを外側に押し出して前記第1層に第2のピンホールを形成し、
前記第1層の表面に前記絶縁薄膜の第2層を成膜して前記第1のピンホールと前記第2のピンホールを埋めることを特徴とする絶縁基板の製造方法。
【請求項3】
前記基板は金属であることを特徴とする請求項2に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1温度は200〜300℃であり、前記第2温度は常温であることを特徴とする
請求項2または3に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項5】
導電材料からなる基板を第1温度まで加熱して前記基板に厚さ100nm〜1μmで成膜された第1層と、前記第1層が成膜された基板を洗浄することなく前記第1温度より低い第2温度まで冷却して前記第1層の表面に成膜された第2層とからなる絶縁薄膜が形成された絶縁基板と、
前記絶縁基板の前記絶縁薄膜の表面に設けられた接合部と前記絶縁薄膜の上層に設けられた電極部との間に異種材質の層を有する複数のセルと
を備え、
前記セルの電極部によって異なるセルの接合部に他方が接続することにより電気的に接続して前記複数のセルを直列に配置したことを特徴とするモジュール。
【請求項6】
前記モジュールは発電モジュールであることを特徴とする請求項5に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、絶縁基板の製造方法、及びモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや薄膜コンデンサなどの電子モジュールの中に使われている絶縁基板では、ガラスよりも強度を確保するため、特許文献1や特許文献2のように金属板の表面に絶縁材料を被膜しているものが用いられている。しかし、その金属板の表面に微細なダストが付着していると成膜した後からダストが取れてピンホールが生じてしまい、絶縁効果がなくなるという問題がある。
【0003】
その対策として、例えば、特許文献3には、絶縁基板上に、下部電極と半導体層と上部電極とからなる半導体素子と、該半導体素子を覆って絶縁する層間絶縁膜と、該層間絶縁膜を介して配される配線と、これらを覆う絶縁保護膜とを備えて構成される読み取り装置の製造方法が開示されている。この製造方法では、絶縁保護膜の成膜を2度に分けて行っており、第1層を成膜し、その後、第1層の表面に第2層が成膜される。この絶縁基板では、第1層が成膜された後、第2層が成膜される前に、ピンホールの原因となったダストを除去する洗浄工程が実行される。その後に第1層の上から第2層を成膜し、第1層に生じたピンホールを埋没させている。これにより、第1層の表面のダストを核にして形成されるピンホールの発生が回避されている。前記洗浄工程には、エアーガン等により噴出気流を絶縁基板に当てたり、純水やフロンその他の液体中で絶縁基板を超音波洗浄したり、正あるいは負の静電気を帯電させたガスやイオン等を用いたり、更に吸引によって絶縁基板に付着している塵等を除去するものが含まれる。
【0004】
しかしながら、前記洗浄工程は、気体や液体やイオン等の何らかの媒体を必要とするものであり、噴出気流を基板に向けて送風すること、液体中で絶縁基板を超音波洗浄すること、正あるいは負の静電気を帯電させたガスやイオン等を用いるために生成すること、および基板から全てのダストを吸引すること等の設備が必要であり、工程も複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−211711号公報
【特許文献2】実開昭61−62025号公報
【特許文献3】特開平5−6991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造工程を簡素化しつつ、品質の安定化を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明の成膜方法は、
基板に薄膜を形成する方法において、
前記基板を第1温度まで加熱した後、前記基板に前記薄膜の第1層を厚さ100nm〜1μmで成膜し、前記第1温度の加熱により前記基板上のガス化可能な不純物をガス化して前記第1層から追い出して前記第1層に第1のピンホールを形成し、
前記第1層が成膜された前記基板を洗浄することなく前記第1温度より低い第2温度まで冷却して、前記基板の線膨張係数と前記第1層の線膨張係数の違い及び内部応力により前記基板上に付着したダストを外側に押し出して前記第1層に第2のピンホールを形成し
前記第1層の表面に前記薄膜の第2層を成膜して前記第1のピンホールと前記第2のピンホールを埋めるようにした。
【0008】
この方法によれば、基板を第1温度まで加熱し、基板に薄膜の第1層を成膜することにより、不純物の液体を蒸発させて除去した状態で薄膜の第1層を基板に成膜できる。その後、第1層が成膜された基板を第2温度まで冷却することにより、基板の線膨張係数と薄膜の第1層の線膨張係数との違い、及び内部応力により、基板上に付着した固体のダストを外側に押し出すことができる。その後、第1層からダストを除去した状態で第1層の表面に第2層を成膜できる。これにより、第1層の不純物の液体及び固体のダストの除去により形成された窪みを第2層で埋めることができる。つまり、基板の周囲の温度を調整するだけの簡易な操作でピンホールが形成されていない基板を製造できる。したがって、製造工程を簡素化しつつ、品質の安定化を実現できる。
【0009】
また、前記課題を解決するための他の手段として、本発明の絶縁基板の製造方法は、
導電材料からなる基板に絶縁薄膜を形成する絶縁基板の製造方法において、
前記基板を第1温度まで加熱した後、前記基板に前記絶縁薄膜の第1層を厚さ100nm〜1μmで成膜し、前記第1温度の加熱により前記基板上のガス化可能な不純物をガス化して前記第1層から追い出して前記第1層に第1のピンホールを形成し、
前記第1層が成膜された前記基板を洗浄することなく前記第1温度より低い第2温度まで冷却して、前記基板の線膨張係数と前記第1層の線膨張係数の違い及び内部応力により前記基板上に付着したダストを外側に押し出して前記第1層に第2のピンホールを形成し
前記第1層の表面に前記絶縁薄膜の第2層を成膜して前記第1のピンホールと前記第2のピンホールを埋めるようにした。
【0010】
この方法によれば、基板を第1温度まで加熱し、基板に絶縁薄膜の第1層を成膜することにより、不純物の液体を蒸発させて除去した状態で絶縁薄膜の第1層を基板に成膜できる。その後、第1層が成膜された基板を第2温度まで冷却することにより、基板の線膨張係数と絶縁薄膜の第1層の線膨張係数との違い、及び内部応力により、基板上に付着した固体のダストを外側に押し出すことができる。その後、第1層からダストを除去した状態で第1層の表面に第2層を成膜できる。これにより、第1層の不純物の液体及び固体のダストの除去により形成された窪みを第2層で埋めることができる。つまり、基板の周囲の温度を調整するだけの簡易な操作でピンホールが形成されていない絶縁基板を製造できる。したがって、製造工程を簡素化しつつ、品質の安定化を実現できる。
【0011】
前記基板は金属であることが好ましい。この方法によれば、ガラス基板と比較して強度を向上させた絶縁基板を製造できる。また、平面に加えて、平面以外の面を有する絶縁基板も形成できる。
【0012】
前記第1温度は200〜300℃であり、前記第2温度は常温であることが好ましい。この方法によれば、基板の周囲の温度を第1温度または第2温度に調整するだけの簡易な操作で、基板の線膨張係数と絶縁薄膜の第1層の線膨張係数との違い、及び内部応力により、第1層中の不純物の液体や基板上に付着した固体のダストを確実に外側に押し出すことができる。したがって、製造工程を簡素化しつつ、品質の安定化を実現できる。
【0013】
前記第1層の厚さは、100nm〜1μmであり、第1層により不純物の液体やダスト全体が覆われて第1層の内部に不純物の液体やダストが閉じ込められることを回避できるので、基板上に付着した不純物の液体やダストを確実に外側に押し出すことができる。したがって、基板上のダストを確実に除去した後に、第2層を成膜することで、ピンホールの無い絶縁薄膜に仕上げることができ、製品の不良が減る。
【0014】
また、本発明を利用して作られた絶縁基板を用いて製造される電子モジュールについては、導電材料からなる基板を第1温度まで加熱して前記基板に厚さ100nm〜1μmで成膜された第1層と、前記第1層が成膜された基板を前記第1温度より低い第2温度まで冷却して前記第1層の表面に成膜された第2層とからなる絶縁薄膜が形成された絶縁基板と、前記絶縁基板の前記絶縁薄膜の表面に設けられた接合部と前記絶縁薄膜の上層に設けられた電極部との間に異種材質の層を有する複数のセルとを備え、前記セルの電極部によって異なるセルの接合部に他方が接続することにより電気的に接続して前記複数のセルを直列に配置した。
【0015】
この構成によれば、セルを電気的に直列に接続して複数配置でき、短絡を生じることなく前記複数のセルの数に対応した性能を確保できる。
【0016】
前記モジュールは発電モジュールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板を第1温度まで加熱し、基板に絶縁薄膜の第1層を成膜することにより、不純物の液体を蒸発させて除去した状態で絶縁薄膜の第1層を基板に成膜できる。その後、第1層が成膜された基板を第2温度まで冷却することにより、基板の線膨張係数と絶縁薄膜の第1層の線膨張係数との違い、及び内部応力により、基板上に付着した固体のダストを外側に押し出すことができる。その後、第1層からダストを除去した状態で第1層の表面に第2層を成膜できる。これにより、第1層の不純物の液体及び固体のダストの除去により形成された窪みを第2層で埋めることができる。つまり、従来のように、気体や液体やイオンのような媒体を使用したり発生させたりする装置の必要が全くなく、基板の周囲の温度を調整するだけの簡易な操作でピンホールが形成されていない絶縁基板を製造できる。したがって、製造工程を簡素化しつつ、品質の安定化を実現できる。また、基板の加熱機構は、通常の成膜装置には通常具備されていることが多いので、新たに特別な装置を取り付ける必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)から(f)は本発明の絶縁基板製造時の各状態を示す図。
図2】本発明の絶縁基板の製造方法が適用された発電モジュールの断面の模式図を示す。
図3】ピンホールが発生した場合の、従来の絶縁基板の製造方法が適用された発電モジュールの断面の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に従って説明する。なお、以下の説明の「絶縁基板」とは、金属基板に絶縁薄膜を形成したものを示す。
【0020】
図3は、従来の絶縁基板の製造方法が適用された発電モジュール(以下、モジュールとする。)1を示す。モジュール1は、絶縁基板10の上に設けられた複数のセル15を備えている。
【0021】
絶縁基板10は、基板11と絶縁薄膜12とを備えている。基板11は、金属からなっている。本実施形態における基板11は、SUS430である。絶縁薄膜12は、1層のSiOからなっている。
【0022】
複数のセル15は、互いに間隔をあけて配置されている。セル15は、絶縁基板10の絶縁薄膜12側に接合部16を備えている。接合部16は、モリブデン薄膜からなっている。接合部16の上には、CIGS層17、バッファ層18、透明電極層19がこの順で積層されている。モジュール1では、複数のセル15が電気的に直列に配置されるように、1つのセル15と別のセル15とが透明電極層19により接続されている。従来方法で絶縁薄膜7μmの膜厚では、絶縁薄膜12にピンホール24が形成され、絶縁薄膜12の上に接合部16として堆積される導電材料のモリブデンがピンホールを埋めることにより、ピンホール内のモリブデンを通じて、図中の点線矢印のように離れて配置された2つのセル15の接合部16、16間が導通していた。
【0023】
次に、本発明の絶縁基板の製造方法が適用されたモジュールを図2に示す。絶縁薄膜12は、第1層13および第2層14の2回に分けて成膜される。第1層13は、基板11の表面に成膜され、第2層14は第1層13の表面全体に成膜されている。第1層13は、成膜中に付着する可能性のあるダストのうち、最も大きいものの径の半分程度の100nm〜1μmの厚さに成膜される。本実施形態では、500nmである。絶縁膜12は、3μm〜30μmの厚さに成膜される。本実施形態では、7μmである。
【0024】
本発明の絶縁基板10の製造方法について図1で説明する。これは、下から成膜しているものを示すので、図2とは上下が逆になる。図1(a)は基板11にダスト22や、水分、油分のようなガス化可能な不純物23が付着している状態を示す。この状態の基板11を200℃(水分や油分の蒸発温度より高い第1温度)に加熱し、図1(b)に示すように、基板11の表面に第1層13を成膜する。その際、図1(c)に示すように、前記加熱によって、第1層13に含まれるガス化可能な不純物23はガス化して第1層13から追い出される。その後、第1層13にピンホール24が形成される。第1層13は、ダスト22が位置する領域以外の領域に成膜される。
【0025】
次に、第1層13が成膜された基板11を常温(第2温度)まで冷却する。これにより、図1(d)及び(e)に示すように、基板11の線膨張係数と絶縁薄膜12の第1層13の線膨張係数との違い、及び内部応力により、基板11上に付着したダスト22は外側に押し出される。その後、第1層13にピンホール25が形成される。次に、図1(f)に示すように、第1層13の表面全体に第2層14を成膜する。このようにして、基板11では、ダスト22やガス化可能な不純物23を除去して発生させたピンホール24,25が第2層14により埋められ、基板11の表面にピンホールの無い絶縁薄膜12が成膜される。つまり、基板11の周囲の温度を調整するだけの簡易な操作で絶縁基板10を製造できる。
【0026】
本発明によれば、ピンホール24,25が第2層14で埋められるので、接合部16、16間の導通が回避され、製造工程を簡素化しつつ、品質の安定化を実現できる。特に、セル15を電気的に直列に接続して複数配置でき、短絡を生じることなく複数のセル15の数に対応した性能を確保できる。
【0027】
また、基板11が金属材料からなっているので、ガラス基板と比較して強度を向上させた絶縁基板10を製造できる。また、平面に加えて、平面以外の面を有する絶縁基板10も形成できる。
【0028】
基板11の周囲の温度を第1温度または第2温度に調整するだけの簡易な操作で、基板11の線膨張係数と絶縁薄膜12の第1層13の線膨張係数との違い、及び内部応力により、第1層13中のガス化可能な不純物23の液体や基板11上に付着した固体のダスト22を確実に外側に押し出すことができる。
【0029】
第1層13の厚さを100nm〜1μmに成膜するので、第1層13によりガス化可能な不純物23の液体やダスト22全体が覆われて第1層13の内部にガス化可能な不純物23の液体やダスト22が閉じ込められることを回避できるので、基板11上に付着したガス化可能な不純物23の液体やダスト22を確実に外側に押し出すことができる。本発明は、どの成膜方向に対しても適用が可能であるが、基板11の成膜する面を下向き、もしくは縦、あるいは斜め下向きにして成膜するのが好ましい。そのようにすると、外側に押し出されたダスト22が重力で落下するため、より確実に基板11からダスト22を除去できる。また、そのような向きで成膜すれば、基板11の線膨張係数と絶縁薄膜12の第1層13の線膨張係数との違いによってピンホール25の径がダスト22の径より広がる方向に作用した場合でも、ダスト22がピンホール25から剥離して落下することにより除去できる(「押し出し」とは反対の作用)。
【0030】
(実施例)
(実験1)
表1に示すように、基板としてSUS430を使用し、絶縁薄膜としてSiOを使用して、イオンプレーティング法を用いて、2種類の絶縁基板を作製した。そのうちの1つは、本発明の絶縁基板10の製造方法を用いて作製したものであり、もう1つは従来の製造方法により作製したものである。すなわち、一方はピンホール対策が施されており、他方はピンホール対策が施されていない。そして、作製した絶縁基板の絶縁性能を評価するため、SUS430基板の上に15mm×15mmサイズのモリブデン薄膜からなる9つの電極をスパッタにより成膜し、両者の絶縁性能を評価した。その結果を表2に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すように、比較例の絶縁基板では、SiO薄膜は9つの電極中1つのみ絶縁が達成されているが、実施例の絶縁基板では、SiO薄膜は9つの電極中全ての電極で絶縁が達成されていることが確認できた。これにより、実施例において、本願発明の効果を奏することが確認できた。
【0034】
(実験2)
基板11としてSUS430を使用し、絶縁薄膜12としてSiOを使用して、イオンプレーティング法を用いて、本発明の絶縁基板10の製造方法により絶縁基板10を作製した。そして、作製した絶縁基板10を用いて製造した発電モジュール1の性能を評価するため、後述する比較例1及び2の発電モジュールとの比較を行った。
【0035】
(サンプルの作製)
第1段階として、基板11を200℃に加熱し、絶縁薄膜12の第1層13を500nmの厚さで基板11の表面に成膜した。
第2段階として、常温まで冷却した。
第3段階として、基板11を200℃に再度加熱し、第1層13の表面に第2層14を成膜した。第1層13と第2層14とを合わせた絶縁薄膜12の厚さが7μmとなるように成膜した。作製した絶縁基板10を用いて発電モジュール1を作製した。
【0036】
(比較例1のサンプルの作製)
基板としてガラスを使用し、絶縁薄膜としてSiOを使用して、イオンプレーティング法を用いて、従来の製造方法により絶縁基板を作製した。作製した絶縁基板を用いて発電モジュールを作製した。
【0037】
(比較例2のサンプルの作製)
基板としてSUS430を使用し、絶縁薄膜としてSiOを使用して、イオンプレーティング法を用いて、従来の製造方法により絶縁基板を作製した(作製した絶縁基板はピンホール対策が施されていない。)。作製した絶縁基板を用いて発電モジュールを作製した。
【0038】
【表3】
【0039】
各サンプルの基板とセルのモリブデン薄膜との間の抵抗値を測定した。測定結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表4に示すように、比較例1の発電モジュールでは、基板とセルのモリブデン薄膜との間の抵抗値は、測定装置の測定範囲をはるかに上回る値となり、測定不能(無限大)であった。比較例2の発電モジュールでは、基板とセルのモリブデン薄膜との間の抵抗値は、120Ωであった。実施例の発電モジュール1では、基板11とセル15のモリブデン薄膜16との間の抵抗値は、10MΩであった。以上の結果より、基板として導電材料でないガラスを使用した比較例1の発電モジュールでは、抵抗値が極めて大きくなっていることが分かる。そして、実施例のピンホール対策が施された発電モジュール1では、抵抗値は、ピンホール対策が施されていない比較例2の発電モジュールにおける抵抗値よりもはるかに大きな値となっており、本願発明の効果を奏することが確認できた。なお、いずれの発電モジュールにおいても、光の電力変換効率は、実用に耐え得る範囲内であり、実施例の発電モジュールについて特に問題は生じない。
【0042】
なお、本発明の絶縁基板10の製造方法は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、基板11は、SUS430以外であってもよい。また、第1層13と第2層14とは異なる材料であってもよい。また、モジュール1のセル15の数は、6つ以外であってもよい。
【0043】
前記実施形態では、イオンプレーティング法を挙げたが、真空成膜一般(スパッタリング・真空蒸着・CVD・PVD等)に適用可能である。また、適用する基板として、ピンホールを嫌う絶縁薄膜やバリア膜を成膜する場合が特に有効である。基板が金属薄板やプラスチックフィルムである場合、Roll to Rollプロセス内で、第1段階の加熱ロールで薄く成膜(第1層)し、第2段階の冷却ロールで冷却し、第3段階の加熱ロールで目的とする膜厚まで膜(第2層)を成膜するような工程にも適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 発電モジュール
10 絶縁基板
11 基板
12 絶縁薄膜
13 第1層
14 第2層
15 セル
16 接合部(モリブデン薄膜)
17 CIGS層
18 バッファ層
19 透明電極層
22 ダスト
23 不純物
24 ピンホール
25 ピンホール
図1
図2
図3