(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度制御フィードフォワード回路及び前記温度制御フィードバック回路のそれぞれの入出力間の遅延時間は、前記光出力制御フィードフォワード回路及び前記光出力制御フィードバック回路の入出力間の遅延時間のそれぞれより小さい、
請求項2に記載の光信号増幅装置。
前記温度制御フィードバック回路は、前記注入電流の増減量に対する前記光アンプの温度変化と負の相関を有する伝達関数を備え、前記伝達関数を参照して、前記参照電流の増減量に対応する前記光アンプの温度変化を算出する、
請求項2から5のいずれかに記載の光信号増幅装置。
【背景技術】
【0002】
近年の通信トラフィック量の爆発的増大により、設備センタとユーザ間を接続するアクセスネットワークにはより高い高速性が求められている。また同時に、既存のサービスに比べてサービス提供価格を上昇させないための高い経済性も求められている。この高速性と経済性を両立可能なアクセスネットワークシステムとしてPON(Passive Optical Network)がある。
【0003】
PONは光ファイバを用いた光信号の変調に基づくネットワークであり、従来のメタル配線を用いたネットワークよりも高い高速性を得ることができる。また、PONでは、設備センタに収容される光加入者線終端盤(以下OSU:Optical subscriber unit)1枚あたりに対し、光ファイバ線路途中に配置された光スプリッタによる光分岐のみによって光回線終端装置(ONU:Optical network unit)を介して多ユーザを収容することができることから、経済性にも優れたネットワークといえる。
【0004】
一方、多ユーザ収容のために光ファイバの分岐を行うと、その際に発生する分岐損により、設備センタに収容可能なユーザまでの距離(アクセス可能距離)を短縮させてしまう。このアクセス可能距離の短縮は、ユーザ分布に合わせて多くの設備を密に配置しなければならないことを意味する。これは設備投資を増加させ、結果としてPONの持つ優れた特長の一つである経済性を損なってしまう。従って、1つのOSUに対して多ユーザを収容してもアクセス可能距離を短縮させないような工夫が必要である。
【0005】
この課題を解決する方法として、強度が減衰した光バースト信号を光増幅器によって増幅させる方法がある。これによって、アクセス可能距離を長延化することができ、より経済性に優れたアクセスネットワークを構築することができる。アクセスネットワークに用いられる光アンプには、一般的に応答速度が早く、価格も低廉な半導体光アンプ(SOA:Semiconductor optical amplifier)がよく用いられる。
【0006】
この光増幅器を用いてアクセスネットワークを長延化した例が特許文献1である。この発明はSOA、熱電温度コントローラ(TEC:Thermo electric controller)、可変光アッテネータ(VOA:Variable optical amplifier)の3つの構成要素からなる。特に上りバースト信号におけるアンプへの入力パワーは、ONUの設置距離や通信用レーザの個体間毎にパワーが大きく異なるため、SOAの前段でパワーを検出し、フィードフォワード的にVOAの挿入損失量を増減させる。このことによって増幅された信号はVOA段でパワーが一定になるよう、バースト信号毎に自動レベル制御(ALC:Auto level control)される。
【0007】
ALCではSOAへの注入電流を一定、すなわちSOAのゲインを一定とし、SOAの外部に接続された可変光アッテネータの挿入損失量を入力光パワーに応じて増減させ、出力段での光パワーを一定にしている。この場合、フィードフォワード的に入力光パワーを監視し、後段の可変光アッテネータの挿入損失量を決定するだけであるから制御系が単純となるため、安定かつ高速に出力パワーを制御することができる。この機構によって、様々な入力パワーを有するバースト信号を増幅し、かつ一定の出力パワーで光増幅してシステムの長延化を実現することができる。
【0008】
しかしながら該発明の構成では経済性の点で2点課題がある。1点目の課題はペルチェ効果を利用した熱電温度コントローラ(TEC)を付加しなければならない点である。SOAによって入力光を増幅するためには、SOAに対して電流を注入し、キャリアの反転分布を発生させて入力光をトリガとする誘導光を発生させる必要がある。しかしながらこの時、注入電流に起因する抵抗損が発生し、結果としてSOAの温度ゆらぎが生じる。この温度ゆらぎはSOAの光増幅の不安定化につながる。このことを防止するためにTECの実装がなされるが、これは光アンプ価格の上昇、及びTEC機能発現に要する消費電力の上昇を招く。
【0009】
また2点目の課題は、フィードフォワード制御の対象であるVOAを付加しなければならない点である。このALC用のVOAの実装は制御安定性の面で非常に有利ではあるものの、高価であるため光アンプ全体に対して価格の更なる上昇を招く。これらのTEC、VOAの実装に伴う光アンプの高コスト化は、長延化によってアクセスシステム全体の低コスト化を図るという目的と照らし合わせると望ましくない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0024】
図1に、本発明の実施形態に係る光信号増幅装置の模式図を示す。本実施形態に係る光信号増幅装置は、SOA31と、温度制御ループ30と、光出力制御ループ20とを備える。出力光制御ループ20は、光出力制御FF(Feed Forward)回路21と、光出力制御FB(Feed Back)回路22を備える。光出力制御FF(Feed Forward)回路21は、光出力制御フィードフォワード回路として機能する。光出力制御FB(Feed Back)回路22は、光出力制御フィードバック回路として機能する。温度制御ループ30は、温度制御FB回路32と、温度制御FF回路33を備える。温度制御FB回路32は、温度制御フィードバック回路として機能する。温度制御FF回路33は、温度制御フィードバック回路として機能する。
【0025】
分岐部41は、光信号増幅装置へ入力した光信号を分岐する。分岐部41は、例えば光分岐器である。入力光は、分岐部41の分岐率に応じて分岐され、一方がSOA31に入力される。SOA31に入力される光信号の電力は、P
in_SOAである。
分岐部41で分岐された入力光の他方が、入力モニタ用光信号として光出力制御FF(Feed Forward)回路21に入力される。入力モニタ用光信号の電力は、P
in_mである。入力モニタ用光信号の電力P
in_mは、例えば入力光電力P
inの1%である。
【0026】
SOA31は、入力された電力がP
in_SOAである光信号を、注入電流I
SOAの量に応じて増幅して、電力P
out_SOAである光信号を出力する。SOA31の入力光の電力P
in_SOAと、出力光の電力P
out_SOAの間のゲインはG
SOAである。また、SOA31の出力光には、ASE(Amlified Spontaneous Emission)ノイズN
ASEが含まれる。
【0027】
分岐部42は、分岐部42の分岐率に従って、SOA31の出力光は、分岐部42で出力光信号と出力モニタ用光信号に分岐される。ここで、SOA31の出力光の電力はP
out_SOAであり、出力光信号の電力はP
outであり、出力モニタ用光信号の電力はP
out_mである。
【0028】
分岐部42は、例えば光分岐器である。出力モニタ用光信号の電力P
out_mが光出力制御FB回路22に入力される。出力モニタ用光信号の電力P
out_mは、例えば出力光信号の電力P
outの1%である。
【0029】
光出力制御FB回路22には、出力電力参照値P
refが入力される。ここで、出力電力参照値P
refは、出力光の電力の目標値である出力電力目標値を、分岐部42の分岐率のうち、光出力制御FB回路22へ入力される光の分岐率で割った値である。そのため、出力電力参照値P
refと、出力モニタ用光信号の電力P
out_mが等しければ、出力電力目標値と出力光信号の電力P
outは等しい。
【0030】
光出力制御FF回路21の出力である光制御ループフィードフォワード信号V
LFFは、温度制御ループ30の前段である温度制御FF回路33に入力される。一方で、光出力制御FB回路22の出力である光制御ループフィードバック信号V
LFBは、温度制御ループ30の後段である温度制御FB回路32に入力される。この構成により、内側に時定数の短い温度制御ループ30、外側に比較的時定数の長いバースト信号毎の特性変動を吸収する光出力制御ループ20を効率的に構築できる。ただし、温度変動の時定数が比較的短い場合などにおいては、この構成によらず自由な構成とすることができる。
【0031】
SOA31の温度は、入力光バースト信号の周期に関わらず電流注入される限り常に変動するため、本来、温度制御ループ30の時定数はいかなる値でも良い。ただし温度制御ループ30は光信号増幅装置全体の応答時間のボトルネックとなる構成であるため、光出力制御ループ20の時定数と同程度か、短くなるように設定すれば、より高い温度安定効果を得ることができる。そのため、温度制御FF回路33及び温度制御FB32回路のそれぞれの入出力間の遅延時間は、光出力制御FF21回路及び光出力制御FB22回路のそれぞれの入出力間の遅延時間より小さくなるように設定する。つまり、温度制御FF回路33及び温度制御FB32回路のそれぞれの時定数は、光出力制御FF21回路及び光出力制御FB22回路のそれぞれの時定数より小さい。ただし、温度変動による特性変動の時定数が短くなるように調整された構造(ヒートシンクを設けるなど)では、温度制御ループ30の時定数を必ずしも光出力制御ループ20の時定数よりも短くする必要はない。
【0032】
(温度制御ループ)
温度制御FF回路33は、SOA31に注入電流I
SOAを供給し、注入電流I
SOAによるSOA31の温度変動を算出するための参照電流kI
SOAを出力する。参照電流kI
SOAは、注入電流I
SOAに応じた量である。温度制御FF回路33は、光制御ループフィードフォワード信号V
LEFが示す注入電流I
SOAから、温度制御FB回路32からの温度制御ループフィードバック信号V
TFBが示す光アンプ31の注入電流I
SOAの増減量を減算した注入電流I
SOAを光アンプ31に供給する。
【0033】
温度制御FB回路32は、SOA31に注入電流I
SOAが入力されることによるSOA31の温度変化によって、出力光の電力P
outが変動しないようにする。具体的には、温度制御FB回路32は、参照電流kI
SOAの増減から光アンプ31の温度変化を算出し、光アンプ31の温度変化を抑制するように、温度制御FF回路33の供給する注入電流I
SOAを増減させる。温度制御FB回路32は、光出力変動を除去するための光出力制御ループ信号V
LFBが示す光アンプ31の注入電流I
SOAの変化量から、参照電流kI
SOAの増減から算出した光アンプ31の温度変化を抑制するための注入電流I
SOAの変化量を減算することによって、光アンプ31の温度変化を抑制する注入電流I
SOAの増減量を算出する。
【0034】
まず温度制御ループ30におけるSOA31での温度変動の吸収メカニズムについて述べる。SOA31のゲインG
SOAは、SOA31への入力光電力P
in_SOA、及び注入電流I
SOAを用い、以下の関係式群の式(1)によって記述される。
【0035】
【数1】
ただし、g
0:飽和ゲイン、P
s:飽和入力電力である。
【0036】
飽和ゲインg
0及び飽和入力電力P
sは次式で表される。
【数2】
【数3】
ただし、V:バイアス電圧、Γ:キャリア閉じ込め係数、σ
g:ゲイン作用断面積、N
0:真性キャリア密度、ν:入力光波長、σ
m:導波実効断面積、τ
c:キャリア寿命である。
【0037】
ここで、式(2)のSOA31への注入電流I
SOAは、次式を用いて求めることができる。
【数4】
ただし、q:電気素量、d:活性領域厚、L:活性領域長、w:活性領域幅、n:励起キャリア密度、A:非発光再結合係数、B:自然発光再結合係数、C:非発光オージェ再結合係数である。
【0038】
式(4)のSOA31における励起キャリア密度nは、次式を用いて求めることができる。
【数5】
ただし、Nc:伝導帯実効キャリア密度、E
c:伝導帯準位、E
f:フェルミ準位、k
B:ボルツマン定数、T:絶対温度である。
【0039】
式(5)のSOA31における伝導帯実効キャリア密度Ncは、次式を用いて求めることができる。
【数6】
ただし、m
e*:電子有効質量、h:プランク定数である。
【0040】
SOA31のデバイス温度Tが上昇すると、SOA31内で伝送帯へ励起されるキャリア密度が増えるため(式(5),式(6))、注入電流I
SOAの量も増加し(式(4))、この時の発熱によってデバイス温度Tは更に上昇する。このデバイス温度Tの増加は、電流の注入が起因であるため極めて短い時定数で変動し、SOA31の感度を不安定にさせる要因となる。従って、本来この系においては、TECを用いた一定温度制御が必要である。
【0041】
温度制御ループ30では、光出力制御ループ20の制御する光アンプ31への注入電流I
SOAの増減量を用いて光アンプ31の温度変化を算出し、当該温度変化に依存する光アンプ31の出力光信号の電力の変動を抑制するように、光出力制御ループ20の制御する光アンプ31への注入電流量を制御する。具体的には、温度制御ループ30は、温度制御FB回路32及び温度制御FF回路33を用いて、温度変化によって出力光の電力P
outが変動しないように、注入電流I
SOAを変化させる。温度制御FB回路32には、温度制御FF回路33からの参照電流kI
SOA及び光出力制御FB回路22からの光制御ループフィードバック量I
LFBが入力される。
【0042】
温度制御FB回路32は、参照電流kI
SOAの増減から求めた注入電流I
SOAの増減量を計算する。温度制御FB回路32は、光制御ループフィードバック量I
LFBから注入電流I
SOAの増減量を減算して、温度制御ループフィードバック信号V
TFBとして温度制御FF回路33に出力する。
【0043】
温度制御FF回路33には、光出力制御FF回路21からの光制御ループフィードフォワード信号V
LFF及び温度制御FB回路32からの温度制御ループフィードバック信号V
TFBが入力される。温度制御FF回路33は、SOA31への注入電流I
SOA及び温度制御FB回路32へ入力する参照電流kI
SOAを出力する。
【0044】
温度制御FB回路32は、この短時間で揺らぐSOA31のデバイス温度Tの変動を参照電流kI
SOAの変動でモニタする。温度制御FF回路33でのフィードフォワード量(FF量)である参照電流kI
SOAの量は、任意である。ただし、参照電流kI
SOAの量は、注入電流I
SOAの量に応じて決まるようにする。例えば、参照電流kI
SOAの量は、注入電流I
SOAの量に比例するようにし、適当な係数kを乗じて参照電流kI
SOAとする。参照電流kI
SOAの量は、例えば注入電流I
SOAの1%である。本実施形態では、参照電流kI
SOAの量が、注入電流I
SOAの量に比例する場合の例を示すが、参照電流kI
SOAの量は、任意の関数と、注入電流I
SOAの量から決まるとしてもよい。この時、モニタ量は電流値でも電圧値でもよく、注入電流I
SOAの変動比率さえモニタできれば良い。例えば、温度制御FB回路32は、単位時間あたりの参照電流kI
SOAの電流量がxx%変動したことを検出する。
【0045】
この参照電流kI
SOAのモニタ量を、注入電流I
SOAの電流変動の時定数程度で温度制御FB回路32に負帰還すれば、TECなしで安定な温度制御が可能になる。例えば注入電流I
SOAが上昇した場合、SOA31のデバイス温度Tが上昇したということであるから、注入電流I
SOAの変化量が負になるように、温度制御FB回路32から温度制御FF回路33へ入力される。注入電流I
SOAが減少した場合は逆のプロセスにより一定温度になるように制御される。
【0046】
この温度制御ループ30の時定数は、注入電流I
SOAの変動や、SOA31の構成材料の比熱・熱抵抗を元に決定されるが、概ね数百ナノ秒〜数マイクロ秒程度になるように設定すれば、TECなしで安定な温度制御を実現でき、SOA31の感度を一定に保つことができる。
【0047】
図2は
図1における温度制御ループ30の一例である。この例では温度制御FF回路33は、SOA31の駆動電流供給に必要なドライバ回路331を有し、温度制御FB回路32は、適当な温度補償回路321を有している。ドライバ回路331からは注入電流I
SOAを供給するが、その際に注入電流I
SOAの一部の電流量又は注入電流I
SOAに比例した電流を参照電流kI
SOAとして温度補償回路321に入力している。
図2では、温度補償回路321で参照電流kI
SOAをモニタする場合の例を示すが、本発明はこれに限定されない。例えば、SOA31の注入電流I
SOAの電流注入線路に微小抵抗(ミリ〜マイクロΩオーダ)を挿入し、その両端の電位差をモニタ量として温度補償回路321に入力する等の構成を用いてもよい。
【0048】
温度補償回路321は参照電流kI
SOAの入力に対し、負の相関を有する出力を実現するような伝達関数を有する。つまり、温度補償回路321は、注入電流I
SOAの増減量に対するSOA31の温度変化と負の相関を有する伝達関数を備え、その伝達関数を参照して、参照電流kI
SOAの増減量に対応するSOA31の温度変化を算出する。そして、温度補償回路321は、SOA31の温度変化に依存するSOA31の出力光信号の電力の変動を抑制する温度制御ループフィードバック信号V
TFBを出力する。そのため、注入電流I
SOAの温度依存性は、SOA31の出力光の電力P
out_SOAの注入電流依存性の温度特性とは負の相関を示す。
【0049】
温度補償回路321の形態には様々のものが考えられるが、例えばバイポーラトランジスタを用いたNOT回路を用いれば、参照電流kI
SOAの増減とは逆の振る舞いをするような出力を得ることができる。NOT回路は、例えば、エミッタ接地NPN型トランジスタを用い、コレクタに正電圧を供給し、ベースに参照電流kI
SOA入力を入力するような構成とすることが例示できる。
【0050】
この時の温度補償回路321の伝達関数はトランジスタの等価回路モデルから表現されるが、このときSOA31の想定動作温度域においてデバイス温度Tに無依存であるか又はほぼ無依存になるように温度制御FB回路32全体の伝達関数G
t,fbを決定すれば良い。例えば、温度制御FB回路32は、光アンプ31への注入電流I
SOAの温度依存性と逆の特性を持つ伝達関数G
t,fbを持つ回路、すなわち前述したNOT回路がSOA31の温度特性を打ち消すような構成になるような回路を配置すれば、温度変動に伴うゲイン変動を抑制することができる。なお、SOA31の想定動作温度域は、例えば、100℃から200℃と見積もることができる。
【0051】
本実施形態では、光制御ループフィードフォワード信号V
LFF及び温度制御ループフィードバック信号V
TFBは別々に温度制御FF回路33に入力される例を示した。しかし、温度制御FF回路33への入力前に、光制御ループフィードフォワード信号V
LFF及び温度制御ループフィードバック信号V
TFBが示す注入電流I
SOAの増減量を計算した後、注入電流I
SOAの量を温度制御FF回路33に入力してもよい。その際、例えばオペアンプを用いた2入力差動増幅回路を構成することにより、VTFBとkISOAの2つを入力値としてその差分に当たる出力を温度制御FF回路33に入力すれば、簡便な構成とすることができる。その際、2入力差動増幅回路に対し温度補償機能が備わるような特性を持つトランジスタを用いれば、より高い温度補償効果を有する温度制御を付加的に実現することができる。
【0052】
(光出力制御ループ)
図3に、本実施形態に係る出力光制御ループ20の一例を示す。出力光制御ループ20は、入力光信号の電力P
in及び出力光信号の電力P
outに基づいて、出力光信号の電力P
outが出力電力目標値と等しくなるように、光アンプ31への注入電流I
SOAの量を制御する。
【0053】
光出力制御FF回路21は、入力光信号の一部の電力値であるP
in_mから光アンプ31に入力された入力光信号P
in_SOAの電力値を算出し、光アンプ31から出力される出力光信号の電力P
outが出力電力目標値と等しくなるように、光アンプ31への注入電流I
SOAの量を制御する。光出力制御FF回路21は、光アンプ31への注入電流I
SOAの量を示す光制御ループフィードフォワード信号V
LEFを温度制御FF回路33に出力する。
【0054】
光出力制御FB回路22は、出力電力参照値P
ref及び出力光信号の一部の電力値である出力モニタ用光信号の電力P
out_mが入力され、光制御ループフィードバック信号V
LFBを出力する。光制御ループフィードバック信号V
LFBは、温度制御FB回路32に入力され、出力電力参照値P
refから出力モニタ用光信号の電力P
out_mを減算した値がゼロとなるように、光アンプへの注入電流量I
SOAを制御する。出力電力参照値P
refから出力モニタ用光信号の電力P
out_mを減算した値がゼロとなる場合、出力電力目標値と出力光信号の電力値P
outとは等しい。また、光出力制御FB回路22は、注入電流I
SOAを増減させる光出力制御ループフィードバック信号V
LFBを温度制御FB回路32に出力する。
【0055】
ここで、温度以外の変動要因であるバースト光入力信号の電力P
inの変動は、
図3の出力光制御ループ20により抑制され、出力光信号の電力P
outが一定の出力になるように制御される。
【0056】
光出力制御FF回路21及び光出力制御FB回路22に要求される応答速度は、通信速度や帯域割当周期にもよるが、例えば、数十μ秒〜100μ秒以下であれば、遅延なく温度制御FF回路33へ制御量を引き渡すことができる。引き続いて光出力制御FF回路21で検出された入力バースト信号のピーク値を温度制御FF回路33に入力し、注入する注入電流I
SOAを決定する。
【0057】
光出力制御FF回路21は、光電変換回路212と、ピークホールド回路211を備える。入力バースト信号の入力光電力P
inの一部(例えば、入力パワーの1%程度)は、入力光電力P
in_mとして抽出され、光出力制御FF回路21へ入力される。光出力制御FF回路21は、入力光電力P
inが変動しても一定の出力光の電力P
outを得るための注入電流I
SOAをSOA31に供給する。
【0058】
光出力制御FF回路21に入力されたバースト信号の入力光電力P
in_mは、光電変換回路212を用いることによりモニタされる。光電変換回路212は、例えば、PD(Photo Diode)である。光電変換回路212の出力は、入力バースト信号の入力光電力P
in_mのピーク値を保持するためのピークホールド機能を有したピークホールド回路211へ入力される。この入力バースト信号の入力光電力P
in_mのピーク値を前述した温度制御FF回路33のドライバ回路331へ入力して、入力バースト信号の入力光電力P
in_mに対応したI
soaを決定する。つまり、この光出力制御ループ20ではバースト信号の入力光電力P
in_mごとに応じた注入電流I
SOAを決定し、前述した温度制御ループ30ではその注入電流I
SOAの細かい変動を除去する、という機能の分担を行う。
【0059】
引き続き、入力バースト信号の入力光電力P
inは光出力制御ループ20・温度変動制御ループ30で決定された注入電流I
SOAが注入されるSOA31によって安定的に増幅され出力される。この時SOA31によって増幅されたバースト信号は、ASEノイズN
ASEが重畳されて出力される。ここで、(4)式の第2項のBn
2がASEノイズN
ASEに相当する。
【0060】
このASEノイズN
ASEを含んだSOA31の出力光は、分岐部42で出力光信号と出力モニタ用光信号に分岐される。出力モニタ用光信号の電力P
out_mは、モニタ量として再び光出力制御ループ20の中の光出力制御FB回路22に入力される。
【0061】
光出力制御FB回路22は、光電変換回路223、ピークホールド回路211、PID(Proportional−Integral−Derivative)制御回路221を備える。光出力制御FB回路22は、出力モニタ用光信号の電力P
out_mの電力値が、出力電力参照値P
refと等しくなるように、注入電流I
SOAの電流値を制御する。出力バースト信号の出力光信号の電力P
outの一部である出力モニタ用光信号の電力P
out_mは、光電変換回路223、ピークホールド回路222に入力され、出力バースト信号の出力モニタ用光信号の電力P
out_mのピーク量は電気量として後段のPID制御回路221に入力される。光電変換回路223は、例えばPDである。
【0062】
ピークホールド回路222は、光電変換回路223で電気信号に変換された出力モニタ用光信号の電力P
out_mのピーク値を保持する。ピークホールド回路222は、PID制御回路221に保持する出力モニタ用光信号の電力P
out_mのピーク値を出力する。
【0063】
出力光制御FB回路22はPID制御回路221を備えることにより、温度変動制御ループ30で除去しきれなかったオフセットやASEノイズN
ASEの影響を除去し、バースト信号においても応答性のよい良好な制御を実現する。出力光制御FB回路22では、出力電力参照値P
refに対する制御量を決定する。
図1の例では出力電力参照値P
refは光として出力光制御FB回路22へ入力しているが、
図3のように光電変換回路223で出力モニタ用光信号の電力P
out_mを光電変換した後に、PID制御回路221に電気的な参照量として出力電力参照値P
refを入力し、出力電力参照値P
refを入力するための光源を省く構造としてもよい。
【0064】
最後に光出力制御FB回路22で決定された出力が、光制御ループフィードバック量として、先に述べた温度制御FF回路33へ偏差として入力されることにより、本実施形態の光信号増幅回路の制御系が完成される。ここで、光制御ループフィードバック量は、出力電力参照値P
refから出力モニタ用光信号の電力P
out_mの値を減算した量である。これら制御回路を、適切な時定数、ゲインの組み合わせで構築することにより、TECやVOAを省略しても安定なバースト信号対応光増幅装置を構築することができる。
【0065】
本実施形態では、光出力制御FB回路22へ入力される出力電力参照値P
ref及び出力モニタ用光信号の電力P
out_mは、別々に光出力制御FB回路22に入力される例を示した。しかし、光出力制御FB回路22への入力前に、出力電力参照値P
refが示す電力値から、出力モニタ用光信号の電力P
out_mが示す電力値を減算した後、光出力制御FB回路22に入力してもよい。その際、参照光とモニタ用光信号の位相差を180度となるよう制御し、光段における干渉を利用することによって減算を実現することができる。この場合は参照光とモニタ光で2つ必要だったPDを1つに減らすことができ、高い経済効果を実現することができる。