(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象物に照射される電子線を偏向させる偏向電極と、前記電子線をブランキングさせるためのブランキング電極と、を備える電子線描画装置に発生する異常を、検出するための異常検出方法であって、
偏向アンプから、線路を介して、前記偏向電極へ出力される偏向信号に含まれるノイズの検出を、前記線路から分岐するモニタ回路を介して行う第1工程と、
前記第1工程でノイズが検出された場合に、ブランキングアンプから、前記ブランキング電極へ出力されるブランキング信号をオンにするとともに、前記偏向信号をオフにし、前記偏向信号に含まれるノイズの検出を、前記線路から分岐する前記モニタ回路を介して行う第2工程と、
前記第2工程でノイズが検出された場合に、前記ブランキング信号をオンにするとともに、前記偏向信号をオンにし、前記偏向信号に含まれるノイズの検出を、前記線路から絶縁された前記モニタ回路を介して行う第3工程と、
を含む異常検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。説明には、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を適宜用いる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電子線描画装置10の概略構成を示す図である。電子線描画装置10は、例えば真空度が10
−7Pa程度の環境下において、レジスト材がコーティングされたマスクやレチクルなどの試料120に、パターンを描画する装置である。
【0013】
図1に示されるように、電子線描画装置10は、電子線を試料120に照射する照射装置20、試料120が載置されるステージ装置51、ステージ装置51を収容するライティングチャンバ50、照射装置20及びステージ装置51を制御する制御系100を備えている。
【0014】
照射装置20は、長手方向をZ軸方向とする鏡筒21と、鏡筒21の内部上方から下方に向かって順番に配置される電子銃22、ブランキング電極23、電界レンズ24、アパーチャ25、偏向電極26、及び対物レンズ27を備えている。
【0015】
鏡筒21は、下方が開放された円筒状のケーシングである。鏡筒21は、ステンレスからなり、接地されている。この鏡筒21は、ライティングチャンバ50の上方に設置され、ライティングチャンバ50内部に位置する部分は、その直径が下方(−Z方向)に向かって小さくなるテーパー形状となっている。
【0016】
電子銃22は、鏡筒21の内部上方に配置されている。電子銃22は、例えば熱陰極型の電子銃である。電子銃22は、陰極と、陰極を包囲するように設けられるウェネルト電極と、陰極の下方に配置される陽極などから構成されている。電子銃22は、高電圧が印加されると下方(
図1における−Z方向)へ電子線を射出する。
【0017】
ブランキング電極23は、電子銃22の下方に配置されている。ブランキング電極23は、X軸方向に相互に対向するように配置された1対の電極を有している。そして、ブランキングアンプ104によって印加される電圧に応じて、電子銃22から射出された電子線を+X方向又は−X方向へ偏向する。
【0018】
例えば、ブランキング電極23には、ハイレベルとローレベルの2値の電圧信号が入力される。ブランキング電極23では、入力された電圧信号がハイレベルの時に、電極間に電界が生じ、電子線が偏向されブランキングされる。そのため、描画パターンに基づいて変調した電圧信号を、ブランキング電極23に入力することで、試料120に所望のパターンを描画することができる。また、ハイレベルに維持された電圧信号をブランキング電極23に入力することで、電子線がブランキングされた状態を継続することができる。
【0019】
電界レンズ24は、ブランキング電極23の下方に配置された環状のレンズである。電界レンズ24は、ブランキング電極23を通過する電子線を集束させる。
【0020】
アパーチャ25は、中央に電子線が通過する開口が設けられた板状の部材である。アパーチャ25は、電界レンズ24を通過した電子線の収束点近傍に配置されている。電子線がアパーチャ25の開口を通過することで、スポットの形状が整形される。また、電子線がブランキング電極23によって偏向されたときには、電子線は、アパーチャ25によって遮蔽される。これにより、電子線がブランキングされる。
【0021】
偏向電極26は、アパーチャ25の下方に配置されている。この偏向電極26は、X軸方向に相互に対向するように配置される1対の電極26a,26bを有している。そして、印加される電圧に応じて、アパーチャ25を通過した電子線をX軸方向へ偏向する。
【0022】
対物レンズ27は、偏向電極26の下方に配置され、偏向電極26を通過した電子線を、ステージ装置51に載置されたマスクやウェハー等の試料120の表面に集束させる。
【0023】
ライティングチャンバ50は、直方体状の中空部材であり上面には円形の開口が形成されている。上述した照射装置20の鏡筒21は、ライティングチャンバ50の上面に形成された開口に挿入されている。
【0024】
ステージ装置51は、ライティングチャンバ50の内部に配置されている。ステージ装置51は、パターンが描画される試料120をほぼ水平に保持した状態で、少なくともXY平面内で移動することが可能なステージである。
【0025】
制御系100は、照射装置20及びステージ装置51を制御するためのシステムである。この制御系100は、制御装置101、高圧電源装置102、偏向演算装置103、ブランキングアンプ104、偏向アンプ105、検出装置106、ステージ駆動装置107、及びスイッチSWを有している。
【0026】
図2は、制御装置101のブロック図である。
図2に示されるように、制御装置101は、CPU(Central Processing Unit)101a、主記憶部101b、補助記憶部101c、入力部101d、表示部101e、インタフェース部101f、及び上記各部を接続するシステムバス101gを有するコンピュータである。
【0027】
CPU101aは、補助記憶部101cに記憶されたプログラムを読み出して実行する。そして、プログラムに応じて、制御系100を構成する機器を統括的に制御する。
【0028】
主記憶部101bは、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを有している。主記憶部101bは、CPU101aの作業領域として用いられる。
【0029】
補助記憶部101cは、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリなどの不揮発性メモリを有している。補助記憶部101cは、CPU101aが実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。また、CPU101aによる処理結果などを含む情報を順次記憶する。
【0030】
入力部101dは、キーボードや、マウスなどのポインティングデバイスを有している。ユーザの指示は、入力部101dを介して入力され、システムバス101gを経由してCPU101aに通知される。
【0031】
表示部101eは、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示ユニットを有している。表示部101eは、例えば、電子線描画装置10のステータスや、描画パターンなどに関する情報を表示する。
【0032】
インタフェース部101fは、LANインタフェース、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、アナログインタフェースなどを備えている。高圧電源装置102、偏向演算装置103、検出装置106、ステージ駆動装置107は、インタフェース部101fを介して、制御装置101に接続される。また、
図1には図示されていないが、インタフェース部101fには、レンズ駆動装置108も接続されている。
【0033】
上述のように構成される制御装置101は、高圧電源装置102、偏向演算装置103、検出装置106、ステージ駆動装置107、レンズ駆動装置108を統括的に制御する。
【0034】
図1に戻り、高圧電源装置102は、制御装置101からの指示に基づいて、電子銃22に電圧を印加する。これにより、電子銃22から試料120へ向かって、電子線が射出される。
【0035】
偏向演算装置103は、制御装置101から出力される描画データに基づいて、ブラキングタイミングやブランキング時間を演算する。そして、演算結果を示すデジタル信号S1をブランキングアンプ104へ出力する。また、偏向演算装置103は、描画データに基づいて、電子線の偏向量を演算する。そして、演算結果を示すデジタル信号S2を偏向アンプ105へ出力する。
【0036】
ブランキングアンプ104は、偏向演算装置103から出力されるデジタル信号S1に基づいてブランキング信号S3を生成し、ブランキング電極23と検出装置106へ出力する。ブランキング信号S3は、ハイレベルが500mVで、ローレベルが0Vの2値の信号である。ブランキング電極23へ出力されるブランキング信号S3がハイレベルのときに、電子線がブランキングされる。
【0037】
偏向アンプ105は、偏向演算装置103から出力されるデジタル信号S2に基づいて偏向信号S4
1,S4
2を生成し、偏向電極26を構成する一対の電極26a,26bと検出装置106へ出力する。これにより、電極26aと電極26bとの間には、偏向信号S4
1の値と、偏向信号S4
2の値の差に応じた電位差Vdが生じる。偏向電極26を通過する電子線は、電位差Vdに応じた量だけ偏向される。
【0038】
検出装置106は、偏向アンプ105からの出力に含まれるノイズを検出するためのテスターである。
図3は、検出装置106のブロック図である。
図3に示されるように、検出装置106は、CPU106a、主記憶部106b、補助記憶部106c、インタフェース部106f、及び上記各部を接続するシステムバス106gを有するコンピュータである。
【0039】
CPU106aは、補助記憶部106cに記憶されたプログラムを読み出して、偏向アンプ105からの偏向信号S4
1,S4
2にノイズが含まれるか否かを判断する。そして、判断結果を、制御装置101へ出力する。
【0040】
主記憶部106bは、RAM等の揮発性メモリを有している。主記憶部106bは、CPU106aの作業領域として用いられる。
【0041】
補助記憶部106cは、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリなどの不揮発性メモリを有している。補助記憶部106cは、CPU106aが実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。また、CPU106aによる処理結果などを含む情報を順次記憶する。
【0042】
インタフェース部106fは、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、アナログインタフェースなどを備えている。制御装置101、偏向演算装置103、ブランキングアンプ104、偏向アンプ105は、インタフェース部106fを介して、検出装置106に接続される。
【0043】
図1に戻り、スイッチSWは、偏向アンプ105と検出装置106の間に設けられている。スイッチSWは、制御装置101によって操作される。制御装置101は、スイッチSWをオフにすることで、偏向アンプ105と偏向電極26との間の線路から分岐するモニタ回路109を、偏向アンプ105から絶縁することができる。
【0044】
ステージ駆動装置107は、制御装置101の指示に基づいて、ステージ装置51を駆動し、試料120の移動や位置決めなどを行う。
【0045】
図2に示されるレンズ駆動装置108は、制御装置101の指示に基づいて、電子線に対する電界レンズ24、対物レンズ27のパワー(屈折力)を制御して、電子線を試料120の上面に集束させる。
【0046】
上述のように構成される電子線描画装置10では、試料120への描画開始指令が制御装置101へ入力されると、制御装置101を構成するCPU101aが、補助記憶部101cに記憶されたプログラムを読み出す。そして、CPU101aは、読みだしたプログラムに基づいて、試料120に対するパターンの描画を開始する。
【0047】
具体的には、CPU101aは、ステージ駆動装置107を介して、ステージ装置51を駆動し、
図1に示されるように、試料120を照射装置20の下方に位置決めする。
【0048】
次に、CPU101aは、高圧電源装置102を駆動して、電子銃22に電圧を印加する。これにより、電子銃22から電子線が射出される。
【0049】
照射装置20の電子銃22から電子線が射出されると、CPU101aは、レンズ駆動装置108(
図2参照)を介して電界レンズ24を制御し、電子線をアパーチャ25の開口近傍(クロスポーバーポイント)に集束させる。電子線は、アパーチャ25の開口を通過することで、スポットの外径及び形状が整形される。アパーチャ25を通過した電子線は、一旦結像した後、対物レンズ27に入射する。CPU101aは、レンズ駆動装置108を介して、対物レンズ27を制御して、対物レンズ27に入射した電子線をステージ装置51に保持された試料120の表面に結像させる。
【0050】
CPU101aは、上記動作と並行して、偏向演算装置103に描画データを出力する。偏向演算装置103は、描画データを受信すると、描画データに基づいて変調されたデジタル信号S1,S2を生成する。そして、偏向演算装置103は、デジタル信号S1をブランキングアンプ104へ出力し、デジタル信号S2を偏向アンプ105へ出力する。
【0051】
ブランキングアンプ104は、デジタル信号S1を受信すると、デジタル信号S1をブランキング信号S3に変換して、ブランキング電極23へ出力する。これにより、電子線が所定のタイミングで偏向されブランキングが間欠的に実行される。
【0052】
偏向アンプ105は、デジタル信号S2を受信すると、デジタル信号S2から偏向信号S4
1,S4
2を生成する。そして、生成した偏向信号S4
1,S4
2を、偏向電極26を構成する電極26a,26bへそれぞれ出力する。これにより、電子線がX軸方向に偏向され、試料120に対する電子線の入射位置が制御される。
【0053】
電子線描画装置10では、上述のようにブランキングアンプ104と偏向アンプ105が協働することにより、電子線が変調され試料120にパターンが描画される。
【0054】
電子線描画装置10では、試料120に対するパターンの描画を開始する前に、偏向信号S4にノイズが含まれるか否かをチェックするためのノイズチェック処理が行われる。以下、ノイズチェック処理について説明する。
【0055】
図4は、制御装置101のCPU101aが実行する一連の処理を示すフローチャートである。ノイズチェック処理の最初のステップS101では、CPU101aは、スイッチSWをオンにした状態で、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104からブランキング信号S3を出力するとともに、偏向アンプ105から、偏向信号S4
1,S4
2を出力する。
【0056】
図5は、ノイズチェックを行う際に、偏向アンプ105から出力される偏向信号S4
1,S4
2の波形と、ブランキングアンプ104から出力されるブランキング信号S3の波形を示す図である。ノイズチェックを行う場合に、制御装置101は、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104から周期的にハイレベルとローレベルを繰り返すブランキング信号S3を出力する。同時に、制御装置101は、偏向演算装置103を制御して、偏向アンプ105から、ブランキング信号S3の立ち上がりに同期して、V1、V2、V3、V4と段階的に変化する偏向信号S4
1を出力する。同様に、偏向アンプ105から、ブランキング信号S3の立ち上がりに同期して、−V1、−V2、−V3、−V4と段階的に変化する偏向信号S4
2を出力する。
【0057】
一方、検出装置106は、偏向信号S4
1の値X1と、偏向信号S4
2の値X2との和Yを演算する。偏向アンプ105から出力される偏向信号S4
1,S4
2の値X1,X2を段階的に変化させた場合、回路の時定数などの影響により、偏向信号S4
1,S4
2の値が安定するまでにある程度の時間を要する。このため、
図5の曲線L1に示されるように、和Yは、ブランキング信号S3が立ち上がった時刻から、ブランキング信号S3がハイレベルを維持する時間T1が経過するまでの間は不安定に変化する。一方、和Yは、時間T1が経過してから、ブランキング信号S3がローレベルを維持する時間T2が経過するまでの間は、ほぼ零になる。そこで、検出装置106は、ブランキング信号S3が立ち下がってから立ち上がるまでの和Yの値を監視して、偏向信号S4にノイズが含まれるか否かを判定する。
【0058】
図6は、ノイズ成分を含む偏向信号S4
1,S4
2の波形を一例として示す図である。偏向信号S4
1,S4
2にノイズ成分が含まれる場合には、双方の偏向信号S4
1,S4
2に、例えば、ピークP1或いはピークP3のような、偏向信号S4
1,S4
2相互間で同極性のピークが、ほぼ同時に現れる。
【0059】
この場合には、和Yの推移を示す曲線L1にも、ピークP1に対応するピークP2、或いはピークP3に対応するピークP4が現れる。検出装置106は、ブランキング信号S3がローレベルのときの和Yの値が0以外に変化したときに、偏向信号S4
1,S4
2にノイズが含まれていると判断し、判断結果を制御装置101に出力する。
【0060】
次のステップS102では、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したか否かを判断する。検出装置106がノイズを検出しなかったと判断した場合には(ステップS102:No)、ステップS103で、電子線描画装置10に異常はなく正常に動作可能であると判断し、ノイズチェック処理を終了する。
【0061】
一方、CPU101aは、ステップS102で、検出装置106がノイズを検出したと判断した場合には(ステップS102:Yes)、ステップS104へ移行する。
【0062】
ステップS104では、CPU101aは、スイッチSWをオンにした状態で、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104からブランキング信号S3を出力するとともに、偏向アンプ105からの偏向信号S4
1,S4
2の出力を停止する。
【0063】
次のステップS105では、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したか否かを判断する。偏向信号S4
1,S4
2の出力が停止された場合には、偏向信号S4
1,S4
2の値X1,X2はそれぞれ零になる。このため、和Y(=X1+X2)は本来零になる。したがって、ステップS102でノイズが検出されたと判断され(ステップS102:Yes)、ステップS105でノイズが検出されなかったと判断された場合には(ステップS105:No)、偏向アンプ自体がノイズや異常波形の発生源であると考えられる。そこで、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出しなかったと判断した場合には(ステップS105:No)、ステップS106で、検出装置106によって検出されたノイズや異常波形が、偏向アンプ105から発生したもの(偏向アンプ105の故障)であると判断し、ノイズチェック処理を終了する。
【0064】
一方、CPU101aは、ステップS105で、検出装置106がノイズを検出したと判断した場合には(ステップS105:Yes)、ステップS107へ移行する。
【0065】
ステップS107では、CPU101aは、スイッチSWをオフにした状態で、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104からブランキング信号S3を出力するとともに、偏向アンプ105から偏向信号S4
1,S4
2を出力する。
【0066】
次のステップS108では、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したか否かを判断する。スイッチSWがオフになることによりモニタ回路109が、偏向アンプ105から絶縁された場合において、ステップS105でノイズが検出されたと判断され(ステップS105:Yes)、ステップS108でノイズが検出されなかったと判断された場合には(ステップS108:No)、ノイズが、描画系に影響を与えるものであると考えられる。そこで、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出しなかったと判断した場合には(ステップS108:No)、ステップS110へ移行し、
図7に示されるサブルーチン1を実行することによりノイズ源を特定する。
【0067】
サブルーチン1の最初のステップS201では、CPU101aは、スイッチSWをオンにした状態で、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104からブランキング信号S3を出力するとともに、偏向アンプ105からの偏向信号S4
1,S4
2の出力を停止する。
【0068】
次のステップS202では、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したか否かを判断する。ステップS202でノイズが検出されなかったと判断された場合には(ステップS202:No)、ノイズが、デジタル信号S2の線路や偏向アンプ105からのものであると考えられる。そこで、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出しなかったと判断した場合には(ステップS202:No)、ステップS203で、検出装置106によって検出されたノイズが、デジタル信号S2の線路や偏向アンプ105などの偏向信号系から発生したものであると判断する。
【0069】
CPU101aは、ステップS203の処理が終了すると、サブルーチン1を終了してノイズチェック処理を終了する。
【0070】
一方、CPU101aは、ステップS202で、検出装置106がノイズを検出したと判断した場合には(ステップS202:Yes)、ステップS204へ移行する。
【0071】
ステップS204では、CPU101aは、スイッチSWをオンにした状態で、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104からのブランキング信号S3の出力を停止するとともに、偏向アンプ105からの偏向信号S4
1,S4
2の出力を停止する。
【0072】
ブランキング信号S3の出力が停止された場合には、検出装置106はトリガ信号を失うことになる。このため、検出装置106は、
図5に示されるブランキング信号S3と同等のサンプリング信号を疑似的に生成し、当該サンプリング信号がローレベルのときの和Yの値に基づいて、ノイズの検出を行う。
【0073】
次のステップS205では、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したか否かを判断する。ブランキング信号S3の出力が停止した場合において、ステップS202でノイズが検出されたと判断され(ステップS202:Yes)、ステップS205でノイズが検出されなかったと判断された場合には(ステップS205:No)、ノイズが、電子線のブランキング動作に起因するものであると考えられる。そこで、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出しなかったと判断した場合には(ステップS205:No)、ステップS206で、検出装置106によって検出されたノイズが、電子線のブランキング動作に起因して発生したものであると判断する。
【0074】
CPU101aは、ステップS206の処理が終了すると、サブルーチン1を終了してノイズチェック処理を終了する。
【0075】
また、ステップS204において、ブランキング信号S3の出力が停止された場合において、ステップS202でノイズが検出されたと判断され(ステップS202:Yes)、かつ、ステップS205でノイズが検出されたと判断された場合には(ステップS205:Yes)、ノイズが、他の工作機械の動作など、外部環境に起因して発生したものであると考えられる。そこで、CPU101aは、ステップS205で、検出装置106がノイズを検出したと判断した場合には(ステップS205:Yes)、ステップS207で、ノイズが外部環境に起因するものであると判断し、サブルーチン1を終了してノイズチェック処理を終了する。
【0076】
また、ステップ107において、スイッチSWがオフになることによりモニタ回路109が、偏向アンプ105から絶縁された場合において、ステップS105でノイズが検出されたと判断され(ステップS105:Yes)、かつ、ステップS108でノイズが検出されたと判断された場合には(ステップS108:Yes)、ノイズが、モニタ回路109を介して検出されたものであると考えられる。そこで、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したと判断した場合には(ステップS108:Yes)、ステップS111で、検出装置106によって検出されたノイズが、モニタ回路109のみに侵入したノイズであり描画には影響を与えないと判断する。そのため、ここでノイズチェック処理を終了しても良いし、ステップS112へ移行し、
図8に示されるサブルーチン2の実行により、詳細なノイズ源を特定しても良い。
【0077】
サブルーチン2の最初のステップS301では、CPU101aは、スイッチSWをオフにした状態で、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104からブランキング信号S3を出力するとともに、偏向アンプ105からの偏向信号S4
1,S4
2の出力を停止する。
【0078】
次のステップS302では、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したか否かを判断する。ステップS302でノイズが検出されなかったと判断された場合には(ステップS302:No)、ノイズが、偏向アンプ105からの出力に起因するノイズであると考えられる。そこで、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出しなかったと判断した場合には(ステップS302:No)、ステップS303で、検出装置106によって検出されたノイズが、デジタル信号S2の線路や偏向アンプ105など、偏向信号系から発生したものであると判断する。
【0079】
CPU101aは、ステップS303の処理が終了すると、サブルーチン2を終了してノイズチェック処理を終了する。
【0080】
一方、CPU101aは、ステップS302で、検出装置106がノイズを検出したと判断した場合には(ステップS302:Yes)、ステップS304へ移行する。
【0081】
ステップS304では、CPU101aは、スイッチSWをオフにした状態で、偏向演算装置103を制御して、ブランキングアンプ104からのブランキング信号S3の出力を停止するとともに、偏向アンプ105からの偏向信号S4
1,S4
2の出力を停止する。
【0082】
ブランキング信号S3の出力が停止された場合には、検出装置106はトリガ信号を失うことになる。このため、検出装置106は、
図5に示されるブランキング信号S3と同等のサンプリング信号を疑似的に生成し、当該サンプリング信号がローレベルのときの和Yの値に基づいて、ノイズの検出を行う。
【0083】
次のステップS305では、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出したか否かを判断する。ブランキング信号S3の出力が停止された場合において、ステップS302でノイズが検出されたと判断され(ステップS302:Yes)、ステップS305でノイズが検出されなかったと判断された場合には(ステップS305:No)、ノイズが、電子線のブランキング動作に起因するものであると考えられる。そこで、CPU101aは、検出装置106がノイズを検出しなかったと判断した場合には(ステップS305:No)、ステップS306で、検出装置106によって検出されたノイズが、電子線のブランキング動作に起因して発生したものであると判断する。
【0084】
CPU101aは、ステップS306の処理が終了すると、サブルーチン2を終了してノイズチェック処理を終了する。
【0085】
また、ステップS304において、ブランキング信号S3の出力が停止された場合において、ステップS302でノイズが検出されたと判断され(ステップS302:Yes)、かつ、ステップS305でノイズが検出されたと判断された場合には(ステップS305:Yes)、ノイズが、他の工作機械の動作など、外部環境に起因して発生したものであると考えられる。そこで、CPU101aは、ステップS305で、検出装置106がノイズを検出したと判断した場合には(ステップS305:Yes)、ステップS307で、ノイズが外部環境に起因するものであると判断し、サブルーチン2を終了してノイズチェック処理を終了する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態では、電子線描画装置10の運転条件を、
図4に示されるステップS101,S104,S107、
図7に示されるステップS201,S204、
図8に示されるステップS301,S304において順次変更し、各条件においてノイズの検出を行う。これにより、ノイズの発生源をある程度正確に特定することができる。したがって、電子線描画装置10の点検や修理を短時間に行うことが可能となる。
【0087】
また、例えば、ノイズの影響を受けている範囲が本来修理やメンテナンスが必要なものではないときに、電子線描画装置10の点検などが行われることを回避することができる。これにより、電子線描画装置10の稼働率を向上させることが可能となる。
【0088】
本実施形態では、
図4に示されるように、ノイズが、描画系に影響を与えるものであるか(ステップS109)、又は、検出系のみに影響を与えるものであるか(ステップS111)が特定される。したがって、検出系のみに影響があるものである場合には、パターンの描画を一時停止することなく継続することができる。このため、製品の歩留まりの低下を回避することができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、電子線描画装置10が、制御装置101と検出装置106を備えている場合について説明した。これに限らず、一例として
図9に示されるように、制御装置101が、偏向演算装置103、或いは検出装置106を兼ねることとしてもよい。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。