(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源の1つであるAC−DCコンバータ(以下、ACアダプタ)の劣化状態を推定する手法として、内部に測定機能を内蔵する方法と、外部から電気特性を観測する方法とがある。内部に測定機能を内蔵する方法は、部品点数が増え装置コストが上昇するため、一般的なACアダプタには用いられていない。
【0003】
外部から観測する手段としては、例えば2次出力電圧に重畳しているリップル電圧や効率を測定する方法がある。ACアダプタにおいて最も劣化しやすい部品としてアルミ電解コンデンサ等の1次平滑コンデンサがあるが、1次平滑コンデンサはダイオードブリッジとスイッチングトランスとの間に設けられているため、外部から1次平滑コンデンサの静電容量やESRといった電気特性を直接確認することは通常は難しい。
【0004】
しかしながら、1次平滑コンデンサの状態を確認する1つの方法として、ACアダプタの出力電圧保持時間を測定する手法がある。以下に、1次平滑コンデンサと出力電圧保持時間との関係性を説明する。
【0005】
一般的に、ACアダプタは、入力交流電圧をダイオードブリッジで整流して1次平滑コンデンサに蓄積し、平滑化された1次平滑コンデンサの直流電圧をスイッチングトランスにより出力電圧に変換している。電力系統から入力される交流電圧が遮断されるとき、ACアダプタの直流出力電圧はすぐに低下せず一定時間出力を保持する。これは、1次平滑コンデンサの充電電圧が放電に伴い低下していくものの、スイッチング制御回路によって定められた閾値を下回らない限り、スイッチング動作が継続され、出力が維持されるためである。
【0006】
1次平滑コンデンサの充電電圧は、1次平滑コンデンサの静電容量が小さいほど早く低下する。そのため、経年劣化等の影響で1次平滑コンデンサの静電容量が低下していた場合、出力電圧保持時間は正常品に比べて短くなる。
【0007】
以上により、ACアダプタの出力電圧保持時間を測定し、予め準備しておいた変換式やデータベース情報に従って1次平滑コンデンサの静電容量を推定することが可能である。JEITAのスイッチング電源試験方法(AC−DC)には出力電圧保持時間の測定方法が規定されている(非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、出力電圧保持時間を測定することにより1次平滑コンデンサの静電容量の変化を推定する従来の方法では、劣化初期−中期で静電容量の変化が少ない場合、出力電圧保持時間の変化も少ないため、変化を検知するためには高い分解能で測定する必要があり装置のコストがかかる。
【0010】
また、ACアダプタで使用するアルミ電解コンデンサによっては、その静電容量はある期間が過ぎるまでほとんど変化せず、ある期間が経過すると急峻に静電容量が低下し、故障に至る場合がある。そのため、劣化後期において故障が発生する前に劣化を検知してコンデンサの静電容量低下によるACアダプタの故障や使用中の事故を防止するためには、容量の急峻な低下を見落とさないようにするために測定頻度を上げて短時間における静電容量の低下を検知する必要があり、稼働コストがかかる。稼働コストを減らすためには測定頻度は少ないほうが望ましく、定期的な測定結果からACアダプタの残使用可能期間を推定できることが望ましい。
【0011】
さらに、従来方法のように出力電圧保持時間を測定するためには、入力電力を生成する安定化電源とオシロスコープが必要であり、装置のコストもかかる。
【0012】
本発明は、低コストの装置を用いて、ACアダプタの出力電圧を測定することなくACアダプタの1次平滑コンデンサの劣化状態を低稼働・低コストで推定する装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の装置は、商用電源から供給されたAC電圧をDC電圧に変換して負荷に出力するACアダプタ内部に設けられた1次平滑コンデンサの劣化状態を推定する装置であって、前記ACアダプタに流れ込む電流を検出して、電流を検出したことを示す検出信号を出力する電流検出部と、前記検出信号を受信し、前記受信した検出信号に基づいて所定期間内に前記ACアダプタに電流が流れる時間である電流導通時間を測定して、前記電流導通時間を示す電流導通時間信号を出力する電流導通時間測定部と、前記電流導通時間と前記1次平滑コンデンサの等価直列抵抗値と前記1次平滑コンデンサの劣化状態との関係を示す計算式又はデータベースを前記1次平滑コンデンサの種類毎に予め格納した記憶演算処理部であって、前記電流導通時間測定部から前記電流導通時間信号を受信して、前記予め格納した計算式又はデータベースに従って、前記受信した電流導通時間信号から前記1次平滑コンデンサの等価直列抵抗値を計算し、前記計算した等価直列抵抗値から前記1次平滑コンデンサの劣化状態を推定する記憶演算処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の装置は、請求項1に記載の装置であって、前記記憶演算処理部は、当該推定結果を示す推定信号を出力し、前記装置は、前記記憶演算処理部から前記推定信号を受信し、前記受信した推定信号に基づいて前記推定結果を表示する表示部をさらに備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の装置は、請求項1又は2に記載の装置であって、前記電流検出部は、クランプタイプの電流検出用変流器であり、前記電流導通時間測定部及び前記記憶演算処理部は、マイコンに含まれていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の装置は、請求項3に記載の装置であって、前記装置は、前記電流導通時間の平均化処理を行う平均化回路をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の方法は、商用電源から供給されたAC電圧をDC電圧に変換して負荷に出力するACアダプタ内部に設けられた1次平滑コンデンサの劣化状態を推定する方法であって、電流検出部が、前記ACアダプタに流れ込む電流を検出して、電流を検出したことを示す検出信号を出力するステップと、電流導通時間測定部が、前記検出信号に基づいて所定期間内に前記ACアダプタに電流が流れる時間である電流導通時間を測定して、前記電流導通時間を示す電流導通時間信号を出力するステップと、記憶演算処理部が、前記1次平滑コンデンサの種類毎に予め格納した前記電流導通時間と前記1次平滑コンデンサの等価直列抵抗値と前記1次平滑コンデンサの劣化状態との関係を示す計算式又はデータベースに従って、前記電流導通時間信号から前記1次平滑コンデンサの等価直列抵抗値を計算し、前記計算した等価直列抵抗値から前記1次平滑コンデンサの劣化状態を推定するステップと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の方法は、請求項5に記載の方法であって、前記記憶演算処理部は、前記推定するステップにおける推定結果を示す推定信号を出力するステップと、表示部が、前記推定信号に基づいて前記推定結果を表示するステップをさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の方法は、請求項5又は6に記載の方法であって、前記電流検出部は、クランプタイプの電流検出用変流器であり、前記電流導通時間測定部及び前記記憶演算処理部は、マイコンに含まれていることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の方法は、請求項7に記載の方法であって、前記電流導通時間の平均化処理を行うステップをさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、従来よりも高精度、低コスト及び低消費電力で、ACアダプタの1次平滑コンデンサの特性を測定して劣化状態を推定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1)
図1に、本発明の実施例1に係る電源装置内部の1次平滑コンデンサの劣化状態の推定装置の構成を示す。
図1には、本発明の実施例1に係る推定装置100と、AC電圧を供給する商用電源1と、商用電源1から供給されたAC電圧をDC電圧に変換して出力するACアダプタ2と、ACアダプタ2内部に設けられた1次平滑化コンデンサ3と、ACアダプタ2からDC電圧が供給される負荷4とが示されている。
図1に示されるように、推定装置100は、電流検出部101と、電流導通時間測定部102と、記憶演算処理部103と、表示部104とを備える。本発明では、商用電源1と負荷4との間に設けられたACアダプタ2に入力される電流の導通時間を測定することにより、ACアダプタ2の劣化状況を判断することができる。
【0024】
電流検出部101は、商用電源1(例えばAC50Hz、100V)とACアダプタ2との間に挿入され、商用電源1からACアダプタ2に流れ込む電流を検出し、電流を検出したことを示す検出信号を出力する。ここで、電流検出部101から出力される検出信号は、例えば検出した電流に応じた電圧値を有する信号とすることができるが、電流を検出したことを示せればよく、その値の大小については特に制限されない。
【0025】
電流導通時間測定部102は、電流検出部101から出力された検出信号を受信し、検出信号に基づいて電流導通時間を計測して、電流導通時間を示す電流導通時間信号を出力する。
図2を用いて電流導通時間を説明する。
図2に示すように、商用電源1から出力される商用電源電圧波形は正弦波状であるが、ACアダプタ2内部の1次平滑コンデンサ3の充電状態に応じてACアダプタ2に流れ込む商用電源電流波形はパルス状の脈流となる。ここでいう電流導通時間は、所定期間内に、例えば商用電源1から供給される商用電源電圧周波数50Hzの1周期中に、ACアダプタ2に電流が流れ始めてから流れ終わるまでの時間である。ここで、「流れ始め」、「流れ終わり」を決定する電流値については、本発明に係る装置の設計時に決定すればよいため、本発明の中では特にその値については定義・限定しない。
【0026】
記憶演算処理部103は、電流導通時間測定部102から出力された電流導通時間信号を受信し、予め格納された変換式又はデータベースの情報に従って、受信した電流導通時間信号からACアダプタ2の1次平滑コンデンサ3の等価直列抵抗(ESR)を計算し、ESRに基づいて1次平滑コンデンサ3の劣化状態を推定する。
【0027】
ここで、一般に、電流導通時間に対するESRやESRに対する1次平滑コンデンサの劣化状態は、ACアダプタの1次平滑コンデンサの種類毎に異なる。そのため、記憶演算処理部103は、電流導通時間から1次平滑コンデンサ3のESR及び劣化状態を導くために、1次平滑コンデンサ3の種類毎に予め実験又は回路シミュレーションを行うことにより電流導通時間とESRと1次平滑コンデンサの劣化状態との関係を求めておくことで、電流導通時間とESRと劣化状態との関係を示す計算式又はデータベースを1次平滑コンデンサ3の種類毎に予め格納している。
【0028】
記憶演算処理部103は、例えば、ESRが所定の閾値よりも大きい場合にその1次平滑コンデンサ3が使用不可能であることを推定し、ESRが所定の閾値よりも小さい場合にその1次平滑コンデンサ3が使用可能であることを推定したり、又はESRの値に応じて1次平滑コンデンサ3の使用可能時間(例えば使用可能年数等)を推定することができる。記憶演算処理部103は、これらの推定結果を含む推定信号を出力する。
【0029】
表示部104は、例えばLCDディスプレイや液晶ディスプレイとすることができ、記憶演算処理部103から出力された推定信号に従って、1次平滑コンデンサ3の劣化状態に関する情報を表示する。表示部104では、例えば1次平滑コンデンサ3の使用の可否や使用可能時間を表示することができる。
【0030】
本発明における基本原理を説明する。一般的に、コンデンサのESRは、使用開始後から使用経過に伴って上昇し、静電容量よりもその変化は大きい。ACアダプタ2において1次平滑コンデンサ3は、商用電源1から供給される交流電圧を平滑化して、定電圧をスイッチング回路へ供給する役割がある。商用電源1の電圧が1次平滑コンデンサ3の電圧よりも高ければ、電流が商用電源1から1次平滑コンデンサ3とスイッチング回路へ供給される。商用電源1の電圧が1次平滑コンデンサ3の電圧よりも低ければ、商用電源1から電流は流れず1次平滑コンデンサ3からスイッチング回路に電流が供給される。
【0031】
1次平滑コンデンサ3のESRが上昇すると、1次平滑コンデンサ3に電流が出入りする際に電圧降下が大きくなり、1次平滑コンデンサ3からのみスイッチング回路に電流が供給されている時に1次平滑コンデンサ3の端子電圧が低下する。そのため、商用電源電圧が1次平滑コンデンサ3の端子電圧を超えるタイミングがより早く来ることになり、またその後商用電源電圧が1次平滑コンデンサ3の端子電圧を下回るタイミングがより遅く来ることになることから、電流導通時間が長くなる。その結果、劣化初期−中期で静電容量の変化が少ない場合においても、出力電圧保持時間を測定する従来方法のように高い分解能を有する推定装置を使用する必要がなく、低コストの推定装置を用いることが可能となる。
【0032】
本発明において、電流検出部101としては、検出信号の出力電圧が大きいことだけが求められ、検出精度が全く求められないため、ローコスト(低グレード)のものでもよい。従来手法により出力電圧保持時間を測定する場合の測定器としては一般的に交流安定化電源とオシロスコープが必要であるため、それに比較すれば本発明は全体として安価な構成となる。
【0033】
また、上述したように、一般にACアダプタ内部において1次平滑コンデンサはダイオードブリッジとスイッチングトランスとの間に設けられており、従来技術では1次平滑コンデンサのESRを直接測定することはできなかった。それに対し、本発明では、商用電源1とACアダプタ2との間に電流検出部101を設けてESRに対して相関関係がある電流導通時間を測定し演算することによりESRを算出することが可能となり、それによりコンデンサの劣化状態を推定できるようになる。
【0034】
(実施例2)
図3を用いて、本発明を実施するにあたり、より低コスト・低消費電力である実施例2に係る電源装置内部の1次平滑コンデンサの劣化状態の推定方法を説明する。
図3には、本発明の実施例2に係る推定装置300と、AC電圧を供給する商用電源1と、商用電源1から供給されたAC電圧をDC電圧に変換して出力するACアダプタ2と、ACアダプタ2の1次平滑化コンデンサ3と、ACアダプタ2からDC電圧が供給される負荷4とが示されている。
図3に示されるように、本実施例に係る推定装置300は、電流検出用変流器301と、マイコン302と、液晶ディスプレイ303とを備える。
【0035】
本実施例では、電流検出用変流器301はクランプタイプのものであり、商用電源1(AC50Hz、100V)とACアダプタ2との間の配線の一方に非接触で取り付け、電流検出用変流器301によりACアダプタ2に流れ込む電流の交流成分を検出して、出力電圧として検出信号を出力する。
【0036】
電流検出用変流器301の出力はマイコン302のデジタル入力ポートに接続されており、電流検出用変流器301から出力された検出信号はマイコン302のデジタル入力ポートに入力される。マイコン302のデジタル入力ポートの状態は、ACアダプタ2に電流が流れるとLowからHighに切り替わり、電流が流れ終わるとHighからLowに切り替わる。ここで、電流検出用変流器301の検出信号における出力電圧がマイコン302の電源電圧に満たない場合は電流検出用変流器301の出力をアンプで増幅させ、マイコン302のデジタル入力ポートに接続する構成としても良い。
【0037】
マイコン302は、マイコン302のデジタル入力ポートの状態を監視し、LowからHighに切り替わった時点から経過時間のカウントを始め、HighからLowに切り替わった時点でカウントを停止する。本実施例では、カウント開始から終了までの経過時間を電流通電時間とする。電流導通時間を用いたコンデンサの等価直列抵抗と劣化状態の推定は、マイコン302の内部で保存された計算式又はデータベースに照合をかけることによって行う。
【0038】
本実施例では、表示部としては液晶ディスプレイ303を用いたが、コストを削減するためディスプレイレスとし、外部機器(パソコン等)との通信手段を搭載し、外部機器で測定結果を確認する形態としても良い。
【0039】
本実施例においては、クランプタイプの電流検出用変流器を用いることで低コスト化を図ることができるが、さらに、実施例1と同様に検出精度が全く求められないため、クランプタイプの電流検出用変流器の中でもローコスト(低グレード)のものを使用することができ、更なる低コスト化を図ることができる。また、マイコンのクロックとしては、100kHz程度で十分なサンプリングが可能であり、また必要な機能は入出力ポートとメモリのみであるため、ローコスト(低グレード)のマイコンを用いることができる。
【0040】
クランプタイプの電流検出用変流器301とACアダプタ2との接続は、クランプタイプの電流検出用変流器301のカレントプローブを非接触で配線に設けるだけでよいので、操作性がよく感電の心配もない。接続される負荷4にもよるが、抵抗値が変動しない負荷であればACアダプタ2を停止させずに運用中に測定することも可能である。
【0041】
以上から、本実施例に係る測定手法を用いることにより、実施例1よりもさらにローコストで1次平滑コンデンサの劣化状態を測定することが可能となる。
【0042】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3に係る電源装置内部の1次平滑コンデンサの劣化状態の推定方法を説明する。長期にわたる測定を行うために、測定システムを接続したままにして間欠動作させ、定期的に電流導通時間を測定し、1次平滑コンデンサの劣化を検査することも可能である。しかし、このような運用を行うには、測定システムが低コスト・低消費電力であることが求められる。そこで、本実施例では、測定システムに平均化処理機能を追加することで、マイコンのクロックを下げ、低コスト化と低消費電力化を図ることができる。
【0043】
図4は、本発明の実施例3に係る電源装置内部の1次平滑コンデンサの劣化状態の推定装置の構成を示す。
図4には、本発明の実施例3に係る推定装置400と、AC電圧を供給する商用電源1と、商用電源1から供給されたAC電圧をDC電圧に変換して出力するACアダプタ2と、ACアダプタ2の1次平滑化コンデンサ3と、ACアダプタ2からDC電圧が供給される負荷4とが示されている。
図4に示すように、本実施例に係る推定装置400は、電流検出部401と、電流導通時間の平均化回路402と、マイコン403と、表示部405とを備える。
【0044】
図5は、実施例3に係る電流導通時間の平均化回路の構成を示す。
図5に示すように、本実施例に係る平均化回路402は、コンデンサC
1と、トランジスタTr
1と、抵抗R
bと、定電流ダイオードCRD
1とを含む。平均化回路402では、電流検出部401をa点とGND間に接続し、マイコン403の入出力ポートをb点に接続する。コンデンサC
1は、定電流ダイオードCRD
1とb点との接続点と、V
ccとの間に接続されている。抵抗R
bは、a点とトランジスタTr
1のベース端子との間に接続されている。トランジスタTr
1は、定電流ダイオードCRD
1とGNDとの間に接続されている。V
ccはマイコン403の電源電圧に接続され、GNDはマイコン403のグランド端子に接続されている。
【0045】
平均化回路402の動作について説明する。ACアダプタ2に電流が流れると、電流検出部401に電圧が発生する。a点に発生した電圧が正であれば、トランジスタTr
1のベース−エミッタ間には、抵抗R
bを介して電流I
bが流れ、トランジスタTr
1のコレクタ−エミッタ間のインピーダンスが低下し、定電流ダイオードCRD
1の特性によって決定される電流I
cが流れる。電流I
cが流れることによりコンデンサC
1には電荷が蓄積され、コンデンサC
1の両端に電圧が発生する。電流I
cは定電流ダイオードCRD
1の特性によって決まる定電流値であるため、コンデンサC
1の電圧は、電流I
cが流れた時間、すなわち電流導通時間に比例する。そのため、コンデンサC
1の電圧を求めることにより、電流導通時間を求めることが可能となる。
【0046】
図6を参照しながら、平均化回路402において電流導通時間を平均化する処理について説明する。
図6は、ACアダプタ電流と、電流I
cと、
図5に示すb点電位と、マイコン403の入力ポート状態の関係を示す。まずマイコン403の入出力ポートをHigh出力にする。これによりコンデンサC
1の両端の電位差があった場合、マイコン403の入出力ポートに電流が流れ、コンデンサC
1の両端の電位差は0となる。その後マイコン403の入出力ポートを入力に切り替える。これにより、インピーダンスが大きくなり電流はほぼ流れなくなるため、コンデンサC
1の両端の電圧は0でフローティング状態となる。マイコン403は、入力に切り替えた瞬間から経過時間をカウントしつつ入出力ポートの状態を監視する。
図6に示すように、カウント開始時点ではコンデンサC
1の両端の電位差は0であり入出力ポートの状態はHighであるが、ACアダプタ2に電流が流れ、電流検出部401に電圧が発生すると、上述したようにコンデンサC
1に電流I
cが流れるため、コンデンサC
1に電荷が蓄積され始める。それに伴いコンデンサC
1の両端には電位差が発生し、すなわちマイコン入出力ポートの電位は下がり始める。入出力ポートの電位がマイコン403のLow判定の閾値電圧V
lowを下回り、入力ポートの状態がLowになった時点で経過時間カウントを停止する。
【0047】
カウント開始から停止までの時間をT
1とし、商用電源電圧の周期を1cycleとすると、1cycleあたりの平均化電流導通時間Tは、以下の計算手法で導き出すことができる。
【0048】
まず、平均化電流導通時間Tの間にコンデンサC
1に電流I
cが流れることによって発生する電位差V
tは、コンデンサC
1の容量をC
c1として、以下の(式1)のように表される。
V
t=(I
c・T)/C
c1 (式1)
【0049】
ここで、マイコン403の入出力ポートの状態をHighからLowに切り替えるためにはV
cc−V
lowの電位差を発生させなければならない。1cycleに1回コンデンサC
1に電流I
cが流れるため、マイコン403の入出力ポートをHighからLowに切り替えるために必要なcycle数Nは、以下の(式2)で表される。
N=(V
cc−V
low)/V
t (式2)
【0050】
カウント開始から停止までの時間、すなわちマイコン403の入出力ポートの状態がHighからLowに切り替わるまでに経過した時間をT
1とし、商用電源周波数をfとし、T
1をcycle数に変換すると、以下の(式3)で表される。
N=f・T
1 (式3)
【0051】
上記(式1)〜(式3)よりN、V
tを消去すると、平均化電流導通時間Tについて、以下の(式4)が得られる。
T=C
c1・(V
cc−V
low)/(f・T
1・I
c) (式4)
【0052】
例えば、V
cc=5V、V
low=1V、C
c1=100μF、I
c=1mAと設計し、T
1の測定値が50msecだった場合、(式4)から平均化電流導通時間Tは4msecと計算できる。
【0053】
本手法を用いることにより、サンプリング周波数を抑えてマイコンのクロックを抑えることができ、低コスト、低消費電力化を図ることができる。例えば、4msecの電流導通時間を精度1%で測定するためには最低でも25kHzのサンプリングが必要であるが、50msecの時間を精度1%で測定するためには最低2kHzのサンプリングでよいからである。また、25kHzのサンプリングで50msecの時間を測定する際の精度は0.08%であり、測定精度を向上させるという見方をすることもできる。
【0054】
なお、コンデンサC
1の容量C
c1を増やし、定電流ダイオードCRD
1の定格電流I
cを小さくすることにより長時間における電流導通時間の平均化をすることができ、効果を高めることができる。