(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の形態は、以下の構成単位を含むか、又はこれらからなる櫛型ポリマーKPに関する:
aモル分率の式(I)の部分構造単位S1
【化1】
bモル分率の式(II)の部分構造単位S2
【化2】
cモル分率の式(III)の部分構造単位S3
【化3】
(式中、
各Mは、互いに独立に、H
+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、等価の2価若しくは3価金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウム基を表し;
各R
uは、互いに独立に、水素又はメチル基を表し;
各R
vは、互いに独立に、水素又はCOOMを表し;
各R
1は、互いに独立に、C
1〜C
20アルキル、−シクロアルキル、−アルキルアリール、又は−[AO]
n−R
2を表し、ここで、A=C
2〜C
4アルキレンであり、R
2=C
1〜C
20アルキル、−シクロヘキシル、又はアルキルアリールであり、そしてn=2〜300であり;
各R
3は、互いに独立に、C
1〜C
5アルキル基、好ましくはメチル、エチル又はイソプロピル基を表し;
各R
4は、互いに独立に、水素、C
1〜C
5アルキル基、好ましくは水素を表し;
各R
5は、互いに独立に、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は7〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール基を表し;
各Zは、互いに独立に、酸素又はN−R
6を表し、ここでR
6は、水素、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は7〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール基を表し;
xは1〜4の値を有し;
yは2〜250の値を有し;
wは0〜5の値を有し;
かつ、ここでa、b、cは、各部分構造単位S1、S2及びS3のモル分率を表し、
このモル比
a/b/c=(0.1〜0.9)/(0〜0.4)/(0.1〜0.9)、
特に、a/b/c=(0.4〜0.8)/(0〜0.25)/(0.1〜0.4)、
特に、a/b/c=(0.4〜0.8)/(0.05〜0.25)/(0.1〜0.4)であり、
但し、a+b+c=1である)。
【0014】
部分構造単位S1、S2及びS3の配列は、交互、ブロック型、又はランダムでもよい。さらに、部分構造単位S1、S2及びS3に加えて、追加の部分構造単位が存在することも可能である。
【0015】
Mが有機アンモニウム基である場合、これは特に、アルキルアミン又はC−ヒドロキシル化アミンから、特にヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンから得られる。
【0016】
好ましくは、部分構造単位S1、S2及びS3は一緒に、櫛型ポリマーKPの総重量に基づいて、少なくとも50wt%、特に少なくとも90wt%、特に好ましくは少なくとも95wt%のモル分率を構成する。また好ましくは、部分構造単位S1、S2及びS3中に存在する原子の総数は、櫛型ポリマー中に存在するすべての原子の、少なくとも50wt%、特に少なくとも90wt%、特に好ましくは少なくとも95wt%を占める。
【0017】
特に、櫛型ポリマーKP中に存在するR
uとR
vは水素である。すなわち、櫛型ポリマーKPは、アクリル酸モノマーに基づいて製造することができ、これは経済的観点から有益である。さらに、この関連で、このような櫛型ポリマーは、良好な流動化効果と最適な加工時間を与える。
【0018】
有利には、R
1=[AO]
n−R
2の基において、好ましくはAはC
2−アルキレンである。すなわち、R
1は好ましくは(CH
2CH
2O)
n−R
2に等しい。有利には、このような場合、n=10〜70、特にn=20〜30である。R
2基は、特にC
1〜C
20アルキル、好ましくはCH
3である。
【0019】
有利な態様において、R
3=CH
3、R
4=Hであり、R
5は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基である。好ましくはR
5=CH
3である。
有利な態様において、z=N−R
6である。ここで、R
6は、特に1〜20個の炭素原子を有するアルキル基である。特に好ましくは、R
6=CH
3である。
【0020】
さらに、y=10〜70、特にy=20〜30であると有利であることが証明されている。こうして、良好な流動化効果が達成される。さらに、このような櫛型ポリマーは通常、易水溶性である。
好適な態様において、x=1である。これは、特にZ=N−R
6である場合に、該当する。
【0021】
部分構造単位S3中のプロピレンオキサイド単位−CH(CH
3)CH
2O−及びエチレンオキサイド単位−CH
2CH
2O−の配列は、基本的に交互、ブロック型、又はランダムでもよい。しかし好ましくは、この配列はブロック形態である。このような場合、プロピレンオキサイド単位を有するブロックは、構造単位Zの直後にくる。次にエチレンオキサイド単位を有するブロックは、特にプロピレンオキサイド単位を有するブロックの後に来る。すなわち、プロピレンオキサイド単位を有するブロックは、好ましくは部分構造Zとエチレンオキサイド単位を有するブロックとの間に位置する。
【0022】
好ましくは、y>wである。w/y比は、好ましくは≧1/50である。特にw/y≦3/15である。特に、2/30≦w/y≦3/30である。
好適な態様において、w=0である。w>0の場合、wは特に1〜3、特に2〜3に等しい。
y/x比は、有利には0.5〜250、特に1〜70、好ましくは2.5〜70、特に2.5〜30の範囲である。
【0023】
櫛型ポリマーKPの重量平均分子量(M
W)は、特に5,000〜150,000g/mol、好ましくは10,000〜100,000g/molである。櫛型ポリマーKPの数平均分子量(M
n)は、有利には3000〜100,000g/mol、特に8,000〜70,000g/molである。
【0024】
さらに比率a/c=10:1〜1:1、特に5:1〜1.5:1が有利であることが証明されている。
比率a/(b+c)はまた、特に10:1〜1:1、特に5:1〜1.5:1に等しい。
【0025】
さらなる形態において、本発明は、組成物、特に上記の少なくとも1種の櫛型ポリマーKPと無機バインダーとを含む、モルタル組成物、コンクリート組成物又はセメント組成物に関する。無機バインダーは、好ましくは水硬性バインダー、特にセメント、好ましくはポートランドセメント(Portland cement)である。
【0026】
用語「無機バインダー」は特に、水の存在下、水和反応で反応して固体水和物又は水和物相を形成するバインダーを定義する。これは、例えば、水硬性バインダー(例えばセメント又は水硬化性石灰)、潜在性水硬性バインダー(例えばスラグ)、ポゾランバインダー(例えばフライアッシュ)、又は非水硬性バインダー(石膏又はしっくい)でもよい。ここで「セメントバインダー」は特に、少なくとも5wt%、特に少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも35wt%、特に少なくとも65wt%の割合のセメントクリンカーを有するバインダー又はバインダー組成物として定義される。セメントクリンカーは、好ましくはポートランドセメントクリンカーである。本文脈において、セメントクリンカーは特に粉砕されたセメントクリンカーをいう。
【0027】
特に、無機バインダー又はバインダー組成物は、水硬性バインダー、好ましくはセメントを含む。特に好適なものは、セメントクリンカー割合≧35wt%のセメントである。特にセメントは、CEM I、CEM II、及び/又はCEM IIIAタイプ(Standard EN 197−1に従う)のものである。全ての無機バインダー中の水硬性バインダーの割合は、有利には少なくとも5wt%、特に少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも35wt%、特に少なくとも65wt%である。追加の有利な態様において、無機バインダーは≧95wt%の水硬性バインダー、特にセメントクリンカーからなる。
【0028】
しかし、バインダー又はバインダー組成物が他のバインダーを含有するか又はこれからなる場合に、有利な場合もある。これらは特に、潜在性水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダーである。適切な潜在性水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダーは、例えばスラグ、フライアッシュ、及び/又はシリカダストである。バインダー組成物はまた、石灰石、石英粉、及び/又は顔料などの不活性材料を含んでよい。有利な態様において、無機バインダーは、5〜95wt%、特に5〜65wt%、特に好ましくは15〜35wt%の潜在性水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダーを含有する。有利な潜在性水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダーは、スラグ及び/又はフライアッシュである。
【0029】
特に好適な態様において、無機バインダーは水硬性バインダー、特にセメント又はセメントクリンカー、及び潜在性水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダー、好ましくはスラグ及び/又はフライアッシュを含有する。ここで潜在性水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダーの割合は、特に好ましくは5〜65wt%、特に好ましくは15〜35wt%であり、一方、少なくとも35wt%、特に少なくとも65wt%の水硬性バインダーが存在する。
【0030】
組成物中で、櫛型ポリマーKPは、特に、無機バインダーに基づいて、0.001〜10wt%、特に0.01〜5wt%の割合を有する。
さらに本発明は、上記の少なくとも1種の櫛型ポリマーKPを含有する水性組成物に関する。水性組成物の総重量に基づいて櫛型ポリマーKPの割合は、特に10〜90wt%、好ましくは20〜50wt%である。
【0031】
好適な態様において本発明は、以下の性質を有する部分構造単位S1とS3からなる櫛型ポリマーKP−1を提供する:
a/c=1/(0.2〜3)及びb=0であり、
R
u=R
v=H、R
3=CH
3、R
4=H、R
5=CH
3であり、
M=H又はNaであり、
Zは、酸素を表し、そして
x=1〜4、y=20〜30、及びw=0である。
【0032】
さらなる好適な態様において本発明は、以下の性質を有する部分構造単位S1、S2及びS3からなる櫛型ポリマーKP−2を提供する:
a/b/c=1/(0.1〜1.5)/(0.1〜1.5)であり、
R
u=R
v=H、R
1=(CH
2CH
2O)
nCH
3、n=23〜26であり、
R
3=CH
3、R
4=H、及びR
5=CH
3であり、
M=H又はNaであり、
Zは、酸素を表し、そして
x=1〜4、y=20〜30、及びw=0である。
【0033】
別の好適な態様において本発明は、以下の性質を有する部分構造単位S1とS3からなる櫛型ポリマーKP−3を提供する:
a/c=1/(0.2〜3)、及びb=0であり、
R
u=R
v=H、R
3=CH
3、R
4=H,及びR
5=CH
3であり、
M=H又はNaであり、
Z=N−CH
3であり
x=1、y=20〜30、及びw=0である。
【0034】
さらなる好適な態様において本発明は、以下の性質を有する部分構造単位S1、S2、及びS3からなる櫛型ポリマーKP−4を提供する:
a/b/c=1/(0.1〜1.5)/(0.1〜1.5)であり、
R
u=R
v=H、R
1=(CH
2CH
2O)
nCH
3、及びn=23〜26であり、
M=H又はNaであり、
Z=N−CH
3であり
x=1、y=20〜30、及びw=0である。
【0035】
本発明の追加の形態は、無機バインダーと組合せた上記の櫛型ポリマーKPの種々の用途に関する。知られているように、櫛型ポリマーKPは、特に以下の用途又は目的に適している:
− 無機バインダー、特に水硬化性バインダー、好ましくはセメントバインダー、特に好適にはポートランドセメント用の超流動化剤(superplasticizer)としての、櫛型ポリマーの使用。
− 加工時間を延長するための無機バインダーを含有する組成物中の櫛型ポリマーKPの使用。特に、水硬性バインダー、好ましくはセメントバインダー、特にポートランドセメントにおける使用。
− 作業性を向上させるための無機バインダーを含有する組成物中での櫛型ポリマーKPの使用。特に、水硬化性バインダー、好ましくはセメントバインダー、特にポートランドセメントにおける使用。
− 無機固体、特に無機バインダー又はフィラー、例えばセメント、石灰、スラグ、及び/又は石膏用の粉砕助剤としての櫛型ポリマーKPの使用。
【0036】
さらに、本発明は、櫛型ポリマーKPを製造するための方法に関する。
上記した櫛型ポリマーKPを製造するための、以下で「ポリマー類似」法とも呼ばれる第1の方法は、以下の工程を含む:
a)以下の式(IV)の構造単位を含むか、又はこれからなる基礎ポリマーBPを提供し、かつ/又は製造する工程:
【化4】
(式中、M、R
u及びR
vは上記で定義したものであり、
m>2、特にm=20〜100である);
b)基礎ポリマーBPを式(V)の化合物、及び随意に式(VI)の化合物を用いてエステル化して、櫛型ポリマーKPを形成する工程:
【化5】
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、x、y、w、及びnは、第1の発明で定義されるものである)。
【0037】
工程a)における基礎ポリマーBPは、特にポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及び/又はアクリル酸とメタクリル酸とのコポリマーである。式(I)の基礎ポリマーBPの数平均分子量(M
n)は、好ましくは500〜20,000g/mol、特に500〜10,000g/mol、さらに好ましくは3,000〜5,000g/molである。
【0038】
このような基礎ポリマーBPは、公知の方法により、アクリル酸モノマー及び/又はメタクリル酸モノマーから調製することができる。しかし、例えばマレイン酸モノマー及び/又は無水マレイン酸モノマーを使用することもできる。これは、特に経済性及び安全性の理由から有利となり得る。
【0039】
工程a)において、基礎ポリマーBPは基本的に、フリーラジカル開始剤及び/又は分子量制御物質の存在下で、例えばアクリル酸及び/又はメタクリル酸の水系のフリーラジカル重合により製造される。
【0040】
工程a)のフリーラジカル開始剤は、特にペルオキソ二硫酸Na、K、又はアンモニウムである。同様に、工程a)のフリーラジカル開始剤として適しているのは、例えばH
2O
2/Fe
2+に基づいてレドックス対である。
【0041】
好ましくは工程a)の分子量制御物質は、亜硫酸アルカリ又は亜硫酸水素である。また、リン酸誘導体も有利である。工程a)の分子量制御物質はまた、チオール基を含有する有機化合物でもよい。
適切な基礎ポリマーBPは、また様々な供給業者から購入することもできる。
【0042】
特に、工程b)のエステル化のために、酸及び/又は塩基を例えば触媒として添加してもよい。エステル化は、有利には120〜200℃、特に160〜180℃の高温で行われる。こうして収率を大幅に改善することができる。
【0043】
工程b)で使用されるZ=酸素である式(V)の化合物は、市販されている(例えば、Sigma−Aldrich Chemie GmbH, Switzerlandから)か、又は公知の方法で、一端がR
5末端キャップされたポリエチレンオキシドへのプロピレンオキサイドの添加により製造することができる。このR
5末端キャップされたポリエチレンオキシドは、公知の方法で、式HO−R
5のアルコールにエチレンオキサイド単位を加えることで得ることができる。
【0044】
Z=N−R
6である式Vの化合物を製造するために、R
5末端キャップされたポリエチレンオキシドを、例えば水素及び/又は金属触媒の存在下で高温で、アンモニア又は式H
2N−R
6の化合物と反応させることができる。こうして、末端OH基はR
6置換基により末端アミノ基に変換される。一部の対応するポリエーテルアミンはまた、例えばJeffamineの商品名(Huntsman Corporation, USA)で市販されている。次に、プロピレンオキサイドとの公知の反応が行われて化合物(V)が製造される。
【0045】
また、R
5末端キャップされたポリエチレンオキシドとアンモニアとの反応によっても可能であり、ここで末端アミノ基はポリエチレンオキシドの末端OH基から形成される。末端アミノ基にR
6基(たとえHと等しくはなくても)を導入するために、特に式H−C(=O)−R
6のアルデヒドとの反応が行われてもよい。次に、得られた化合物は、再度公知の方法により、プロピレンオキサイドと反応されて、化合物(V)を形成することができる。
【0046】
工程b)で使用される式(VI)の化合物は、様々な供給業者から市販されている。
【0047】
上記した櫛型ポリマーKPを製造するための、以下で「共重合法」とも呼ばれる第2の方法は、以下のモノマーの共重合工程を含む:
aモル分率の式(VII)のモノマーM1
【化7】
bモル分率の式(VIII)のモノマーM2
【化8】
cモル分率の式(IX)のモノマーM3
【化9】
(式中、a、b、及びcは、各モノマーM1、M2、及びM3のモル分率を表し、
モル比a/b/c=(0.1〜0.9)/(0〜0.4)/(0.1〜0.9)であり、
但し、a+b+c=1であり、
ここで、M、R
u、R
v、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、x、y、w、及びnは上記で定義したものである)。
【0048】
モノマーM2とM3は、公知の方法により、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及び/又は無水マレイン酸を、式(V)及び(VI)の化合物(上記参照)でエステル化することにより製造することができる。
第1の方法に関連して上記したフリーラジカル開始剤及び/又は分子量制御物質を、第2の方法の共重合法で使用してもよい。
知られているように、第1の方法に製造される櫛型ポリマーは、無機バインダー組成物の作業性を延ばすことに関して、第2の方法(共重合)で製造される対応する櫛型ポリマーより有意に有効である。
【0049】
さらなる形態において、本発明は、Z=N−R
6を有する式(V)の化合物及びZ=N−R
6を有する式(IX)の化合物に関する。これらの化合物は、すでに記載した方法において本発明の櫛型ポリマーKPを調製するための中間体又は出発材料として使用することができる。R
u、R
v、R
3、R
4、R
5、R
6、x、y、及びwは、上記で定義したものである。好ましくは、R
u=R
v=H,x=1、R
3=CH
3、R
4=Hであり、かつ/又はR
5は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基である。特にR
5=CH
3である。R
6は特に、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基である。特に好ましくは、R
6=CH
3である。有利な態様において、y=10〜70、特に20〜30、及び/又はw=0である。
【0050】
例示的態様
1.測定法
液体クロマトグラフィー測定は、Waters CorporationのACQUITY UPLCを用いて、ELS及びPDA検出器ならびにBEH300 C18、2.1×100mm、1.7μmカラムを使用して、0.15%のギ酸を移動相Aとし、アセトニトリルを移動相Bとして行なった。
【0051】
分子量測定は、水性溶離液を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により行なった。綿密に較正したポリアクリル酸ナトリウム標準物質を較正のために使用した。使用した溶離液は、0.1M硝酸ナトリウム溶液(pH=12)である。均一溶媒流速は0.8ml/分であった。IGPCカラム:Varian Ultrahydrogel 7.8×300mm。ピークを、Varian RI−4示差屈折計とWaters SATI/INモジュールUV検出器を用いて定量した。
【0052】
2.使用した材料
特に、ポリマーを製造するために以下の出発材料を使用した:
− SOKALAN PA25CL PN:約50%、水中の部分的に中和されたポリアクリル酸。平均分子量M
W=4000g/mol。この製品はBASF(Germany)から市販されている。
− MPEG 1000:平均分子量1000g/molを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル。エチレンオキサイド(EO)含量:23〜26EO基/mol。
− RMB 5090:平均分子量が約1000g/molで、EO含量が23〜26EO基/molである、1〜4オキシプロピレン単位で末端キャップされたモノメチルポリエチレングリコール。RMB 5090は、INEOS社の製品である。
− PEA 1065:式(X)の平均分子量が約1065g/molのN−(ポリオキシエチレン)−N−(メチル)−アミノアルコール:
【化10】
ここで、y=23〜26である。
PEA 1065は、実験生成物である。この調製は、MPEG 1000が水素と金属触媒の存在下で高温及び高圧で、メチルアミンと反応されて、ポリエーテルアミンを生成し、これは次に、1モルのプロピレンオキサイドと反応されることで行われる。
− IRGANOX 1010:ポリアルキレングリコールの安定剤であり、Ciba Specialty Chemicals(Switzerland)から入手できる。
− RONGALIT:非ヒドロキシメタンスルフィナート。BASF(Germany)から入手できる。
【0053】
3.櫛型ポリマーの調製の例
3.1 KP−1(ポリマー類似エステル化)
モル比が約1/0.57の部分構造単位S1とS3からなり、分子量約4000g/molのポリアクリル酸をRMB 5090でポリマー類似エステル化することにより製造される櫛型ポリマーKP−1。エステル化度:カルボキシル基に基づき36.5%。
【0054】
機械攪拌器、温度計、ガス注入管、及び蒸留装置を有する2リットルの四ツ首丸底フラスコに、320gのSOKALAN PA 25 CL−PN(約2モルのカルボキシル基に相当)、8gの50%硫酸、14gのp−トルエンスルホン酸、及び0.4gのIRGANOX 1010を充填した。50℃に加熱後、800g(約0.730モル)のRMB 5090を素早く加え、混合物を窒素下で165℃で45分間加熱し、165℃で30分間維持した。次に、8gの50%水酸化ナトリウムを加え、次に温度を180℃に上げ、同時に80mbarの圧力を加えると、均一な反応混合物が生成された。次に、この反応溶液を180℃で4時間維持し、内圧を70mbarに低下させた。次に、温度を180℃でさらに3時間維持し、反応の進行を液体クロマトグラフィーにより追跡した。ここで、反応の転化率は、91.5%に到達後は一定のままであった。
【0055】
90℃に冷却後、600gの溶融物を900gの水に加えて攪拌することにより、透明な溶液に変換された。固形分含量:39.9%。
【0056】
3.2 KP−2(ポリマー類似エステル化)
モル比が約1/0.30/0.30の部分構造単位S1、S2及びS3からなり、分子量約4000g/molのポリアクリル酸をMPEG 1000(0.36モル)とRMB 5090(0.36モル)でポリマー類似エステル化することにより製造される櫛型ポリマーKP−2。エステル化度:カルボキシル基に基づき36.5%。
【0057】
機械攪拌器、温度計、ガス注入管、及び蒸留装置を有する2リットルの四ツ首丸底フラスコに、320gのSOKALAN PA 25 CL−PN(約2モルのカルボキシル基に相当)、8gの50%硫酸、14gのp−トルエンスルホン酸、及び0.4gのIRGANOX 1010を充填した。50℃に加熱後、360g(約0.36モル)のMPEG 1000と400g(約0.36モル)のRMB 5090を迅速に加え、混合物を窒素下で165℃で45分間加熱し、165℃で30分間維持した。次に、8gの50%水酸化ナトリウムを加え、次に温度を180℃に上げ、同時に80mbarの圧力を加えると、均一な反応混合物が生成された。次に、この反応溶液を180℃で3.5時間維持し、内圧を70mbarに低下させた。次に、温度を180℃でさらに3時間維持し、反応の進行を液体クロマトグラフィーにより追跡した。ここで、反応の転化率は、92%に到達後は一定のままであった。
【0058】
90℃に冷却後、600gの溶融物を900gの水に加えて攪拌することにより、ポリマー含量が92%の透明な溶液に変換された。固形分含量:40.2%。
【0059】
3.3 KP−3(ポリマー類似エステル化)
モル比が約1/0.57の部分構造単位S1とS3からなり、分子量約4000g/molのポリアクリル酸をPEA 1065でポリマー類似エステル化することにより製造される櫛型ポリマーKP−3。エステル化度:カルボキシル基に基づき36.5%。
【0060】
機械攪拌器、温度計、ガス注入管、及び蒸留装置を有する2リットルの四ツ首丸底フラスコに、320gのSOKALAN PA 25 CL−PN(約2モルのカルボキシル基に相当)、8gの50%硫酸、14gのp−トルエンスルホン酸、及び0.4gのIRGANOX 1010を充填した。50℃に加熱後、775g(約0.73モル)のPEA 1065を迅速に加え、混合物を窒素下で165℃で45分間加熱し、165℃で30分間維持した。次に、温度を180℃に上げ、同時に80mbarの圧力を加えると、均一な反応混合物が生成された。次に、この反応溶液を180℃で3時間維持し、内圧を70mbarに低下させた。次に、温度を180℃でさらに2時間反応を続けて、反応の進行を液体クロマトグラフィーにより追跡した。ここで、反応の転化率は、91%に到達後は一定のままであった。
【0061】
90℃に冷却後、600gの溶融物を900gの水に加えて攪拌することにより、透明な溶液に変換した。固形分含量:40%。
【0062】
3.4 KP−4(ポリマー類似エステル化)
モル比が約1/0.29/0.29の部分構造単位S1、S2及びS3からなり、分子量約4000g/molのポリアクリル酸をMPEG 1000(0.4モル)とPEA 1065(0.4モル)でポリマー類似エステル化することにより製造される櫛型ポリマーKP−4。エステル化度:カルボキシル基に基づき36.5%。
【0063】
機械攪拌器、温度計、ガス注入管、及び蒸留装置を有する2リットルの四ツ首丸底フラスコに、320gのSOKALAN PA 25 CL−PN(約2モルのカルボキシル基に相当)、8gの50%硫酸、14gのp−トルエンスルホン酸、及び0.4gのIRGANOX 1010を充填した。50℃に加熱後、360g(約0.36モル)のMPEG 1000と383g(約0.36モル)のPEA 1065を迅速に加え、混合物を窒素下で165℃で45分間加熱し、165℃で30分間維持した。次に、温度を180℃に上げ、同時に80mbarの圧力を加えると、均一な反応混合物が生成された。次に、この反応溶液を180℃で3.5時間維持し、内圧を70mbarに低下させた。次に、温度を180℃でさらに2時間維持し、反応の進行を液体クロマトグラフィーにより追跡した。ここで、反応の転化率は、92%に到達後は一定のままであった。
【0064】
90℃に冷却後、600gの溶融物を900gの水に加えて攪拌することにより、ポリマー含量が92%の透明な溶液に変換された。固形分含量:40%。
【0065】
3.5 櫛型ポリマーKP−5(共重合)
モル比が約1/0.57の部分構造単位S1とS3からなり、アクリル酸(1.27モル)とRMB 5090(0.75モル)とのフリーラジカル共重合により製造される櫛型ポリマーKP−5。
【0066】
1)モノマー混合物1
アクリル酸とRMB 5090−アクリレートのモノマー混合物の調製
バッチ1: RMB 5090 800g(0.75モル)
アクリル酸 144g(2モル)
p−トルエンスルホン酸 15g
フェノチアジン 0.5g
トルエン 350g
【0067】
攪拌器、温度計、及び水分離器を有する2リットルの三ツ首丸底フラスコに、バッチ1のすべてを充填し、30分以内に126℃に加熱した。次に、エステル化混合物の温度を35分以内に130℃に上げ、水が分離されなくなるまで(総重量14.5ml)、穏やかに12.5時間還流してこの温度を維持した。HPLCを使用して、RMB 5090に基づいて95%エステルのモノマー混合物の最終含量を測定した。
【0068】
2)櫛型ポリマーKP−5の共重合
出発材料1: 200gの水
6gの過酸化水素(35%)
原料1: 320gのモノマー混合物1
80gの水
3gのRongalit
0.1gの硫酸鉄(II)7水和物
【0069】
温度計と攪拌器とを有する1リットルの三ツ首ガラスフラスコに室温で出発混合物1を充填し、原料1を計量ポンプを使用して60分かけて加え、温度を21℃〜41℃に上昇させた。
次に、30分間攪拌を続け、反応生成物を分液ロートに入れた。上層(トルエン)を分離し、下の水相をロータリーエバポレーターで残りのトルエンから分離した。
櫛型ポリマーKP−5の水溶液が得られ、これに水を加えて固形分含量を40%に調整した。
【0070】
3.6 比較例V1
モル比が約1/0.57の部分構造単位S1とS2からなり、分子量約4000g/molのポリアクリル酸をMPEG 1000でポリマー類似エステル化することにより製造される櫛型ポリマーV1。エステル化度:カルボキシル基に基づき43%。
【0071】
機械攪拌器、温度計、ガス注入管、及び蒸留装置を有する2リットルの四ツ首丸底フラスコに、320gのSOKALAN PA 25 CL−PN(約2モルのカルボキシル基に相当)、8gの50%硫酸、14gのp−トルエンスルホン酸、及び0.4gのIRGANOX 1010を充填した。50℃に加熱後、860g(約0.86モル)のMPEG 1000を加え、混合物を窒素下で165℃で45分間加熱し、165℃で30分間維持した。次に、8gの50%水酸化ナトリウムを加え、温度を180℃に上げ、同時に80mbarの圧力を加えると、均一な反応混合物が生成された。次に、この反応溶液を180℃で2時間維持し、この間、内圧を70mbarに低下させた。次に、180℃でさらに1.5時間反応を続け、反応の進行を液体クロマトグラフィーにより追跡し、ここで、反応の転化率は、92%に到達後は一定のままであった。
【0072】
90℃に冷却後、600gの溶融物を900gの水に加えて攪拌することにより、透明な溶液に変換した。固形分含量:40.2%。
【0073】
3.7 比較例V2
部分的に中和されたNa塩の形の、約4000g/molの分子量を有する40%ポリアクリル酸。
この目的のために、100gのSOKALAN PA25CL PNを25gの水で希釈した。
【0074】
4. フレッシュモルタル実験
4.1 フレッシュモルタル試料の調製
本発明の櫛型ポリマーKP−1〜KP−5の有効性を証明するために、すべてが同じ量のこれらのポリマー又は比較ポリマーの40%溶液を含むフレッシュセメントモルタルを調製した。
【0075】
具体的には、表1にその詳細を示すフレッシュモルタル組成物を調製した。
【表1】
【0076】
フィラー、砂、及びセメントをホバート(Hobart)モルタルミキサー中で60秒間混合した。次に、計量水に溶解した40%ポリマー溶液を加え、モルタルを3分間機械混合した。
【0077】
4.2 時間依存性スランプ
フレッシュモルタル組成物の流れ挙動を、DIN 18555 part2に従って流れ表試験を使用して測定した。
広がったモルタルの直径を2つの方向で測定し、平均を流れ値とした。測定プロセスを、60、120、及び180分後に、各場合に30秒間の混合後に、繰り返した。
モルタルの流れの時間依存の程度は、その時間依存性作業性又は作業性時間の尺度である。新たに調製したモルタルの稠度、すなわち移動度と粘度は、作業性の最も重要な性質である。
【0078】
表2は、種々のフレッシュモルタル試料の時間依存性スランプの概略を与える。
【表2】
【0079】
特に、表2から、そのすべてが本発明の櫛型ポリマーを含有するフレッシュモルタル組成物P1〜P5は、最大180分まで作業性が維持されることが明らかである。これは、従来のポリマーを含む試料P6やP7とは異なる。
これらの試験中の最良の結果は、試料P3で、又はポリオキシエチレン−N−(メチル)−アミノアルコール(PEA 1065)に基づく側鎖を有する櫛型ポリマーKP−3で得られる。櫛型ポリマーKP−3は、オキシプロピレン末端キャップ化モノメチルポリエチレングリコール(RMB 5090)に基づく側鎖を有する櫛型ポリマーKP−1より良好である。
【0080】
それぞれ櫛型ポリマーKP−2とKP−4を有する試料P2とP4では、特に120分と180分後の粘度は、試料P1及びP3の場合より、より大きく上昇する。これは、櫛型ポリマーKP−2及びKP−4中のS3部分構造単位の数がより少ないことが特に原因である。これにより、本発明の櫛型ポリマー中の部分構造単位S3の適切さを確認できる。
【0081】
共重合により製造される櫛型ポリマーKP−5が、ポリマー類似法により製造される櫛型ポリマーKP−1と比較して、より劣った結果を与えることが注目される。すなわちポリマー類似法で製造された櫛型ポリマーは、共重合により製造された対応する櫛型ポリマーとは異なる。
【0082】
フレッシュモルタルとフレッシュコンクリートの流れ挙動間には密接な相関が存在するため、得られた結果は、基本的にフレッシュコンクリートにも使用できる。
しかし、上記態様は単に例示的な例と解釈すべきであり、これは、本発明の範囲内で必要に応じて変更することができる。