(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0012】
[プラズマ処理装置の全体構成]
まず、本発明の一実施形態にかかるプラズマ処理装置の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態にかかるプラズマ処理装置の全体構成の一例である。
図1には、一実施形態にかかるプラズマ処理装置の縦断面が示されている。
【0013】
プラズマ処理装置1は、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型のチャンバ10を有している。チャンバ10は接地されている。チャンバ10の内部では、基板にエッチング処理等のプラズマ処理が施される。ここでは、チャンバ10内に下部電極と上部電極とを対向配置し、上部電極からガスをチャンバ内に供給する平行平板型(容量結合型プラズマ:CCP:Capacitively Coupled Plasma)のプラズマ処理装置を例に挙げて説明する。
【0014】
チャンバ10内には、基板の一例としての半導体ウェハW(以下、ウェハWと称呼する)を載置する載置台104が設けられている。載置台104は、たとえばアルミニウムAlやチタンTi、炭化ケイ素SiC等の材質からなっている。載置台104の上面には、ウェハWを静電吸着するための静電チャック106が配置されている。静電チャック106の周縁部には、エッチングの面内均一性を高めるために、例えばシリコンから構成されたフォーカスリング108が配置されている。
【0015】
静電チャック106は、絶縁体106bの間にチャック電極106aを挟み込んだ構造となっている。チャック電極106aには直流電圧源34が接続され、直流電圧源34から電極106aに直流電圧が印加されることにより、クーロン力によってウェハWが静電チャック106に吸着される。
【0016】
載置台104には、高周波電源32が整合器33を介して接続されている。高周波電源32は、チャンバ10の内部にてプラズマを生成するために適した周波数、例えば60MHzの高周波電力を載置台104に印加する。このようにして載置台104は下部電極としても機能する。
【0017】
チャンバ10の天井部には、その周縁部を被覆するシールドリング40を介してシャワーヘッド25が設けられている。シャワーヘッド25には、ガス供給源15からガスを導入するためのガス導入口45が形成されている。シャワーヘッド25の内部にはガス導入口45から導入されたガスを拡散する拡散室50が設けられている。拡散室50で拡散されたガスは、多数のガス供給孔55からチャンバ10内に供給される。かかる構成により、シャワーヘッド25は接地電位の上部電極としても機能する。これにより、高周波電源32からの高周波電力は、載置台104とシャワーヘッド25との間に容量的に印加される。
【0018】
チャンバ10の底部には排気口が形成され、排気口は排気装置62に接続されている。排気装置62は図示しない真空ポンプを有しており、チャンバ10内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。
【0019】
静電チャック106には複数のヒータ116a、116b、116c(以下、総称して「ヒータ116」ともいう。)が埋め込まれている。ヒータ116aは、静電チャック106を複数のゾーン(領域)に分割したときのセンターゾーン(
図9(a)参照)に設けられ、ヒータ116bはミドルゾーンに設けられ、ヒータ116cはエッジゾーンに設けられている。各ヒータ116には、交流電源44から所望の電流が流される。
【0020】
また、載置台104の内部には、冷媒流路104aが形成されている。冷媒流路104aには、図示しないチラーユニットから配管104b,104cを介して冷媒が循環供給される。
【0021】
かかる構成によれば、冷媒流路104aに流す冷媒による冷却とヒータ116による加熱によってウェハWを所望の温度に調整することができる。また、これらの温度制御は、制御部100からの指令に基づき行われる。
【0022】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)105,ROM(Read Only Memory)110、RAM(Random Access Memory)115を有する。CPU105は、ROM110又はRAM115に格納された各種レシピに従ってプラズマ処理を実行する。レシピには、プロセス条件に対する装置の制御情報であるプロセス時間、処理室内温度(上部電極温度、処理室の側壁温度、静電チャックの各ゾーンの設定温度など)、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、各種ガス流量、伝熱ガス流量等が記載されている。なお、制御部100の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもよい。以上、本実施形態にかかるプラズマ処理装置1の全体構成の主要な構成について説明した。
【0023】
(ゾーン毎の温度制御)
次に、静電チャック106のゾーン毎の温度制御を行うための構成について説明する。静電チャック106は、ゾーン毎に温調制御される。そのために、各ヒータ116a、116b、116cには、温度センサ60a、60b、60cが設けられている。
【0024】
温度センサ60a、60b、60cにより検出されたセンサ値は、温度測定器65に送られる。温度測定器65は、各センサ値から各ゾーン(センタ、ミドル、エッジ)の温度を測定する。温度測定器65は、測定された現時点での各ゾーンの温度を制御部100に通知する。
【0025】
制御部100は、測定された現時点での各ゾーンの温度と各ゾーンの設定温度との差分を算出する。これにより、制御部100は、現時点の各ゾーンの温度が、どの程度設定温度から乖離しているかに応じて、各ゾーンの温度を設定温度に制御するために必要な電流値を算出し、サイリスタ回路70に必要な電流値のフィードバック制御を指示する。
【0026】
サイリスタ回路70は、交流電源44から出力された電流を分流するスイッチング機能を有するトランジスタであり、大電力に対応することが可能である。サイリスタ回路70は、制御部100からの指示に応じて、交流電源44から出力された電流を分流させて各ヒータ116a、116b、116cに供給する。ヒータフィルターFは、ヒータ116a、116b、116c及びサイリスタ回路70間に設けられ、高周波電源32から印加される高周波電力を除去するようになっている。ヒータフィルターFは、給電線71a、71b、71cを介してヒータ116a、116b、116cに接続されている。
【0027】
(ゾーン毎の温度制御における熱漏れ)
次に、静電チャック106のゾーン毎の温度制御における熱漏れについて説明する。隣接ゾーン間で制御すべき設定温度に差がある場合、高温ゾーンから低温ゾーンに熱が伝達される「熱漏れ」が生じることがある。このとき、高温ゾーンと隣接する低温ゾーンに低温下しにくい部分が生じ、低温ゾーンには同一ゾーン内であっても温度センサの配置によって検出するセンサ値が異なる場合が生じる。
【0028】
例えば、
図9(a)に示したように、静電チャック106を中心からセンターゾーン、ミドルゾーン、エッジゾーンの3つの同心円状のゾーンに分けたときのゾーン毎の温度制御と熱漏れについて説明する。ここでは、
図2に示したように、温度センサ60a、60b、60cが、センターゾーン、ミドルゾーン、エッジゾーンにそれぞれ設けられたヒータ116a、116b、116cの径方向の中央にそれぞれ配置される場合を想定する。
【0029】
ヒータ116a、116b、116cには、給電線71a、71b、71cを介して所望の電流が供給される。これにより、ヒータ116a、116b、116cの各抵抗パターンに電流が流れることで静電チャック106の温度をゾーン毎に上昇させることができる。
【0030】
また、載置台104の内部の冷媒流路104aには、所望の温度の冷媒が循環供給される。この冷媒の温度を制御することにより、ヒータ116の発熱による急激な温度上昇を緩和させ、ゾーン間の熱の授受を抑制することができる。
【0031】
ただし、静電チャック106は、それぞれのヒータ116a、116b、116cを熱的に分離しないゾーン構造を有し、冷媒による冷却能力もゾーン間の熱の授受を完全になくす程高くはない。このため、ゾーン同士の熱の授受が行われた上で、制御部100によるゾーン毎の温度制御が行われている。
【0032】
例えば、
図3に示したように、エッジゾーンの設定温度が60℃、ミドルゾーンの設定温度が40℃、センターゾーンの設定温度が40℃の場合、エッジゾーン及びミドルゾーン間で制御すべき設定温度に差がある。この場合、高温ゾーンのエッジゾーンから、低温ゾーンのミドルゾーンに熱漏れが生じ、ミドルゾーンの温度がエッジゾーン側で低温化しにくくなる。このように熱漏れの影響を受けると、エッジゾーンの測定温度は60℃、ミドルゾーンの測定温度は45℃、センターゾーンの測定温度は40℃となる。このとき、熱漏れの影響を受けているミドルゾーンの温度センサ60bは、設定温度40℃よりも5℃高い45℃の温度を検出するため、ミドルゾーンのヒータ116bの出力値は、ミドルゾーンが設定温度の40℃に制御されるときよりも低い値に制御されてしまうことがある。このようにしてミドルゾーンのヒータ116bの出力値が低下しすぎるとヒータ116bの出力値がゼロになることがある。
【0033】
このように各ヒータ116a、116b、116cの出力値がゼロになると、そのゾーンの温度制御が不能状態となり、静電チャック106の内部の温度に個体差が生じて静電チャックの温度制御ができなくなるおそれがある。このため、制御部100は、各ヒータ116a、116b、116cの出力値が0(ゼロ)にならないように制御する必要がある。
【0034】
<第1実施形態>
そこで、本発明の第1実施形態にかかる静電チャック106では、ゾーン毎の温度制御において熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に温度センサを配置する。以下では、温度センサの配置について、
図4を参照しながら説明する。
【0035】
第1実施形態にかかる静電チャック106では、高温ゾーンと低温ゾーンとの間で生じる熱漏れの影響を受けない、又は熱の影響を抑制するために、温度センサの配置が適正化される。
図4は、第1実施形態にかかる静電チャック106の温度センサの配置の一例を示す。
【0036】
エッジゾーンの設定温度が60℃、ミドルゾーンの設定温度が40℃、センターゾーンの設定温度が40℃の場合、エッジゾーン及びミドルゾーン間で制御すべき設定温度に差があり、低温ゾーンのミドルゾーンが設定温度に対して低温化しにくい。よって、高温ゾーンのエッジゾーンから低温ゾーンのミドルゾーンに熱漏れが生じることを考慮して、ミドルゾーンに配置される温度センサ60bは、隣接するエッジゾーンから遠い位置であって、熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に配置される。この例では、ミドルゾーンに配置される温度センサ60bは、高温ゾーンのエッジゾーンと反対側のミドルゾーンの内端部に配置される。
【0037】
熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に温度センサを配置する一例としては、設定温度が異なる隣接ゾーンのうち低温ゾーンに設ける温度センサを、高温ゾーンからの熱漏れの影響によって低温ゾーンの設定温度よりも高い温度に制御されている範囲を除いた低温ゾーンの範囲に配置することが挙げられる。
図4では、ミドルゾーンの内端部側から径方向にAの幅を有するリング状の範囲が、熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲であり、この範囲に温度センサ60bを配置すればよい。
【0038】
熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に温度センサを配置する他の例としては、設定温度が異なる隣接ゾーンのうち低温ゾーンに設ける温度センサを、高温ゾーンの反対側の端部(高温ゾーンから最も遠くに離れた位置)またはその近傍に配置することが挙げられる。熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に温度センサを配置する他の例として、隣接する2つのゾーンに挟まれたゾーンに設ける温度センサを、隣接する2つのゾーンのうちの高温ゾーンよりも隣接する2つのゾーンのうちの低温ゾーンに近くなる位置に配置してもよい。
【0039】
以上に説明したように、第1実施形態にかかる静電チャック106では、設定温度が異なる隣接ゾーンのうち低温ゾーンに設ける温度センサの位置を最適化する。このように、低温ゾーンの温度センサを高温ゾーンから離して配置することで、高温ゾーンからの熱漏れの影響を受けない、又は熱の影響を抑制するようにすることができる。
【0040】
本実施形態では、ミドルゾーンに配置される温度センサ60bは、隣接するエッジゾーンからの熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に配置される。よって、ミドルゾーンの温度センサ60bは、熱漏れの影響を受けない、又は熱の影響を抑制するため、本来の温度よりも高い温度を検出することはない。これにより、ミドルゾーンのヒータ116bの出力値が、本来制御されるべき値よりも低下することを回避できる。これにより、ヒータ116bの出力値が0になることを回避し、ヒータ116bが制御不能にならないように制御することができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態にかかる静電チャック106の温度センサの配置について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、第2実施形態にかかる静電チャックの温度センサの配置の一例を示す。第2実施形態にかかる静電チャック106によっても、ゾーン毎の温度制御において熱漏れの影響を受けない、又は熱の影響が抑制されるようにし、ゾーン毎に精度よく温度制御を行うことができる。
【0042】
第2実施形態にかかる静電チャック106は、隣接ゾーンが2以上あるゾーンに対して、温度センサを二つ設け、プロセスに応じて使用する温度センサを切り替える。例えば、
図5に示すように、ミドルゾーンには、隣接ゾーンが二つある。これに対して、エッジゾーンとセンターゾーンには、隣接ゾーンが一つしかない。よって、第2実施形態にかかる静電チャック106では、隣接ゾーンが2以上あるミドルゾーンに対して、温度センサを二つ設ける。具体的には、ミドルゾーンの内端部又はその近傍に温度センサ60b1が配置され、ミドルゾーンの外端部又はその近傍に温度センサ60b2が配置される。
【0043】
制御部100は、同一ゾーンに複数の温度センサが設けられている場合、該複数の温度センサから、該温度センサの属するゾーンのヒータの出力値が、該ゾーンよりも高温な隣接するゾーンの前記ヒータによる温度制御によって発生する熱により0とならない範囲に配置された温度センサを選択する。
【0044】
例えば、選択される温度センサは、隣接する2以上のゾーンのうち高温ゾーンから離れている側の温度センサであってもよい。制御部100は、RAM115に記憶されたレシピに定められている各ゾーンの設定温度に応じて、隣接する2以上のゾーンのうちから高温ゾーンを特定し、特定した高温ゾーンから離れている側の温度センサを選択することができる。このようにして、制御部100は、プロセス前に該プロセスで使用する温度センサを選択する。
【0045】
例えば、
図5では、エッジゾーンの設定温度が40℃、ミドルゾーンの設定温度が40℃、センターゾーンの設定温度が60℃である。この場合、制御部100は、ミドルゾーンで次のプロセスに使用する温度センサとして、隣接ゾーンのうちの高温ゾーンのセンターゾーンから離れている側の温度センサ60b2を選択する。これにより、ミドルゾーンの温度センサ60b2は、熱漏れの影響を受けない又は抑制されるため、本来の温度よりも高い温度を検出することはない。これにより、ミドルゾーンのヒータ116bの出力値が、本来制御されるべき値よりも低下することを回避できる。これにより、ヒータ116bの出力値が0になることを回避し、ヒータ116bが制御不能にならないように制御することができる。
【0046】
<変形例>
次に、本発明の変形例にかかる静電チャック106の温度センサの配置について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6及び
図7は、本発明の変形例にかかる静電チャックの温度センサの配置の一例を示す。変形例にかかる静電チャック106によっても、ゾーン毎の温度制御において熱漏れの影響を受けない又は抑制されるようにし、ゾーン毎に精度よく温度制御を行うことができる。
【0047】
図6では、センターゾーンの温度センサ60a及びミドルゾーンの温度センサ60bは、それぞれのゾーンに設けられたヒータ116a及びヒータ116bの径方向の中央に配置されている。これに対して、エッジゾーンの温度センサ60cは、エッジゾーンに設けられたヒータ116cの外端部に配置されている。
【0048】
このように、エッジゾーンに対しては、隣接ゾーンからの熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される外端部に温度センサ60cを配置する。これにより、エッジゾーンの温度制御を精度よく行うことができる。
【0049】
さらに、
図7では、エッジゾーンの温度センサ60cが、エッジゾーンに設けられたヒータ116cの外端部に配置されていることに加えて、ミドルゾーンには二つの温度センサ60b1及び温度センサ60b2が配置されている。なお、センターゾーンの温度センサ60aは、ヒータ116aの径方向の中央に配置されているが、ヒータ116aの径方向の中心に配置されてもよい。
【0050】
このように、他の二つ以上のゾーンに挟まれているゾーンには二つ温度センサを配置し、第2実施形態で説明したように、隣接ゾーンの設定温度に応じて二つ温度センサを切り替えて使用することが好ましい。なお、他の二つ以上のゾーンに挟まれているゾーンが複数ある場合には、他の二つ以上のゾーンに挟まれている複数のゾーンのそれぞれに二つ温度センサを配置し、切り替えて使用することが好ましい。
【0051】
かかる構成によれば、エッジゾーンに対しては外端部に温度センサを配置し、かつ、他の二つ以上のゾーンに挟まれているゾーンに対しては、隣接ゾーンからの熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に配置された温度センサを選択する。これにより、温度センサを隣接ゾーンからの熱漏れの影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される位置に設定することができる。これにより、各ゾーンの温度制御を精度よく行うことができる。
【0052】
以上、本発明の変形例にかかる静電チャック106の温度センサの配置について説明した。なお、
図6及び
図7では、静電チャック106及びフォーカスリング108は別体に構成されている。この場合、真空状態において静電チャック106及びフォーカスリング108間で熱の授受はほぼ行われない。
【0053】
一方、静電チャック106及びフォーカスリング108が一体に形成されている場合、静電チャック106及びフォーカスリング108間で熱の授受が発生する。よって、この場合には、第1,2実施形態及び変形例に示した方法を用いて、静電チャック106と同様にしてフォーカスリング108の温度センサの配置を最適化することが好ましい。
【0054】
[温度制御方法]
次に、本実施形態にかかる静電チャック106を使用した温度制御方法の一例について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態にかかる温度制御処理フローの一例である。本温度制御処理は、主に制御部100によって実行される。
【0055】
なお、第2実施形態にかかる静電チャック106の場合、本温度制御処理が開始される前に、ミドルゾーンの複数の温度センサから、隣接ゾーンの温度設定に応じて高温側の隣接ゾーンからの熱の影響を受けない、又は熱の伝達が抑制される範囲に配置された温度センサが予め選択されている。
【0056】
まず、温度測定器65は、各ゾーンに設置された温度センサ60から取得したセンサ値に基づき各ゾーンの温度を測定する(ステップS100)。次に、制御部100は、温度測定器65から測定温度を取得し、各ゾーンの測定温度と各ゾーンの設定温度との差分を算出する(ステップS102)。
【0057】
次に、制御部100は、算出した測定温度と設定温度との差分に基づき、各ゾーンのヒータ116の出力値を算出する(ステップS104)。
【0058】
次に、制御部100は、算出したヒータ116の出力値が0(以下、0の近似値を含む)に等しいか否かを判定する(ステップS106)。算出したヒータ116の出力値が0に等しい場合、制御部100は、算出したヒータ116の出力値をヒータ116に印加することによるゾーンの温度制御(フィードバック制御)を実行せずにステップS100に戻る。
【0059】
一方、各ゾーンに設けられたヒータ116の出力値が0に等しくない場合、制御部100は、算出したヒータ116の出力値をヒータ116に印加するように指示し、ゾーンの温度制御(フィードバック制御)を実行し(ステップS108)、ステップS100に戻る。
【0060】
以上、本実施形態にかかる温度制御方法の一例について説明した。これによれば、本実施形態の静電チャック106に設けられたゾーン毎の温度センサ60により検知されるセンサ値に基づきゾーン毎のヒータ116の出力値が制御される。その際、ヒータ116の出力値は0にならないように制御される。これにより、ヒータ116の制御不能を回避できる。
【0061】
[静電チャックのゾーン]
最後に、本実施形態にかかる静電チャック106におけるゾーン分割の例について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、本実施形態にかかる静電チャック106のゾーン分割の一例を示す。
【0062】
図9(a)は、前述したとおり、静電チャック106を同心円状に三つのゾーン(センター、ミドル、エッジ)に分割した例である。しかしながら、静電チャック106のゾーンは、同心円状のゾーンに限定されない。例えば、
図9(b)は、静電チャック106をマトリクス形状に多数のゾーンに分割した例である。また、例えば、
図9(c)のように、同心円状のゾーンを更に細分化して、扇型のゾーンに分割してもよいし、その他の形状及びその他の個数のゾーンに分割してもよい。
【0063】
以上、静電チャック及び静電チャックの温度制御方法を上記実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。また、上記実施形態及び変形例を矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0064】
例えば、本発明にかかる静電チャックでは、温度センサを設置するための凹み等の空間を温度センサの大きさよりも大きく形成し、空間内にて温度センサを移動可能とすることで、各ゾーンの温度センサの位置をその空間内で調整できるようにしてもよい。
【0065】
また、例えば、本発明にかかる静電チャックでは、各ゾーンの温度センサの数は必ずしも二つに限定されない。三つ以上の温度センサを、例えば静電チャックの径方向に配置し、配置された温度センサのいずれかにより温度が検出されるようにしてもよい。
【0066】
ただし、各ゾーンに配置する温度センサの数が多すぎると、静電チャック106の表面温度の均一性が維持されにくくなり、コストアップにもなる。よって、各ゾーンにおける温度センサの数は二つまでが好ましい。
【0067】
また、本発明にかかる静電チャックでは、温度センサを横に配置することで、一つの温度センサによるゾーン内の温度の検知範囲を広くすることもできる。
【0068】
なお、本発明にかかる静電チャック及び静電チャックの温度制御方法は、容量結合型のプラズマ処理装置に適用できるだけでなく、その他の半導体製造装置に適用可能である。その他の半導体製造装置としては、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、ラジアルラインスロットアンテナを用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、ヘリコン波励起型プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance Plasma)装置等であってもよい。
【0069】
また、本発明にかかる半導体製造装置により処理される基板は、ウェハに限られず、例えば、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display)用の大型基板、EL素子又は太陽電池用の基板であってもよい。
また、本願に開示された実施形態に関し、さらに下記の形態を含んでよい。
[付記1]
複数のゾーンに分割され、ゾーン毎の温度制御が可能な静電チャックであって、
前記ゾーン毎に配置されたヒータと、
前記ゾーン毎に一つ設けられた温度センサと、を有し、
前記ゾーン毎の温度センサは、各ゾーンの温度センサにより測定された温度と各ゾーンに設定された設定温度との差分に応じた、各ゾーンのヒータに印加する値が、該ゾーンよりも高温な隣接するゾーンの前記ヒータによる温度制御によって発生する熱により0(ゼロ)とならない範囲に配置される、
静電チャック。
[付記2]
複数のゾーンに分割され、ゾーン毎の温度制御が可能な静電チャックであって、
前記ゾーン毎に配置されたヒータと、
前記ゾーン毎に一つ以上設けられた温度センサと、
同一ゾーンに複数の温度センサが設けられている場合、該複数の温度センサから、各ゾーンの温度センサにより測定された温度と各ゾーンに設定された設定温度との差分に応じた、各ゾーンのヒータに印加する値が、該ゾーンよりも高温な隣接するゾーンの前記ヒータによる温度制御によって発生する熱により0とならない範囲に配置された温度センサを選択する選択手段と、
を有する静電チャック。
[付記3]
前記静電チャックと該静電チャックの外側に設置されるフォーカスリングとが一体となり、かつ、前記フォーカスリングにヒータと温度センサとが設けられている場合、前記フォーカスリングの温度センサにより測定された温度と該フォーカスリングに設定された設定温度との差分に応じた、該フォーカスリングのヒータに印加する値が、該フォーカスリングのヒータよりも高温な隣接するゾーンに属する前記ヒータによる温度制御によって発生する熱により0(ゼロ)とならない範囲に配置される、
付記1に記載された静電チャック。