特許第6240547号(P6240547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240547多官能性共重合体及び硬化性樹脂組成物とその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240547
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】多官能性共重合体及び硬化性樹脂組成物とその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/32 20060101AFI20171120BHJP
   C08F 220/38 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 212/34 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 290/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08F212/32
   C08F220/38
   C08F212/34
   C08F220/28
   C08F2/38
   C08F2/44 C
   C08F290/04
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-71279(P2014-71279)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193696(P2015-193696A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石山 貴也
(72)【発明者】
【氏名】川辺 正直
(72)【発明者】
【氏名】正木 一嘉
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111787(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/110453(WO,A1)
【文献】 特開昭61−167901(JP,A)
【文献】 特開2008−247978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 212/32
C08F 2/38
C08F 2/44
C08F 212/34
C08F 220/28
C08F 220/38
C08F 290/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和二重結合を一つ有する単官能芳香族化合物(A)、不飽和二重結合を二つ有する2官能化合物(B)と、連鎖移動剤(C)を共重合して得られ、側鎖に2官能化合物(B)由来の反応性基を有し、末端に連鎖移動剤(C)由来の構造単位を有する多官能共重合体であって、単官能芳香族化合物(A)の50wt%以上は、一つ以上の硫黄原子を含む下記一般式(1)で表わされる単官能芳香族化合物(A1)であり、単官能芳香族化合物(A)、2官能化合物(B)、連鎖移動剤(C)由来の構造単位のモル数をそれぞれ(a)、(b)、(c)としたとき、モル比(a)/[(a)+(b)]は、0.5以上0.95以下であり、モル比(c)/[(a)+(b)]は、0.1以上0.5以下であり、重量平均分子量(Mw)が2,000〜1,000,000であり、更にトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、又はクロロホルムに可溶であることを特徴とする可溶性多官能共重合体。
【化1】
(R2〜R6は水素原子、又は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数7〜11のアラルキル基、及び−S−Ar1で表わされるアリールチオ基からなる群れから選ばれる1価の基を表し、その内1つ、2つまたは3つが該アリールチオ基である。
1は直接結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のオキシアルキレン基、炭素数1〜4のチオアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレンオキシ基または炭素数1〜4のアルキレンチオ基を表し、ここで、アルキレン基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アルキレンオキシ基及びアルキレンチオ基は、置換基を有してもよく、置換基を有する場合の置換基は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基または炭素数6〜10のアリールチオ基である。
1はアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、炭素数8〜16のビニルアリール基または炭素数9〜17のビニルアリーロイル基を表わし、置換基を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基または炭素数1〜4のアルキルチオ基、フェニルオキシ基またはフェニルチオ基である。
Ar1は環員数6〜14のアリール基または環員数5〜14の複素アリール基を表わし、また2つ以上の環が縮合していてもよく、置換基を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基または炭素数1〜4のアルキルチオ基、フェニルオキシ基またはフェニルチオ基である。)
【請求項2】
前記単官能芳香族化合物(A1)が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の可溶性多官能共重合体。
【化2】

(式中、nは1〜3の整数であり、X、Ar、R1は一般式(1)と同意である。)
【請求項3】
2官能化合物(B)が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の可溶性多官能共重合体。
【化3】

(式中、X2は炭素数4〜40の有機基であり、分岐構造、脂環構造、又は単環若しくは縮環した芳香環を有していてもよく、一部が酸素や窒素、硫黄原子で置換されていてもよく、側鎖に置換基を有していてもよいが、重合性の不飽和二重結合を有することはない。R7はビニル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を表す。)
【請求項4】
2官能化合物(B)が、一般式(3)におけるR7が少なくとも一つ以上の芳香環を有し、合計の炭素数が6〜38である請求項3に記載の可溶性多官能共重合体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の可溶性多官能共重合体を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
前記可溶性多官能共重合体に対し、重合性官能基を1つ以上有するモノマー、及び重合開始剤を配合してなる請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする樹脂硬化物。
【請求項8】
光学レンズ、又はプリズムであることを特徴とする請求項7に記載の樹脂硬化物。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学等方性、高光線透過率等の光学特性に加え、高い屈折率を有し、加えて加工性に優れる多官能共重合体、及びそれを配合してなる硬化性樹脂組成物とその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ用レンズ等の光学分野においては、比較的安価なポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、脂環式オレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂が使用されてきた。しかし、これらの熱可塑性樹脂は、小型、薄型、偏肉、或いは回折レンズといった先端分野で必要とされるレンズを成形する際、形状転写性の悪化や、複屈折を生じやすいため、歩留り、タクトタイム等の面で生産性が大きく低下してしまうという課題があり、さらに高屈折な材料ほどその傾向が強いという課題があった。
【0003】
この様な熱可塑性樹脂の欠点を解決する方法として、特許文献1、2にはモノビニル芳香族化合物及びジビニル芳香族化合物を共重合して得られ、側鎖にジビニル芳香族化合物由来の反応性ビニル基を含有する構造単位を有する可溶性多官能共重合体が開示されている。しかし、これに開示されている技術によって得られる可溶性多官能共重合体は、成形加工性や低複屈折性を有しているものの、先端分野に必要とされる高屈折率、高透明性と、成形加工性を同時に満足することは困難であった。また、特許文献3は硫黄原子と芳香族環の導入によって可溶性多官能共重合体の高屈折率化を試みてはいるが、末端への導入に限られ十分な改善効果が得られていなかった。
【0004】
樹脂材料の屈折率を上げるための手段として、微粒子分散技術がよく知られるが、一般的な高屈折微粒子は、樹脂組成物中に安定して単分散させることが難しく、粒子径と膜厚に比例して散乱を生じるため、撮像系光学レンズ等の厚みが必要となる用途向け材料の高屈折率化技術としての適用は困難であった。一方、透明樹脂自体の屈折率を上げるための分子設計の指針として、水素原子分率を低減するための脂環骨格、芳香環骨格の導入、フッ素を除くハロゲン原子、硫黄原子の導入、分子間相互作用を利用した高密度化等の方法が知られているが、透明性低下、反応性低下、溶解性低下等の課題があり、高屈折率、高透明性、良成形加工性等の特性をバランスよく備えた可溶性多官能共重合体、及びこれを含む硬化性樹脂組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5315334号
【特許文献2】特許第4970107号
【特許文献3】特許第5249095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高屈折率、高光線透過率といった優れた光学特性を有し、加えて成形加工性、精密な金型転写性が改善された可溶性多官能共重合体、それを含む硬化性樹脂組成物、又はそれを硬化してなる硬化物、及び光学物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、不飽和二重結合を一つ有し、少なくとも一つ以上の硫黄原子を分子中に含み、下記一般式(1)であらわされる単官能芳香族化合物(A)、不飽和二重結合を二つ有する2官能化合物(B)と、連鎖移動剤(C)を共重合して得られる共重合体が上記課題を解決するために有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、不飽和二重結合を一つ有する単官能芳香族化合物(A)、不飽和二重結合を二つ有する2官能化合物(B)と、連鎖移動剤(C)を共重合して得られ、側鎖に2官能化合物(B)由来の反応性基を有し、末端に連鎖移動剤(C)由来の構造単位を有する多官能共重合体であって、単官能芳香族化合物(A)の少なくとも一部は、一つ以上の硫黄原子を含む下記一般式(1)で表わされる単官能芳香族化合物(A1)であり、重量平均分子量(Mw)が2,000〜1,000,000であり、更にトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、又はクロロホルムに可溶であることを特徴とする可溶性多官能共重合体である。
【化1】
【0009】
ここで、R2〜R6は水素原子、又は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数7〜11のアラルキル基、及び−S−Arで表わされるアリールチオ基からなる群れから選ばれる1価の基を表し、その内1つ、2つまたは3つが該アリールチオ基である。
は直接結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のオキシアルキレン基、炭素数1〜4のチオアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレンオキシ基または炭素数1〜4のアルキレンチオ基を表し、ここで、アルキレン基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アルキレンオキシ基及びアルキレンチオ基は、置換基(Q1)を有してもよく、置換基を有する場合の置換基(Q1)は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基または炭素数6〜10のアリールチオ基である。
1はアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、炭素数8〜16のビニルアリール基または炭素数9〜17のビニルアリーロイル基を表わし、置換基(Q2)を有していてもよく、置換基を有する場合の置換基(Q2)は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基または炭素数1〜4のアルキルチオ基、フェニルオキシ基またはフェニルチオ基である。
Arは環員数6〜14のアリール基または環員数5〜14の複素アリール基を表わし、また2つ以上の環が縮合していてもよく、置換基(Q3)を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基(Q3)は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基または炭素数1〜4のアルキルチオ基、フェニルオキシ基またはフェニルチオ基である。
置換基(Q1)、(Q2)、(Q3)において、これらがフェニルオキシ基またはフェニルチオ基である場合は更に置換基(Q4)を有することができ、この置換基(Q4)は、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基または炭素数1〜4のアルキルチオ基である。
【0010】
前記単官能芳香族化合物(A1)としては、下記一般式(2)で表される単官能芳香族化合物がある。
【化2】

(式中、nは1〜3の整数であり、X、Ar、R1は一般式(1)と同意である。)
【0011】
前記2官能化合物(B)としては、下記一般式(3)で表される2官能化合物がある。
【化3】

(式中、X2は炭素数4〜40の有機基であり、分岐構造、脂環構造、又は単環若しくは縮環した芳香環を有していてもよく、一部が酸素や窒素、硫黄原子で置換されていてもよく、側鎖に置換基を有していてもよいが、重合性の不飽和二重結合を有することはない。R7はビニル基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を表す。)
より好ましくは、一般式(3)におけるR7が少なくとも一つ以上の芳香環を有し、合計の炭素数が6〜38である2官能化合物がある。
【0012】
また、本発明は上記の可溶性多官能共重合体を含むことを特徴とする樹脂組成物である。更に本発明は、上記の可溶性多官能共重合体に対し、重合性官能基を1つ以上有するモノマー、及び重合開始剤を配合してなる硬化性樹脂組成物である。
【0013】
また、本発明は上記の硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする樹脂硬化物である。この樹脂硬化物としては、光学レンズ、又はプリズムがある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多官能共重合体は、硫黄原子と芳香族骨格を効果的に配置することで高い屈折率と透明性を有し、高分子量化することに起因して低収縮率、良成形性を有し、多分岐・多官能構造に起因して低複屈折率と高反応性を有し、末端の連鎖移動剤に起因して各種モノマーや溶剤への溶解性を有していることから、種々のモノマーや添加剤と混合し、取り扱い易い粘度の樹脂組成物とすることができる。有機溶媒に可溶な可溶性多官能共重合体は、一般に上記のような特性を有するが、単官能芳香族化合物(A1)を共重合体の構成成分とすることにより、より優れた屈折率を与えることができ、例えば1.60以上の屈折率を与えることができる。
以上のことから、本発明の多官能共重合体、及びそれを含んだ硬化性樹脂組成物は、撮像カメラ、センサー、眼鏡、記録媒体の光ピックアップ等に用いられる各種レンズや、表示装置、照明装置、太陽電池パネル等の導光、光取り出し、反射防止材、その他複写装置、印刷装置等の光学部品等として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を更に説明する。本発明の多官能共重合体は、不飽和二重結合を一つ有する単官能化合物(A)と、不飽和二重結合を二つ有する2官能化合物(B)と、連鎖移動剤(C)を共重合して得られ、側鎖に2官能化合物(B)由来の反応性基を有し、末端に連鎖移動剤(C)由来の構造単位を有する可溶性多官能共重合体である。かかる、多官能共重合体は特許文献3等で知られているが、本発明では、その際に使用する単官能化合物の少なくとも一部として、一つ以上の硫黄原子を含む一般式(1)で表わされる単官能芳香族化合物(A1)を使用する。これにより、高屈折率を達成することができる。
【0016】
単官能芳香族化合物(A1)は、上記一般式(1)で表される。
【0017】
一般式(1)において、R2〜R6は水素原子、又は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数7〜11のアラルキル基、及び−S−Arで表わされるアリールチオ基からなる群れから選ばれる1価の基を表すが、屈折率、溶解性、透明性のバランスから、R2〜R6の1つ、2つまたは3つがアリールチオ基である必要がある。
【0018】
一般式(1)のより好ましい構造として、一般式(2)が挙げられる。一般式(2)において、一般式(1)と共通の符号は特に断らない限り同じ意味を有する。
【0019】
一般式(1)、(2)において、X1は直接結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のオキシアルキレン基、炭素数1〜4のチオアルキレン基、炭素数1〜4のアルキレンオキシ基または炭素数1〜4のアルキレンチオ基を表す。ここで、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アルキレンオキシ基またはアルキレンチオ基は、YCmH2m又はCmH2mYで表わされ、YはO又はSであり、mは1〜4の数である。また、アルキレン基、オキシアルキレン基(又はアルキレンオキシ基)、チオアルキレン基(又はアルキレンチオ基)は、置換基(Q1)を有してもよく、置換基を有する場合の置換基(Q1)は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基または炭素数6〜10のアリールチオ基である。
【0020】
はアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、炭素数6〜16のビニルアリール基またはビニルアリーロイル基を表わし、置換基(Q2)を有していてもよい。置換基を有する場合の置換基(Q2)は塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基または炭素数1〜4のアルキルチオ基、フェニルオキシ基またはフェニルチオ基である。
置換基(Q1)、(Q2)において、これらがフェニルオキシ基またはフェニルチオ基である場合は更に置換基(Q4)を有することができ、この置換基(Q4)は、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基または炭素数1〜4のアルキルチオ基である。
【0021】
Ar1は環員数6〜14のアリール基または環員数5〜14の複素アリール基を表わし、置換基(Q3)を有していてもよく、また2つ以上の環が縮環していてもよい。Ar1は単環構造であっても縮合環構造であってもよく、Ar1を構成する環の数は1〜4、好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2である。また、光学樹脂用途に用いる場合、透明性の低下だけでなく、光硬化性や耐候性を確保するためには、着色が少ないことが好ましく、この点からAr1はアリール基であることが好ましい。置換基を有する場合の置換基(Q3)は、後記する。
【0022】
本明細書でいう用語は、特段の断りがない限り、次の意味を有する。
【0023】
<アリール基>
ベンゼン環基、インデン環基、ナフタレン環基、アズレン環基、フルオレン環基、アセナフテン環基、アントラセン環基、フェナントレン環基、フルオランテン環基、ピレン環基などの炭素数6〜16、好ましくは6〜14のアリール基が挙げられる。着色回避、相溶性の点から、更に好ましくは炭素数6〜10であり、特に好ましくはベンゼン環基、ナフタレン環基である。なお、ベンゼン環基はベンゼンから1つのHを取って生じる基であり、他の基も同様である。
【0024】
<複素アリール基>
複素アリール基に含まれるヘテロ原子としては特に限定されず、S、O、N、Pなどの各原子を用いることができるが、相溶性確保の点からS,O,Nの各原子が好ましく、SまたはOの各原子がより好ましく、中でも屈折率向上の点からS原子が特に好ましい。また、高透過率、相溶性の点からヘテロ原子の数は当該複素アリール基中に1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
【0025】
具体的には、ピロール環基、フラン環基、チオフェン環基、イミダゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ピリジン環基、ピラジン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基、インドール環基、ベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、ベンゾチアゾール環基、キノリン環基、イソキノリン環基、カルバゾール環基、ジベンゾフラン環基、ジベンゾチオフェン環基、アクリジン環基、ベンゾカルバゾール環基、ベンゾナフトフラン環基、ベンゾナフトチオフェン環基などの炭素数5〜17、好ましくは5〜14の複素アリール基が挙げられる。中でもチオフェン環基、ベンゾチオフェン環基、ジベンゾチオフェン環基が好ましい。
【0026】
<Ar1が有していてもよい置換基>
Ar1はハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、フェニルオキシ基及びフェニルチオ基から選ばれる置換基(Q3)を有していてもよい。好ましい置換基は、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜11のアラルキル基である。ここで、アルキレン基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アルキレンオキシ基及びアルキレンチオ基は、上記(Q4)と同様の置換基を有してもよい。但し、合成上の容易さの観点からは無置換であることが有利である。
【0027】
上記一般式(2)で表される単官能化合物(A1)の具体例を以下に示すが、本発明はその要旨をこえない限りこれらに限定されるものではなく、またこれらの化合物は、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、重合の際には、単官能化合物(A1)以外の一般的な他の単官能ビニル化合物(A2)を併用してもよい。
【0028】
【化4】

【化5】
【0029】
単官能化合物(A1)は、25℃におけるd線(587.6nm)の屈折率nが1.50以上であることがよく、好ましくは1.55以上、更に好ましくは1.60以上、特に好ましくは1.62以上である。
【0030】
上記単官能化合物(A1)以外の他の単官能ビニル化合物(A2)としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルビニルベンゼン、m-エチルビニルベンゼン、p-エチルビニルベンゼン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、4-ビニルビフェニル、等がある。単官能ビニル化合物(A)における単官能ビニル化合物(A1)の割合は50wt%以上であることがよく、好ましくは70wt%以上である。単官能ビニル化合物(A2)を併用することにより、屈折率を調整することができる他、樹脂の各種特性を調整することができる。
【0031】
不飽和二重結合を二つ有する2官能化合物(B)としては、上記一般式(3)で表される化合物を用いることができる。
【0032】
一般式(3)において、X2は炭素数4以上40以下の有機基を表すが、屈折率をより向上させるため、X2は少なくとも一つ以上の芳香環を有していることが好ましく、さらに炭素数6以上38以下の基であることがより好ましい。
【0033】
一般式(3)で表される2官能化合物の具体例を以下に示す。
m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,4−ジビニルナフタレン、1,5−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、2,3−ジビニルナフタレン、2,6−ジビニルナフタレン、2,7−ジビニルナフタレン、4,4’−ジビニルビフェニル、4,3’−ジビニルビフェニル、4,2’−ジビニルビフェニル、ビニル(4−ビニルフェニル)スルフィド等の芳香族ジビニル化合物類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族ジ(メタ)アクリレート類、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートなどの脂環式ジ(メタ)アクリレート類、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレートなどの芳香族ジ(メタ)アクリレート類、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートなどの複素環式ジ(メタ)アクリレート類、これらのカプロラクトン変性体、ネオペンチルグリコール型エポキシジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族エポキシジ(メタ)アクリレート類、シクロヘキサンジメタノール型エポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシジ(メタ)アクリレート類、レゾルシノール型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAF型エポキシジ(メタ)アクリレート、フルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレートなどの芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート類などが挙げられるが、中でも、芳香族ジビニル化合物類、芳香族ジ(メタ)アクリレート類、複素環式ジ(メタ)アクリレート類、芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。
上記の化合物は好適に使用することができるが、本発明はその要旨をこえない限りこれらに限定されるものではない。これらの化合物は単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0034】
本発明の多官能共重合体は、重合方法に応じて適切な連鎖移動剤、開始剤や触媒を用いることで、ラジカル重合、カチオン重合等の重合方法により合成することができる。重合反応は溶剤を使用しない塊状重合で行うことができるが、生成する多官能共重合体を溶解する1種以上の有機溶媒中で行うこともできる。有機溶媒としては重合を本質的に阻害しない化合物であって、本発明の連鎖移動剤、開始剤、単官能化合物、2官能化合物及び多官能共重合体を溶解して、均一溶液を形成するものであれば、特に制約なく使用することができる。
【0035】
有機溶媒として使用可能な化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。この中で、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンが好ましい。重合性、溶解性のバランスと入手の容易さの観点からトルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンが更に好ましい。
【0036】
本発明の多官能共重合体の合成に使用する連鎖移動剤としては、重合方法に合わせて、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン及びその誘導体や、チオール化合物、芳香族系エーテル化合物等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらの化合物は単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0037】
チオール化合物の具体例としてはt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールへキサ−3−メルカプトプロピオネート及び(トリス-[(3−メルカプトプロピオニロキシ)-エチル]-イソシアヌレート)等が挙げられる。これらの内、重合制御の容易さ、生成した共重合体の靭性の観点から、特に好適に使用されるのは、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどの炭素数5〜30のモノアルキルメルカプタンである。
【0038】
芳香族系エーテル化合物としては、反応性、入手の容易さ、硬化物の耐熱性の観点から、2−フェノキシエチルメタクリレート及び2−フェノキシエチルアクリレートが好ましく使用される。
【0039】
本発明の共重合体において、単官能芳香族化合物(A)、2官能化合物(B)、連鎖移動剤(C)由来の構造単位のモル数をそれぞれ(a)、(b)、(c)としたとき、
(a)/[(a)+(b)]は、0.2以上0.99以下であることがよく、0.3以上098以下であることが好ましく、0.5以上0.95以下であることがさらに好ましい。
(c)/[(a)+(b)]は、0.01以上0.8以下であることがよく、0.05以上0.7以下がより好ましく、0.1以上0.5以下がさらに好ましい。
【0040】
ラジカル重合法を用いて本発明の多官能共重合体を重合する場合、ラジカル開始剤としては、一般的な熱ラジカル重合開始剤を用いることが可能だが、具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、ジオクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアリルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、などのパーオキシカーボネート類、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウリレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシアセテートなどのパーオキシエステル類、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2’−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中で、硬化性、透明性、及び耐熱性の観点から、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシエステル類、アゾ化合物であることが好ましい。
【0041】
カチオン重合法を用いて本発明の多官能共重合体を重合する場合、酸触媒としては、ルイス酸触媒、無機強酸及び有機スルホン酸からなる群から選ばれる一種以上を使用することができる。ルイス酸触媒としては、金属イオン(酸)と配位子(塩基)からなる化合物であって、電子対を受け取ることのできるものであれば特に制限なく使用できる。ルイス酸触媒の中でも得られる共重合体の耐熱分解性の観点から、特にB、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ti、W、Zn、Fe及びV等の2〜6価の金属のフッ化物又はその錯体が好ましい。また、無機強酸としては、硫酸、塩酸、リン酸などを挙げることができる。有機スルホン酸の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの触媒は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。得られる共重合体の分子量及び分子量分布の制御及び重合活性の観点から、三フッ化ホウ素のエーテル(ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等)錯体が最も好ましく使用される。
【0042】
本発明の多官能共重合体の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜1,000,000であるが、好ましくは3,000〜500,000、更好ましくには5,000〜200,000の範囲である。
【0043】
本発明の多官能共重合体の単体硬化物のd線(587.6nm)における屈折率nは1.60以上であることが好ましく、1.62以上がより好ましく、1.64以上であることがさらに好ましい。
【0044】
本発明の多官能共重合体は有機溶剤に溶解させることが可能である。有機溶剤としては、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、PGMEA等を用いることができ、これにより機能性コーティング材料として扱う際の塗布作業性に優れる。ここで、有機溶剤に可溶であるとは、25℃において、有機溶剤100mlに1g以上、好ましくは10g以上溶解することをいう。
【0045】
本発明の多官能共重合体は、重合性官能基を1つ以上有するモノマー、及び開始剤と混合することで、硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0046】
多官能共重合体に対し、重合性官能基を1つ以上有するモノマーと混合する際、多官能共重合体の占める比率は1〜90wt%が好ましく、5〜60wt%がより好ましく、10〜40wt%が特に好ましい。
【0047】
重合開始剤は樹脂組成物の合計量に対し、0.01〜10重量%添加するのが好ましく、0.05〜7重量%がより好ましく、0.01〜5重量%が特に好ましい。但し、この使用量は使用する重合開始剤の種類により大きく変化するので最適条件を適宜決定することが必要である。
【0048】
重合性官能基を1つ以上有するモノマーとしては、公知の重合性化合物で良く、単官能のもの、二官能のもの、多官能のもの又は重合性オリゴマーのいずれも用いることができ、さらに上記一般式(1)で示される単官能芳香族化合物や、上記一般式(3)で示される2官能化合物を用いることもできる。また、単独でも2種以上を併用してもよい。熱又は光による重合性化合物は、熱重合性化合物と光重合性化合物を用途に応じて使い分けることが好ましい。
【0049】
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネートなどの脂肪族(メタ)アクリレート類、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレートなどの脂環式(メタ)アクリレート類、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(o−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(1−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(2−ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート類、2−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−N−カルバゾールなどの複素環式(メタ)アクリレート類、これらのカプロラクトン変性体などが挙げられる。
【0050】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの脂肪族多官能(メタ)アクリレート類、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの複素環式多官能(メタ)アクリレート類、これらのカプロラクトン変性体、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなどの芳香族エポキシ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、ポリアミド型(メタ)アクリルオリゴマー、メラミン(メタ)アクリレート、シクロペンタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、シリコーンオリゴマーの(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0052】
本発明の共重合体は、2官能化合物由来のラジカル重合性基を側鎖に有することで、多官能共重合体となっているため、重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤を有利に用いることができる。
【0053】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、ジオクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアリルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、などのパーオキシカーボネート類、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウリレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシアセテートなどのパーオキシエステル類、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2’−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。
【0054】
上記熱ラジカル重合開始剤の中では、硬化性、透明性、及び耐熱性の観点から、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシエステル類、アゾ化合物であることが好ましい。
【0055】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンジルケタール類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどのα−ヒドロキシアセトフェノン類、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのα−アミノアセトフェノン類、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタジオン,2−(O−ベンゾイル)オキシムなどのオキシムエステル類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのフォスフィンオキサイド類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体などの2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノンなどのキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンなどのアクリジン類、N−フェニルグリシン、クマリンなどが挙げられる。
【0056】
これらの中で、硬化性、透明性および耐熱性の観点から、α−ヒドロキシアセトフェノン類、フォスフィンオキサイド類であることが好ましい。これらの熱及び光ラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。さらに、適切な増感剤と組み合わせて用いることもできる。
【0057】
光増感剤としては、特に限定されるものではなく、具体的には、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン類、トリフェニルフォスフィン等のアルキルフォスフィン類、β−チオジグリコール等のチオエーテル類などが例示され、その配合量としては、樹脂組成物の合計量に対して0.01〜5重量%程度が推奨される。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の保存安定性向上や、劣化防止のために、公知の重合禁止剤や、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤を添加することができる。但し、これらの添加剤の種類及び添加量は使用する添加剤の種類により大きく変化するので最適条件を適宜決定することが必要である。
【0059】
こうして得られる樹脂組成物およびその硬化物は、高屈折率性に優れるとともに、透明性、ハンドリング性等に優れており、レンズ用途等のガラス代替材料、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの保護膜材料、光学製品の保護用コーティング材料、電子ペーパーや液晶ディスプレイ等のスペーサ、光ディスクや光ファイバー等用の接着剤、ホログラム記録媒体用の光記録材料等の各種光学材料に好適に使用される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。
【0061】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC-8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。共重合体の分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
【0062】
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM-LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C-NMR及び1H-NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム-d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
【0063】
3)成形性評価
可溶性多官能共重合体100重量部に対し、モノマーとしてオルトフェニルフェノキシエチルアクリレートを50重量部、開始剤としてパーブチルO(日本油脂(株)製)を1重量部添加し、混合攪拌、脱泡を行った後、ガラス板とシリコンスペーサーを用いて作製した30mm×30mm×1mmtの型内に流し込み、窒素気流下にて150℃/1hrの硬化を行った。その際、発泡、クラック、ヘイズ等の有無を確認し、平板の外観が、◎:非常に良好、○:良好、△外観異常あり、×重度の外観異常あり、に分類することで成形時の外観評価を行った。
【0064】
4)透過率評価
可溶性多官能共重合体をトルエンに溶解し、それに、開始剤としてパーブチルO(日本油脂(株)製)を、可溶性多官能共重合体100重量部に対して、1.0重量部添加した。この重合体溶液からキャストシートを作成し、このキャストシートを破砕して、ペレット化し、プレス金型に充填し、150℃で1時間、プレス成形機にて硬化させた。得られた硬化した平板をテストピースとして、分光測色計CM-3600d(コニカミノルタ社製)にて450nmの透過率を測定した。
【0065】
5)屈折率の測定
上述の透過率評価にて使用した平板をテストピースとして、KPR-200(島津カルニュー社製)にて25℃におけるd線(587.6nm)の屈折率を測定した。測定タイミングは、成形直後とした。
【0066】
実施例1
4−ビニル−ジフェニルスルフィド675mmol(143.3g)、1,4−ジビニルベンゼン225mmol(29.3g)、2−フェノキシエチルメタクリレート337.5mmol(69.6g)、トルエン250mlを1.0Lの反応器内に投入し、攪拌しながら反応器内部を窒素置換した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.28gを添加し、50℃で5.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させ、純水で3回油層を洗浄した後、反応溶液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体A102.1g(収率:42wt%)を得た。
【0067】
得られた共重合体AのMwは9,604、Mnは5,842、Mw/Mnは1.644であった。13C-NMR、1H-NMR分析を行うことにより、共重合体Aは、4−ビニル−ジフェニルスルフィド由来の構造単位を合計62.9モル%、1,4−ジビニルベンゼン由来の構造単位を合計25.0モル%、2−フェノキシエチルメタクリレート由来の構造の末端基は総量に対し、12.2モル%含有していた。
共重合体Aはトルエン、キシレン、THF、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Aのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0068】
実施例2
4−ビニルビフェニル114mmol(20.5g)、4−ビニル−ジフェニルスルフィド312mmol(66.2g)4,4’−ジビニルジフェニルスルフィド126mmol(30.0g)、1,4−ジビニルベンゼン48mmol(6.3g)、2−フェノキシエチルメタクリレート244mmol(50.2g)、トルエン170mlを1.0Lの反応器内に投入し、攪拌しながら反応器内部を窒素置換した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.85gを添加し、50℃で4.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させ、純水で3回油層を洗浄した後、反応溶液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体B69.4g(収率:40wt%)を得た。
【0069】
実施例3
2,4−ジチオフェニルベンジルアクリレート322mmol(121.7g)、4,4’−ジビニルジフェニルスルフィド48mmol(11.4g)、エチレングリコール変性ビスフェノールAジアクリレート(日立化成(株)製ファンクリルFA-324A)110mmol(56.5g)、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン158mmol(35.2g)、トルエン220mlを1.0Lの反応器内に投入し、攪拌しながら反応器内部を窒素置換した後、パーブチルO(日本油脂(株)製)2.32gを添加し、80℃で3.0時間反応させた。重合反応を冷却により停止させた後、反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体C82.3g(収率:36wt%)を得た。
【0070】
実施例4
2,4−ジチオフェニルスチレン454mmol(145.6g)、エチレングリコール変性ビスフェノールAジアクリレート(日立化成(株)製ファンクリルFA-324A)94mmol(48.3g)、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート41mmol(12.6g)、t−ドデシルメルカプタン95mmol(19.2g)、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン41mmol(9.1g)、トルエン240mlを1.0Lの反応器内に投入し、攪拌しながら反応器内部を窒素置換した後、パーブチルO(日本油脂(株)製)2.42gを添加し、80℃で3.0時間反応させた。重合反応を冷却により停止させた後、反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体D76.9g(収率:32wt%)を得た。
【0071】
比較例1
4−ビニルビフェニル531mmol(95.7g)、1,4−ジビニルベンゼン369mmol(48.1g)、2−フェノキシエチルメタクリレート517mmol(106.5g)、トルエン250mlを1.0Lの反応器内に投入し、攪拌しながら反応器内部を窒素置換した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.28gを添加し、50℃で4.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させ、純水で3回油層を洗浄した後、反応溶液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体E102g(収率:41wt%)を得た。
【0072】
共重合体B〜Dはいずれも、トルエン、キシレン、THF、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体のキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0073】
実施例、及び比較例にて使用したモノマーの略称を以下に示す。また、実施例及び比較例にて合成した共重合体の評価結果を表1に示す。
VBP:4−ビニルビフェニル
VDPS:4−ビニル−ジフェニルスルフィド
DTPBA:2,4−ジチオフェニルベンジルアクリレート
DTPS:2,4−ジチオフェニルスチレン
DVB:1,4−ジビニルベンゼン
DVDPS:4,4’−ジビニルジフェニルスルフィド
EO変性BPDA:エチレングリコール変性ビスフェノールAジアクリレート
DMTCD:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
POEM:2−フェノキシエチルメタクリレート
αMSD:2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン
TDM:t−ドデシルメルカプタン
【0074】
【表1】