(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記セパレータ捲回体において、上記非水電解液二次電池用セパレータの接線方向のヤング率Etと、加えられる半径方向応力の絶対値が1000Paである場合の半径方向のヤング率Erとの比率(Et/Er)が、5×103以上、5×105以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載のセパレータ捲回体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。以下において、「A〜B」との記載は、「A以上、B以下」を意味する。
【0018】
[実施形態1:セパレータ捲回体]
本発明の実施形態1に係るセパレータ捲回体は、非水電解液二次電池用セパレータがコアに捲回されたセパレータ捲回体であって、上記非水電解液二次電池用セパレータの巻長さが1000m以上であり、上記コアに加わる半径方向応力σ
rの絶対値が、臨界応力σ
cr以下であることを特徴とする。
【0019】
[セパレータ捲回体の構成要素]
本発明のセパレータ捲回体は、
図1に示すように、コアを中心とし、当該コアの周りに非水電解液二次電池用セパレータが巻き取られている構成を備える。
【0020】
[コア]
本発明のセパレータ捲回体におけるコアは、通常セパレータ捲回体に使用されるコアを使用することができる。上記コアの材料としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、これら熱可塑性樹脂に剛性や帯電防止性などの機能性を付与するために充填剤や帯電防止剤などの添加剤を配合してもよい。上記コアの材料としては、通常、ABS樹脂が使用される。また、上記コアとしては、降伏応力σ
yが、20MPa〜80MPaである材料からなるコアを好適に使用することができる。
【0021】
上記コアの材料の降伏応力σ
yは、コアを構成する材料によって異なる特有の値である。各種材料の降伏応力のいくつかの例を、以下の表1(出典:材料(1986) 第35巻 第398号 p1267〜1271)に示す。
【0023】
なお、降伏応力は、特定の材料に対して引張試験または圧縮試験を行い、外力を加えた際に当該材料が弾性変形から塑性変形へ移行する(力を加えるのを止めても変形した材料が元に戻らなくなる)降伏現象が発生した時点の外力を、試験に使用した材料の断面積で除した応力である。上記降伏応力の測定方法としては、例えば、引張の場合はJISK7127(プラスチック−引張特性の試験方法)、JISK7161(プラスチック−引張特性の求め方)、圧縮の場合にはJISK7181(プラスチック−圧縮特性の求め方)といった方法が挙げられる。
【0024】
本発明のセパレータ捲回体におけるコアの形状は、特に限定されないが、一般には円柱状のコアが使用され得る。また、円柱状のコアを使用する場合、その幅(当該円柱の高さ)は、本発明の非水電解液二次電池用セパレータの幅と同じか、上記非水電解液二次電池用セパレータの幅よりも少し大きいことが、上記非水電解液二次電池用セパレータの巻取を好適に行う面において好ましい。さらに、上記円柱状のコアの半径(円柱の円部分の半径)は、3インチ〜6インチ(76.2mm〜152.4mm)であることが好ましい。コアは軽量性、保管・運搬性や剛性などの観点から、上記半径の外周部と、上記半径より小さい内周部、および、外周部と内周部を連結する複数のリブから構成されることが好ましい。内周部の半径は巻取駆動装置の回転軸の半径に応じて決めればよく、1インチ〜3インチを例示することができる。上記コアの外周部の半径が3インチ(76.2mm)以上であることは、上記コアの剛性の面で好ましい。また、上記コアの外周部の半径が6インチ(152.4mm)以下であることは、本発明のセパレータ捲回体の軽量性や保管・運搬性の面で好ましい。
【0025】
[非水電解液二次電池用セパレータ]
本発明のセパレータ捲回体における非水電解液二次電池用セパレータは、当該セパレータ捲回体において当該非水電解液二次電池用セパレータに加えられる内部応力に対して破損等をしなければよく、特に限定されない。ここで、本発明のセパレータ捲回体の各所における半径方向応力は、
図2に示すように非水電解液二次電池用セパレータのi番目の層にかかる半径方向応力がi番目の層の外側の層の応力増分の和となることから、コアに加わる半径方向応力σ
rの絶対値が最大値となる。i番目の層とは、コアに接する層を1番目の層とし、外層に向けて順番に数えたときの第i番目の層を示す。よって、上記非水電解液二次電池用セパレータとしては、コアに加わる半径方向応力σ
rと同じ大きさの応力が加わっても破損や大きな圧縮変形等が発生しないものが選択され得る。また、本発明のセパレータ捲回体を製造する際は、上記非水電解液二次電池用セパレータに対して特定の強さの巻取張力を加えて巻取を実施することが一般的である。よって、上記非水電解液二次電池用セパレータとしては、巻取時に加えられる巻取張力に対して破損や大きな引張変形等が発生しないものが選択され得る。
【0026】
上記非水電解液二次電池用セパレータは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィンを主成分とし、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体や液体を通過させることが可能となっていればよい。また、上記非水電解液二次電池用セパレータは、1つの層から形成されるものであってもよいし、耐熱層や保護層などの複数の層が積層されて形成されるものであってもよい。
【0027】
上記非水電解液二次電池用セパレータの製造方法についても特に限定されるものではなく、公知の乾式法や湿式法などが挙げられる。例えば、ポリオレフィン等の樹脂に孔形成剤を加えてフィルム(膜状)に成形した後、孔形成剤を適当な溶媒で除去する方法が挙げられる。
【0028】
上記非水電解液二次電池用セパレータは、4μm〜40μmの厚さを有することが好ましい。上記非水電解液二次電池用セパレータの厚さが4μm以上であることが、当該非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池において、電池の破損等による内部短絡を充分に防止することができる面において好ましい。一方、上記非水電解液二次電池用セパレータの厚さが40μm以下であることが、当該非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池において、リチウムイオンの透過抵抗の増加を抑制し、当該セパレータを備える非水電解液二次電池における、充放電サイクルを繰り返すことによる正極の劣化、レート特性やサイクル特性の低下を防ぐことができ、また、正極および負極間の距離の増加に伴う当該非水電解液二次電池自体の大型化を防ぐことができる面において好ましい。
【0029】
上記非水電解液二次電池用セパレータの巻長さ、すなわち、巻方向と平行な方向の長さは、1000m以上であり、1500m以上であることが好ましい。また、上記巻長さは、5000m以下であることが好ましい。上記巻長さを上記の範囲とすることにより、本発明のセパレータ捲回体1個当たりに含まれる非水電解液二次電池用セパレータの量を多くすることができる。従来、1000m以上の長さの非水電解液二次電池用セパレータをコアの周りに巻き取って製造されるセパレータ捲回体は、コアが変形する等により外観品質が悪化する傾向があったが、本発明のセパレータ捲回体は、その内部応力がより好適に制御されており、1000m以上の長さの非水電解液二次電池用セパレータを部材として含む場合でも、従来のセパレータ捲回体よりもコアの変形が抑制され、外観品質がより改善されている。また、上記巻長さが5000mよりも大きいと、コアの変形の抑制が不十分となり、外観品質は悪化するおそれがある。
【0030】
上記非水電解液二次電池用セパレータの幅、すなわち、巻方向と垂直な方向の長さは、10mm〜300mmであることが好ましく、30mm〜100mmであることがより好ましい。
【0031】
[セパレータ捲回体の物性値]
本発明のセパレータ捲回体は、コアに加わる半径方向応力σ
rの絶対値が、臨界応力σ
cr以下であることを特徴とする。
【0032】
[半径方向応力、接線方向応力]
図1に示すように、本発明のセパレータ捲回体において、任意の巻取半径rの位置での非水電解液二次電池用セパレータに対して、半径方向応力σ
rが作用し、この内側にある非水電解液二次電池用セパレータの各層を圧縮すると同時に、この外側にある非水電解液二次電池用セパレータの各層から圧縮を受ける。半径方向応力σ
rは半径方向位置によらず、常に圧縮方向に作用する。半径方向位置rの方向を正とし、半径方向応力σ
rは常に負値を取る。
【0033】
一方、接線方向には、接線方向応力σ
tが作用するが、セパレータ捲回体の半径方向位置によっては、これが引張にも圧縮にもなり得る。接線方向応力σ
tは引張で正値を、圧縮で負値を取る。巻取張力は引張方向のため、接線方向応力σ
tは通常、引張で正値を取ることが多い。なお、接線方向応力σ
tが負の値であると、非水電解液二次電池用セパレータが巻取方向に沿って圧縮されることからいわゆる菊模様と呼称される外観不良が発生しやすい。なお、菊模様は別名でシワ(wrinkling)、スターディフェクト(star defect)と呼称されることもある。従って、本発明のセパレータ捲回体においては、接線方向応力σ
tが0または正の値となることが、菊模様と呼称される外観不良を防止する面において好ましい。
【0034】
また、半径方向応力σ
rの絶対値が小さい場合、特に、巻取製品の最外層では半径方向応力σ
rの絶対値が0となるため、最外層付近ではいわゆるタケノコと呼称される外観不良が発生しやすい。なお、タケノコは別名でスリップ(slippage)、テレスコープ(telescoping )と呼称されることもある。従って、本発明のセパレータ捲回体において、半径方向応力σ
rの絶対値は特定の値、例えば、0.01MPa以上であることが、タケノコと呼称される外観不良の発生を抑制する面において好ましい。
【0035】
さらに、半径方向応力σ
rや接線方向応力σ
tの絶対値が大きい場合、経時的に変形が進行するクリープ現象が発生しやすく、非水電解液二次電池用セパレータが永久的に伸びたり、圧縮されたりしやすい。
【0036】
以上のことから、本発明のセパレータ捲回体において、半径方向応力σ
rの絶対値は、例えば、0.01MPa〜2.0MPaであることが好ましく、0.01MPa〜1.0MPaであることがより好ましい。また、本発明のセパレータ捲回体において、接線方向応力σ
tは、例えば、0MPa〜10MPaであることが好ましく、0MPa〜8MPaであることがより好ましい。上記半径方向応力σ
rの絶対値および接線方向応力σ
tが上述の範囲であることが、本発明のセパレータ捲回体において、外観不良の発生を抑制することができるという面において好ましい。
【0037】
セパレータ捲回体におけるコアに加わる半径方向応力σ
rは、当該捲回体のコアの歪みを測定することによって測定することができる。
【0038】
具体的には、初めに、セパレータが巻きとられる前の状態のコアの半径を測定し、および、コアに加えられる応力と歪みとの関係(コアの半径方向ヤング率)を予め測定または計算にて求めておく。具体的なコアの半径方向ヤング率の測定方法としては、特に限定されないが、例えば、コアの外側から円周に沿って均等な応力を加え、コアの半径を計測する方法が挙げられる。微小な歪み領域においては、応力と歪みに直線関係があり、この直線の傾きとしてコアの半径方向ヤング率を求めることができる。コアに応力を加える方法としては、高圧の空気や水などの気体や液体を用いて、コアの外側の円周部に接触させるといった方法が挙げられる。また、コアの半径方向ヤング率は計算によっても求められる。コアの材料の物性値である引張ヤング率とポアソン比、および、コアの形状を用いて、弾性理論・有限要素法によるシミュレーションから応力と歪みの関係、コアの半径方向ヤング率を求めることができる。
【0039】
続いて、セパレータ捲回体におけるコアの半径を測定し、セパレータが巻きとられる前の状態のコアの半径と比較することによって、セパレータが巻き取られたことによって生じるコアの歪みの大きさを測定する。最後に、上記測定した歪みと上で求めたコアの半径方向ヤング率から、セパレータ捲回体におけるコアに加えられる応力(半径方向応力σ
r)を算出する。
【0040】
また、セパレータ捲回体における接線方向応力は、当該セパレータ捲回体におけるセパレータの巻取方向と平行な方向の伸びを測定することによって測定することができる。
【0041】
具体的には、初めに、セパレータの接線方向ヤング率を測定する。当該セパレータの接線方向ヤング率は、例えば、後述する引張試験(
図3を参照)によって測定することができる。続いて、セパレータ捲回体におけるコアの中心からの距離が等しい特定の2カ所を選択し、印を付け、当該2カ所の間のセパレータの長さを測定する。さらに続いて、セパレータを、コアの周りに巻き取られている状態から平面状の形態とした上で、当該印が付いている2カ所の間の距離を測定し、上記セパレータ捲回体の状態の際の当該印が付いている2カ所の間の距離と比較することによって、セパレータがコアに巻き取られたことによって生じる当該セパレータの伸びを測定する。最後に、上記測定した伸びと予め測定していたセパレータの接線方向ヤング率から、セパレータ捲回体における接線方向応力を算出する。
【0042】
[臨界応力]
本発明のセパレータ捲回体における臨界応力σ
crは、上記コア内部におけるミーゼス応力σ
mの最大値が上記コアの材料の降伏応力σ
yと等しい値となる場合における、上記コアに加わる半径方向応力σ
rの絶対値に安全率0.5を乗じた値である。
【0043】
ミーゼス応力は、コアを弾性体として、弾性理論・有限要素法を用いて算出される、コアにおける内部応力を示す指標の1つである。ミーゼス応力は、実際には多面的な応力である内部応力を、1軸上における引張または圧縮に投影した値であり、ミーゼス応力がその物体の降伏応力に到達した場合に、その物体は降伏状態となることが知られている。すなわち、「コア内部におけるミーゼス応力σ
mの最大値が上記コアの材料の降伏応力σ
yと等しい値となる」とは、捲回体内部のコアが降伏状態となることを意味し、本発明のセパレータ捲回体における臨界応力σ
crは、コアが降伏状態となる場合にコアに加わる半径方向応力σ
rの絶対値に安全率0.5を乗じた値である。
【0044】
上記臨界応力の計算方法は、弾性理論・有限要素法によるシミュレーションにおいて、コアに対して外から応力を加え、コアが降伏状態となる上記外からの応力の大きさを計算することによって決定され得る。すなわち、コアが降伏状態となった時点において、そのコア内部のミーゼス応力の最大値とコアの材料の降伏応力は等しい値となる。従って、コアが降伏状態となる時点における、コアに加えられた外からの応力の大きさに安全率0.5を乗ずることによって、上記臨界応力σ
crが算出され得る。
【0045】
従って、本発明のセパレータ捲回体は、コアに加わる半径方向応力σ
rの絶対値が、臨界応力σ
cr以下であることによって、コアは確実に降伏状態とならず、コアが不可逆的に変形せず、あるいはその変形量が最小限となり、その外観品質がより改善され得る。また、コアを繰り返して使用することが容易となる。
【0046】
通常、コアは樹脂製で高価であるため、繰り返し使用を前提としている。しかしながら、繰り返し回数が多くなると、コアが永久的に変形したり、部分的に割れたり欠けたりしやすくなるため、コアの使用回数には上限がある。本発明のセパレータ捲回体では、コアに加わる半径方向応力σ
rの絶対値が、臨界応力σ
cr以下であることによって、公知のセパレータ捲回体と比べて外観的に類似していたとしても、コアの使用回数に関して有利であるという特徴を有する。
【0047】
上記臨界応力σ
crは、コアの材料や形状によって変動し得るが、コアが一般に使用される材料や形状からなるコアである場合には、上記臨界応力σ
crは、0.2MPa〜2.0MPaであることが好ましく、0.2MPa〜1.0MPaであることがより好ましい。コアの臨界応力σ
crが0.2MPa以上であることは、コアが充分な強度を有するため、当該コアの変形を充分に抑えることができるため好ましい。コアの臨界応力σ
crが2.0MPaを超えることは、コアが充分な強度を有する反面、当該コアが厚肉となり重量増となるため、運搬性等の観点から好ましくない。
【0048】
[セパレータ間の摩擦力]
本発明のセパレータ捲回体は、最大巻径の95%におけるセパレータ間の摩擦力が後述する臨界摩擦力F
cr以上であることが好ましい。
【0049】
コアを含むセパレータ捲回体全体を輸送・移動の対象と捉えた際に、輸送・移動で負荷される力、加速度が大きい場合に、タケノコと呼称される外観不良が発生し易いことが知られている。これは、輸送・移動時に上記捲回体の外面に加速度による外力が加えられることによって、セパレータ間にてずれ、スリップが発生することに起因すると考えられる。
【0050】
ここで、臨界摩擦力とは、タケノコが発生する最小の摩擦力を意味し、上記輸送・移動時に上記捲回体に加えられる加速度に依存する。具体的には、「力=質量×加速度」から、上記捲回体全体の質量(単位:kg)と輸送・移動の際に負荷される加速度(単位:m/s
2)の積となる。加速度については輸送・移動や梱包などの手段によって影響されるが、一般に、ダンボール梱包にてトラック輸送を行う場合には、加速度50G(=50×重力加速度9.8=490m/s
2)、コンテナ梱包にて船舶輸送を行う場合には、加速度10G(10×重力加速度9.8=98m/s
2)程度となる。例えば、輸送する際のコアを含むセパレータ捲回体全体の質量を1.4kgとすると、コンテナ梱包にて船舶輸送を行うことを想定する場合、加速度が、一般的に10Gであることから、臨界摩擦力F
crは、「1.4×98=140N」となる。また、ダンボール梱包にてトラック輸送を行うことを想定する場合、加速度が、一般的に50Gであることから、臨界摩擦力F
crは、「1.4×490=700N」となる。そして、非水電解液二次電池用セパレータ間の摩擦力F
iがF
cr以上であればタケノコと呼称される外観不良の発生が抑制され得る。しかしながら、後述する非水電解液二次電池用セパレータ間の摩擦力を算出する式から、上記捲回体の最外層における上記摩擦力は常に0となってしまうため、本願明細書においては、上記捲回体の最大巻径の95%の位置における非水電解液二次電池用セパレータ間の摩擦力が上記臨界摩擦力以上であれば、少なくとも最内層から最大巻径の95%の位置まではタケノコと呼称される外観不良が発生せず、上記捲回体全体においてもタケノコと呼称される外観不良の発生を抑制できる面において好ましいと仮定する。ここで、最大巻径の95%の位置における非水電解液二次電池用セパレータ間の摩擦力をF95とも呼称する。
【0051】
具体的には、本発明のセパレータ捲回体において、最大巻径の95%におけるセパレータ間の摩擦力が、セパレータ捲回体の質量と、重力の10倍の加速度を乗じた値以上であることが好ましく、セパレータ捲回体の質量と、重力の12倍の加速度を乗じた値以上であることがより好ましい。前記セパレータ間の摩擦力は具体的には、例えば、0.14kN以上であることが好ましい。最大巻径の95%におけるセパレータ間の摩擦力が上述の範囲内であることは、コンテナ梱包にて船舶輸送を行う場合に、タケノコと呼称される外観不良の発生を抑制する面において好ましい。また、本発明のセパレータ捲回体において、最大巻径の95%におけるセパレータ間の摩擦力が、セパレータ捲回体の質量と、重力の50倍の加速度を乗じた値以上であることが好ましく、セパレータ捲回体の質量と、重力の60倍の加速度を乗じた値以上であることがより好ましい。前記セパレータ間の摩擦力は具体的には、例えば、0.70kN以上であることが好ましい。最大巻径の95%におけるセパレータ間の摩擦力が上述の範囲内であることは、ダンボール梱包にてトラック輸送を行う場合に、タケノコと呼称される外観不良の発生を抑制する面において好ましい。
【0052】
セパレータ間の摩擦力は、後述する式(33)、(34)を参照して計算することができ、セパレータ間の摩擦係数μ
effと垂直抗力との積にて定義される。
【0053】
セパレータ捲回体において、セパレータ間の摩擦係数μ
effは、式(34)を参照して算出することができ、巻取後の圧縮されたセパレータ間の空気層厚さ(h)、セパレータ間の静摩擦係数(μ
ff)、および、セパレータ間の合成自乗平方根粗さ(σ
ff)を用いる。当該セパレータ間の空気層厚さ(h)は後述する式(22)を参照して計算することができる。当該静摩擦係数(μ
ff)は、例えば、JISK7125(プラスチック−フィルムおよびシート−摩擦係数試験方法)といった方法にて測定することができる。当該合成自乗平方根粗さ(σ
ff)は式(11)を参照して計算するが、用いられるセパレータ表面および裏面の自乗平均平方根粗さはJISB0601(製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義および表面性状パラメータ)を参照して測定することができる。
【0054】
また、コアの中心からの距離rによって垂直抗力は、変化し、上記垂直抗力は、コアの中心からの距離rにおける半径方向応力σ
rの絶対値の大きさと、摩擦力が作用する面積S(半径r、セパレータの幅を高さとする円柱の柱部分の表面積に相当する)との積となる。従って、セパレータ間の摩擦力=μ
eff×|σ
r|×Sにて算出される。
【0055】
なお、セパレータ捲回体における、最大巻径の95%におけるセパレータ間の摩擦力は、前記コアの中心からの距離rの値として、最大巻径の95%の値を用いて同様に計算すればよい。
【0056】
[ヤング率]
本発明のセパレータ捲回体において、上記非水電解液二次電池用セパレータの、接線方向のヤング率E
tと、加えられる半径方向応力の絶対値が1000Paである場合の半径方向のヤング率E
rとの比率(E
t/E
r)が、5×10
3以上、5×10
5以下であることが好ましく、10
4〜5×10
5であることがより好ましい。上記ヤング率の比率(E
t/E
r)が上述の範囲内であることは、セパレータ捲回体内部における半径方向および接線方向の応力の絶対値を低減しやすく、当該コアの変形を抑え、得られるセパレータ捲回体の外観品質をより改善する面において好ましい。
【0057】
上記理由としては、後述するセパレータ捲回体内部における半径方向応力を支配する巻取方程式、式(2)、(3)、(8)を参照して説明することができる。これら巻取方程式の左辺には(E
teq/E
req)の項があり、これは上記(E
t/E
r)と強い相関がある。E
teq、E
reqは後述の式(18)、(19)を用いて求められるが、セパレータと空気層を一体化して1つの等価層と捉えることによって、各々E
t、E
rを補正したものである。したがって、(E
teq/E
req)≒(E
t/E
r)と考えてもよく、巻取方程式においてセパレータに関する重要な特性値である。
【0058】
さらに補足すると、半径方向のヤング率E
rは加えられる半径方向応力の関数であり、後述の式(23)で定義される。このため、上記ヤング率の比率(E
t/E
r)についても半径方向応力の関数となるため、当該範囲を規定するために、ここでは半径方向応力の絶対値として1000Paを用いている。
【0059】
なお、セパレータではないが、公知のPPフィルムやPETフィルムに関する、上記ヤング率の比率(E
t/E
r)について、特許文献1〜3および特許文献5〜6から算出した結果を表2にまとめる。
【0061】
このように、公知のフィルムにおける上記ヤング率の比率(E
t/E
r)は本発明の範囲より低いため、フィルム捲回体内部における半径方向および接線方向の応力の絶対値は高くなりやすい。
【0062】
図3に示すように、本発明におけるセパレータの接線方向ヤング率は、通常のフィルムと同様に引張試験によって、測定することができる。本発明におけるセパレータの接線方向ヤング率は、通常のフィルムと同様に引張応力の大きさに依存しない一定の値となる。すなわち、接線方向のヤング率は、本発明のセパレータ捲回体を構成する非水電解液二次電池用セパレータの材料や構造に依存する。本発明のセパレータ捲回体の接線方向ヤング率E
tは、2GPa〜20GPaであることが好ましく、5GPa〜20GPaであることがより好ましい。すなわち、
図3に記載の引張試験の結果、測定される接線方向ヤング率が上述の範囲の非水電解液二次電池用セパレータが、本発明のセパレータ捲回体に好適に使用され得る。
【0063】
一方、
図4に示すように、半径方向ヤング率は、
図4の上図に示す圧縮試験にて測定することができる。上記測定の結果得られる応力−ひずみ線図は、非線形となるため、半径方向ヤング率は、上記非水電解液二次電池用セパレータに加えられる圧縮応力(半径方向応力)の大きさに依存する。
【0064】
本発明において、非水電解液二次電池用セパレータに加えられる圧縮応力(半径方向応力)の大きさが1000Paである場合の、半径方向ヤング率E
rは、10
5〜10
6であることが好ましく、10
5〜6×10
5であることがより好ましい。すなわち、
図4に記載の圧縮試験の結果、セパレータに加える応力Pが1000Paである場合の半径方向ヤング率が上述の範囲である非水電解液二次電池用セパレータが、本発明セパレータ捲回体に好適に使用され得る。
【0065】
[製造方法]
本発明のセパレータ捲回体は、当該セパレータ捲回体を構成する非水電解液二次電池用セパレータのヤング率の比率E
t/E
r(半径方向応力の絶対値が1000Pa)およびコアの臨界応力に応じて、好適な巻取張力を選択し、その巻取張力にて、コアの周りに非水電解液二次電池用セパレータを巻き取ることによって製造することができる。なお、一般的には、巻取張力が低い方が、得られるセパレータ捲回体における半径方向応力は小さくなる。よって、得られるセパレータ捲回体における半径方向応力が、コアの臨界応力以下となるように、巻取張力を調整すればよい。なお、特に、後の本発明の実施形態2に関する記載に示される製造方法(巻取張力の最適化)を使用することにより、コアの変形が防止され、および/または外観品質がより改善されたセパレータ捲回体を製造することができる。
【0066】
[実施形態2:セパレータ捲回体の製造方法]
本発明の実施形態2に係るセパレータ捲回体の製造方法は、本発明の実施形態1に係るセパレータ捲回体を製造するための製造方法であって、上記コアに上記非水電解液二次電池用セパレータを捲回する、捲回工程を含み、上記捲回工程における巻取条件のうち少なくとも巻取張力の分布を、非線形計画法に従って最適化することを特徴とする。本発明の実施形態2に係るセパレータ捲回体の製造方法を使用することによって、本発明の実施形態1に係る、外観品質が良好なセパレータ捲回体を製造することができる。
【0067】
以下において、本発明のセパレータ捲回体の製造方法について説明する。なお、本発明の製造方法に使用するコアおよび非水電解液二次電池用セパレータは、実施形態1について上に記載したものを好適に使用することができる。
【0068】
[捲回工程]
本発明のセパレータ捲回体の製造方法における捲回工程は、コアの周りに非水電解液二次電池用セパレータを捲回させる(巻き付ける)工程であり、当該工程にて使用され得る方法および装置は、特に限定されず、セパレータ捲回体といった巻取ロールの製造に通常使用される方法および巻取装置を使用することができる。
【0069】
本発明の製造方法において使用され得る巻取装置としては、例えば、中心駆動巻取方式と呼称される巻取装置を使用することができる。また、上記巻取装置としては、巻取時の空気の巻き込みを低減させるために、ニップローラを備える巻取装置が一般に使用され得る。後述する巻取張力分布の最適化を実施容易とするために、巻取装置内に構成・配置される各種のロールはフリーロールではなく、速度調整可能な駆動ロールであることがより好ましい。フリーロールの場合、低い巻取張力で捲回しようとしてもベアリングの摩擦抵抗を受けて搬送が困難となりやすいためである。また、ニップローラとしては、セパレータに負荷する荷重を捲回工程中に変更し、ニップ荷重分布の最適化を実施する場合には、荷重可変式の装置であることが好ましい。例えば、空気圧縮シリンダーを備え、空気圧を捲回工程中に制御可能な装置が好ましい。
【0070】
[巻取条件(張力分布)の最適化]
本発明のセパレータ捲回体の捲回工程は、巻取条件のうち少なくとも巻取張力分布を非線形計画法に従って最適化することを特徴とする。上記最適化は、捲回工程における非水電解液二次電池用セパレータに加える巻取張力の分布と、得られるセパレータ捲回体における、半径方向応力、接線方向応力および非水電解液二次電池用セパレータ間の摩擦力との関係を以下に示すモデルに従って解析した上で、上記解析の結果に基づき、非線形計画法に従って実施される。以下に上記解析方法および上記最適化方法について記載する。
【0071】
[解析方法]
本発明のセパレータ捲回体における、セパレータ、コア、およびニップローラの各種物性値、並びに、巻取時の巻取張力を含む巻取条件と、得られる捲回体内部の応力分布等との関係が、以下に記載の方法にて解析され得る。なお、以下の記載は、
図5に記載するような中心駆動巻取方式の巻取機を、捲回工程に使用すると仮定して行った。
【0072】
本発明のセパレータ捲回体の第i層での半径方向応力σ
riは、第i+1層から第n層(最外層)までの各層における応力増分δσ
rijを全て加算して求められ、式(1)により表される(
図2を参照)。
【0074】
式(1)のδσ
rij(以下の式では、添え字i、jは、省略する)を支配する方程式は、一般的には、本発明の属する分野において使用され得る、式(2)で表される巻取方程式と呼称される式である。
【0076】
(ここで、E
teq、E
reqは後述の式(18)、(19)を用いて求められ、非水電解液二次電池用セパレータと空気層を一体化して1つの等価層と捉えた場合の接線方向および半径方向の特性値である。また、ν
rtは非水電解液二次電池用セパレータのポアソン比である。)
しかしながら、式(2)においては、巻取時の巻取張力の分布による影響を、巻取ロールの内部応力に反映することができない。そこで、本発明においては、式(2)に非特許文献5に記載の残留歪モデルを応用した式(3)を、巻取張力の分布による影響を反映可能な巻取方程式として使用する。
【0078】
ここで、左辺は式(2)と同一であり、右辺のδσ
*(r)が残留歪を考慮したものである。なお、式(1)で説明したように、σは応力を、δσは応力増分を意味する。また、残留歪による応力σ
*を示す式(4)が非特許文献5には記載されている。
【0080】
なお、σ
wは単位幅当たりの巻き取る力である巻取張力(単位:N/m)を厚みで割った単位面積当たりの力、すなわち、巻取応力である。この式において、ポアソン比(ν)の表記を本発明と整合させ、応力増分で表現したものが式(5)である。
【0082】
ここで、次の式(6)の関係式が成立する(非特許文献5を参照)。
【0084】
式(6)を式(5)に適用し、整理すると、次の式(7)となる。
【0086】
式(7)を式(3)に代入して、最終的に、残留歪モデルを適用した巻取方程式である式(8)が得られる。
【0088】
ここで、巻取応力σ
w、巻取応力増分δσ
w、および巻取張力T
wには次の式(9)の関係があり、δσ
wを、T
wを用いて表現することができる。これによって、巻取方程式(8)の右辺を、巻取張力分布関数T
w(r)を用いて定量的に表現することができる。
【0090】
なお、式(9)の右辺の分母は非水電解液二次電池用セパレータの巻取前の初期の厚みt
f0、分子は巻取張力分布関数T
w(r)にニップ荷重Nによる誘起分が付加されている。ここで、Wは非水電解液二次電池用セパレータの幅であり、巻取張力の単位と同様に、単位幅当たりのニップ荷重(N/W)に、ニップ部における初期の有効静摩擦係数(μ
eff0)を乗じたものが誘起分となる。なお「有効静摩擦係数」は、ニップ部における数値であって、ニップローラでニップされた箇所における、ニップローラに接触しているフィルムと、その内側のフィルムとの間の摩擦係数を意味する。そして「初期の有効静摩擦係数」とは、ニップローラでニップされた箇所における、ニップローラに接触しているフィルムと、その内側のフィルムとがコアに対して最初に巻き取られたときの、それらのフィルム間の摩擦係数を意味する。
【0091】
有効静摩擦係数(μ
eff0)は半径方向位置rに依存する値であり、次の式(10)で求めることができる。ニップ部における初期の空気層厚み(h
0)の値に応じて3つに分類される。空気層厚みの求め方は後述するが、空気層厚みが合成自乗平方根粗さ(σ
ff)よりも小さい場合は、有効静摩擦係数(μ
eff0)は接触し合う非水電解液二次電池用セパレータの層間の静摩擦係数(μ
ff)となる。また、空気層厚みが合成自乗平方根粗さ(σ
ff)の3倍よりも大きい場合は、摩擦力が作用しないとし、有効静摩擦係数(μ
eff0)は0となる。前記2つの中間である、空気層厚みが合成自乗平方根粗さ(σ
ff)以上であって、合成自乗平方根粗さ(σ
ff)の3倍以下である場合は、空気層厚みに関する1次関数で表現される。
【0093】
合成自乗平方根粗さ(σ
ff)は式(11)で定義される。ここで、σ
f1、σ
f2は非水電解液二次電池用セパレータの表面および裏面での自乗平均平方根粗さである。
【0095】
次に、ニップ部における初期の空気層厚み(h
0)の求め方について説明する。ニップローラの半径(R
nip)とセパレータ捲回体の最外層位置(r=s)との等価半径(R
eq)を、式(13)を用いて求める。また、後述の式(23)で定義されるセパレータ捲回体の半径方向ヤング率(Er)とニップローラのヤング率(E
nip)との等価ヤング率(E
eq)を式(14)にて求める。ここで、ν
nipはニップローラのポアソン比であり、「|
r=s」とはセパレータ捲回体の最外層位置(r=s)における値であることを意味する。
【0096】
これら等価半径(R
eq)および等価ヤング率(E
eq)を式(12)に代入することによって、空気層厚み(h
0)を求めることができる。なお、η
airは空気の粘度、Vは巻取速度である。
【0097】
ここで、式(14)におけるセパレータ捲回体の半径方向ヤング率(E
r)はセパレータ捲回体の最外層位置(r=s)における値であるため、ループ計算が必要となる。まず、任意の適当な空気層厚み(h
01)を仮定し、式(10)から有効静摩擦係数(μ
eff0)を求める。次に後述の境界条件(15)を用いて、最外層における応力増分(δσ
r|
r=s)を求めることができる。空気層厚み(h
0)は最外層のn層と(n−1)層との間に形成される空気層であり、これには(n−1)層における半径方向応力σ
rが加わる。なお、n層における半径方向応力σ
rは0である。
【0098】
(n−1)層における半径方向応力σ
rは、式(1)からδσ
r|
r=sであり、式(23)に代入することで、E
r|
r=sを求めることができる。式(14)から等価ヤング率(E
eq)を、式(13)から等価半径(R
eq)を求め、式(12)から空気層厚み(h
02)を求めることができる。
【0099】
ここで、仮定した空気層厚み(h
01)と比較して有意差があれば、h
01=h
02と置き換えて最初の計算、式(10)に戻り、有意差が無くなるまでループ計算を繰り返し、空気層厚み(h
0)を確定する。
【0101】
巻取方程式(8)は非線形2階常微分方程式であり、セパレータ捲回体の最外層(r=s)と最内層(r=r
c:コア半径)における2つの境界条件が必要である。
【0102】
最外層(r=s)における境界条件を式(15)に、最内層(r=r
c)における境界条件を式(16)に示す。ここで、E
cはコアの半径方向ヤング率である。これらの境界条件は特に限定されるものではないが、文献で広く使用されている。
【0103】
本発明では、各種文献の計算結果との整合性を鑑み、式(16)に替えて、非特許文献6を参照して式(17)を適用する。ここで、E
r(i)、δσ
r(i)はi層における値を意味する。
【0105】
次に、巻取方程式(8)におけるE
reqおよびE
teqについて説明する。巻取りによって圧縮された非水電解液二次電池用セパレータの厚み(t
f)は後述の式(21)で求められる。また、巻取りによって圧縮された空気層厚み(h)は後述の式(22)で求められる。これら、圧縮された非水電解液二次電池用セパレータの厚み(t
f)および空気層厚み(h)を一体化して1つの等価層と捉え、等価層の半径方向ヤング率(E
req)を式(18)に、等価層の接線方向ヤング率(E
teq)を式(19)に示す。ここで、E
raは式(20)にて求められる空気層の半径方向ヤング率を意味する。式(18)と(19)については非特許文献3を参照。
【0107】
ここで、|X|は、Xの絶対値を示すものである。半径方向応力σ
rは圧縮方向の応力であり、負値であるため、絶対値を取って式(20)で用いる。また、P
aは大気圧である。
【0108】
さらに、圧縮された非水電解液二次電池用セパレータの厚さt
fと空気層厚みhは、各々式(21)と(22)で与えられる。
【0110】
セパレータの半径方向ヤング率については、以下の式(23)を使用する。ここで、C
oおよびC
1は、実際の実験による測定値から算出され得る。
【0112】
巻取方程式(8)を以下のようにして解く。まず、微分方程式を差分化し、3つの応力増分δσ
r(i+1)、δσ
r(i)およびδσ
r(i−1)の関係式を導出する。各応力増分の係数をAi、Bi、Ciとし、巻取張力分布関数T
w(r)を定量的に含む定数項をDiとすると、
Ai×δσ
r(i+1)+Bi×δσ
r(i)+Ci×δσ
r(i−1)=Di[T
w(r)] (i=2〜n)
と整理される。i=nの場合、δσ
r(n+1)(ここではi=n+1を最外層とする)は境界条件である式(15)を用いて求められるので、δσ
r(n)とδσ
r(n−1)の関係式となる。ここで、未知数は第1層のδσ
r(1)から第n層のδσ
r(n)までのn個があり、前記方程式の数は(n−1)個のため、解を得るにはもう1つ方程式が必要であるが、最後に境界条件である式(17)を用いる。これらn個の方程式を連立し解くことによって、応力増分δσ
r(i)(i=1〜n)を得て、δσ
rij=δσ
r(j)(j=i+1〜n+1)とすることにより、式(1)から半径方向応力σ
riを求めることができる。
【0113】
さらに具体的に例示すると、例えば巻数が1000回の場合、まずn=2から開始し、2元連立方程式を解き、δσ
r(1)とδσ
r(2)を求める。次に、巻数を1つ増やしてn=3とし、3元連立方程式を解く。この際、係数Bの中には式(18)と(19)から求めた(E
teq/E
req)が含まれており、半径方向応力σ
rの関数となっている。このため、非線形微分方程式と呼称される。この非線形微分方程式に対して、逐次近似解法を採用し、係数Bをn=2の計算結果を用いて近似的に求める。このように、巻数を増加させる毎に、前回の巻数における計算結果を利用して係数Bを近似し、巻数に相当する次元の連立方程式を解く。最後は1000元連立方程式を解いて計算を終了することになる。
【0114】
なお、連立方程式の解法としては、直接法および間接法などが知られているが、計算精度や計算コストの観点から選択すればよい。ここでは、計算コストは高いが計算精度に優れる、直接法の1つであるGaussの消去法を用いる。
【0115】
最後に、接線方向応力σ
tは半径方向応力σ
rを用いて、次の式(24)によって求めることができる。これについても差分化して使用される。
【0117】
以上がセパレータ捲回体内部の応力解析に関する説明であり、この解析結果から特に次の項目が後述する最適化検討の計算に利用される:
・半径方向応力の分布
・最大巻取半径の95%位置(コアの中心からセパレータ捲回体の最外層の長さの95%位置)における半径方向応力
・接線方向応力の分布
・接線方向応力の最小値。
【0118】
[最適化]
次に最適化手法について詳述する。ここでは、
図6を参照して、巻取張力分布関数について、半径方向に5分割した例をもとに説明する。なお、分割数は限定されるものではないが、分割数が多いと設計変数が増え、計算コストが増大するので必要最低限とすることが好ましく、一般には3〜10分割である。ここで、分割点の番号として添字iを用い、コア表面をi=0、最外層をi=5とする。r
iは各分割点iにおける半径方向の位置rを、設計変数X[i]は各分割点iにおける巻取張力を意味する。最適化を行う前には、初期値としてX[i]を仮の値に設定しておく。初期値として、例えば従来の一定張力分布やテーパ張力分布を用いればよい。
【0119】
巻取張力分布関数としては次の式(25)に示す3次スプライン関数を使用する。ここで、添字iは0〜4(4は分割数5から1を引いた数)の整数である。Δrは半径方向の分割距離である。巻取張力以外に分布最適化を行いたい因子、例えばニップ荷重についても、式(25)と同様の3次スプライン関数を用いることができる。ただし、分布最適化因子が増えるほど設計変数が増え、計算コストが増大するので巻取装置の仕様や使用方法などに応じて選定することが好ましい。以下、巻取張力分布の最適化を例示する。
【0121】
ここで、形状パラメータM
iは、各分割点iにおける一次導関数が連続となることから式(26)の関係が成り立つ。なお、添字iは0〜3である。
【0123】
また、両端における一次導関数は2点間の傾きとすることで、次の式(27)が成り立つ。
【0125】
前記(26)と(27)から、M
iに関する6元連立方程式を解くことによって、最終的にMiは式(28)で求められる。
【0127】
以上から、分割点iとi+1、すなわち、半径方向位置r
iとr
i+1の間における張力T
w(r)を式(25)から計算することができる。添字iを0から開始し、順次大きくして4に至るまで繰り返すことでコア表面から最外層までの張力分布を計算することができる。
【0128】
巻取張力分布関数T
w(r)の最適化は、後述の目的関数f(X)とペナルティ関数P(X)の和である拡張目的関数F(X)を最小とする設計変数Xを求める数理問題に置き換えられる。この数理問題の解法としては逐次2次計画法が知られている。
拡張目的関数F(X)=目的関数f(X)+ペナルティ関数P(X) (29)
ただし、非特許文献4で開示された方法ではペナルティ関数に用いられるペナルティ係数を求める際に多くの計算時間を要し、さらに、ステップサイズを求める方法として直接探索法と記載されているが、詳細が開示されておらず、具体的な計算方法は不明である。ここでは、計算時間を短縮するよう改良した具体的な方法を以下に開示する。
【0129】
設計変数Xは列ベクトルであり、次の式(30)で表される。巻取開始、すなわちコア表面における巻取張力X[0]は全くの未知である場合には設計変数に含めてもよいが、一般的な一定張力やテーパ張力分布で巻き取るなど経験的に決定されることが多いため、以下の例示では設計変数から外して固定値とし、後述する目的関数の無次元化にも利用する。
【0131】
目的関数f(X)は、次の式(31)で定義される。
【0133】
目的関数は、先述したセパレータ捲回体内部の応力解析の結果を用いて、分割数nに対して各分割点iにおける非水電解液二次電池用セパレータ間の摩擦力F
iおよび接線方向応力σ
t,iを参照して、これらに関する項を総和したものである。ここで、摩擦力F
iは後述する式(33)から求めることができ、F
crはスリップの始まる臨界摩擦力、σ
t,refは接線方向応力の参照値である。同じ次元同士のF
iをF
crで、σ
t, iをσ
t,refで除することによって目的関数を無次元の値としている。
【0134】
総和は分割点iとしてi=1からn−1までである。i=0を外す理由は巻取開始の張力X[0]を固定値とし、設計変数から外しているためである。また、最外層であるi=nを外している理由は、摩擦力Fが如何なる場合においても0となるためである。
【0135】
参照値σ
t,refは次の式(32)、すなわち、固定値である巻取開始の張力(単位:N/m)を初期の非水電解液二次電池用セパレータの厚み(単位:m)で除した応力(単位:N/m
2=Pa)で定義される。
【0137】
各分割点iにおける非水電解液二次電池用セパレータ間の摩擦力F
iは次の式(33)で定義される。円周長さ(2πr
i)と非水電解液二次電池用セパレータの幅(W)の積は、摩擦力が作用する面積(S)であり、この面積に垂直に加わる半径方向応力の絶対値(|σ
ri|)との積は垂直抗力となる。摩擦力は垂直抗力に摩擦係数(μ
eff)を乗じたものとして定義される。
【0139】
本発明のセパレータ捲回体のセパレータ間の摩擦係数(μ
eff)は式(34)で定義され、ニップ部における初期の空気層厚み(h
0)ではなく、式(22)で計算された巻取後の圧縮された空気層厚さ(h)の関数である。
【0141】
次に、制約条件について説明する。設計変数X、接線方向応力の最小値σ
t,min、非水電解液二次電池用セパレータの層間の摩擦力F95について式(35)、(36)を用いて定義される。ここで、mは制約条件関数gの個数であり、式(36)から具体的にmは12である。制約条件関数gが式(35)を満たさない場合には、後述のようにペナルティを課し、拡張目的関数Fが増大、悪化する。
【0143】
ここで、目的関数と同様に制約条件関数を無次元化している。g1からg10は設計変数X[i](i=1〜5)の値の取り得る数値範囲から定義したものである。数値範囲は特に限定されるものではないが、巻取装置の張力仕様範囲から決定すればよい。ここでは最小値として0を用いることで、制約条件関数g1、g3、g5、g7、g9を定義している。仮に設計変数Xが負値となった場合、制約条件関数gが正値となり、制約条件(35)を満たさず、ペナルティが課される。一方、最大値として巻取開始の張力X[0]の2倍の値を例として用いることで、制約条件関数g2、g4、g6、g8、g10を定義している。仮に設計変数Xが2X[0]を超えた場合、制約条件関数gが正値となり、制約条件(35)を満たさず、ペナルティが課される。
【0144】
また、制約条件関数g11におけるσ
t,minは接線方向応力分布における最小値であるが、この最小値が負値となった場合、菊模様と呼称される外観不良が発生しやすい。そこで、制約条件関数g11が正値となり、制約条件(35)を満たさず、ペナルティが課される。
【0145】
さらに、摩擦力F95が臨界摩擦力F
crより小さくなった場合、タケノコと呼称される外観不良が発生しやすい。そこで、制約条件関数g12が正値となり、制約条件(35)を満たさず、ペナルティが課される。
【0146】
次に、ペナルティ関数P(X)について説明する。非線形計画法においてペナルティの課す方法は外点法や内点法などが一般に知られており、ここでは外点法を用いて例示する。外点法とは、設計変数Xが制約条件を満たさない場合にはペナルティを課す方法である。
【0147】
具体的にはペナルティ関数P(X)は式(37)で定義され、式中のmax{0,g
i(X)}は式(38)で定義される。すなわち、max{0,g
i(X)}は0とg
i(X)のうち、どちらか大きい値を取るという定義である。制約条件を満たす場合は0を返すため、ペナルティ関数P(X)は増加しない。また、制約条件を満たさない場合はgの正値を返すため、ペナルティ関数P(X)は増加する。
【0148】
なお、式(37)のpはペナルティ係数であり正の定数である。ペナルティ係数pは後述の反復ステップ(k)毎に増加させることが好ましい。ペナルティが弱い拡張目的関数F(X)から強い拡張目的関数に移行しながら、逐次的に最適解への到達を目指すSUMT法(Sequential Unconstrained Minimization Technique)を利用することが計算コスト削減の観点で好ましい。具体的な増加方法としては式(39)が挙げられ、反復ステップ毎にc倍する方法であり、p(1)=1000、c=2が例示できる。
【0150】
以上、目的関数f(X)およびペナルティ関数P(X)について説明したが、これらの総和が拡張目的関数F(X)となる。巻取張力分布関数T
w(r)の最適化は、拡張目的関数F(X)を最小とする設計変数Xを求める数理問題(Find X to minimize ... subject to ...)として式(40)に置き換えられる。この数理問題を後述する非線形計画法を用いることで解く。
【0152】
非線形計画法における計算の流れを説明する。計算はStep1〜8の通りである。以下、各Stepについて説明する:
Step1:設計変数X(k)やペナルティ係数p(k)の初期値、物性値など各種パラメータを設定する。k:反復ステップ数=1
Step2:拡張目的関数Fを最小化する探索ベクトルd(k)を求める。
d(k)=−B(k)
−1・∇F(X(k))
B:ヘッセ行列、∇F:勾配ベクトル
Step3:d(k)=0であれば収束判断・終了。さもなければStep4へ、d(k)=0となるまでStep2〜Step8を繰り返す。
【0153】
Step4:アルミホのルールを用いて、ステップサイズStep(k)を求める。
【0154】
Step5:設計変数を更新する。X(k+1)=X(k)+Step(k)×d(k)
Step6:ペナルティ係数を更新する。p(k+1)=p(k)×C
Step7:準ニュートン法BFGS公式によりヘッセ行列B(k+1)を求める。
【0155】
Step8:k=k+1とおいてStep2へ戻る。
【0156】
<Step1>
Step1では非水電解液二次電池用セパレータの物性値、コアやニップローラの特性値、巻取条件などの巻取方程式を解くのに必要な各種パラメータを設定する。また、非線形計画法におけるパラメータとして、設計変数X(k)やペナルティ係数p(k)の初期値などを設定する。反復ステップkは1とする。
【0157】
<Step2>
Step2では拡張目的関数F(X)を最小化する探索ベクトルd(k)を求める。探索ベクトルは式(41)で定義され、ここで、勾配ベクトル∇Fやヘッセ行列Bは式(42)、(43)で定義される。なお、B
−1はBの逆行列であり、式(42)、(43)中のX
1〜X
5は設計変数X[i](i=1〜5)を意味する。式(42)、(43)を見て分かるように、拡張目的関数Fの設計変数Xによる微分が用いられているため、設計変数Xがどの方向に動けば拡張目的関数Fを最小化できるかを求めることができる。
【0159】
拡張目的関数Fの設計変数Xによる微分について説明すると、勾配ベクトルについては式(44)を例示することができる。
【0161】
拡張目的関数Fは前述の通り、仮に設定した設計変数などをもとに巻取方程式を解く必要があり、得られた結果から目的関数f(X)およびペナルティ関数P(X)を求め、両者を足し合わせて得られる値である。したがって、拡張目的関数Fは設計変数Xを用いた陽的に数式で表現された関数ではないため、数値微分で代用する必要がある。数値微分の方法としては特に限定されるものではないが、必要な精度に応じて1次精度、2次精度など高次の微分式を用いればよい。式(44)は1次精度の微分式を用いた例である。設計変数Xにおける拡張目的関数F(X)と
、Xに微小な増分ΔXを加えた設計変数(X+ΔX)における拡張目的関数F(X+ΔX)を求める必要があり、設計変数が5個の場合、勾配ベクトルを求めるのに合計6回、巻取方程式を解く必要があるため、設計変数が多いと計算コストは増大する。また、微分の精度を高次にするのも同様に計算コストが増大するため、1次または2次精度までが好ましい。
【0162】
<Step3>
Step3では計算の収束判定を行う。探索ベクトルd(k)が実質0と見なすことができれば収束と判断し、計算を終了する。さもなければStep4へ移行し、d(k)=0となるまでStep2からStep8を繰り返す。
【0163】
<Step4>
Step4では反復ステップをkからk+1に繰り返す際、設計変数をX(k)からX(k+1)に探索ベクトルd(k)の方向に沿って更新するが、どれくらいの大きさを探索ベクトルd(k)に乗じるかを決める。この大きさをステップサイズStep(k)と定義し、式(45)、(46)に示すアルミホのルールを用いて求めることができる。
【0165】
Step(k)=β
lar (46)
ここで、αとβは0から1まで間の定数であり、式(45)を満たす最小の非負の整数larを求め、式(46)からステップサイズStep(k)を求める。
【0166】
式(45)の右辺に勾配ベクトルが入っており、添字のTは転置行列を意味する。すなわち、勾配ベクトルは列ベクトルのため、この転置行列は行ベクトルである。探索ベクトルd(k)は列ベクトルのため、式(45)の右辺は行ベクトルと列ベクトルの積、すなわち、スカラー値となる。式(45)の左辺は拡張目的関数の差であり、スカラー値である。
【0167】
アルミホのルールは、具体的には、整数larを0から開始し、1、2と順次増加させ、初めて式(45)を満たす整数を求める。なお、αが小さいほど、整数larを速く見つけることができるため、特に限定されるものではないが、α=0.0001を例示することができる。また、βとしては0.5を例示することができる。
【0168】
<Step5>
Step5では、Step2で求めた探索ベクトルd(k)と、Step4で求めたステップサイズStep(k)を用い、式(47)を用いて設計変数をX(k)からX(k+1)に更新する。
X(k+1)=X(k)+Step(k)×d(k) (47)
<Step6>
Step6ではペナルティ係数をp(k)からp(k+1)に、式(39)を用いて更新する。
【0170】
<Step7>
Step7では、ヘッセ行列をB(k)からB(k+1)に更新する。ヘッセ行列Bは式(43)に示すように、拡張目的関数Fを設計変数で2階微分したものであり、これらを数値微分によって求めるニュートン法は非常に計算コストが増大し、現実的ではない。そこで、一般に式(48)に示す準ニュートン法を用いて計算の合理化が行われる。式(41)で求める探索ベクトルd(k)では、ヘッセ行列B(k)の逆行列H(k)を用いるため、H(k)更新のためのBFGS(Broyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno)公式を示している。
【0172】
ここで、s(k)は式(49)に示すように設計変数Xの差の列ベクトルであり、Y(k)は式(50)に示すように勾配ベクトル∇Fの差の列ベクトルである。
【0174】
H(1)としては単位行列が用いられ、単位行列とは対角成分がすべて1の行列である。
【0175】
<Step8>
Step8では、反復ステップkをk+1とおいてStep2へ戻る。
【0176】
以上のStep1〜8までの一連の計算を繰り返し反復することによって収束に向かう。設計変数の初期値などによって、収束に必要な反復ステップ数は異なるが、一般には数回〜10回程度である。なお、局所的な最適解に陥らないよう、大域的最適解を求めるためには初期値を幾つか変更して同一の解となるか確認すればよい。
【実施例】
【0177】
以下の実施例、比較例にて製造したセパレータ捲回体、並びに、当該セパレータ捲回体を構成するコアおよび非水電解液二次電池用セパレータの物性値を以下の方法にて測定した。
【0178】
[コアおよび非水電解液二次電池用セパレータの大きさ]
非水電解液二次電池用セパレータの厚みは、JISK7130(プラスチック−フィルムおよびシート−厚さ測定方法)に従い、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機を用いて測定した。セパレータの長さはエンコーダ測長器を用いた。上記以外の寸法についてはノギスを用いて測定した。
【0179】
[コアの臨界応力]
非水電解液二次電池用セパレータを捲回する前のコアに対して、弾性理論・有限要素法によるシミュレーションを用いて外から応力を加え、コアが降伏状態となる応力の大きさを計算した。結果、加える応力の大きさが2.0MPaである場合に、コア内部のミーゼス応力の最大値はコア材料であるABS樹脂の降伏応力40MPaとなった。このことから、加えた外力の値に安全率0.5を乗じることによって、コアの臨界応力σ
crを1.0MPaと算出した。
【0180】
[コアの半径方向ヤング率]
コアの半径方向ヤング率を弾性理論・有限要素法によるシミュレーションを用いて計算した。その条件を以下に示す。
・コア材料:ABS樹脂(引張ヤング率:2GPa、ポアソン比:0.36)
・コア形状:最内直径:75mm、内周部厚み:5.4mm
最外直径:152mm、外周部厚み:5.9mm
リブ:45°毎に配置、合計8本、厚み5.4mm
幅:65mm
[非水電解液二次電池用セパレータのヤング率]
図3、
図4に記載の引張試験および圧縮試験を行うことによって、非水電解液二次電池用セパレータの接線方向ヤング率E
tおよび半径方向ヤング率E
rを測定した。上記試験における測定装置および測定条件は、下記の通りである。
【0181】
引張試験:
・測定装置:INSTRON製5982型
・測定条件:JISK7127(プラスチック−引張特性の試験方法)、同7161(プラスチック−引張特性の求め方)に準拠。引張速度10mm/min。
・試験片:JISK7127 タイプ1B。
【0182】
圧縮試験:
・測定装置:INSTRON製5982型
・測定条件:JISK7181(プラスチック−圧縮特性の求め方)に準拠。圧縮速度1.2mm/min。
・試験片:150mm長×60.9mm幅×20mm厚み(セパレータを約1200枚積層)。
【0183】
[コアの歪み]
以下の実施例1にて得られたセパレータ捲回体におけるコアの歪みを下記の通り測定した。初めに、セパレータが巻きとられる前の状態のコアの半径(R
0)をノギスにて測定したところ、76.0mmであった。なお、測定箇所は、8本配置されているリブに対して、リブとリブの中間において4か所、リブ頭において4か所、合計で8か所を測定して平均した。続いて、セパレータ捲回体におけるコアの半径(R
1)を同様に測定し、コアの歪みを(R
0−R
1)/R
0 として求めた。
【0184】
[解析方法]
半径方向位置(R/Rc)における巻取張力T
wの分布に基づき、半径方向応力σr、接線方向応力σt、および非水電解液二次電池用セパレータの層間の摩擦力Fを、上の実施形態2に記載の解析方法を用いて解析した。
【0185】
[実施例1〜3、比較例1〜4]
ABS樹脂からなるコアを、ニップローラを備えた中心駆動巻取方式である巻取機の巻き芯に固定、回転させ、非水電解液二次電池用セパレータを捲回して、セパレータ捲回体を製造した。その際、それぞれの実施例、比較例において、非水電解液二次電池用セパレータに加えた巻取張力を、巻き芯を回転させるモータの回転数を制御して、
図7に示すように調整した。
【0186】
それぞれの実施例、比較例にて使用したコアの物性、巻取機のニップローラの物性値および非水電解液二次電池用セパレータの物性、並びに、その他のパラメータを以下の表3、4に示す。
【0187】
ただし、比較例2、3で使用したセパレータの物性値は、特許文献1〜3、5〜6にて開示されているヤング率の比率(Et/Er)が1000〜3000付近であることを参考にして適宜設定したものであり、比較例2、3は計算例である。
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】
【0190】
また、使用した非水電解液二次電池用セパレータの特性、コアの臨界応力、巻取条件の概要、得られたセパレータ捲回体のコアの歪みとコアに加わる半径方向応力の絶対値の値を以下の表5に示す。なお、実施例1において、コアの歪みが実測値と計算値において定量的に整合していることから、実施例1以外におけるコアの歪みは計算値のみを表記している。
【0191】
【表5】
【0192】
さらに、得られたセパレータ捲回体のコア中心から特定の距離R離れた位置における、コアの半径Rcに対する半径方向位置(R/Rc)と巻取張力T
w、半径方向応力σrの絶対値、接線方向応力σt、および非水電解液二次電池用セパレータの層間の摩擦力Fとの関係を解析した。その結果を
図7〜
図10に示す。
【0193】
[結論]
表5および
図7〜
図14の記載から、実施例1、2、3にて得られたセパレータ捲回体のコアに加わる半径方向応力がコアの臨界応力以下であることが示された。
【0194】
図7、8、および
図11、12の記載から、実施例1、比較例1、および実施例3、比較例4においては、巻取張力が小さくなるに伴い、半径方向応力の絶対値も小さくなることが分かった。従って、巻取張力を適切に調整することによって、コアに加わる半径方向応力の絶対値を低減することができ、セパレータ捲回体のコアに加わる半径方向応力をコアの臨界応力よりも低くすることができることが示された。比較例2、3は、巻取張力および巻長さは実施例3と同じであるが、結果として得られたセパレータ捲回体においては、コアに加わる半径方向応力の絶対値が、大きくなっている。これは、非水電解液二次電池用セパレータのヤング率の比率の違いに起因すると予想される。従って、非水電解液二次電池用セパレータの種類によって、好適な巻取張力を調整することが重要であることが示された。
【0195】
また、
図7、9から、実施例1、2にて得られたセパレータ捲回体は、接線方向応力が0または正の値となっていることが分かる。また、コアおよび最外層近傍を除く中央付近で接線方向応力はほぼゼロとなっており、クリープ現象の発生が抑制されている。
【0196】
一方、比較例1においては、R/Rcが1.2〜1.4付近の巻中央で接線方向応力が負の値となることが分かった。これにより、巻取張力が比較例1、4の場合よりも低い値に調整され、コアに加わる半径方向応力の絶対値がコアの臨界応力以下に調整された、実施例にて得られたセパレータ捲回体は、接線方向応力が0または正の値であり、菊模様と呼称される外観不良の発生が抑制されていることが分かった。なお、比較例2は、張力が低いにも関わらず、接線方向応力がコアから最外層の全体に渡って高い値となることが示された。これもまた、非水電解液二次電池用セパレータのヤング率の比率の違いに起因すると予想される。
【0197】
さらに、
図7、10および
図11、14から、巻取張力の非線形計画法による最適化を行った実施例2以外の実施例1、3、比較例1〜4にて得られたセパレータ捲回体は、非水電解液二次電池用セパレータの層間の摩擦力が過剰であることが分かった。一方、実施例2では、最適化した張力分布を使用しているため、非線形計画法の制約条件に従い、最大巻径の95%(0.95Rmax)において臨界摩擦力F
cr(0.14kN)を保持している事が分かった。
【0198】
以上の事項から、好適に調整された巻取張力にて、コアの周りに非水電解液二次電池用セパレータを捲回することによって、コアに加わる半径方向応力の絶対値をコアの臨界応力以下に調整したセパレータ捲回体を製造することができることが示された。
【0199】
また、コアに加わる半径方向応力の絶対値がコアの臨界応力以下に調整されたセパレータ捲回体は、接線方向応力も好適な範囲に調整されており、外観品質に優れることが示された。
【0200】
さらに、巻取張力の非線形計画法による最適化を行うことによって、摩擦力を好適に調整できることが示された。すなわち、巻取張力の非線形計画法による最適化を行うことによって、外観品質をより改善できることが示された。
【0201】
従って、非水電解液二次電池用セパレータのヤング率の比率に応じて、コアに加わる半径方向応力の絶対値がコアの臨界応力以下となるように巻取張力を調整し、その巻取張力にて、非水電解液二次電池用セパレータをコアに巻き取ることによって、コアの変形を抑え、外観品質に優れるセパレータ捲回体を製造することができることが分かった。