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特許6240768リチウム空気電池用正極およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240768
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】リチウム空気電池用正極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20171120BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M4/86 B
   H01M12/06 F
   H01M12/08 K
   H01M4/80 C
   H01M4/66 A
   H01M4/86 M
   H01M4/92
   H01M4/90 X
   H01M4/90 M
   H01M4/90 Y
   H01M4/90 Z
   H01M4/88 K
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-529728(P2016-529728)
(86)(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公表番号】特表2016-529661(P2016-529661A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】KR2014008545
(87)【国際公開番号】WO2015037950
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0110193
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユ−ミ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ミンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ピョンクク
(72)【発明者】
【氏名】パク、キ−ス
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−175446(JP,A)
【文献】 特開2012−230839(JP,A)
【文献】 特開2012−089328(JP,A)
【文献】 特開2015−005392(JP,A)
【文献】 特開2014−067549(JP,A)
【文献】 特開2013−152894(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/100752(WO,A1)
【文献】 特開2012−186140(JP,A)
【文献】 特開2015−026482(JP,A)
【文献】 特開昭61−239566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/66
H01M 4/80
H01M 4/88
H01M 4/90
H01M 4/92
H01M 12/06
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性金属からなる正極集電体と、
前記正極集電体上に備えられ、伝導性物質および酸素還元触媒を含む正極活性層とを含み、
前記多孔性金属は、金属箔であり、
前記多孔性金属は、気孔の直径が20ナノメートル以上1ミリメートル以下であり、
前記多孔性金属は、気孔率が10%以上40%以下であり、
前記伝導性物質は、メソポーラス炭素、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、炭素ナノチューブ、炭素繊維、フラーレン、活性炭素、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、炭素繊維、金属繊維、フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、およびニッケル粉末からなる群より選択される1つまたは2つ以上であることを特徴とする、リチウム空気電池用正極。
【請求項2】
前記多孔性金属は、周期律表のIA族〜VA族およびIB〜VIIIB族の元素で構成された群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の合金であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム空気電池用正極。
【請求項3】
前記多孔性金属は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、スズ、チタン、マンガン、クロム、インジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、および銀からなる群より選択された1つまたは2つ以上の合金であることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム空気電池用正極。
【請求項4】
前記正極集電体の厚さは、10マイクロメートル以上50マイクロメートル以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム空気電池用正極。
【請求項5】
前記正極活性層の厚さは、10マイクロメートル以上100マイクロメートル以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム空気電池用正極。
【請求項6】
前記酸素還元触媒は、貴金属、非金属、金属酸化物、および有機金属錯体からなる群より選択される1つまたは2つ以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウム空気電池用正極。
【請求項7】
前記酸素還元触媒は、白金、金、銀、ホウ素、窒素、硫黄、マンガン酸化物、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、ルテニウム酸化物、金属ポルフィリン、および金属フタロシアニンからなる群より選択される1つまたは2つ以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム空気電池用正極。
【請求項8】
多孔性金属からなる正極集電体の表面に、伝導性物質および酸素還元触媒を含む正極物質をコーティングして正極活性層を形成することを特徴とする、リチウム空気電池用正極の製造方法であって、
前記多孔性金属は、金属箔であり、
前記多孔性金属は、気孔の直径が20ナノメートル以上1ミリメートル以下であり、
前記多孔性金属は、気孔率が10%以上40%以下であり、
前記伝導性物質は、メソポーラス炭素、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、炭素ナノチューブ、炭素繊維、フラーレン、活性炭素、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、炭素繊維、金属繊維、フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、およびニッケル粉末からなる群より選択される1つまたは2つ以上である製造方法。
【請求項9】
前記コーティングは、減圧濾過法、ディッピング法、またはスクリーンプリンティング法を用いて行うことを特徴とする、請求項8に記載のリチウム空気電池用正極の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の正極と、
前記正極に対向して配置され、リチウムイオンを収容および放出する負極と、
前記負極と前記正極との間に備えられる電解質とを含むことを特徴とする、リチウム空気電池。
【請求項11】
前記負極は、リチウム金属、リチウム金属ベースの合金、リチウム化合物、およびリチウム挿入(intercalation)物質からなる群より選択されるものを含むことを特徴とする、請求項10に記載のリチウム空気電池。
【請求項12】
前記リチウム空気電池は、正極と負極との間に備えられる分離膜をさらに含むことを特徴とする、請求項10または11に記載のリチウム空気電池。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のリチウム空気電池を単位電池として含むことを特徴とする、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年9月13日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2013−0110193号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、リチウム空気電池用正極およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
電気機器に対する電力供給のための手段として電池(battery)が広く用いられるが、このような電池には、マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池、亜鉛−空気(zinc−air)電池などの一次電池と、ニッケルカドミウム(Ni−Cd)電池、ニッケル水素(Ni−MH)電池、リチウムイオン電池などの二次電池とがある。
【0004】
最近は、リチウムイオン電池が最も広く用いられる二次電池であるが、まだ解決すべき問題が多くあり、相対的に低い理論的エネルギー単位密度、リチウムの天然埋蔵量など、様々な限界点も導出されている。したがって、リチウムイオン二次電池を代替可能な、高性能を発揮しつつ製造原価も節減できる次世代二次電池に対する必要性から、リチウム−空気電池(Lithium−air battery)のような金属−空気電池が提案された。
【0005】
リチウム−空気電池(Lithium−air battery)は、既存のリチウムイオン電池(Lithium−ion battery)より10倍もエネルギー密度が高く、ガソリンに匹敵する効率性を発揮し、電池の体積および重量を画期的に低減することができる。
【0006】
リチウム空気電池の理論的なエネルギー密度は3,000Wh/kg以上であり、これは、リチウムイオン電池のエネルギー密度の約10倍に相当する。同時に、リチウム空気電池は、環境に優しく、リチウムイオン電池より安定性が高い利点があるが、商用化のためには、充放電寿命、効率の向上など、依然として解決すべき問題が多い。
【0007】
したがって、リチウム空気電池の商用化のための研究が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願が解決しようとする課題は、電極の電気伝導度および機械的強度が向上し、電極のローディング量を高めることができるリチウム空気電池用正極およびそれを製造する方法を提供することである。
【0009】
本出願の解決しようとする課題は、以上に言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願の一実施態様は、多孔性金属からなる正極集電体と、正極集電体上に備えられ、伝導性物質および酸素還元触媒を含む正極活性層とを含むリチウム空気電池用正極を提供する。
【0011】
本出願の他の実施態様は、多孔性金属からなる正極集電体の表面に、伝導性物質を含む正極物質をコーティングして正極活性層を形成するリチウム空気電池用正極の製造方法を提供する。
【0012】
本出願の他の実施態様は、前記正極と、前記正極に対向して配置され、リチウムイオンを収容および放出する負極と、前記負極と前記正極との間に備えられる電解質とを含むリチウム空気電池を提供する。
【0013】
本出願の他の実施態様は、前記リチウム空気電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本出願の一実施態様にかかるリチウム空気電池用正極は、電極の電気伝導度および機械的強度が向上し、ローディング量を高めることができる利点があり、電池容量を増大させることにより、電池性能を向上させることができる利点がある。また、前記正極の製造方法は、工程が簡単で、工程経済および費用節減効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】リチウム空気電池の模式図を示すものである。
図2】実施例1および比較例1の放電曲線を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に、詳細に後述する実施態様を参照すれば明確になる。しかし、本出願は、以下に開示される実施態様に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現され、単に本実施態様は本出願の開示が完全になるようにし、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本出願は請求項の範疇によってのみ定義される。図面に表示された構成要素の大きさおよび相対的な大きさは、説明の明瞭性のために誇張されたものであってよい。
【0017】
別途の定義がなければ、本明細書で使用される技術および科学的用語を含むすべての用語は、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解できる意味で使用可能である。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明らかに特別に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0018】
以下、本出願を詳細に説明する。
【0019】
本出願の一実施態様は、多孔性金属からなる正極集電体と、正極集電体上に備えられ、伝導性物質および酸素還元触媒を含む正極活性層とを含むリチウム空気電池用正極を提供する。
【0020】
ここで、多孔性金属とは、気孔を含む構造を意味する。
【0021】
従来、リチウム空気電池の正極集電体としては、多孔性カーボンペーパー(carbon paper)を使用していたが、この物質は、酸素の透過が容易であり、空気中の水分の制御が可能で軽いという利点がある。しかし、カーボンペーパーは、電子を移動させる役割と、外部の酸素が電池内部に拡散することを容易にする役割を果たすだけで、直接的に電気化学反応に参加しない問題があった。また、カーボンペーパーは、機械的強度が弱くて加工に困難が多く、カーボンペーパー上に電極物質をコーティングする時の工程が容易でない問題があった。
【0022】
本出願は、前記カーボンペーパーの問題を認識し、これを解決するために、正極集電体として多孔性金属を導入した。多孔性金属は、電子を移動させる役割と、外部の酸素を電池内部に拡散させる役割だけでなく、金属の種類に応じて電気化学反応に直接参加するため、電池の電気化学的性能を向上させる利点があって、反応速度を改善することができる。そのため、本出願の正極集電体を導入した正極は、電池性能を向上させることで高容量の電池を製造することができ、電池のサイクル特性を向上させることができる。また、多孔性金属上に電極物質のコーティングする時の工程が容易で、電極製造時の工程上のメリットもある。
【0023】
前記多孔性金属は、気孔の直径が20ナノメートル以上1ミリメートル以下であってよい。20ナノメートル以上であれば、気孔が小さすぎる場合、酸素が十分に拡散することを妨げる問題を防止することができ、1ミリメートル以下であれば、電極の厚さを均一に製造することができる。気孔の直径が大きすぎる場合、正極物質を正極集電体の表面にコーティングする時、正極物質が気孔の内部に抜けて電極の厚さが不均一になり得るので、1ミリメートル以下であることが好ましい。
【0024】
前記多孔性金属は、気孔率が10%以上、より具体的には20%以上であってよく、50%以下、より具体的には40%以下であってよい。
【0025】
前記多孔性金属は、金属箔(foil)、金属メッシュ(mesh)、または金属フォーム(foam)であってよく、金属箔が好ましい。金属箔の場合、一定間隔で気孔またはホールを加工するのに容易である。また、電解液を揮発させやすく、電極コーティングが容易になる利点がある。
【0026】
金属メッシュの場合、メッシュ構造をなす単位構造の形状は制限されず、三角形、四角形、五角形、多角形、または台形などの形状が規則または不規則に繰り返されてよい。
【0027】
前記多孔性金属は、周期律表のIA族〜VA族およびIB〜VIIIB族の元素で構成された群より選択されたいずれか1つまたは2つ以上の合金であってよく、具体的には、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、スズ、チタン、マンガン、クロム、インジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、および銀からなる群より選択された1つまたは2つ以上の合金であってよい。ステンレス鋼は、STSまたはSUSであってよい。
【0028】
前記正極集電体の厚さは、10マイクロメートル以上であってよく、より具体的には15マイクロメートル以上であってよく、50マイクロメートル以下であってよく、より具体的には30マイクロメートル以下であってよい。10マイクロメートル以上であることが、気孔の加工において容易であり、機械的強度の面においても優れ、50マイクロメートル以下であることが、集電体の抵抗が過度に大きくなるのを防止することができ、気孔の加工においても容易である。
【0029】
前記正極活性層の厚さは、10マイクロメートル以上であってよく、より具体的には20マイクロメートル以上であってよく、100マイクロメートル以下であってよく、より具体的には80マイクロメートル以下であってよい。20マイクロメートル以上であることが、電気化学反応サイトが過度に減少するのを防止することができ、容量が制限されるのを防止することができ、100マイクロメートル以下であることが、電極反応サイトの効率性が低下するのを防止することができる。
【0030】
前記正極活性層は、伝導性物質を含む。
【0031】
前記伝導性物質は、電池に化学的変化を誘発せず、かつ電気伝導性を有するものであれば特に制限されないが、例えば、炭素材料、伝導性高分子、伝導性繊維、および金属粉末からなる群より選択される1つまたは2つ以上の混合物を使用することができる。
【0032】
前記炭素材料は、多孔性構造であるか、比表面積が高いものであればいずれでも構わず、具体的には、メソポーラス炭素、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、炭素ナノチューブ、炭素繊維、フラーレン、および活性炭素からなる群より選択される1つまたは2つ以上を使用することができる。前記伝導性高分子は、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、およびポリピロールからなる群より選択される1つまたは2つ以上を使用することができ、前記伝導性繊維は、具体的には、炭素繊維または金属繊維などを使用することができ、金属粉末は、具体的には、フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、およびニッケル粉末からなる群より選択される1つまたは2つ以上を使用することができる。
【0033】
前記伝導性物質の含有量は、正極活性層の全体重量を基準として10重量%〜99重量%であってよい。伝導性物質の含有量が少なすぎると、反応サイトが減少して電池容量が低下することがあり、含有量が多すぎると、相対的に触媒の含有量が減少して触媒の機能を十分に果たせないこともある。
【0034】
前記正極活性層は、前記伝導性物質のほか、伝導性物質と共に、選択的に、酸素還元触媒、正極物質を集電体に付着させやすくするためのバインダー、溶媒、および添加剤のうちの1つまたは2つ以上をさらに含むことができる。
【0035】
前記正極は、酸素を正極活物質として使用するため、正極活性層に酸素反応を促進させる酸素還元触媒を含み、酸素還元触媒の具体例としては、貴金属、非金属、金属酸化物、および有機金属錯体からなる群より選択される1つまたは2つ以上があるが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記貴金属は、白金(Pt)、金(Au)、および銀(Ag)からなる群より選択される1つまたは2つ以上であってよい。
【0037】
前記非金属は、ホウ素(B)、窒素(N)、および硫黄(S)からなる群より選択される1つまたは2つ以上であってよい。
【0038】
前記金属酸化物は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、およびルテニウム(Ru)からなる群より選択される1つまたは2つ以上の金属の酸化物であってよい。例えば、前記金属酸化物は、ルテニウムオキサイドであってよい。
【0039】
前記有機金属錯体は、金属ポルフィリンおよび金属フタロシアニンからなる群より選択される1つまたは2つであってよい。
【0040】
前記触媒の含有量は、正極活性層の全体重量を基準として0.1重量%〜10重量%であってよい。0.1重量%以上の場合、触媒の役割を果たすのに好ましく、10重量%以下の場合、分散度が低下する現象を防止することができ、費用の面においても好ましい。
【0041】
前記バインダーとしては、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、アルキレーテッドポリエチレンオキサイド、架橋結合されたポリエチレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレンとポリビニリデンフルオライドのコポリマー(商品名:Kynar)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレンポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、これらの誘導体、ブレンド、およびコポリマーからなる群より選択される1つまたは2つ以上が使用できる。
【0042】
前記バインダーの含有量は、前記正極活性層の全体重量を基準として0.5重量%〜30重量%で添加されてよい。バインダーの含有量が0.5重量%未満であれば、正極の物理的性質が低下して正極内の活物質と導電剤が脱落することがあり、30重量%を超えると、正極において活物質と導電剤の割合が相対的に減少して電池容量が減少することがある。
【0043】
前記溶媒は、沸点200℃以下の溶媒を使用することができ、例えば、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)からなる群より選択される1つまたは2つ以上を使用することができる。
【0044】
本出願の一実施態様は、多孔性金属からなる正極集電体の表面に、酸素還元触媒および伝導性物質を含む正極物質をコーティングして正極活性層を形成するリチウム空気電池用正極の製造方法を提供する。
【0045】
前記製造方法において、多孔性金属、正極集電体、酸素還元触媒、伝導性物質、正極活性層などに関する説明は上述したのと同様である。
【0046】
前記正極物質は、正極活性層を形成するための組成物であり、伝導性物質のほか、選択的に、酸素還元触媒、正極物質を集電体に付着させやすくするためのバインダー、溶媒、および添加剤のうちの1つまたは2つ以上をさらに含むことができる。
【0047】
前記コーティングは、減圧濾過法、ディッピング法、またはスクリーンプリンティング法を用いて行うことができる。
【0048】
前記コーティング時の温度は、金属が酸化せず、伝導性物質の構造が変化しない温度であれば構わず、具体的には100℃以上300℃以下であってよい。
【0049】
正極としてカーボンペーパーを使用する場合、破れやすいが、正極が多孔性金属を含む場合、それより強度が高い。
【0050】
本出願の一実施態様は、前記正極と、前記正極に対向して配置され、リチウムイオンを収容および放出する負極と、前記負極と前記正極との間に備えられる電解質とを含むリチウム空気電池を提供する。
【0051】
前記電解質は、前記負極と正極との間に備えられるものとして記載したが、固体でない液体の特性上、前記非水系電解質の一部または全部が正極および/または負極構造物に含浸した形態で存在することも可能である。また、分離膜が存在する場合、前記分離膜に含浸した形態で存在してもよい。
【0052】
前記電解質は、リチウム塩を含むことができる。前記リチウム塩は、溶媒に溶解し、電池内においてリチウムイオンの供給源として作用することができ、例えば、負極とリチウムイオン伝導性固体電解質膜との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たすことができる。前記リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2252、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiF、LiBr、LiCl、LiI、LiB(C242、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32(LiTFSI)、LiN(SO2252、およびLiC(SO2CF33からなる群より選択される1つまたは2つ以上を使用することができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M〜1.5Mの範囲内で使用することができる。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0053】
前記電解質は、水系電解質または非水系電解質であってよい。
【0054】
前記水系電解質は、水に前記リチウム塩を含ませたものであってよい。
【0055】
前記非水系電解質は、有機溶媒に前記リチウム塩を含ませたものであってよい。
【0056】
前記非水系電解質は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、有機硫黄(organosulfur)系、有機リン(organophosphorous)系、非プロトン性溶媒、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非水系有機溶媒を含むことができる。
【0057】
前記非水系有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジブチルカーボネート(DBC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン(1,3−dioxolane)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ブチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、ブチルブチレート、γ−ブチロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン、3−メチル−γ−ブチロラクトン、4−メチル−γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、トリイソプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート(tritolyl phosphate)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEGDME)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものであってよい。
【0058】
前記非水系有機溶媒は、リチウム塩のほか、他の金属塩を追加的に含むことができる。例えば、AlCl3、MgCl2、NaCl、KCl、NaBr、KBr、またはCaCl2などがある。
【0059】
前記負極は、放電時にリチウムイオンを放出し、充電時にリチウムイオンを収容することができ、前記正極は、放電時に酸素を還元し、充電時に酸素を放出することができる。
【0060】
前記負極は、負極活性物質として、リチウム金属、リチウム金属ベースの合金、リチウム化合物、およびリチウム挿入(intercalation)物質からなる群より選択されるものを含むことができる。
【0061】
前記リチウム金属ベースの合金は、例えば、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al、およびSnからなる群より選択される金属の合金であってよい。
【0062】
前記リチウム化合物は、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質であって、例えば、酸化スズ、チタンナイトレート、またはシリコンであってよい。
【0063】
前記リチウム挿入物質とは、リチウムイオンを可逆的にインターカレーションまたはデインターカレーション可能な物質を意味し、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物であってよい。
【0064】
前記負極は、負極集電体をさらに含むことができる。前記負極集電体は、負極の集電を行うものであって、電気伝導性を有する材料であればいずれでも構わず、例えば、カーボン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、およびチタンからなる群より選択される1つまたは2つ以上を使用することができ、より具体的には、カーボン−コーティングされたアルミニウム集電体を使用することができる。炭素がコーティングされたアルミニウム基板を使用することが、炭素がコーティングされていないものに比べて、活物質に対する接着力に優れ、接触抵抗が低く、アルミニウムのポリスルフィドによる腐食を防止することができる利点がある。集電体の形態は、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、または不織布体など、多様な形態が可能である。
【0065】
前記リチウム空気電池は、前記正極と負極との間に備えられる分離膜をさらに含むことができる。前記正極と負極との間に位置する分離膜は、正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極との間にリチウムイオンの輸送を可能にするもので、リチウムイオンのみを通過させ、残りは遮断できるものであれば、いずれでも使用可能である。例えば、多孔性非伝導性または絶縁性物質からなってよい。より具体的には、ポリプロピレン素材の不織布やポリフェニレンスルフィド素材の不織布のような高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンのようなオレフイン系樹脂の多孔性フィルムを例示することができ、これらを2種以上併用することも可能である。このような分離膜は、フィルムのような独立した部材であってもよく、正極および/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。前記分離膜は、電解質を含浸させるものであって、電解質の支持材として使用してもよい。
【0066】
前記リチウム空気電池の形態は制限されず、例えば、コイン型、平板型、円筒型、角型、ボタン型、シート型、または積層型であってよい。
【0067】
本出願の一実施態様は、前記リチウム空気電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。前記電池モジュールは、本出願の一実施態様にかかるリチウム空気電池の間にバイポーラ(bipolar)プレートを挿入してスタッキング(stacking)して形成されてよい。前記バイポーラプレートは、外部から供給される空気をリチウム空気電池のそれぞれに含まれている正極に供給できるように、多孔性であってよい。例えば、多孔性ステンレスまたは多孔性セラミックを含むことができる。
【0068】
前記電池モジュールは、具体的には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ−インハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵装置の電源として使用できる。
【実施例】
【0069】
以下、本出願を具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて詳細に説明する。しかし、本出願にかかる実施例は、種々の異なる形態で変形可能であり、本出願の範囲が以下に詳述する実施例に限定されると解釈されない。本出願の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本出願をより完全に説明するために提供されるものである。
【0070】
<実施例1>
19mm径の円形電極を基準として38〜42個の気孔が含まれるように、Al箔上に1mmの直径を有する気孔を加工し、厚さ20μmの正極集電体を製造した。そして、ケッチェンブラックとルテニウムオキサイド、PVDFバインダーを6:2:2の重量比で混合し、NMPを固形分対比1300重量%を入れて混合して、電極スラリーを製造した。加工されたAl箔の表面に30μmの厚さにコーティングした後、120℃で12時間真空乾燥して、正極を製造した。これを19mm径の円形電極として加工して、セルの組み立てに使用した。電解液は、1MのLiTES1電解塩とTEGDME溶媒を用いて製造し、負極は、16mm径の円形電極として加工して使用した。分離膜は、19mm径の円形のガラスファイバー(glass fiber:Whatman社GF/C)を用いて、直径が20mmで、厚さが32mmのコインセルの組み立てを行った。
【0071】
<比較例1>
カーボンペーパー(Toray社、TGP−H−030)を正極集電体として用いて、実施例1と同様の方法でセルを組み立てた。
【0072】
<実験例>放電の測定
ポテンショスタット(Potentiostat、bio−Logic社、VMP3)を用いて、電池の放電実験を進行させた。電極(ケッチェンブラックとルテニウムオキサイド)重量対比100mA/gの電流密度を加えて電圧cut−off方法で放電させ、下限電圧を2.0Vに設定して、実施例1および比較例1で製造したコインセルの電気化学実験を進行させた。製造したセルに、密閉された空間で純粋な酸素を1.5atmで満たし、電解液が電極、分離膜に十分に浸透できるように、5時間の濡れ(wetting)時間を十分に与えた後に、測定を始めた。
【0073】
前記測定の結果を図2に示した。図2のグラフは、実施例1および比較例1の放電曲線を示すもので、比較例1より実施例1の方が放電電圧が高かった。これは、放電反応が起こるのに抵抗が少なく作用すると考えられる。また、放電容量が多いことから、Al箔に加工したホールを用いて酸素を供給すれば、酸素の供給に容量的制限が発生しないと考えられる。
【0074】
以上、添付した図面を参照して本出願の実施例を説明したが、本出願は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本出願の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本出願の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。そのため、以上に述べた実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0075】
10:正極集電体
20:正極活性層
30:負極
40:電解質
50:分離膜
100:正極
図1
図2