(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記点像復元処理部は、前記取得した画像データに対し、前記第1の点像復元フィルタ及び前記第2の点像復元フィルタをそれぞれ適用することにより第1の増減分データ及び第2の増減分データを生成し、前記生成した第1の増減分データ及び第2の増減分データを前記画像データに加算し、
前記復元率制御部は、前記光量比検出部が検出した光量比に応じて前記第1の増減分データに対する第1のゲインと、前記第2の増減分データに対する第2のゲインとをそれぞれ調整することにより、前記第1の復元率と前記第2の復元率とを調整する請求項1に記載の画像処理装置。
前記復元率制御部は、前記第1のゲインと前記第2のゲインとに基づくトータルゲインを取得し、前記取得したトータルゲインのうちの前記第1のゲインと前記第2のゲインとの比率を、前記光量比検出部が検出した光量比に応じて調整する請求項2に記載の画像処理装置。
前記点像復元処理部は、前記光量比検出部が検出した光量比に応じて前記光学系の可視光に対する第1の点拡がり関数と前記光学系の近赤外光に対する第2の点拡がり関数とを重み付け平均した、前記光学系の可視光及び近赤外光に対する前記点拡がり関数を生成する点拡がり関数生成部と、前記生成した点拡がり関数に基づいて前記点像復元フィルタを生成する点像復元フィルタ生成部とを有し、前記生成した点像復元フィルタを用いた前記点像復元処理を行う請求項4に記載の画像処理装置。
前記点像復元処理部は、前記光量比検出部が検出する光量比に対応する複数の点拡がり関数を記憶する点拡がり関数記憶部と、前記光量比検出部が検出した光量比に対応する前記点拡がり関数を前記点拡がり関数記憶部から読み出し、前記読み出した前記点拡がり関数から前記点像復元フィルタを生成する点像復元フィルタ生成部とを有し、前記生成した点像復元フィルタを用いた前記点像復元処理を行う請求項4に記載の画像処理装置。
前記点像復元処理部は、前記光量比検出部が検出する光量比に対応する複数の点拡がり関数に基づく複数の前記点像復元フィルタを記憶する点像復元フィルタ記憶部を有し、前記光量比検出部が検出した光量比に対応する前記点像復元フィルタを前記点像復元フィルタ記憶部から読み出し、前記読み出した前記点像復元フィルタを用いた前記点像復元処理を行う請求項4に記載の画像処理装置。
前記点像復元処理部は、前記取得した画像データが近赤外光成分のみの画像データの場合、前記近赤外光成分のみの画像データに対し、前記光学系の近赤外光に対する第2の点拡がり関数に基づく第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理のみを行う請求項1から11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
前記画像取得部は、可視光波長帯域に感度をもつ可視光画像の撮像用の第1の画素と、可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもつ近赤外光画像の撮像用の第2の画素とが混在して配列された撮像素子を有し、前記光学系及び前記撮像素子の第1の画素を用いて被写体の可視光画像を示す画像データを取得し、前記近赤外光発光部から近赤外光を発光させ、かつ前記光学系及び前記撮像素子の第2の画素を用いて被写体の近赤外光画像を示す画像データを取得する撮像部である請求項13に記載の撮像装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
デイナイト機能を搭載した監視カメラにより撮像された可視光画像及び近赤外光画像に対して点像復元処理を適用する場合、可視光と近赤外光とではレンズの収差が異なるため、可視光画像の点像復元処理に使用する可視光用の点像復元フィルタと、近赤外光画像の点像復元処理に使用する近赤外用の点像復元フィルタとを切り替えることが好ましい。
【0010】
しなしながら、実際には、日中から夜間への切り替わり時(いわゆる薄暮の状態)、及び夜間から日中への切り替わり時(いわゆる黎明の状態)では、可視光と近赤外光とが混在する時間が存在するため、薄暮及び黎明の状態で撮像された近赤外光画像に対し、可視光用の点像復元フィルタ又は近赤外用の点像復元フィルタのいずれの点像復元フィルタを使用しても良好に点像復元を行うことができない。
【0011】
特許文献1には、光波面変調素子を有する被写界深度拡張光学系を使用して撮像された、可視光画像及び近赤外光画像の分散画像をそれぞれ復元する際に、それぞれ復元処理(コンボリューション演算)の演算係数を変えること、及び1つの撮像系を用いて可視光画像及び近赤外光画像を撮像する場合、可視光と近赤外光の波長により焦点距離が異なるという課題について記載されているものの、可視光と近赤外光とが混在した光源(薄暮又は黎明)下で被写体が撮像される構成や、薄暮又は黎明下で撮像された近赤外光画像を点像復元処理する場合の課題については開示されていない。
【0012】
また、特許文献2に記載の焦点位置調整装置は、可視光画像と近赤外光画像とを同時に取得可能なカメラにおいて、レンズの色収差(可視光と近赤外光)による焦点位置ずれを使用し、コントラストAF(Autofocus)を短時間で精度よく行うものであり、特許文献2には、そもそも撮像された可視光画像又は近赤外光画像を点像復元する記載がなく、薄暮又は黎明下で撮像された近赤外光画像を点像復元処理する場合の課題についても開示されていない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、薄暮又は黎明の時間帯に撮像される近赤外光画像に対する点像復元処理を良好に行うことができる画像処理装置、撮像装置、画像処理方法及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の一の態様に係る画像処理装置は、光学系を用いて可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもって撮像された近赤外光画像を含む画像データを取得する画像取得部と、取得した画像データに対し、光学系の可視光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタ及び光学系の近赤外光に対する第2の点拡がり関数に基づく第2の点像復元フィルタを用いて点像復元処理を行う点像復元処理部と、取得した画像データに対し、点像復元処理部を制御して、第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第1の復元率及び第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第2の復元率を調整する復元率制御部と、を備え、復元率制御部は、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比を検出する光量比検出部を有し、検出した光量比に応じて第1の復元率と第2の復元率とを調整する。
【0015】
本発明の一の態様によれば、画像データが可視光成分と近赤外光成分とが混在した画像データの場合に、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比(即ち、画像データに含まれる可視光成分と近赤外光成分との比)に応じて、第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第1の復元率と、第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第2の復元率とを調整するようにしたため、可視光と近赤外光とが混在する薄暮又は黎明の時間帯に撮像される画像データに対して適切な点像復元処理を行うことができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る画像処理装置において、点像復元処理部は、取得した画像データに対し、第1の点像復元フィルタ及び第2の点像復元フィルタをそれぞれ適用することにより第1の増減分データ及び第2の増減分データを生成し、生成した第1の増減分データ及び第2の増減分データを画像データに加算し、復元率制御部は、光量比検出部が検出した光量比に応じて第1の増減分データに対する第1のゲインと、第2の増減分データに対する第2のゲインとをそれぞれ調整することにより、第1の復元率と第2の復元率とを調整することが好ましい。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、復元率制御部は、第1のゲインと第2のゲインとに基づくトータルゲインを取得し、取得したトータルゲインのうちの第1のゲインと第2のゲインとの比率を、光量比検出部が検出した光量比に応じて調整することが好ましい。トータルゲインを適宜設定することにより、点像復元強度を任意に調整することができる。
【0018】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置は、光学系を用いて可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもって撮像された近赤外光画像を含む画像データを取得する画像取得部と、取得した画像データに対し、光学系の可視光及び近赤外光に対する点拡がり関数に基づく点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行う点像復元処理部と、を備え、点像復元処理部は、点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行う際に、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比を検出する光量比検出部を有し、検出した光量比に応じた点拡がり関数に基づく点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行う。
【0019】
本発明の更に他の態様によれば、画像データ(可視光成分と近赤外光成分とを含む画像データ)を、光学系の可視光及び近赤外光に対する点拡がり関数に基づく点像復元フィルタ(薄暮及び黎明の近赤外光用の点像復元フィルタ)であって、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比に応じた点拡がり関数に基づく点像復元フィルタを使用して点像復元処理を行うようにしたため、薄暮又は黎明の時間帯に撮像された画像データの点像復元処理を良好に行うことができる。
【0020】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、点像復元処理部は、光量比検出部が検出した光量比に応じて光学系の可視光に対する第1の点拡がり関数と光学系の近赤外光に対する第2の点拡がり関数とを重み付け平均した、光学系の可視光及び近赤外光に対する点拡がり関数を生成する点拡がり関数生成部と、生成した点拡がり関数に基づいて点像復元フィルタを生成する点像復元フィルタ生成部とを有し、生成した点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うことが好ましい。
【0021】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、点像復元処理部は、光量比検出部が検出する光量比に対応する複数の点拡がり関数を記憶する点拡がり関数記憶部と、光量比検出部が検出した光量比に対応する点拡がり関数を点拡がり関数記憶部から読み出し、読み出した点拡がり関数から点像復元フィルタを生成する点像復元フィルタ生成部とを有し、生成した点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うことが好ましい。
【0022】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、点像復元処理部は、光量比検出部が検出する光量比に対応する複数の点拡がり関数に基づく複数の点像復元フィルタを記憶する点像復元フィルタ記憶部を有し、光量比検出部が検出した光量比に対応する点像復元フィルタを点像復元フィルタ記憶部から読み出し、読み出した点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うことが好ましい。
【0023】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、画像像取得部が取得する画像データは、連続して撮像された動画データであり、光量比検出部は、動画データの複数のフレームの撮像期間における光量を測定し、測定した光量に基づいて第1の光量と第2の光量との光量比を検出することが好ましい。光量比の検出の信頼性を高くすることができ、連続する動画データに対して安定した点像復元処理を行うことができる。
【0024】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、画像取得部は、光学系を用いて可視光波長帯域に感度をもって撮像された可視光画像を示す画像データを更に取得し、点像復元処理部は、可視光画像を示す画像データに対し、光学系の可視光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタを用いて点像復元処理を行うことが好ましい。これにより、日中に撮像される可視光画像を示す画像データの点像復元処理を良好に行うことができる。
【0025】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、可視光画像を示す画像データは、第1の色データと、輝度データを得るための寄与率が第1の色データよりも低い2色以上の第2の色データとからなり、点像復元処理部は、可視光画像を示す画像データから生成された輝度データに対し、輝度データに対応する第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うことが好ましい。可視光画像を示す画像データに対する点像復元処理として、可視光画像を示す画像データから生成された輝度データに対し、輝度データに対応する第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うようにしたため、可視光画像を示す画像データに対して色チャンネルごとに点像復元処理を行う必要がなく、装置構成を簡略化することができる。
【0026】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、可視光画像を示す画像データは、第1の色データと、輝度データを得るための寄与率が第1の色データよりも低い2色以上の第2の色データとからなり、点像復元処理部は、第1の色データ及び2色以上の各第2の色データに対し、第1の色データ及び2色以上の各第2の色データにそれぞれ対応する第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うことが好ましい。可視光画像を示す画像データに対する点像復元処理として、可視光画像を示す画像データの色チャンネルごとに点像復元処理を行うようにしたため、倍率色収差を低減させる点像復元処理を行うことができる。
【0027】
本発明の更に他の態様に係る画像処理装置において、点像復元処理部は、取得した画像データが近赤外光成分のみの画像データの場合、近赤外光成分のみの画像データに対し、光学系の近赤外光に対する第2の点拡がり関数に基づく第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理のみを行うことがこのましい。
【0028】
これにより、夜間に撮像される近赤外光成分のみの画像データの点像復元処理を良好に行うことができる。尚、取得した画像データが近赤外光成分のみの画像データとは、例えば、光量比検出部で検出した可視光の光量比が極めて低い場合であって、可視光量が0だけに限られず、総光量の10%以下、望ましくは5%以下、更に望ましくは3%以下の場合を含む。
【0029】
本発明の更に他の態様に係る撮像装置は、上記の画像処理装置と、近赤外光画像の撮像時に近赤外光を補助光として発光する近赤外光発光部と、を備える。
【0030】
本発明の更に他の態様に係る撮像装置において、光学系は、赤外カットフィルタが撮像光路に挿入され、又は撮像光路から退避可能な光学系であり、画像取得部は、赤外カットフィルタが撮像光路に挿入された光学系を用いて被写体を撮像し、該被写体の可視光画像を示す画像データを取得し、近赤外光発光部から近赤外光を発光させ、かつ赤外カットフィルタが撮像光路から退避された光学系を用いて被写体を撮像し、該被写体の近赤外光画像を示す画像データを取得する撮像部である。
【0031】
本発明の更に他の態様に係る撮像装置において、画像取得部は、可視光波長帯域に感度をもつ可視光画像の撮像用の第1の画素と、可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもつ近赤外光画像の撮像用の第2の画素とが混在して配列された撮像素子を有し、光学系及び撮像素子の第1の画素を用いて被写体の可視光画像を示す画像データを取得し、近赤外光発光部から近赤外光を発光させ、かつ光学系及び撮像素子の第2の画素を用いて被写体の近赤外光画像を示す画像データを取得する撮像部である。この撮像素子を有する撮像装置の場合、赤外カットフィルタ及び赤外カットフィルタを出し入れする構成は不要である。
【0032】
本発明の更に他の態様に係る画像処理方法は、光学系を用いて可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもって撮像された近赤外光画像を含む画像データを取得するステップと、取得した画像データに対し、光学系の可視光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタ及び光学系の近赤外光に対する第2の点拡がり関数に基づく第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うステップと、取得した画像データに対し、点像復元処理を制御して、第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第1の復元率及び第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第2の復元率を調整するステップであって、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比を検出し、検出した光量比に応じて第1の復元率と第2の復元率とを調整するステップと、を含む。
【0033】
本発明の更に他の態様に係る画像処理方法は、光学系を用いて可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもって撮像された近赤外光画像を含む画像データを取得するステップと、取得した画像データに対し、光学系の可視光及び近赤外光に対する点拡がり関数に基づく点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うステップと、を含み、取得した画像データであって、可視光と近赤外光とが混在した光源下で撮像された画像データに対し、点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うステップは、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比を検出し、検出した光量比に応じた点拡がり関数に基づく点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行う。
【0034】
本発明の更に他の態様に係る画像処理プログラムは、光学系を用いて可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもって撮像された近赤外光画像を含む画像データを取得するステップと、取得した画像データに対し、光学系の可視光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタ及び光学系の近赤外光に対する第2の点拡がり関数に基づく第2の点像復元フィルタを用いて点像復元処理を行うステップと、取得した画像データに対し、点像復元処理を制御して、第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第1の復元率及び第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理による第2の復元率を調整するステップであって、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比を検出し、検出した光量比に応じて第1の復元率と第2の復元率とを調整するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0035】
本発明の更に他の態様に係る画像処理プログラムは、光学系を用いて可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもって撮像された近赤外光画像を含む画像データを取得するステップと、取得した画像データに対し、光学系の可視光及び近赤外光に対する点拡がり関数に基づく点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うステップと、を含み、取得した画像データであって、可視光と近赤外光とが混在した光源下で撮像された画像データに対し、点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行うステップにおいて、近赤外光画像の撮像時の可視光による第1の光量と近赤外光による第2の光量との光量比を検出し、検出した光量比に応じた点拡がり関数に基づく点像復元フィルタを用いた点像復元処理をコンピュータに実行させる。これらの画像処理プログラムを記録した非一時的有形媒体(a non-transitory computer-readable tangible medium)も本発明の態様に含まれる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、可視光成分と近赤外光成分とが混在する薄暮又は黎明の状態で撮像された近赤外光画像に対し、可視光の光量と近赤外光の光量との光量比に応じた点像復元処理を行うようにしため、薄暮又は黎明の状態で撮像された近赤外光画像に対して良好な点像復元処理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明に係る画像処理装置、撮像装置、画像処理方法及び画像処理プログラムの実施形態について説明する。以下の実施形態では、一例として、コンピュータ(PC:Personal Computer)に接続可能な監視カメラとして使用される撮像装置に本発明を適用する場合について説明する。
【0039】
図1及び
図2は、それぞれコンピュータに接続される撮像装置10の機能構成例を示すブロック図である。尚、
図1は、撮像装置10により日中の可視光画像(動画)を撮像する場合に関して示しており、
図2は、撮像装置10により薄暮及び夜間の近赤外光画像(動画)を撮像する場合に関して示している。
【0040】
図1及び
図2に示す撮像装置10は、デイナイト機能が搭載された監視カメラであり、可視光画像を撮像する可視光画像撮像モードと、近赤外光画像を撮像する近赤外光画像撮像モードとを有している。
【0041】
図1及び
図2に示すように、撮像装置10は、主として撮像部を構成するレンズユニット12、近赤外光発光部15、フィルタ装置24及び撮像素子(画像取得部)26と、カメラコントローラ28と、入出力インターフェース32とから構成されている。
【0042】
レンズユニット12は、レンズ16や絞り17等の光学系と、この光学系を制御する光学系操作部18と、を具備する。光学系操作部18は、レンズ16のフォーカス位置を調整する手動操作部、及びカメラコントローラ28から加えられる制御信号により絞り17を駆動する絞り駆動部を含む。
【0043】
近赤外光発光部15は、近赤外光発光ダイオード(近赤外LED(LED:Light Emitting Diode))を備え、
図2に示すように近赤外光画像撮像モード時にカメラコントローラ28から加えられる点灯指示により近赤外光を補助光として連続して発光(照射)する。近赤外LEDには、
図3に示すように850nmタイプの分光特性を有するものと、940nmタイプの分光特性を有するものとがあり、いずれも近赤外光発光部15の光源として使用可能である。
【0044】
フィルタ装置24は、赤外カットフィルタ20及びダミーガラス22を備えたスライド板を光軸と直交する方向に移動させ、又は赤外カットフィルタ20及びダミーガラス22を備えたターレットを回転させることにより、赤外カットフィルタ20を撮像光路に挿入又は退避させ、ダミーガラス22を撮像光路に退避又は挿入するもので、カメラコントローラ28から加えられる指令により可視光画像撮像モード時に赤外カットフィルタ20を撮像光路に挿入し(
図1)、近赤外光画像撮像モード時にダミーガラス22を撮像光路に挿入する(
図2)。
【0045】
ここで、ダミーガラス22は、赤外カットフィルタ20と同じ屈折率及び厚みを有することが好ましい。これにより、赤外カットフィルタ20とダミーガラス22との切り替えが行われても焦点位置が変動しないようにすることができる。
【0046】
撮像素子26は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型のカラーイメージセンサにより構成されている。尚、撮像素子26は、CMOS型に限らず、XYアドレス型、又はCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサでもよい。
【0047】
撮像素子26は、マトリクス状に配置された複数の画素を有し、各画素は、マイクロレンズと、赤(R)、緑(G)又は青(B)のカラーフィルタと、光電変換部(フォトダイオード等)とを含んで構成される。RGBのカラーフィルタは、所定のパターンのフィルタ配列(ベイヤー配列、X−Trans(登録商標)配列等)を有し、
図4(A)は、ベイヤー配列の基本配列パターンを示している。
【0048】
図4(B)は、RGBの各カラーフィルタの分光透過率特性を示している。
図4(B)に示すようにRGBの各カラーフィルタを有する画素(以下、R画素、G画素及びB画素という)は、850nmタイプ又は940nmタイプの分光特性を有する近赤外LEDの近赤外光(
図3参照)に対し、ほぼ同じ感度をもっている。従って、近赤外光画像撮像モードにおいて、撮像素子26のR画素、G画素及びB画素は、それぞれ近赤外光画素(IR(infrared)画素)として機能する。
【0049】
即ち、可視光画像撮像モードでの撮像時には、撮像素子26からは、可視光画像を示す画像データであって、RGBのカラーフィルタのフィルタ配列に対応するモザイクデータ(赤(R)、緑(G)、青(B)のモザイク状の色データ(RGBデータ))が出力され、近赤外光画像撮像モードでの撮像時には、撮像素子26からは、近赤外光画像を示す画像データであって、1画面分の白黒画像を示す近赤外光画像データ(IRデータ)が出力される。
【0050】
カメラコントローラ28は、詳細については後述するが、撮像装置10の各部を統括的に制御するデバイス制御部34としての機能と、撮像素子26から送られてくる画像データ(可視光画像撮像モード時に撮像された可視光画像を示す画像データ、又は近赤外光画像撮像モード時に撮像された近赤外光画像を示す画像データ)の画像処理を行う画像処理部(画像処理装置)35としての機能とを有する。
【0051】
カメラコントローラ28において、画像処理された画像データは、撮像装置10に設けられた記憶部(図示せず)に記憶され、及び/又は入出力インターフェース32を介してコンピュータ60等に送られる。カメラコントローラ28から出力される画像データのフォーマットは特に限定されず、動画の場合にはMPEG(Moving Picture Experts Group)、H.264等のフォーマットとし、静止画の場合には、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、TIFF(Tagged Image File Format)等のフォーマットとしうる。また、画像処理部35による画像処理が行われない生データ(RAWデータ)を出力しうる。更に、カメラコントローラ28は、いわゆるExif(Exchangeable Image File Format)のように、ヘッダ情報(撮像日時、機種、画素数、絞り値等)、主画像データ及びサムネイル画像データ等の複数の関連データを相互に対応づけて1つの画像ファイルとして構成し、その画像ファイルを出力してもよい。
【0052】
コンピュータ60は、撮像装置10の入出力インターフェース32及びコンピュータ入出力部62を介して撮像装置10に接続され、撮像装置10から送られてくる画像データ等のデータ類を受信する。コンピュータコントローラ64は、コンピュータ60を統括的に制御し、撮像装置10からの画像データを画像処理し、インターネット70等のネットワーク回線を介してコンピュータ入出力部62に接続されるサーバ80等との通信を制御する。コンピュータ60はディスプレイ66を有し、コンピュータコントローラ64における処理内容等が必要に応じてディスプレイ66に表示される。ユーザは、ディスプレイ66の表示を確認しながらキーボード等の入力手段(図示省略)を操作することで、コンピュータコントローラ64にデータやコマンドを入力可能である。これによりユーザは、コンピュータ60や、コンピュータ60に接続される機器類(撮像装置10、サーバ80)を制御可能である。
【0053】
サーバ80は、サーバ入出力部82及びサーバコントローラ84を有する。サーバ入出力部82は、コンピュータ60等の外部機器類との送受信接続部を構成し、インターネット70等のネットワーク回線を介してコンピュータ60のコンピュータ入出力部62に接続される。サーバコントローラ84は、コンピュータ60からの制御指示信号に応じ、コンピュータコントローラ64と協働し、コンピュータコントローラ64との間で必要に応じてデータ類の送受信を行い、データ類をコンピュータ60にダウンロードし、演算処理を行ってその演算結果をコンピュータ60に送信する。
【0054】
各コントローラ(カメラコントローラ28、コンピュータコントローラ64、サーバコントローラ84)は、制御処理に必要な回路類を有し、例えば、中央処理装置(CPU(Central Processing Unit)等)やメモリ等を具備する。また、撮像装置10、コンピュータ60及びサーバ80間の通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。また、コンピュータ60及びサーバ80を一体的に構成してもよく、また、コンピュータ60及び/又はサーバ80が省略されてもよい。更に、撮像装置10にサーバ80との通信機能を持たせ、撮像装置10とサーバ80との間で直接的にデータ類の送受信が行われるようにしてもよい。更にまた、撮像装置10からコンピュータ60又はサーバ80にRAWデータを送信し、コンピュータ60又はサーバ80の画像処理部(画像処理装置)が、カメラコントローラ28内の画像処理部35(
図5)として機能し、入力するRAWデータの画像処理を行うようにしてもよい。
【0055】
[画像処理装置]
<画像処理装置の第1の実施形態>
図6は、
図5に示したカメラコントローラ28内の画像処理部35の第1の実施形態を示すブロック図である。
【0056】
図6に示す第1の実施形態の画像処理部35は、オフセット補正処理部41、ゲイン補正処理部42、デモザイク処理部43、ガンマ補正処理部を含む第1の階調補正処理部45、第2の階調補正処理部46、輝度及び色差変換処理部47、及び点像復元処理部48から構成されている。
【0057】
オフセット補正処理部41は、撮像素子26から取得される画像処理前のRAWデータ(モザイク状のRGBデータ、又はIRデータ)を点順次で入力する。尚、RAWデータは、例えば、RGB毎に12ビット(0〜4095)のビット長を有するデータ(1画素当たり2バイトのデータ)である。また、本例のRAWデータは、連続されて撮像された動画データである。
【0058】
オフセット補正処理部41は、入力するRAWデータに含まれる暗電流成分を補正する処理部であり、撮像素子26上の遮光画素から得られるオプティカルブラックの信号値を、RAWデータから減算することによりRAWデータのオフセット補正を行う。
【0059】
オフセット補正されたRAWデータは、ゲイン補正処理部42に加えられる。ゲイン補正処理部42は、RAWデータがRGBデータの場合、ホワイトバランス(WB:White Balance)を調整するWB補正処理部として機能し、RGBの色毎に設定されたWBゲインを、それぞれRGBデータに乗算し、RGBデータのホワイトバランス補正を行う。WBゲインは、例えば、RGBデータに基づいて光源種が自動的に判定され、あるいは手動による光源種が選択されるとし、判定又は選択された光源種に適したWBゲインが設定されるが、WBゲインの設定方法は、これに限らず、他の公知の方法により設定することができる。
【0060】
また、ゲイン補正処理部42は、RAWデータがIRデータの場合、近赤外光に対するR画素、G画素及びB画素の感度差を補正する感度補正処理部として機能し、R画素、G画素及びB画素から出力される各IRデータの積算平均値を1:1:1にするゲインを、それぞれR画素、G画素及びB画素に対応するIRデータに乗算し、IRデータを補正する。尚、R画素、G画素及びB画素において、近赤外光に対する感度差がない場合には、ゲイン補正処理部42による感度差の補正は不要である。
【0061】
デモザイク処理部43は、単板式の撮像素子26のカラーフィルタ配列に対応したモザイク画像から画素毎に全ての色情報を算出するデモザイク処理(「同時化処理」ともいう)を行う部分であり、例えば、RGB3色のカラーフィルタからなる撮像素子の場合、RGBからなるモザイク画像から画素毎にRGB全ての色情報を算出する。即ち、デモザイク処理部43は、モザイクデータ(点順次のRGBデータ)から同時化されたRGB3面の画像データを生成する。尚、IRデータに対しては、デモザイク処理部43によるデモザイク処理は行われない。
【0062】
デモザイク処理されたRGBデータは、第1の階調補正処理部45に加えられる。第1の階調補正処理部45は、RGBデータに対して、非線形な階調補正を行う部分であり、例えば、入力するRGBデータを対数化処理によるガンマ補正処理を行い、ディスプレイ装置により画像が自然に再現されるようにRGBデータに対して非線形な処理を行う。
【0063】
本例では、第1の階調補正処理部45は、12ビット(0〜4095)のRGBデータに対し、ガンマ特性に対応するガンマ補正を行い、8ビット(0〜255)のRGBの色データ(1バイトのデータ)を生成する。第1の階調補正処理部45は、例えば、RGB毎のルックアップテーブルにより構成することができ、RGBデータの色毎にそれぞれ対応するガンマ補正を行うことが好ましい。尚、第1の階調補正処理部45は、入力データに対して、トーンカーブに沿った非線形な階調補正を行うものを含む。
【0064】
第1の階調補正処理部45により階調補正されたRGBデータは、輝度及び色差変換処理部47に加えられる。輝度及び色差変換処理部47は、第1の色データ(Gデータ)と、輝度データを得るための寄与率が第1の色データ(Gデータ)よりも低い2色以上の第2の色データ(Rデータ、Bデータ)を、輝度成分を示す輝度データYと、色差データCr、Cbとに変換する処理部であり、次式により算出することができる。
【0065】
[数1]
Y=0.299R+0.587G+0.114B
Cb=−0.168736R−0.331264G+0.5B
Cr=−0.5R−0.418688G−0.081312B
尚、RGBデータから輝度データY、色差データCr、Cbへの変換式は、上記[数1]式に限定されない。
【0066】
輝度及び色差変換処理部47によりRGBデータから変換された輝度データYは、点像復元処理部48に加えられる。
【0067】
一方、近赤外光画像撮像モード時にゲイン補正処理部42により感度補正されたIRデータは、第2の階調補正処理部46に加えられ、ここで第1の階調補正処理部45による階調補正処理と同様な階調補正が行われる。即ち、第2の階調補正処理部46は、IR用のルックアップテーブルにより構成することができ、入力する12ビットのIRデータに対し、ガンマ特性に対応するガンマ補正を行い、8ビットのIRデータを生成する。尚、第1の階調補正処理部45と第2の階調補正処理部46とは、それぞれ階調補正するためのルックアップテーブルが異なるが、その他は共通するため、処理回路の共通化が可能である。
【0068】
第2の階調補正処理部46により階調補正されたIRデータは、点像復元処理部48に加えられる。
【0069】
点像復元処理部48には、撮像モード(可視光画像撮像モード又は近赤外光画像撮像モード)に応じて輝度データY又はIRデータが入力され、点像復元処理部48は、入力する輝度データY又はIRデータに対して点像復元処理を行う。
【0070】
[点像復元処理部]
<点像復元処理部の第1の実施形態>
次に、
図6に示した点像復元処理部48の第1の実施形態について説明する。
【0071】
図7は、第1の実施形態の点像復元処理部48を示すブロック図である。第1の実施形態の点像復元処理部48は、主として第1の点像復元フィルタ処理部110、第2の点像復元フィルタ処理部120、乗算器112、122、及び加算器130、140から構成された点像復元処理部100と、復元率制御部150とを備えている。
【0072】
第1の点像復元フィルタ処理部110は、光学系(レンズ16等)の可視光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタを、撮像モードに応じて入力する画像データ(輝度データY又はIRデータ)に適用し、点像復元処理された画像データの増減分データ(第1の増減分データ)を生成する。
【0073】
乗算器112は、第1の点像復元フィルタ処理部110により生成された第1の増減分データに対して第1のゲインαの乗算を行い、第1の増減分データのゲインコントロール(点像復元処理による第1の復元率の調整)を行う。乗算器112によりゲインコントロールされた第1の増減分データは、加算器130に出力される。
【0074】
一方、第2の点像復元フィルタ処理部120は、光学系(レンズ16等)の近赤外光に対する第2の点拡がり関数に基づく第2の点像復元フィルタを、撮像モードに応じて入力するIRデータに適用し、点像復元処理されたIRデータの増減分データ(第2の増減分データ)を生成する。
【0075】
乗算器122は、第2の点像復元フィルタ処理部120により生成された第2の増減分データに対して第2のゲインβの乗算を行い、第2の増減分データのゲインコントロール(点像復元処理による第2の復元率の調整)を行う。乗算器122によりゲインコントロールされた第2の増減分データは、加算器130に出力される。
【0076】
加算器130は、乗算器112によりゲインコントロールされた第1の増減分データと、乗算器122によりゲインコントロールされた第2の増減分データとを加算し、加算した増減分データを加算器140に出力する。
【0077】
加算器140の他の入力には、撮像モードに応じて輝度データY又はIRデータが加えられており、加算器140は、入力する輝度データY又はIRデータと、加算器130から加えられる増減分データとを加算する。これにより、加算器140からは点像復元処理された輝度データY又はIRデータが出力される。
【0078】
次に、乗算器112及び122にそれぞれ加えられる第1のゲインα及び第2のゲインβについて説明する。
【0079】
近赤外光画像撮像モードの撮像モード時であって、日中から夜間への切り替わり期間である薄暮の状態は、近赤外光発光部15から発光される近赤外光の他に、被写体の周囲の光(太陽光)が被写体に照射される。撮像素子26は、赤外カットフィルタ20が撮像光路に挿入される可視光画像撮像モード時には、可視光波長帯域に感度をもって撮像を行うが、近赤外光画像撮像モードに切り替えられ、赤外カットフィルタ20が撮像光路から退避すると、可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもって撮像を行う。従って、薄暮の状態で撮像されたIRデータには、近赤外光成分の他に可視光成分が含まれ、薄暮の状態で撮像されたIRデータに対しては、可視光に対する点像復元処理と近赤外光に対する点像復元処理との中間的な点像復元処理を行うことにより、良好な点像復元処理を行うことができる。
【0080】
復元率制御部150は、主に薄暮の状態で撮像されたIRデータに対し、薄暮の状態に応じて第1のゲインαと第2のゲインβとの重みを調整し、それぞれ乗算器112及び122に出力するものである。
【0081】
図8は、日中から夜間の時間経過に伴う被写体の明るさ(光量)の変化を示すグラフである。
【0082】
図8に示すように被写体の光量(太陽光の光量)は、日中から夜間の時間経過に伴って徐々に減少し、夜間はゼロになる。
【0083】
被写体の光量が閾値Th(日中と薄暮との境界を判別する光量)未満になると、撮像モードは、可視光画像撮像モードから近赤外光画像撮像モードに切り替えられ、近赤外光画像の撮像が行われる。即ち、日中は可視光画像撮像モードに切り替えられ、薄暮及び夜間は近赤外光画像撮像モードに切り替えられる。
【0084】
カメラコントローラ28は、絞り17の制御及びシャッタースピード(撮像素子26での電荷蓄積時間)の制御による自動露出制御を行う際に、被写体の明るさ(EV値(exposure value))を検出しているため、検出したEV値を被写体の光量(明るさ)として使用することができる。そして、カメラコントローラ28は、検出したEV値が閾値Th未満になると、可視光画像撮像モードから近赤外光画像撮像モードに切り替える。
【0085】
近赤外光画像撮像モードでは、
図2に示したように赤外カットフィルタ20に替えてダミーガラス22が撮像光路に挿入され、かつ近赤外光発光部15が点灯され、近赤外光発光部15から近赤外光が発光される。
【0086】
従って、
図8に示すように被写体の光量は、近赤外光画像撮像モードに切り替わると、近赤外光発光部15から被写体に照射される近赤外光の光量分だけ光量が増加する。
【0087】
図8において、最初に閾値Th未満になったときの光量をA、可視光画像撮像モードから近赤外光画像撮像モードに切り替わった時点の光量をB、薄暮の状態の任意時点の光量をCとすると、光量Bから光量Aを減算した光量(光量B−光量A)は、近赤外光発光部15から被写体に照射される近赤外光に対応する光量であり、一定値である。従って、夜間の光量は、近赤外光のみによる一定の光量になる。
【0088】
また、薄暮の状態の可視光の光量は、光量Cから近赤外光のみによる一定の光量(光量B−光量A)を減算した光量(光量C−(光量B−光量A))である。
【0089】
図7に戻って、復元率制御部150は、光量比検出部160を有している。また、復元率制御部150には、カメラコントローラ28から可視光画像撮像モードか近赤外光画像撮像モードかを示す撮像モード情報と、図示しない被写体の光量データ(例えば、EV値)とが加えられており、光量比検出部160は、撮像モードが近赤外光画像撮像モードのときに動作可能となり、入力する光量データに基づいて、薄暮の状態の可視光の光量(第1の光量)と近赤外光の光量(第2の光量)との光量比を検出する。
【0090】
即ち、光量比検出部160は、入力する光量データが、最初に閾値Th未満になったときの光量データ(光量A)と、赤外光画像撮像モードに切り替わった時点の光量データ(光量B)とを記憶し、その後、リアルタイムに入力する光量データ(光量C)に基づいて、薄暮の状態の可視光の光量(光量C−(光量B−光量A))と近赤外光の光量(光量B−光量A)との光量比を検出する。
【0091】
復元率制御部150は、光量比検出部160により検出された光量比に基づいて第1のゲインαと第2のゲインβとの比を調整する。具体的には、可視光の光量と近赤外光の光量との光量比がx/yの場合、第1のゲインαと第2のゲインβとの比をα/βにする。また、第1のゲインαと第2のゲインβとの和(α+β)は1にする。即ち、β=1−αにする。
【0092】
このように復元率制御部150は、薄暮の状態で撮像されたIRデータに対し、薄暮の状態(可視光の光量と近赤外光の光量との光量比)に応じて第1のゲインαと第2のゲインβとの重みを調整し、それぞれ乗算器112及び122に出力するため、可視光に対する点像復元処理と近赤外光に対する点像復元処理との中間的な点像復元処理を行うことができ、薄暮のIRデータに対して良好な点像復元処理を行うことができる。
【0093】
尚、日中の可視光画像撮像モードの場合には、第1のゲインα及び第2のゲインβは、それぞれα=1、β=0にされ、輝度データYに対して光学系(レンズ16等)の可視光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理(第1の点像復元処理)がされる。同様に夜間の近赤外光画像撮像モードの場合には、第1のゲインα及び第2のゲインβは、それぞれα=0、β=1にされ、IRデータに対して光学系(レンズ16等)の近赤外光に対する第2の点拡がり関数に基づく第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理がされる。更に、日中の可視光画像撮像モードの場合には、第2のゲインβをゼロにする代わりに第2の点像復元フィルタ処理部120をオフにし、一方、夜間の近赤外光画像撮像モードの場合には、第1のゲインαをゼロにする代わりに第1の点像復元フィルタ処理部110をオフにしてもよい。
【0094】
[画像処理方法の第1の実施形態]
図9は本発明に係る画像処理方法の第1の実施形態を示すフローチャートであり、
図7に示した第1の実施形態の点像復元処理部48による点像復元処理動作に関して示している。
【0095】
図9において、カメラコントローラ28は、被写体の光量(例えば、EV値)を検出し、検出した光量が閾値Th以上か否かを判別する(ステップS10)。検出した光量が閾値Th以上の場合(「Yes」の場合)には、ステップS12に遷移させ、日中の撮像モードである可視光画像撮像モードに切り替え、検出した光量が閾値Th未満の場合(「No」の場合)には、ステップS18に遷移させ、薄暮及び夜間の撮像モードである近赤外光画像撮像モードに切り替える。
【0096】
ステップS12では、赤外カットフィルタ20を撮像光路に挿入し、ステップS14により可視光波長帯域に感度をもった可視光のみによる撮像(可視光画像の撮像)を行う。撮像された可視光画像の輝度データYは、第1の点像復元フィルタ処理部110、乗算器112、及び加算器130、140に基づいて第1の点像復元フィルタのみによる点像復元処理が行われる(ステップS16)。
【0097】
一方、ステップS10において、検出した光量が閾値Th未満の場合(「No」の場合)には、最初に閾値Th未満になったとき光量を、光量Aとしてカメラコントローラ28のメモリに一時記憶する。(ステップS18)。尚、光量Aと閾値Thとはほぼ同じ値であるため、閾値Thを光量Aとして記憶してもよい。
【0098】
続いて、カメラコントローラ28は、赤外カットフィルタ20を退避させ、ダミーガラス22を撮像光路に挿入し、かつ近赤外光発光部15を点灯させ、近赤外光を被写体に照射する(ステップS20)。ステップS20により可視光画像撮像モードから近赤外光画像撮像モードに切り替わると、その切り替わった直後に検出した被写体の光量を、光量Bとしてカメラコントローラ28のメモリに一時記憶する(ステップS22)。
【0099】
続いて、リアルタイムに光量を測定し、測定した光量を光量Cとし(ステップS24)、薄暮の状態(可視光と近赤外光とが混在した光源下)で近赤外光画像の撮像を行う(ステップS26)。次に、光量比検出部160は、ステップS18で記憶した光量A、ステップS22で記憶した光量B、及びステップS24で測定した光量Cに基づいて可視光と近赤外光との光量比を検出する(ステップS28)。
【0100】
ステップS28により検出された光量比に応じて第1の点像復元フィルタによる点像復元処理の第1の復元率と、第2の点像復元フィルタによる点像復元処理の第2の復元率とを調整する(ステップS30)。即ち、復元率制御部150は、ステップS22により検出された光量比に基づいて第1のゲインαと第2のゲインβとの比率を調整する。
【0101】
ステップS30により調整された第1の復元率及び第2の復元率による点像復元処理を行う(ステップS32)。即ち、復元率制御部150により調整された第1のゲインα及び第2のゲインβが、それぞれ乗算器112及び122に加えられ、ここで、第1の点像復元フィルタ処理部110から出力される第1の増減分データと第1のゲインαとが乗算され、同様に第2の点像復元フィルタ処理部120から出力される第2の増減分データと第2のゲインβとが乗算され、各乗算結果を加算器130、140によりIRデータに加算することにより点像復元処理が行われる。
【0102】
次に、薄暮の状態の可視光の光量を、光量C−(光量B−光量A)により算出し、算出した光量がゼロよりも大きいか否かを判別する(ステップS34)。算出した光量がゼロよりも大きい場合(「Yes」の場合)には、可視光が含まれていると判断し、ステップS24に遷移させ、ステップS24からステップS34の処理(薄暮のIRデータの処理)を繰り返し行う。
【0103】
一方、ステップS34において、算出した光量がゼロ以下の場合(「No」の場合)には、可視光が含まれていないと判断し、ステップS36に遷移させ、夜間に撮像されたIRデータの点像復元処理を行う。可視光が含まれていないため、近赤外光画像撮像モードによる近赤外光画像の撮像は、近赤外光のみを光源とする撮像となる(ステップS36)。そして、近赤外光のみを光源として撮像されたIRデータに対し、第2の点像復元フィルタのみによる点像復元処理を行う(ステップS38)。即ち、第2の点像復元フィルタ処理部120、及び乗算器122(第2のゲインβ=1)、及び加算器130、140による点像復元処理が行われ、第1の点像復元フィルタ処理部110等による点像復元処理は行われない。
【0104】
続いて、夜間の撮像を終了させるか否かを判別し(ステップS40)、撮像を終了させない場合(「No」の場合)には、ステップS36に遷移させ、ステップS36からステップS40までの処理を繰り返し、一方、撮像を終了させる場合(「Yes」の場合)には、本撮像動作を終了させる。
【0105】
尚、夜間の撮像を終了させずに、夜間から日中までの黎明の状態では、薄暮と同様に可視光と赤外光とが混在するため、薄暮の状態と同様に可視光の光量と近赤外光の光量との光量比に応じて第1のゲインα及び第2のゲインβの重みを調整し、第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理と、第2の点像復元フィルタを用いた点像復元処理との重み付け平均をとった点像復元処理を行う。また、黎明の状態の判断は、
図8に示すように夜間の光量は、近赤外光のみの一定の光量であるが、この一定の光量が増加した場合に黎明の状態と判断することができ、その増加分が可視光による光量と判断することができる。
【0106】
また、ステップS34では、光量C−(光量B−光量A)により算出した光量(可視光量)が0になる場合、可視光が含まれていない(即ち、近赤外光成分のみの画像)と判断しているが、これに限らず、可視光量が極めて少ない場合も近赤外光成分のみの画像と判断してもよい。即ち、近赤外光成分のみの画像とは、可視光量が0の画像のみに限らず、光量比検出部160で検出した可視光の光量比が極めて低い場合であって、総光量の10%以下、望ましくは5%以下、更に望ましくは3%以下の場合を含む。可視光の光量比が極めて低い画像の場合、第2の点像復元フィルタのみによる点像復元処理により良好に点像復元をすることができるからである。
【0107】
図10は、
図9に示した画像処理方法の第1の実施形態の変形例を示すフローチャートである。尚、
図10において、
図9に示した処理と共通の処理を行うステップには同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0108】
図10に示す画像処理方法は、
図9に示したステップS18、S22及びS24の処理の代わりに、ステップS118、S122及びS124の処理を行う点で相違する。
【0109】
図10に示すステップS118は、被写体の光量が閾値Th未満になった時の光量Aとして、一定時間(動画データの複数のフレームの撮像期間)の光量(例えば、平均光量、中央値等の代表光量)を測定し、測定した光量をメモリに一時記憶させる。
【0110】
同様にステップS122は、近赤外光画像撮像モードに切り替わった直後に被写体の光量を一定時間検出し、一定時間の光量を、近赤外光画像撮像モードに切り替わった直後の光量Bとしてメモリに記憶させる。
【0111】
ステップS124では、リアルタイムに光量を測定するが、現時点の一定時間前から現時点までに測定した光量を、現時点の光量Cとする。
【0112】
上記のように可視光の光量と近赤外光の光量との光量比を検出するときに使用する各光量は、一定時間の光量として検出し、これにより光量比を精度よく、かつ安定して検出できるようにしている。
【0113】
図7に示した復元率制御部150は、第1のゲインαと第2のゲインβとの和(α+β)が1となるように第1のゲインαと第2のゲインβとを決定するが、これに限らず、任意の値γ(以下、「トータルゲイン」という)になるように決定するようにしてもよい。
【0114】
図11は、トータルゲインγ、第1のゲインα、及び第2のゲインβの関係を示す概念図である。
【0115】
トータルゲインγが設定され、かつ光量比検出部160により光量比に検出(即ち、第1のゲインαと第2のゲインβとの比が決定)されると、第1のゲインαと第2のゲインβとは一意に求めることができる。
【0116】
ここで、トータルゲインγは、点像復元処理による目標の復元強度であり、撮像設定条件(光学特性)に応じて変動しうるが、撮像設定条件が決まれば一定の値とすることができる。ここでいう撮像設定条件には、例えばレンズ、絞り、ズーム、被写体距離、感度、撮像モード等の各種の撮像条件及び設定条件が含まれうる。また、トータルゲインγは、撮像装置10の使用者が任意の固定値に設定することも可能である。
【0117】
トータルゲインγを大きくすると、点像復元処理による復元強度が強くなるが、アーティファクトが発生する過補正となりやすく、一方、トータルゲインγを小さくすると、過補正となる弊害を回避することができるものの、点像復元処理による復元強度が弱くなり、十分な点像復元が行われず、ぼけが残るという問題がある。従って、点像復元処理による復元強度を強く、又は弱くすることによる利害得失を勘案して、トータルゲインγを決定することが好ましい。
【0118】
<点像復元処理部の第2の実施形態>
次に、
図6に示した点像復元処理部48の第2の実施形態について説明する。
【0119】
図12は、第2の実施形態の点像復元処理部48を示すブロック図である。第2の実施形態の点像復元処理部48は、主として点像復元フィルタ処理部210、第1の点拡がり関数記憶部220、第2の点拡がり関数記憶部230、第3の点拡がり関数生成部240、点像復元フィルタ生成部250、及び光量比検出部160から構成されている。
【0120】
点像復元フィルタ処理部210は、撮像モードに応じて輝度データY又はIRデータを入力し、入力した画像データ(輝度データY又はIRデータ)に対して、点像復元フィルタ生成部250により生成された第1の点像復元フィルタF
1、第2の点像復元フィルタF
2、及び第3の点像復元フィルタF
3のうちのいずれかの点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行い、点像復元処理された画像データを算出する。即ち、点像復元フィルタ処理部210は、入力する画像データのうちの処理対象画素を中心とする所定のカーネルサイズ(点像復元フィルタと同じカーネルサイズであって、例えば、7×7、9×9等)の画像データと、第1の点像復元フィルタF
1、第2の点像復元フィルタF
2、及び第3の点像復元フィルタF
3のうちのいずれかの点像復元フィルタとの逆畳み込み演算(デコンボリューション演算)を行い、点像復元処理した画像データを算出する。
【0121】
第1の点拡がり関数記憶部220は、光学系(レンズ16等)の可視光に対する第1の点拡がり関数(第1のPSF)を記憶する記憶部である。
【0122】
第2の点拡がり関数記憶部230は、光学系(レンズ16等)の近赤外光に対する第2の点拡がり関数(第2のPSF)を記憶する記憶部である。
【0123】
第1のPSF及び第2のPSFは、それぞれ可視光のみの光源及び近赤外光のみの光源による照明条件下で点像を撮像し、これらの撮像時に得られる点像の画像データに基づいて測定されるもので、予め製品出荷前に計測され、第1の点拡がり関数記憶部220及び第2の点拡がり関数記憶部230に記憶されている。
【0124】
第3の点拡がり関数生成部240は、薄暮用の第3のPSFを生成する部分であり、第1の点拡がり関数記憶部220から読み出した第1のPSFと、第2の点拡がり関数記憶部230から読み出した第2のPSFと、光量比検出部160から加えられる光量比とに基づいて、光量比に応じて第1のPSFと第2のPSFとを重み付け平均した第3のPSFを算出する。尚、光量比検出部160は、
図7に示した光量比検出部160と同じ機能を有するもので、薄暮の状態の可視光の光量と近赤外光の光量との光量比を検出する。
【0125】
ここで、薄暮の状態の可視光の光量と近赤外光の光量との光量比を、p:q、p+q=1とすると、第3の点拡がり関数生成部240は、次式により薄暮用の第3のPSFを算出する。
【0126】
[数2]
第3のPSF=第1のPSF×p+第2のPSF×q
点像復元フィルタ生成部250は、第1の点拡がり関数記憶部220、第2の点拡がり関数記憶部230、又は第3の点拡がり関数生成部240から第1のPSF、第2のPSF、又は第3のPSFを取得し、取得したPSFに基づいて第1の点像復元フィルタF
1、第2の点像復元フィルタF
2、及び第3の点像復元フィルタF
3のうちのいずれかの点像復元フィルタを生成する。
【0127】
一般に、PSFによるボケ画像の復元には、コンボリュージョン型のウィナー(Wiener)フィルタを利用することができる。PSF(x,y)をフーリエ変換した光学伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)と信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)の情報を参照して、以下の式によって点像復元フィルタの周波数特性d(ω
x,ω
y)を算出することができる。
【0129】
ここでH(ω
x,ω
y)はOTFを表し、H
*(ω
x,ω
y)はその複素共役を表す。また、SNR(ω
x,ω
y)は信号対雑音比を表す。
【0130】
点像復元フィルタのフィルタ係数の設計は、フィルタの周波数特性が、所望のWiener周波数特性に最も近くなるように係数値を選択する最適化問題であり、任意の公知の手法によってフィルタ係数が適宜算出される。
【0131】
上記[数3]式のOTFの代わりに、OTFの振幅成分を示す変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)を使用し、点像復元フィルタを算出するようにしてもよい。
【0132】
点像復元フィルタ生成部250には、カメラコントローラ28から撮像モード情報が加えられており、点像復元フィルタ生成部250は、撮像モード情報が可視光画像撮像モードを示す場合には、第1の点拡がり関数記憶部220から第1のPSFを読み出し、読み出した第1のPSFに基づいて第1の点像復元フィルタF
1を生成する。
【0133】
同様に点像復元フィルタ生成部250は、撮像モード情報が近赤外光画像撮像モードを示す場合には、更に夜間か薄暮(黎明)かを判別し、夜間の場合には第2の点拡がり関数記憶部230から第2のPSFを読み出し、読み出した第2のPSFに基づいて第2の点像復元フィルタF
2を生成し、薄暮(黎明)の場合には第3の点拡がり関数生成部240により生成された第3のPSFを取得し、取得した第3のPSFに基づいて第3の点像復元フィルタF
3を生成する。尚、夜間か薄暮(黎明)かの判別は、光量比検出部160の検出出力、又はカメラコントローラ28により測定される被写体の光量に基づいて行うことができる。
【0134】
可視光画像撮像モードの場合、点像復元フィルタ処理部210には、輝度データYが入力するとともに、点像復元フィルタ生成部250からは第1の点像復元フィルタF
1が入力し、点像復元フィルタ処理部210は、輝度データYと第1の点像復元フィルタF
1とのデコンボリューション演算を行い、点像復元処理した輝度データYを算出する。
【0135】
近赤外光画像撮像モードの場合、点像復元フィルタ処理部210には、IRデータが入力するとともに、点像復元フィルタ生成部250からは夜間か薄暮(黎明)かに応じて第2の点像復元フィルタF
2、又は第3の点像復元フィルタF
3が入力し、点像復元フィルタ処理部210は、IRデータと第2の点像復元フィルタF
2とのデコンボリューション演算、又はIRデータと第3の点像復元フィルタF
3とのデコンボリューション演算を行い、点像復元処理したIRデータを算出する。
【0136】
尚、PSFは、絞り値(F値)、ズーム倍率、被写体距離、画角(像高)等の撮像条件により変化するため、第1の点拡がり関数記憶部220及び第2の点拡がり関数記憶部230は、撮像条件に応じた複数の第1のPSF及び第2のPSFを記憶しておくことが好ましく、第3の点拡がり関数生成部240及び点像復元フィルタ生成部250は、それぞれ第1の点拡がり関数記憶部220及び第2の点拡がり関数記憶部230から撮像条件に応じた第1のPSF及び第2のPSFを読み出すことが好ましい。
【0137】
[画像処理方法の第2の実施形態]
図13は本発明に係る画像処理方法の第2の実施形態を示すフローチャートであり、
図12に示した第2の実施形態の点像復元処理部48による点像復元処理動作に関して示している。尚、
図13において、
図9に示した処理と共通の処理を行うステップには同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0138】
図13に示す画像処理方法は、
図9に示したステップS30、S32の処理の代わりに、ステップS132の処理を行う点で相違する。
【0139】
図13に示すステップS132は、薄暮のIRデータに対して、光量比検出部160により検出される可視光の光量と近赤外光の光量との光量比に基づいて、可視光用の第1のPSFと近赤外用の第2のPSFとを重み付け平均して薄暮用の第3のPSFを生成し、生成した第3のPSFに基づいて第3の点像復元フィルタを生成する。そして、薄暮時に取得したIRデータに対し、生成した第3の点像復元フィルタを使用して点像復元処理を行う。
【0140】
<点像復元処理部の第3の実施形態>
次に、
図6に示した点像復元処理部48の第3の実施形態について説明する。
【0141】
図14は、第3の実施形態の点像復元処理部48を示すブロック図である。尚、
図12に示した第2の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0142】
図14に示す第3の実施形態の点像復元処理部48は、主として
図12に示した第3の点拡がり関数生成部240の代わりに、第3の点拡がり関数記憶部260を有する点で相違する。
【0143】
即ち、第3の点拡がり関数記憶部260には、
図12に示した第3の点拡がり関数生成部240により生成される第3のPSFと同様にして生成された第3のPSFが、予め可視光の光量と近赤外光の光量との光量比に関連付けて記憶されている。
【0144】
点像復元フィルタ生成部250は、第1の点拡がり関数記憶部220、第2の点拡がり関数記憶部230、又は第3の点拡がり関数記憶部260から第1のPSF、第2のPSF、又は第3のPSFを取得し、取得したPSFに基づいて第1の点像復元フィルタF
1、第2の点像復元フィルタF
2、及び第3の点像復元フィルタF
3のうちのいずれかの点像復元フィルタを生成する。
【0145】
尚、点像復元フィルタ生成部250には、カメラコントローラ28から撮像モード情報が加えられ、光量比検出部160から光量比を示す検出出力が加えられており、点像復元フィルタ生成部250は、撮像モード情報が可視光画像撮像モードを示す場合には、第1の点拡がり関数記憶部220から第1のPSFを読み出し、読み出した第1のPSFに基づいて第1の点像復元フィルタF
1を生成する。
【0146】
同様に点像復元フィルタ生成部250は、撮像モード情報が近赤外光画像撮像モードを示す場合には、更に夜間か薄暮(黎明)かを光量比検出部160から加えられる検出出力により判別し、夜間の場合には第2の点拡がり関数記憶部230から第2のPSFを読み出し、読み出した第
2のPSFに基づいて第2の点像復元フィルタF
2を生成し、薄暮(黎明)の場合には、第3の点拡がり関数記憶部260から光量比に応じた第3のPSFを読み出し、読み出した第3のPSFに基づいて第3の点像復元フィルタF
3を生成する。
【0147】
<点像復元処理部の第4の実施形態>
次に、
図6に示した点像復元処理部48の第4の実施形態について説明する。
【0148】
図15は、第4の実施形態の点像復元処理部48を示すブロック図である。尚、
図14に示した第3の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0149】
図15に示す第4の実施形態の点像復元処理部48は、主として
図14に示した第1の点拡がり関数記憶部220、第2の点拡がり関数記憶部230及び第3の点拡がり関数記憶部260の代わりに、第1の点像復元フィルタ記憶部270、第2の点像復元フィルタ記憶部272、及び第3の点像復元フィルタ記憶部274を有し、また、点像復元フィルタ生成部250の代わりに、点像復元フィルタ選択部280を有する点で相違する。
【0150】
即ち、第4の実施形態は、予め第1のPSF、第2のPSF及び第3のPSFに基づいて第1の点像復元フィルタF
1、第2の点像復元フィルタF
2及び第3の点像復元フィルタF
3を生成し、生成した第1の点像復元フィルタF
1、第2の点像復元フィルタF
2及び第3の点像復元フィルタF
3を、それぞれ第1の点像復元フィルタ記憶部270、第2の点像復元フィルタ記憶部272、及び第3の点像復元フィルタ記憶部274に記憶させている。
【0151】
点像復元フィルタ選択部280には、カメラコントローラ28から撮像モード情報が加えられ、光量比検出部160から光量比を示す検出出力が加えられており、点像復元フィルタ選択部280は、撮像モード情報が可視光画像撮像モードを示す場合には、第1の点像復元フィルタ記憶部270に記憶されている第1の点像復元フィルタF
1を選択し、選択した第1の点像復元フィルタF
1を点像復元フィルタ処理部210に出力する。
【0152】
同様に点像復元フィルタ選択部280は、撮像モード情報が近赤外光画像撮像モードを示す場合には、更に夜間か薄暮(黎明)かを判別し、夜間の場合には第2の点像復元フィルタ記憶部272に記憶されている第2の点像復元フィルタF
2を選択し、選択した第2の点像復元フィルタF
2を点像復元フィルタ処理部210に出力し、薄暮(黎明)の場合には第3の点像復元フィルタ記憶部274に記憶されている第3の点像復元フィルタF
3であって、光量比検出部160により検出された光量比に応じた第3の点像復元フィルタF
3を選択し、選択した第3の点像復元フィルタF
3を点像復元フィルタ処理部210に出力する。
【0153】
<画像処理装置の第2の実施形態>
図16は、
図5に示したカメラコントローラ28内の画像処理部35の第2の実施形態を示すブロック図である。尚、
図6に示した第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0154】
図16に示す第2の実施形態の画像処理部35は、第1の実施形態の画像処理部35が可視光画像の輝度データYに対して点像復元処理を行うのに対し、可視光画像を示す第1の色データ(Gデータ)と、輝度データを得るための寄与率が第1の色データ(Gデータ)よりも低い2色以上の第2の色データ(Rデータ、Bデータ)に対し、各RGBデータに対応する第1の点像復元フィルタを用いた点像復元処理を行う点で相違する。
【0155】
即ち、
図16に示す点像復元処理部148には、可視光画像撮像モード時には、第1の階調補正処理部45から階調補正されたRGB3面のRGBデータが加えられ、近赤外光画像撮像モード時は、第2の階調補正処理部46から階調補正されたIRデータが加えられる。
【0156】
点像復元処理部148は、光学系(レンズ16等)の可視光(R光)に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタF
1R、光学系のG光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタF
1G、及び光学系のB光に対する第1の点拡がり関数に基づく第1の点像復元フィルタF
1Bを用いて、各RGBデータに対して点像復元処理を行う。
【0157】
また、点像復元処理部148は、IRデータに対しては、
図6に示した第1の実施形態の点像復元処理部48がIRデータに対して行う点像復元処理と同様の点像復元処理を行う。
【0158】
第2の実施形態の点像復元処理部148によれば、可視光画像を示すRGBデータに対し、色毎に対応する第1の点像復元フィルタF
1R、F
1G及びF
1Bを用いて点像復元処理を行うため、より精度の高い点像復元処理を行うことができ、倍率色収差の補正も可能である。
【0159】
<撮像素子の他の実施形態>
図17(A)は、本発明に係る撮像装置に適用可能な撮像素子の他の実施形態を示す図であり、特に撮像素子に設けられたRGBのカラーフィルタ及び近赤外光透過フィルタの基本配列パターンに関して示している。また、
図17(B)は、RGBの各カラーフィルタ及び近赤外光透過フィルタの分光透過率特性を示している。
【0160】
図17(A)に示す基本配列パターンを有する撮像素子のRGBの各カラーフィルタを有するR画素、G画素及びB画素は、近赤外LEDの近赤外光(
図3参照)に対し、ほぼ同じ感度をもっており、近赤外光透過フィルタを有する画素(以下、「IR画素」という)は、近赤外
光波長
帯域のみに感度を有している(
図17(B))。
【0161】
可視光画像撮像モードにおいて、赤外カットフィルタ20が挿入される場合、R画素、G画素及びB画素には、それぞれR、G、Bの各波長帯域の光のみが入射し、IR画素には、殆ど光が入射しない。従って、R画素、G画素及びB画素からRGBデータを取得することができる。
【0162】
近赤外光画像撮像モードにおいて、赤外カットフィルタ20が退避する場合、R画素、G画素及びB画素には、それぞれR、G、Bの各波長帯域及び近赤外光波長帯域の光が入射し、IR画素には、近赤外光波長帯域の光のみが入射する。この場合、R画素、G画素及びB画素は、それぞれIR画素として機能することができる。
【0163】
従って、近赤外光画像撮像モードにおいて、IR画素として機能するR画素、G画素及びB画素からIRデータ(第1のIRデータ)を取得することができ、IR画素からIRデータ(第2のIRデータ)を取得することができる。
【0164】
第1のIRデータは、第2のIRデータよりも解像度が高いが、薄暮の状態では可視光成分が混在する。第2のIRデータは、第1のIRデータよりも解像度が低いが、薄暮の状態でも可視光成分は混在しない。尚、第1のIRデータは、IR画素の位置のIRデータが欠落するため、IR画素の位置のIRデータを補間演算により求める必要がある。
【0165】
また、薄暮の状態で撮像された第1のIRデータには、可視光成分と近赤外光成分とが含まれるため、前述したように第1の点像復元フィルタによる点像復元処理と第2の点像復元フィルタによる点像復元処理とを、可視光の光量と近赤外光の光量の光量比に応じて重み付け平均した点像復元処理を行うことが好ましい。このとき、可視光の光量と近赤外光の光量の光量比を算出する際に、第1のIRデータを近赤外光の光量の算出に使用することができる。
【0166】
また、更に他の実施形態の撮像素子は、
図17(A)に示したR画素、G画素及びB画素として、それぞれR、G、Bの各波長帯域のみに感度を有する可視光画像の撮像用の第1の画素(RGBのカラーフィルタ+赤外カットフィルタを有する画素)とし、近赤外光透過フィルタを有するIR画素の代わりに、可視光波長帯域及び近赤外光波長帯域に感度をもった近赤外光画像の撮像用の第2の画素(IR画素)を使用したものが考えられる。
【0167】
この場合、赤外カットフィルタを出し入れする機構は不要であり、可視光画像と近赤外光画像とを同時に撮像することもできる。
【0168】
<EDoFシステムへの適用例>
上述の実施形態における点像復元処理は、特定の撮像条件(例えば、絞り値、F値、焦点距離、像高等)に応じた点拡がり(点像ボケ)を、本来の被写体像に復元する画像処理であるが、本発明を適用可能な画像処理は、上述の実施形態における点像復元処理に限定されるものではない。例えば、拡大された被写界(焦点)深度(EDoF:Extended Depth of Field(Focus))を有する光学系(レンズ等)によって撮像取得された画像データに対する点像復元処理に対しても、本発明に係る点像復元処理を適用することが可能である。
【0169】
EDoF光学系によって被写界深度(焦点深度)が拡大された状態で撮像取得されるボケ画像の画像データに対して点像復元処理を行うことで、広範囲でピントが合った状態の高解像度の画像データに復元することができる。この場合、EDoF光学系の伝達関数(PSF、OTF、MTF、PTF(Phase Transfer Function)等)に基づく点像復元フィルタであって、拡大された被写界深度(焦点深度)の範囲内において良好な画像復元が可能となるように設定されたフィルタ係数を有する点像復元フィルタを用いた復元処理が行われる。
【0170】
図18は、EDoF光学系を備える撮像モジュール300の一形態を示すブロック図である。本例の撮像モジュール(撮像装置10に搭載されるカメラヘッド)300は、EDoF光学系(レンズユニット)310と、撮像素子320と、AD変換部330と、を含む。
【0171】
図19は、EDoF光学系310の一例を示す図である。本例のEDoF光学系310は、単焦点の固定されたレンズ312と、瞳位置に配置される光学フィルタ314とを有する。光学フィルタ314は、位相を変調させるもので、拡大された被写界深度(焦点深度)(EDoF)が得られるようにEDoF光学系310(レンズ312)をEDoF化する。このように、レンズ312及び光学フィルタ314は、位相を変調して被写界深度を拡大させるレンズ部を構成する。
【0172】
尚、EDoF光学系310は必要に応じて他の構成要素を含み、例えば光学フィルタ314の近傍には絞り(図示省略)が配設されている。また、光学フィルタ314は、1枚でもよいし、複数枚を組合せたものでもよい。また、光学フィルタ314は、光学的位相変調手段の一例に過ぎず、EDoF光学系310(レンズ312)のEDoF化は、他の手段によって実現されてもよい。例えば、光学フィルタ314を設ける代わりに、本例の光学フィルタ314と同等の機能を有するようにレンズ設計されたレンズ312によってEDoF光学系310のEDoF化を実現してもよい。
【0173】
即ち、撮像素子320の受光面への結像の波面を変化させる各種の手段によって、EDoF光学系310のEDoF化を実現することが可能である。例えば、「厚みが変化する光学素子」、「屈折率が変化する光学素子(屈折率分布型波面変調レンズ等)」、「レンズ表面へのコーディング等により厚みや屈折率が変化する光学素子(波面変調ハイブリッドレンズ、レンズ面上に位相面として形成される光学素子、等)」、「光の位相分布を変調可能な液晶素子(液晶空間位相変調素子等)」を、EDoF光学系310のEDoF化手段として採用しうる。このように、光波面変調素子(光学フィルタ314(位相板))によって規則的に分散した画像形成が可能なケースだけではなく、光波面変調素子を用いた場合と同様の分散画像を、光波面変調素子を用いずにレンズ312自体によって形成可能なケースに対しても、本発明は応用可能である。
【0174】
図18及び
図19に示すEDoF光学系310は、メカ的に焦点調節を行う焦点調節機構を省略することができるため小型化が可能である。尚、EDoF光学系310の光路内、又はEDoF光学系310と撮像素子320との間には、
図1に示した撮像装置10と同様に赤外カットフィルタを出し入れする機構(図示せず)が設けられている。
【0175】
EDoF化されたEDoF光学系310を通過後の光学像は、
図18に示す撮像素子320に結像され、ここで電気信号に変換される。
【0176】
撮像素子320としては、
図1に示した撮像素子26と同様のものが適用できる。
【0177】
AD(Analog-to-Digital)変換部330は、撮像素子320から画素毎に出力されるアナログのRGB信号をデジタルのRGB信号に変換する。AD変換部330によりデジタルの画像信号に変換されたデジタル画像信号は、RAWデータとして出力される。
【0178】
撮像モジュール300から出力されるRAWデータに対し、
図6及び
図16に示した画像処理部(画像処理装置)35を適用することにより、広範囲でピントが合った状態の高解像度の可視光画像及び近赤外光画像を示す画像データを生成することができる。
【0179】
即ち、
図20の符号1311に示すように、EDoF光学系310を通過後の点像(光学像)は、大きな点像(ボケ画像)として撮像素子320に結像されるが、画像処理部(画像処理装置)35の点像復元処理部48又は点像復元処理部148による点像復元処理により、
図20の符号1312に示すように小さな点像(高解像度の画像)に復元される。
【0180】
[その他]
上述の各実施形態では、画像処理部(画像処理装置)35が、撮像装置10(カメラコントローラ28)に設けられる態様について説明したが、コンピュータ60やサーバ80等の他の装置に画像処理部(画像処理装置)35が設けられてもよい。
【0181】
例えば、コンピュータ60において画像データを加工する際に、コンピュータ60に設けられる画像処理部(画像処理装置)35によってこの画像データの点像復元処理が行われてもよい。また、サーバ80が画像処理部(画像処理装置)35を備える場合、例えば、撮像装置10やコンピュータ60からサーバ80に画像データが送信され、サーバ80の画像処理部(画像処理装置)35においてこの画像データに対して点像復元処理が行われ、点像復元処理後の画像データが送信元に送信又は提供されるようにしてもよい。
【0182】
また、本発明を適用可能な態様は撮像装置10、コンピュータ60及びサーバ80には限定されず、撮像を主たる機能とするカメラ類の他に、撮像機能に加えて撮像以外の他の機能(通話機能、通信機能、その他のコンピュータ機能)を備えるモバイル機器類に対しても適用可能である。本発明を適用可能な他の態様としては、例えば、カメラ機能を有する携帯電話機やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯型ゲーム機が挙げられる。
【0183】
更に、上述の各機能構成は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の各装置及び処理部(カメラコントローラ28、デバイス制御部34、画像処理部35
)における画像処理方法(画像処理手順)をコンピュータに実行させる画像処理プログラム、その画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的有形記録媒体)、或いはその画像処理プログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することができる。