特許第6240940号(P6240940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6240940-エポキシ樹脂組成物 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240940
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20171127BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 233/58 20060101ALN20171127BHJP
   C07D 235/08 20060101ALN20171127BHJP
   C07D 239/06 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08L63/00 C
   !C07D233/58
   !C07D235/08
   !C07D239/06
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-21055(P2014-21055)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147742(P2015-147742A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 亮
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−009357(JP,A)
【文献】 特開2013−155105(JP,A)
【文献】 特開2005−032551(JP,A)
【文献】 特開平04−227924(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/014270(WO,A1)
【文献】 Journal of Physical Organic Chemistry,2013年,Vol.26, No.6,pp.460-466,ISSN:0894-3230, DOI:10.1002/poc.3108
【文献】 Journal of Molecular Liquids,2013年,Vol.177,pp.119-128,ISSN:0167-7322, DOI:10.1016/j.molliq.2012.10.010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G 59/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び(B)下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、R1は、窒素原子を含むことのできる炭化水素基であって、置換基を有することのできる環状構造を形成し得るものであり、R2は水素原子、アルキル基又はアリール基を表すか、R1と一緒になって不飽和結合を形成することができ、R3は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)
【請求項2】
(B)一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(I−1)〜(I−5)の何れかで表される少なくとも一種又は二種以上の化合物であることを特徴とする請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】
(式中、R2'及びR3〜R15はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項3】
(B)一般式(I)で表される化合物が、上記一般式(I−1)又は(I−2)で表される化合物である請求項2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
一液型熱硬化性であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規化合物及びそれを含有してなるエポキシ樹脂組成物に関し、詳しくは、特定のジシアナミド塩、及びそれを配合してなる、貯蔵安定性に優れ、且つ硬化性に優れた一液型熱硬化性のエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、各種基材への接着性に優れており、また、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させた硬化物は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性等が比較的優れているため、塗料、接着剤、各種成型材料等の幅広い用途において使用されている。
【0003】
従来、エポキシ樹脂組成物は、使用直前に硬化剤や硬化促進剤を添加する二液系が主流であった。二液系は、常温或いは低温において硬化させることができる特徴を有しているが、その反面、使用直前に計量、混合しなければならず、さらに可使時間が短く、自動機械への適用が困難である等その使用条件が制限されるという欠点を有している。このような欠点を解消するために一液硬化性エポキシ樹脂組成物が望まれている。
【0004】
このような一液硬化性樹脂組成物を得るためには、室温では反応しないが、加熱により反応を開始し硬化する性質を有する硬化剤、いわゆる潜在性硬化剤が必要である。潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、グアナミン類、メラミン、イミダゾール類等が提案されている。しかし、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、グアナミン類をエポキシ樹脂と混合したものは貯蔵安定性には優れているが、150℃以上の高温、長時間の硬化条件を必要とするという欠点を有している。また、これらと硬化促進剤を併用して硬化時間を短縮することも広く行われているが、貯蔵安定性が著しく損なわれるという欠点が生じてしまう。一方、二塩基酸ジヒドラジドやイミダゾール類は比較的低温で硬化はするが、貯蔵安定性に乏しい。三フッ化ホウ素アミン錯塩は貯蔵安定性に優れ硬化時間は短いという長所があるが、耐水性に劣り、そして金属に対する腐食性を持つ等それぞれに欠点を有している。
【0005】
例えば、国際公開2009/014270号公報には、アンモニウム系カチオン又はホスホニウム系カチオン、カルボン酸アニオンとの組み合わせ等からなるイオン性液体をエポキシ樹脂の硬化剤として使用することが提案されているが、未だ満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2009/014270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れ、且つ硬化性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のジシアナミド塩がエポキシ樹脂硬化剤として優れた効果を発揮し、前記目的を達成し得ることを見い出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表される化合物を提供するものである。
【0010】
【化1】
(式中、R1は、窒素原子を含むことのできる炭化水素基であって、置換基を有することのできる環状構造を形成し得るものであり、R2は水素原子、アルキル基又はアリール基を表すか、R1と一緒になって不飽和結合を形成することができ、R3は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)
【0011】
また、本発明は、(A)エポキシ樹脂及び(B)下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
【化2】
(式中、R1は、窒素原子を含むことのできる炭化水素基であって、置換基を有することのできる環状構造を形成し得るものであり、R2は水素原子、アルキル基又はアリール基を表すか、R1と一緒になって不飽和結合を形成することができ、R3は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入手容易な原料を構成要素とし、程よい硬化特性と保存安定性とのバランスを兼ね備えた実用的なエポキシ樹脂組成物が得られるようになった。特に常温で固体の硬化性樹脂成分を含まない一液型エポキシ樹脂組成物とすることで、作業性に優れると共に狭所接着や含浸接着にも適した一液型エポキシ樹脂組成物を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例2で製造した硬化剤B(化合物No.2)の1H―NMRスペクトルのチャートである。
図2図2は、実施例2で製造した硬化剤B(化合物No.2)の13C―NMRスペクトルのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。先ず、本発明の上記一般式(I)で表される新規化合物について説明する。
【0016】
上記一般式(I)中のR1は、式中の2つの窒素原子又は2つの窒素原子とR2と共に、環状構造を形成する炭化水素基であって、この炭化水素基は、窒素原子を含んでいてもよく、また不飽和結合を含んでいてもよい。また窒素原子の数及び位置、不飽和結合の数及び位置は制限されない。
具体的な環構造としては、イミダゾール環、イミダゾリン環、トリアゾール環等の五員の窒素含有複素環や、ピリミジン環、トリアジン環等の六員の窒素含有複素環や、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、プテリジン環、キナゾリン環等の上記複素環が他の環と縮合されて形成された窒素含有複素環が挙げられる。
これらの環構造は、置換基を有していてもよく、具体的な置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基等が挙げられる。
R2及びR3で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、
R2及びR3で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)で表される化合物としては、下記一般式(I−1)〜(I−5)で表される化合物を好ましく挙げることができる。
【0018】
【化3】
(式中、R2'及びR3〜R15はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0019】
上記一般式(I−1)〜(I−5)中、R2'及びR3〜R15 で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられ、R2'及びR3〜R15 で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基等が挙げられる。
【0020】
本発明の一般式(I)で表される化合物としては、下記の化合物No.1〜No.5等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
本発明の一般式(I)で表される化合物を製造する方法としては、例えば、下記[化9]に示すように、カチオン構造に対応する窒素含有複素環化合物に、塩酸等の酸性物質を加えて、中間体(I)とした後、アルコール(alcohol)又は水(H2O)存在下 、これに、ナトリウムジシアミド又はジシアミド塩を反応させることにより製造する事ができるが、その製造方法は限定されるものではない。
【0027】
【化9】
(上記式中、R1〜R3は、上記一般式(I)と同義である。)
【0028】
以上説明した本発明の一般式(I)で表される化合物は、入手容易な原料を構成要素とし、程よい硬化特性と保存安定性とのバランスを兼ね備えているため、熱硬化型潜在性硬化剤としてエポキシ樹脂に添加され後述する種々の用途に用いることができる。
【0029】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される(A)成分であるエポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホニルビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの或いは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
【0031】
(A)エポキシ樹脂としては、その作業性や硬化性の点から、多角多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテルが好ましく、ビスフェノールFやビスフェノールAがより好ましい。
また(A)エポキシ樹脂は、エポキシ当量70〜3000、更に90〜2000のものが好ましい。該エポキシ当量が70未満では、硬化物の物性が低下するおそれがあり、3000よりも大きい場合には、十分な硬化性が得られないおそれがあるため好ましくない。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される(B)成分は、上述した本発明の一般式(I)で表される化合物であり、前記で説明した化合物が挙げられる。(B)一般式(I)で表される化合物としては、上述した一般式(I−1)〜(I−5)で表される化合物を好ましく挙げることができる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(B)一般式(I)で表される化合物の含有量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部であり、より好ましくは1〜20質量部である。(B)一般式(I)で表される化合物の含有量が 0.1質量部未満であると、硬化不良を引き起こす恐れがあり、50質量部を超えると、貯蔵安定性を著しく悪化させる可能性がある。
【0034】
また、必要に応じて、(B)一般式(I)で表される化合物以外のその他硬化剤;硬化触媒;モノグリシジルエーテル類、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の反応性又は非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質等の充填剤もしくは顔料;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物を含有してもよく、さらに、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料或いは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リムーバルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床材の粘着剤;アート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料;電子・電気機器用封止剤等の広範な用途に使用することができる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を製造例及び実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら製造例及び実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
製造例1〔中間体Aの製造〕
水40mlにナトリウムジシアナミド1.8g(20mmol)を溶解し、25℃撹拌中に0.1M硝酸銀水溶液200g(20mmol)を滴下し2時間反応を行った。その後、析出物をろ別し乾燥させることで淡黄色粉末状の中間体A(Ag+N(CN)2-)を3.3g得た。
【0038】
製造例2〔中間体Bの製造〕
メタノール55mlに1-メチルイミダゾール4.5g(55mmol)を溶解し、25℃撹拌中に35%塩酸水溶液5.8g(55mmol)を滴下し1時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡褐色固体の中間体B(下記[化10]で示される化合物)を6.6g得た。
【化10】
【0039】
製造例3〔中間体Cの製造〕
メタノール43mlに2-エチル-4-メチルイミダゾール4.7g(43mmol)を溶解し、25℃撹拌中に35%塩酸水溶液4.5g(43mmol)を滴下し1時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色粉末状の中間体C(下記[化11]で示される化合物)を5.9g得た。
【化11】
【0040】
製造例4〔中間体Dの製造〕
メタノール26mlに1-metyl-1,4,5,6-tetrahydropyrimidineを2.6g(26mmol)溶解し、25℃撹拌中に35%塩酸水溶液2.7g(26mmol)を滴下し1時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色粉末状の中間体D(下記[化12]で示される化合物)を3.7g得た。
【化12】
【0041】
実施例1〔硬化剤Aの製造〕
水17mlに中間体Bを1.0g(8.5mmol)溶解し、25℃撹拌中に中間体Aを1.5g(8.5mmol)分割で投入し24時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色液状の硬化剤Aを1.2g得た。
【0042】
実施例2〔硬化剤Bの製造〕
水20mlに中間体Cを1.5g(10.0mmol)溶解し、25℃撹拌中に中間体Aを1.7g(10.0mmol)分割で投入し24時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色粉末状の硬化剤Bを1.7g得た。得られた硬化剤Bの1H-NMR及び13C-NMRによる同定結果を下記に示す。また図1には、1H-NMRのチャートを示し、図2には、13C-NMRによるチャート示した。
<同定結果>
1H-NMR (400MHz,CD3OD) d: 1.36 (3H, t, J=7.6 Hz), 2.29 (3H, d, J=1.0 Hz), 2.92 (2H, q, J=7.7 Hz), 7.05 (1H, s)
13C-NMR(100MHz, CD3OD) d: 8.4, 10.3, 19.0, 114.7, 119.1, 129.1, 148.3
【0043】
実施例3〔硬化剤Cの製造〕
水40mlに中間体Dを1.2g(9.2mmol)溶解し、25℃撹拌中に中間体Aを1.6g(9.2mmol)分割で投入し24時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色液状の硬化剤Cを1.4g得た。
【0044】
実施例4〔一液型エポキシ樹脂組成物Aの製造〕
アデカレジンEP-4100L((株)ADEKA製 ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂:エポキシ当量170g/eq、全塩素量600ppm)340gに硬化剤Aを15g加え均一に混合した後、室温減圧下で十分に脱泡を行うことで目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Aを得た。
【0045】
実施例5〔一液型エポキシ樹脂組成物Bの製造〕
硬化剤Bを17.7g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Bを得た。
【0046】
実施例6〔一液型エポキシ樹脂組成物Cの製造〕
硬化剤Cを16.5g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Cを得た。
【0047】
比較例1〔一液型エポキシ樹脂組成物Dの製造〕
1-メチルイミダゾールを8.2g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Dを得た。
【0048】
比較例2〔一液型エポキシ樹脂組成物Eの製造〕
2-エチル-4-メチルイミダゾールを11g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Eを得た。
【0049】
比較例3〔一液型エポキシ樹脂組成物Fの製造〕
1-metyl-1,4,5,6-tetrahydropyrimidineを9.8g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Fを得た。
【0050】
以下に述べる手法により、実施例及び比較例で製造した一液型エポキシ樹脂組成物について、以下の<評価方法>に従い、物性評価試験を行った。
【0051】
<評価方法>
(1)一液安定性試験
製造直後の一液型エポキシ樹脂組成物について、密閉下40℃で保管を行い、該組成物の流動性がなくなるまでに所要した時間を計測することで一液安定性の評価を行った。
【0052】
(2)硬化性の評価
一液型エポキシ樹脂組成物について、150℃及び180℃の熱板上でゲルタイムを測定することで硬化性の評価を行った。
【0053】
<評価結果>
【表1】
【0054】
表1の評価結果からも明らかなように、ジシアナミドをアニオン構造に持つ窒素含有塩化合物をエポキシ樹脂用の熱硬化型潜在性硬化剤に使用することで、一液安定性だけではなく硬化性にも優れた一液型エポキシ樹脂組成物の製造が可能となった。
図1
図2