【0016】
上記一般式(I)中のR1は、式中の2つの窒素原子又は2つの窒素原子とR2と共に、環状構造を形成する炭化水素基であって、この炭化水素基は、窒素原子を含んでいてもよく、また不飽和結合を含んでいてもよい。また窒素原子の数及び位置、不飽和結合の数及び位置は制限されない。
具体的な環構造としては、イミダゾール環、イミダゾリン環、トリアゾール環等の五員の窒素含有複素環や、ピリミジン環、トリアジン環等の六員の窒素含有複素環や、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、プテリジン環、キナゾリン環等の上記複素環が他の環と縮合されて形成された窒素含有複素環が挙げられる。
これらの環構造は、置換基を有していてもよく、具体的な置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基等が挙げられる。
R2及びR3で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、
R2及びR3で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を製造例及び実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら製造例及び実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
製造例1〔中間体Aの製造〕
水40mlにナトリウムジシアナミド1.8g(20mmol)を溶解し、25℃撹拌中に0.1M硝酸銀水溶液200g(20mmol)を滴下し2時間反応を行った。その後、析出物をろ別し乾燥させることで淡黄色粉末状の中間体A(Ag
+N(CN)
2-)を3.3g得た。
【0038】
製造例2〔中間体Bの製造〕
メタノール55mlに1-メチルイミダゾール4.5g(55mmol)を溶解し、25℃撹拌中に35%塩酸水溶液5.8g(55mmol)を滴下し1時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡褐色固体の中間体B(下記[化10]で示される化合物)を6.6g得た。
【化10】
【0039】
製造例3〔中間体Cの製造〕
メタノール43mlに2-エチル-4-メチルイミダゾール4.7g(43mmol)を溶解し、25℃撹拌中に35%塩酸水溶液4.5g(43mmol)を滴下し1時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色粉末状の中間体C(下記[化11]で示される化合物)を5.9g得た。
【化11】
【0040】
製造例4〔中間体Dの製造〕
メタノール26mlに1-metyl-1,4,5,6-tetrahydropyrimidineを2.6g(26mmol)溶解し、25℃撹拌中に35%塩酸水溶液2.7g(26mmol)を滴下し1時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色粉末状の中間体D(下記[化12]で示される化合物)を3.7g得た。
【化12】
【0041】
実施例1〔硬化剤Aの製造〕
水17mlに中間体Bを1.0g(8.5mmol)溶解し、25℃撹拌中に中間体Aを1.5g(8.5mmol)分割で投入し24時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色液状の硬化剤Aを1.2g得た。
【0042】
実施例2〔硬化剤Bの製造〕
水20mlに中間体Cを1.5g(10.0mmol)溶解し、25℃撹拌中に中間体Aを1.7g(10.0mmol)分割で投入し24時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色粉末状の硬化剤Bを1.7g得た。得られた硬化剤Bの
1H-NMR及び
13C-NMRによる同定結果を下記に示す。また
図1には、
1H-NMRのチャートを示し、
図2には、
13C-NMRによるチャート示した。
<同定結果>
1H-NMR (400MHz,CD
3OD) d: 1.36 (3H, t, J=7.6 Hz), 2.29 (3H, d, J=1.0 Hz), 2.92 (2H, q, J=7.7 Hz), 7.05 (1H, s)
13C-NMR(100MHz, CD
3OD) d: 8.4, 10.3, 19.0, 114.7, 119.1, 129.1, 148.3
【0043】
実施例3〔硬化剤Cの製造〕
水40mlに中間体Dを1.2g(9.2mmol)溶解し、25℃撹拌中に中間体Aを1.6g(9.2mmol)分割で投入し24時間反応を行った。その後、溶媒をエバポレーターで除去、減圧乾燥することで淡黄色液状の硬化剤Cを1.4g得た。
【0044】
実施例4〔一液型エポキシ樹脂組成物Aの製造〕
アデカレジンEP-4100L((株)ADEKA製 ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂:エポキシ当量170g/eq、全塩素量600ppm)340gに硬化剤Aを15g加え均一に混合した後、室温減圧下で十分に脱泡を行うことで目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Aを得た。
【0045】
実施例5〔一液型エポキシ樹脂組成物Bの製造〕
硬化剤Bを17.7g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Bを得た。
【0046】
実施例6〔一液型エポキシ樹脂組成物Cの製造〕
硬化剤Cを16.5g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Cを得た。
【0047】
比較例1〔一液型エポキシ樹脂組成物Dの製造〕
1-メチルイミダゾールを8.2g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Dを得た。
【0048】
比較例2〔一液型エポキシ樹脂組成物Eの製造〕
2-エチル-4-メチルイミダゾールを11g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Eを得た。
【0049】
比較例3〔一液型エポキシ樹脂組成物Fの製造〕
1-metyl-1,4,5,6-tetrahydropyrimidineを9.8g用いた以外は実施例4と同様にして目的とする一液型エポキシ樹脂組成物Fを得た。
【0050】
以下に述べる手法により、実施例及び比較例で製造した一液型エポキシ樹脂組成物について、以下の<評価方法>に従い、物性評価試験を行った。
【0051】
<評価方法>
(1)一液安定性試験
製造直後の一液型エポキシ樹脂組成物について、密閉下40℃で保管を行い、該組成物の流動性がなくなるまでに所要した時間を計測することで一液安定性の評価を行った。
【0052】
(2)硬化性の評価
一液型エポキシ樹脂組成物について、150℃及び180℃の熱板上でゲルタイムを測定することで硬化性の評価を行った。
【0053】
<評価結果>
【表1】
【0054】
表1の評価結果からも明らかなように、ジシアナミドをアニオン構造に持つ窒素含有塩化合物をエポキシ樹脂用の熱硬化型潜在性硬化剤に使用することで、一液安定性だけではなく硬化性にも優れた一液型エポキシ樹脂組成物の製造が可能となった。