【実施例】
【0041】
次に、実施例により、本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0042】
ナイルブルー(NB)の5位のアミノ基に求電子性が段階的に低くなる芳香族スルホニル制御ユニットとして、それぞれジニトロベンゼンスルホニル基(DNs基)、モノニトロベンゼンスルホニル基(MNs基)およびトシル基(Ts基)を導入した化合物(DNs−NB、MNs−NB及びTs−NB)をそれぞれ合成した(合成例1〜3)。
[合成例1]
<DNs−NB(比較例1の化合物)の合成>
無水DMF(1.2mL)中で0℃に冷却されたナイルブルーA(50mg、0.12mmol)の攪拌溶液に、アルゴン雰囲気下でN,N−ジイソプロピルエチルアミン(34μL、0.18mmol)及び2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロライド(38mg、0.14mmol)を添加した。20分後、該溶液を70℃の周囲温度に温め、該温度で2時間攪拌した。この反応混合液をEtOAcで希釈し、水で洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、in vacuoエバポレート(真空内蒸発)させた。フラッシュカラムクロマトグラフィーで残渣を精製し、青色の固体として下記構造式のDNs−NBを得た(9.5mg、0.017mmol、14%)。融点>400℃;
1H NMR (500 MHz, ピリジン-d5): δ 9.13 (1H, s) 8.87-8.85 (1H, d, J = 8.5 Hz), 8.59-8.76 (1H, d, J = 9.0 Hz), 8.39-8.40 (1H, d, J = 8.5 Hz), 8.31-8.29 (1H, d, J = 9.5 Hz), 7.90 (1H, s), 7.90-7.89 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.79-7.76 (1H, dd, J = 8.5, 8.0 Hz), 7.70-7.67 (1H, dd, J = 8.0, 7.5 Hz), 7.00-6.98 (1H, d, J = 9.0 Hz), 6.69 (1H, s), 3.46-3.3.41 (4H, q, J = 7.0 Hz), 1.18-1.15 (6H, t, J = 7.0 Hz).
13C NMR (100 MHz, C
5D
5N-d
5): δ 164.17, 153.28, 151.18, 147.90, 132.56, 132.24, 131.73, 131.44, 130.70, 129.77, 129.32, 129.19, 126.61, 120.73, 114.08, 101.28, 96.34, 79,79, 55.05, 45.74, 29.98, 28.81, 12.58. HRMS (ESI) m/z: 計算値C
26H
21N
5O
7SNa
+ ([M+Na]
+) 570.1083, 測定値570.1081.
【0043】
【化15】
【0044】
[合成例2]
<MNs−NB(実施例1の化合物)の合成>
無水DMF(1.2mL)中で0℃に冷却されたナイルブルーA(50mg、0.12mmol)の攪拌溶液に、アルゴン雰囲気下でN,N−ジイソプロピルエチルアミン(34μL、0.18mmol)及び4−ニトロベンゼンスルホニルクロライド(32mg、0.14mmol)を添加した。5分後、該溶液を周囲温度に温め、該温度で10分間攪拌した。この反応混合液をEtOAcで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、in vacuoエバポレート(真空内蒸発)させた。フラッシュカラムクロマトグラフィーで残渣を精製し、青色の固体として下記構造式のMNs−NBを得た(9mg、0.02mmol、15%)。融点(Mp):272 ℃;
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) : δ 8.688.66 (1H, d, J = 8 Hz), 8.40-8.39 (1H, d, J = 8 Hz), 8.308.29 (2H, d, J = 8.5 Hz), 8.248.22 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.70 (1H, s), 7.697.67 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.587.55 (2H, dd, J = 8 Hz, 8 Hz), 6.82-6.81 (1H, d, J = 7.5 Hz), 6.55 (1H, s), 3.503.46 (4H, q, J = 6.5 Hz), 1.261.24 (6H, t, 6.5 Hz).
13C NMR (125 MHz, DMSO-d
6): δ 164.23, 150.67, 149.56, 148.83, 147.25, 148.29, 132.01, 131.56, 131.52, 130.99, 130.76, 129.56, 128.07, 126.21, 123.99, 123.83, 112.87, 101.31, 96.92, 65.66, 46.08. HRMS (ESI) m/z: 計算値 C
26H
23N
4O
5S
+ ([M+H]
+) 503.1389, 測定値 503.1404.
【0045】
【化16】
【0046】
[合成例3]
<Ts−NB(比較例2)の合成>
無水DMF(1.2mL)中で0℃に冷却されたナイルブルーA(50mg、0.12mmol)の攪拌溶液に、アルゴン雰囲気下でN,N−ジイソプロピルエチルアミン(34μL,0.18mmol)及び4−メチルベンゼンスルホニルクロライド(34mg,0.18mmol)を添加した。15分後、該溶液を80℃の周囲温度に温め、該温度で30分間攪拌した。この反応混合液をEtOAcで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相をNa
2SO
4で乾燥し、in vacuoエバポレート(真空内蒸発)させた。フラッシュカラムクロマトグラフィーで残渣を精製し、青色の固体として下記構造式のTs−NBを得た(12 mg, 0.025 mmol, 21%)。融点(Mp):246 ℃;
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) : δ 8.618.59(1H, d, J = 8.1 Hz), 8.448.41 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.957.92 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.267.23 (2H, d, J = 7.8 Hz), 7.667.49 (4H, m), 6.736.70 (1H, d, J = 8.7 Hz), 6.46 (1H, s), 3.473.30 (4H, q, J = 7.2 Hz), 2.35 (3H, s), 1.241.19 (6H, t, J = 6.9 Hz).
13C NMR (125 MHz, CDCl
3) : δ 163.52, 150.33, 147.16, 142.58, 140.24, 138.82, 131.76, 131.61, 131.29, 131.14, 131.11, 129.87, 129.38, 126.96, 126.35, 123.76, 112.29, 96.71, 45.91, 29.86, 21.59, 12.75. HRMS (ESI) m/z: 計算値 C
27H
26N
3O
3S
+ ([M+H]
+) 471.1171, 測定値 471.1695.
【0047】
【化17】
【0048】
上記合成例1〜3により得られた実施例1及び比較例1〜2の化合物、並びに市販の化合物としてナイルブルー(NB)(シグマアルドリッチ社)、ナイルレッド(シグマアルドリッチ社)、下記構造のBODIPY493/503(インビトロジェン社)を用いて、種々の試験を行った。
なお、各試験例における試験方法は下記の通りである。
【0049】
【化18】
【0050】
[試験方法]
<量子収量の測定>
NB,DNs−NB(比較例1)、MNs−NB(実施例1)及びTs−NB(比較例2)の1mM・DMSO(ジメチルスルホキシド)ストック溶液を調製した。1mM・DMSOストック溶液の適切な希釈により調節された、所望の濃度における各化合物の各溶液の吸収スペクトルを得た(610nmにおける吸光度<0.02)。蛍光の量子効率(φ
fl)を決定するために、蛍光スタンダードとして、メタノール(MeOH)中のクレシル・バイオレットを用いた(φ = 0.66)。以下の方程式から、蛍光の量子効率を得た(式中、Fは、各波長における蛍光強度を表し、Σ [F]は、蛍光強度の合計により求められる。)
φ
fl サンプル= φ
fl スタンダード Abs
スタンダード Σ [F
サンプル] / Abs
サンプル Σ [F
スタンダード]
【0051】
<吸光度測定>
10μMの試薬を含む各溶液において反応を行った。UV/VIS分光法により吸光度スペクトルを観察した(V-550; JASCO)。450〜750nmのスキャン範囲で吸光度を得た。
【0052】
<蛍光測定>
1μMの試薬を含む各溶液において反応を行った。蛍光分光法により蛍光スペクトルを観察した(FP-6500; JASCO)。620〜720nmのスキャン範囲で、610nmの励起を有する蛍光を得た(励起バンド幅(excitation band):3nm、蛍光バンド幅(emission band):3nm、感度:中間(medium))。
【0053】
<蛍光寿命測定>
室温で、NB,DNs−NB,MNs−NB又はTs−NBを含む各溶液において、寿命測定を行った(吸収強度(absorbance intensity)< 0.02)(標準物質はLUDOXを使用した)。蛍光寿命測定装置(HORIBA TemPro-01, Nano LED-561)により蛍光寿命を観察した。
【0054】
<HeLa細胞における脂肪滴の導入>
(オレイン酸−BSAコンジュゲート)
HeLa細胞に脂肪滴形成を誘導するために、オレイン酸−BSA溶液の4mMのストック溶液を調製した。0.1M・Tris−HCl(pH8.0)溶液10mLに、1.4gのBSAを添加した。清潔なスクリューキャップのついたチューブに、オレイン酸を加え、これに10mLのBSA溶液を添加し、回転式振とう器を用いて混合した。BSA溶液を添加すると曇りが生じたが、複合体形成が完了すると曇りは消失した。得られた複合体(コンジュゲート)を0.22μmのフィルターユニットに通し、4℃で保存した。
(脂肪滴の導入)
10%FBS、0.1mM非必須アミノ酸(NEAA)、1mMピルビン酸ナトリウム及びペニシリン/ストレプトマイシン(1×濃度)を含むDMEM−低グルコース培地中でHeLa細胞を維持した。脂肪滴の導入のために、24時間、37℃、5%の二酸化炭素条件下で、24ウェルプレートにHeLa細胞を2×10
4細胞の濃度で播いた。その後、200μMのオレイン酸−BSAコンジュゲートを該細胞に添加し、24時間培養した。ネガティブコントロールの細胞は、オレイン酸−BSAコンジュゲートで処理していないHeLa細胞であった。指し示された時間後、NB、MNs、MNs、NB,ナイルレッド及びBODIPY493/503などの試薬で細胞を染色した。
【0055】
<フローサイトメトリー>
サイトミックスLSR装置(Cytomics LSR instrument)(Beckman Coulter)を用いて、洗浄工程を経ることなく生HeLa細胞懸濁液を直接分析した。以下の条件で蛍光シグナルを観察した。BD/LSRによる励起;アルゴン488nm/530/28BP(BODIPY及びナイルレッド)、ヘリウム−ネオン633nm/660・16BP(NB試薬)。
前方散乱(forward angle light scatter)(FSC)、側方散乱(side angle light scatter)(SSC)及び蛍光データを記録した。各測定について、10000イベントよりも多く保存した。(脂肪滴を用いてあるいは用いずに)0.5μMの試薬を用いて、15分間37℃でHeLa細胞の中で反応を行った。FLOWJOソフトウェア(FLOWJO)を用いてデータを分析した。
【0056】
<UEET−12細胞の脂肪組織への分化>
10%のウシ胎仔血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(1×濃度)を含むL−グルタミンを含むDMEM−低グルコース培地(以下、間葉性幹細胞拡大培地(mesenchymal stem cell expansion medium)と呼ぶことがある)中で、37℃、5%CO2濃度でUEET−12細胞を培養した。脂肪組織に分化する前に、24ウェルプレートに細胞を2×10
4cell/wellで播き、細胞がコンフルエントになるまで培養した。細胞がコンフルエントに達した後、脂質生成導入培地(adipogenesis induction medium)(1μMデキサメタゾン、0.5mMの3−イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)及び10μMのインスリン)を含む10%FBSを含むDMEM低グルコース培地)に置き換え、2日毎に培地交換しながら7日間培養した。7日後、脂質生成導入培地を脂質生成維持培地(10μMのインスリンを含む10%FBSを含むDMEM低グルコース培地)に置き換え、さらに2日間培養した。再度脂質生成導入培地に置き換え、6日間培養した(2日毎に培地交換を行った)。その後、脂質生成維持培地に置き換え、さらに2日間培養した。脂肪滴を検出するために、NB,MNs−NB,ナイルレッド及びBODIPY493/503の各試薬を用いて、細胞を染色した。ネガティブコントロールは、未分化の細胞を用いた。
【0057】
<脂肪滴の生細胞染色>
NB,MNs−NB,ナイルレッド及びBODIPY493/503を用いてHeLa細胞及びUEEF−12細胞を染色した。37℃、5%CO
2条件下、試薬(5μM)を細胞に添加し、で15分間、インキュベートした。PBS(pH7.4)で1回洗浄した後、蛍光顕微鏡(Carl Zeiss, Gottingen, Germany)により細胞内脂肪滴を観察した。
【0058】
<動物モデル>
Charles River JapanからオスのC57BL/6Jマウスを得た。全てのマウスは12時間の光と闇のサイクル下で育てられ、いつでも餌を食べることが出来る状態であった。マウスには、標準的な固形飼料(chow diet)(6%脂肪, Oriental Yeast)又は高脂肪食(D12492, 60 Kcal%脂肪, Research Diets)を与えた。全ての実験は東京大学動物実験倫理委員会(University of Tokyo Ethics Committee for Animal Experiments)により承認され、東京大学の動物実験ガイドラインに厳密に従った。
【0059】
<生肝臓/筋肉/脂肪組織イメージング>
生肝臓、大腿四頭筋骨格筋(quadriceps skeletal muscles)及び精巣上体脂肪組織のイメージング方法のために、25週齢の高脂肪食負荷肥満マウス(diet-induced-obese)及び同じ年齢の通常食痩せ型マウス(lean control mice)を用いた。
in vivoの細胞動力学を視覚化するために、ウレタン(1.5g/kg)を注射することによりマウスに麻酔をかけた。適度な深さの麻酔が得られた後、小さな切り込みを入れ、サリンで湿らせた。その後、この窓をラップで覆った。組織を体外に出すことなく、小さな窓(3mm以下)を介して生体内イメージングを行った。37℃の体温を維持するために加熱パッドを用いた。
血液の流れ及び血球を視覚化するために、尾静脈を介してFITC−デキストラン(5 mg/kg体重、分子量150,000, Sigma)をマウスに注入し血球を視覚化した。さらに、核をin vivoで視覚化するため、Hoechst 33342 (1mM/kg体重, Invitrogen)を注入した。注入から15分後、イメージングを行った。脂肪滴をin vivoで視覚化するために、DMSOに溶かしたMNs−NBを注入した(0.1 uM/kg体重)。レゾナンス共焦点スキャナー(resonance-scanning confocal microscopy (Nikon A1R))用に備わっている倒立顕微鏡(Ti, Nikon)を用いて、高時空間解像度(high time and spatialresolution(160 nm/pixel))を有するイメージを得た。
各イメージにつき1秒あたり30フレームで全ての連続イメージを得ている。使用したシステムは、405, 488, 561, 又は640nmの励起波長用の4種のレーザーラインを備えており、同時4波長励起、同時4波長測光により観察を行なった。
【0060】
<脂肪組織の間質血管フラクション(stromal vascular fraction)の培養>
精巣上体の脂肪組織由来の間質血管(SV)フラクションを集め、コンフルエントになるまで培養した。過去に記載された方法(Am J Physiol Cell Physiol December 2006 vol. 291 no. 6 C1232-C1239)を若干修正した上で用いて、間質血管(SV)細胞を単離している。全身ヘパリン化後、一般的な麻酔条件下でマウスを犠牲にした。その後、精巣上体及び皮下の脂肪組織を取り出し、小さな断片に切り刻み、穏やかに攪拌しながら、コラゲナーゼ溶液(Tyrodeバッファー中の2 mg/mlコラゲナーゼtype 2 [Worthington])中で20分間培養した。消化処理された組織を遠心分離し、得られたSVフラクションを含むペレットをPBS中に再懸濁した後、70μmメッシュのフィルターでろ過した。その後、回収された細胞を、10%FBSを加えたダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's modified Eagle's medium(DMEM))で2回洗浄した。デキサメタゾン、IBMX(3−イソブチル−1−メチルキサンチン)及びインスリンを含む標準的な脂肪生成混合液中で該細胞を培養した。その状態で、脂肪滴の蓄積を観察するために、共焦点顕微鏡を用いて観察を行なった。
【0061】
[試験例1]
これまでの報告された脂肪滴検出試薬の機能は、疎水性環境下でのオフ/オン機能を有するものか(ナイルレッドなど)、或いは生体中・細胞内において疎水性部分への分布が優位に起こる機能をもつもの(BODIPY493/503など)に大別できる。この2つの機能を同時に併せ持つ試薬は、極めて有用であることが予想される。脂肪滴は、トリアシルグリセロールなどの疎水性の高い生体分子が集合した液滴である。そのため、試薬は、疎水性環境下でのみ蛍光が増強する性質が有効である。表1に示すように、各種トリアシルグリセロールが形成する脂肪滴の誘電率が報告されている。誘電率が低いほどその媒質の疎水性が高いことになる。各種トリアシルグリセロールの誘電率は、5以下の値を示している。一方、各種有機溶媒及び水の誘電率については表1に示す通りであり、クロロホルム、メタノール、エチレングリコール、アセトニトリルおよび水の誘電率は、それぞれ、4.89、32.35、31,69、36.00及び80.10である。つまり、脂肪滴に近い誘電率を示す溶媒は、クロロホルムとなる。そこで、脂肪滴検出蛍光試薬は、誘電率が低いクロロホルムで蛍光を増強し、他の誘電率が高いメタノールなどの溶媒で蛍光を増強しないものが高い特異性を示すと考えた。試薬のオフ/オン型機能を評価する際の一つの指針とした。
【0062】
【表1】
【0063】
[試験例2]
<脂肪検出試薬の評価(分布特性)>
次に、脂肪滴への選択的な分布特性を評価した。化合物の疎水性が高くなるほど脂肪滴への分布が有利になる。疎水性のパラメータとして、オクタノール・水分配計数logPを用いることができる。logPは、Viswanadhanのフラグメーション法を用いてChemDrawなどのソフトを用いて計算できる。logPが高いほど脂肪滴への分布選択性が上がることが予想される。
【0064】
まず、これまでに報告されている脂肪滴検出試薬のlogPを計算した(表2左欄)。
その結果、LD450が最も高く、4.38を示し、LipidGreenは最も低く2.92を示した。次に、ナイルブルー(NB)、DNs−NB、MNs−NBおよびTs−NBのlogPを計算したところ、ナイルブルーが3.2を示したのに対して、誘導体であるDNs−NB、MNs−NBおよびTs−NBは、それぞれ5.95、5.99、5.13とこれまでの試薬よりも高い値を示した(表2右欄)。logP値の計算結果は、これらNB誘導体が脂肪滴への高い分布特異性を有することを支持した。
【0065】
【表2】
【0066】
[試験例3]
<NB誘導体を用いた光化学特性の解析>
合成した各NB誘導体の光化学特性を解析した。第一に、誘電率の異なる各種溶媒中におけるNB試薬(NB,DNs−NB、MNs−NB、Ts−NB)の吸収スペクトルを測定した。溶媒は、メタノール、エチレングリコール、アセトニトリル及びクロロホルムを用いた。
図2に示すように、NB、DNs−NB、MNs−NB及びTs−NBは、クロロホルム溶液下を除いて、どれもほとんど同じスペクトルの形状を示した。
【0067】
各試薬の最大吸光波長のモル吸光係数を算出した(表3)。各試薬の値を比較したところ、MNs−NBが最も低い値を示した。また、クロロホルム溶媒下の試薬の値は、メタノールより高い値を示した。これは、親水性溶液中では、各試薬の基底状態において複数の平衡構造が存在するためであると予想される。極性の高いメタノール中では、カチオン性の平衡構造が溶解するのに有利である。一方、クロロホルム中では電荷のない分子構造のみが存在すると考えられる。いずれの試薬も疎水性の高いクロロホルム溶液中で青色シフトを示しており、特にMNs−NBとTs−NBにおいて顕著である(
図2)。疎水性溶媒の青色シフトは、基底状態構造よりも励起状態構造の双極子遷移モーメントが大きいことを示している。これは、NBがπ−π励起状態を取っているためであると予想される。
【0068】
【表3】
【0069】
次に、ナイルブルー(NB)、DNs−NB、MNs−NBおよびTs−NBの各試薬の蛍光スペクトルを解析した(
図3)。溶媒は、水(PBS、pH7.4)、メタノール、アセトニトリル、エチレングリコール及びクロロホルムを用いた。水中においてはNB、DNs−NB、MNs−NB及びTs−NBのどの試薬もその蛍光強度は低かった。最も極性の低いクロロホルム溶液中においては、DNs−NBの蛍光は極めて弱いが、他のNB、MNs−NB及びTs−NBの蛍光は強かった。さらに、誘電率30付近のメタノール、アセトニトリル、エチレングリコール溶液中においては、NBとTs−NBは蛍光を与えるが、DNs−NB及びMNs−NBはほとんど蛍光を与えなかった。
試験例1の結果から、脂肪滴検出試薬の設計指針として、誘電率の低いクロロホルム溶液でのみ蛍光発光が強くなり、それよりも誘電率の高い溶媒では蛍光発光が弱くなる光化学特性が望まれる。したがって、蛍光スペクトル解析の結果からは、MNs−NBがこの設計指針に合致する試薬であるといえる。
【0070】
[試験例4]
<NB誘導体の蛍光発光特性の解析>
次に、蛍光発光特性を明らかにするために詳細なスペクトル解析を行った。各試薬の各溶媒における蛍光量子収率(φ
f)及び蛍光寿命(τ
f)を測定した(表4)。
【0071】
【表4】
【0072】
図4に蛍光発光における吸収、発光とエネルギーの関係を概略した。基底状態にある分子(S
0)は、光吸収(hv)によって電子遷移が起こり、10
-15秒程度の時間で励起状態(S
1)に変化する。その後、励起状態にある分子が、基底状態に戻るときに蛍光発光が起こる。蛍光スペクトルで得られる単位濃度当たりの蛍光強度は、モル吸光係数(ε)と蛍光量子収率(φ
f)に比例する(蛍光強度∝モル吸光係数(ε)×蛍光量子収率(φ
f))。この蛍光強度がいわゆる蛍光化合物の感度に当たるものである。蛍光量子収率(φ
f)は、放射緩和速度定数(k
r)と無放射緩和速度定数(k
nr)の関係式(1)において表される。すなわち、放射緩和速度定数が大きくなるほど、また無放射緩和速度定数が小さくなるほど蛍光量子収率は高くなる。さらに、実験で測定できる蛍光寿命(τ
f)は、放射緩和速度定数(k
f)と無放射緩和速度定数(k
nr)と式(2)の関係にある。
蛍光量子収率と蛍光寿命の実験値を用いて、式(1)と式(2)から放射緩和速度定数(k
r)と無放射緩和速度定数(k
nr)の値を求めることができる。その結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
メタノール中において、各NB試薬の蛍光強度がクロロホルム中と比べて低い値となっている(
図3)。この結果は、蛍光寿命が短いことと、蛍光量子収率が低いことの両方に起因する(表4)。一方、各種有機溶媒において、各NB試薬の蛍光強度は変化しているが、モル吸光係数はほぼ同じ値を示している。これは、各有機溶媒中において、励起効率はほぼ同じであるが、蛍光量子収率が変化することから起こる。蛍光量子収率の変化は、各有機溶媒において放射緩和速度と無放射緩和速度の割合が変化することから起こっている。例えば、MNs−NBの蛍光量子収率はクロロホルム、メタノールで0.21、0.03と低下するのに対して、その放射緩和速度定数も0.055、0.030と低下する。一方、その無放射緩和速度定数は、0.203、0.960と増加する。特に、MNs−NBはメタノール中において無放射緩和の経路が極めて優勢であることがわかる。DNs−NBはすべての有機溶媒中で蛍光寿命(τ
f)が測定不可能であったため、k
rおよびk
nrの算出はできなかった。しかしながら、モル吸光係数は励起効率が高いことを示している。そのため、DNs−NBは、励起状態から高い確率で無放射緩和過程を通じて基底状態に戻ることが明らかである。表5から、まず、より極性の高い溶媒中において、励起状態分子が無放射緩和過程を通じて基底状態に戻る確率が高くなっていることが判る。さらに、芳香族スルホニル制御ユニット上の置換基が求電子性であるほど、無放射緩和過程の確立が高くなっていることが判る。
【0075】
次に、各種NB試薬(NB、DNs−NB、MNs−NB及びTs−NB)の光学特性及び物理化学特性を、既存の脂肪滴検出試薬(ナイルレッド及びBODIPY493/503)と比較検討した。励起波長610nmで、クロロホルム溶液中の蛍光スペクトルを解析した結果、NB、DNs−NB、MNs−NB及びTs−NBの最大蛍光波長は、それぞれ、644nm、658nm、651nm及び642nmを示した(
図3)。一方、ナイルレッド及びBODIPY493/503の最大蛍光波長は、590nm及び503nmを示すことから(
図5)、長波長の蛍光シグナルを与えるNB試薬がより生体イメージングには適している。脂肪滴検出試薬のための評価基準として、クロロホルムと水中における輝度の比をS/B(シグナル/バックグラウンド)比とした。これによって、疎水性環境で蛍光を増強するオフ/オン機能を数値で評価できる。輝度の値は、モル吸光係数(ε)の値と蛍光量子収率(Φ
f)の値の積算により算出した。NB、DNs−NB、MNs−NB及びTs−NBの値は、それぞれ表6に示した。その結果、MNs−NBが9.1と最も高いS/B比を示した。一方、既存のナイルレッドおよびBODIPY493/503のS/B比は、4.7及び1.0を示した。
以上の結果から、MNs−NBは、logPの値だけでなくS/B比の値も高く、オフ/オン機能及び脂肪滴への高い分布特性のいずれをも兼ね備えていることが判った。したがって、MNs−NBは、オフ/オン機能又は疎水性環境に分布しやすいかオフ/オン機能を有するかのいずれか1つを有する従来の化合物よりも、脂肪滴を特異的に検出することができ、脂肪滴検出試薬として優れているといえる。
【0076】
【表6】
【0077】
<各置換基の求電子性評価>
試験例3、4から、蛍光発光特性は芳香族スルホニル制御ユニット(すなわち、一般式(I)の「−SO
2−X」基部分)の置換基の求電子性に応じて変化し得ること、並びに、求電子性の低いDNs−NB(2,4−ジニトロベンゼン)は各溶媒下において無蛍光を示し、求電子性の高いTs−NB(4−メチルベンゼン)は逆に全ての溶媒下において高い蛍光強度を示すのに対し、求電子性が両化合物の間にあるMNs−NBはクロロホルム溶媒にのみ高い蛍光スペクトルを示すことが判った。すなわち、芳香族スルホニル制御ユニットの置換基の電子密度を一定の範囲内にすることが、脂肪滴を特異的に検出する化合物を得るのに重要であると判った。
そこで、DNs−NB、MNs−NB及びTs−NBがそれぞれ有する2,4−ジニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−メチルベンジル基を含む、種々のベンゼン誘導体の電子密度を、計算化学的手法を用いて算出した(表7)。なお、ベンゼンのC1の電子密度の値は、密度汎関数法のB3LYP/6−31G*の計算レベルを用いて算出した。計算ソフトウェアはスパルタン’08を使用した。
表7から判るように、ベンゼン環の1位の炭素原子の電子密度が低い程、ベンゼン誘導体は求電子性である。例えば、2,4−ジニトロベンゼンの電子密度は、−0.186(エレクトロン)と最も低い絶対値を示すことから、最も求電子性であるといえる。一方、4−メチルベンゼンの電子密度は最も高い絶対値を示し、最も求電子性が低いこととなる。他の8種類のベンゼン誘導体の求電子性は、2,4−ジニトロベンゼンと4−メチルベンゼンの間にある。
したがって、本発明の化合物は、2,4−ジニトロベンジル基の電子密度(−0.186)よりも求電子性が高く、4−メチルベンジル基の電子密度(−0.243)よりも求電子性が高い基を、NBの5位のアミノ基にスルホニル基を介して結合させることが重要であり、これによりクロロホルム溶媒で顕著に高い蛍光スペクトルを示し、脂肪滴の検出に好適に用いることができる化合物を得ることができると理解できる。
【0078】
【表7】
【0079】
[試験例5]
<脂肪滴形成細胞での検討>
今回合成したMNs−NB及びTs−NBを用いて細胞内脂肪滴のイメージングモデルを実験系で検討した。DNs−NBは細胞内でGSHなどのチオールと反応するため、細胞実験には用いなかった。比較としてNBを用いて検討した。HeLa細胞にオレイン酸(0.2mM)を添加し、37℃、24時間インキュベートすることで、細胞内に脂肪滴を有するモデル細胞を作成した。脂肪滴を内部に形成しているHeLa細胞(脂肪滴(+))に、1μMの各種試薬を添加し、37℃、15分間インキュベートした後に、蛍光顕微鏡を用いてイメージング像を得た(
図6)。いずれの試薬も、脂肪滴部分からの蛍光シグナルを観測できたが、そのシグナル・バックグラウンドに違いがあった。MNs−NBは脂肪滴部分のみから顕著な蛍光シグナルを与えた。一方で、NB及びTs−NBでは、脂肪滴以外の細胞質全体からも非特異的な蛍光シグナルが観測された。
【0080】
さらに、脂肪滴を形成していないHeLa細胞(脂肪滴(−))において、同様のイメージング実験を行ったところ、MNs−NBは全く非特異的な蛍光を示さないのに対して、NB及びTs−NBは細胞質全体に非特異的な蛍光シグナルが観測された(
図6)。続いて、市販の試薬のナイルレッド及びBODIPY493/503を用いて同様に検討した。ナイルレッドは脂肪滴特異性の高い蛍光画像を与えるのに対して、BODIPY493/503は比較的特異性の低い蛍光画像を与えた。脂肪滴を形成していないHeLa細胞において、ナイルレッドとBODIPY493/503はいずれも非特異的なシグナルを細胞質全体に与えた。これらの結果は、MNs−NBの脂肪滴検出における高い特異性を示している。
【0081】
続いて、フローサイトメトリーを用いて脂肪滴の相対的量解析を検討した。フローサイトメーターは、蛍光顕微鏡を用いたイメージング解析と異なり局在化情報は得られないが、数万個以上の高速細胞解析を可能とし、一細胞単位ごとの蛍光強度を頻度分布として与える。フローサイトメーターによる解析は、細胞内のすべてのシグナルを一つの蛍光強度として与えるため、特異性の高い検出試薬が必要になる。先ほど同様に、脂肪滴を形成させたHeLa細胞(脂肪滴(+))と脂肪滴がない通常のHeLa細胞(脂肪滴(−))を調整した。脂肪滴検出用試薬は、NB、MNs−NB、Ts−NB、ナイルレッド及びBODIPY493/503を用いた。HeLa細胞に0.5μM試薬を添加し、37℃、15分間インキュベートした後、フローサイトメーターによりそれぞれの試薬の蛍光強度を測定した。
図7に解析の結果得られた頻度分布を示した。
【0082】
脂肪滴存在細胞及び非存在細胞において分布を比較すると、MNs−NBにおいて最も優位な蛍光強度の分布差が観察された。また、NBとTs−NBにおいては、ほとんど有意な分布差は観測されなかった。一方、BODIPY493/503においては有意な分布差が観察されたが、ナイルレッドは有意な差は観測されなかった。頻度分布から蛍光強度の中央値を算出した(表8)。脂肪滴存在細胞及び非存在細胞における中央値の比(特異度:脂肪滴(+)/脂肪滴(−))は、試薬の特異性を示す指標になる。試薬の中では、MNs−NBが最も高い特異度1.94を与えた。以上、蛍光顕微鏡によるイメージング解析とフローサイトメーターによる相対的量解析の結果から、MNs−NBが最も脂肪滴特異性の高い試薬と確認した。
【0083】
【表8】
【0084】
[試験例6]
<脂肪細胞内脂肪滴のイメージング>
骨髄由来のヒト間葉系細胞株UEET−12細胞株は、様々な細胞に分化することが知られている。デキサメタゾン及びインスリンでこの細胞を処理すると、脂肪細胞に分化する。この場合、脂肪細胞に分化すると内部に脂肪滴を生じる。そのため、脂肪滴をイメージングすることでUEET−12細胞株が脂肪細胞に分化する過程を評価することができる。そこで、MNs−NB試薬を用いてUEET−12の脂肪細胞への分化を識別できるかを、蛍光顕微鏡を用いて検証した。デキサメタゾン及びインスリンを添加したDMEM(10%FBS)を用いてUEET−12を14日間培養(2日おきに継代)することで、脂肪細胞への分化を誘導した(UEET−12(+))。コントロールとして、何も添加してないDMEM(10%FBS)で培養したUEET−12も調整した(UEET−12(−))。UEET−12(+)に5μMの各種試薬を添加し、37℃、15分間インキュベートした後、蛍光顕微鏡にて蛍光シグナルを観測した(
図8)。NBは、UEET−12(+)とUEET−12(−)の比較において、特異的なシグナルを与えなかった。また、ナイルレッド及びBODIPY493/503は、UEET−12(+)とUEET−12(−)においてもわずかな非特異蛍光シグナルを示した。また、UEET−12(+)において、いずれの試薬も脂肪滴以外からの蛍光シグナルが観測されていることから、MNs−NBと比較し特異性が低いといえる。以上の結果から、MNs−NBは、脂肪滴を検出するための優れた試薬であることが明らかとなった。
【0085】
[試験例7]
<イメージングを基礎とした創薬スクリーニング法>
細胞内における脂肪滴形成を阻害できる化合物は、高脂血症治療薬や成人病関連の治療薬として期待できる。今回開発したMNs−NBは優れた細胞内脂肪滴イメージング試薬であることから、イメージングを基盤とした脂肪滴形成阻害剤のハイスループットスクリーニング(HTS)に応用できると考えた(
図9)。そこで、脂肪滴を形成したNIH3T3細胞株を用いて、長期的な脂肪滴イメージングが可能か、また、脂肪滴形成阻害剤の効果が蛍光シグナルで相対的量的に観測できるかを検証した。NIH3T3細胞にオレイン酸を添加し、12時間後、細胞内に脂肪滴形成を顕微鏡明視野にて確認した。その後、オレイン酸を培養液から除去し、MNs−NBを添加して15分後の細胞の蛍光イメージング像を示した(
図10)。細胞株からは、脂肪滴由来の顕著な蛍光シグナルが観測された。さらに、46時間経過した細胞においてもほぼ同じ強度の蛍光シグナルが維持されていた。このことから、少なくとも46時間後でも試薬は安定な蛍光シグナルを与えることが確認できた。
【0086】
次に、細胞レベルで脂肪滴形成阻害剤の効果を観測できるか検証した。阻害剤はトリアクシンC(和光純薬工業株式会社製)を用いた。トリアクシンCは、真菌の代謝産物で、トリアシルグリセロールの合成過程を阻害することで、脂肪滴の形成を阻害するメカニズムを有する。脂肪滴を形成させたNIH3T3細胞に対して、0.8μMトリアクシンCを添加した後、経時的に蛍光イメージングを解析した(
図11)。その結果、4時間後、24時間後と時間を経るごとに、細胞内の蛍光シグナルが減弱するのを確認できた。本基礎実験から、MNs−NBを用いることで細胞レベルでの阻害剤のハイスループットスクリーニング(HTS)が可能であることを確認できた。
【0087】
[試験例8]
<生きている生物個体での脂肪組織のイメージング(1)>
これまでに、蛍光試薬を用いてゼブラフィッシュや線虫における脂肪組織イメージングが報告されている。しかしながら、そのプロトコルは固定化・洗浄を伴うため、生きている生物個体中の脂肪組織のイメージング例は殆ど報告されていない。また、マウスなどの哺乳動物の生体内における脂肪組織イメージングは全く報告されていない。これまでの細胞実験から、MNs−NBは脂肪組織への高い分布特性と脂肪組織での特異的蛍光増強が期待できる。そのため、洗浄操作をできないマウス個体深部の脂肪組織イメージングが可能であると考えた。生きたマウス個体の脂肪組織イメージングは世界で初めての例である。本実験のために、痩せ型マウスと高脂肪食負荷の肥満型マウスを調製した。それぞれのマウスの静脈に、MNs−NB(DMSO溶液)を0.1μM/kg体重の量で注射した。この際、フルオレイン修飾デキストランとHoechst33342を同時に注射することで、マウス組織中の血管を緑色蛍光で染色し、細胞核を青色蛍光で染色した。15分後、それぞれのマウスにおける骨格筋、肝臓を蛍光顕微鏡で観測した。
図12に骨格筋組織像を示した。肥満型マウスでは、MNs−NB由来の強い蛍光シグナルが観察された。これは骨格筋内における異所性脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪に蓄積されずに、内臓や骨格筋に沈着する脂肪)の存在を示している。一方で、痩せ型マウスでは、MNs−NB由来の蛍光シグナルは観察されなかった。
図12に肝臓組織画像を示した。肥満型マウスでは、MNs−NB由来の強い蛍光シグナルが観察された。一方で、痩せ型マウスでは、蛍光シグナルが観察されなかった。以上、MNs−NBを用いることで、世界で初めての生きているマウスでの脂肪組織イメージングに成功した。MNs−NBは、動物個体においても組織浸透性かつ膜透過性を示し、脂肪組織特異的に染色・イメージングできる実用的な試薬であることが明らかとなった。
【0088】
[試験例9]
<生きている生物個体での脂肪組織のイメージング(2)>
生きたマウス個体の内臓脂肪及び心臓における脂肪組織のイメージングを試みた。本実験のため、痩せ型マウスと高脂肪食負荷の肥満型マウスを調製した。それぞれのマウスの尾静脈に、MNs−NB(DMSO溶液)を0.1μM/kg体重の量で注射した。この際、Alexa488標識レクチンとHoechst33342を同時に注射することで、マウス組織中の血管を緑色蛍光で染色し、細胞核を青色蛍光で染色した。30分後、それぞれのマウスにおける内臓脂肪(精巣上体脂肪)および心臓を摘出し、臓器を倒立共焦点顕微鏡により観察した。
図13に内臓脂肪画像を示した。肥満型マウスでは、脂肪細胞の肥大化が生じていた。
図13に心臓画像を示した。肥満型マウスでは、MNs−NB由来の強い蛍光シグナルが観察された。一方で、痩せ型マウスでは、蛍光シグナルが観察されなかった。このことから、MNs−NBを用いることで、痩せ型では見られない、異所性脂肪の心臓での沈着が肥満型マウスによって可視化された。