特許第6241015号(P6241015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241015
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20171127BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20171127BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/62 Z
   H01M4/131
   H01M10/052
【請求項の数】16
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-546410(P2015-546410)
(86)(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公表番号】特表2016-504725(P2016-504725A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】KR2014010137
(87)【国際公開番号】WO2015064987
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2015年6月9日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0128641
(32)【優先日】2013年10月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユ、スン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ドー キュン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヨー スン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュン ホーン
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−319685(JP,A)
【文献】 特開2015−076403(JP,A)
【文献】 特開2015−92477(JP,A)
【文献】 特開2015−92470(JP,A)
【文献】 特開2015−72867(JP,A)
【文献】 特表2014−522078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/13−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩;電解液溶媒;下記化学式(1)で表される化合物及び下記化学式(2)で表される化合物を含み、
前記化学式(1)で表される化合物は、非水電解液の総量を基準に0.01重量%から5重量%であり、
前記化学式(1)で表される化合物と前記化学式(2)で表される化合物との混合比は、1:0.1から2重量比である非水電解液:
【化1】
前記式(1)で、
及びYは、それぞれSiで、
からRは、それぞれ独立的に水素またはCからC10のアルキル基であり;
Aは
【化2】
であり、
ここで、YはSiで、
からRは、それぞれ独立的に水素またはC1からC10のアルキル基であり、
nは、2から4であり、
【化3】
前記式(2)で、
10からR18は、それぞれ独立的に水素またはCからC10のアルキル基である。
【請求項2】
前記化学式(1)のAで、nが3または4の場合、前記Aは、一つの反復単位のPと隣接する他の反復単位のOとが互いに連結され、線形または環、または線形と環が共に連結されて形成される請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
前記化学式(1)で表される化合物は、下記(1−1)から(1−6)の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物である請求項1または2に記載の非水電解液。
【化4】
【化5】
前記式で、Meは、メチル基である。
【請求項4】
前記化学式(2)で表される化合物は、トリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)である請求項1に記載の非水電解液。
【請求項5】
前記リチウム塩は、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiBF、LiBF、LiSbF、LiN(CSO、LiAlO、LiAlCl、LiSOCF及びLiClOからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物である請求項1から4のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項6】
前記電解液溶媒は、線形カーボネート、環状カーボネート、エステル、またはこれらの組み合わせを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項7】
前記線形カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を含み;前記環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を含み;前記エステルは、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、エチルプロピオネート(EP)、メチルプロピオネート(MP)、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、σ−バレロラクトン及びε−カプロラクトンからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を含む請求項6に記載の非水電解液。
【請求項8】
リチウム遷移金属酸化物及び下記化学式(1)で表される化合物を含み、
前記化学式(1)で表される化合物は、リチウム遷移金属酸化物の総量を基準に0.01重量%から5重量%である正極:
【化6】
前記式で、
及びYは、それぞれSiで、
からRは、それぞれ独立的に水素またはCからC10のアルキル基であり;
Aは
【化7】
であり、
ここで、YはSiで、
からRは、それぞれ独立的に水素またはCからC10のアルキル基であり、
nは、2から4である。
【請求項9】
前記化学式(1)のAで、nが3または4の場合、前記Aは、一つの反復単位のPと隣接する他の反復単位のOとが互いに連結され、線形または環、または線形と環が共に連結されて形成される請求項8に記載の正極。
【請求項10】
前記化学式(1)で表される化合物は、下記(1−1)から(1−6)の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物である請求項8または9に記載の正極。
【化8】
【化9】
前記式で、Meは、メチル基である。
【請求項11】
前記正極は、下記化学式(2)で表される化合物をさらに含む請求項8から10のいずれか一項に記載の正極:
【化10】
前記式で、
10からR18は、それぞれ独立的に水素またはCからC10のアルキル基である。
【請求項12】
前記化学式(2)で表される化合物は、トリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)である請求項11に記載の正極。
【請求項13】
前記化学式(1)で表される化合物と前記化学式(2)で表される化合物との混合比は、1:0.1から2重量比である請求項11または12に記載の正極。
【請求項14】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式(3)で表される化合物である請求項8から13のいずれか一項に記載の正極。
Li[LixNiaCobMnc]O2(-0.05≦x≦+0.5、0<a、b、c≦1、x+a+b+c=1) (3)
【請求項15】
請求項1に記載の非水電解液または請求項8に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【請求項16】
前記リチウム二次電池の充電電圧は、4.3Vから5.0Vの範囲である請求項15に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォスフェート系化合物を含む非水電解液及び正極、及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信産業の発展に伴い、電子機器が小型化、軽量化、薄型化及び携帯化されている。その結果、このような電子機器の電源として用いられる電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求を最もよく充足させることができる電池であって、現在これに対する研究が活発に進められている。
【0003】
リチウム二次電池は、正極、負極及び前記正極と負極との間にリチウムイオンの移動経路を提供する電解液とセパレータから構成される電池であって、リチウムイオンが前記正極及び負極で吸蔵及び放出される際の酸化、還元反応によって電気エネルギーを生成する。
【0004】
リチウム二次電池の平均放電電圧は約3.6から3.7Vであって、他のアルカリ電池、ニッケル-カドミウム電池などに比べて放電電圧が高いことが長所のうち一つである。このような高い駆動電圧を出すためには、充放電電圧領域である0から4.2Vで電気化学的に安定した電解液の組成が必要である。
【0005】
リチウム二次電池の初期充電の際、リチウム金属酸化物などの正極活物質から出たリチウムイオンは、黒鉛系などの負極活物質へ移動し、負極活物質の層間に挿入される。この際、リチウムは反応性が強いので、黒鉛系などの負極活物質の表面で電解液と負極活物質を構成する炭素が反応し、Li2CO3、Li2OまたはLiOHなどの化合物を生成する。これらの化合物は、黒鉛系などの負極活物質の表面に一種のSEI(Solid Electrolyte Interface)膜を形成することになる。
【0006】
SEI膜は、イオントンネルの役割を担ってリチウムイオンのみを通過させる。SEI膜は、このようなイオントンネルの効果として、電解液中でリチウムイオンと共に移動する分子量の大きい有機溶媒分子が負極活物質の層間に挿入されて負極構造が破壊されることを防ぐ。よって、電解液と負極活物質の接触を防止することにより、電解液の分解が発生せず、電解液中のリチウムイオンの量が可逆的に維持されて安定的な充放電が維持される。
【0007】
従来は、電解液添加剤を含まないか、劣悪な特性の電解液添加剤を含む電解液の場合、不均一なSEI膜の形成により寿命特性の向上を期待することが難しかった。さらに、電解液添加剤を含む場合も、その投入量を必要量に調節することができない場合、前記電解液添加剤により、高温反応時に正極の表面が分解されるか電解液が酸化反応を起こして、最終的に二次電池の非可逆容量が増加し、寿命特性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許KR 2012-0132811 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする第1技術的課題は、リチウム二次電池の非水電解液に添加剤を少量添加することにより、二次電池の高温及び高電圧での寿命特性を向上させることができる非水電解液を提供することにある。
【0010】
また、本発明の解決しようとする第2技術的課題は、リチウム二次電池の正極に添加剤を少量添加することにより、二次電池の高温及び高電圧での寿命特性を向上させることができる正極を提供することにある。
【0011】
本発明の達成しようとする第3技術的課題は、前記非水電解液または正極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記解決しようとする課題を解決するため、本発明は、リチウム塩;電解液溶媒;及び下記化学式(1)で表される化合物を含む非水電解液を提供するものである:
【化1】
前記式で、Y1及びY2は、それぞれ独立的にSiまたはSnで、R1からR6は、それぞれ独立的に水素またはC1からC10のアルキル基であり;Aは
【化2】
であり、ここで、Y3はSiまたはSnで、R7からR9は、それぞれ独立的に水素またはC1からC10のアルキル基であり、nは、2から4である。
【0013】
また、本発明は、リチウム遷移金属酸化物、及び前記化学式(1)で表される化合物を含む正極を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態による前記化学式(1)の化合物を含む非水電解液及び正極によれば、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができ、特に、45℃以上の高温及び4.3V以上の高電圧で寿命特性を向上させることができる。また、電極の水分含有量、または乾燥及びプレスの有無に係らず、高温及び高電圧で安定的で優れた寿命特性を表わすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例3と4、及び比較例6から8のリチウム二次電池において、正極のロールプレスを行っていない二次電池の45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図2】実施例3と4、及び比較例6から8のリチウム二次電池において、正極のロールプレスを行った二次電池の45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図3】実施例3、及び比較例9及び10のリチウム二次電池において、正極の乾燥及びロールプレスを全て行っていない二次電池の45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図4】実施例3、及び比較例9及び10のリチウム二次電池において、正極の乾燥を行い、ロールプレスは行っていない二次電池の45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図5】実施例3、及び比較例9及び10のリチウム二次電池において、正極の乾燥及びロールプレスを全て行った二次電池の45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図6】実施例3のリチウム二次電池において、正極の乾燥及びロールプレスの実施有無による45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図7】比較例9のリチウム二次電池において、正極の乾燥及びロールプレスの実施有無による45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図8】比較例10のリチウム二次電池において、正極の乾燥及びロールプレスの実施有無による45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
図9】実施例5と6、及び比較例11と12のリチウム二次電池の45℃での寿命特性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的や辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自己の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、リチウム塩;電解液溶媒;及び下記化学式(1)で表される化合物を含む非水電解液を提供することができる:
【化3】
前記式で、Y1及びY2は、それぞれ独立的にSiまたはSnであり、R1からR6は、それぞれ独立的に水素またはC1からC10のアルキル基であり;Aは
【化4】
であり、ここで、Y3はSiまたはSnであり、R7からR9は、それぞれ独立的に水素またはC1からC10のアルキル基であり、nは、2から4である。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)のAで、nが3または4の場合、前記Aは、一つの反復単位のPと隣接する他の反復単位のOとが互いに連結され、線形または環、または線形と環が共に連結されて形成され得る。
【0019】
本発明の一実施形態による前記化学式(1)で表される化合物は、好ましくは、下記(1−1)から(1−6)の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物であり得る:
【化5】
【化6】
前記式で、Meは、メチル基である。
【0020】
一般に、リチウム二次電池に用いられる非水電解液は、電池の充放電中に電解質溶媒が電極の表面で分解されるか、炭素材の負極層間にコインターカレーション(co-intercalation)されて負極構造を崩壊させ、電池の安定性を阻害し得る。
【0021】
前記問題等は、電池の初期充電の際、電解液溶媒の還元により負極の表面に形成されたSEI膜により解決され得るものと知られている。しかし、一般に、前記SEI膜は負極の持続的な保護膜としての役割の遂行に不十分であり、結局、電池が充放電を繰り返すことになれば、寿命及び性能が低下することになる。特に、従来のリチウム二次電池のSEI膜は熱的に安定的でないため、電池が高温下で作動するか放置される場合、時間の経過に伴い増加した熱エネルギーによって崩壊されやすく、これによって、高温下では電池の性能がさらに劣ることになり、特に、SEI膜の崩壊、電解液の分解などによってCO2などのガスが継続的に発生し、電池の耐圧及び厚さが増加する問題がある。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)で表される化合物をリチウム二次電池の非水電解液または電極に添加する場合、リチウム二次電池のSEI膜の破壊による電池厚さの増加及び性能の低下を改善させることができるだけでなく、リチウム二次電池が特に45℃以上の高温及び4.3V以上の高電圧で寿命特性を向上させることができる。
【0023】
特に、前記添加を含む非水電解液の場合、二次電池の製造時に電極の水分含有量、または電極の乾燥及びプレスの有無に係らず、高温及び高電圧で安定的で優れた寿命特性を表わすことができる。
【0024】
具体的に、前記化学式(1)の添加剤は、リチウム塩の陰イオン(anion)を安定化させる役割を担うことができる。例えば、電解液にはLiPF6などのフッ素(F)を含む物質を含む場合、前記フッ素は充放電時に水分あるいはリチウム不純物などと反応してHF(フッ酸)を生成し、このHFによる腐食で電極サイクルが劣化し得るが、前記添加剤は充放電時に生成される水分と電解液との副反応によって生成され得るHFの生成を抑制することができる。
【0025】
また、単純な構造の一般的なフォスフェート系化合物より不安定な構造の化学式(1)の化合物、例えば、化学式(1)でnが2以上のフォスフェート系化合物の構造は、電気化学的に不安定で壊れやすいため電極の被膜の形成に寄与することができ、特に導電性被膜を形成することができる。このような二つの要因が、二次電池への適用時に性能の向上に大きい影響を及ぼすことができる。
【0026】
また、本発明の一実施形態によれば、前記非水電解液は下記化学式(2)で表される化合物をさらに含むことができる:
【化7】
前記式で、R10からR18は、それぞれ独立的に水素またはC1からC10のアルキル基である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(2)で表される化合物は、例えば、トリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)であり得る。
【0028】
前記化学式(1)で表される化合物と前記化学式(2)で表される化合物との混合比は1:0.1から2重量比、好ましくは1:0.2から1重量比、さらに好ましくは1:0.2から0.6重量比であることが好ましい。
【0029】
また、前記化学式(1)で表される化合物は、非水電解液の総量を基準に0.01重量%から5重量%、好ましくは0.1重量%から2重量%であり得る。
【0030】
前記化学式(1)で表される化合物は、その含量が少なすぎると、初期二次電池の作動時に全て消耗され、充放電または長期保存時に寿命の劣化が発生することがあり、その含量が多すぎると、残る添加剤の副反応によって電池の容量及び安定性の特性に悪影響を及ぼし得る。
【0031】
一方、本発明の一実施形態による非水電解液に含まれるリチウム塩は、当分野で通常用いられるリチウム塩を用いることができ、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiBF4、LiBF6、LiSbF6、LiN(C2F5SO2)2、LiAlO4、LiAlCl4、LiSO3CF3及びLiClO4からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物であり得る。
【0032】
また、本発明に用いられる電解液溶媒としては、リチウム二次電池用電解液に通常用いられるものを制限なく用いることができ、例えば、エーテル、エステル、アミド、線形カーボネート、環状カーボネートなどをそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
そのうち代表的に、環状カーボネート、線形カーボネートまたはこれらの混合物であるカーボネート化合物を含むことができる。前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、及びこれらのハロゲン化物からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物がある。
【0034】
また、前記線形カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)及びエチルプロピルカーボネート(EPC)からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物などが代表的に用いられ得るが、これに限られるものではない。
【0035】
特に、前記カーボネート系電解液溶媒のうち環状カーボネートは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びこれらの混合物を含むことが好ましく、これは高粘度の有機溶媒として誘電率が高いため、電解液内のリチウム塩をよく解離させるので、好ましく用いられ得る。
【0036】
また、前記環状カーボネートにジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びこれらの混合物である線形カーボネートを混合して用いることが好ましい。これらは低粘度、低誘電率の線形カーボネートを適当な割合で混合して用いれば、高い電気伝導率を有する電解液を製造することができるので、さらに好ましく用いられ得る。
【0037】
また、前記電解液溶媒のうちエステルとしては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、エチルプロピオネート(EP)、メチルプロピオネート(MP)、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができ、この中でも特に低粘度であるエチルプロピオネート(EP)、メチルプロピオネート(MP)及びこれらの混合物を含むことが好ましい。
【0038】
一方、本発明は、さらに他の実施例により、リチウム遷移金属酸化物及び前記化学式(1)で表される化合物を含む正極を提供することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)のAで、nが3または4の場合、前記Aは、一つの反復単位のPと隣接する他の反復単位のOとが互いに連結され、線形または環、または線形と環が共に連結されて形成され得る。
【0040】
前記化学式(1)の化合物において、好ましい化合物は、下記(1−1)から(1−6)の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物であり得る。
【化8】
【化9】
前記式で、Meは、メチル基である。
【0041】
また、本発明の一実施形態によれば、前記正極は、前記化学式(2)で表される化合物をさらに含むことができる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式(2)で表される化合物は、例えば、トリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)であり得る。
【0043】
このとき、前記化学式(1)で表される化合物と前記化学式(2)で表される化合物との混合比は、1:0.1から2重量比、好ましくは1:0.2から1重量比、さらに好ましくは1:0.2から0.6重量比であることが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、正極に前記化学式(1)で表される化合物を添加剤として含む場合、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができ、特に、45℃以上の高温及び4.3V以上の高電圧で寿命特性を向上させることができる。また、電極の水分含有量、または乾燥及びプレスの有無に係らず、高温及び高電圧で安定的で優れた寿命特性を表わすことができる。
【0045】
また、単純な構造の一般的なフォスフェート系化合物より不安定な構造の化学式(1)の化合物、例えば、化学式(1)でnが2以上のフォスフェート系化合物の構造は、電気化学的に不安定で壊れやすいため電極の被膜の形成に参加することができ、特に導電性被膜を形成することができる。このような要因が二次電池への適用時に性能の向上、特に寿命特性に大きい影響を及ぼすことができる。
【0046】
また、本発明の一実施形態によれば、前記化学式(1)で表される化合物は、正極活物質、添加剤、導電剤及びバインダーを含む正極混合スラリーの総量を基準に0.01重量%から5重量%、好ましくは0.1重量%から2重量%であり得る。
【0047】
前記正極活物質、例えば、リチウム遷移金属酸化物は下記化学式(3)で表される化合物であり得る:
Li[LixNiaCobMnc]O2(-0.05≦x≦+0.5、0<a、b、c≦1、x+a+b+c=1、0.4<c<1) (3)
【0048】
一方、本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、前記正極;負極;前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータ;及び非水電解液を含み、前記正極または非水電解液は、前記化学式(1)の化合物を含むことができる。
【0049】
一方、前記負極活物質には結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独でまたは2種以上が混合されて用いられてよく、好ましくは結晶質炭素で、天然黒鉛と人造黒鉛のような黒鉛質(graphite)炭素であってよい。
【0050】
また、前記セパレータは、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムが単独でまたは2種以上が積層されたものであり得る。これ以外に、通常の多孔性不織布、例えば、高融点の硝子繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができ、これに限られるものではない。
【0051】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、充電電圧が4.3Vから5.0Vの範囲であってよく、前記高電圧で充電しても電池の寿命特性に優れる。
【0052】
また、電極の水分含有量またはプレスの有無に係らず、例えば、45℃以上の高温及び高電圧で安定的で優れた寿命特性を表わすことができる。
【0053】
本発明のリチウム二次電池の外形には特別な制限がないが、缶を用いた円筒状、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などとなり得る。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は幾多の他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0055】
以下、実施例及び実験例を挙げてさらに説明するが、本発明がこれらの実施例及び実験例によって制限されるものではない。
【0056】
<化学式(1)を含む非水電解液の製造>
実施例1
エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:4:3(体積比)の組成を有する電解液溶媒にLiPF6を1M濃度となるように溶解した。また、非水電解液添加剤として、テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1)及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)を3:1の重量比で製造した後、前記混合物に前記添加剤を非水電解液の総量を基準に2重量%の量で添加して非水電解液を製造した。
【0057】
実施例2
前記実施例1の非水電解液の製造において、非水電解液添加剤として、テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート単独で添加したことを除いて、実施例1と同一の方法で非水電解液を製造した。
【0058】
比較例1
前記実施例1の非水電解液の製造において、非水電解液添加剤としてテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)の混合添加剤の代わりに、プロパンスルトン(PS)及びビニレンカーボネート(VC)を1.5:1重量比で製造して添加したことを除いて、実施例1と同一の方法で非水電解液を製造した。
【0059】
比較例2
前記実施例1の非水電解液の製造において、非水電解液添加剤としてテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)の混合添加剤の代わりに、プロパンスルトン(PS)、ビニレンカーボネート(VC)及びエチレンスルフェート(ESa)を0.5:3:1重量比で製造して添加したことを除いて、実施例1と同一の方法で非水電解液を製造した。
【0060】
比較例3
前記実施例1の非水電解液の製造において、非水電解液添加剤としてテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)の混合添加剤の代わりに、プロパンスルトン(PS)及びビニレンカーボネート(VC)を1.5:3重量比で製造して添加し、LiPF6を1.3M濃度で用いたことを除いて、実施例1と同一の方法で非水電解液を製造した。
【0061】
比較例4
前記実施例1の非水電解液の製造において、非水電解液添加剤としてテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)の混合添加剤の代わりに、プロパンスルトン(PS)、ビニレンカーボネート(VC)及びLiBF4を1.5:1:2の重量比で製造して添加したことを除いて、実施例1と同一の方法で非水電解液を製造した。
【0062】
比較例5
前記実施例1の非水電解液の製造において、非水電解液添加剤としてテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)の混合添加剤の代わりに、トリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)単独を添加したことを除いて、実施例1と同一の方法で非水電解液を製造した。
【0063】
[リチウム二次電池の製造]
実施例3
正極活物質としてLi(Li0.2Mn0.55Ni0.15Co0.1)O2 94重量%、導電剤としてカーボンブラック(carbon black)3重量%、バインダーとしてPVdF 3重量%を溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを厚さが20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した。
【0064】
また、負極活物質として炭素粉末、バインダーとしてPVdF、導電剤としてカーボンブラック(carbon black)をそれぞれ96重量%、3重量%及び1重量%にして溶媒であるNMPに添加して負極混合物スラリーを製造した。前記負極混合物スラリーを厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0065】
このように製造された正極と負極をPE分離膜と共に通常の方法でポリマー型電池を製作した後、前記実施例1で製造された非水電解液を注液してリチウム二次電池の製造を完成した。
【0066】
実施例4
非水電解液として、実施例2で製造された非水電解液を用いたことを除いて、実施例3と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0067】
比較例6
非水電解液として、比較例1で製造された非水電解液を用いたことを除いて、実施例3と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0068】
比較例7から比較例10
非水電解液として、比較例2から5で製造された非水電解液をそれぞれ用いたことを除いて、実施例3と同一の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0069】
実験例1
<45℃での寿命特性-正極のロールプレス(roll press)の実施有無に伴うリチウム二次電池の寿命特性の比較>
実施例3と4、及び比較例6から8で製造されたリチウム二次電池(電池容量3.26mAh基準)を45℃で1Cの定電流で4.35Vとなるまで充電し、以後4.35Vの定電圧で充電して充電電流が0.163mAhとなれば充電を終了した。以後、10分間放置した後、2Cの定電流で2.94Vとなるまで放電した。これを1から100回のサイクル及び200回のサイクルで繰り返して行った。その結果をそれぞれ図1及び図2に示した。
【0070】
具体的に検討してみれば、図1は、正極の製造時にロールプレス(roll press)を行っていない正極を用いたリチウム二次電池の寿命特性の結果を示す図であり、図2は、ロールプレス(roll press)を行った正極を用いたリチウム二次電池の寿命特性の結果を示す図である。
【0071】
図1図2を検討してみれば、テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1))を非水電解液の添加剤として含む本発明の実施例3及び4のリチウム二次電池は、正極の製造時のロールプレスの実施有無に係らず100回のサイクルまで傾きが緩慢であった。
【0072】
これに反し、比較例6から8では、正極にロールプレスを行っていない場合、1回のサイクルの実施以後から傾きが急激に落ちて70回のサイクル以後は測定が不可能であり、正極にロールプレスを行った場合、約25回のサイクルまで緩慢な傾きを維持していたが、約50回のサイクルまではサイクル数が増加するほど傾きが著しく減少することを確認することができる。
【0073】
したがって、図1図2の寿命特性の結果、本発明の実施例のように、テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート単独、またはテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)の混合添加剤を用いた場合、正極のロールプレスの実施有無に係らず、200回のサイクルまで優れた寿命性能を見せることを確認した。
【0074】
実験例2
<45℃での寿命特性−正極の乾燥及びロールプレス(roll press)の実施有無に伴うリチウム二次電池の寿命特性の比較>
実施例3、及び比較例9と10で製造されたリチウム二次電池(電池容量3.26mAh基準)を45℃で1Cの定電流で4.35Vとなるまで充電し、以後4.35Vの定電圧で充電して充電電流が0.163mAhとなれば充電を終了した。以後、10分間放置した後、2Cの定電流で2.94Vとなるまで放電した。これを1から30回のサイクルで繰り返して行った。
【0075】
このとき、実施例3、及び比較例9と10で製造されたリチウム二次電池に用いられた正極の乾燥及びロールプレスの実施有無は、下記表1の通りである:
【表1】
【0076】
前記表1に基づく寿命特性の結果を図3から5に示した。
【0077】
図3は、正極の製造時に乾燥及びロールプレス(roll press)を全て行っていない正極を用いたリチウム二次電池の寿命特性の結果であり(A)、図4は、乾燥は行い、ロールプレスを行っていない正極を用いたリチウム二次電池の寿命特性の結果であり(B)、図5は、乾燥及びロールプレス(roll press)を全て行った正極を用いたリチウム二次電池の寿命特性の結果である(C)。
【0078】
具体的に検討してみれば、図3に示す通り、乾燥及びロールプレス(roll press)を全て行っていない正極を用いたリチウム二次電池に対する寿命特性の結果、実施例3は、30回のサイクルまで寿命特性結果のグラフが緩慢であった。これに反し、比較例9及び10の二次電池は、10回目のサイクルから傾きが著しく減少することを確認することができる。特に、電解液添加剤としてTMSPaのみを用いた比較例10のリチウム二次電池の場合、5回目のサイクルから急激に落ちることが分かる。
【0079】
図4及び図5も同様に、実施例3のリチウム二次電池の場合、乾燥及びロールプレスの実施有無と係らず、安定的な寿命特性を見せた。これに反し、比較例9及び10のリチウム二次電池の場合、乾燥及びロールプレスに影響を受け、寿命性能が実施例3に比べて低下した。
【0080】
図6から図8は、図3から図5のグラフをリチウム二次電池別に分離して示したグラフである。
【0081】
図6は、実施例3のリチウム二次電池に対する乾燥及びロールプレスの実施有無に対するグラフである。実施例3のリチウム二次電池は、乾燥及びロールプレスの実施有無に係らず、30回のサイクルまで寿命特性に全て優れることを確認することができる。
【0082】
これに反し、図7は、比較例9のリチウム二次電池に対する乾燥及びロールプレスの実施有無に対するグラフである。比較例9のリチウム二次電池は、乾燥及びロールプレスを全て行った場合、30回のサイクルまで寿命特性に優れていたが、乾燥またはロールプレスを行っていない場合、寿命特性が減少した。
【0083】
一方、図8は、比較例10のリチウム二次電池に対する乾燥及びロールプレスの実施有無に対するグラフである。比較例10のリチウム二次電池は、乾燥及びロールプレスを全て行った場合、30回のサイクルまで寿命特性に優れていたが、乾燥またはロールプレスを行っていない場合、寿命特性が減少した。特に、比較例10のリチウム二次電池は、比較例9に比べても乾燥及びロールプレスの実施有無に影響をさらに受けることが分かる。
【0084】
<化学式(1)を含む正極の製造>
実施例5
テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1))及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)を3:1の重量比で混合して添加剤混合物を製造した後、正極混合物スラリーの全体重量に対して前記添加剤混合物を2重量%、正極活物質としてLi(Li0.2Mn0.55Ni0.15Co0.1)O2 92.12重量%、導電剤としてカーボンブラック(carbon black)2.94重量%、バインダーとしてPVdF 2.94重量%を溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極混合物スラリーを製造した。前記正極混合物スラリーを厚さが20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した。
【0085】
<リチウム二次電池の製造>
また、負極活物質として炭素粉末、バインダーとしてPVdF、導電剤としてカーボンブラック(carbon black)をそれぞれ96重量%、3重量%及び1重量%にして溶媒であるNMPに添加して負極混合物スラリーを製造した。前記負極混合物スラリーを厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0086】
非水電解液は、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:4:3(体積比)の組成を有する電解液溶媒にLiPF6を1M濃度となるように溶解した。前記溶液に非水電解液添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)及びプロパンスルトン(PS)を1:1.5重量比で添加して非水電解液を製造した。
【0087】
このように製造された正極と負極をPE分離膜と共に通常の方法でポリマー型電池を製作した後、製造された前記非水電解液を注液してリチウム二次電池の製造を完成した。
【0088】
実施例6
前記実施例5の正極を製造するとき、添加剤混合物を用いる代わりにテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート単独を用いたことを除いて、実施例5と同一の方法で正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0089】
比較例11
前記実施例5の正極を製造するとき、添加剤混合物を用いないことを除いて、実施例5と同一の方法で正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0090】
比較例12
前記実施例5の正極を製造するとき、添加剤混合物を用いる代わりにTMSPa単独を用いたことを除いて、実施例5と同一の方法で正極及びリチウム二次電池を製造した。
【0091】
実験例3
<45℃での寿命特性-正極の乾燥及びロールプレス(roll press)の実施>
実施例5と6、及び比較例11と12で製造されたリチウム二次電池(電池容量3.26mAh基準)を45℃で1Cの定電流で4.35Vとなるまで充電し、以後4.35Vの定電圧で充電して充電電流が0.163mAhとなれば充電を終了した。以後10分間放置した後、2Cの定電流で2.94Vとなるまで放電した。これを1から100回のサイクルで繰り返して行った。
【0092】
このとき、実施例5と6、及び比較例11と12で製造されたリチウム二次電池に用いられた正極の乾燥及びロールプレスは全て行われた。前記寿命特性の結果は図9に示した。
【0093】
図9を検討してみれば、添加剤としてテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1))を正極に含む本発明の実施例5と6のリチウム二次電池は、100回のサイクルまで傾きが緩慢であった。
【0094】
また、正極の添加剤としてテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1))及びTMSPaを混合した添加剤混合物を用いた実施例5の寿命特性が、テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1))を単独で用いた実施例6に比べて100回のサイクルまでさらに優れていたが、正極にテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェートを含んでいない比較例11及び12に比べて著しい差を見せた。
【0095】
具体的に、本発明の実施例5と6は、正極添加剤を用いていない比較例11に比べ、90回目のサイクルでは約25%程度の向上を見せ、テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェートを含まず、TMSPaだけを添加した比較例12に比べ、100回目のサイクルでは約150%以上の放電容量の向上を見せた。
【0096】
したがって、図9のリチウム二次電池の寿命特性の結果、本発明の実施例のように、テトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1))単独、またはテトラ(トリメチルシリル)ピロフォスフェート(化合物(1))及びトリス(トリメチルシリル)フォスフェート(TMSPa)の混合添加剤を用いた場合、化学式(1)で表される化合物を含んでいない比較例等に比べ、高温及び高電圧で優れた寿命性能を見せることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の一実施形態による前記化学式(1)の化合物を含む非水電解液及び正極によれば、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができ、特に、45℃以上の高温及び4.3V以上の高電圧で寿命特性を向上させることができる。よって、本発明の一実施形態による非水電解液及び正極は、リチウム二次電池の分野に有用に用いられ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9