(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記閾値決定部は、前記程度の異なる複数の疑似的な欠陥を選択するための選択画面を表示するための表示情報を出力し、前記選択画面に対する操作に応じて前記選択された欠陥を認識することを特徴とする請求項2に記載の画像検査装置。
前記閾値決定部は、前記程度の異なる複数の疑似的な欠陥が、前記疑似的な欠陥の程度に対して不規則に配置されるように前記選択画面を表示するための表示情報を出力することを特徴とする請求項3に記載の画像検査装置。
画像形成装置によって記録媒体上に画像形成出力された画像を読み取った読取画像の検査を行う画像検査装置において前記画像形成装置が画像形成出力を実行するための出力対象画像を取得し、前記読取画像の検査を行うための検査用画像を生成し、前記生成された検査用画像と前記読取画像との差分を所定の閾値と比較した比較結果に基づいて前記読取画像の欠陥を判定する画像検査方法であって、
前記所定の閾値を決定するための画像の正常な状態が表示された閾値決定用正常画像についての前記検査用画像である正常検査用画像を生成し、
前記閾値決定用正常画像に疑似的に欠陥が付加された閾値決定用欠陥画像を読み取った欠陥読取画像と正常検査用画像との差分を生成し、
前記欠陥読取画像と前記正常検査用画像との差分に基づいて、前記所定の閾値を決定することを特徴とする画像検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、画像形成出力による出力結果を読み取った画像とマスター画像とを比較することにより出力結果を検査する検査装置を含む画像形成システムにおいて、比較結果により画像の欠陥を判定するための閾値の設定を、ユーザの意図する検査精度に従って容易且つ好適に行うための処理を特徴として説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る画像形成システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成システムは、DFE(Digital Front End)1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4を含む。DFE1は、受信した印刷ジョブに基づいて印刷出力するべき画像データ、即ち出力対象画像であるビットマップデータを生成し、生成したビットマップデータをエンジンコントローラ2に出力する。
【0015】
エンジンコントローラ2は、DFE1から受信したビットマップデータに基づいてプリントエンジン3を制御して画像形成出力を実行させる。また、本実施形態に係る
エンジンコントローラ2は、DFE1から受信したビットマップデータを、プリントエンジン3による画像形成出力の結果を検査装置4が検査する際に参照するための検査用画像の元となる情報として検査装置4に送信する。
【0016】
プリントエンジン3は、エンジンコントローラ2の制御に従い、ビットマップデータに基づいて記録媒体である用紙に対して画像形成出力を実行すると共に、出力した用紙を読取装置で読み取って生成した読取画像データを検査装置4に入力する。尚、記録媒体としては、上述した用紙の他、フィルム、プラスチック等のシート状の材料で、画像形成出力の対象物となるものであれば採用可能である。検査装置4は、エンジンコントローラ2から入力されたビットマップデータに基づいてマスター画像を生成する。そして、検査装置4は、プリントエンジン3から入力された読取画像を上記生成したマスター画像と比較することにより、出力結果の検査を行う画像検査装置である。
【0017】
ここで、本実施形態に係るエンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4の機能ブロックを構成するハードウェア構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る検査装置4のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2においては、検査装置4のハードウェア構成を示すが、エンジンコントローラ2及びプリントエンジン3についても同様である。
【0018】
図2に示すように、本実施形態に係る検査装置4は、一般的なPC(Personal Computer)やサーバ等の情報処理装置と同様の構成を有する。即ち、本実施形態に係る検査装置4は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス90を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60、操作部70及び専用デバイス80が接続されている。
【0019】
CPU10は演算手段であり、検査装置4全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。
【0020】
I/F50は、バス90と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、ユーザが検査装置4の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス等、ユーザが検査装置4に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0021】
専用デバイス80は、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4において、専用の機能を実現するためのハードウェアであり、プリントエンジン3の場合は、紙面上に画像形成出力を実行するプロッタ装置や、紙面上に出力された画像を読み取る読取装置である。また、エンジンコントローラ2、検査装置4の場合は、高速に画像処理を行うための専用の演算装置である。このような演算装置は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成される。
【0022】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るエンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0023】
図3は、本実施形態に係るエンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係るエンジンコントローラ2は、データ取得部201、エンジン制御部202、ビットマップ送信部203を含む。また、プリントエンジン3は、印刷処理部301及び読取装置302を含む。また、検査装置4は、読取画像取得部401、マスター画像処理部402、検査制御部403及び比較検査部404を含む。
【0024】
データ取得部201は、DFE1から入力されるビットマップデータを取得し、エンジン制御部202及びビットマップ送信部203夫々を動作させる。ビットマップデータは、画像形成出力するべき画像を構成する各画素の情報であり、データ取得部201が画素情報取得部として機能する。エンジン制御部202は、データ取得部201から転送されたビットマップデータに基づき、プリントエンジン3に画像形成出力を実行させる出力実行制御部である。ビットマップ送信部203は、データ取得部201が取得したビットマップデータを検査装置4に送信する。
【0025】
印刷処理部301は、エンジンコントローラ2から入力されるビットマップデータを取得し、印刷用紙に対して画像形成出力を実行し、印刷済みの用紙を出力する。即ち、印刷処理部301が画像形成装置として機能する。本実施形態に係る印刷処理部301は、電子写真方式の一般的な画像形成機構によって実現されるが、インクジェット方式等、他の画像形成機構を用いることも可能である。読取装置302は、印刷処理部301によって印刷が実行されて出力された印刷用紙の紙面上に形成された画像を読み取り、読取データを検査装置4に出力する。読取装置302は、例えば印刷処理部301によって出力された印刷用紙の搬送経路に設置されたラインスキャナであり、搬送される印刷用紙の紙面上を走査することによって紙面上に形成された画像を読み取る。
【0026】
ここで、印刷処理部301及び読取装置302の機械的な構成について、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る印刷処理部301は、無端状移動手段である搬送ベルト105に沿って各色の画像形成部106が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ101から給紙ローラ102と分離ローラ103とにより分離給紙される用紙(記録媒体の一例)104に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである搬送ベルト105に沿って、この搬送ベルト105の搬送方向の上流側から順に、複数の画像形成部(電子写真プロセス部)106BK、106M、106C、106Yが配列されている。
【0027】
これら複数の画像形成部106BK、106M、106C、106Yは、形成するトナー画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。画像形成部106BKはブラックの画像を、画像形成部106Mはマゼンタの画像を、画像形成部106Cはシアンの画像を、画像形成部106Yはイエローの画像をそれぞれ形成する。尚、以下の説明においては、画像形成部106BKについて具体的に説明するが、他の画像形成部106M、106C、106Yは画像形成部106BKと同様であるので、その画像形成部106M、106C、106Yの各構成要素については、画像形成部106BKの各構成要素に付したBKに替えて、M、C、Yによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
【0028】
搬送ベルト105は、回転駆動される駆動ローラ107と従動ローラ108とに架け渡されたエンドレスのベルト、即ち無端状ベルトである。この駆動ローラ107は、不図示の駆動モータにより回転駆動させられ、この駆動モータと、駆動ローラ107と、従動ローラ108とが、無端状移動手段である搬送ベルト105を移動させる駆動手段として機能する。
【0029】
画像形成に際しては、回転駆動される搬送ベルト105に対して、最初の画像形成部106BKが、ブラックのトナー画像を転写する。画像形成部106BKは、感光体としての感光体ドラム109BK、この感光体ドラム109BKの周囲に配置された帯電器110BK、光書き込み装置200、現像器112BK、感光体クリーナ(図示せず)、除電器113BK等から構成されている。光書き込み装置200は、夫々の感光体ドラム109BK、109M、109C、109Y(以降、総じて「感光体ドラム109」という)に対して光を照射するように構成されている。
【0030】
画像形成に際し、感光体ドラム109BKの外周面は、暗中にて帯電器110BKにより一様に帯電された後、光書き込み装置200からのブラック画像に対応した光源からの光により書き込みが行われ、静電潜像が形成される。現像器112BKは、この静電潜像をブラックトナーにより可視像化し、このことにより感光体ドラム109BK上にブラックのトナー画像が形成される。
【0031】
このトナー画像は、感光体ドラム109BKと搬送ベルト105とが当接若しくは最も接近する位置(転写位置)で、転写器115BKの働きにより搬送ベルト105上に転写される。この転写により、搬送ベルト105上にブラックのトナーによる画像が形成される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム109BKは、外周面に残留した不要なトナーを感光体クリーナにより払拭された後、除電器113BKにより除電され、次の画像形成のために待機する。
【0032】
以上のようにして、画像形成部106BKにより搬送ベルト105上に転写されたブラックのトナー画像は、搬送ベルト105のローラ駆動により次の画像形成部106Mに搬送される。画像形成部106Mでは、画像形成部106BKでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム109M上にマゼンタのトナー画像が形成され、そのトナー画像が既に形成されたブラックの画像に重畳されて転写される。
【0033】
搬送ベルト105上に転写されたブラック、マゼンタのトナー画像は、さらに次の画像形成部106C、106Yに搬送され、同様の動作により、感光体ドラム109C上に形成されたシアンのトナー画像と、感光体ドラム109Y上に形成されたイエローのトナー画像とが、既に転写されている画像上に重畳されて転写される。こうして、搬送ベルト105上にフルカラーの中間転写画像が形成される。
【0034】
給紙トレイ101に収納された用紙104は最も上のものから順に送り出され、その搬送経路が搬送ベルト105と接触する位置若しくは最も接近する位置において、搬送ベルト105上に形成された中間転写画像がその紙面上に転写される。これにより、用紙104の紙面上に画像が形成される。紙面上に画像が形成された用紙104は更に搬送され、定着器116にて画像を定着された後、画像形成装置の外部に排紙される。
【0035】
定着器116においては、紙面上に転写されたトナー画像が熱によって紙面に定着される。そのため、転写紙が高温の定着器116を通過することにより水分が蒸発する等して、用紙が収縮することにより転写紙上の画像が元画像よりも小さくなる。このように画像が小さくなった転写紙が読取装置302によって読み取られると、元画像よりも小さい読取画像が生成される。
【0036】
尚、両面印刷の場合、画像が定着された用紙は反転経路に搬送され、反転された上で再度転写位置に搬送される。片面または両面に画像が形成されて定着された用紙は、
読取装置302に搬送される。これにより、読取装置302により、片面または両面が撮像され、検査対象の画像となる読取画像が生成される。
【0037】
次に、再度
図3を参照し、検査装置4の各構成について説明する。読取画像取得部401は、プリントエンジン3において印刷用紙の紙面が読取装置302によって読み取られて生成された読取画像の情報を取得し、比較検査部404に検査対象の画像として入力する。マスター画像処理部402は、上述したようにエンジンコントローラ2から入力されたビットマップデータを取得し、上記検査対象の画像と比較するための検査用画像であるマスター画像を生成する。即ち、マスター画像処理部402が、読取画像の検査を行うための検査用画像であるマスター画像を出力対象画像に基づいて生成する検査用画像生成部として機能する。マスター画像
処理部402によるマスター画像の生成処理については後に詳述する。
【0038】
検査制御部403は、検査装置4全体の動作を制御する制御部であり、検査装置4に含まれる各構成は検査制御部403の制御に従って動作する。また、検査制御部403は、本実施形態の要旨に係る構成として、閾値決定用マスター画像生成制御部403a、閾値決定用比較検査制御部403b、閾値決定処理部403c及びUI制御部403dを含む。比較検査部404は、読取画像取得部401から入力される読取画像とマスター画像処理部402が生成したマスター画像とを比較し、意図した通りの画像形成出力が実行されているか否かを判断する画像検査部であり、膨大な計算量を迅速に処理するために上述したようなASICによって構成される。
【0039】
次に、マスター画像処理部402に含まれる機能の詳細について
図5を参照して説明する。
図5は、マスター画像処理部402内部の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、マスター画像処理部402は、少値多値変換処理部421、解像度変換処理部422、色変換処理部423及びマスター画像出力部424を含む。尚、本実施形態に係るマスター画像処理部402は、
図2において説明した専用デバイス80、即ち、ASICとして構成されたハードウェアが、ソフトウェアの制御に従って動作することにより実現される。尚、比較検査部404及びマスター画像処理部402は、上述したようにASICによって構成されるが、CPU10によるソフトウェアモジュールによって実現することも可能である。
【0040】
少値多値変換処理部421は、有色/無色で表現された二値画像に対して少値/多値変換処理を実行して多値画像を生成する。本実施形態に係るビットマップデータは、プリントエンジン3に入力するための情報であり、プリントエンジンはCMYK(Cyan,Magenta,Yellow,blacK)各色二値の画像に基づいて画像形成出力を実行する。これに対して検査対象の画像である読取画像は、基本三原色であるRGB(Red,Green,Blue)各色多階調の多値画像であるため、少値多値変換処理部421により先ず二値画像が多値画像に変換される。多値画像としては、例えばCMYK各8bitで表現された画像を用いることができる。
【0041】
尚、本実施形態においては、プリントエンジン3がCMYK各色二値の画像に基づいて画像形成出力を実行する場合を例とし、マスター画像処理部402に少値多値変換処理部421が含まれる場合を例とするが、これは一例である。即ち、プリントエンジン3が多値画像に基づいて画像形成出力を実行する場合は、少値多値変換処理部421は省略可能である。
【0042】
解像度変換処理部422は、少値多値変換処理部421によって生成された多値画像の解像度を、検査対象の画像である読取画像の解像度に合わせるように解像度変換を行う。本実施形態においては、読取装置302は200dpiの読取画像を生成するため、解像度変換処理部422は、少値多値変換処理部421によって生成された多値画像の解像度を200dpiに変換する。
【0043】
色変換処理部423は、解像度変換処理部422によって解像度が変換された画像を取得して色変換を行う。上述したように、本実施形態に係る読取画像はRGB形式の画像であるため、色変換処理部423は、解像度変換処理部422によって解像度変換された後のCMYK形式の画像をRGB形式に変換する。これにより、画素毎にRGB各色8bit(合計24bit)で表現された200dpiの多値画像が生成される。
【0044】
マスター画像出力部424は、少値多値変換処理部421、解像度変換処理部422及び色変換処理部423によって生成されたマスター画像を、検査制御部403に出力する。検査制御部403は、マスター画像処理部402から取得したマスター画像に基づいて比較検査部404に画像比較処理を実行させ、その比較結果を取得する。
【0045】
比較検査部404においては、上述したようにRGB各色8bitで表現された200dpiの読取画像及びマスター画像を対応する画素毎に比較し、夫々の画素毎に上述したRGB各色8bitの画素値の差分値を算出する。そのようにして算出した差分値と閾値との大小関係に基づき、比較検査部404は、読取画像における欠陥の有無を判断する。即ち、比較検査部404が、検査用画像と読取画像との差分に基づいて読取画像の欠陥を判定する画像検査部として機能する。尚、夫々の画素毎に算出された差分値が夫々の画素位置に関連付けられて画像状に構成された情報は、「差分画像」と呼ばれる。
【0046】
尚、差分値と閾値との大小関係の比較方法として、比較検査部404は、夫々の画素について算出された差分値を画像上の所定範囲毎に合計し、その合計値について設定された閾値と合計値とを比較する。このように各画素の差分値を合計する所定範囲としては、例えば20ドット四方の範囲である。即ち、本実施形態に係る「閾値」とは、このような差分値を合計する範囲(以降、「欠陥判定単位範囲」とする)についての差分値の合計に対して設けられている値である。従って、本実施形態に係る比較検査部404は、読取画像における欠陥の有無を示す情報として、差分値の合計が閾値を上回った欠陥判定単位範囲の画像上の位置の情報を出力する。この画像上の位置の情報としては、例えば画像上の座標の情報が用いられる。
【0047】
読取画像とマスター画像との比較に際して、比較検査部404は、
図15に示すように、所定範囲毎に分割された読取画像を、分割された範囲に対応するマスター画像に重ね合わせて各画素の画素値、即ち濃度の差分算出を行う。さらに、分割された範囲をマスター画像に重ね合わせる位置を縦横にずらしながら、算出される差分値が最も小さくなる位置を正確な重ね合わせの位置として決定すると共に、その際に算出された差分値を比較結果として採用する。
図15に示すように方眼状に区切られている夫々のマスが、上述した欠陥判定単位範囲である。
【0048】
また、上述した「閾値」は、ASICとして構成される比較検査部404に対して、レジスタ設定によって与えられる。即ち、CPU10がプログラムに従って演算を行うことにより構成される検査制御部403が、
図16に示すように設定されている閾値の値を、比較検査部404において閾値を指定するために設けられているレジスタに書き込むことにより、上述した「閾値」が設定される。
【0049】
また、他の方法として、夫々の画素について算出された差分値と閾値との比較結果に基づいてまず夫々の画素が正常か欠陥かを判断し、欠陥と判断された画素数のカウント値とそれについて設定された閾値とを比較する方法がある。
【0050】
このようなシステムにおいて、本実施形態に係る要旨は、比較検査部404が上述した比較処理において用いる閾値の設定に際して、ユーザの意図した通りの検査精度に応じた閾値の設定を容易に実現することにある。そのため、本実施形態においては、検査制御部403に含まれる夫々のモジュールが、検査装置4各部の機能を用いる事により、上記閾値を決定する。以下、本実施形態に係る閾値の設定動作について説明する。
【0051】
図6は、本実施形態に係る閾値の設定動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態に係る閾値の設定動作においては、まずエンジンコントローラ2の制御に従ってプリントエンジン3が閾値決定用画像の印刷を実行する(S601)。
図7(a)〜(c)は、本実施形態に係る閾値決定用画像の例を示す図である。
図7(a)は、本実施形態に係る閾値決定用画像のうち、疑似的な欠陥が付加されていない基準パターン701、即ち、閾値を決定するための画像の正常な状態が表示された閾値決定用正常画像を示す図である。
図7(a)に示すように、本実施形態に係る基準パターン701は、所定の色のマークが横方向、即ちX方向に4列、縦方向、即ちY方向に5行にわたって描画されて形成されている。
図7(a)に示す画像がエンジンコントローラ2の制御によってプリントエンジン3から第1画像として出力される。
【0052】
これに対して、
図7(b)、(c)に示す画像は、上記閾値決定用正常画像に対して程度の異なる複数の疑似的な欠陥が付加された閾値決定用欠陥画像である。
図7(b)は、本実施形態に係る閾値決定用画像のうち、上述した基準パターンに対して色の濃度の異なる疑似的な欠陥が付加された画像(以降、濃度変化欠陥パターン702とする)を示す図である。
図7(b)に示すように、濃度変化欠陥パターン702には、X方向及びY方向に配列された夫々のマークについて、態様の異なる疑似欠陥が付加された画像である。
図7(b)に示す画像がエンジンコントローラ2の制御によってプリントエンジン3から第2画像として出力される。
【0053】
ここで、本実施形態に係る濃度変化欠陥パターンにおいては、X方向に配列された各マークについては、夫々異なる色の疑似欠陥が付加され、Y方向に配列された各マークについては、夫々異なる濃度の疑似欠陥が付加されている。即ち、
図7(b)に示す画像は、色及び程度の異なる複数の疑似的な欠陥が付加された画像である。
図8は、
図7(b)に示す濃度変化欠陥パターンを出力する際に、エンジンコントローラ2のエンジン制御部202が参照する情報(以降、濃度変化欠陥パターン情報)である。尚、
図8の濃度変化欠陥パターン情報は、例えば、エンジン制御部202を構成するRAM20、ROM30、HDD40等の記憶媒体や、外部の記憶媒体に格納されている。
【0054】
図8において“PC”、“PM”、“PY”、“PK”は、CMYK各色についてのパターンの色を示す値である。
図8に示すように、濃度変化欠陥パターン情報においては、X方向4列、Y方向5行の夫々のパターンについて、付与するべき疑似欠陥の色の情報が設定されている。例えば、1行1列目のパターンには、“PC”に“d
1”を加え、他のMYKについてはパターンと同じ値の色が疑似欠陥として付与される。そして、2列目は“PM”に、3列目は“PY”に、4列目は“PK”に、夫々値が加算されることにより、元のパターンとは異なる色の疑似欠陥が付与されることとなる。
【0055】
また、
図8に示すように、Y方向においては、“+d
1”、“+d
2”、“+d
3”・・・のように、加算するべき値が変化していく。ここで、本実施形態においては、“d
n”のnの値が大きいほど、濃度が高くなることを示す。即ち、Y方向においては、疑似欠陥として値を加算する色の濃度が濃くなる。この濃度の変化については、
図7(b)においては、点線や破線等の線の態様の違いで表現している。
【0056】
ここで、
図7(b)に示すような濃度変化欠陥パターンの出力に際して、エンジン制御部202は、濃度を変化させる範囲の設定を取得し、その取得した範囲の設定に基づいて
図8に示す“d
n”の値を決定する。この範囲の設定は、予めエンジン制御部202に対して設定されている値であっても良いし、濃度変化欠陥パターンの出力に際してユーザが手動で設定しても良い。
【0057】
上記範囲の設定値の下限を“d
m”、上限を“d
M”とすると、“d
n”は以下の式(1)によって求めることができる。
【数1】
上記式(1)のような計算により、“d
1”〜“d
5”の5つの値によって、“d
m”〜“d
M”までの範囲が等分されて濃度の加算値として用いられる。
【0058】
図7(c)は、本実施形態に係る閾値決定用画像のうち、上述した基準パターンに対して線の幅の異なる疑似的な欠陥が付加された画像(以降、幅変化欠陥パターン703とする)を示す図である。
図7(c)に示すように、幅変化欠陥パターン703は、濃度変化
欠陥パターン702と同様に、X方向及びY方向に配列された夫々のマークについて、態様の異なる疑似欠陥が付加された画像である。即ち、
図7(c)に示す画像も、
図7(b)と同様に、色及び程度の異なる複数の疑似的な欠陥が付加された画像である。
図7(c)に示す画像がエンジンコントローラ2の制御によってプリントエンジン3から第3画像として出力される。幅変化欠陥パターン703は、濃度
変化欠陥パターン702と同様に、X方向に配列された各マークについては、夫々異なる色の疑似欠陥が付加されている。Y方向に配列された各マークについては、夫々異なる幅の疑似欠陥が付加されている。
【0059】
エンジン制御部202は、
図7(c)に示すような疑似欠陥の幅の変化についても、濃度変化欠陥パターンと同様に、設定された範囲の間で疑似欠陥の幅を変化させる。そのような幅の変化は、上記式(1)と同様の計算により、“d
n”として疑似欠陥の幅を求めることにより可能である。尚、エンジン制御部202は、このようにして算出した“d
n”を後の処理において用いるために記憶しておく。
【0060】
尚、本実施形態においては、エンジン制御部202が、
図7(a)〜(c)に示すようなパターンの画像形成出力を実行するためのビットマップデータを生成する場合を例とするが、DFE1にそのような機能を持たせても良い。
【0061】
このようにS601の処理が実行されると、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4が上述したような夫々の処理を実行し、エンジンコントローラ2から検査装置4に対してビットマップデータが送信されると共に、プリントエンジン3においては出力された用紙の読取画像が読取装置302によって生成され、検査装置4に入力される。これに対して、閾値の設定動作における検査装置4は、エンジンコントローラ2から入力されたビットマップデータのうち、第1画像のビットマップデータに基づいてマスター画像を生成する(S602a)と共に、第2画像及び第3画像の読取画像を取得する(S602b)。
【0062】
S602aにおいては、検査制御部403の閾値決定用マスター画像生成制御部403aがマスター画像処理部402を制御し、エンジンコントローラ2から入力される第1画像〜第3画像のビットマップデータのうち第1画像のみについてマスター画像を生成させる。このマスター画像は、上述した閾値決定用正常画像についての検査用画像、即ち正常検査用画像である。
【0063】
また、S602bにおいて、検査制御部403の閾値決定用比較検査制御部403bは、読取画像取得部401を制御し、プリントエンジン3から入力される第1画像〜第3画像の読取画像のうち第1画像の読取画像を破棄させて第2画像及び第3画像の読取画像を取得させる。この読取画像は、上述した閾値決定用欠陥画像を読み取った欠陥読取画像である。
【0064】
そして、検査制御部403の閾値決定用比較検査制御部403bは、比較検査部404を制御し、上述した第1画像のマスター画像と、第2、第3画像の読取画像との比較処理を実行させて第2画像、第3画像の夫々に付いて上述したように差分値を算出させ、差分画像を取得する(S603)。S603においては、
図7(b)、(c)に示すような色及び程度の異なる複数の疑似的な欠陥毎に、マスター画像と読取画像との差分が算出される。
【0065】
第2画像、第3画像について、マスター画像との差分画像を取得すると、検査制御部403の閾値決定処理部403cは、
図7(a)〜(c)において説明したように、行列上に配置された夫々のマーク毎に、疑似的に付加された欠陥を欠陥として検知するための閾値を算出する(S604)。S604の処理により、
図9に示すように、X方向4列、Y方向5行の夫々のマーク毎に、“th11”、“th12”・・・のように閾値が算出される。即ち、S604においては、色及び程度の異なる複数の疑似的な欠陥毎に生成された差分について、複数の疑似的な欠陥夫々を欠陥として判定するための閾値が算出される。このようにして算出された夫々の閾値を「個別閾値」とする。尚、
図9に示す情報は、検査装置4を構成するRAM20、ROM30、HDD40等の記憶媒体や、外部の記憶媒体に格納される。
【0066】
尚、
図9において1つのテーブルを示しているが、本実施形態においては、第1画像及び第2画像に含まれる夫々のマークについて個別閾値が設定されるため、
図9に示すようなテーブルが第1画像及び第2画像の夫々について生成される。
【0067】
ここで、
図6のS604の処理の詳細について、
図10を参照して説明する。
図10に示すように、閾値決定処理部403cは、先ず初期の閾値を設定する(S1001)。この初期の閾値とは、あらゆる欠陥が欠陥として抽出されないような閾値である。即ち、上述したように欠陥判定単位範囲の差分値を全て合計した値が大きくても欠陥と判断されないような大きな値が初期閾値として設定される。
【0068】
初期閾値を設定すると、閾値決定処理部403cは、設定された閾値に従って比較検査部303を制御して欠陥判別処理を実行させる(S1002)。ここで、S1002においては、
図7(a)〜(c)に示す夫々のマークが表示されている領域毎に欠陥判別処理を行う。これに対して、通常の欠陥判別処理においては、画像全体について欠陥判別処理を行う。そのため、S1002の判断と通常の判断とで、対象となる画素数が異なるため、算出される差分値の母数が異なる。この母数の変化に対応するため、S1002において適用する閾値は、画像全体の画素数と夫々のマークが表示されている領域の画素数との比率に応じて調整された値を用いる。この他、S1001において設定される初期閾値を夫々のマークが表示されている領域に画素数に対応した値としても良い。
【0069】
S1002の判断の結果、夫々のマークの領域について、新たに欠陥として判定された領域があれば(S1003/YES)、閾値決定処理部403cは、現在設定されている閾値を、新たに欠陥として判定された領域についての閾値として
図9に示すテーブルに設定する(S1004)。これにより、
図9に示す“th11”、“th12”等の1つの閾値が設定される。
【0070】
S1004の処理の後、閾値決定処理部403cは、全ての領域について閾値を設定したか否か確認し(S1005)、
図9に示すように全ての閾値が設定されていれば(S1005/YES)、そのまま処理を終了する。他方、S1002の処理の結果新たに欠陥として判定された領域がなかった場合(S1003/NO)、若しくは全閾値が設定されていない場合(S1005/NO)、閾値決定処理部403cは、欠陥として判定される可能性が上がるように閾値を変更し(S1006)、S1002からの処理を繰り返す。
【0071】
このように、本実施形態に係る閾値決定処理部403cは、欠陥として判定される可能性が上がるように徐々に閾値を変更しながら、全ての領域が欠陥として判定されるまで欠陥判別処理を繰り返す。これにより、
図7(b)、(c)において説明したように、程度の異なる様々な疑似欠陥を抽出するための閾値として、実際の欠陥判別処理に応じた閾値を決定することができる。また、本実施形態においては、そのタイミングにおいて読取装置302によって生成された読取画像に基づいて判断されるため、読取装置302のリアルタイムでの状態に応じた閾値を設定することが可能である。
【0072】
尚、上述したように、S1002において適用される閾値は、画像全体についての欠陥を判断するための閾値とは異なる。そのため、その時点で設定されている閾値を画素数に応じて変倍した値をS1002において閾値として用いた場合、S1004においてテーブルに設定される閾値は、その時点で設定されている閾値である。これに対して、その時点で設定されている閾値をS1002において閾値として用いた場合、S1004においてテーブルに設定される閾値は、その時点で設定されている閾値を画素数に応じて変倍した値である。
【0073】
尚、欠陥判別の処理として、全体の画素数に対して差分値が所定以上である画素数の割合を判断対象の情報とし、その割合、即ちパーセンテージとして閾値が設定されている場合は、判断対象とする画素の母数に関わらず同一の閾値を用いることが可能である。
【0074】
S604の処理が完了すると、UI制御部403dは、ユーザに閾値を設定させるためのGUI(Graphical User Interface)を表示装置に表示させ、ユーザの操作に応じて選択結果を受け付ける(S605)。ここで、S605において表示されるGUI(以降、「閾値選択画面」とする)を
図11(a)、(b)に示す。
図11(a)、(b)に示す画面は、検査装置4に接続されているLCD60等の表示装置に表示される。
図11(a)は、S605において表示されるGUIの初期画面、即ち、ユーザによる選択がされていない状態の画面を示す図である。
【0075】
図11(a)に示すように、閾値選択画面においては、
図7(b)、(c)において説明した濃度変化欠陥パターン及び幅変化欠陥パターンの画像が表示されている。このような画像は、例えば、読取画像取得部401が取得した第2画像及び第3画像により表示可能である。ユーザは、
図11(a)に示すような画面において、欠陥として識別したいマークを選択する。
【0076】
図11(a)に示すような画面においてマークを選択する際、ユーザは画面に対して操作を行うが、マークの選択については、画面ではなく出力された用紙を見て行う。これにより、実際に紙に出力された状態の欠陥を判断することが可能となる。
図11(b)は、ユーザによって欠陥として識別するべき画像が選択された状態を示す図である。
図11(b)に示すように、ユーザによって選択されたマークは、枠で囲われることによって強調表示される。
【0077】
このようにマークが選択されると、UI制御部403dがその選択結果を取得し、閾値決定処理部403cは、
図9において説明したテーブルを参照することにより、夫々のマークを欠陥として検出するための閾値を設定することが可能となる。即ち、閾値決定処理部403cは、S605においてUI制御部403dがユーザの選択を受け付けると、
図11(b)に示すようにユーザによって選択されたマークに対応する個別閾値を
図9に示すテーブルから抽出する。即ち、UI制御部403dは、
図11(a)に示すような画面に対する操作に応じて、ユーザによって選択された欠陥を認識する。
【0078】
具体的には、
図11(b)に示すように欠陥が選択されると、閾値決定処理部403cは、選択された欠陥の画像上の配置位置の情報を取得し、その配置位置の情報に基づいて
図9に示すテーブルの“X方向配置”、“Y方向配置”を特定する。そして、閾値決定処理部403cは、
図9に示す“th11”、“th21”等、選択された欠陥の配置位置に対応する閾値の情報を抽出する。
【0079】
図11(b)に示すように選択されたマークについての個別閾値を
図9に示すテーブルから抽出すると、閾値決定処理部403cは、抽出した個別閾値に基づいて最終的な閾値を決定する(S606)。S606において、閾値決定処理部403cは、抽出した個別閾値、即ち、ユーザが欠陥と判定するべきとして選択したマークに対応する個別閾値のうち、最も厳しい値、即ち、より多くのマークが欠陥として判定される個別閾値を最終的な閾値とする。このようにして決定された閾値は、
図16に示す閾値設定として保存され、比較検査部404による画像の比較検査の際には、検査制御部403によるレジスタ値の書き込みによって比較検査部404に与えられる。
【0080】
最終的な閾値が決定されると、閾値決定処理部403cは、ユーザの操作に基づいて再調整の要否を判断する(S607)。尚、ユーザによる操作の内容は、UI制御部403
dによって取得される。S607において、閾値決定処理部403cは、検査装置4に接続されているLCD60等の表示装置に、再調整の要否を選択するための画面を表示させ、その画面に対するユーザの操作に従って判断を行う。
【0081】
再調整が不要である場合(S607/YES)、閾値決定処理部403cはそのまま処理を終了する。他方、再調整が必要である場合(S607/NO)、閾値決定処理部403cは、S601からの処理を繰り返すように、エンジンコントローラ2に対して通知を行うと共に検査装置4を制御する。この際、閾値決定処理部403cは、濃度変化欠陥パターンや幅変化欠陥パターンにおいて上述したように濃度や幅を変化させる範囲、即ちd
m、d
Mとして、S605において抽出された夫々の個別閾値の最大値及び最小値に対応するマークの“d
n”を指定する。
【0082】
上述したように、夫々のマークについて算出された“d
n”は、エンジン制御部202を構成するRAM20、ROM30、HDD40等の記憶媒体や、外部の記憶媒体において記憶されている。従って、閾値決定処理部403cは、濃度変化欠陥パターン及び幅変化欠陥パターンの夫々について、上記最大値及び最小に対応するマークのY方向の位置を通知するのみで、エンジン制御部202に対して“d
n”を指定することが可能である。
【0083】
尚、S605においては、濃度変化欠陥パターン及び幅変化欠陥パターンの夫々について個別閾値が抽出される。従って、閾値決定処理部403cは、濃度変化欠陥パターン及び幅変化欠陥パターンの夫々について、S605において抽出された夫々の個別閾値の最大値及び最小値に対応するマークの“d
n”を指定する。
【0084】
その結果、S601の処理が繰り返される際には、既に一度実行された閾値設定動作におけるS605の処理によって抽出された個別閾値の最大値及び最小値に対応する範囲の疑似欠陥が付されたマークが濃度変化欠陥パターン及び幅変化欠陥パターンにおいて形成されることとなる。そのような第2画像及び第3画像について
図6の処理を実行することにより、より詳細な閾値設定を行うことが可能となる。
【0085】
このように、本実施形態に係るシステムにおいては、
図7(b)、(c)に示すような段階的なレベルの欠陥が表現された画像について、閾値を段階的に変化させて欠陥判定を行うことにより、段階的なレベルの欠陥夫々を検知することができる個別閾値を得る。そして、パターンが描画された用紙をユーザが目視により確認し、欠陥として判定したいマークを選択することにより、そのマークに対応した個別閾値を設定するべき閾値として用いる。このような処理により、画像形成出力による出力結果を読み取った画像とマスター画像とを比較することによる画像の検査において、比較結果に基づいて欠陥を判定するための閾値の設定を容易且つ好適に行うことが可能となる。
【0086】
尚、上記実施形態においては、閾値の設定に際して
図7(a)〜(c)に示すような画像の印刷出力を実行する場合を例として説明した。これにより、例えば
図6のS607の処理のように、設定するべき閾値の範囲を変更して繰り返し処理を行うことが可能となる。これに対して、閾値の範囲を変更して繰り返し処理を実行する必要がなければ、
図7(a)に示す画像のビットマップデータをマスター画像処理部402に入力すると共に、
図7(b)、(c)に示すような画像が既に形成された読取用のチャート用紙をプリントエンジン3の読取装置302に読み取らせることによっても上記動作を実現することが可能である。
【0087】
また、上記実施形態においては、
図11(a)、(b)に示すように、第2画像及び第3画像を画面上に表示させてユーザにマークを選択される場合を例として説明した。このような画面により、ユーザによるマークの選択をより直感的なものとすることができるが、
図12に示すように、マークのX方向及びY方向の位置が文字情報として表示された一覧において選択するような態様も可能である。
【0088】
また、上記実施形態においては、
図7(b)、(c)及び
図11(a)、(b)に示すように、濃度変化欠陥パターン及び幅変化欠陥パターンにおいて、夫々のマークが色及び疑似的な欠陥の程度によって配列されて表示される場合を例として説明した。これにより、疑似欠陥の程度に従った許容範囲の選択を容易化することが可能となる。この他、色及び欠陥の程度をランダムに配置することも可能である。これにより、ユーザがマークを選択する際の先入観を排除することが可能である。
【0089】
尚、
図7(b)、(c)において説明したように、本実施形態に係る濃度変化欠陥パターン及び幅変化欠陥パターンは、CMYKの各色について、程度の異なる複数の疑似欠陥が再現される。そして、各色の人間の視認特性を考慮すると、各色によってユーザが許容すると判断する疑似欠陥の程度が異なる場合が考えられる。
【0090】
例えば、比較的淡く視認されるYについては、
図8に示す“PY+d
4”に対応するマークまでが許容された場合、即ち、“PY+d
5”に対応するマークのみが選択された場合において、Kについては、
図8に示す“PK+d
1”に対応するマークから“PK+d
5”に対応するマークまで全てが欠陥とすべきとして選択される場合があり得る。この場合、閾値としては“PK+d
1”に対応するマークについての閾値が最も厳しい値となるが、この値を適用すると、Yの色の欠陥については、ユーザが許容するべきと判断した程度についても欠陥として判断されることとなる。
【0091】
このような場合、比較検査部404は、段階的な閾値を設定することによりユーザの利便性を向上することが可能である。具体的には、最終的に設定するべき閾値として、ユーザに確認することなく欠陥として判定する第1の閾値と、欠陥とするか否かをユーザに選択させる第2の閾値とを設定する態様が考えられる。
【0092】
このような場合、閾値決定処理部403cは、
図6のS605において、各色の疑似欠陥毎、即ち、
図9に示すテーブルの夫々の列毎に、選択されたマークに対応する閾値として最も厳しい値を抽出する。そして、閾値決定処理部403cは、そのようにして抽出した各色の閾値のうち、最も許容範囲の広い値、即ち、欠陥として判定される範囲が最も狭い値を上記第1の閾値とし、最も厳しい値、即ち、欠陥として判定される範囲が最も広い値を上記第2の閾値とする。
【0093】
このような処理により、最も許容範囲の広い閾値であるにも関わらず欠陥として判定された場合にはユーザの視認上も欠陥である可能性が高く、ユーザに問い合わせることなく欠陥として判定し、最も許容範囲の狭い閾値によって欠陥として判定された場合には、それがユーザの視認上も欠陥であるかは不明であるため、ユーザに問い合わせることによって欠陥判定の精度を向上することができる。
【0094】
また、
図6のS607において説明したように、閾値の設定動作を繰り返し行う場合、閾値決定処理部403cは、上述した第1の閾値及び第2の閾値に対応する“d
n”の値を、d
m、d
Mとして指定しても良い。
【0095】
また、上記実施形態においては、
図11(a)、(b)及び
図6のS605において説明したように、ユーザが疑似欠陥を視認した上でマークを選択することにより、検査装置4においては、選択されたマークに対応する閾値に基づいて最終的な閾値を決定する場合を例として説明した。これにより、欠陥判定における許容度をユーザの視認に基づいて容易に設定することが可能である。
【0096】
他方、ユーザの選択という操作が無かったとしても、
図7(a)に示す第1画像のような正常な画像と、
図7(b)、(c)に示す第2、第3画像のような疑似的な欠陥が付された画像との差分に基づいて閾値を設定することにより、読取装置302の状態に応じた閾値を設定するという効果は得る事が可能である。従って、
図6のS605の処理を省略し、正常な画像について生成されたマスター画像と、疑似的な欠陥が付された画像の読取画像との差分に基づいて自動的に閾値を設定しても良い。
【0097】
また、上記実施形態においては、
図1において説明したように、DFE1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4が夫々別々の装置として構成されている場合を例として説明した。ここで、
図1に示す夫々の構成のうち、DFE1、エンジンコントローラ2及びプリントエンジン3は、商業印刷用の画像形成装置ではない一般的な画像形成装置においても相当する機能が含まれる構成である。
【0098】
従って、
図13(a)に示すように、DFE1、エンジンコントローラ2及びプリントエンジン3に相当する機能が搭載された装置であるプリンタに、検査装置4を接続するような態様も可能である。また、
図13(b)に示すように、DFE1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4に相当する機能がすべて搭載された1つの装置としてプリンタを構成するような態様も可能である。
【0099】
また、上記実施形態においては、DFE1、エンジンコントローラ2、プリントエンジン3及び検査装置4がUSB(Universal Serial Bus)や、PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)等のローカルなインタフェースによって接続されてシステムが構成される場合を例として説明した。しかしながら、検査装置4はDFE1、エンジンコントローラ2及びプリントエンジン3と同一の拠点に設置されている必要はなく、例えばネットワークを介して利用可能なアプリケーションとして提供することが可能である。
【0100】
図14は、検査装置4の機能がネットワークを介して提供される場合の例を示す図である。
図14の例においては、エンジンコントローラ2及びプリントエンジン3と検査装置4とはインターネット等の公衆回線5を介して接続されている。そして、エンジンコントローラ2及びプリントエンジン3は、公衆回線5を介して検査装置4に対して必要な情報を送信する。また、検査装置4は、エンジンコントローラ2に通知するべき検査結果を、公衆回線5を介して送信する。このような態様により、ユーザの拠点に検査装置4を導入する必要がなくなり、ユーザのイニシャルコストを低減することが可能となる。
【0101】
尚、
図14に示すような構成を用いる場合、検査装置4の機能がネットワークを介して提供されるため、ユーザが検査装置4を直接制御することはできない。このような場合、
図11(a)、(b)及び
図12に示すような画面や、その他の検査装置4を制御するための画面は、ウェブブラウザ等を介してネットワークに接続されたPC等の情報処理端末に表示させることにより、ユーザは上記と同様にシステムを利用することが可能となる。
【0102】
また、上記実施形態においては、第1、第2、第3の画像夫々が異なる紙面上に形成される場合を例として説明した。これに限らず、全て同一の紙面上に形成されるような態様も可能である。この場合、マスター画像処理部402は、第1の画像が表示されている範囲を抽出してマスター画像を生成する。また、読取画像取得部401は、読取画像において第2、第3の画像が表示されている範囲を抽出して検査対象の読取画像とする。
【0103】
また、上記実施形態においては、疑似的な欠陥の程度として、欠陥の濃度及び欠陥の範囲(上記実施形態においては欠陥の幅)を夫々変化させる場合を例として説明した。これは一例であり、画像に関するパラメータであれば、他の様々なパラメータを変化させる態様が考えられる。また、上記実施形態のように、夫々のパラメータを個別に変化させるのではなく、様々なパラメータの変化を組み合わせても良い。
【0104】
また、上記実施形態においては、閾値決定動作が実行される際、マスター画像処理部402や、比較検査部404等、通常の画像検査において機能するモジュールが閾値決定用マスター画像生成制御部403a及び閾値決定用比較検査制御部403bによって制御されると共に、その制御によって得られた情報に基づいて閾値決定処理部403c及びUI制御部403dが動作することにより、閾値決定部として機能する場合を例として説明した。これにより、各モジュールを有効に利用して装置構成を簡略化することが可能であると共に、通常の画像検査と同様のモジュールであるため、通常の画像検査と同様の条件での閾値決定が可能となり、有意義である。
【0105】
しかしながら、これは一例であり、閾値決定動作専用のマスター画像生成モジュールや、画像の比較検査モジュールを設けても良い。つまり、所定の閾値を決定するための画像の正常な状態が表示された閾値決定用正常画像の検査を行うための上記検査用画像である正常検査用画像を生成する正常検査用画像生成部や、上記閾値決定用正常画像に疑似的に欠陥が付加された閾値決定用欠陥画像を読み取った欠陥読取画像と上記正常検査用画像との差分を生成する閾値決定用比較検査部を設けても良い。
【0106】
また、上記実施形態においては、閾値決定処理部403cやUI制御部403dが検査制御部403の一構成として設けられる場合を例として説明した。この他、検査制御部403とは別のモジュールとして閾値決定処理部403cやUI制御部403dに相当するモジュールを設けても良い。