【文献】
[14]1−ブタノール 1.物質に関する基本的事項、[online]、環境省、[平成29年6月2日検索]、インターネット<URL:www.env.go.jp/chemi/report/h17-21/pdf/chpt1/1-2-2-14.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル酸とブタノールとを反応させて粗アクリル酸ブチルを含む反応混合物を生成する生成工程、前記反応混合物を中和する中和工程、及び、前記中和工程で中和された前記反応混合物を、洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程を含むアクリル酸ブチルの製造方法であって、
前記洗浄工程において、前記洗浄液が0.7重量%以上5.5重量%以下のブタノール水溶液であり、さらに、0.2重量%以下のアクリル酸、及び0.2重量%以下の水酸化ナトリウムを含むことを特徴とする、アクリル酸ブチルの製造方法。
【背景技術】
【0002】
商業的なアクリル酸ブチルの最も一般的な製造方法は、アクリル酸とブタノールを原料とするエステル化反応による製造方法である。その多くは液相反応であり、アクリル酸とは異なる有機酸や無機酸、或いはイオン交換樹脂等が、均一系又は不均一系触媒として用いられる。
【0003】
生成したアクリル酸ブチルは、前記触媒と水が存在すると、原料のアクリル酸とブタノールに戻る逆反応も起こるので、効率良くエステル化反応を進める為、エステル化反応により生じた水を留去しながらエステル化反応を行う、反応蒸留が最も一般的に用いられる。
【0004】
エステル化反応により生成したアクリル酸ブチル含有液には、未反応の原料アクリル酸やブタノール、酸触媒等も含まれている。これらの分離法として非特許文献1では、アルカリを添加して酸触媒及び残存アクリル酸を中和した後、中和塩を水で抽出し、次いで有機層を蒸留精製する方法が示されている。
【0005】
非特許文献2では、反応蒸留において水、アルコール、アクリル酸と共にアクリル酸エステルを留出させ、次いで該留出液を中和水洗した後、有機層を蒸留精製する方法が示されている。
【0006】
特許文献1では、反応蒸留により反応生成水を除去したアクリル酸エステル含有液に対し、水を用いて該アクリル酸エステル含有液に含まれる酸触媒を抽出回収した後、有機層中に残存する酸触媒及びアクリル酸を中和水洗した後、該有機層を蒸留精製する方法が示されている。
【0007】
アクリル酸ブチル製造の場合、原料のアクリル酸の沸点は、生成物であるアクリル酸ブチルの沸点の近傍にあり、その蒸留分離が困難であるため、上記何れの方法においてもエステル反応後の反応液中に存在する未反応アクリル酸を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液や多量の水によって抽出分離した後、蒸留分離されている。
【0008】
特許文献2では、上記中和水洗において遠心分離機を用いることで、洗浄工程を効率化す方法が示されている。
【0009】
特許文献3では、上記中和水洗工程を経ても有機層中に残存する中和塩を、フィルターにより除去する方法が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記中和水洗に用いられた水は廃水となる為、廃水処理に要する負荷を低減する観点から、その使用量は極力少なくすることが求められる。しかし、不十分な量の洗浄水を用いたことによるアクリル酸の不十分な分離は、製品品質の悪化となるので許容出来ず、同様に、塩の不十分な分離は、下流工程における汚れや閉塞、該塩を触媒とする分解反応でのブタノール生成による品質悪化、等々の問題を有する為に避けねばならない。
【0013】
非特許文献1の場合、エステル化反応に用いた酸触媒を全て中和処理する為、非常に多くの廃水を生じてしまう。
非特許文献2では酸触媒の中和処理は不要であり、特許文献1では酸触媒の中和処理は僅かとなる。しかし、残存するアクリル酸の中和処理は依然必要ながら、その効率的な除去法については述べられていない。
【0014】
アクリル酸の中和塩は実質的に有機層に不溶であり、故にその水洗除去は至極容易と考えられがちながら、少量から微量の残存分についてはそうならない。充分に長い滞留時間を持たせる事で実質的に全塩を水層側に移動させる事が可能だが、極端に大きな槽が必要となり現実的でない。
【0015】
特許文献2記載の方法(遠心分離)によって平衡に近い抽出状態までの到達時間を短縮することが出来る。しかし、Russian Journal of Applied Chemistry, 2009 vol-82, No.4 pp630-638に記載されるように、反応液中に含まれるアクリル酸とアクリル酸ブチルの共重合体は強い界面活性作用を有する為、遠心分離機による強撹拌によってエマルジョンが形成され、かえって液々分離を困難にしてしまう、という問題を含んでいる。
特許文献3の方法により液中に固体として存在する塩は除去可能であるが、アクリル酸や溶解した塩に対しては効果を有さない。また、フィルターは定期的交換が必要であり、経済性の悪化も伴っている。
【0016】
反応液中のアクリル酸濃度を低くする為、アクリル酸の反応転化率を高めることは有効であり、アクリル酸に対して小過剰のブタノールが反応器に供給されているが、該反応転化率の上昇とともに、アクリル酸ブチルへのブタノール付加体である3−ブトキシプロピオン酸ブチル等の副生も増大して製品収率を低下させる為、実質的に未反応アクリル酸をゼロにする事は出来ない。
【0017】
本発明は、少量のアクリル酸を含んだアクリル酸ブチルから中和水洗によりアクリル酸を除去するに際し、洗浄後のアクリル酸ブチル中のアクリル酸や中和塩濃度を上げることなく、操作に用いる水量を低減する、アクリル酸ブチルの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
化学平衡から考えて、有機層がより疎水性となる方が、中和塩はより速やかに水層へ移動すると考えた。しかし、アクリル酸の反応転化率を上げる為にブタノールを小過剰としている為、反応液中のブタノール濃度を下げることは容易でなく、そこであえてブタノールを添加することで、中和塩の除去がどの程度悪化するか調べてみたところ、予想に反して中和塩の除去が向上する場合のあることが確認された。
【0019】
本発明者らは、上記知見に基づき更に検討を進めたところ、残存アクリル酸を中和した後の水洗工程において、上記の抽出分離において、未反応アクリル酸及び水酸化ナトリウ
ム由来のナトリウムを増加させることなく洗浄水を減らす方法を検討したところ、水の代わりに特定濃度のブタノール水溶液で抽出分離することにより、これを達成できることに想到し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
【0020】
本発明は、アクリル酸とブタノールとを反応させて粗アクリル酸ブチルを含む反応混合物を生成する生成工程、前記反応混合物を中和する中和工程、及び、前記中和工程で中和された前記反応混合物を、洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程を含むアクリル酸ブチルの製造方法であって、
前記洗浄工程において、前記洗浄液が0.7重量%以上5.5重量%以下のブタノール水溶液であることを特徴とする、アクリル酸ブチルの製造方法、である。
また、前記洗浄液は、さらに、0.2重量%以下のアクリル酸、及び0.2重量%以下の水酸化ナトリウムを含むことが好ましく、前記洗浄液のpHは9以上11以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、少量のアクリル酸を含んだアクリル酸ブチルから中和水洗によりアクリル酸を除去するに際し、洗浄後のアクリル酸ブチル中のアクリル酸や中和塩濃度を上げることなく、操作に用いる水量を低減する、アクリル酸ブチルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、具体的な態様を示しながら詳細に説明するが、本発明は例示する具体的態様に限定されないことはいうまでもない。
【0024】
本発明は、アクリル酸とブタノールとを反応させて粗アクリル酸ブチルを含む反応混合物を生成する生成工程、前記反応混合物を中和する中和工程、及び、前記中和工程で中和された前記反応混合物を、洗浄液を用いて洗浄する洗浄工程を含むアクリル酸ブチルの製造方法であって、
前記洗浄工程において、前記洗浄液が0.7重量%以上5.5重量%以下のブタノール水溶液であることを特徴とする、アクリル酸ブチルの製造方法、に関する。
【0025】
本発明に係るアクリル酸ブチルの製造方法は、アクリル酸とブタノールとを反応させて粗アクリル酸ブチルを含む反応混合物を生成する「生成工程」、前記反応混合物を中和する「中和工程」、及び、前記中和工程で中和された前記反応混合物を、洗浄液を用いて洗浄する「洗浄工程」の3工程を含む。
【0026】
なお、本発明に係るアクリル酸ブチルの製造方法は、上記3工程を有するものであるが、その他の工程を有していてもよい。
【0027】
以下、添付図面に基づいて本発明の方法を詳細に説明する。
図1は、本発明のアクリル酸ブチルの製造方法における生成工程を含むエステル化反応蒸留工程の一例を示すフローシートである。
原料のアクリル酸がライン(1)により、ブタノールがライン(2)により、酸触媒がライン(3)により、直列に複数配置された反応器(R1〜R5)の最も上流側の反応器(R1)に供給される。
【0028】
酸触媒としては、硫酸などの無機酸、メタンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸などの有機酸、あるいは強酸性陽イオン交換樹脂等の固体酸等が挙げられる。
反応器の数は多いほど効率的なエステル化反応が可能となるが、設備の増加により運転制御が複雑化する等の問題も考慮して、その数は2〜8個が好ましい。反応器は個々に独立した容器でも、仕切板によって複数の反応室に分割された形状でもよい。尚、原料ブタノールは後述する反応蒸留塔に供給しラインを通して反応器へ送られる形態を採用してもよい。
【0029】
エステル化反応により生成した水は、加熱によりブタノールやアクリル酸ブチルと共に共沸して反応蒸留塔(C1)に送られる。塔頂留出ガス(15)はコンデンサ(E1)で凝縮され、デカンタ(D1)で水層と有機層に分離される。有機層は還流液として反応蒸留塔(C1)に循環(16)され、水層は系外に排出(17)される。反応蒸留塔の数は、反応器と同様、設備の増加により運転制御が複雑化する等の問題も考慮して、1〜4個が好ましい。
【0030】
温度が高いほどエステル化反応速度は速くなるので効率的であるが、アクリル酸やアクリル酸ブチルの重合が起こりやすくなる等の問題も考慮して、反応器の温度は通常80〜110℃の範囲であることが好ましい。該反応器の温度で蒸留を行うには減圧とすることが必要であり、反応蒸留塔の塔頂圧力として10〜40kPaであることが好ましい。
【0031】
図2は、本発明のアクリル酸ブチルの製造方法における中和工程及び洗浄工程を含む精製工程、並びに、副生物を加熱分解する工程の一例を示すフローシートである。
最下流の反応器から得られた粗アクリル酸ブチルがライン(30)により、酸触媒回収用の水がライン(31)より、酸触媒回収塔(C3)に供給される。該酸触媒回収塔(C3)としては、2理論段以上を有する抽出塔が一般的であるが、複数直列のデカンタや、デカンタと抽出塔の組み合せでもよい。該酸触媒回収塔より得られる酸触媒回収水(32)の少なくとも一部は、エステル化反応工程に循環され、含有する酸触媒を再利用してもよい。
【0032】
酸触媒が除去された粗アクリル酸ブチルは、ライン(40)により中和洗浄塔(C4)に供給され、水酸化ナトリウム等のアルカリ性水溶液(42)によって残存する酸触媒やアクリル酸の中和が行われ、次いで洗浄液(41)により該中和塩の洗浄が行われる。
該中和洗浄塔(C4)としては、2理論段以上を有する抽出塔が最も構成機器数が少なく効率的であるが、複数直列のデカンタや、デカンタと抽出塔の組み合せとし、蒸留側の装置にアルカリ性水容液を供給して中和を、下流側の装置に洗浄液を供給して洗浄を、各々行ってもよい。
【0033】
本発明の洗浄工程において、上記中和工程で中和された前記反応混合物を洗浄する洗浄液はブタノール水溶液であって、その濃度は、洗浄液全量に対して0.7重量%以上であり、好ましくは1重量%以上であり、一方で、5.5重量%以下である。この範囲にあることで、洗浄後の有機層に含まれるナトリウム濃度を増加させることなく、洗浄液の低減を図ることができる。
【0034】
また、本発明の洗浄工程で用いる洗浄液はブタノールを含むが、その他に、アクリル酸を含んでいてもよい。その場合のアクリル酸の濃度は、洗浄液全量に対して、好ましくは0.3重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%以下である。この範囲にあることで、洗浄後の有機層に含まれるナトリウム濃度を増加させることなく、洗浄液の低減を図ることができる。
【0035】
さらに、本発明の洗浄工程で用いる洗浄液はブタノールを含むが、その他に、水酸化ナトリウムを含んでいてもよい。その場合の水酸化ナトリウムの濃度は、洗浄液全量に対して、好ましくは0.2重量%以下であり、より好ましくは0.03重量%以下である。この範囲にあることで、洗浄後の有機層に含まれるナトリウム濃度への影響を抑えることができる。
【0036】
なお、本発明の洗浄工程で用いる洗浄液が、ブタノール、アクリル酸、及び水酸化ナトリウムを含む場合、その洗浄液のpHは、好ましくは9以上であり、一方で、好ましくは11以下である。この範囲にあることで、有機層中のアクリル酸濃度、ナトリウム濃度共に低く抑えることができる。
【0037】
また、本発明の洗浄工程において、中和処理済みの粗アクリル酸ブチルに対して供給する洗浄液の質量速度は、好ましくは1/50以上であり、より好ましくは1/33以上であり、さらに好ましくは1/25以上であり、一方で、好ましくは1/5以下であり、より好ましくは1/10以下であり、さらに好ましくは1/15以下である。この範囲にあることで、生成する廃水量を抑制しつつ、安定して有機層中のアクリル酸濃度、ナトリウム濃度共に低く抑えることができる。
【0038】
残存する酸触媒及びアクリル酸が除去された粗アクリル酸ブチルはライン(50)によりアルコール分離塔(C5)に供給される。塔頂よりブタノール等の軽沸成分が留出し、塔底より軽沸成分の分離された粗アクリル酸ブチルが得られる。
軽沸成分の分離された粗アクリル酸ブチルは、ライン(60)により精製塔(C6)に供給され、塔頂より精製アクリル酸ブチルが得られ、塔底より高沸点不純物を含んだ液が得られる。
【0039】
該高沸点不純物の含有液はライン(70)により加熱分解装置(R7)に供給され、塔頂よりアクリル酸ブチルやブタノールを含んだ分解回収物が得られ、少なくともその一部はエステル化反応工程に循環される。該加熱分解装置からの缶出液は系外に排出される。
【実施例】
【0040】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例1、2、4を、それぞれ参考例3、4、5とする。
【0041】
[実施例1]
<1.粗アクリル酸ブチルの取得および酸触媒の除去>
常法に従い、エステル化反応器を用いて、アクリル酸とブタノールとを、トルエンスルホン酸触媒の存在下に反応させて粗アクリル酸ブチルを得、水抽出により酸触媒を除去した。該液は、アクリル酸ブチルの他に、ブタノール8重量%、水1.6重量%、3−ブトキシプロピオン酸ブチル1.8重量%、アクリル酸1重量%、水洗除去しきれなかった酸触媒としてトルエンスルホン酸0.02重量%を含有していた。
【0042】
<2.中和用の抽出装置>
ガラス製のカラムに5mmのコイルパックを充填し、抽出塔とした。水層を連続層とし、界面は充填物より上に形成されるようにした。下部に酸触媒を除去した粗アクリル酸ブチル溶液を一定速度で供給し、上部より中和用の5重量%水酸化ナトリウム水溶液を一定速度で加え、界面の位置が一定となるよう、底部からの抜き出しを調整した。カラム上部の有機層液面高さが一定となるよう、有機層からの抜出し速度を調整した。
該抜出液中のナトリウム濃度は650ppmであり、ガスクロマトグラフィーによる未中和のアクリル酸濃度は検出限界未満(<0.5ppm)であった。
【0043】
<3.洗浄用の中和装置>
ガラス製のカラムに5mmのコイルパックを充填し、抽出塔とした。水層を連続層とし、界面は充填物より上に形成されるようにした。中和処理済みの粗アクリル酸ブチルをカラムの下部に一定速度で供給し、上部から洗浄用の3.5重量%のブタノール水溶液を粗アクリル酸ブチルに対して1/20の質量速度で供給した。界面の位置が一定となるよう、底部からの抜き出しを調整し、また、カラム上部の有機層液面高さが一定となるよう、有機層からの抜き出し速度を調整した。
抜き出した有機層中に含まれるナトリウム濃度は、1〜3ppmであり、この結果から、純水を用いた場合に比べ、より良い洗浄効果を有していることが分かる。
【0044】
[参考例1]
洗浄液として蒸留水を用いたこと以外は実施例1と同様にしたところ、抜き出した有機層中のナトリウム濃度は、6〜13ppmとなった。
【0045】
[参考例2]
蒸留水を粗アクリル酸ブチルに対して1/10の質量速度で供給した以外は参考例1と同様にしたところ、抜き出した有機層中のナトリウム濃度は2〜5ppmとなった。
【0046】
[比較例1]
洗浄液として8重量%のブタノール水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしたところ、抜き出した有機層中のナトリウム濃度は、37〜64ppmとなった。
この結果から、過剰量のブタノールは洗浄効果を下げると考えられる。
【0047】
[実施例2]
洗浄液として1重量%のブタノール水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしたところ、抜き出した有機層中のナトリウム濃度は、2〜10ppmとなった。
【0048】
[比較例2]
洗浄液として300ppmのアクリル酸を含んだ水を用いたこと以外は実施例1と同様にしたところ、抜き出した有機層中のナトリウム濃度は、29〜40ppmとなり、また未中和のアクリル酸濃度は10〜14ppmとなった。
この結果より、洗浄液中のアクリル酸は、洗浄後のアクリル酸ブチル中のアクリル酸濃度を上昇させることが分かる。
【0049】
[比較例3]
洗浄液として、300ppmのアクリル酸を含んだ水に対して、1.1等量倍の水酸化ナトリウムを加えて中和したものを用いたこと以外は実施例1と同様にしたところ、抜き出した有機層中の未中和のアクリル酸濃度は検出限界未満(<0.5ppm)であり、ナトリウム濃度は35ppmであった。
【0050】
この結果から、洗浄水中のアクリル酸を中和する事で、洗浄後のアクリル酸ブチル中の未中和アクリル酸濃度を低くする事が可能であるが、ナトリウムの洗浄については、純水を用いた場合と同等ないし悪化がおこることが分かる。しかし、洗浄水中のアクリル酸を中和する為に加えられた水酸化ナトリウムは、アクリル酸ブチル中のナトリウム増加には関与していないことが分かる。
【0051】
[実施例3]
洗浄液として、3.5重量%のブタノール水溶液に、アクリル酸300ppm及びその1.1等量倍の水酸化ナトリウムを加えたものを用いたこと以外は実施例1と同様にした。このときpHは10.4であった。抜き出した有機層中の未中和アクリル酸は検出限界
未満であり、ナトリウム濃度は、9ppmであった。
この結果から、洗浄水がアクリル酸を含有する場合においても、洗浄水中のブタノールの存在は、ナトリウムの除去に有効であることが分かる。
【0052】
[比較例4]
洗浄液として、1重量%のアクリル酸及びその1.05等量倍の水酸化ナトリウムを加えたものを用いたこと以外は実施例1と同様にした。このときpHは11.7であった。抜き出した有機層中の未中和アクリル酸は検出限界未満であり、ナトリウム濃度は、195ppmであった。
この結果から、洗浄水中にブタノールが存在しても、中和アクリル酸ナトリウムの濃度が高すぎると、ナトリウム除去の効果は下がることが分かる。
【0053】
[実施例4]
洗浄液として5重量%のブタノール水溶液を用いた以外は参考例2と同様にしたところ、抜き出した有機層中のナトリウム濃度は、1〜2ppmとなった。