特許第6241380号(P6241380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62413801,4−ブタンジオール、該1,4−ブタンジオールを用いたポリエステルの製造方法及び該1,4−ブタンジオールの貯蔵方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241380
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】1,4−ブタンジオール、該1,4−ブタンジオールを用いたポリエステルの製造方法及び該1,4−ブタンジオールの貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20171127BHJP
   C07C 29/94 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C08G63/183
   C07C29/94
   C07C31/20 B
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-139780(P2014-139780)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2015-83657(P2015-83657A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-194195(P2013-194195)
(32)【優先日】2013年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸下 稔
(72)【発明者】
【氏名】松園 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆行
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/004965(WO,A1)
【文献】 特開2003−183422(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008686(WO,A1)
【文献】 特表平10−508638(JP,A)
【文献】 特開平06−172235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−63/91
C07C 29/00−29/94
31/00−31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有する1,4−ブタンジオールであって、1重量ppm以上かつ50重量ppm以下の環状アセタール化合物を含む1,4−ブタンジオール。
【請求項2】
電位差滴定法で測定したΣカルボニル価が0.50mgKOH/g以下である請求項1に記載の1,4−ブタンジオール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の1,4−ブタンジオールをジオール成分の主成分として使用するポリエステルの製造方法。
【請求項4】
ポリエステルがポリブチレンテレフタレートである請求項3に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の1,4−ブタンジオールを、酸素含有雰囲気下に貯蔵する方法であって、該雰囲気の酸素濃度が0.1体積%から10体積%である1,4−ブタンジオールの貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調の優れたポリエステルを得ることができ、酸素含有雰囲気下に貯蔵しても、品質劣化が少ない1,4−ブタンジオール、該1,4−ブタンジオールを用いたポリエステルの製造方法及び該1,4−ブタンジオールの貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4−ブタンジオール(以下、「BG」と略記することがある)は様々な溶剤や誘導体の原料として使用される極めて有用な物質であることが知られている。その一例として、BGをジオール成分原料とし、ジカルボン酸と、エステル化反応及び/又はエステル交換反応、並びに、重縮合反応して得られるポリエステルは種々の用途に利用されている。
特にポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートは近年広く利用されている。
【0003】
中でも、ジカルボン酸成分の主成分としてテレフタル酸を用いたポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と略記することがある)は、優れた機械特性、耐熱性、成形性及びリサイクル性を有し、機械強度も高く耐薬品性にも優れていることから、自動車や電気・電子機器のコネクター、リレー及びスイッチなどの工業用成形品の材料として広く使用されている。さらには、フィルム、シート、繊維などにも広く利用されており、これに伴い、色調良好なPBTが求められるようになってきている。
【0004】
BGを工業的に製造する方法は種々開発されている。その中で、プロピレンの酸化又はアセトキシ化を経由してアリルアルコールを得、これをオキソ反応、水添してBGを得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、特許文献2及び3には、環状アセタールが定量分析出来ない痕跡程度含まれるBGの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−234679号公報
【特許文献2】特開平6−305997号公報
【特許文献3】特開平6−305998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法で得られたBGを用いて得られたポリエステルは色調が悪い場合があった。また、このBGを長期貯蔵した後に、このBGを用いて得られたポリエステルの色調はさらに悪くなる場合があった。
そして、特許文献2又は3に記載のBGを用いて得られたポリエステルの色調はさらに悪くなる事があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、色調の優れたポリエステルを得ることができ、酸素含有雰囲気下に貯蔵保管しても、品質劣化が少ないBGを提供することである。
さらに、本発明の目的は、色調良好なPBTを効率的に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有する1,4−ブタンジオール(BG)であって、1重量ppm以上50重量ppm以下の環状アセタール化合物を含む1,4−ブタンジオールである。前記BGは、電位差滴定法で測定したΣカルボニル価が0.50mgKOH/g以下であることが好ましい。
また、本発明の要旨は、BGをジオール成分の主成分として使用するポリエステルの製造方法である。前記ポリエステルはポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
さらに、本発明の要旨は、前記BGを酸素含有雰囲気下に貯蔵する方法であって、該雰囲気の酸素濃度が0.1体積%から10体積%であるBGの貯蔵方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸素含有雰囲気下に貯蔵しても、品質劣化が少ないBGを得ることができ、さらには、品質劣化の少ないBGを用いることにより色調良好なポリエステルを得ることができる。また特定の貯蔵条件であるとより品質劣化が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明で採用するエステル化反応工程の一例の説明図である。
図2図2は、本発明で採用する重縮合反応工程の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
尚、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書における、下限値又は上限値は、その下限値又は上限値の値を含む範囲を意味する。
【0013】
BGは、石化法及びバイオマス資源由来の発酵工程を有する製法のいずれか又はそれらを組合せて製造される。例えば、原料ブタジエン、酢酸及び酸素を用いてアセトキシ化反応を行って中間体であるジアセトキシブテンを得、そのジアセトキシブテンを水添、加水分解することで得られるBG;マレイン酸、コハク酸、無水マレイン酸及び/又はフマル酸を原料として、それらを水素化して得られるBG;アセチレンを原料としてホルムアルデヒド水溶液と接触させて得られるブチンジオールを水素化して得られるBG;プロピレンの酸化又はアセトキシ化を経由してアリルアルコールを得、これをオキソ反応、水添して得られるBG;発酵法により得たコハク酸を水添したBG;糖などのバイオマスから直接発酵により得られるBG;などが挙げられる。
【0014】
<BG>
本発明のBGは、不純物として2−メチル−1,3−プロパンジオールと環状アセタールを含有する。これら不純物はアリルアルコールを経由する製法のBGに含まれることが多い。この製法で得られるBGにはその生成反応中にアルコール性OH、アルデヒドが存在することによりアセタール化合物、カルボニル化合物が生成しうる。
【0015】
また、BGの製造方法によっては例えば原料をブタジエンとした場合、BG中の2−メチル−1,3−プロパンジオールが検出されない(含有しない)場合があるが、このBGは酸素雰囲気下の貯蔵で品質劣化が大きいことがある。
【0016】
本発明のBG中の2−メチル−1,3−プロパンジオールの含有量は通常下限は1重量ppmであり、好ましくは2重量ppmである。下限未満にするには精製などに費用がかかりすぎる。
またBG中の2−メチル−1,3−プロパンジオールの含有量は通常上限は500重量
ppmであり、好ましくは400重量ppmである。上限超過では、このBGを用いて製造されるポリエステルの色調が悪化する傾向がある。
【0017】
本発明におけるBG中の環状アセタール化合物の含有量の上限は50重量ppm、好ましくは40重量ppmである。下限は精製効率の観点から1重量ppmであるが、好ましくは3重量ppm、さらに好ましくは5重量ppmである。1重量ppm未満にするとアセタール化合物が重合した成分や下記のΣカルボニル価にカウントされない成分が増加するため好ましくない。
電位差滴定法で測定したΣカルボニル価の上限は、好ましくは0.50mgKOH/g、さらに好ましくは0.40mgKOH/gである。下限は精製効率の観点から通常0.01mgKOH/gである。
【0018】
Σカルボニル価の測定方法は実施例で述べる。また、この方法でカルボニル成分として定量される、アセタール、アルデヒド、ケトンなどの化合物を総称してΣカルボニル化合物と称することがある。
環状アセタール化合物の含有量及びΣカルボニル価が上記範囲であると、BGを酸素含有雰囲気下で貯蔵しても、カルボニル化合物、アセタール化合物の増加などの品質劣化が少なくこれを用いたポリエステルの色調は悪化しにくい傾向がある。
【0019】
本発明のBG中の2−メチル−1,3−プロパンジオール、環状アセタール化合物の含有量及びΣカルボニル価は、例えば、水添、蒸留を含む精製条件などにより調整できる。
本発明のBG中の2−メチル−1,3−プロパンジオールの含有量は、BGの精製工程を強化することで調整することが可能である。即ち、2−メチル−1,3−プロパンジオールは、BGの蒸留精製時に還流量の増加や軽沸成分の抜出量を増加するなどの蒸留条件強化によりBG中の含有量の調整が可能である。生産効率を考えた場合、完全に分離除去するには蒸留分離に負担がかかりすぎ工業上不利となり好ましくない。
【0020】
現実的には、2−メチル−1,3−プロパンジオールは、BG中に不純物として存在する傾向にある。蒸留の際の圧力は常圧あるいは減圧条件下が好ましく、さらに好ましくは絶対圧として0.01kPa以上、760kPa以下が好ましく、特に好ましくは0.1kPa以上、400kPa以下である。圧力が高すぎると塔底の温度が高くなりすぎてBGの分解によるテトラヒドロフラン化が進行するため原単位上好ましくない。また、圧力が低すぎる場合には高度な真空設備を必要とし非常に高価なものとなり工業的に好ましくない。本発明での蒸留塔の塔底内液の温度は80℃以上、230℃以下が好ましく、特に好ましくは100℃以上、180℃以下である。塔底の温度が高くなりすぎると、BGの分解によるテトラヒドロフラン化が進行するため原単位上好ましくない。塔底の温度が低すぎると、塔内圧力を大きく減圧にする必要があり、高度な真空設備を必要とするため設備が非常に高価なものとなり工業的に好ましくない。
【0021】
本発明において、BG中の環状アセタール化合物の含有量及びΣカルボニル価は、BG生成時の水添反応、水添反応後のBGの精製工程を強化することで調整することが可能である。
水添反応は例えばPd、Pt、Ni、Ru等の公知の水添触媒を用いて水素分圧0.5MPk〜2MPaで40℃以上250℃以下、好ましくは50℃以上150℃以下で行う。水添後のBGは蒸留精製する。
【0022】
BG中の環状アセタール化合物の含有量及びΣカルボニル価は、水添反応における圧力、温度反応時間などの水添条件及び蒸留時の還流比や、軽沸分抜出量など蒸留条件により調整できる。環状アセタール化合物及びΣカルボニル化合物はBGの沸点と近い成分もあるので、完全に分離除去する事は蒸留分離に負担がかかり工業上不利となる。よって、生
産効率を考えた場合、現実的には、環状アセタール化合物及びΣカルボニル化合物は不純物として存在する。
【0023】
また、BGの製造方法によっては例えば原料をブタジエンとした場合BG中の環状アセタール化合物が検出されない(含有しない)場合があるがこのBGは酸素雰囲気下の貯蔵で品質劣化が大きいことがある。
【0024】
本発明における環状アセタール化合物としては、具体的には下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
(上記式(I)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、nは2〜6の自然数である。)
【0027】
上記式(I)で表される化合物として、例えば2−メチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、2−プロピル−1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキサン、2−エチル−1,3−ジオキサン、2−プロピル−1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキセパン、2−エチル−1,3−ジオキセパン、2−プロピル−1,3−ジオキセパン、2−エチル−1,3−ジオキソカン、2−プロピル−1,3−ジオキソナンなどが挙げられる。
【0028】
本発明のBGは、酸素含有雰囲気下に貯蔵する場合、該雰囲気の酸素濃度が0.1体積%から10体積%であることが好ましい。0.1体積%から7体積%以下であるのが更に好ましく、0.1体積%から5体積%以下であるのが特に好ましい。
【0029】
次に本発明において製造されるポリエステルについて述べる。
本明細書において、ポリエステルにおける「構造単位」とは、ポリエステル中における特定モノマー由来の構造単位を指すものとする。
【0030】
また、本明細書において「主成分とする」とは当該成分の70モル%以上を占めることを指すものとする。例えば、「BGを主成分とするジオール化合物」とは、全ジオール成分の70モル%以上がBGであることを指すものとする。
本明細書においてエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行う工程をエステル化反応工程と呼ぶ。
【0031】
[1]ポリエステル原料
本発明におけるポリエステルは、ジカルボン酸成分に由来する構造単位及びジオール成分に由来する構造単位がエステル結合した構造を有する。ここで、ジカルボン酸成分とは、ポリエステルの製造原料としてのジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を意味し、ジオール成分とは、ポリエステルの製造原料としてのジオール及び/又はその誘導体を意味する。
【0032】
本発明におけるポリエステルは、ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸アルキルエステ
ルを主成分とするジカルボン酸成分とBGを主成分とするジオール成分とをエステル化反応及び/又はエステル交換反応させ、引き続いて、重縮合反応させることにより得られる。
本発明のBGを用いるポリエステルとしてはPBTが好ましい。
【0033】
<ジオール成分>
本発明のBGをポリエステルの製造に用いる場合、全ジオール成分中のBGが占める割合は、80モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのが更に好ましく、99モル%以上であるのが特に好ましい。BGの全ジオール成分に占める割合が上記下限値以上であると、電気部品等に成形する際の結晶化の点やフィルム、繊維などに成形する際の延伸による分子鎖の配向結晶化の点から、成形体としての機械的強度、耐熱性、保香性等が良好になりやすい。
【0034】
(BG以外のジオール成分)
本発明のBGをポリエステルの製造に用いる場合、原料ジオール成分には、BG以外のジオール成分が含まれていてもよい。
BG以外のジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの直鎖式脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロールなどの環式脂肪族ジオール;キシリレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオール;イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、エリトリタンなどの植物原料由来のジオール等を挙げることができる。なお、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールなどもバイオマス資源由来のものを使用することができる。得られるポリエステルの物性の面から、他のジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメチロールが好ましい。これらのジオール成分は単独でも二種以上の混合物としても使用することもできる。
【0035】
<ジカルボン酸成分>
本発明のBGを用いてポリエステルを製造する場合、ジカルボン酸成分は、石化法及びバイオマス資源由来の発酵工程を有する製法のいずれかで得たジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体でもよく、またその組合せで製造したものでも差し支えない。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としてはジカルボン酸の低級アルコールエステルの他酸無水物や酸塩化物等のエステル形成性誘導体が好ましい。ここで、低級アルコールとは、通常、炭素数1〜4の直鎖式又は分岐鎖式のアルコールのことを指す。ジカルボン酸成分としては、この条件を満たす限りそのモノマー成分に制限はないが、例えばジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。中でも、耐熱性や機械的物性の観点からは、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が好ましく、特には芳香族ジカルボン酸が好ましい。また、結晶性や耐熱性の観点からは、テレフタル酸が好ましい。
【0036】
(テレフタル酸成分)
本発明のBGをPBTの製造に用いる場合、テレフタル酸成分(テレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体)は、従来の石化法、又はバイオマス資源由来の発酵法で得られたものある。本発明において、全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分の割合は、80モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのが更に好ましい。該テレフタル酸成分の割合が上記下限値以上であると、電気部品等に成形する際の結晶化の点やフィルム、繊維などに成形する際の延伸による分子鎖の配向結晶化の点から、成形体としての機械的強度、耐熱性、保香性等が良好になりやすい。
【0037】
(テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分)
本発明のBGをPBTの製造に用いる場合、原料ジカルボン酸成分には、テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分が含まれていてもよい。
本発明のBGをPBTの製造に用いる場合、使用可能なテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族鎖式ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体;ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体;フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が挙げられる。また、前記エステル形成性誘導体としては、例えば無水コハク酸、無水アジピン酸等の無水物又はその低級アルコールエステルが好ましい。
【0038】
中でも得られるポリエステルの物性の面から、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分が好ましい。これらのジカルボン酸成分は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0039】
<その他の共重合可能な成分>
本発明のBGをPBTの製造に用いる場合、上記ジオール成分及びジカルボン酸成分に加えて、ポリエステルの製造原料として、更に、その他の共重合可能な成分を用いてもよい。本発明で使用可能なその他の共重合可能な成分としては、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸;ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能カルボン酸;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸等の三官能以上の多官能カルボン酸;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能アルコール等が挙げられる。これらのその他の共重合可能な成分は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0040】
<触媒及び添加剤>
(エステル化反応又はエステル交換反応触媒)
本発明のBGをポリエステルの製造に用いる場合、エステル化反応又はエステル交換反応において触媒を用いる。触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコ
ラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等のチタン化合物;ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸等のスズ化合物;酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等のマグネシウム化合物や、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等のカルシウム化合物等の長周期型周期表(以下、単に「周期表」ともいう)第2A族金属化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等が挙げられる。中でも、チタン化合物、スズ化合物が好ましく、テトラブチルチタネートが特に好ましい。これらの触媒は、単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0041】
本発明のBGをポリエステルの製造に用いる場合におけるエステル化反応又はエステル交換反応触媒の使用量は特に限定されないが、得られるポリエステルに含まれる金属濃度として、通常1重量ppm以上、好ましくは5重量ppm以上、更に好ましくは10重量ppm以上、特に好ましくは20重量ppm以上、最も好ましくは30重量ppm以上である。一方、触媒使用量の上限は、得られるポリエステルに含まれる金属濃度として、通常300重量ppm以下、好ましくは200重量ppm以下、より好ましくは150重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは90重量ppm以下、最も好ましくは60重量ppm以下である。触媒使用量が上記上限値以下であると、異物の原因になりにくい上、得られるポリエステルの熱滞留時の劣化反応やガス発生が起こりにくい傾向があり、上記下限値以上であると、副反応が起こりにくい傾向がある。
【0042】
(重縮合反応触媒)
本発明のBGをポリエステルの製造に用いる場合、重縮合反応において触媒を用いる。触媒としては、エステル化反応又はエステル交換反応の触媒をそのまま重縮合反応触媒として用いてもよいし、更に前記触媒を添加してもよい。重縮合反応触媒の使用量に特に制限されないが、上記のエステル化反応又はエステル交換反応の触媒と同様の理由から、得られるポリエステルに含まれる金属濃度として、通常0.5重量ppm以上、好ましくは1重量ppm以上、更に好ましくは3重量ppm以上、特に好ましくは5重量ppm以上、最も好ましくは10重量ppm以上である。一方、触媒使用量の上限は、得られるポリエステルに含まれる金属濃度として、通常300重量ppm以下、好ましくは200重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは50重量ppm以下、最も好ましくは30重量ppm以下である。
【0043】
また、触媒としてチタン化合物を用いる場合には、異物抑制の観点から、最終的には得られるポリエステルに含まれるチタン金属濃度は、250重量ppm以下であることが好ましく、100重量ppm以下であることが更に好ましく、60重量ppm以下であることが特に好ましく、50重量ppm以下であることが最も好ましい。
ポリエステルの金属濃度(重量)は、湿式灰化等の方法でポリエステルに含まれる金属を回収した後、原子発光、Induced Coupled Plasma(ICP)法等を用いて測定することができる。
【0044】
(反応助剤)
後述のエステル化反応、エステル交換反応及び重縮合反応において、前記触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸及びそれらのエステルや金属塩等の燐化合物;水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム,安息香酸ナトリウム等のナトリウム化合物、酢酸リチウ
ム、水酸化カリウム,酢酸カリウム等のカリウム化合物等の周期表第1A族の金属元素の化合物;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等の周期表第2A族の金属元素の化合物を反応助剤として添加することができる。
【0045】
(その他の添加剤)
また、後述のエステル化反応、エステル交換反応及び重縮合反応において、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール化合物;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物等の抗酸化剤;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸及びそのエステル;シリコーンオイル等の離型剤等を使用することもできる。
【0046】
[2]ポリエステルの製造方法
本発明のBGをポリエステルの製造に用いる場合、2−メチル−1,3−プロパンジオールを含有し、1重量ppm以上50重量ppm以下の環状アセタール化合物を含み、かつ、電位差滴定法で測定したΣカルボニル価が0.50mgKOH/g以下であるBGを使用する以外は特に制限されず、公知のポリエステルの製造方法を用いることができる。以下に、その製造方法例を説明するが、本発明におけるポリエステルの製造方法はこれに限定されるものではない。
以下、ポリエステルとしてPBTを例に挙げて説明する。
【0047】
<製造プロセス>
PBTの製造方法としては、主原料としてテレフタル酸を用いてエステル化反応を行ういわゆる直接重合法と、主原料としてテレフタル酸ジアルキルエステルを用いてエステル交換反応を行うエステル交換法とに大別される。前者は、初期のエステル化反応で水が生成し、後者は初期のエステル交換反応でアルコールが生成するという違いがあるが、原料の入手安定性、留出物の処理の容易さ、原料原単位の高さ、また本発明による改良効果という観点からは直接重合法が好ましい。
【0048】
直接重合法としては、テレフタル酸とBGとを、単数又は複数段のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒を用いてエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、複数段の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒を用いて重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0049】
一方、エステル交換法としては、テレフタル酸ジメチル等のテレフタル酸ジアルキルエステルとBGとを、単数又は複数段のエステル化反応槽内で、エステル交換反応触媒を用いてエステル交換反応させ、得られたエステル交換反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、複数段の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒を用いて重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0050】
(エステル化反応条件)
エステル化反応の一例としては、その温度は、通常180℃以上、好ましくは200℃以上、特に好ましくは210℃以上であり、通常260℃以下、好ましくは250℃以下、特に好ましくは245℃以下である。また、エステル化反応の圧力は、通常10kPa以上、好ましくは13kPa以上で、通常120kPa以下、好ましくは110kPa以下である。
【0051】
また、エステル化反応に要する時間は、得られるオリゴマーのエステル化率を測定しその範囲を一定にするように調整されるが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上であり、通常5時間以下、好ましくは3時間以下である。エステル化反応率は通常92%以上で調整される。エステル化工程を連続式で行う場合、エステル化反応槽での平均滞留時間をエステル化反応に要する時間とみなす。このようにして、エステル化反応生成物としてのオリゴマーが生成する。なお、エステル化反応は回分式でも連続式でも行うことができる。
続いてエステル化反応で得られたオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、重縮合反応触媒の存在下で重縮合反応を行う。
【0052】
(エステル交換反応条件)
エステル交換反応の一例としては、その温度は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、特に好ましくは180℃以上であり、通常260℃以下、好ましくは245℃以下、特に好ましくは220℃以下である。また、圧力が、通常10kPa以上、好ましくは13kPa以上、特に好ましくは60kPa以上であり、通常133kPa以下、好ましくは120kPa以下、特に好ましくは110kPa以下である。
【0053】
また、エステル交換反応に要する時間は、例えばエステル交換反応中の留出液量で調整されるが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上であり、通常5時間以下、好ましくは3時間以下である。エステル交換工程を連続式で行う場合、エステル交換反応槽での平均滞留時間をエステル交換反応に要する時間とみなす。このようにして、エステル交換反応生成物としてのオリゴマーが生成する。なお、エステル交換反応は回分式でも連続式でも行うことができる。
続いてエステル交換反応で得られたオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、重縮合反応触媒の存在下で重縮合反応を行う。
【0054】
(エステル化反応装置/エステル交換反応装置)
エステル化反応槽又はエステル交換反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、また、単数槽としても、同種又は異種の槽を直列に連結した複数槽としてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽が好ましく、攪拌装置としては、動力部及び軸受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。
【0055】
攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応器の外部に配管等で持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法をとることもできる。
攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
【0056】
(重縮合反応条件)
重縮合反応は回分式でも連続式でも行うことができる。
重縮合反応の一例としては、その温度は通常210℃以上、好ましくは220℃以上であり、通常260℃以下、好ましくは250℃以下、特に好ましくは245℃以下である。また、重縮合反応の圧力は、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、より好ましくは13kPa以下、中でも少なくとも1つの重縮合反応槽においては好ましくは2kPa以下の減圧下である。重縮合反応は攪拌しながら行われる。重縮合反応に要する時間は、得られるポリエステルの溶融粘度や固有粘度を測定しその範囲を一定にするように調整されるが、通常2〜12時間、好ましくは2〜10時間である。重縮合反応を連続式
で行う場合、重縮合反応槽での平均滞留時間を重縮合反応に要する時間とみなす。
【0057】
(重縮合反応装置)
重縮合反応を行う重縮合反応槽は、通常、温度を制御するための熱媒体ジャケットを具備するものを用いるが、温度制御を容易にするため、重縮合反応槽内部に熱媒体コイルを具備してもよい。重縮合反応槽は、通常、鉛直又は水平方向を中心線とする攪拌装置を具備する。攪拌翼としては、鉛直方向を中心線とする攪拌装置の場合、アンカー翼、パドル翼、ファウドラー翼など、水平方向を中心線とする攪拌装置の場合、メガネ翼、車輪翼など、それぞれ、従前知られるものを利用することができる。
【0058】
重縮合反応槽としては、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等の公知のものを挙げることができる。反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は、反応速度よりも物質移動が分子量増大の支配因子になる傾向があるため、副反応を抑制しつつ主反応を進めるためには、可能な限り温度を下げ、表面更新性を上げたほうが本発明の目的を達成するには有利であり、表面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した単数又は複数の横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
【0059】
(PBTの粒状体)
前記の重縮合反応により得られたPBTを、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜出ダイに移送してストランド状に抜き出し、水冷しながら又は水冷後、カッターで切断してペレット状又はチップ状の粒状体とする。得られた粒状体は、引き続き公知の方法等で固相重縮合させて、その固有粘度を上げることもできる。
【0060】
(製造プロセス例)
以下、添付図面に基づき、本発明のPBTの製造方法の好ましい実施態様を説明する。図1は、本発明で採用するエステル化反応工程の一例の説明図、図2は、本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図である。
図1において、原料のテレフタル酸は、通常、原料混合槽(図示せず)でBGと混合され、原料供給ライン(1)からスラリーの形態でエステル化反応槽(A)に供給される。
また、本発明の触媒は、好ましくは触媒調整槽(図示せず)でBGの溶液とした後、触媒供給ライン(3)から供給される。図1では再循環BGの再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)を連結し、両者を混合した後、エステル化反応槽(A)の液相部に供給する態様を示した。
【0061】
エステル化反応槽(A)から留出するガスは、留出ライン(5)を経て精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分はBGであり、低沸成分の主成分は、水及びTHFである。
精留塔(C)で分離された高沸成分は抜出ライン(6)から抜き出され、ポンプ(D)を経て、一部は再循環ライン(2)からエステル化反応槽(A)に循環され、一部は循環ライン(7)から精留塔(C)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(8)から外部に抜き出される。一方、精留塔(C)で分離された軽沸成分はガス抜出ライン(9)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、凝縮液ライン(10)を経てタンク(F)に一時溜められる。タンク(F)に集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン(11)、ポンプ(E)及び循環ライン(12)を経て精留塔(C)に戻され、残部は、抜出ライン(13)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(14)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。エステル化反応槽(A)内で生成したオリゴマーは、抜出ポンプ(B)及びオリゴマーの抜出ライン(4)を経て抜き出される。
【0062】
図1に示す工程においては、再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン(1)はエステル化反応槽(
A)の液相部に接続されていてもよい。
次に、図2においてオリゴマーの抜出ライン(4)を通じて第1重縮合反応槽(a)に供給されたオリゴマーは、減圧下に重縮合されてプレポリマーとなった後、抜出用ギヤポンプ(c)及び抜出ライン(L1)を経て第2重縮合反応槽(d)に供給される。第2重縮合反応槽(d)では、通常、第1重縮合反応槽(a)よりも低い圧力で更に重縮合が進みポリマーとなる。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(e)及び抜出ライン(L3)を経て、第3重縮合反応槽(k)に供給される。第3重縮合反応槽(k)は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの攪拌翼を具備した横型の反応槽である。抜出ライン(L3)を通じて第2重縮合反応槽(d)から第3重縮合反応槽(k)に導入されたポリマーは、ここで更に重縮合反応が進められた後、抜出用ギヤポンプ(m)及びポリマー抜出ライン(L5)を経てダイスヘッド(g)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(h)で切断されてペレットとなる。符号(L2)、(L4)、(L6)は、それぞれ、第1重縮合反応槽(a)、第2重縮合反応槽(d)、第3重縮合反応槽(k)のベントラインである。フィルター(R)、(S)、(T)及び(U)は必ずしも全部設置する必要はなく、異物除去効果と運転安定性を考慮して適宜設置することができる。
【0063】
[3]PBTの物性
上記の本発明のBGをPBTの製造に用いる場合のPBTの好適な物性について、以下に説明する。
【0064】
(固有粘度)
固有粘度に特に制限はないが、機械的物性、ペレット化の安定性、成形性の観点からは、好ましくは0.50dL/g以上、更に好ましくは0.70dL/g以上である。本発明のPBTの固有粘度が前記下限値以上であると成形品の機械物性の点で好ましい傾向がある。一方、PBTの固有粘度は好ましくは1.50dL/g以下、更に好ましくは1.35dL/g以下である。PBTの固有粘度がかかる上限値以下であると成形性の点で好ましい傾向がある。
本発明のPBTの固有粘度は、後述の実施例の項に記載の方法で測定できる。
【0065】
(色調b値)
色調は、L,a,b表色系におけるb値で表示される。前記b値に特に制限は無いが、その下限は通常−5.0以上であり、−3.0以上であることが好ましい。一方、その上限は通常5.0以下であり、3.0以下であることが好ましい。
本発明のPBTの色調は、後述の実施例の項に記載の通り、測色式差計で測定できる。
【0066】
[4]PBTの組成物
本発明のBGをPBTの製造に用いる場合に得られたPBTに、必要に応じて下記の各種添加剤やPBT以外の樹脂を添加してPBTの組成物とすることができる。又、該組成物を用いて成形体にすることができる。
【0067】
(安定剤)
必要に応じて各種安定剤を添加することができる。安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3′,5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物;ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物などの抗酸化剤等が挙げられる。これらの安定剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。安定剤の添加効果を得るために
は、PBT100重量部に対し前記安定剤を0.01重量部以上添加することが好ましく、0.05重量部以上添加することがより好ましい。一方、経済性の観点から、PBT100重量部に対し前記安定剤を1重量部以下添加することが好ましい。
【0068】
(離型剤)
必要に応じて各種離型剤を添加することができる。離型剤としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸及びそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤等が挙げられる。これらの離型剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。離型剤の添加効果を得るためには、PBT100重量部に対し前記離型剤を通常0.01重量部以上添加することが好ましく、0.05以上添加することがより好ましい。一方、経済性の観点から、PBT100重量部に対し前記離型剤を1重量部以下添加することが好ましい。
【0069】
(充填材)
強化充填材を配合することができる。強化充填材としては、特に制限されないが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維などが挙げられる。これらの強化充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。上記の強化充填材の中では、無機充填材が好ましく、特にガラス繊維が好適に使用される。
【0070】
強化充填材が無機繊維又は有機繊維である場合、その平均繊維径は、特に制限されないが、通常1〜100μm、好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。また、平均繊維長は、特に制限されないが、通常0.1〜20mm、好ましくは1〜10mmである。
【0071】
強化充填材は、PBTとの界面密着性を向上させるため、収束剤又は表面処理剤で表面処理して使用することが好ましい。収束剤又は表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。強化充填材は、収束剤又は表面処理剤により予め表面処理しておくことができ、又は、PBT組成物の調製の際に、収束剤又は表面処理剤を添加して表面処理することもできる。強化充填材の添加量は、PBT100重量部に対し、通常150重量部以下、好ましくは5〜100重量部である。
【0072】
強化充填材と共に他の充填材を配合することができる。配合する他の充填材としては、例えば、板状無機充填材、セラミックビーズ、アスベスト、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの充填材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。板状無機充填材を配合することにより、成形品の異方性及びソリを低減することができる。板状無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、雲母、金属箔などを挙げることができる。これらの中ではガラスフレークが好適に使用される。その他の充填材の添加量は、PBT100重量部に対し、通常150重量部以下、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは10〜70重量部以下である。
【0073】
(難燃剤)
難燃性を付与するために難燃剤を配合することができる。難燃剤としては、特に制限されず、具体的には、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、その他の有機
難燃剤、無機難燃剤などが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等が挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等が挙げられる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物などが挙げられる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。これらの難燃剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。難燃剤の添加量は、PBT100重量部に対し、通常50重量部以下、好ましくは10〜40重量部である。
【0074】
(その他の添加剤)
必要に応じ、その他慣用の添加剤などを配合することができる。かかる添加剤としては、特に制限されず、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤の他、滑剤、触媒失活剤、結晶核剤、結晶化促進剤などが挙げられる。これらの添加剤は、重合途中又は重合後に添加することができる。更に、PBTに、所望の性能を付与するため、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの安定剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することができる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。その他の添加剤の添加量は、PBT100重量部に対し、通常5重量部以下、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0075】
(PBT以外の樹脂)
必要に応じて、PBT以外の樹脂を配合することができる。PBT以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸エステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、2種以上を組合せて使用することもできる。PBT以外の樹脂の添加量は、PBT100重量部に対し、通常90重量部以下、好ましくは1〜70重量部、更に好ましくは3〜50重量部以下である。
【0076】
(配合方法)
前記の種々の添加剤や樹脂の配合方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸又は2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。各成分は、付加的成分を含めて、混練機に一括して供給することができ、あるいは、順次供給することもできる。また、付加的成分を含めて、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合しておくこともできる。
【0077】
(成形方法)
本発明のBGをPBTの製造に用いて得られたPBT及びその組成物は、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法、すなわち、射出成形、中空成形、押し出し成形、プレス成形などの成形法によって成形体とすることができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法は次の通りである。
【0079】
<分析方法>
(1)BG中の2−メチル−1,3−プロパンジオールと環状アセタール化合物の含有量
ガスクロマト分析装置(島津製作所社製 GC−2025型)にて、極性カラム(J&W社製「DB−WAX」)、無極性カラム(J&W社製「DB−1」)を用い、有効炭素係数より算出した修正面積百分率法によりBGに含まれる各ピークの成分の含有量を求めた。尚、環状アセタール成分の量は微量であるために、溶媒によるサンプルの希釈を行わずにガスクロマト分析装置に注入した。
【0080】
尚、環状アセタール化合物は、GC−MSにて検出が可能であり、BGに含まれる他成分と区別することができる。解析に用いた代表的な環状アセタール化合物を以下に示すが、全てのフラグメントやシグナルを帰属させる必要はない。
2−エチル−1,3−ジオキセパン(環状アセタール)
GC−MS(EI):71、83、101、102
【0081】
さらに、ガスクロマト分析装置を用いた2−エチル−1,3−ジオキセパンの代表的な濃度算出方法を示す。まず、極性カラムを用いた測定(条件1)より、リテンションタイム38分のピークエリアから、2−メチル−1、3−プロパンジオールと2−エチル−1,3−ジオキセパンを合わせた濃度を求める(2物質のピークが重複しているため)。次に、無極性カラムを用いた測定(条件2)より、リテンションタイム14分のピークエリアから、2−メチル−1,3−プロパンジオールのみの濃度を求める。2−メチル−1、3−プロパンジオールと2−エチル−1,3−ジオキセパンを合わせた濃度から、2−メチル−1,3−プロパンジオールの濃度を除いた値から、2−エチル−1、3−ジオキセパンの濃度を求めた。
【0082】
GC条件の詳細は、以下の通りである。
条件1(極性カラム)
・分析カラム:J&W DB−WAX、60m×0.320mmid、df=0.5μ

・カラム流量:1mL/min
・スプリット比:1/90
・オーブン温度:70℃(15min)→10℃/min→150℃、175℃×45min
・試料室、検出器温度:240℃
・注入量:1μL
・キャリアガス:窒素
条件2(無極性カラム)
・カラム:J&W DB−1、60m×0.25mmid、df=1μm
・カラム温度:50℃(7min)→10℃/min→250℃(20min)
・注入口モード:スプリット(1/100)
・試料室、検出器温度:240℃
・注入量:0.8μL
・キャリアガス:窒素
【0083】
また、環状アセタール化合物の含有量は有効炭素係数での補正は実施せず、BGのエリア値と該環状アセタール化合物のエリア値の比率から算出した。
【0084】
(2)Σカルボニル価の測定方法
Σカルボニル価はBGを酸性条件下に加熱してBG中のアセタール化合物をカルボニル成分まで加水分解させた後、塩酸ヒドロキシルアミンと反応させ、生じた塩酸を電位差滴定法で測定して求めた、試料中のカルボニル成分の総量を示す値である。
【0085】
BG試料を100mLコニカルビーカーに5g精秤し、試料及びブランクのビーカーに、それぞれ10mLの塩酸ヒドロキシルアミン液(塩酸ヒドロキシルアミン(試薬特級)50gを水100mLに溶解し、塩酸8.5mLを加え、エチルアルコール(試薬特級)を加えて全量を1Lとした溶液)をホールピペットで正確に加え、冷却管で蓋をして、オイルバス中で60℃にて、2時間加熱した。その後、室温まで冷却後、メタノール40mLをメスシリンダーで加え、攪拌しながら自動滴定装置(東亜DKK社製「AUT−501」)を用いて滴定した。滴定液は0.1Nメタノール性水酸化カリウム溶液を用いた。滴定終了後、下記式(2)を用いてΣカルボニル価を算出した。
【0086】
Σカルボニル価=(A1−B1)×f×5.6/S1(mgKOH/g)・・・(2)(ここで、A1は滴定に要した0.1Nの水酸化カリウムの滴定量(mL)、B1はブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化カリウムの滴定量(mL)、S1は試料量(g)、fは0.1Nの水酸化カリウムのファクターである。)
【0087】
(3)固有粘度(IV)
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度1.0g/dLのポリマー溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(4)より求めた。
IV=((1+4KHηsp)0.5−1)/(2KHC)・・・(4)
(但し、ηSP=η/η−1であり、ηはポリマー溶液落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
【0088】
(4)PBTの末端カルボキシル基濃度(当量/トン)
ベンジルアルコール25mLにPBT0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定し、下記式で算出した。
末端カルボキシル基濃度=(A−B)×0.1×f/W(当量/トン)
但し、Aは、滴定に要した0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、Bはブランクでの滴定に要した0.01モル/Lの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μL)、WはPBT試料の量(g)、fは、0.01モル/Lの水酸化ナトリウムの力価である。
【0089】
(5)ペレット色調
ペレット状ポリエステルを内径30mm、深さ12mmの円柱状の粉体測定用セルに充填し、測色色差計Z300A(日本電色工業(株)社製)を使用して、JIS Z8730(1980)の参考例1に記載されるLab表示系におけるハンターの色差式の色座標によるb値を、反射法により、測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
【0090】
(参考例)
アリルアルコール法で製造したBG1000重量部を、圧力0.2kPa、フラスコ内温度102℃にて単蒸留を実施した。初留成分−1を500重量部、初留成分−2を200重量部をそれぞれ留出させた後に、中留出成分として250重量部の成分を得た。釜残成分を50重量部得た。
得られた中留出成分を更に単蒸留し、初留成分を175重量部カットした後、中留出成分を62.5重量部得た。
ここで、得られた各々の留分、釜残を分析した以下のように定めた。その品質を表1に示す。
アリルアルコール法で製造したBGを「BG−C」、初留成分―1を「BG−D」、初留成分―2を「BG−E」、中留出成分を「BG−A」、釜残成分を「BG−F」、中留
出成分を再度単蒸留した中留出成分を「BG−B」とする。
【0091】
(実施例1)
BG−Aを、酸素含有雰囲気下で貯蔵した。
即ち、BGを各々ステンレスボトル3個に気相部の体積とBGの体積が同じになるように入れ、空気置換ボックスを用いて、各々所定の酸素濃度に調整した窒素をボンベから連続流通し、酸素濃度計で、所定の酸素濃度になるまでボトルの気相部を置換したのちに密栓した。
この方法で、気相部をそれぞれ3%空気混入窒素(酸素濃度0.63%)、5%空気混入窒素(酸素濃度1.05%)、10%空気混入窒素(酸素濃度2.1%)の雰囲気とした。これらを60℃で10日間保持した。各々のBGの環状アセタールの含有量及びΣカルボニル価を測定した。その結果を表1に示す。なお、気体の「%」は「体積%」を表す。
【0092】
(実施例2)
BG−Bを実施例1と同様に、酸素含有雰囲気下で貯蔵した。その結果を表1に示す。
【0093】
(比較例1)
BG−Cを実施例1と同様に、酸素1.05%含有雰囲気下で貯蔵した。その結果を表1に示す。
【0094】
(比較例2)
BG−Dを実施例1と同様に、酸素1.05%含有雰囲気下で貯蔵した。その結果を表1に示す。
【0095】
(比較例3)
BG−Eを実施例1と同様に、酸素1.05%含有雰囲気下で貯蔵した。その結果を表1に示す。
【0096】
(比較例4)
BG−F(環状アセタール化合物量が「<1」は、測定限界(1重量ppm未満)を意味する)を実施例1と同様に、酸素1.05%含有雰囲気下で貯蔵した。その結果を表1に示す。
【0097】
(実施例3)
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計、留出管、減圧用排気口を備えた反応容器に、テレフタル酸113重量部、BG―A183重量部、さらに触媒としてテトラ−n−ブトキシチタンの6重量%BG溶液0.7重量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
【0098】
次に、系内を攪拌しながら150℃まで加温後、大気圧下、220℃に1時間で昇温させて、さらに2時間生成する水を留出させつつエステル化反応を行った。
次に、酢酸マグネシウム4水塩を水に溶解させ、続いて酢酸マグネシウム4水塩が1重量%となるように調製したBG溶液(酢酸マグネシウム4水塩、水、BGの重量比1:2:97)1.3重量部を添加した。
【0099】
次に、220℃で0.25時間保持後、0.75時間かけて245℃まで保持した。一方、圧力は重合開始から1.5時間かけて0.07kPaになるように減圧し、同減圧度で0.8時間重縮合反応を行った。その後、窒素復圧を行い、反応系を常圧に戻し重縮合を終了した。
得られたPBTを反応槽の底部からストランドとして抜き出し、10℃の水中を潜らせた後、カッターでストランドをカットすることによりペレット状のPBTを得た。
得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは2.3であり、色調に優れていた。結果を表2に示した。
【0100】
(実施例4)
実施例3おいて、BG−Aをその保管容器の気相部を5体積%空気混入窒素(酸素濃度:1.05体積%)、で満たした状態で60℃10日間保持したBGを使用した以外は実施例3と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは2.6であり、色調に優れていた。結果を表2に示した。
【0101】
(実施例5)
実施例3おいて、BG−Aの代わりにBG−Bを用いた以外は実施例3と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは1.8であり、色調に優れていた。b値の結果を表2に示した。
【0102】
(実施例6)
実施例4おいて、BG−Aの代わりにBG−Bを用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、溶液ヘーズは0.1%、色調Co−bは2.0であり、色調に優れていた。b値の結果を表2に示した。
【0103】
(比較例5)
実施例3おいて、BG−Aの代わりにBG−Cを用いた以外は実施例3と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは3.0であった。b値の結果を表2に示した。
【0104】
(比較例6)
実施例4おいて、BG−Aの代わりにBG−Cを用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは3.6であった。b値の結果を表2に示した。
【0105】
(比較例7)
実施例3おいて、BG−Aの代わりにBG−Dを用いた以外は実施例3と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは4.1であった。b値の結果を表2に示した。
【0106】
(比較例8)
実施例4おいて、BG−Aの代わりにBG−Eを用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは4.7であった。b値の結果を表2に示した。
【0107】
(比較例9)
実施例3おいて、BG−Aの代わりにBG−Eを用いた以外は実施例3と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは2.5であった。b値の結果を表2に示した。
【0108】
(比較例10)
実施例4おいて、BG−Aの代わりにBG−Dを用いた以外は実施例4と同様な操作を
行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは3.0であった。b値の結果を表2に示した。
【0109】
(比較例11)
実施例3おいて、BG−Aの代わりにBG−Fを用いた以外は実施例3と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは8.0であった。b値の結果を表2に示した。
【0110】
(比較例12)
実施例4おいて、BG−Aの代わりにBG−Dを用いた以外は実施例4と同様な操作を行い、得られたPBTの固有粘度は0.83dL/g、末端カルボキシル基濃度は6当量/トン、色調Co−bは9.1であった。b値の結果を表2に示した。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
表1及び表2の結果より、実施例1及び2は比較例1及び2との比較において環状アセタール、Σカルボニル価の増加抑制効果が明瞭である。同様に実施例4及び6は比較例10及び12との比較において、PBTのb値の増加抑制効果が明瞭である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明により、BGの貯蔵において、気相部を完全に窒素置換する事が困難な場合に、残存する酸素と長期間接触しても、品質劣化が少ないBGを得ることができ、色調良好なポリエステルを得ることができる。
【符号の説明】
【0115】
1: 原料供給ライン
2: 再循環ライン
3: 触媒供給ライン
4: オリゴマーの抜出ライン
5: 留出ライン
6: 抜出ライン
7: 循環ライン
8: 抜出ライン
9: ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
15:触媒供給ライン
16:触媒供給ライン
A: エステル化反応槽
B: 抜出ポンプ
C: 精留塔
D、E:ポンプ
F: タンク
G: コンデンサ
L1、L3:抜出ライン
L2、L4、L6:ベントライン
L5:ポリマー抜出ライン
L8:BG供給ライン
L7:金属化合物供給ライン
a: 第1重縮合反応槽
c、e、m:抜出用ギヤポンプ
d: 第2重縮合反応槽
k: 第3重縮合反応槽
g: ダイスヘッド
h: 回転式カッター
R、S、T、U:フィルター
図1
図2