特許第6241387号(P6241387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241387
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】脂肪族ジオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/90 20060101AFI20171127BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 29/94 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C07C29/90
   C07C31/20 B
   C07C29/94
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-150122(P2014-150122)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-42635(P2015-42635A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-153795(P2013-153795)
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 翔平
(72)【発明者】
【氏名】井澤 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 賢
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−172838(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/012047(WO,A1)
【文献】 特開2013−032350(JP,A)
【文献】 特開平01−168345(JP,A)
【文献】 特開昭61−197534(JP,A)
【文献】 特開平06−172235(JP,A)
【文献】 特開2000−086557(JP,A)
【文献】 特表2000−507566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/90
C07C 29/94
C07C 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として、脂肪族ジオール、炭素原子数5及び/又は炭素原子数6のアルデヒド並び
炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドと脂肪族ジオールとの反応で生成するアセタ
ールの混合物を精製し、生成物として、脂肪族ジオールを得る脂肪族ジオールの製造方法
において、該混合物中の炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドと脂肪族ジオールとの
反応で生成するアセタールを周期表の第8〜11族に属する金属を含む固体触媒の存在下
で水素化反応を行うことにより炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドと脂肪族ジオー
ルとの反応で生成するアセタールの濃度を低減する際に、該混合物に対して含窒素化合物
が0.05〜20.0wtppm存在する、脂肪族ジオールの製造方法。
【請求項2】
前記固体触媒の酸点が0.5NH-μmol/g以上である請求項1に記載の脂肪族ジ
オールの製造方法。
【請求項3】
前記周期表の第8〜11族に属する金属がパラジウムを含む請求項1又は2に記載の脂
肪族ジオールの製造方法。
【請求項4】
前記水素化反応の際に水が200ppm以上存在する請求項1〜3のいずれか1項に記
載の脂肪族ジオールの製造方法。
【請求項5】
前記脂肪族ジオールの大気圧下における沸点と炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒ
ドと脂肪族ジオールとの反応で生成するアセタールの大気圧下における沸点との差が50
℃未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂肪族ジオールの製造方法。
【請求項6】
前記脂肪族ジオールの主鎖の炭素原子数が3以上である請求項1〜5のいずれか1項に
記載の脂肪族ジオールの製造方法。
【請求項7】
前記炭素原子数5及び/又は炭素原子数6のアルデヒドがフルフラール、メチルフルフ
ラール及びヒドロキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上である請求項
1〜6のいずれか1項に記載の脂肪族ジオールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族ジオールの製造方法に関する。より好適には、粗1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール含有液を精製して高純度の1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジオール類は最も大量に使われる高分子化学品原料の一つであり、ポリエステル、ポリウレタンなどの原料モノマーとして広く利用されている他、各種溶媒としても用いられる。例えば、脂肪族ジオール類は一部ガスの吸収溶媒として用いられる。特に、含酸素化合物とは親和性もよく、好適な吸収溶媒として用いられる(特許文献1)。
従来、脂肪族ジオール類は石油資源を原料として工業的に製造されてきた。
脂肪族ジオールの中でも、例えば、1,4−ブタンジオール(以下、「1,4BG」と略記することがある。)は様々な溶剤として使用される極めて有用な物質である。従来、その他の脂肪族ジオール類と同様に、石油などの化石燃料を原料として工業的に製造されてきた。その製造方法としては、例えば、ブタジエンを原料として、酢酸及び酸素を用いてアセトキシ化反応を行って中間体としてジアセトキシブテンを得、そのジアセトキシブテンを水添、加水分解することで1,4BGを製造する方法;マレイン酸、コハク酸、無水マレイン酸及び/又はフマル酸を原料として、それらを水素化して1,4BGを含む粗水素化生成物を得る方法;アセチレンを原料としてホルムアルデヒド水溶液と接触させて得られるブチンジオールを水素化して1,4BGを製造する方法;などが挙げられる。また、石油枯渇の懸念にともなう代替資源模索の傾向と環境影響を考慮し、近年では、バイオマス資源に由来する脂肪族ジオール類の製造例も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−272288号公報
【特許文献2】特開2013−159594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイオマス資源由来のフルフラール類からのフラン類の製造プロセスではフラン類が軽沸点ガスとなるため、吸収による捕集が好ましく、好ましい吸収溶媒としてフルフラールが知られているが(特許文献2)、溶媒の安定性の側面から脂肪族ジオールが好ましいことが分かった。しかしながら、フラン類の原料であるフルフラール類や反応で生成するアルデヒド類が存在すると、脂肪族ジオール類と反応して分離困難なアセタールを形成し、蒸留による脂肪族ジオールの精製を困難にする問題が判明した。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、脂肪族ジオールを工業的規模で製造するにあたり、バイオマス資源由来のアセタール類を効率よく低減できる、工業的に有利な脂肪族ジオールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、脂肪族ジオール、炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒド並びにある特定の構造を有するアセタールの混合物から脂肪族ジオールを製造する際に、その該混合物中のアセタールを周期表の第8〜11族に属する金属を含む固体触媒の存在下で水素化反応により、そのアセタールの濃度を低減する方法を見出した。そして、その水素化反応の際に、使用する固体触媒が著しく劣化する新たな問題が発生し
、その問題を解決すべく、混合物に対してある特定の含窒素化合物をある特定量存在させることで、固体触媒が劣化することなく安定的にアセタールを低減でき、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の[1]〜[7]を要旨とする。
[1]原料として、脂肪族ジオール、炭素原子数5及び/又は炭素原子数6のアルデヒド
並びに炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドと脂肪族ジオールとの反応で生成するア
セタールの混合物を精製し、生成物として、脂肪族ジオールを得る脂肪族ジオールの製造
方法において、該混合物中の炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドと脂肪族ジオール
との反応で生成するアセタールを周期表の第8〜11族に属する金属を含む固体触媒の存
在下で水素化反応を行うことにより炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドと脂肪族ジ
オールとの反応で生成するアセタールの濃度を低減する際に、該混合物に対して含窒素化
合物が0.05〜20.0wtppm存在する、脂肪族ジオールの製造方法。
【0009】
[2]前記固体触媒の酸点が0.5NH-μmol/g以上である[1]に記載の脂肪族
ジオールの製造方法。
[3]前記周期表の第8〜11族に属する金属がパラジウムを含む[1]又は[2]に記
載の脂肪族ジオールの製造方法。
[4]前記水素化反応の際に水が200ppm以上存在する[1]〜[3]のいずれか1
に記載の脂肪族ジオールの製造方法。
[5]前記脂肪族ジオールの大気圧下における沸点と前記炭素数5及び/又は炭素数6の
アルデヒドと脂肪族ジオールとの反応で生成するアセタールの大気圧下における沸点との
差が50℃未満である[1]〜[4]のいずれか1に記載の脂肪族ジオールの製造方法。
[6]前記脂肪族ジオールの主鎖の炭素原子数が3以上である[1]〜[5]のいずれか
1に記載の脂肪族ジオールの製造方法。
[7]前記炭素原子数5及び/又は炭素原子数6のアルデヒドがフルフラール、メチルフ
ルフラール及びヒドロキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上である[
1]〜[6]のいずれか1に記載の脂肪族ジオールの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脂肪族ジオールを工業的規模で製造する際に、バイオマス資源によって含有されるアセタールを高い転化率で他の物質に変換し、その濃度を低減できる。また、使用する触媒の劣化を抑制でき、長期にわたって安定的に脂肪族ジオールを製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明するが、以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書における、下限値又は上限値は、その下限値又は上限値の値を含む範囲を意味する。
【0012】
本発明のジオールの製造方法における精製プロセスは、バイオマス資源由来のアセタールを含有する1,4BG含有組成物に好適に適用される。
本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、バイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。具体的には、木材、稲わら、コーンコブ、EFB、タピオカカス、バガス、植物油カス、古紙、製紙残渣等の非可食バイオマス資源水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等の廃棄物、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、芋、そば、大豆、油脂、等の可食バイオマスが挙げられる。この中でも、非可食バイオマス資源が好ましく、木材、稲わら、コーンコブ、EFB、タピオカカス、バガス、古紙等の非可食バイオマス資源が好ましく、より好ましくは木材、稲わら、コーンコブ、EFB、バガス、古紙等が挙げられ、最も好ましくは木材、コーンコブ、EFB、バガスが挙げられる。
【0013】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、バイオマス資源は、一般に、窒素元素やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含有する。
これらのバイオマス資源は、その方法は特に限定はされないが、例えば、酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程などを経て炭素源へと誘導される。その工程には、バイオマス資源をチップ化する、削る、磨り潰すなどの前処理による微細化工程が含まれることが多く、必要に応じて、更にグラインダーやミルによる粉砕工程も含まれる。
【0014】
こうして微細化されたバイオマス資源は、通常、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へと誘導される。その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などの強酸による酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理などの化学的方法;微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法;微生物や酵素処理による加水分解等の生物学的処理などが挙げられる。
【0015】
上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどのヘキソース;アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース;ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類;酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リレノン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の油脂;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられる。このうち、グルコース、フルクトース、キシロース、サッカロース等のヘキソース、ペントース又は2糖類が好ましく、特にグルコース、キシロースが好ましい。より広義の植物資源由来の炭素源としては、紙の主成分であるセルロースも好ましい。
【0016】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、原料である脂肪族ジオールを含有する混合物中に含有する炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドは上記のバイオマス資源由来の炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドであれば特に限定されないが、例えばフルフラール、2,5−ジホルミルフラン、5−ヒドロキシメチルフルフラール、5−メチルフルフラール、4−デオキシ−3−ヘキソスロース、5−ヒドロキシ−3−オキソペンタナールなどが挙げられ、より好ましくはフルフラール、メチルフルフラール及びヒドロキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる1種以上である。また、炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドの置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれ
ているものであってもよい。更に、原料である脂肪族ジオールを含む混合物中に含まれる、上述の炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒド化合物は一種類であっても二種類以上あってもよい。これらの炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドは糖の化学変換、熱分解、発酵などによって生成する。これらの濃度も任意であるが、好ましくは1質量ppm以上、50質量%以下、より好ましくは10質量ppm以上、10質量%以下、特に好ましくは100質量ppm以上、5質量%以下である。アルデヒドの濃度が低いほど水素化触媒への負荷が小さくなり、より長時間の連続運転が可能となるが、水素化以外の精製系への負荷が増加する。 本発明の脂肪族ジオールの製造方法におけるアセタールは下記式(I)で示される。
【0017】
【化2】
【0018】
式(I)中、R’は該炭素原子数5及び/又は炭素原子数6のアルデヒドの有機残基を示し、R、Rはそれぞれ炭素原子数が2以上のアルキル基を示す。なお、本発明における「該炭素原子数5及び/又は炭素原子数6のアルデヒドの有機残基」とは、上述のアルデヒドからカルボニル基(−CHO)が除かれた残りの有機基のことを言う。なお、RとRは同一でも異なっていてもよく、RとRの炭素原子同士が結合し脂環骨格を構成してもよく、この場合、RとRの炭素原子数の和が3以上のアルキル基を示す。このようなアセタールは炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドと脂肪族ジオールとの反応で生成するアセタールが挙げられるが、炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒドの反応生成物であれば特に限定されない。その中でも好ましくは、フルフラール誘導体、メチルフルフラール誘導体及びヒドロキシメチルフルフラール誘導体からなる群より選ばれる1種以上であり、具体的には、5−メチルフルフラール誘導体、5−ヒドロキシメチルフルフラール誘導体が挙げられる。これらアルデヒドと1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールとのアセタールが好ましい。特に好ましくは、フルフラール、5−メチルフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラールと1,4−ブタンジオールとのアセタールである。
【0019】
本発明の脂肪族ジオールとしては、直鎖の脂肪族炭化水素系ジオール、分岐鎖を有する脂肪族炭化水素系ジオール又は脂環式炭化水素系ジオールなどが好適なものとして挙げられる。これらの中でも直鎖の脂肪族炭化水素系ジオールが好ましく、より好ましくは、主鎖の炭素原子数が2以上10以下の直鎖の脂肪族炭化水素系ジオールであり、特に好ましくは主鎖の炭素原子数が3以上6以下の直鎖の脂肪族炭化水素系ジオールである。なお、これらのジオールは置換基を有していてもよく、置換基としては分子量が100〜400程度のものが好ましい。
【0020】
本発明の脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、1,9−ノナンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0021】
これらのうち、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール(1,4BG)、1
,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールが好ましく、その中でも、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
本発明において、原料である、上記の脂肪族ジオールを含む混合物は、上記のバイオマス資源より得られるグルコース、キシロース等の炭素源を化学変換して得られる化合物を脂肪族ジオールで吸収して得たものが挙げられる。また、発酵法により糖類から直接製造されたものや発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物又は環状エーテルを化学反応によりジオールに変換したものも挙げられる。
【0022】
例えば、脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオールの場合に、原料である脂肪族ジオールを含む混合物を得る手段としては、上記のバイオマス資源より得られるキシロース等を処理することにより得られるフルフラール類と1,4−ブタンジオールを混合して製造してもよいし、上記のバイオマス資源より得られるグルコース等の炭素源から発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン及びγ−ブチロラクトン等から化学合成により製造してもよいし、上記のバイオマス資源より得られるグルコース等の炭素源から発酵法で直接1,4−ブタンジオールを製造してもよいし、上記のバイオマス資源より得られるグルコース等の炭素源から発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でもキシロース等から得られるフルフラールと1,4−ブタンジオールを混合して得る方法が好ましい。
【0023】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法は、大気圧下における脂肪族ジオールの沸点と上記式(I)で示されるアセタールの大気圧かにおける沸点との差が100℃未満である場合に特に効果を発揮し、より好ましくは沸点の差が80℃未満、更に好ましくは50℃未満である。沸点の差が小さい場合には、本発明の水素化処理が有効となるが、沸点の差が大きいと蒸留による分離が可能となる。
【0024】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、原料である脂肪族ジオールを含む混合物中の上記式(I)で示されるアセタール濃度を低減する際に、該混合物に対して含窒素化合物が窒素原子換算の濃度で0.05〜20.0wtppm存在することを必須としている。含窒素化合物の窒素原子換算の濃度として、好ましくは0.02質量ppm以上、18.0質量ppm以下であり、特に好ましくは0.05質量ppm以上、15質量ppm以下である。
【0025】
窒素原子濃度が上昇すると、触媒が劣化してしまう。また、これ以下の濃度にするためには精製負荷が増大してしまう。
本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、含窒素化合物としては、例えば、下記式(1)の化合物が挙げられる。
【0026】
【化3】
【0027】
なお、式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよく、該置換基中にはヘテロ原子が含まれていても良い。また、R〜Rは同一でも異なっていてもよいが、R1〜R3が全て水素原子である場合は除く。
【0028】
また、R〜Rは、触媒の劣化抑制や塩基性向上の観点から、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアミノ基であることが好ましい。この場合、R〜Rは同一でも異なっていてもよいが、R〜Rが全て水素原子である場合は除く。アルキル基としては、鎖状(直鎖又は分岐)アルキル基又は環状アルキル基であり、鎖状アルキル基の場合は、通常、炭素原子数1〜20であり、好ましくは1〜12である。その具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。また、環状アルキル基の場合、通常、炭素原子数3〜20であり、好ましくは4〜11である。その具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等である。アルキル基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、分子量が200程度以下のものを用いる。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0029】
アルケニル基としては、鎖状(直鎖又は分岐)アルケニル基又は環状アルケニル基であり、鎖状アルケニル基の場合は、通常、炭素原子数1〜20であり、好ましくは1〜12であり、その具体例としては、例えばエテニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等などが挙げられる。また、環状アルキル基の場合、通常、炭素原子数3〜20であり、好ましくは4〜11である。その具体例としては、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等である。アルケニル基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、分子量が200程度以下のものを用いる。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0030】
アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、メシチル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、イソキサゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、チオフェニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、ピロリル基、ピラニル基、フリル基、フラザニル基、イミダゾリジニル基、イソキノリル基、イソインドリル基、インドリル基、キノリル基、ピリドチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾフラニル基、イミダゾピリジニル基、トリアゾピリジニル基、プリニル基等が挙げられ、炭素数が通常5〜20であり、好ましくは5〜12であり、酸素、窒素、硫黄等を含有するヘテロアリール基を含む。アリール基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリーロキシ基、炭素数7〜12のアルキルアリール基、炭素数7〜12のアルキルアリーロキシ基、炭素数7〜12のアリールアルキル基、炭素数7〜12のアリールアルコキシ基、ヒドロキシ基、などが挙げられる。また、この置換基中に更に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0031】
具体例としては、フェニル基、ベンジル基、メシチル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−t−ブチルフェニル基、
2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4
−クロロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−アミノフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基などである。
【0032】
アルコキシ基としては、通常、炭素原子数1〜20であり、好ましくは1〜12である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、などが挙げられる。アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、分子量が200程度以下のものを用いる。
【0033】
また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれるものであってもよい。
アミノ基としては、通常、炭素原子数0〜20であり、好ましくは0〜12である。その具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基などが挙げられる。アミノ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、分子量が200程度以下のものを用いる。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0034】
アルキルチオ基としては、通常、炭素原子数1〜20であり、好ましくは1〜12である。その具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基などが挙げられる。アルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、分子量が200程度以下のものを用いる。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。
【0035】
アリールチオ基としては、通常、炭素原子数6〜20であり、好ましくは6〜12である。その具体例としては、フェニルチオ基、トリルチオ基などが挙げられる。アリールチオ基が有していてもよい置換基としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく特に限定されないが、例えば、アリール基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルフィド基などが挙げられ、通常、分子量が200程度以下のものを用いる。また、この置換基中に、酸素、窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が含まれているものであってもよい。また、RとR、RとR、RとRはそれぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。
【0036】
このような化合物としては、具体的に、例えば、オクチルアミン、ノニルアミン、1−アミノデカン、アニリン、フェネチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、N−メチルアニリン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジシクロヘキシルアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N−ブチルピロール、N−ブチル−2,3−ジヒドロピロール、N−ブチルピロリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,3−ジヒドロ−1H−インドール、4−アミノメチルピペリジン、4−アミノ−5,6−ジヒドロ−2−メチルピリミジン、2,3,5,6−テトラメチ
ルピラジン、3,6−ジメチルピリダジンなどが好ましく、更に酸素原子を含むものとしては、2−エチルモルホリン、N−メトキシカルボニルモルホリン、4−アミノブタノール、2−アミノブタノール、プロリノール、3−ヒドロキシピペリジン、4−ヒドロキシピペリジン、テトラヒドロフルフリルアミン、3−アミノテトラヒドロピランなどが好ましい。更に好ましくは、プロリノール、3−ヒドロキシピペリジン、4−アミノブタノール、テトラヒドロフルフリルアミンなどのアミノアルコール又は環状構造を持つアミンである。また、本発明で含まれる、上述の式(1)で示される含窒素化合物は一種類であっても二種類以上あってもよい。
【0037】
また更に、本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、含窒素化合物としてアミドを含むことも好ましい。具体的には、カルボン酸アミドを含むことが好ましい。カルボン酸アミドとしては、1級アミド、2級アミド、3級アミドを用いることができ、N置換の置換基数は0〜2の範囲でN−アルキル置換アミド、N−アルケニル置換アミド、N−アリール置換アミドなどが用いられる。また、該置換基中にはヘテロ原子が含まれていても良く、置換基は同一でも異なっていてもよい。一方、カルボニル側の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。また、上記置換基はそれぞれ互いに連結して環を形成していてもよい。副反応や分解等を抑制できるという観点から、カルボニル側の置換基としてはアルキル置換基が好ましい。
【0038】
このような化合物としては、具体的に、例えば、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状骨格のアミド類、ベンズアミドなどの芳香族アミド類、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、2−ピペリドン、N−メチルピペリドンなどの環状アミド類が挙げられ、更に好ましくは、更に好ましくは、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンが挙げられる。特に好ましくは2−ピロリドン、N−メチルピロリドンである。また、本発明のアミドは一種類であっても二種類以上あってもよい。
【0039】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、含窒素化合物を窒素原子換算の濃度として、原料である脂肪族ジオールを含む混合物に対して0.01質量ppm以上20.0質量ppm以下の量を存在させる方法としては、特に限定されないが、バイオマス資源由来のフルフラールと脂肪族ジオールの混合比率で調整してもよいし、バイオマス資源由来の原料である脂肪族ジオールを含む混合物に含まれる該含窒素化合物を予め蒸留したり、陽イオン交換樹脂と接触させたり、活性白土などで処理したり、酸性物質を添加して塩を形成させ、蒸留したりする方法などが挙げられる。本発明の脂肪族ジオールの製造方法において、水素化反応を行う際の水分濃度としては、特に限定されないが、10質量ppm〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは100質量ppm〜10質量%であり、特に好ましくは、200質量ppm〜1質量%である。この水分濃度が高過ぎると後工程で多量の水分を除去する必要が生じ、不適となる。一方、水分濃度が低すぎると、炭素数5及び/又は炭素数6のアルデヒド誘導体の分解効率が低下し好ましくない。
【0040】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法は、原料として、脂肪族ジオール、炭素原子数5及
び/又は炭素原子数6のアルデヒド並びに式(I)で示されるアセタールの混合物中の式(I)で示されるアセタールを周期表の第8〜11族に属する金属を含む固体触媒の存在下で水素化反応を行うことにより、その濃度を低減するが、その水素化反応に用いる固体触媒及び水素化の反応条件は、後述する通りである。
【0041】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法の水素化反応に用いられる固体触媒は、周期律表の第8〜11族金属から選ばれた少なくとも1種の金属を含有する。第8〜11族遷移金属としては、具体的には、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金などの1種又は2種以上を担持したものである。この中でもルテニウム、パラジウムが好ましく、中でも、触媒コストと触媒活性の面でパラジウムが最も好ましい。なお、これらの金属を併用してもよい。
【0042】
なお、金属がパラジウムの場合、触媒の調製に使用されるパラジウム源としては、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、水酸化パラジウム、酸化パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、テトラアンミンパラジウムクロリド、アリル(シクロペンタジエニル)パラジウム、アリル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)パラジウム、ビス(アリル)パラジウム、等が挙げられる。
【0043】
固体触媒中の第8〜11族に属する金属元素の形態は、金属単体であっても、酸化物、水酸化物、その他各種の塩などであっても差し支えない。また、金属酸化物等が存在する場合には、反応を開始する前に水素ガスで事前に還元活性化処理を行うなどして、金属単体に変換する処理を行うことも可能であるが、そのまま反応を開始しても差し支えない。即ち、水素化反応系には水素ガスが導入されるため、反応中にこれらの酸化物等は還元されて活性金属元素となる。
【0044】
本発明の脂肪族ジオールの製造方法の水素化反応に用いられる固体触媒は、特に限定されないが、必要に応じて、担体を有していてもよく、具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、活性炭、グラファイト、ケイソウ土などの担体に担持させて使用することが好ましく、この中でもシリカや活性炭の1種又は2種以上を好ましく用いることができ、特に好ましくは活性炭である。活性炭が優れている理由として、金属固体触媒に酸点が付与され、酸強度が増加する事が挙げられる。
【0045】
固体触媒の酸点としては、酸点が0.5NH-μmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは、1.0NH-μmol/g以上、更に好ましくは1.5NH-μm
ol/g以上である。一方、酸点の上限は、特に限定されないが、50NH-μmol/
g以下であることが好ましく、より好ましくは、30NH-μmol/g以下、更に好ましくは20NH-μmol/g以下である。固体触媒の酸点は、具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。酸点が低すぎるとアセタール等の加水分解能力が低下し、結果として水素化効率が悪化する。酸点が高すぎると水素化反応の副反応が増大する。
【0046】
固体触媒中の周期表第8〜11族に属する金属元素成分含有量(ここで、固体触媒中の周期表第8〜11族に属する金属元素成分含有量とは、周期表第8〜11族に属する金属元素が金属酸化物等の形態である場合は、その金属酸化物等としての含有量である。)は、特に限定されないが、0.5重量%以上、80重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1重量%以上、20重量%以下、特に好ましくは1.5重量%以上、5重量%以下である。
【0047】
上記範囲よりも金属元素成分含有量が少なく、担体含有量が多いと触媒有効成分としての金属元素量が不足することにより高い水素化効率を得ることができず、上記範囲よりも
金属元素成分含有量が多く、担体含有量が少なくても、触媒強度低下のために高い水素化効率を得ることができない。
本発明における固体触媒は、周期表第8〜11族に属する金属元素を含有していれば、その他の金属元素を含んでいても差し支えない。含んでいてもよい他の金属元素としては、例えば、クロム、マンガン、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、レニウム、カルシウムなどが挙げられる。これらの金属元素も金属元素そのもの、酸化物、水酸化物、その他各種の塩の形態で含有されていても差し支えない。
【0048】
なお、固体触媒の形状や大きさには特に制限はなく、粉末状、顆粒状、粒状、更にはペレット状等の成形品であっても良い。また、固体触媒の大きさについても任意であるが、例えばペレット状に成形された固体触媒の場合、直径1〜20mmで、厚さ1〜20mmであることが好ましい。
このような固体触媒は、担体を周期表第8〜11族金属塩の水溶液中に浸漬して金属塩を担持させた後、焼成し、必要に応じて成形するなどの方法で製造することができる。本発明で水素化を行う際の反応温度は好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜150℃、更に好ましくは40〜130℃の範囲である。この温度が高すぎると、触媒劣化が促進されてしまう。更に高沸副生物の量が増大してしまう。反応温度が低すぎると反応はほとんど進行しない。
【0049】
水素化反応における水素ガス圧力は特に限定されないが、ゲージ圧力で0.1〜100MPaの範囲、好ましくは0.5〜10MPa、更に好ましくは1〜6MPaの範囲である。この圧力が低すぎると、反応速度が遅く生産性が低下する。圧力が高すぎた場合には反応器の耐圧負荷、コンプレッサー負荷が増大し、建設費が大幅に増加してしまう。
また、空塔基準での混合液の滞留時間は、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、特に好ましくは30分以上である。また、100時間以下が好ましく、更に好ましくは50時間以下、特に好ましくは10時間以下である。この滞留時間が短すぎると反応はほとんど進行しない。また、長すぎる場合には触媒充填層が長大となり反応器の設備費増加及び触媒量増加により経済性が大幅に悪化してしまう。
【0050】
上記の空塔基準の滞留時間から求められるように、触媒充填量は1分あたりの導入液流量に対して、5容量倍以上が好ましく、より好ましくは10容量倍以上であり、特に好ましくは30容量倍である。また、6000容量倍以下が好ましく、更に好ましくは3000容量倍以下、特に好ましくは600容量倍以下である。触媒充填量が少なすぎると反応はほとんど進行しない。また、触媒充填量が多すぎた場合には触媒コストが増大して経済性が大幅に悪化してしまう。
【0051】
反応形式は固定床、トリクルベッド、多管式など種々の固体触媒による一般的な充填層型の水素化用反応器の全てが使用可能であるが、好ましくは固定床反応器ならびにトリクルベッド反応器のいずれかである。この反応器は一機、あるいは複数機を使用することが可能である。
本発明の脂肪族ジオールの製造方法の水素化反応において、固体触媒が充填された充填層に、原料である上述の脂肪族ジオール含有する混合物を流通させて水素化反応を行うことが好ましい。また本発明の脂肪族ジオールの製造方法の水素化反応において、必要に応じて、反応に悪影響を与えない種類の溶媒を使用してもよい。使用できる溶媒としては、特に制限されないが、具体的には、水、メタノール、エタノール、オクタノール、ドデカノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;その他、ヘキサン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類が挙げられる。
【0052】
水素化反応は、上記構成を満たす限りにおいて各々の反応工程を複数の反応器で構成し
た多段階に分割して行っても良い。
なお、本発明の脂肪族ジオールの製造方法によって精製された脂肪族ジオールは、蒸留等の公知の方法により分離精製される。蒸留等の公知の方法による精製と組み合わせることで、水素化工程の負荷を低減することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、1,4−ブタンジオール(1,4BG)、フルフラール及び1,4BGとフルフラールのアセタールの分析は(株)島津製作所製ガスクロマト分析装置「島津GC−2014型」にて、GLサイエンス社製「PEG−20Mカラム(極性)」を用い、ガスクロマトグラフィーにより行った。含窒素化合物の窒素原子換算濃度は試料をアルゴン及び酸素雰囲気下で燃焼させ、発生したガスを(株)三菱化学アナリテック社製「微量窒素計TN-10型」にて測定した。水分濃度は、三菱化学株式会社製「CA−2
1」を用い、カールフィッシャー法にて測定した。触媒の酸強度は日本ベル社製の全自動昇温脱離スペクトル装置(TPD−1−ATw)を用い、試料をメノウ乳鉢で粉砕し、He下、200℃で乾燥し、付着した水分を除去後、100℃でアンモニアを吸着させ、100℃で過剰なアンモニアを真空脱気後にNH3−TPDで100℃から600℃まで10℃/minで測定した。なお、230℃以上にピークトップがあるものを酸点(強い酸点)としてカウントした。フルフラールは兼松ケミカル製の非可食原料由来フルフラールを用いた。
【0054】
[実施例1]
市販の1,4BG(三菱化学株式会社製)にフルフラール濃度が5000質量ppm、含窒素化合物の濃度が窒素原子換算で0.06質量ppmになるように、フルフラールを含有する1,4BG溶液を調製した。この1,4BG溶液を窒素雰囲気下、150℃で1
時間加熱を行った結果、フルフラール、1,4BGとフルフラールのアセタールの濃度はそれぞれ、408質量ppm、2235質量ppmであり、水分濃度は1240質量ppmであった。加熱後の1,4BG溶液50gとPd担持活性炭触媒(Pd含有率0.9質量%、酸点6.3NH-μmol/g)0.5gを混合し、100mLオートクレーブに充填した。水素圧力0.9MPa、オートクレーブ内温110℃で4時間水素化反応を実施した。反応液を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、フルフラール転化率は100%であり、フルフラールと1,4BGより生成するアセタールの転化率は99.3%であった。
【0055】
[実施例2]
水分濃度を6100質量ppmとした以外は実施例1と同様に水素化反応を実施した。反応液を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、フルフラール転化率は100%であり、フルフラールと1,4BGより生成するアセタールの転化率は100%であった。
【0056】
[実施例3]
含窒素化合物の濃度が窒素原子換算で1.0質量ppmになるように、トリオクチルアミンを添加した以外は実施例1と同様に水素化反応を実施した。反応液を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、フルフラール転化率は100%であり、フルフラールと1,4BGより生成するアセタールの転化率は98.5%であった。
【0057】
[実施例4]
含窒素化合物の濃度が窒素原子換算で9.3質量ppmになるように、トリオクチルアミンを添加した以外は実施例1と同様に水素化反応を実施した。反応液を取出し、ガスク
ロマトグラフィーで分析した結果、フルフラール転化率は100%であり、フルフラールと1,4BGより生成するアセタールの転化率は96.9%であった。
【0058】
[実施例5]
100mLオートクレーブの代わりに1Lのオートクレーブを使用し、水素圧力2.0MPaとした以外は実施例1と同様に水素化反応を実施した。反応液を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、フルフラール転化率は100%であり、フルフラールと1,4BGより生成するアセタールの転化率は100%であった。
【0059】
[実施例6]
Pd担持活性炭触媒としてPd含有率0.9重量%、酸点2.0NH-μmol/g)を用いた以外は実施例1と同様に水素化反応を実施した。反応液を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、フルフラール転化率は95.7%であり、フルフラールと1,4BGより生成するアセタールの転化率は97.7%であった。
【0060】
[比較例1]
含窒素化合物の濃度が窒素原子換算で32質量ppmになるように、トリオクチルアミンを添加した以外は実施例1と同様に水素化反応を実施した。反応液を取出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、フルフラール転化率は85.7%であり、フルフラールと1,4BGより生成するアセタールの転化率は67.1%であった。
【0061】
【表1】