特許第6241389号(P6241389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241389ポリカーボネートジオールの製造方法及びポリウレタンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241389
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオールの製造方法及びポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/38 20060101AFI20171127BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C08G64/38
   C08G18/44
【請求項の数】8
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2014-153991(P2014-153991)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-44986(P2015-44986A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-159231(P2013-159231)
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽子
(72)【発明者】
【氏名】草野 一直
(72)【発明者】
【氏名】金森 芳和
(72)【発明者】
【氏名】若林 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 貴之
(72)【発明者】
【氏名】井澤 雄輔
【審査官】 江間 正起
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−503706(JP,A)
【文献】 特開平6−206965(JP,A)
【文献】 特開2013−18979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00−64/42
C08G 18/00−18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを糖及び/又はその誘導体の存在下にエステル交換反応により重合させてポリカーボネートジオールを得る工程を有するポリカーボネートジオールの製造方法であって、
該ジヒドロキシ化合物が1,4−ブタンジオールを含み、
該糖及び/又はその誘導体と該ジヒドロキシ化合物との合計に対する該糖及び/又はその誘導体の量が0.1〜80重量ppmであるポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項2】
前記ポリカーボネートジオールを得る工程に先立ち、予め前記糖及び/又はその誘導体を含む前記ジヒドロキシ化合物中の該糖及び/又はその誘導体量を調整する工程を有し、該調整工程において、該糖及び/又はその誘導体と該ジヒドロキシ化合物との合計に対する該糖及び/又はその誘導体の含有量を0.1〜80重量ppmに調整する請求項1に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500以上5000以下である請求項1又は請求項に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【請求項4】
ポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンを得る工程を有するポリウレタンの製造方法であって、
該ポリカーボネートジオールがジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを糖及び/又はその誘導体の存在下にエステル交換反応により重合させてポリカーボネートジオールを得る工程を経て得られたものであって、
該ポリカーボネートジオールを得る工程における、該糖及び/又はその誘導体と該ジヒドロキシ化合物との合計に対する該糖及び/又はその誘導体の量が0.1〜80重量ppmであるポリウレタンの製造方法。
【請求項5】
前記糖及び/又はその誘導体が、2以上の酸素原子を含むカルボニル化合物である請求項に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項6】
前記ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである請求項4又は請求項に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項7】
前記ポリウレタンが合成皮革又は人工皮革用ポリウレタンである請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法
【請求項8】
前記ポリウレタンが塗料又はコーティング用ポリウレタンである請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネートジオールの製造方法に係り、詳しくは、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを糖及び/又はその誘導体の存在下にエステル交換反応させることにより、ポリウレタン製造時のイソシアネート化合物との反応速度を最適化すると共に、得られるポリウレタンの着色がなく、かつ引張強度や弾性回復率等を改善することができるポリカーボネートジオールを製造する方法と、この方法により製造されたポリカーボネートジオールに関する。
本発明はまた、このポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンの製造方法と、この方法により製造されたポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業規模で生産されているポリウレタン樹脂の主たるソフトセグメント部、つまりポリオールは、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールなどに代表されるポリエーテルタイプ、ジカルボン酸系ポリエステルに代表されるポリエステルポリオールタイプ、ポリカプロラクトンに代表されるポリラクトンタイプ、並びにカーボネート源とジオールを反応させて得られるポリカーボネートタイプに分けられる(非特許文献1)。
【0003】
このうち、ポリカーボネートタイプ、即ち、ポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリウレタンは、耐熱性、耐加水分解性、耐候性等に極めて優れる特長を有し、幅広い用途に適用されている。
【0004】
また、近年では、ポリカーボネートジオール成分を含むポリウレタンの製造技術として、バイオマス資源由来の原料を用いたものが種々提案されている。例えば、特許文献1にはバイオマス資源由来のジオールを用いて製造したポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造することが記載されている。しかし、特許文献1には、ポリカーボネートジオール製造原料のジオールやポリウレタン製造原料のポリカーボネートジオールが、糖及び/又はその誘導体を含むとの記載はない。
【0005】
即ち、特許文献1に記載されるバイオマス資源由来のジオールは、例えば、糖を発酵させて得られるものであるが、発酵により得られた発酵液は、高分子類、その他の不純物を除去するために抽出、晶析、蒸留等の多段階の精製工程を経る結果、高沸点の糖などは分離除去され、一般的にはこれらを含まないものとなる。
【0006】
また、特許文献2には、糖蜜又は糖化合物を含む多価アルコールをポリイソシアネートと反応させてポリウレタンプレポリマーを製造することが記載され、このポリウレタンプレポリマーにより生分解性に優れ、物理的に耐久性のよい被膜形成材料が得られることが記載されているが、ポリカーボネートジオールの製造、製造されたポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンの製造についての記載はなく、更にその際にポリウレタン原料に糖を含むとの記載もなされていない。
【0007】
特許文献3には、熱可塑性ポリウレタンではなく、軟質ポリウレタンフォームの製造方法として、OH基を5つ以上有する糖アルコールに酸化プロピレン及び酸化エチレンのうちのいずれか一方または双方を付加反応させて得られる低分子ポリオールを0.5%以上含有するポリオール混合物と、平均NCO基数を2.1〜2.5有するポリイソシアネートを反応させることにより、高い耐水性を有する軟質ポリウレタンフォームが得られることが記載されている。
特許文献3に記載の方法は、軟質ポリウレタンフォームの製造方法であるため、熱可塑性ポリウレタンの製造方法とは反応条件が異なり、熱可塑性ポリウレタンの製造反応とは別異の反応となる。このため、特許文献3の軟質ポリウレタンフォームの製造では、架橋度を大きく増加させて強度を確保する必要があることから、低分子ポリオールとしての多官能の糖アルコール誘導体の使用量も多く、0.5%(5000重量ppm)以上を必須としている。
【0008】
特許文献4には、1,4−ブタンジオールを原料ジオールとして含むポリカーボネートジオールを得る反応において、副生するテトラヒドロフランの抑制剤として、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を原料ジオールに対して125ppm添加する例が挙げられているが、糖やその誘導体であることが好ましいという記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−225863号公報
【特許文献2】特開2000−1646号公報
【特許文献3】特開2009−191223号公報
【特許文献4】特開2005−48141号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】"ポリウレタンの基礎と応用"96頁〜松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリカーボネートジオール成分を含有するポリウレタンの製造にあたり、ポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物との反応速度を向上させて、一定以内の分子量を持つポリウレタンを短時間で得ることは、生産性の向上、原料中比較的高価なイソシアネート化合物の使用量の低減などの面で工業的に極めて重要な改良項目である。また、ポリウレタンの用途において、その引張強度や弾性回復率等の機械物性を高めることも、製品の耐久性の向上、用途拡大の面において、重要な項目である。更に、ポリウレタンを各種製品に加工するにあたり、意匠性を向上させるため、ポリウレタンに着色がないことも重要である。
【0012】
本発明は、ポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンを製造する際の反応速度を最適化させて、生産性の向上のために最適な、所定の範囲内の分子量を得ると共に、得られるポリウレタンの着色がなく、かつ引張強度や弾性回復率等を改善することができるポリカーボネートジオールの製造方法と、このポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とのエステル交換反応によりポリカーボネートジオールを製造する際に、原料のジヒドロキシ化合物に対して所定量の糖及び/又はその誘導体を反応系に存在させてポリカーボネートジオールを製造することにより、良質のポリカーボネートジオールを得ることができ、このポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物とを用いてポリウレタンを製造すると、反応速度を最適にし、また、得られるポリウレタンの着色がなく、かつ引張強度や弾性回復率等も優れたものとなることを見出した。
【0014】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0015】
[1] ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを糖及び/又はその誘導体の存在下にエステル交換反応により重合させてポリカーボネートジオールを得る工程を有するポリカーボネートジオールの製造方法であって、該ジヒドロキシ化合物が1,4−ブタンジオールを含み、該糖及び/又はその誘導体と該ジヒドロキシ化合物との合計に対する該糖及び/又はその誘導体の量が0.1〜80重量ppmであるポリカーボネートジオールの製造方法。
【0016】
[2] 前記ポリカーボネートジオールを得る工程に先立ち、予め前記糖及び/又はその誘導体を含む前記ジヒドロキシ化合物中の該糖及び/又はその誘導体量を調整する工程を有し、該調整工程において、該糖及び/又はその誘導体と該ジヒドロキシ化合物との合計に対する該糖及び/又はその誘導体の含有量を0.1〜80重量ppmに調整する[1]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0018】
] 前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500以上5000以下である[1]又は2]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
【0020】
] ポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンを得る工程を有するポリウレタンの製造方法であって、該ポリカーボネートジオールがジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを糖及び/又はその誘導体の存在下にエステル交換反応により重合させてポリカーボネートジオールを得る工程を経て得られたものであって、該ポリカーボネートジオールを得る工程における、該糖及び/又はその誘導体と該ジヒドロキシ化合物との合計に対する該糖及び/又はその誘導体の量が0.1〜80重量ppmであるポリウレタンの製造方法。
【0024】
] 前記糖及び/又はその誘導体が、2以上の酸素原子を含むカルボニル化合物である[4]に記載のポリウレタンの製造方法。
【0025】
] 前記ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである[又は5]に記載のポリウレタンの製造方法。
【0027】
前記ポリウレタンが合成皮革又は人工皮革用ポリウレタンである[〜[6]のいずれか1つに記載のポリウレタンの製造方法
【0028】
前記ポリウレタンが塗料又はコーティング用ポリウレタンである[〜[6]のいずれか1つに記載のポリウレタンの製造方法
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物との反応速度を最適化させて、生産性の向上のために最適な、所定の範囲内の分子量のポリウレタンを効率的に製造することができる。また、得られるポリウレタンは着色がなく、かつ引張強度や弾性回復率等に優れるため、各種用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0031】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法は、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを糖及び/又はその誘導体の存在下にエステル交換反応により重合させてポリカーボネートジオールを得る工程を有するポリカーボネートジオールの製造方法であって、該糖及び/又はその誘導体と該ジヒドロキシ化合物との合計に対する該糖及び/又はその誘導体の量が0.1〜80重量ppmであることを特徴とする。
また、本発明のポリウレタンの製造方法は、上記のポリカーボネートジオールの製造方法で得られた本発明のポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンを得る工程を有することを特徴とする。
本発明のポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物との反応に際しては更に鎖延長剤を存在させてもよい。
【0032】
なお、本発明でいうポリウレタンとは、特に制限がない限り、熱可塑性ポリウレタン又はポリウレタンウレアを示し、この2種類の樹脂はほぼ同じ物性をとることが従来から知られている。一方、構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンとは、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用して製造されるものであり、ポリウレタンウレアとは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用して製造されるものである。
【0033】
[糖及び/又はその誘導体]
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及び本発明のポリウレタンの製造方法において、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とのエステル交換反応系(以下、単に「エステル交換反応系」と称す場合がある。)に存在させる糖としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、スクロース、ラフィノース、デンプン等の2糖又は多糖類が挙げられる。これらの中でも、グルコース、スクロース、キシロースが好ましい。これらの糖類が好ましい理由の一つは、イソシアネート化合物と効率的に反応して、架橋の核となることが挙げられる。
【0034】
また、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法及び本発明のポリウレタンの製造方法における糖誘導体とは、デオキシ糖類、ウロン酸類、アミノ糖類、糖アルコール類、糖を脱水素して得られる糖脱水素体、糖を脱水させて得られる糖脱水体、糖のレトロアルドール生成物、酸化物、還元物、又は糖を熱分解した際に得られる糖熱分解物のことである。それらの2〜6分子の反応生成物や、その反応生成物の脱水、脱水素、酸化、還元、熱分解した生成物も含まれる。具体的に、例えば、デオキシリボース、フコース、フクロース、ラムノース、キノボース、パラトース等のデオキシ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール類、グルコノラクトン、グルクロン酸等の糖脱水素体、レボグルコサン、4−デオキシ−3−ヘキソスロース等の1分子脱水体、ヒドロキシメチルフルフラール、フルフラール等の3分子脱水体、2−ヒドロキシ−3−オキソブタナール、エリトロース、アセトール、グリコアルデヒド等のグルコースのレトロアルドール生成物、3−メチルシクロペンタン−1,2−ジオン、4−ヒドロキシ−2−ペンテン酸ラクトン、レブリン酸、2−アセチルフラン、ヒドロキノン等の糖の熱分解生成物、及び前記具体例の水素化生成物やその脱水体等が挙げられる。なお、ここで「脱水体」とは、加熱による脱水体、発酵中の菌による脱水体のいずれであってもよい。
【0035】
これらの中でも特に、反応速度を制御し易い点から、糖脱水素体、グルコース及びキシロースの1〜4分子脱水体および糖のレトロアルドール生成物が好ましく、その中でも酸素原子を2個以上含むカルボニル化合物が特に好ましい。具体的には、糖脱水素体であるグルコノラクトン、3分子脱水体であるヒドロキシメチルフルフラール、グルコースのレトロアルドール生成物であるエリトロース等である。更にその中でも、水酸基を2つ以上持つグルコノラクトンやエリトロース等が好ましい。
【0036】
本発明において、上記の糖の1種又は2種以上がエステル交換反応系に存在してもよく、糖誘導体の1種又は2種以上がエステル交換反応系に存在してもよく、糖の1種又は2種以上と糖誘導体の1種又は2種以上がエステル交換反応系に存在してもよい。
【0037】
また、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法において、糖及び/又はその誘導体は、ポリカーボネートジオール製造時にジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とは別に添加されても、予めジヒドロキシ化合物やカーボネート化合物に含まれてエステル交換反応系に存在するものであってもよいが、本発明の糖及び/又はその誘導体の一部をポリカーボネートジオールの構成成分とすることで、その後の精製工程などにより糖及び/又はその誘導体が除去されにくくなる観点から、糖及び/又はその誘導体はジヒドロキシ化合物に含有されてエステル交換反応系に存在するものであることが好ましい。このため、本発明においては、エステル交換反応によってポリカーボネートジオールを得る工程の前に、予め、ジヒドロキシ化合物中の糖及び/又はその誘導体の濃度を0.1〜80重量ppmに調整する工程、即ち、糖及び/又はその誘導体を含むジヒドロキシ化合物中の糖及び/又はその誘導体の含有量を、糖及び/又はその誘導体とジヒドロキシ化合物との合計に対して0.1〜80重量ppmに調整する工程を有し、この工程を経ることにより、エステル交換反応系に上記の量で糖及び/又はその誘導体を存在させるようにすることが好ましい。
【0038】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法によって得られるポリカーボネートジオールとは、エステル交換反応において糖及び/又はその誘導体が反応に関与し、ポリカーボネートジオールの構成成分として糖及び/又はその誘導体が含まれているポリカーボネートジオール;エステル交換反応において糖及び/又はその誘導体が反応に関与せず、構成成分として含まれない未反応の糖及び/又はその誘導体が存在するポリカーボネートジオール;のどちらか一方でも、その両方であってもよい。例えば、後述の方法で、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とをエステル変換反応により重合させてポリカーボネートジオールを製造する際に、原料のジヒドロキシ化合物及び/又はカーボネート化合物、好ましくはジヒドロキシ化合物として、糖及び/又はその誘導体を含むジヒドロキシ化合物を用いることにより得られる糖及び/又はその誘導体が含有されたポリカーボネートジオールとは、これらのポリカーボネートジオールを指す。
【0039】
本発明において、ポリカーボネートジオール製造時にエステル交換反応系に存在する糖及び/又はその誘導体量は、エステル交換反応系内の糖及び/又はその誘導体とジヒドロキシ化合物との合計に対して0.1〜80重量ppmである。この糖及び/又はその誘導体量が0.1重量ppm未満では、得られたポリカーボネートジオールを用いてウレタン化反応を行う際に、糖及び/又はその誘導体を存在させることによる反応速度の向上効果、得られるポリウレタンの引張強度や弾性回復率等の物性の向上効果を十分に得ることができず、逆に80重量ppmを超えると、ポリカーボネートジオールの重合が阻害され、ポリカーボネートジオール製造時の反応速度が低下するとともに黄着色する傾向にあり、更にはこのポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンの反応速度が増加しすぎて、加工工程に最適な分子量や粘度を超え生産性や意匠性が低下するとともに、ポリウレタンが黄着色し、これらを用いた製品の意匠性を損なう傾向にある。ポリカーボネートジオールの重合が阻害される原因は、糖及び/又はその誘導体によるポリカーボネートジオール製造時に用いられる触媒の劣化が原因であると推定される。また、該ポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンの反応速度の増加は、糖及び/又はその誘導体による過多な架橋構造の形成が原因であると推定される。架橋構造の形成についての推定要因は後述する通りである。
糖及び/又はその誘導体の存在量は、エステル交換反応系内の糖及び/又はその誘導体とジヒドロキシ化合物との合計に対して、下限は好ましくは0.2重量ppm、より好ましくは0.3重量ppm、更に好ましくは0.4重量ppm、特に好ましくは0.5重量ppm、最も好ましくは0.6重量ppmである。また、上限は好ましくは70重量ppm、より好ましくは60重量ppm、更に好ましくは50重量ppm、特に好ましくは40重量ppm、とりわけ好ましくは30重量ppm、最も好ましくは20重量ppmである。
【0040】
本発明において、ポリウレタンの原料ポリカーボネートジオールとして、糖及び/又はその誘導体をエステル交換反応系内に存在させることにより得られた、糖及び/又はその誘導体を含有するポリカーボネートジオールを用いることにより、ウレタン反応速度の向上効果、及び得られるポリウレタンの引張強度や弾性回復率等の向上効果が発現する作用機構の詳細は明らかではないが、糖及び/又はその誘導体は、分子中に水酸基等のウレタン反応に関わる官能基を持つため、糖及び/又はその誘導体が存在すると、ウレタン反応により得られるポリウレタンの架橋度を上げることができ、この結果、ポリウレタン化の重合反応を促進すると共に、得られるポリウレタンに架橋構造を導入して引張強度や弾性回復率等の物性を向上させることによると考えられる。ここで言う反応速度の向上とは、同一時間内においてより高分子量のポリウレタンが得られることを示す。一方、ポリカーボネートジオールを製造する際のエステル交換反応では、ウレタン反応よりも水酸基の反応性が低いため、糖/及びその誘導体の第一級水酸基のみが反応し、第二級水酸基は未反応のまま残存し、残存した第二級水酸基がウレタン化反応時にイソシアネート化合物と反応して架橋構造の導入に寄与するものと考えられる。
特に、四単糖以上の糖及び/又はその誘導体においては、一般的に分子内に一つの第一級水酸基と、二つ以上の第二級水酸基を持つ。そのため、ポリカーボネートジオール製造においては、糖及び/又はその誘導体が好ましい含有量の範囲であれば、ポリカーボネートジオール製造における分子量変化や架橋構造形成などの影響は少なく、一つの第一級水酸基がポリカーボネートジオール末端に導入されると考えられる。しかし、続くポリウレタン反応においては、ポリカーボネートジオール末端等に残存する二つ以上の第二級水酸基が反応するため、架橋構造を形成し、上記記載の効果を発現するものと考えられる。
また、本発明において、糖及び/又はその誘導体の含有量を一定量まで上げるほど反応速度がやや低下していき、一定量以上になると反応速度が好ましい範囲を超えて早くなる傾向にある。この作用機構の詳細は明らかではないが、糖及び/又はその誘導体とウレタン反応触媒とが配位などによって相互作用するため、糖及び/又はその誘導体を一定量まで増やすほど触媒活性が低下し反応速度が低下するが、一定量を超えると触媒活性の低下が底打ちとなり、糖及び/又はその誘導体の濃度が上がり架橋剤としての作用が強くなるため、反応速度上昇の作用が触媒活性の低下を上回るものと推定している。
【0041】
[ポリカーボネートジオールの製造]
次に、本発明のポリウレタンの製造原料として好適に用いられる本発明のポリカーボネートジオールの製造方法について説明する。
【0042】
このポリカーボネートジオールは、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とをエステル交換反応により重合させることにより製造される。
【0043】
(1)ジヒドロキシ化合物
本発明に用いるジヒドロキシ化合物としては、2個の水酸基を有する、脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物、両末端ヒドロキシポリエーテル、環状エーテル構造を有する化合物等が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ジヒドロキシ化合物としては、これらのうち、得られるポリカーボネートジオールの取扱いのし易さや物性のバランスの点で、脂肪族ジヒドロキシ化合物、即ち、直鎖又は分岐の鎖状或いは脂環式ジヒドロキシ化合物が好ましく、その炭素数の下限値は好ましくは2以上であり、上限値が好ましくは20以下、より好ましくは15以下のものが挙げられる。
【0044】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の分岐鎖を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等の分岐鎖を有さない脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール及び4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の環状基が分子内にあるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0045】
中でも分岐鎖を有さない脂肪族ジヒドロキシ化合物であることが、得られたポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの耐薬品性、耐熱性等の物性が良好となる点において好ましい。さらにポリウレタンの耐薬品性、耐熱性の物性が良好となる点において、炭素数の小さいジヒドロキシ化合物が好ましく、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。中でも1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールのいずれか1種を含むことがより好ましい。
【0046】
本発明において用いるジヒドロキシ化合物は、植物由来の化合物、即ち、バイオマス資源から誘導されたジヒドロキシ化合物であることが好ましい。このようなジヒドロキシ化合物としては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられる。
この内、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールが好ましく、その中でも、1,4−ブタンジオールを主成分とするもの、又は、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0047】
また、これらの植物由来のジヒドロキシ化合物と石油由来のジヒドロキシ化合物、あるいは複数の植物由来のジヒドロキシ化合物を原料としてポリカーボネートジオールを製造してもよい。特に、複数の植物由来のジヒドロキシ化合物を用いることで、植物由来原料の割合を高めることが出来るため好ましい。中でも、前述した植物由来のジヒドロキシ化合物のうち、炭素数3〜5の短鎖ジヒドロキシ化合物のうち少なくとも1種類と、炭素数9〜20の長鎖ジヒドロキシ化合物のうち少なくとも1種を組み合わせると良い。このような組み合わせとしては、例えば、1,4−ブタンジオールと1,10−デカンジオールの組み合わせが挙げられる。これらを原料として用いたポリカーボネートジオールから製造されるポリウレタンは、低温での柔軟性と耐薬品性のバランスに優れる。
【0048】
ここでいう「主成分とする」とは、全ジヒドロキシ化合物に対して、通常50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であることをさす。
【0049】
原料ジヒドロキシ化合物として、水酸基の間のメチレン鎖、及び炭素数が偶数のジヒドロキシ化合物を使用すると、得られるポリカーボネートジオールを用いて製造されるポリウレタンの機械強度が高まり、一方、炭素数が奇数又は分岐構造を有するジヒドロキシ化合物を使用すると得られるポリカーボネートジオールの取り扱い性が向上する。
【0050】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2個の水酸基を有する芳香族ジヒドロキシ化合物であれば、特に制限はされないが、炭素数の下限値が好ましくは6以上であり、上限値が通常好ましくは15以下の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0051】
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0052】
本発明において、ポリカーボネートジオールの製造に用いる全ジヒドロキシ化合物中、芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量は、通常30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0053】
また、ジヒドロキシ化合物としては、両末端ヒドロキシポリエーテルを用いることもできる。両末端ヒドロキシポリエーテルの炭素数の下限値は通常4以上であることが好ましく、より好ましくは10以上であり、上限値は通常1000以下であることが好ましく、より好ましくは200以下、更に好ましくは100以下である。
【0054】
両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。
【0055】
これらの両末端ヒドロキシポリエーテルの使用量は、得られるポリエステルポリオール中の両末端ヒドロキシポリエーテル由来の構成単位の含有量として、通常90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0056】
さらに、ジヒドロキシ化合物としては、環状エーテル構造を有する化合物を用いることもでき、例えばイソソルビド、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン等が挙げられる。また、環状エーテル構造を有する化合物のなかでも、環状エーテル構造を複数有する化合物がより好ましく、環状エーテル構造を2つ有する化合物が更に好ましい。環状エーテル構造を有する化合物としては、特に下記式(A)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコールが好ましい。これらは得られるポリカーボネートジオールの要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
【化1】
【0058】
本発明において、これらのジヒドロキシ化合物は、前述の通り、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジヒドロキシ化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造されたものであってもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物又は環状エーテルを化学反応によりジヒドロキシ化合物に変換したものであってもよい。
【0059】
例えば1,4−ブタンジオールを例に挙げると、発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン及びγ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造してもよいし、発酵法で直接1,4−ブタンジオールを製造してもよいし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でも発酵法で直接1,4−ブタンジオールを製造する方法とコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
【0060】
コハク酸を水添する際に用いる還元触媒としては、例えば、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu及びCo並びにその化合物が挙げられる。より具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH及びCu/Cr/Znが挙げられる。この中でもRu/Sn又はRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。
【0061】
更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応の組み合わせによりジヒドロキシ化合物を製造する方法も用いることができ、例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易にブタンジオール等のジヒドロキシ化合物を製造することができる。
【0062】
バイオマス資源由来から誘導されたジヒドロキシ化合物には、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的には、アミノ酸、蛋白質、アンモニア、尿素又は発酵菌由来の窒素原子が含まれてくる。
【0063】
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる窒素原子含有量は、該ジヒドロキシ化合物に対する重量濃度で、上限は通常2000ppmであることが好ましく、より好ましくは1000ppm、更に好ましくは100ppm、最も好ましくは50ppmである。一方、下限は特に制限されないが、通常、0.01ppmであることが好ましく、より好ましくは0.05ppm、精製工程の経済性の理由から更に好ましくは0.1ppm、より更に好ましくは1ppm、特に好ましくは10ppmである。
【0064】
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる窒素原子含有量を前記上限以下とすることにより、ポリカーボネートジオールやそれを用いたウレタン重合反応の遅延化もしくは促進化や、着色、一部ゲル化、及び安定性の低下などを防ぐことができる。一方、前記下限以上とすることにより、精製工程が煩雑となるのを防ぎ、経済的に有利になる。窒素原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
【0065】
また、別の態様としては、ジヒドロキシ化合物中に含まれる窒素原子含有量が、ポリカーボネートジオール製造原料総和に対する重量濃度で、上限は通常2000ppmであることが好ましく、より好ましくは1000ppm、更に好ましくは100ppm、最も好ましくは50ppmである。一方、下限は特に制限されないが、通常0.01ppmであることが好ましく、より好ましくは0.05ppm、更に好ましくは0.1ppmである。
【0066】
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物を用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、例えば、硫酸、亜硫酸及び有機スルホン酸塩等が挙げられる。
【0067】
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる硫黄原子含有量は、該ジヒドロキシ化合物に対する重量濃度で、上限は通常100ppmであることが好ましく、より好ましくは20ppm、更に好ましくは10ppm、特に好ましくは5ppm、最も好ましくは0.5ppmである。一方、下限は特に制限されないが、通常0.001ppmであることが好ましく、より好ましくは0.01ppm、更に好ましくは0.05ppm、特に好ましくは0.1ppmである。
【0068】
発酵法により製造されたジヒドロキシ化合物中に含まれる硫黄原子含有量を前記上限以下とすることにより、重合反応の遅延化や得られるポリカーボネートジオールの着色、一部ゲル化、及び安定性の低下などを防ぐことができる。一方、前記下限以上とすることにより、精製工程が煩雑となるのを防ぎ、経済的に有利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
【0069】
また、別の態様としては、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート化合物中に含まれる硫黄原子含有量が、ポリカーボネートジオール製造原料総和に対する重量濃度で、上限は通常100ppmであることが好ましく、より好ましくは20ppmであり、更に好ましくは10ppm、特に好ましくは5ppm、最も好ましくは0.5ppmである。一方、下限は特に制限されないが、通常0.001ppmであることが好ましく、より好ましくは0.01ppm、更に好ましくは0.05ppm、特に好ましくは0.1ppmである。
【0070】
本発明において、バイオマス資源由来のジヒドロキシ化合物をポリカーボネートジオール原料として使用するにあたり、上記不純物に起因するポリカーボネートジオールやポリウレタンの着色等の問題を抑制するため、エステル交換反応系に連結されるジヒドロキシ化合物を貯蔵するタンク内の酸素濃度又は温度を制御してもよい。
【0071】
前記制御により、不純物自体の着色や不純物により促進されるジヒドロキシ化合物の酸化反応が抑制され、例えば、1,4−ブタンジオールを使用する場合の2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジヒドロキシ化合物の酸化生成物によるポリカーボネートジオールやポリウレタンの着色等の問題を防止することができる。
【0072】
酸素濃度を制御して原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、例えば、公知の金属製又はこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、並びにガラス製又は樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが挙げられる。
【0073】
金属製タンクの構成材料としては、公知のものが使用され、具体的には、例えば、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304及びSUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ並びにチタン等が挙げられる。
【0074】
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対する体積%として、下限は特に限定されないが、通常0.00001体積%であることが好ましく、より好ましくは0.0001体積%であり、更に好ましくは0.001体積%、最も好ましくは0.01体積%であり、上限が通常10体積%であることが好ましく、より好ましくは5体積%、更に好ましくは1体積%、最も好ましくは0.1体積%である。
【0075】
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の酸素濃度を0.00001体積%以上とすることにより、管理工程が煩雑となるのを防ぎ、経済的に有利である。また、酸素濃度を10体積%以下とすることにより、ジヒドロキシ化合物の酸化反応生成物によるポリウレタンの着色等の問題が増大するのを防ぐことができる。
【0076】
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の貯蔵温度は、下限が通常15℃であることが好ましく、より好ましくは30℃であり、更に好ましくは50℃、最も好ましくは100℃であり、上限が230℃であることが好ましく、より好ましくは200℃、更に好ましくは180℃、最も好ましくは160℃である。
【0077】
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の貯蔵温度を15℃以上とすることにより、ポリカーボネートジオール製造時の昇温に時間を要するのを防ぎ、ポリカーボネートジオールの製造が経済的に有利になるとともに、ジヒドロキシ化合物の種類によってこれが固化してしまうことを防ぐことができる。一方、230℃以下とすることにより、ジヒドロキシ化合物の気化を抑えて高圧対応の貯蔵設備が必要となるのを防ぎ、経済的に有利になるとともに、ジヒドロキシ化合物の劣化が防ぐことができる。
【0078】
ジヒドロキシ化合物の貯蔵タンク内の圧力は、通常、乾燥窒素ガス又は乾燥空気による微加圧であることが好ましい。圧力が低すぎたり、高すぎたりする場合には、管理設備が煩雑になり経済的に不利となる。
【0079】
本発明において、色相の良いポリウレタンを得るために、ポリカーボネートジオールの製造に用いられるジヒドロキシ化合物の酸化反応生成物の含有量の上限は、通常、ジヒドロキシ化合物中の重量濃度として、10000ppmであることが好ましく、より好ましくは5000ppm、更に好ましくは3000ppm、最も好ましくは2000ppmである。一方、下限は特に制限されないが、通常、1ppmであることが好ましく、精製工程の経済性の理由から、より好ましくは10ppm、更に好ましくは100ppmである。
【0080】
なお、バイオマス資源由来のジヒドロキシ化合物は、通常蒸留により精製されるが、本発明において、糖及び/又はその誘導体を含むジヒドロキシ化合物を用いて本発明のポリカーボネートジオールを製造する場合には、バイオマス資源由来のジヒドロキシ化合物に発酵液に由来する糖及び/又はその誘導体を含有させた状態でポリカーボネートジオールの製造に用いることもできる。
【0081】
糖及び/又はその誘導体を含むジヒドロキシ化合物を用いて、本発明のポリカーボネートジオールを製造する場合、この原料ジヒドロキシ化合物中の糖及び/又はその誘導体の含有量は、エステル交換反応系に糖及び/又はその誘導体を前述の存在量で存在させることができるような量であればよいが、例えば糖及び/又はその誘導体を、下限は好ましくは0.2重量ppm、より好ましくは0.3重量ppm、更に好ましくは0.4重量ppm、特に好ましくは0.5重量ppm、最も好ましくは0.6重量ppmであり、上限は好ましくは70重量ppm、より好ましくは60重量ppm、更に好ましくは50重量ppm、特に好ましくは40重量ppm、とりわけ好ましくは30重量ppm、最も好ましくは20重量ppmであるジヒドロキシ化合物を用いることができる。なお、ここで糖及び/又はその誘導体の含有量は、糖及び/又はその誘導体を含んだジヒドロキシ化合物中の含有量、即ち、糖及び/又はその誘導体とジヒドロキシ化合物との合計に対する糖及び/又はその誘導体の含有量である。
ジヒドロキシ化合物中の糖及び/又はその誘導体の含有量を上記のような割合とするためには、糖及び/又はその誘導体を含まない或いは糖及び/又はその誘導体の含有量の少ないジヒドロキシ化合物に糖及び/又はその誘導体を添加する方法、糖及び/又はその誘導体を過剰量含むジヒドロキシ化合物を蒸留等により適度に精製して糖及び/又はその誘導体含有量を低減する方法、糖及び/又はその誘導体を過剰量含むジヒドロキシ化合物に糖及び/又はその誘導体を含まないジヒドロキシ化合物を添加して希釈する方法などが挙げられる。
【0082】
(2)カーボネート化合物
本発明に用いるカーボネート化合物としては、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。このうち反応性の観点からジアリールカーボネートが好ましい。
【0083】
本発明のポリカーボネートジオールの製造に用いることができるカーボネート化合物のジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートである。ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジm−クレジルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジフェニルカーボネートである。さらにアルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはエチレンカーボネートである。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
これらの中でもジアリールカーボネートは、反応性に優れることから、反応性の低いジヒドロキシ化合物でも温和な条件で反応が進行するようになるため好ましい。中でも工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と略記する場合がある。)が好ましい。
【0085】
(3)原料モノマーの使用割合
前記カーボネート化合物の使用量は、特に限定されないが、エステル交換反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1モルに対するモル比率で、下限が好ましくは0.35、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.60であり、上限は好ましくは1.00、より好ましくは0.98、さらに好ましくは0.97である。カーボネート化合物の使用量が上記上限超過では得られるポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加したり、分子量が所定の範囲とならなかったりする場合があり、前記下限未満では所定の分子量まで重合が進行しない場合がある。
【0086】
(4)エステル交換触媒
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法では、エステル交換触媒(以下、「触媒」と称する場合がある)を用いる。
エステル交換触媒としては、一般にエステル交換能があるとされている化合物であれば制限なく用いることができる。
【0087】
エステル交換触媒の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の長周期型周期表第1族元素(水素を除く)の化合物;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の長周期型周期表第2族元素の化合物;チタン、ジルコニウム等の長周期型周期表第4族元素の化合物;ハフニウム等の長周期型周期表第5族元素の化合物;コバルト等の長周期型周期表第9族元素の化合物;亜鉛等の長周期型周期表第12族元素の化合物;アルミニウム等の長周期型周期表第13族元素の化合物;ゲルマニウム、スズ、鉛等の長周期型周期表第14族元素の化合物;アンチモン、ビスマス等の長周期型周期表第15族元素の化合物;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等のランタナイド系金属の化合物等が挙げられる。これらのうち、エステル交換反応速度を高めるという観点から、長周期型周期表第1族元素(水素を除く)、長周期型周期表第2族元素、長周期型周期表第4族元素、長周期型周期表第5族元素、長周期型周期表第9族元素、長周期型周期表第12族元素、長周期型周期表第13族元素及び長周期型周期表第14族元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物が好ましく、長周期型周期表第1族元素(水素を除く)及び長周期型周期表第2族元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素の化合物がより好ましく、長周期型周期表第2族元素の化合物がさらに好ましい。
【0088】
長周期型周期表第1族元素(水素を除く)の化合物の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムの化合物が好ましく、リチウム、ナトリウムの化合物がより好ましく、ナトリウムの化合物がさらに好ましい。長周期型周期表第2族元素の化合物の中でも、マグネシウム、カルシウム、バリウムの化合物が好ましく、カルシウム、マグネシウムの化合物がより好ましく、マグネシウムの化合物がさらに好ましい。これらの金属化合物は主に、水酸化物や塩等として使用される。塩として使用される場合の塩の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩;酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等のカルボン酸塩;炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸塩;リン酸塩やリン酸水素塩、リン酸二水素塩等のリン含有の塩;アセチルアセトナート塩;等が挙げられる。触媒金属は、さらにメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドとして用いることもできる。
【0089】
これらのうち、好ましくは、長周期型周期表第2族元素から選ばれた少なくとも1種の金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシドが用いられ、より好ましくは長周期型周期表第2族元素の酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、さらに好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、特に好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩が用いられ、最も好ましくは酢酸マグネシウムが用いられる。
【0090】
触媒の使用量は、通常、用いた全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、通常1μモル倍以上200μモル倍以下であり、下限は好ましくは5μモル倍、より好ましくは10μモル倍、さらにこのましくは15μモル倍である。上限は好ましくは100μモル倍、より好ましくは70μモル倍、さらに好ましくは50μモル倍である。触媒の使用量が少なすぎると、十分な重合活性が得られず重合反応の進行が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネートジオールが得られにくく、生産効率が低下するだけでなく、原料モノマーが重合反応の間、未反応のままで系中に存在する時間が長くなるため、色調の悪化を招く場合がある。また、副生するモノヒドロキシ化合物とともに留出するモノマー量が増加し、結果的に原料原単位の悪化や、その回収のため余分なエネルギーが必要となる可能性があり、更には、複数のジヒドロキシ化合物を用いた共重合の場合には、原料として用いたモノマーの組成比と製品ポリカーボネートジオール中の構成モノマー単位の組成比が変わってしまう原因となることがある。反対に触媒の使用量が多すぎると、エステル交換反応後に過度に多くの触媒が残存し、ポリカーボネートジオールが白濁したり、加熱により着色しやすくなったりする場合がある。また得られたポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造する際には反応を阻害したり、反応を過度に促進したりする場合がある。
【0091】
このため、ポリカーボネートジオール中に残存する触媒量は、特に限定されないが、触媒金属換算の含有量として0.1ppm以上が好ましく、より好ましくは0.5ppm以上、さらに好ましくは1ppm以上、特に好ましくは2ppm以上、最も好ましくは3ppm以上である。また100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、特に好ましくは20ppm以下、最も好ましくは10ppm以下である。
【0092】
(5)ポリカーボネートジオールの製造
本発明のポリカーボネートジオールは、前記のジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、前記のカーボネート化合物の1種又は2種以上とを、前述の所定量の糖及び/又はその誘導体の存在下に、好ましくは上記の触媒を用いてエステル交換反応により重合させることにより製造することができる。
反応原料の仕込み方法は、特に制限はなく、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物と触媒の全量を同時に仕込み反応に供する方法や、カーボネート化合物が固体の場合まずカーボネート化合物を仕込んで加温、溶融させておき後からジヒドロキシ化合物と触媒を添加する方法、逆にジヒドロキシ化合物を先に仕込んでおいて溶融させ、ここへカーボネート化合物と触媒を投入する方法、など自由にその方法は選択できる。糖及び/又はその誘導体についても、その仕込み時期には特に制限はないが、前述のように、ジヒドロキシ化合物に含有させて仕込むことが好ましい。
【0093】
エステル交換反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することができる。その温度は特に限定されないが、下限は通常70℃、好ましくは100℃、より好ましくは130℃である。また反応温度の上限は、通常250℃、好ましくは200℃、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃である。反応温度が上記下限を下回るとエステル交換反応が実用的な速度では進行しない場合がある。また、反応温度が上記上限超過では得られるポリカーボネートジオールが着色したり、エーテル構造が生成したり、濁度が悪化するなどの品質上の問題が生じる場合がある。
【0094】
反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、副生するモノヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物を系外に留去することで反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応過程の後半には減圧条件を採用して副生するモノヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物を留去しながら反応することが好ましい。あるいは反応の途中から徐々に圧力を下げて副生するモノヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物を留去しながら反応させていくことも可能である。反応初期に圧力を下げすぎると、低沸点未反応モノマーの揮発を助長して、所定の分子量のポリカーボネートジオールが得られなかったり、共重合の場合には所定の共重合組成比のポリカーボネートジオールが得られなかったりすることがある。
【0095】
一方、反応の終期において減圧度を高めて反応を行うと、副生したフェノール類等のモノヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物、カーボネート化合物等の残存モノマー、さらには濁りの原因となる可能性のある環状カーボネート(環状オリゴマー)などを留去することができるので好ましい。
この際の反応終了時の反応圧力は、特に限定はされないが、通常上限が絶対圧力として10kPa、好ましくは5kPa、より好ましくは1kPaである。これら軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを少量通じながら該反応を行うこともできる。
【0096】
エステル交換反応の際に沸点が低いカーボネート化合物やジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期はカーボネート化合物やジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応のカーボネート化合物やジヒドロキシ化合物の留去を防ぐことができるので好ましい。さらにこれら反応初期における原料の留去を防ぐ意味で反応器に還流管をつけて、原料のカーボネート化合物とジヒドロキシ化合物を還流させながら、カーボネート化合物より副生するモノヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物を留去させエステル交換反応を行うことも可能である。この場合、仕込んだ原料モノマーが失われず試剤の量比を正確に合わせることができるので好ましい。
【0097】
重縮合反応は、バッチ式でも連続式でも行うことができるが、製品の分子量等の品質の安定性からは連続式が優れている。使用する装置は、槽型、管型及び塔型のいずれの形式であってもよく、各種の攪拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧または減圧下で行われるのが好ましい。
【0098】
本発明のポリカーボネートジオールを得るためのエステル交換反応に必要な時間は、使用するジヒドロキシ化合物、カーボネート化合物、触媒の使用の有無、用いる触媒の種類により大きく異なるので一概に規定することはできないが、通常所定の分子量に達するのに必要な反応時間は50時間以下、好ましくは20時間以下、さらに好ましくは10時間以下である。
【0099】
(6)触媒失活剤
前述の如く、エステル交換反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートジオールには触媒が残存し、残存する触媒により、ポリウレタン化反応の制御ができなくなる場合がある。この残存する触媒の影響を抑制するために、エステル交換反応後は、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルの触媒失活剤、例えばリン系化合物等を添加し、エステル交換触媒を不活性化することが好ましい。さらには触媒失活剤の添加後、後述のように加熱処理等により、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
【0100】
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸などの無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0101】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0102】
前記リン系化合物の使用量は、特に限定はされないが、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。上記下限より少ない量のリン系化合物を使用した場合は、反応生成物であるポリカーボネートジオール中のエステル交換触媒の不活性化が十分でなく、得られたポリカーボネートジオールを例えばポリウレタン製造用原料として使用する際に、エステル交換触媒の不活性化が十分でないことに起因し、ポリウレタン重合時に架橋等の異常反応を引き起こす場合がある。また、上記上限を超えるリン系化合物を使用すると、得られたポリカーボネートジオールが着色してしまう可能性がある。
【0103】
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行うことができるが、加熱処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、特に限定はされないが、上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは100℃であり、下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは70℃である。加熱処理温度が上記下限より低い温度の場合は、エステル交換触媒の不活性化に時間がかかり効率的でなく、また不活性化の程度も不十分な場合がある。一方、加熱処理温度が上記上限を超えると、得られたポリカーボネートジオールが着色することがある。
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1〜5時間である。
【0104】
(7)精製
重合反応後は、ポリカーボネートジオール中の末端構造がアルキルオキシ基である不純物、アリールオキシ基である不純物、未反応ジヒドロキシ化合物やカーボネート化合物、副生するモノヒドロキシ化合物やジヒドロキシ化合物および軽沸の環状カーボネート、さらには添加した触媒などを除去する目的で精製を行うことができる。その際の精製は軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては減圧蒸留、水蒸気蒸留、薄膜蒸留など特にその形態に制限はないが、中でも薄膜蒸留が効果的である。また、水溶性の不純物を除くために水、アルカリ性水、酸性水、キレート剤溶解溶液などで洗浄してもよい。その場合、水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
【0105】
薄膜蒸留条件としては特に制限はないが、薄膜蒸留時の温度は、上限が250℃であることが好ましく、210℃であることが好ましい。また、下限が120℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。薄膜蒸留時の温度の下限を上記の値とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分となる。また、上限を上記の値とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
【0106】
薄膜蒸留時の圧力は、上限が500Paであることが好ましく、150Paであることがより好ましく、70Paであることが更に好ましい。薄膜蒸留時の圧力を前記上限値以下とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分に得られる。
【0107】
また、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度は、上限が250℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。また、下限が80℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましい。
薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度を上記下限以上とすることにより、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの流動性が低下するのを防ぐことができる。一方、上記上限以下とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
【0108】
(8)水酸基価
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法により製造される本発明のポリカーボネートジオールの水酸基価の下限は20mg−KOH/g、好ましくは25mg−KOH/g、より好ましくは30mg−KOH/g、さらに好ましくは35mg−KOH/gである。また、上限は450mg−KOH/g、好ましくは230mg−KOH/g、より好ましくは150mg−KOH/g、さらに好ましくは120mg−KOH/g、特に好ましくは75mg−KOH/g、最も好ましくは60mg−KOH/gである。水酸基価が上記下限未満では、粘度が高くなりすぎポリウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、上記上限超過ではポリウレタンとした時に柔軟性や低温特性などの物性が不足する場合がある。
ポリカーボネートジオールの水酸基価は、具体的には、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0109】
(9)分子量分布(Mw/Mn)
本発明のポリカーボネートジオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と略記する場合がある。)により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は1.5〜3.0が好ましい。このMw/Mnの下限はより好ましくは1.7、さらに好ましくは1.8であり、上限はより好ましくは2.5、さらに好ましくは2.3である。Mw/Mnが上記上限を超える場合、このポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンの物性として、低温で硬くなる、伸びが低下する等の傾向があり、Mw/Mnが上記下限未満のポリカーボネートジオールを製造しようとすると、オリゴマーを除くなどの高度な精製操作が必要になる場合がある。
【0110】
(10)分子鎖末端
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法により製造される本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖末端は主に水酸基である。しかしながら、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物との反応で得られるポリカーボネートジオールの場合には、不純物として一部分子鎖末端が水酸基ではないものが存在する可能性がある。その具体例としては、分子鎖末端がアルキルオキシ基又はアリールオキシ基のものであり、多くはカーボネート化合物由来の構造である。
【0111】
例えば、カーボネート化合物としてジフェニルカーボネートを使用した場合はアリールオキシ基としてフェノキシ基(PhO−)、ジメチルカーボネートを使用した場合はアルキルオキシ基としてメトキシ基(MeO−)、ジエチルカーボネートを使用した場合はエトキシ基(EtO−)、エチレンカーボネートを使用した場合はヒドロキシエトキシ基(HOCHCHO−)が分子鎖末端として残存する場合がある(ここで、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す)。
【0112】
本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖末端は、全末端数に対して、ジヒドロキシ化合物に由来する末端数の合計の数の割合が、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは97モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。ジヒドロキシ化合物に由来する末端数の合計の数の割合が、上記下限以上であると、このポリカーボネートジオールをポリウレタン原料とした場合に所望の分子量のポリウレタンを容易に製造することができ、物性バランスに優れたポリウレタンを得ることができる。
一方、本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖末端のうち、カーボネート化合物に由来する末端基の数の割合は、全末端数に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
【0113】
(11)残存モノマー類
カーボネート化合物原料として例えばジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートを使用した場合、ポリカーボネートジオール製造中にフェノール類が副生する。フェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタンを製造する際の阻害因子となる可能性がある上、フェノール類によって形成されたウレタン結合は、その結合力が弱いために、その後の工程等で熱によって解離してしまい、イソシアネートやフェノール類が再生し、不具合を起こす可能性がある。また、フェノール類は刺激性物質でもあるため、ポリカーボネートジオール中のフェノール類の残存量は、より少ない方が好ましい。ポリカーボネートジオール中のフェノール類の残存量は、具体的にはポリカーボネートジオールに対する重量割合として好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、中でも100ppm以下であることが好ましい。ポリカーボネートジオール中のフェノール類を低減するためには、前述のようにポリカーボネートジオールの重合反応時の圧力を絶対圧力として1kPa以下の高真空としたり、ポリカーボネートジオールの重合後に前述の薄膜蒸留等を行ったりすることが有効である。前述の薄膜蒸留等に行なう場合においても、重合後のポリカーボネートジオール含有組成物中のフェノール類の残存量が多いと、フェノール類の低減に大型の薄膜蒸留装置を用いたり、薄膜蒸留等のフェノール低減工程を繰り返したりしなければならないため、生産性が大きく低下する。そのため、重合後のポリカーボネートジオール含有組成物中のフェノール残存量はより少ない方が好ましく、具体的には、ポリカーボネートジオールに対する重量割合として好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下、中でも0.1重量%以下であることが好ましい。
【0114】
ポリカーボネートジオール中には、製造時の原料として使用したカーボネート化合物が残存することがある。ポリカーボネートジオール中のカーボネート化合物の残存量は限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、ポリカーボネートジオールに対する重量割合として上限が好ましくは5重量%、より好ましくは3重量%、さらに好ましくは1重量%、さらにより好ましくは0.1重量%、特に好ましくは0.01重量%である。ポリカーボネートジオール中のカーボネート化合物含有量が多すぎるとポリウレタン化の際の反応を阻害したり、物性を低下させたりする場合がある。ポリカーボネートジオール中のカーボネート化合物の含有量は0重量%が最も好ましい。
【0115】
ポリカーボネートジオールには、製造時に使用したジヒドロキシ化合物が残存する場合がある。ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量は、限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、ポリカーボネートジオールに対する重量割合として1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以下であり、さらに好ましくは0.05重量%以下である。ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量が多いと、ポリウレタンとした際のソフトセグメント部位の分子長が不足し、所望の物性よりも弾性率が高くなる場合がある。一方、ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量の下限は、好ましくは0重量%である。
【0116】
ポリカーボネートジオール中には、製造の際に副生した環状のカーボネート(環状オリゴマー)を含有する場合がある。例えばジヒドロキシ化合物として1,3−プロパンジオールを用いた場合、1,3−ジオキサン−2−オンもしくはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状カーボネートとなったものなどが生成してポリカーボネートジオール中に含まれる場合がある。これらの化合物は、ポリウレタン化反応においては副反応をもたらす可能性があり、また濁りの原因となるため、ポリカーボネートジオールの重合反応の圧力を絶対圧力として1kPa以下の高真空にしたり、ポリカーボネートジオールの合成後に薄膜蒸留等を行ったりしてできる限り除去しておくことが好ましい。ポリカーボネートジオール中に含まれるこれら環状カーボネートの含有量は、限定されるものではないが、ポリカーボネートジオールに対する重量割合として好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。
【0117】
(12)APHA値
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法により製造される本発明のポリカーボネートジオールの色は、ハーゼン色数(JIS K0071−1:1998に準拠)で表した場合の値(以下「APHA値」と表記する。)で150以下であることが好ましく、より好ましくは100以下、更に好ましくは80以下、特に好ましくは60以下、最も好ましくは40以下である。APHA値が150を超えると、ポリカーボネートジオールを原料として得られるポリウレタンの色調が悪化し、商品価値を低下させたり、熱安定性が悪くなったりする。ポリカーボネートジオールのAPHA値を150以下にするためには、エステル交換反応系に存在する糖及び/又はその誘導体の量を、ジヒドロキシ化合物量に対して80重量ppm以下にする必要がある他、ポリカーボネートジオール製造時の触媒、添加剤の種類や量の選択、熱履歴、重合中及び重合終了後のモノヒドロキシ化合物の濃度や未反応モノマーの濃度を総合的に制御する必要がある。また、重合中及び重合終了後の遮光も効果的である。また、ポリカーボネートジオールの分子量の設定やモノマーであるジヒドロキシ化合物種の選定も重要である。特にアルコール性水酸基を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物を原料とするポリカーボネートジオールは、ポリウレタンに加工した場合に、柔軟性や耐水性、耐光性等の種々の優れた性能を示すが、芳香族ジヒドロキシ化合物を原料とした場合より熱履歴や触媒による着色が著しくなる傾向にあり、APHA値を150以下にするのは容易ではない。
APHAは、具体的には、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0118】
(13)溶融粘度
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法により製造される本発明のポリカーボネートジオールは、後述の実施例の項に記載される方法で測定される溶融粘度が100mPa.s以上、特に300mPa.s以上、とりわけ500mPa.s以上で、1000000mPa.s以下、特に10000mPa.s以下、とりわけ7000mPa.s以下であることが好ましい。ポリカーボネートジオールの溶融粘度が上記下限以上であるとポリカーボネートジオールの重合度が十分であり、これを用いて製造したウレタンの柔軟性や弾性回復性が優れる傾向にあり、上記上限以下であるとポリカーボネートの取扱い性が向上し、製造の効率を落とさないため好ましい。
【0119】
[ポリウレタンの製造]
次に、本発明によるポリウレタンの製造方法について説明する。
【0120】
本発明のポリウレタンの製造方法においては、前述の本発明のポリカーボネートジオールの製造方法に従って、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを所定量の糖及び/又はその誘導体の存在下にエステル交換反応により重合させて得られたポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンを製造する。即ち、このようにして、糖及び/又はその誘導体の存在下での反応により得られたポリカーボネートジオールは、糖及び/又はその誘導体を含むものであり、従って、本発明のポリウレタンの製造反応系には、ポリカーボネートジオールに含まれて持ち込まれた糖及び/又はその誘導体が存在するものとなる。このポリウレタン化反応時の糖及び/又はその誘導体の存在量は、糖及び/又はその誘導体を含んだポリカーボネートジオール中の含有量、即ち、糖及び/又はその誘導体とポリカーボネートジオールとの合計に対する糖及び/又はその誘導体の含有量として、下限は好ましくは0.01重量ppm、より好ましくは0.05重量ppm、更に好ましくは0.1重量ppm、特に好ましくは0.2重量ppm、最も好ましくは0.3重量ppmである。また、上限は好ましくは70重量ppm、より好ましくは50重量ppm、更に好ましくは30重量ppm、特に好ましくは10重量ppmである。
【0121】
本発明において、ポリウレタンの製造には、上述の本発明のポリカーボネートポリオールの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明のポリカーボネートジオール以外のポリカーボネートジオールを併用してもよく、本発明のポリカーボネートポリオールとポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオールとを混合して用いてもよく、変性により共重合ポリオールにして用いてもよい。
また、本発明によるポリウレタンの製造時には、必要に応じて鎖延長剤を用いてもよい。
いずれの場合であっても、本発明のポリカーボネートジオールを用いることにより、ポリウレタンの製造反応系内の糖及び/又はその誘導体の含有量が、製造されるポリウレタンに対して下限は好ましくは0.005重量ppm、より好ましくは0.02重量ppm、特に好ましくは0.05重量ppmであることが好ましい。また上限は好ましくは65重量ppm、より好ましくは30重量ppm、更に好ましくは7重量ppmとなることが好ましい。
【0122】
本発明において、ポリウレタンの製造には、上述の本発明のポリカーボネートジオールを変性して使用することも出来る。ポリカーボネートジオールの変性方法としては、ポリカーボネートジオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させてエーテル基を導入する方法や、ポリカーボネートジオールをε−カプロラクトン等の環状ラクトンやアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物並びにそれらのエステル化合物と反応させてエステル基を導入する方法がある。エーテル変性ではエチレンオキシド、プロピレンオキシド等による変性でポリカーボネートジオールの粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。特に、1,4−ブタンジオールを原料とする本発明のポリカーボネートジオールではエチレンオキシドやプロピレンオキシド変性することによって、ポリカーボネートジオールの結晶性が低下し、低温での柔軟性が改善すると共に、エチレンオキシド変性の場合は、エチレンオキシド変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの吸水性や透湿性が増加する為に人工皮革・合成皮革等としての性能が向上することがある。しかし、エチレンオキシドやプロピレンオキシドの付加量が多くなると、変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの機械強度、耐熱性、耐薬品性等の諸物性が低下するので、ポリカーボネートジオールに対する付加量としては5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。また、エステル基を導入する方法では、ε−カプロラクトンによる変性でポリカーボネートジオールの粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。ポリカーボネートジオールに対するε−カプロラクトンの付加量としては5〜50重量%が好適であり、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。ε−カプロラクトンの付加量が50重量%を超えると、変性ポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンの耐加水分解性、耐薬品性等が低下する。
【0123】
(1)イソシアネート化合物
本発明において用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート及びα,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0124】
好適なイソシアネート化合物は、製造するポリウレタンの用途に応じて異なり、例えば、合成・人工皮革や塗料のような耐候性を必要とされる用途には、光による黄変が少ない点で脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。中でも、物性が良く入手が容易な点で1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。一方、弾性繊維等、強度を必要とされる用途には、凝集力の高い芳香族ジイソシアネートを使用することが好ましく、物性が良く入手が容易な点で、特にトリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。またイソシアネート化合物のNCO基の一部をウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド及びイミド等に変性したものであってもよく、更に多核体には前記以外の異性体を含有しているものも含まれる。
【0125】
これらのイソシアネート化合物の使用量は、ポリカーボネートジオールの水酸基及び必要に応じて用いられる鎖延長剤の水酸基及びアミノ基の1当量に対し、通常0.1当量〜10当量であることが好ましく、より好ましくは0.8当量〜1.5当量、更に好ましくは0.9当量〜1.05当量である。
【0126】
イソシアネート化合物の使用量を上記上限以下とすることにより、未反応のイソシアネート基が好ましくない反応を起こすのを防ぎ、所望の物性が得られ易い。また、イソシアネート化合物の使用量を上記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が十分に大きくなり、所望の性能を発現させることができる。
【0127】
イソシアネート化合物は、ポリカーボネートジオールや必要に応じて用いられる鎖延長剤等、イソシアネート化合物以外のポリウレタン原料に含まれる水分と反応して一部消失するため、それを補填する量を所望のイソシアネート化合物使用量に加えてもよい。具体的には、反応の際イソシアネート化合物と混合する前に、ポリカーボネートジオールや鎖延長剤等の水分量を測定しておき、その水分の物質量の2倍に相当するイソシアネート基を持つイソシアネート化合物を、所定の使用量に加えるものである。
イソシアネート基が水分と反応して消失する機構は、イソシアネート基が水分子との反応でアミン化合物となり、そのアミン化合物が更にイソシアネート基と反応してウレア結合を形成することにより、水1分子に対しイソシアネート基2つが消失するものである。この消失により必要とされるイソシアネート化合物が不足し、所望の物性が得られなくなる恐れがあるため、上記に記載の方法で水分量に見合う量を補填するためのイソシアネート化合物を添加することが有効である。
【0128】
(2)鎖延長剤
本発明においては、必要に応じて2個以上の活性水素を有する鎖延長剤を用いてもよい。鎖延長剤は、主として、2個以上の水酸基を有する化合物及び2個以上のアミノ基を有する化合物に分類される。この中でも、ポリウレタン用途には短鎖ポリオール、具体的には2個以上の水酸基を有する化合物を、ポリウレタンウレア用途には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0129】
また、鎖延長剤として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を併用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上するために、物性上更に好ましい。
【0130】
2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール及び1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール及びビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、並びにキシリレングリコール及びビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。
【0131】
2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン及び4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン及び1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0132】
この中でも本発明において好ましいのは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ジアミノペンタン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミンであり、特に、取扱いや保管の容易さと得られるポリウレタンの物性のバランスが優れる点において1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0133】
これらの鎖延長剤についても、バイオマス資源由来のものを用いることもでき、その場合の製造方法は、前述のバイオマス資源由来のジヒドロキシ化合物の製造方法と同様である。
【0134】
これらの鎖延長剤のうち、イソシアネート化合物として芳香族ポリイソシアネートを使用する時には水酸基を有するものが、一方、脂肪族ポリイソシアネートを使用する時にはアミノ基を有するものが好ましい。また、これらの鎖延長剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0135】
これらの鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、イソシアネート化合物とポリカーボネートジオールを反応させ、プレポリマーを得た際に分子末端等に残存するイソシアネート基または水酸基1当量に対し、通常0.8当量以上1.2当量以下であることが好ましい。
【0136】
鎖延長剤の使用量を上記上限以下とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)が硬くなりすぎるのを防ぎ、所望の特性が得られ、溶媒に溶け易く加工が容易である。また、上記下限以上とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)の分子量が十分に高くなるため、柔らかすぎることなく、十分な強度、弾性回復性能又は弾性保持性能が得られ、高温特性を向上させることができる。
【0137】
本発明において、鎖延長剤として、糖及び/又はその誘導体を含むものを用いて反応系に鎖延長剤由来の糖及び/又はその誘導体の所定量を存在させるようにすることもできる。その場合、鎖延長剤中の糖及び/又はその誘導体の含有量は、ポリカーボネートジオール由来の糖及び/又はその誘導体との合計で反応系に糖及び/又はその誘導体を前述の存在量で存在させることができるような量であればよいが、例えば糖及び/又はその誘導体を0.1〜800重量ppm、特には0.5〜100重量ppm、更には10〜100重量ppm含む鎖延長剤を好ましく用いることができる。なお、ここで糖及び/又はその誘導体の含有量は、糖及び/又はその誘導体を含んだ鎖延長剤中の含有量、即ち、糖及び/又はその誘導体と鎖延長剤との合計に対する糖及び/又はその誘導体の含有量である。
【0138】
(3)鎖停止剤
本発明においてはまた、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することもできる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノヒドロキシ化合物、並びにアミノ基を有するモルフォリン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0139】
(4)本発明のポリカーボネートジオール以外のポリオール
本発明のポリウレタンを製造する際、本発明のポリカーボネートジオールと必要に応じてそれ以外のポリオールを併用してもよい。ここで、本発明のポリカーボネートジオール以外のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、本発明のポリカーボネートジオール以外のポリカーボネートジオールが挙げられる。ここで、本発明のポリカーボネートジオールとそれ以外のポリオールを合わせた重量に対する本発明のポリカーボネートジオールの重量割合は70%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。本発明のポリカーボネートジオールの重量割合が少ないと、ポリウレタン原料として本発明のポリカーボネートジオールを用いることによる前述の効果を十分に得ることができない場合がある。
【0140】
(5)架橋剤
本発明においてはまた、得られるポリウレタンの耐熱性や強度を上げる目的で、必要に応じて3個以上の活性水素基やイソシアネート基を持つ架橋剤を使用することができる。これらの架橋剤にはトリメチロールプロパンやグリセリン並びにそのイソシアネート変性物、ポリメリックMDI等が使用できる。
【0141】
(6)ポリウレタンの製造
本発明においては、前述の本発明のポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物と、必要に応じて、上述の鎖延長剤、鎖停止剤等を用いてポリウレタンを製造する。
【0142】
本発明において、ポリウレタンはバルクつまり無溶剤で反応させて製造しても、また非プロトン性極性溶媒の様なポリウレタンの溶解性に優れた溶媒中で反応させて製造してもよい。
【0143】
下記に製造方法の一例を示すが、何ら以下の方法に限定されるものではない。製造方法としては、例えば、一段法及び二段法が挙げられる。
【0144】
一段法とは、ポリカーボネートジオール、イソシアネート化合物及び鎖延長剤を同時に反応させる方法である。
【0145】
また、二段法とは、まずポリカーボネートジオールとイソシアネート化合物を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、プレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、イソシアネート基末端の二段法とも言う)である。また、両末端が水酸基のプレポリマーを調製した後に、プレポリマーとイソシアネート化合物とを反応させる方法(以下、水酸基末端の二段法とも言う)も挙げられる。
【0146】
イソシアネート基末端の二段法は、ポリカーボネートジオールをあらかじめ1当量以上のイソシアネート化合物と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものである。また、水酸基末端の二段法は、ポリカーボネートジオールをあらかじめ1当量未満のイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものである。
【0147】
プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量を調整しやすく、分子設計を行いやすい特徴がある。
【0148】
特に鎖延長剤がジアミンの場合には、ポリカーボネートジオールの水酸基と比較して、イソシアネート基との反応速度が大きく異なるため、プレポリマー法でポリウレタンウレア化を実施することがより好ましい。
【0149】
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、ポリカーボネートジオール、イソシアネート化合物及び鎖延長剤を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。各化合物の使用量は、上記記載の量を使用すればよい。
【0150】
ワンショット法は溶媒を用いても用いなくてもよい。溶媒を用いない場合は、イソシアネート化合物とポリカーボネートジオール等を低圧発泡機や高圧発泡機を使用して反応させてもよいし、高速回転混合機を使用して攪拌混合して反応させてもよい。
【0151】
溶媒を用いる場合は、溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、クロルベンゼン、トリクレン及びパークレン等のハロゲン化炭化水素類、並びにγ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0152】
これら有機溶媒の中でも、溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒の好ましい具体例を挙げると、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びジメチルスルホキシドが挙げられ、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0153】
ワンショット法の場合、NCO/活性水素基(ポリカーボネートジオールと鎖延長剤)の反応当量比は下限が通常0.50であることが好ましく、より好ましくは0.8であり、上限が通常1.5であることが好ましく、より好ましくは1.2である。
【0154】
前記反応当量比を1.5以下とすることにより、過剰のイソシアネート基が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与えるのを防ぐことができる。また、0.50以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がり、強度又は熱安定性に問題を生じるのを防ぐことができる。
【0155】
反応は、好ましくは0〜100℃の温度で行われるが、この温度は溶媒の量、使用原料の反応性、反応設備等により調整することが好ましい。反応温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪く、また高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下にて脱泡しながら行ってもよい。
【0156】
また、反応系には必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。
【0157】
触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
【0158】
安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0159】
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、あらかじめイソシアネート化合物とポリカーボネートジオールとを、好ましくは0.1〜10.00の反応当量比で反応させてプレポリマーを製造する。次いで該プレポリマーに鎖延長剤であるイソシアネート化合物または活性水素化合物成分を加えて2段階反応させる。
【0160】
二段法は溶媒を用いても用いなくてもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、クロルベンゼン、トリクレン及びパークレン等のハロゲン化炭化水素類、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0161】
本発明では、これら有機溶媒の中でも、溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒の好ましい具体例を挙げると、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びジメチルスルホキシドが挙げられ、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0162】
イソシアネート基末端または水酸基末端のプレポリマーを合成する場合、(a)まず溶媒を用いないで直接イソシアネート化合物とポリカーボネートジオールを反応させてプレポリマーを合成しそのまま使用してもよいし、(b)(a)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶解させて使用してもよいし、(c)溶媒を用いてイソシアネート化合物とポリカーボネートジオールを反応させてプレポリマーを合成してもよい。
【0163】
(a)の場合には、鎖延長剤を作用させるにあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を導入するなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが好ましい。
【0164】
プレポリマー合成時のNCO/活性水素基(ポリカーボネートジオール)の反応当量比は、下限が通常0.6であることが好ましく、より好ましくは0.8であり、上限が通常10であることが好ましく、より好ましくは5、更に好ましくは3である。
【0165】
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基またはOH基の当量に対して、下限が通常0.8であることが好ましく、より好ましくは0.9であり、上限が通常2であることが好ましく、より好ましくは1.2である。この比を2以下とすることにより、過剰の鎖延長剤が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与えるのを防ぐことができる。また、この比を0.8以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がり、強度や熱安定性に問題を生じるのを防ぐことができる。
【0166】
また、反応時に一官能性の有機アミンやアルコールを共存させてもよい。具体的には上記(3)鎖停止剤で記述したものと同様の物質が挙げられる。
【0167】
反応温度は、好ましくは0〜250℃とされるが、この温度は溶媒の量、使用原料の反応性、反応設備等により調整することが好ましい。反応温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪くなったりし、また高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下にて脱泡しながら行ってもよい。
【0168】
また、反応系には必要に応じて、触媒及び安定剤等を添加することもできる。
【0169】
触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。しかしながら、イソシアネート化合物が芳香族ジイソシアネートである場合、及び/又は鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。
【0170】
安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0171】
本発明のポリウレタン製造時に、耐熱性や強度が必要な用途で、架橋剤を添加する場合は、一般的に使用されている石油由来のポリカーボネートジオールを使用する時よりも、本発明のポリカーボネートジオールの添加量を少なくするのが好ましい。
【0172】
<水系ポリウレタンエマルションの製造>
本発明のポリカーボネートジオールを用いて、水系ポリウレタンエマルションを製造することも可能である。その場合、ポリカーボネートジオールを含むポリオールと過剰のイソシアネート化合物を反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物を混合してプレポリマーを形成し、親水性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタンエマルションとすることが好ましい。
【0173】
ここで使用する少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の親水性官能基とは、例えばカルボキシル基やスルホン酸基であって、アルカリ性基で中和可能な基である。また、イソシアネート反応性基とは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウレア結合を形成する基であり、これらが同一分子内に混在していてもかまわない。
【0174】
少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物としては、具体的には、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2−メチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類、例えば、リジン、シスチン、3,5−ジアミノカルボン酸等も挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらを実際に用いる場合には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ性化合物で中和して用いることができる。
【0175】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の使用量は、水に対する分散性能を上げるために、その下限は、本発明のポリカーボネートジオールを含むポリオールの総重量に対して好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%である。一方、これを多く添加しすぎると本発明のポリカーボネートジオールの特性が維持されなくなってしまうことがあるために、その上限は好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは30重量%である。
【0176】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、プレポリマー工程においてメチルエチルケトンやアセトン、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒の共存下に反応させてもよいし、無溶媒で反応させてもよい。また、溶媒を使用する場合は、水性エマルションを製造した後に蒸留によって溶媒を留去させるのが好ましい。
【0177】
本発明のポリカーボネートジオールを原料として、無溶媒で水系ポリウレタンエマルションを製造する際には、用いるポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量の上限は好ましくは5000、より好ましくは4500、さらに好ましくは4000である。また、下限は好ましくは300、より好ましくは500、さらに好ましくは800である。原料ポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量が5000を超えたり、300より小さくなると、エマルジョン化が困難となる場合がある。
【0178】
また、水系ポリウレタンエマルションの合成、あるいは保存にあたり、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸アルキルアリール、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステルなどに代表されるアニオン性界面活性剤、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪族アルコール又はフェノール類との公知の反応生成物に代表される非イオン性界面活性剤等を併用して、乳化安定性を保持してもよい。
【0179】
また、水系ポリウレタンエマルションとする際に、プレポリマーの有機溶媒溶液に、必要に応じて中和塩化工程なしに、乳化剤の存在下、水を機械的に高せん断下で混合して、エマルションを製造することもできる。
【0180】
このようにして製造された水系ポリウレタンエマルションは、様々な用途に使用することが可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
【0181】
水系ポリウレタンエマルションの具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、水系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。特に本発明のポリカーボネートジオールを用いて製造される水系ポリウレタンエマルションは、ポリカーボネートジオール中に糖及び/又はその誘導体を有していることから、生産性に優れ、かつ機械物性が高くコーティング剤等として従来のポリカーボネートジオールを使用した水系ポリウレタンエマルションに比べて有効に利用することが可能である。
【0182】
<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造>
また、本発明のポリカーボネートジオールを用いて、イソシアネート化合物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加反応させることによりウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造することができる。その他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等を併用する場合は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、イソシアネート化合物に、更にこれらのその他の原料化合物も付加反応させることにより製造することができる。
その際の各原料化合物の仕込み比は、目的とするウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの組成と実質的に同等、ないしは同一とする。
【0183】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造に用いるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、一個以上の水酸基と一個以上の(メタ)アクリロイル基と炭素数1〜30の炭化水素基とを有する化合物である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0184】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物、グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコールのモノ(メタ)アクリレート体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0185】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの分子量は、40以上、更には80以上であるのが好ましく、又、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの機械的強度の観点から800以下、更には400以下であるのが好ましい。なお、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが前記の付加反応体や重合体である場合には、この分子量は数平均分子量である。
【0186】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上記した中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基と水酸基との間に炭素数が2〜4のアルキレン基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの機械的強度の観点から特に好ましい。
【0187】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーにおける全イソシアネート基の量と水酸基及びアミノ基等のイソシアネート基と反応する全官能基の量は、通常、理論的に当モルである。
【0188】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを製造する際は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、本発明のポリカーボネートジオール、並びに必要に応じて用いられるその他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等のイソシアネートと反応する官能基を含む化合物の総使用量に対して、通常10モル%以上、好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上、また、通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下とする。この割合に応じて、得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量を制御することができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が多いと、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの分子量は小さくなる傾向となり、この割合が少ないと分子量は大きくなる傾向となる。
【0189】
また、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造に当たり、本発明のポリカーボネートジオールとその他のポリオールとの総使用量に対して、本発明のポリカーボネートジオールの使用量を25モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。本発明のポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値以上であると、本発明の効果である生産性の向上、および得られる硬化物の機械物性改善の傾向が得られやすく好ましい。
また、本発明のポリカーボネートジオールとその他のポリオールとの総使用量に対して、本発明のポリカーボネートジオールの使用量は、10重量%以上とすることが好ましく、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。本発明のポリカーボネートジオールの使用量が前記の下限値以上であると、本発明の効果である生産性の向上、および得られる硬化物の機械物性改善の傾向が得られやすく好ましい。
【0190】
更に、鎖延長剤を用いる場合には、本発明のポリカーボネートジオール、その他のポリオールと鎖延長剤とを合わせた化合物の総使用量に対して本発明のポリカーボネートジオールおよびその他のポリオールとを合わせた化合物の使用量を70モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。本発明のポリカーボネートジオール量が上記の下限値以上であると、液安定性が向上する傾向になり好ましい。
【0191】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、粘度の調整を目的に溶剤を使用することができる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶剤としては、公知の溶剤のいずれも使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤は、通常、反応系内の固形分100重量部に対して300重量部未満で使用可能である。
【0192】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、反応系内の生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量は、反応系の総量に対して20重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。なお、この総含有量の上限は100重量%である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量が20重量%以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。
【0193】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造に際しては付加反応触媒を用いることができる。この付加反応触媒としては、例えばジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジネオデカネート等が挙げられる。付加反応触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。付加反応触媒は、これらのうち、ジオクチル錫ジラウレートまたはジオクチル錫ジネオデカネートであることが、環境適応性及び触媒活性、保存安定性の観点から好ましい。
付加反応触媒は、反応系内の生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常1000ppm、好ましくは500ppmであり、下限が通常10ppm、好ましくは30ppmで用いられる。
【0194】
また、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時に、反応系に(メタ)アクリロイル基を含む場合には、重合禁止剤を併用することができる。このような重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物等が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
【0195】
重合禁止剤は、反応系内の生成するウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー及びその原料化合物の総含有量に対して、上限が通常3000ppm、好ましくは1000ppm、特に好ましくは500ppmであり、下限が通常50ppm、好ましくは100ppmで用いられる。
【0196】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの製造時において、反応温度は通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であると、反応速度が高くなり、製造効率が向上する傾向にあるために好ましい。また、反応温度は通常120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。反応温度が120℃以下であると、アロファネート化反応等の副反応が起きにくくなるために好ましい。また、反応系に溶剤を含む場合には、反応温度はその溶剤の沸点以下であることが好ましく、溶剤の構造中に(メタ)アクリレートが入っている場合には(メタ)アクリロイル基の反応防止の観点から70℃以下であることが好ましい。反応時間は通常5〜20時間程度である。
【0197】
このようにして得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の数平均分子量は500以上が好ましく、特に1000以上であることが好ましく、一方、10000以下が好ましく、特に5000以下、とりわけ3000以下であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記下限以上であると、これを用いて得られる硬化膜の三次元加工適性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量が上記上限以下であると、これを用いて得られる硬化膜の耐汚染性が良好となり、三次元加工適性と耐汚染性とのバランスに優れる傾向となるため好ましい。これは、三次元加工適性と耐汚染性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり三次元加工適性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐汚染性に優れるからであると推定される。
【0198】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、必要に応じて他の成分をさらに含有し、活性エネルギー線硬化組成物としてもよい。このような他の成分としては、例えば、活性エネルギー線反応性モノマー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、重合開始剤、光増感剤、添加剤、及び溶剤が挙げられる。
【0199】
(7)ポリウレタンの物性等
本発明のポリウレタンの製造方法により製造される本発明のポリウレタンは、ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオールを用いて製造された水酸基価から換算した分子量が2000であるポリカーボネートジオールを原料とし、N,N−ジメチルホルムアミドの30重量%溶液中で、ポリカーボネートジオール1当量に対して4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を2当量反応させ、1,4−ブタンジオールで鎖延長したポリウレタンを例に説明すると、以下のような物性を示すことが好ましい。
【0200】
本発明のポリウレタンを製造する工程において、原料として使用する本発明のポリカーボネートジオールを含むポリオールと鎖延長剤の水酸基の総モル数に対して、原料として使用するイソシアネート化合物のイソシアネート基の総モル数が0.95モル比である時点(以下、NCO/OH=0.95と記載することがある)での反応系における、GPCで測定されたポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、下限は好ましくは80000、より好ましくは90000、さらに好ましくは100000である。また、上限は好ましくは225000、より好ましくは220000、さらに好ましくは215000、特に好ましくは210000、とりわけ好ましくは200000、最も好ましくは190000である。
NCO/OH=0.95時点でのMwが上記下限以上の場合、十分な強度を持つ分子量まで到達するまでの反応時間が短く、生産効率が向上する。また、上記上限以下の場合、目的の最終到達分子量にまで調整することが可能となるため好ましい。
【0201】
本発明のポリウレタンを製造する工程において、上記NCO/OH=0.95時点での反応系における25℃における粘度は、下限は好ましくは5Pa・s、より好ましくは7Pa・s、さらに好ましくは9Pa・sである。また上限は好ましくは300Pa・s、より好ましくは250Pa・s、更に好ましくは200Pa・sである、特に好ましくは150Pa・sである。
NCO/OH=0.95時点での粘度が上記下限以上の場合、十分な強度を持つポリウレタンにまで到達するまでの反応時間が短く、生産効率が向上する。また、上記上限以下の場合、目的の最終粘度にまで調整することが可能となるため好ましい。
【0202】
本発明のポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度55%で測定した引張破断強度の下限が好ましくは60MPa、より好ましくは65MPa、更に好ましくは70MPaである。またその上限は好ましくは200MPa、より好ましくは180MPa、更に好ましくは150MPaである。引張破断強度が上記下限未満では十分な製品強度が得られない傾向にあり、上記上限を超えると製品柔軟性が損なわれる可能性がある。
【0203】
また、本発明のポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度55%で測定した引張破断伸度の下限が好ましくは350%、より好ましくは400%、さらに好ましくは450%であり、上限は好ましくは900%、より好ましくは850%、さらに好ましくは800%である。引張破断伸度が上記下限未満では加工性などハンドリング性を損なう傾向があり、上記上限を超えると十分な製品強度が得られない傾向にある。
【0204】
本発明のポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度55%で測定した100%モジュラス(伸度100%のときの弾性率)の下限が好ましくは1.0MPa、より好ましくは2.0MPa、さらに好ましくは3.0MPaであり、上限は好ましくは10MPa、より好ましくは8MPa、さらに好ましくは6MPaである。100%モジュラスが上記下限未満では製品強度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。
【0205】
さらに、本発明のポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度55%で測定した300%モジュラス(伸度300%のときの弾性率)の下限が好ましくは12.0MPa、より好ましくは12.5MPaであり、上限は好ましくは40MPa、より好ましくは30MPa、さらに好ましくは20MPaである。300%モジュラスが上記下限未満では製品強度が十分でない場合があり、上記上限を超えると柔軟性が不十分であったり、加工性などハンドリング性を損なったりする傾向がある。
【0206】
本発明のポリウレタンはまた、特定の用途を対象とした場合には、前記のような範囲の域を超えた、任意の広範囲の特性を保有するポリウレタンとすることができる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリウレタン原料や添加物の種類、重合条件或いは成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
【0207】
本発明のポリウレタンの硫黄原子含有量は、該ポリウレタン重量に対して原子換算として、上限が50ppmであることが好ましく、より好ましくは5ppm、更に好ましくは3ppm、最も好ましくは0.3ppmである。一方、下限は、特に限定されないが、0.0001ppmであることが好ましく、より好ましくは0.001ppm、更に好ましくは0.01ppmであり、特に好ましくは0.05ppmであり、最も好ましくは0.1ppmである。
【0208】
前記硫黄原子含有量を50ppm以下とすることにより、ポリウレタンの熱安定性又は耐加水分解性を向上することができる。また、0.0001ppm以上とすることにより、精製コストが著しく高くなるのを防ぎ、ポリウレタンの製造においては経済的に有利である。
【0209】
本発明のポリウレタンは、通常、着色の少ないポリウレタンであることが好ましい。本発明のポリウレタンのYI値(JIS−K7373に準拠)は、厚さ約80μmのポリウレタンフィルムに対してフッ素樹脂シート上で測定した際に、その上限が、通常3.0であることが好ましく、より好ましくは2.9、更に好ましくは2.8、特に好ましくは2.7であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20であることが好ましく、より好ましくは−5、更に好ましくは−1である。
【0210】
YI値が3.0以下であるポリウレタンは、フィルム及びシート等の使用用途が制限されないという利点を有する。一方、YI値が−20以上であるポリウレタンは、ポリウレタンを製造するための製造プロセスが煩雑となることが無く、極めて高額の設備投資が不要であり、経済的に有利である。
【0211】
ポリウレタンのGPC測定による重量平均分子量は、用途により異なるが、例えば合成皮革・人工皮革、靴底用ポリウレタン、フィルム、シート、チューブ、透湿性樹脂等の用途においては、ポリウレタン重合溶液として、ポリスチレン標準換算で通常1万〜100万であることが好ましく、より好ましくは5万〜50万、更に好ましくは10万〜40万、特に好ましくは10万〜35万である。分子量分布としてはMw/Mnが1.5〜3.5であることが好ましく、より好ましくは1.8〜2.5、更に好ましくは1.9〜2.3である。
【0212】
前記分子量を100万以下とすることにより、溶液粘度が高くなり過ぎるのを防ぎ、取り扱い性が向上する。また、1万以上とすることにより、得られるポリウレタンの物性が低下し過ぎるのを防ぐことができる。分子量分布を1.5以上とすることにより、ポリウレタン製造の経済性が悪化し過ぎるのを防ぎ、得られるポリウレタンの弾性率が向上する。また、3.5以下とすることにより溶液粘度が高くなり過ぎるのを防ぎ、取り扱い性が向上し、また、得られるポリウレタンの弾性率が高くなり過ぎるのを防ぎ、弾性回復性が向上する。
【0213】
(8)ポリウレタン溶液
本発明のポリウレタンを非プロトン性溶媒に溶解させた溶液(以下、「ポリウレタン溶液」ともいう。)は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さいなど保存安定性が良く、また、チクソトロピー性も小さいため、フィルム及び糸等に加工するためにも都合がよい。
【0214】
本発明のポリウレタン溶液に好適に用いられる非プロトン性溶媒としては、前述のメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びジメチルスルホキシドが挙げられ、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0215】
ポリウレタン溶液中のポリウレタンの含有量は、ポリウレタン溶液の全重量に対して、通常1〜99重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜90重量%、更に好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。ポリウレタン溶液中のポリウレタンの含有量を1重量%以上とすることにより、大量の溶媒を除去することが必要になることがなく、生産性を向上することができる。また、99重量%以下とすることにより、溶液の粘度を抑え、操作性又は加工性を向上することができる。
【0216】
本発明のポリウレタン溶液の粘度は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される溶液粘度として、100Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることがより好ましく、300Pa・s以上であることが特に好ましい。一方、1000Pa・s以下であることが好ましく、900Pa・s以下であることがより好ましく、800Pa・s以下であることが特に好ましい。ポリウレタン溶液の粘度が上記下限以上であると製造時にポリウレタン溶液の加工性が容易になり、また十分な機械物性を発現する傾向であり、上記上限以下であるとポリウレタン溶液の取扱い性が向上し、生産性が向上するため好ましい。
【0217】
ポリウレタン溶液は、特に指定はされないが、長期にわたり保存する場合は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
【0218】
(9)ポリウレタンの添加剤
本発明のポリウレタンには、必要に応じて各種の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、例えば、CYANOX1790(CYANAMID(株)製)、IRGANOX245、IRGANOX1010(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)、Sumilizer GA−80(住友化学(株)製)及び2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、TINUVIN622LD、TINUVIN765(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)、SANOL LS−2626、LS−765(以上、三共(株)製)等の光安定剤、TINUVIN328及びTINUVIN234(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機リン化合物、リン及びハロゲン含有有機化合物、臭素又は塩素含有有機化合物、ポリリン酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料及びカーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン及び白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤並びに有機溶媒などが挙げられる。また、水並びに代替フロン等の発泡剤も加えてもよい。特に靴底用ポリウレタンフォームには有用である。
【0219】
(10)ポリウレタン成形体・用途
本発明のポリウレタン及びそのポリウレタン溶液は、多様な特性を発現させることができ、フォーム、エラストマー、塗料、コーティング、繊維、接着剤、床材、シーラント、医用材料、人工皮革、合成皮革等に広く用いることができる。以下、その用途を挙げるが、本発明のポリウレタン及びポリウレタン溶液の用途は何ら以下のものに限定されるものではない。
【0220】
(a)注型ポリウレタンエラストマーとしての用途。例えば、圧延ロール、製紙ロール、事務機器及びプレテンロールなどのロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車及び運搬車などのソリッドタイヤ、キャスター、並びにコンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン及びサイクロンライナーなどの工業製品。OA機器のベルト、紙送りロール、スクシジー、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラーなど。
【0221】
(b)熱可塑性エラストマーとしての用途。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器及び産業用ロボットなどにおけるチューブ又はホース類、スパイラルチューブ並びに消防ホース。丸ベルト、Vバルト及び平ベルトなどのベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器及び印刷機械など。
【0222】
(c)履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロールなどの機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルトなど。
【0223】
(d)自動車部品として、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品及びタイヤチェーン代替品、キーボードフィルム及び自動車用フィルムなどのフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品並びに接着剤など。
【0224】
(e)溶剤系二液型塗料としての用途。例えば、楽器、仏壇、家具、化粧合板及びスポーツ用品などの木材製品。またタールエポキシウレタンとして自動車補修用。
【0225】
(f)湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化方塗料などの成分。
例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルムなどのオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコートなど。
【0226】
(g)接着剤として、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材及び構造部材など。低温用接着剤、ホットメルトの成分。
【0227】
(h)バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム及びガラス繊維サイジングなど。
【0228】
(i)繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工など。
【0229】
(j)シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC目地、ALC目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント及び自動車用シーラントなど。
【0230】
(k)合成皮革、人工皮革用途。本発明のポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンは、耐熱性、耐加水分解性、耐候性、強度に極めて優れる特長を有するため、長い耐用年数が要求される用途、例えば自動車や高級家具に用いられる合成皮革、人工皮革の用途に好適である。
【0231】
(11)人工皮革・合成皮革
以下、本発明のポリウレタンの代表的な用途の一例である人工皮革又は合成皮革について詳細に説明する。
人工皮革又は合成皮革は、基布と接着剤層と表皮層とを主要構成要素とする。表皮層は本発明のポリウレタンにその他の樹脂、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を混合してポリウレタン溶液を作成し、これに着色剤及び有機溶剤等を混合して得られる表皮層配合液からなる。ポリウレタン溶液には、その他必要に応じて、加水分解防止剤、顔料、染料、難燃剤、充填材及び架橋剤などを添加することができる。
【0232】
その他の樹脂としては、例えば、本発明のポリウレタン以外のポリウレタン、ポリ(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂、並びにポリアミド樹脂等などが挙げられる。
【0233】
架橋剤としては、例えば、有機ポリイソシアネート、クルードMDI、トリメチロールプロパンのTDIアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0234】
基布としては、例えば、テトロン/レーヨン、綿起毛布、メリヤス及びナイロントリコット等が挙げられる。また、接着剤としては、例えば、ポリウレタンとポリイソシアネート化合物及び触媒とからなる2液型ポリウレタンが挙げられる。
【0235】
また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンのTDIアダクト等が挙げられる。触媒としては、例えば、アミン系又は錫系等の触媒が挙げられる。
【0236】
本発明のポリウレタンを用いた合成皮革を製造するには、例えば、まず、本発明のポリウレタンにその他の樹脂等を混合し、ポリウレタン溶液を作成し、これに着色剤等を混合して、表皮層配合液を作る。次にこの配合液を離型紙の上に塗布し、乾燥させてから、更に接着剤を塗布して接着剤層を形成させ、その上に起毛布等を張り合わせ乾燥させてから、室温で数日熟成後、離型紙を剥離することにより人工皮革・合成皮革が得られる。
【0237】
製造された人工皮革・合成皮革は自動車内装材用、家具用、衣料用、靴用、鞄用などに使用できる。
【実施例】
【0238】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0239】
以下の実施例及び比較例において、各成分の物性等の分析、評価方法は以下の通りである。
【0240】
(1)ポリカーボネートジオールの分析、評価
<フェノキシ基量及びフェノール含有量の定量>
ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H−NMR(日本電子株式会社製AL−400)を測定し、各成分のシグナル位置より、ポリカーボネートジオール由来の官能基、フェノキシ基、フェノールを同定し、積分値より数平均分子量(Mn)及び各々の含有量を算出した。フェノキシ基の割合は、フェノキシ基の1プロトン分の積分値と末端全体の1プロトン分の積分値の比から求めており、フェノキシ基の検出限界は末端全体に対して0.05%である。また、フェノール含有量の検出限界はサンプル全体の重量に対するフェノールの重量として100ppmである。
【0241】
<水酸基価、水酸基価換算数平均分子量(Mn(OHV))の測定>
JIS K1557−1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にてポリカーボネートジオールの水酸基価を測定し、その値から下式によりMn(OHV)を算出した。
Mn(OHV)=56.11×2×1000÷水酸基価
【0242】
<APHA値の測定>
JIS K0071−1(1998)に準拠して、溶融させたポリカーボネートジオールを比色管に入れた標準液と比較してAPHA値を測定した。試薬は色度標準液1000度(1mgPt/mL)(キシダ化学)を使用した。
【0243】
<溶融粘度の測定>
ポリカーボネートジオールを80℃に加熱して溶融させた後、E型粘度計(BROOKFIELD製DV−II+Pro、コーン:CPE−52)を用いて80℃で溶融粘度を測定した。
【0244】
(2)水分量の測定
ポリウレタン製造原料中の水分の分析はカールフィッシャー法を用いて行った。装置は三菱化学(株)製の水分分析計CA−21型を用い、陽極液としてアクアミクロンAKXを、陰極液としてアクアミクロンCXUをそれぞれ使用した。
【0245】
(3)ポリウレタンの分析、評価
<溶液粘度>
VISCOMETER TV−22(東機産業株式会社製)に3°×R14のローターを設置し、25℃でポリウレタンをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した溶液(濃度:30重量%)の溶液粘度を測定した。
【0246】
<分子量>
ポリウレタンの分子量は、ポリウレタンの濃度が0.14重量%になるようにN,N−ジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」(カラム:TskgelGMH−XL・2本)、溶離液にはリチウムブロマイド2.6gをジメチルアセトアミド1Lに溶解させた溶液を使用〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0247】
<フィルムの引張特性>
製造されたポリウレタン溶液を9.5MILのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、80℃で15時間乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムを幅10mm、長さ100mm、厚み50〜100μmの短冊状とし、引張試験機((株)オリエンテック製テンシロンUTM−III−100)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分、温度23℃(相対湿度55%)の条件下で引張破断強度と引張破断伸度と伸度100%及び300%のときの弾性率を測定した。1サンプルにつき5〜10点測定し、その平均値を採用した。
【0248】
<フィルムのYI値>
製造されたポリウレタン溶液を9.5MILのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニトフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、80℃で15時間乾燥させた。得られた厚み75〜84μmのポリウレタンフィルムを、フッ素樹脂シート上に載せた状態でポリウレタンフィルムが光源側に向くように色差計(日本電色工業(株)製のカラーメーターZE2000)に設置し、フッ素樹脂シート側には標準白板を置いてYI値(JIS K7373に準拠)を測定した。
【0249】
[ポリカーボネートジオールの製造と評価]
<実施例1>
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、D−(+)−グルコースを1ppm含有する1,4−ブタンジオール(以下14BD、三菱化学株式会社製):1247.2g、ジフェニルカーボネート:2752.8g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:7.1mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:59mg)を入れ、窒素ガス置換した。攪拌下、内温を160℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけて圧力を24kPaまで下げた後、フェノールを系外へ除去しながら90分間反応させた。次いで、圧力を9.3kPaまで90分間かけて下げ、さらに0.7kPaまで30分間かけて下げて反応を続けた後に、170℃まで温度を上げてフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら90分間反応させて、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状及び物性の評価結果を表1−1に示す。
【0250】
<実施例2〜6>
D−(+)−グルコースを表1−1に示す量で含有する14BDを使用した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネートジオール含有組成物を得た。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状及び物性の評価結果を表1−1に示す。
【0251】
<実施例7〜8>
D−(+)−グルコースの代わりにグルコノラクトンを表1−1に示す量で含有する14BDを使用した以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネートジオール含有組成物を得た。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状及び物性の評価結果を表1−1に示す。
【0252】
<比較例1〜2>
原料の14BDを、D−(+)−グルコースを表1−2に示す量で含有する14BDに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状及び物性の評価結果を表1−2に示す。比較例2で得られたポリカーボネートジオールについては、目的の分子量が得られず、末端のフェノキシ基量が高いため、続く蒸留およびポリウレタン化とその物性測定は実施できなかった。
【0253】
<比較例3>
原料の14BDを、D−(+)−グルコースの代わりにグルコノラクトンを100ppm含有する14BDに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状及び物性の評価結果を表1−2に示す。
【0254】
<比較例4>
原料の14BDを、糖や糖誘導体を含有しない14BDに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状及び物性の評価結果を表1−2に示す。
【0255】
<比較例5>
原料の14BDを、D−(+)−グルコースの代わりに、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン製、商品名IRGANOX1010)を10ppm含有する14BDに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオール含有組成物を得た。得られたポリカーボネートジオール含有組成物の性状及び物性の評価結果を表1−2に示す。
【0256】
【表1】
【0257】
[ポリカーボネートジオールの蒸留精製と評価]
<実施例1〜8、比較例1、比較例3〜5>
実施例1〜8、比較例1、及び比較例3〜5で得られたポリカーボネートジオール含有組成物を20g/分の流量で薄膜蒸留装置に送液し、薄膜蒸留(温度:210℃、圧力:53〜67Pa)を行った。薄膜蒸留装置としては、直径50mm、高さ200mm、面積0.0314mの内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS−300特型を使用した。薄膜蒸留で得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表2−1及び表2−2に示す。
【0258】
【表2】
【0259】
[ポリウレタンの製造と評価]
<実施例9>
熱電対を設置した攪拌翼を具備したセパラブルフラスコに、あらかじめ80℃に加温した実施例1で得られた薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール72.69g、1,4−ブタンジオール(三菱化学株式会社製)3.18g、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF、和光純薬工業株式会社製)218.2g、ウレタン化触媒(日東化成株式会社製ネオスタンU−830)16.8mgを入れ、55℃に設定されたオイルバスにこのセパラブルフラスコを浸し、セパラブルフラスコ内を窒素雰囲気下で加温しつつ、60rpmで1時間程度撹拌した。ポリカーボネートジオールが溶媒に溶解した後、MDI(日本ポリウレタン工業製)17.45gを添加した。反応熱による内温上昇がおさまり温度低下が始まってから、オイルバスの設定を70℃に昇温し、1時間撹拌した。このときのポリカーボネートジオール及び1,4−ブタンジオールの物質量総量から含有水分物質量総量を減じた値に対するMDIの物質量総量の割合(以下NCO/OHモル比)は0.95であり、粘度は9.14Pa・s、重量平均分子量は10.6万であった。その後、MDI0.78gを追添加し、NCO/OHモル比0.99、粘度416.7Pa・s超、重量平均分子量31.8万のポリウレタン溶液を得た。このポリウレタンの性状及び物性の評価結果を表3に示す。
【0260】
<実施例10〜16、比較例6〜9>
実施例2〜8、比較例1、比較例3〜5で得られた薄膜蒸留後のポリカーボネートジオールを用いた以外は、表3及び表4に示す原料仕込み量にて、実施例9と同様にしてポリウレタン溶液を得た。このポリウレタンの性状及び物性の評価結果を表3及び表4に示す。
【0261】
<比較例10>
比較例4で得られた薄膜蒸留後のポリカーボネートジオール101.54gに、D−(+)−グルコースの1.2重量%DMF溶液71.3mgを添加して均一に混合した。このとき、D−(+)−グルコースの濃度は、D−(+)−グルコースとポリカーボネートジオールの構成単位である原料1,4−ブタンジオールを合計した重量に対して、10.6重量ppmであった。D−(+)−グルコースを混合したポリカーボネートジオールを用いて、表4に示す原料仕込み量にて、実施例9と同様にしてポリウレタン溶液を得た。このポリウレタンの性状及び物性の評価結果を表4に示す。
【0262】
【表3】
【0263】
【表4】
【0264】
表3及び表4において、実施例9〜16と比較例6,7の結果から、ポリカーボネートジオールの製造反応系に糖または糖誘導体を80重量ppmを超えて含有させると、得られるポリウレタンの反応速度が高くなりすぎる傾向にあり、また破断強度が低く、着色が著しいことが分かる。また、実施例9〜16と比較例8の結果から、ポリカーボネートジオールの製造反応系に糖または糖誘導体が存在しないと、得られるポリウレタンの反応速度や低く、また破断強度が小さいことが分かる。さらに、実施例11と比較例9の結果から、公知の糖誘導体の一種であるペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]には、本発明の効果は得られないことが分かる。加えて、実施例11と比較例10の結果から、ポリカーボネートジオールの製造後に糖を添加した場合には、糖をポリカーボネートジオールの製造工程において予め存在させる方法に比べて、顕著に着色することが分かる。
よって、本発明の製造方法で得られたポリカーボネートジオールを用いることで、イソシアネート化合物と反応させてポリウレタンを製造する際の反応速度を適度に向上させ、生産性の向上のために最適な一定以内の分子量を得ると共に、得られるポリウレタンの着色がなく、かつ引張強度を改善することができる。製造されたポリウレタンは特に合成・人工皮革、塗料・コーティング用途、弾性繊維用途として望ましい。