(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、該熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスを減温させる減温装置と、該減温装置で減温された燃焼排ガスを処理する排ガス処理装置とを備えた焼却プラントから排出される排水を排水クローズドシステムにより回収する排水回収方法であって、
該焼却プラントから排出される排水を清澄化する水処理工程と、該水処理工程の処理水を前記減温装置に送水する送水工程と、送水された処理水を該減温装置内の前記燃焼排ガス中に吹き込んで蒸発させることにより該燃焼排ガスを減温させる減温工程とを有する焼却プラントの排水回収方法において、
該水処理工程の処理水の減温装置への送水量を、該減温装置出口の燃焼排ガス温度が150〜200℃となるように制御することを特徴とする排水クローズドシステムを採用した焼却プラントの排水回収方法。
請求項1において、前記水処理工程が膜分離工程を含み、該膜分離工程における水回収率を調整することによって前記送水量を制御することを特徴とする焼却プラントの排水回収方法。
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記減温された燃焼排ガスに、重炭酸ナトリウム及び/または水酸化カルシウムを添加して前記排ガス処理装置で処理することを特徴とする焼却プラントの排水回収方法。
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記排ガス処理装置は、集塵機と、該集塵機で除塵された排ガスを処理する触媒脱硝装置とを備え、該集塵機と触媒脱硝装置との間で該排ガスの温度調整を行わないことを特徴とする焼却プラントの排水回収方法。
有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、該熱回収装置で熱回収された燃焼排ガスを減温させる減温装置と、該減温装置で減温された燃焼排ガスを処理する排ガス処理装置とを備えた焼却プラントから排出される排水を排水クローズドシステムにより回収する排水回収装置であって、
該焼却プラントから排出される排水を清澄化する水処理装置と、該水処理装置の処理水を前記減温装置に送水する送水手段と、送水された処理水を該減温装置内の前記燃焼排ガス中に吹き込んで蒸発させることにより該燃焼排ガスを減温させる吹込手段とを有する焼却プラントの排水回収装置において、
該水処理装置から減温装置への送水量を、該減温装置出口の燃焼排ガス温度が150〜200℃となるように制御する制御手段を有することを特徴とする排水クローズドシステムを採用した焼却プラントの排水回収装置。
請求項7において、前記水処理装置が膜分離装置を含み、前記制御手段は、該膜分離装置における水回収率を調整することによって前記送水量を制御する手段であることを特徴とする焼却プラントの排水回収装置。
請求項7ないし9のいずれか1項において、前記減温された燃焼排ガスに、重炭酸ナトリウム及び/または水酸化カルシウムを添加する薬剤添加手段を有し、該重炭酸ナトリウム及び/または水酸化カルシウムが添加された排ガスが前記排ガス処理装置で処理されることを特徴とする焼却プラントの排水回収装置。
請求項7ないし10のいずれか1項において、前記排ガス処理装置は、集塵機と、該集塵機で除塵された排ガスを処理する触媒脱硝装置とを備え、該集塵機と触媒脱硝装置との間で該排ガスの温度調整が行われないことを特徴とする焼却プラントの排水回収装置。
【背景技術】
【0002】
有機物を燃焼させる焼却装置と、該焼却装置から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置と、熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置とが備えられた焼却プラントから排出される排水の処理方法としては、該排水を凝集剤などによって凝集処理した後に濾過処理する排水処理方法などが知られている。
【0003】
また、焼却プラントから排出される排水を凝集剤などによって凝集処理した後に生物処理を行い、さらに砂濾過によって濾過処理する排水処理方法も知られている(特許文献1)。特許文献1には、この排水処理方法によって浄化された浄化水の大部分を放流できることが記載されている。
【0004】
近年、施設内で発生した排水を当該施設内で再利用することで、排水を下水道や公共用水域へ放流しないようにする排水クローズドシステムが普及している。
そのため、一般廃棄物や産業廃棄物などの固形物を燃焼させる焼却プラントでは、排水を前記排水処理方法などによって簡易に処理した後、燃焼排ガスを減温させる減温装置にて減温水として噴霧し、蒸発させる方法が採用されている。この場合、排水の一部は炉内への噴霧や飛灰への加湿水などに利用させている例もあるが、施設内で排出される排水の大部分ないしは全量が燃焼排ガスの減温水として使用される。
【0005】
焼却プラントにおいて、施設内で発生する排水量は多く、その大半は上記の通り減温水として再利用されているため、熱回収装置(ボイラ)の出口温度は、減温水の噴霧水量に基づいて決められる。即ち、減温装置において大量の水を蒸発させるために、熱回収装置の出口温度(減温装置の入口温度)を高くするべく、熱回収装置における燃焼排ガスからの熱回収量を少なくすることが必要となる。
【0006】
このように、焼却プラントで排水クローズドシステムを採用しようとすると、減温装置に噴霧される排水量が多いために、その気化熱により減温する温度幅を大きく設定する必要があり、その分だけ、減温装置の上流側にある廃熱ボイラなどの熱回収装置において、燃焼排ガスから回収する熱量を少なく設定せざるを得なくなる。即ち、減温装置において減温させる温度幅を比較的大きくする(ΔTが大きい)ことに伴い、熱回収装置における燃焼排ガスからの熱回収量をより小さくすること(ΔTが小さい)となり、焼却プラントにおける燃焼排ガスからの熱回収効率が低くなる。熱回収装置での熱回収効率の低下は、発電量の低下、発電効率の低下につながる。
【0007】
減温装置への送水、噴霧量を低減することにより、熱回収装置の出口温度を低くすることができ、熱回収効率を高めることができる。特許文献2には、減温装置への送水量を減らすために、焼却プラント排水をMF膜で処理し、その透過水をRO膜処理し、MF膜の濃縮水とRO膜の濃縮水とを減温装置に供給することが記載されている。
この方法であれば排水をMF膜及びRO膜で濃縮することにより、減温装置に噴霧する水量を減らすことが出来、熱回収効率の低下を抑えることができる。
【0008】
しかしながら、従来法では、焼却プラントから排出される排水はその殆ど全てが減温装置に送水されており、減温装置への送水量の制御は行われていないために、燃焼排ガスの温度管理を行えず、結果として熱回収効率を安定して高く維持することはできなかった。
【0009】
また、従来法では、減温装置以降の下流側の排ガス処理装置における処理効率についての考慮はなされていないために、減温された燃焼排ガスを効率的に処理し得ないという問題もあった。
【0010】
即ち、減温装置で減温された燃焼排ガスは、通常、重炭酸ナトリウム(重曹)又は水酸化カルシウム(消石灰)を添加して中和した後、集塵機で除塵し、更に、排ガスに含まれるNOxガスを除去するために、アンモニアを添加して脱硝触媒と接触させ、接触還元反応によりNOxを分解除去する処理が行われている。従って、減温装置で減温された排ガスの温度は、これらの排ガスの処理のために好適な温度である必要がある。しかし、従来法では、減温装置への送水量の制御が行われていないため、中和処理される減温装置からの排ガスの温度は一定とはならず、排水量、送水量の変動に応じて変動するため、排ガス処理も不安定なものとなっていた。特に、特許文献2のように、RO膜分離装置の濃縮水を減温装置に送水する場合、RO膜分離装置の濃縮水量はRO膜分離装置の原水(MF膜分離装置の処理水)の水質に応じて大きく変動するため、このRO膜分離装置の水回収率を制御せずに、得られた濃縮水を減温装置に送水した場合、減温装置への送水量は、排水量の変動に加えて更に大きなものとなる。
例えば、重曹による中和処理に好適な温度は、比較的高いため、減温装置への送水量が増加して、減温装置出口温度が低くなると、重曹による中和処理を十分に行えなくなる。重曹に比べて消石灰による中和温度は若干低いため、減温装置への送水量が増加して減温装置出口温度が低くなっても、消石灰を用いて中和処理を安定に行うことができるが、減温装置出口温度が低下しすぎると、集塵機以降の脱硝触媒装置での処理効率が悪化するもしくは処理できなくなる。そのため、脱硝触媒装置において、ボイラー蒸気や電気による加熱を行う必要がある。
【0011】
また、従来法では、減温装置以降の排ガス温度が不安定かつ予測不能であるため、排ガス処理のための薬注制御も困難であり、このことが排ガス処理に要する手間と安全サイドでの処理となるため、コストアップの原因となっていた。
【0012】
このように、従来法では、減温装置への送水量の制御が行われておらず、減温装置出口温度が変動するために、後段の排ガス処理装置で安定な処理を行えない、排ガスの再加熱が必要となり熱効率が悪い、といった問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下において、熱回収装置や減温装置等から排出される燃焼排ガスの温度を単に「出口温度」と称す場合がある。
【0031】
本実施形態が適用される焼却プラントは、
図1の通り、有機物を燃焼させる焼却装置1と、該焼却装置1から排出される燃焼排ガスの熱を回収する熱回収装置2と、該熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガス(以下、熱回収燃焼排ガスともいう)をさらに減温させる減温装置3と、減温された燃焼排ガスを除塵する集塵機4と、除塵処理された燃焼排ガス中のNOxガスを分解除去する触媒脱硝装置5と、焼却プラント内で発生、排出される排水を処理する水処理装置6と、減温装置3の出口温度を測定する温度計Tの測定結果に基づいて、水処理装置6で処理された処理水のうち、減温装置3に送給する送水量を制御する制御装置7とを備える。ただし、図示した装置以外の他の装置を有していてもよい。また、
図1では、排ガス処理装置として集塵機4と触媒脱硝装置5を備えるが、排ガス処理装置は、何らこれらに限定されるものではない。例えば、集塵機4のみでも良いし、触媒脱硝装置5の後段に活性炭装置を備えてもよい。
【0032】
焼却装置1としては、ストーカ炉、流動床炉、ガス化溶融炉、灰溶融炉等、焼却プラント等を用いることができる。
【0033】
燃焼する有機物としては、特に限定されるものではないが、例えば、都市ごみ、産業廃棄物、下水汚泥、廃木材などが挙げられる。焼却装置1から排出される燃焼排ガスは、通常、800〜1300℃程度の温度になっている。
【0034】
熱回収装置2は、焼却装置1から排出される燃焼排ガスの熱を回収するものである。熱回収装置2としては廃熱ボイラなどが挙げられる。熱回収装置2の出口温度は、通常230℃以上、特に250℃以上である。この温度が230℃未満であると腐食の問題があり好ましくない。熱回収装置2の出口温度の上限は、通常、熱回収効率の観点から400℃以下である。
【0035】
減温装置3は、熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガス(熱回収燃焼排ガス)をさらに減温させるものである。減温装置3は、熱回収装置2から導入される熱回収燃焼排ガスに水処理装置6からの処理水を噴霧(又は噴射)し、熱回収燃焼排ガスの温度を水の気化熱により低下させるよう構成されている。減温装置3に導入される熱回収燃焼排ガスの温度、即ち、熱回収装置2の出口温度は前述の通り、通常230〜400℃程度である。
【0036】
本発明においては、減温装置3の出口温度、即ち、減温装置3で減温された燃焼排ガスの温度が150〜200℃、好ましくは160〜190℃となるように、制御装置7で水処理装置6から減温装置3に送水されて噴霧(又は噴射)される送水量を制御する。減温装置3の出口温度が150℃より低いと後段の集塵機(バグフィルタ)4で、潮解(CaCl
2)による目詰まりや、集塵機の低温腐食等の問題が発生する。一方で、この温度が230℃より高いとダイオキシンの再合成が起こり、ダイオキシン総量が増加してしまう。発生したダイオキシンは、後段の触媒脱硝装置5又は活性炭装置で処理する必要があり、後段の排ガス処理装置の負荷が大きくなったり、別途処理設備が必要となったりして好ましくない。
【0037】
減温装置3で減温された排ガスは、重炭酸ナトリウム(重曹)や水酸化カルシウム(消石灰)等の酸性ガス処理薬剤を添加して中和した後、集塵機4で除塵される。
【0038】
焼却プラントでごみを焼却すると、HCl、SOx等の有害ガス、ダイオキシン、重金属を含む飛灰等が発生するため、これらを処理する工程が必要となる。
図1では、集塵機4の手前で酸性ガスの処理を行うために重曹や消石灰(水酸化ドロマイトであってもよい)を添加する。なお、減温装置3やスクラバーにおいて酸性ガス処理を行う場合にはNaOH等のアルカリを用いた中和処理等の公知の処理手段が適用される。また、ダイオキシン処理や飛灰処理においても公知の方法が適用される。
【0039】
ここで、減温装置3の出口ガス、即ち、集塵機4の入口ガスのガス組成等と好適な処理条件との関係は以下の通りである。
ガス組成:
HCl(O
2:12%換算値)=100〜800ppm、特に200〜600ppm
SOx=10〜100ppm、特に30〜50ppm
排ガス量:1,000〜200,000Nm
3−dry/hr
排ガス中の水分量:10〜40%
酸性ガス処理薬剤添加量:
重曹=1.0〜1.2当量(対集塵機入口ガスのHCl、SOx濃度)
消石灰=2.0〜4.0当量(対集塵機入口ガスのHCl、SOx濃度)
【0040】
酸性ガス処理に重曹を用いる場合、排ガス温度150〜200℃、特には180〜200℃で安定した処理が可能である。添加する重曹は粒径30μm以下、例えば5〜20μmのものが好ましい。
また、賦活(活性化、比表面積向上)処理を施した高反応性消石灰を用いる場合、排ガス温度150〜170℃で安定した処理が可能である。添加する消石灰は粒径10μm以下、例えば4〜8μmのものが好ましい。
【0041】
集塵機4で除塵された排ガスは、次いで触媒脱硝装置5で、アンモニアとの混合ガスとして脱硝触媒と接触させる接触還元反応により、ガス中のNOxが分解除去され、処理ガスは系外へ排出される。
【0042】
この触媒脱硝装置5における入口ガス温度は180℃以上、好ましくは190℃以上、例えば190〜230℃であることが必要とされ、これよりも温度が低いとNOxを分解除去できないため、排ガスを再加熱する必要が生じる。触媒脱硝装置5の入口ガス条件は通常以下の通りである。
排ガスNOx濃度:50〜300ppm
排ガス量:1,000〜200,000Nm
3−dry/hr
排ガス中の水分量:10〜40%
【0043】
次に、本発明に好適な焼却プラントの排水を処理するための水処理装置について
図2を参照して説明するが、本発明に係る水処理装置は、何ら
図2に示すものに限定されない。
【0044】
本発明において、焼却プラントから排出される排水とは、焼却プラントの敷地内で生じる排水を意味している。焼却プラントの敷地内で生じる排水としては、例えば、廃熱ボイラなどの熱回収装置2からブローされるボイラブロー水、停止時に熱回収装置の缶内に満たされ、再起動前に排出されるボイラ保缶水、冷却塔ブロー水、焼却プラントにある床などを洗浄したときに発生する床洗浄排水、廃棄物収集車を洗浄したときに発生する洗車排水のほか、生活排水や雑排水が挙げられる。雑排水としては、焼却炉などの焼却装置1から発生する焼却残渣やスラグを冷却する残渣冷却排水や焼却プラント内で発生する界面活性剤や油分を含まない上記以外の排水が挙げられる。
【0045】
図2では、ボイラ保缶水、ボイラブロー水及び冷却塔ブロー水(ただし、ボイラ保缶水は除外されてもよい。)を混合した混合排水を、前処理装置8で処理した後、膜分離装置9で膜分離処理する。
【0046】
雑排水については、第1の予備処理装置10Aで処理した後、ボイラ保缶水、ボイラブロー水及び冷却塔ブロー水と混合し、前処理装置8に供給する。このように雑排水を予備処理することにより、膜分離装置9の膜の閉塞が抑制される。
【0047】
前処理装置8としては、砂濾過器又は精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜分離装置などを用いることができる。混合排水をこのように前処理することにより、膜分離装置9の膜の閉塞が抑制される。膜分離装置9としては逆浸透(RO)膜分離装置が好適である。
【0048】
雑排水を処理する第1の予備処理装置10Aとしては、中和、凝集、沈殿、濾過、生物処理装置の少なくとも1つが好ましい。
【0049】
洗車排水、床洗浄排水は、SS分、有機成分を除去する第2の予備処理装置10Bで処理される。第2の予備処理装置10Bとしては、中和、凝集、沈殿、濾過、生物処理装置の少なくとも1つが好ましい。
【0050】
膜分離装置9の濃縮水と第2の予備処理装置10Bの処理水は、減温装置3に供給される。
【0051】
本発明においては、この減温装置3に送給される水処理装置の処理水量(
図2では、膜分離装置9の濃縮水と第2の予備処理装置10Bの処理水との混合水量)が、減温装置3の出口温度が150〜200℃、好ましくは160〜190℃となるように制御装置(
図1の制御装置7)で制御される。
【0052】
この送水量の制御方法としては特に制限はないが、膜分離装置9の水回収率を制御して、減温装置3に送給する濃縮水量を制御するか、或いは、膜分離装置9の膜モジュールのユニット数や透過水量を調整して濃縮水量を制御する方法が好ましい。
また、水処理装置内の各装置において、一部の装置をバイパスさせたり、後段の装置の処理水を前段装置へ循環したり、後段装置への送水量や滞留時間を増減したりすることで、単位時間当たりに水処理装置から排出される処理水量を調整する方法も採用することができる。また、送水量を低減したい場合には、ピットに戻す水量や、飛灰の加湿や主灰の冷却装置の冷却水として用いる水量を増加させてもよい。逆に、送水量を増加させるために、工水や他工程からの水を混入させることも可能である。
【0053】
本発明においては、減温装置3の出口ガス温度を測定する温度計Tを設け、この温度計Tの測定値に基づいて、温度計Tの測定値が150〜200℃、好ましくは160〜190℃となるように、制御装置7により、水処理装置6から減温装置3に送給される水量を制御することにより、減温された排ガスの温度を所定の温度に維持し、その後の酸性ガス処理、脱NOx処理等の排ガス処理を安定に行うことが可能となる。即ち、例えば、減温装置3の出口ガス温度を前述の酸性ガス処理に用いる薬剤に好適な温度に調整して、酸性ガス処理を安定かつ効率的に行うことが可能となる。
また、更にその後段に触媒脱硝装置によるNOx除去処理を行う場合にも、触媒脱硝装置に流入する排ガス温度が安定することにより、安定かつ効率的な処理を行うことが可能となる。
【0054】
例えば、触媒脱硝装置におけるNOx除去処理に好適な温度は、前述の通り180℃以上、好ましくは190〜230℃であるため、その前段の酸性ガス処理を、重曹を用いて180〜200℃で行い、集塵機と触媒脱硝装置との間で加温等の温度調整を不要とすることができる。従って、この場合は、減温装置への送水量の制御で減温装置出口温度を180〜200℃の範囲とすることが好ましい。
なお、前述の通り、消石灰による酸性ガス処理の好適温度は150〜170℃で、触媒脱硝装置におけるNOx除去に好適な温度よりも低いため、消石灰を用いる場合は、集塵機と触媒脱硝装置との間でボイラ蒸気や電気による再加熱が必要となる場合がある。
この観点から、酸性ガス処理の後段で触媒脱硝装置によるNOx除去を行う場合には、重曹を用いて180〜200℃で酸性ガス処理を行い、処理ガスを加温することなく触媒脱硝装置に送給することが好ましい。
【0055】
また、本発明においては、減温装置への送水量の制御で減温装置出口温度を一定の範囲内におさめることができるため、その前段の熱回収装置においては、焼却プラントで排出される排水量に基づいて熱回収量や熱回収装置出口温度を調整する必要がなくなり、熱回収装置においても、安定かつ効率的な熱回収を行える。前述の通り、この熱回収装置の出口温度は230℃以上、特に230〜400℃であることが好ましい。
【0056】
以下に、
図2に示す水処理装置についてより詳細に説明する。
前処理装置8において、MF膜又はUF膜分離装置を用いた場合、MF又はUF膜濃縮水については第1の予備処理装置10Aで処理し、SS分、有機成分を除去することが好ましい。ただし、第2の予備処理装置10Bで処理してもかまわない。前処理装置8のMF又はUF膜濃縮水を減温装置3で噴霧しないことにより、噴霧ノズルの閉塞を防止し、安定的な減温処理が可能となる。
【0057】
ボイラ保缶水、ボイラブロー水、及び冷却塔ブロー水中には、処理の安定化、効率化のために、防食剤、分散剤やスライムコントロール剤、復水アミン剤、脱酸素剤などの水処理薬品が含まれている。これらの薬品として、膜処理に悪影響を及ぼさず、膜処理の安定化に寄与するものを選択し、かつ、ボイラ保缶水、ボイラブロー水、及び冷却塔ブロー水を前処理装置8での前処理のみを行ってRO膜処理を行うことで、水処理薬品をRO膜処理のために新たに添加することなく、効率的な膜分離処理が可能となる。なお、薬品濃度が不足する場合には、必要な薬品を添加してもよい。
【0058】
ボイラブロー水、冷却水ブロー水に含まれる分散剤は凝集処理の阻害要因となる。そのため、ボイラブロー水、冷却水ブロー水を第1の予備処理装置10Aに流入させると、凝集剤の必要量が著しく増大する。また、スライムコントロール剤は生物処理に悪影響があり、生物活性が低下するケースがあり、排水処理する場合には別途無害化する必要がある。そこで、これらの水を第1の予備処理装置10Aに導入することなく前処理装置8に供給することで、予備処理装置10Aを小型化することができる。
【0059】
洗車排水、床洗浄排水については、第2の予備処理装置10Bで予備処理した後、減温装置3にて噴霧する。洗車排水や床洗浄排水には油分、界面活性剤など、MF膜やRO膜を閉塞させる物質が含まれることがあり、またその濃度が一定でなく、安定して膜分離処理することが困難である。そこで、洗車排水、床洗浄排水については、中和、凝集、沈殿、濾過、生物処理装置の内の少なくとも1つを有する第2の予備処理装置10Bで処理し、SS分、有機成分の除去を行ったうえで、減温装置3にて噴霧する。
【0060】
第1及び第2の予備処理装置10A,10Bでは、被処理水に含まれるSS分、有機成分を減少させる目的で、前記排水に凝集剤を添加し、主に前記浮遊物を凝集させた後、砂濾過等の濾過処理を行うか、濾過の代りに沈殿工程を行なってもよい。また、負荷が高い場合は加圧浮上工程を追加することもできる。凝集処理を適切に行うために、pH調整工程を追加することもできる。第1及び第2の予備処理装置10A,10Bで一連の予備処理を実施することにより、凝集物を前記排水から除去し、前記洗車排水及び床洗浄排水等に含まれているSS分、有機成分を減少させることができる。
【0061】
第1及び第2の予備処理装置10A,10Bでは、砂濾過装置の代わりに浸漬型MF膜分離装置を用いて膜分離活性汚泥法で処理することもできる。浸漬型MF膜分離装置にて捕捉された凝集物は、抜き出された後にごみピットに投入され、焼却装置1にて焼却処理される。
【0062】
図2に示す水処理装置では、以下のような効果が得られる。
特許文献2と同様に、膜分離装置9において、焼却プラントから排出された排水を分離膜によって濃縮して容積が減じられた濃縮水とし、この濃縮水を減温装置3に供給するので、減温装置3への供給濃縮水量が少なく、減温装置3に導入する燃焼排ガスの温度を低くすることができる。この結果、減温装置の上流側に設置された熱回収装置において燃焼排ガスから回収する熱量を大きくすることができる。
【0063】
また、
図2に示す水処理装置では、混合排水をRO膜により膜分離処理するため、以下の効果が得られる。
即ち、ボイラ保缶水、ボイラブロー水、冷却水ブロー水中には、処理の安定化、効率化のために、分散剤やスライムコントロール剤などの水処理薬品が含まれている。これらの薬品として、膜処理に悪影響を及ぼさず、膜処理の安定化に寄与するものを選択して使用することにより、RO膜処理に際して、水処理薬品を新たに全く又は殆ど添加することなく、安定して膜分離処理することが可能となる。
特に、ボイラブロー水、冷却水ブロー水に含まれる分散剤は凝集処理の阻害要因となる。また、スライムコントロール剤は生物処理に悪影響があり、生物活性が低下するケースがある。
図2に示すように、これらの水を砂濾過、MF膜又はUF膜分離装置よりなる簡単な前処理装置で処理した後、膜分離処理することで、排水処理設備の大きさを小さくすることができる。
【0064】
また、
図2に示すように、雑排水を中和、凝集、沈殿、濾過、生物処理装置の内の少なくとも一つを有する予備処理装置で処理し、排水中のSS分、有機成分を除去した上で、膜処理で濃縮操作を行うことで、排水に含まれるSS分、有機成分を減少させることができ、分離膜の目詰まりが起こりにくく、分離膜の継続使用期間を長くすることができる。また、これにより、分離膜の交換頻度が低くなり、濃縮水を効率的に得ることができ、焼却プラントにおける燃焼排ガスの熱をより効率よく回収できる。
【0065】
水処理装置で用いる凝集剤としては、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの鉄系凝集剤、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)などのアルミニウム系凝集剤、これらの混合物等が例示される。なお、前記凝集剤の添加量は、適宜調整され得る。
【0066】
また、被処理水に凝集剤として添加する高分子凝集剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、及び、それらのアルカリ金属塩等のアニオン系の有機系高分子凝集剤、ポリ(メタ)アクリルアミド等のノニオン系の有機系高分子凝集剤、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその4級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、及び、それらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体等のカチオン系の有機系高分子凝集剤、及び上記アニオン性モノマー、カチオン性モノマーやこれらモノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体である両性の有機系高分子凝集剤が挙げられる。また、高分子凝集剤の添加量にも特に限定はなく、被処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ね固形分で0.01〜10mg/Lである。また、国際公開WO2011/018978に記載のフェノール型凝集剤なども使用することができる。
【0067】
膜分離装置9でRO膜を用いた場合、RO膜で除去される不純物としては、イオン成分、有機物などが挙げられる。イオン成分としては、例えば、陽イオン性物質、陰イオン性物質などが挙げられ、具体的には、陰イオンとイオン結合して水に溶解しにくいスケールを発生させやすいカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどが例示される。また、有機物としては、排水に溶解している水溶性有機物などが挙げられる。
【0068】
前処理装置8において、MF膜分離装置を用いた場合、MF膜表面にスケール、濁質、有機物などが付着することによりMF膜差圧が上昇する。この場合、MF膜の逆圧洗浄や薬品洗浄を行う。MF膜の逆圧洗浄においては、MF膜差圧の上昇をより抑制できる点で、定期的/不定期に次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩を含んだ水で洗浄することが好ましい。
【0069】
MF膜は、通常、50nm〜10μm程度の孔径の孔を有している。MF膜としては、例えば、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜がベッセル内に保持された膜ユニットを用いることができる。中空糸膜あるいは平膜をそのまま被処理水中に浸漬して用いることもできる。MF膜の代わりに、2〜200nm程度の孔径を有するUF膜を用いることもできる。
【0070】
MF膜としてはPVDF、UF膜としてはポリサルホン、RO膜ではポリアミドを材質とするものが好適に使用されるがこれに限定されない。
RO膜としては、例えば、非対称膜の緻密層と微細多孔層とで構成される複合膜が挙げられる。
RO膜としては、中空糸膜、スパイラル膜、管状膜等の状態で設置された濾過膜が、ベッセル内に保持されたユニットを用いることができる。
【0071】
なお、冷却水処理等に用いられる分散剤としては、ヘキサメタリン酸ソーダやトリポリリン酸ソーダ等の無機ポリリン酸類、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸やホスホノブタントリカルボン酸等のホスホン酸類、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有素材、必要に応じてそれとビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニルモノマーや、アクリルアミド等のノニオン性ビニルモノマーを組み合わせたコポリマーなどを使用することができるが、ここに挙げた以外の素材も適用することができる。また、分散剤の第三の成分として、そのほかの成分を使用して、三元重合物を使用することもできる。たとえば第三の成分として、N−tert−ブチルアクリルアミドなどを使用する。分散剤としては、その中でも、HAPS、AMPSとアクリル酸および/あるいはメタクリル酸を含む重合物であることが最も好ましい。(なお、HAPSは3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、AMPSは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。)
【0072】
分散剤の分子量としては1,000以上30,000以下であることが好ましい。分子量が1,000未満であると十分な分散効果が得られず、30,000超過であると前処理膜で除去される恐れが出てくる。
【0073】
スライムコントロール剤としては、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)等の次亜塩素酸塩、塩素ガス、クロラミン、塩素化イソシアヌル酸塩などの塩素剤、モノクロルスルファミン酸などの塩素とアミド硫酸、アミド硫酸基を有する化合物の反応した結合塩素剤、ジブロモヒダントインなどの臭素剤、次亜臭素酸ナトリウムなどの次亜臭素酸塩、DBNPA(ジブロモニトリロプロピオンアシド)、MIT(メチルイソチアゾロン)などの有機剤が適用できる。本発明で使用できる塩素系酸化剤としては、上記塩素ガス、次亜塩素酸またはその塩のほか、亜塩素酸またはその塩、塩素酸またその塩、過塩素酸またはその塩、塩素化イソシアヌール酸またはその塩などを用いることができる。塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、バリウム等のアルカリ土類金属塩、ニッケル等の他の金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。これらは1種以上を用いることができる。これらの中では次亜塩素酸ナトリウムが取扱性に優れるため好ましい。
【0074】
上記の遊離塩素が結合する窒素化合物としては、アンモニアまたはその化合物、メラミン、尿素、アセトアミド、スルファミド、サイクロラミン酸、スルファミン酸、トルエンスルホンアミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド、イソシアヌル酸、N−クロロトルエンスルホンアミド、尿酸、サッカリンまたはこれらの塩などを挙げることができる。本発明で使用する結合塩素剤は、これらの窒素化合物に上記の遊離塩素が結合したものである。本発明で使用する結合塩素剤としては、上記の窒素化合物と遊離塩素剤とを混合して反応させたもの、特にそれぞれを水溶液の状態で混合して反応させたものが好ましい。
【0075】
このような結合塩素剤としては、クロラミンや塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤のほか、クロラミン−T(N−クロロ−4−メチルベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩)、クロラミン−B(N−クロロ−ベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩)、N−クロロ−パラニトロベンゼンスルホンアミドのナトリウム塩、トリクロロメラミン、モノ−もしくはジ−クロロメラミンのナトリウム塩またはカリウム塩、トリクロロ−イソシアヌレート、モノ−もしくはジ−クロロイソシアヌール酸のナトリウム塩またはカリウム塩、モノ−もしくはジ−クロロスルファミン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、モノクロロヒダントインもしくは1,3−ジクロロヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントインのような5,5−アルキル誘導体等が挙げられる。
【0076】
また、ボイラ水処理においては、清缶剤、脱酸素剤、アミン類が単独、もしくは複合して用いられている。清缶剤としては、リン酸及び/又はその塩、重合リン酸及び/又はその塩、ホスホン酸及び/又はその塩、EDTA等のキレート剤、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩、AMPSとアクリル酸及び/又はメタクリル酸を含む重合体などが適用できる。脱酸素剤としては、1−アミノ−4−メチルピペラジン、ヒドラジン、カルボヒドラジド、エリソルビン酸及び/又はその塩、グルコン酸及び/又はその塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、亜硫酸及び/又はその塩、重亜硫酸及び/又はその塩、タンニン酸及び/又はその塩、没食子酸及び/又はその塩、イソプロピルヒドロキシルアミン等が適用できる。アミン類としては、モノイソプロパノールアミン、3−メトキシ−プロピルアミン、シクロヘキシルアミン、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルフォリン、2−ジエチルアミノエタノール等の中和性アミンやオクタデシルアミン等の皮膜性アミンを適用することができる。
【0077】
前処理装置8のMF膜透過水の一部を洗車用水などとして用いることができる。また、膜分離装置9のRO膜透過水を廃熱ボイラのボイラ原水、機器冷却水、プラント用水などとして用いることができる。前記MF膜透過水、前記RO膜透過水などの透過水を海、河川、又は下水等へ放流してもよい。
【0078】
燃焼排ガス中のNOxガスを除去する触媒脱硝装置では、アンモニアを用いるため、処理後の排ガス中にはアンモニアが残存することから、焼却プラントから排出される排水には、アンモニア(アンモニウムイオン)が含まれることがある。そのため、前処理装置8の上流側に生物処理装置を設け、アンモニウムイオン等を減少させるようにしてもよい。この場合、生物処理装置としては、例えば、好気性微生物を利用して硝化工程を実施する硝化槽と、通性嫌気性微生物を利用して脱窒工程を実施する脱窒槽とを備えた生物処理装置等を用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0080】
[実施例1]
図1に示す可燃ごみの焼却プラントにおいて、以下の条件で運転した。
熱回収装置2出口温度:230℃
減温装置3出口温度:188℃
熱回収装置2出口温度と減温装置3出口温度の温度差:42℃
【0081】
焼却プラントから以下の流量で排出されるボイラブロー水、冷却塔ブロー水、雑排水、生活排水、洗車排水及び床洗浄排水は
図3のフローに従って処理した。
ボイラブロー水:9m
3/day
冷却塔ブロー水:9m
3/day
雑排水:13m
3/day
生活排水:11m
3/day
(上記の合計:42m
3/day)
洗車排水と床洗浄排水の合計:6.5m
3/day
【0082】
ボイラブロー水と冷却塔ブロー水はそのまま前処理(MF膜分離装置11)に供給した。
【0083】
雑排水は第1の予備処理装置(PAC10mg/L及び高分子ポリマー2mg/L添加による凝集処理装置13と重力2層砂濾過処理装置14)で処理した後、MF膜分離装置11に供給した。MF膜分離装置11の透過水(水回収率95%)はRO膜分離装置12に供給し、その透過水(水回収率80%)は冷却塔に補給水として供給した。
【0084】
RO濃縮水0.33m
3/hrは、減温装置3に送水して噴霧した。MF膜分離装置11の濃縮水は、凝集処理装置13に供給した。
【0085】
生活排水は、生物処理装置15で処理した後、第1の予備処理装置に供給した。
【0086】
洗車排水及び床洗浄排水は、第2の予備処理装置(PAC10mg/L及び高分子ポリマー2mg/Lによる凝集処理装置16と、重力2層砂濾過処理装置17)で処理した後、減温装置3に送水して噴霧した(0.27m
3/hr)。
なお、上記いずれの排水量も平均値であり、実際には±20%の範囲で変動した。後掲の実施例及び比較例でも同様である。
【0087】
ボイラブロー水には分散剤、冷却水ブロー水には分散剤とスライムコントロール剤が含まれており、これらを含む混合排水をMF膜分離装置11で処理した後、RO膜分離装置12で処理を行うことにより、RO膜処理でスライムコントロール剤、分散剤を添加しなくても安定的に処理を行うことができる。また、床洗浄排水、洗車排水をこれらとは別系統で処理することにより、RO膜分離装置12の水回収率を高くすることができた。RO膜分離装置12の透過水は冷却水の補給水として再利用でき、その分補給水量を削減することができた。
【0088】
この水処理装置におけるRO膜分離装置12の水回収率が常時80%となるように制御すると共に、各処理装置における処理水量の調整、総排水量の削減等(冷却塔ピットに戻す、飛灰の加湿水や主灰の冷却装置に適用)を行い、減温装置3への送水量が0.60m
3/hrで一定となるように制御し、減温装置出口温度を上記の通り188℃に維持した。
【0089】
集塵機4における処理条件は、以下の通りである。
<集塵機入口酸性ガス処理条件>
排ガス量:30,000Nm
3−dry/hr
入口HCl濃度:380ppm(O
2:12%換算値)
入口SOx濃度:50ppm
水分量:20%
<集塵機出口酸性ガス処理濃度(規制値)>
出口HCl濃度:35ppm(O
2:12%換算値)
出口SOx濃度:10ppm
<重曹(粒径7〜13μm)の添加量>
添加量:54kg/hr、当量比:1.00(対入口HCl、SOx)
【0090】
本実施例では減温装置3の出口温度を一定に維持して効率的な酸性ガス処理を行えた。
また、除塵処理後の排ガス(約200℃)を、酸化バナジウム系ハニカムに白金を担持した触媒を用いた触媒脱硝装置5に送給して、加温を行うことなく、効率的にNOx除去を行うことができた。
【0091】
[実施例2]
実施例1において、酸性ガス処理を重曹の代りに消石灰を以下の条件で添加して行った。
<消石灰(粒径4〜8μm)の添加量>
添加量:60kg/hr、当量比:2.52(対入口HCl、SOx)
消石灰による処理の場合、排ガス温度は150〜170℃が好ましいことから、RO膜分離装置12の水回収率を65%としてRO濃縮水量0.58m
3/hrとし、減温装置への送水量を0.85m
3/hrとし、減温装置出口温度が170℃(熱回収装置2出口温度と減温装置3出口温度の温度差:60℃)となるように制御したこと以外は実施例1と同様に処理を行った。
その結果、触媒脱硝装置において、若干の再加熱を要したが、それ以外は実施例1と同様に効率的な処理を行えた。
なお、触媒脱硝装置での再加熱(約200℃)に要したボイラー蒸気使用量は2.4t/日で、1ヶ月で72tであった。この蒸気使用量は、発電損失量として69301(ΔT:30℃の損失分)kWhに相当する。
【0092】
[比較例1]
実施例2において、RO膜分離装置の水回収率を制御せず、減温装置への送水量を制御せずに行ったところ、排水量の変動、RO膜分離装置の水回収率の変動に伴ってRO膜分離装置からの送水量は0.47〜0.67m
3/hrで変動し、減温装置への送水量は0.74〜0.94m
3/hrの範囲で変動した。
その結果、減温装置出口温度は165〜179℃(熱回収装置出口温度と減温装置出口温度の温度差:51〜65℃)で変動した。
減温装置への送水量が少なすぎた場合は、減温装置出口温度が高くなりすぎ、適正な酸性ガス処理を行うために消石灰の添加量を以下の通り過剰に入れる必要があった。
<消石灰(粒径4〜8μm)の添加量>
添加量:74kg/hr、当量比:3.11(対入口HCl、SOx)
また、温度が高いことにより、ダイオキシンが再合成するため、別途ダイオキシンの処理(触媒脱硝装置での負荷増大、若しくは更なる活性炭処理)が必要となった。
また、減温装置への送水量が多すぎた場合は、集塵機手前の温度が低くなりすぎ、触媒脱硝装置入口で再加熱の温度調整を行う必要があった。この場合には、再加熱条件を常時制御する必要があることや、NOx処理も不安定であり、また昇温のためのエネルギーロスが生じる。
特に、送水量が少なすぎて集塵機手前の温度が高くなる場合は、消石灰を過剰に入れる必要があるため、薬品を重曹へ変更する必要があった。
【0093】
[比較例2]
実施例1の焼却プラントの各排水を
図4のフローに従って処理し、減温装置3への送水の制御を行わなかったこと以外は実施例1と同様に行った。即ち、生活排水以外の上記各排水(それぞれの流量は実施例1と同じ)をそのままPAC200mg/L、高分子ポリマー2mg/L添加による凝集処理装置21で処理した。生活排水については、生物処理装置25で処理した後、凝集処理装置21に供給した。凝集処理装置21の処理水を重力2層砂濾過処理濾過装置22で処理した後、MF膜分離装置23に供給し、透過水をRO膜分離装置24に供給し、RO透過水を冷却塔補給水として用いた。MF膜分離装置23の濃縮水及びRO膜分離装置24の濃縮水を減温装置3にて噴霧した。
【0094】
この比較例2では、排水量の変動に加えてRO膜分離装置24の原水量が大きく変動すると共に水質も大きく変動するため、RO膜分離装置24の水回収率は45〜65%の範囲で変動し、RO膜分離装置の水回収率を制御していないために、減温装置への送水量が1.07〜0.68m
3/hrで大きく変動した。
その結果、減温装置出口温度は、156〜183℃(熱回収装置出口温度と減温装置出口温度の温度差:47〜74℃)で大きく変動し、比較例1の場合よりも更に送水量の変動による問題が大きいものとなった。
【0095】
なお、この比較例2では、床洗浄排水、洗車排水から油分が混入したため、処理の継続にともない、RO膜分離装置24の水回収率は15〜35%にまで低下した。また、凝集処理の水量が多くなり、巨大な前処理設備が必要であった。
ボイラブロー水、冷却水ブロー水に含まれる分散剤のため、PAC添加量は200mg/L必要であった。また、膜処理の安定化のためにスライムコントロール剤、分散剤が必要であった。膜処理スライムコントロール剤としては、クリバーターEC−503 5mg/Lを用いた。膜処理分散剤としては、クリバーター N−500 5mg/Lを用いた。
【0096】
[比較例3]
比較例2において、MF膜分離装置23とRO膜分離装置24を省略したこと以外は同様に実施したところ、減温装置への送水量の変動は小さいものの送水量が1.9m
3/hrと多いために、熱回収装置出口温度は305℃であるのに対して、減温装置出口温度は170℃(熱回収装置出口温度と減温装置出口温度の温度差:135℃)と非常に低い値となった。
このため、酸性ガス処理における薬剤添加量を多くするか、薬剤を変える必要があった。また、触媒脱硝装置における再加熱で発電損失が発生した。
【解決手段】焼却装置1と、燃焼排ガスの熱回収装置2と、熱回収装置2で熱回収された燃焼排ガスをさらに減温させる減温装置3と、減温された排ガスを除塵する集塵機4と触媒脱硝装置5とを備えた焼却プラントから排出される排水を水処理装置6で水処理し、処理水を減温装置3に送水して減温装置3内の燃焼排ガス中に吹き込んで蒸発させることにより減温させる。制御装置7で、水処理装置6から減温装置3への送水量を減温装置3出口の燃焼排ガス温度が150〜200℃となるように制御する。