特許第6241547号(P6241547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241547光学装置構成用部材のリサイクル方法および光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241547
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】光学装置構成用部材のリサイクル方法および光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20171127BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20171127BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20171127BHJP
   C09J 131/00 20060101ALI20171127BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G09F9/00 351
   G09F9/00 338
   C09J5/00
   C09J133/04
   C09J131/00
   C09J11/06
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-531387(P2016-531387)
(86)(22)【出願日】2015年6月30日
(86)【国際出願番号】JP2015068799
(87)【国際公開番号】WO2016002763
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-136087(P2014-136087)
(32)【優先日】2014年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新美 かほる
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
【審査官】 田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−186961(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/045862(WO,A1)
【文献】 特開2013−003299(JP,A)
【文献】 特開2003−288028(JP,A)
【文献】 特開2004−184677(JP,A)
【文献】 特開2013−098366(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/046182(WO,A1)
【文献】 特開2013−181088(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/054632(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0024651(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103950269(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/13−1/141
G09F9/00−9/46
H01L27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱すると軟化し、光照射により架橋する透明粘着材であって、且つ、架橋前の状態の透明粘着材を介して、2つの光学装置構成用部材が貼合されてなる構成を備えた光学装置構成用積層体をリサイクル原料とし、
光学装置構成用積層体の少なくとも透明粘着材を加熱すると共に、該光学装置構成用積層体の透明粘着材の端縁部に沿って線状部材を掛けると共に、該線状部材により荷重を与えることで前記透明粘着材を分断して、分断された片側透明粘着材が付着した2つの光学装置構成用部材を作製する工程を備えた、光学装置構成用部材のリサイクル方法。
【請求項2】
前記透明粘着材を60〜100℃に加熱することを特徴とする、請求項1に記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
【請求項3】
前記光学装置構成用積層体を立てて、該光学装置構成用積層体の上側端縁部に位置する透明粘着材の端縁部に沿って線状部材を掛けると共に、線状部材の端部に錘をつけて吊り下げることで、線状部材により荷重を与えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
【請求項4】
分断された片側透明粘着材が付着した光学装置構成用部材の透明粘着材に、粘着材料を重ねて接着し、当該粘着材料を、片側透明粘着材と光学装置構成用部材との粘着界面の面方向と平行方向、すなわちせん断方向に引っ張ることにより、前記透明粘着材を光学装置構成用部材から剥がすことを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
【請求項5】
前記透明粘着材は、次の(1)及び(2)を満たすことを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
(1)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmのシートについて、JIS−Z−0237に準じて行う保持力測定において、SUS板に対する温度40℃でのズレ長さが5mm未満。
(2)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmのシートについて、JIS−Z−0237に準じて行う保持力測定において、SUS板に対する温度80℃でのズレ長さが10mm以上。
【請求項6】
前記透明粘着材は、次の(3)及び(4)を満たすことを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
(3)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した直後に、23℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が5N/cm以上。
(4)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した直後に、85℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が2N/cm未満。
【請求項7】
前記透明粘着材は、次の(5)及び(6)を満たすことを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
(5)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した後、波長365nmの光が2000mJ/cm到達するように光を照射して前記透明粘着材を架橋させた状態で、温度23℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が5N/cm以上。
(6)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した後、波長365nmの光が2000mJ/cm到達するように光を照射して前記透明粘着材を架橋させた状態で、温度85℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が3N/cm以上。
【請求項8】
前記透明粘着材は、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体(A1)と、架橋剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する粘着組成物から形成された透明粘着材であることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
【請求項9】
前記透明粘着材は、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のモノマーa1と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上80℃未満のモノマーa2と、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のモノマーa3とが、a1:a2:a3=10〜40:90〜35:0〜25のモル比率で共重合してなり、重量平均分子量50000〜400000の(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体を含有するベースポリマー(A2)と、架橋剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する粘着組成物から形成された透明粘着材であることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
【請求項10】
前記光学装置構成用部材が、タッチパネル、画像表示パネル、表面保護パネル及び偏光フィルムからなる群のうちの何れか、或いは2種類以上の組み合わせからなる請求項1〜9のいずれかに記載の光学装置構成用部材のリサイクル方法。
【請求項11】
加熱すると軟化し、光照射により架橋する透明粘着材であって、且つ、架橋前の状態の透明粘着材を介して、2つの光学装置構成用部材が貼合されてなる構成を備えた光学装置構成用積層体を評価対象とし、
光学装置構成用積層体の少なくとも透明粘着材を加熱すると共に、該光学装置構成用積層体の透明粘着材の端縁部に沿って線状部材を掛けると共に、該線状部材により荷重を与えることで前記透明粘着材を2つに分断し、この際、線状部材により与える荷重の大きさと、分断されるまでの経過時間とを計測することを特徴とする、光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明粘着材を介して2つの光学装置構成用部材を一旦貼合してなる光学装置構成用積層体から、2つの光学装置構成用部材を引き離して、光学装置構成用部材をリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の視認性を向上させるために、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)又はエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材との間の空隙を、粘着剤や接着剤等の樹脂で充填し、入射光や表示画像からの出射光の空気層界面での反射を抑えることが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、透明両面粘着シートの少なくとも片側に、画像表示装置構成用部材が積層してなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体の製造方法として、紫外線によって1次架橋した粘着シートを画像表示装置構成用部材に貼合後、画像表示装置構成用部材を介して粘着シートに紫外線照射し2次硬化させる方法が開示されている。
【0004】
このように画像表示装置構成用部材を粘着材で貼り合わせて一体化する場合、貼合作業時に、位置ズレや、気泡や異物を巻き込むなどの作業ミスが生じることがある。このため、このミスを修正するために再剥離する必要が生じたりするなど、この種の目的に用いられる粘着材には、再剥離性(リワーク性)が求められることがある。特に、屈曲性を持たない板状部材同士の積層体は、いったん貼合した後に分離するのは容易ではなく、貼合が難しい大型画面に係る部材や、高価な部材を貼合する場合などでは、リワーク性を備えた粘着材が求められていた。
【0005】
従来、再剥離性(リワーク性)を備えた粘着材としては、例えば特許文献2において、画像表示装置に好適な粘着剤として、特定のアクリル系トリブロック共重合体を用いた、化学架橋が不要で、粘着性能と耐久性能に優れ、糊残りすることなく適度な剥離強度で剥離できる、光学フィルム用粘着剤が提案されている。
【0006】
また、特許文献3には、タッチパネルと表示装置の表示面とのうち少なくとも何れか一方の面に対して再剥離可能となるように構成され、光学的に等方性を有していることを特徴とする両面粘着シートとして、表示装置側粘着剤層の表示装置の表示面に対する粘着力を、タッチパネル側粘着剤層のタッチパネルの貼合面に対する粘着力よりも小さくすることにより発揮される再剥離可能な構成が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献4には、再剥離可能な粘着材として、粘着材と被着体との貼合面とは異なる面で剥離可能となる界面(「内部剥離界面」)を内部に備えた構成の粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4971529号公報
【特許文献2】特許第5203964号公報
【特許文献3】特開2004−231723号公報
【特許文献4】国際公開2010/137523
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
2つの画像表示装置構成用部材を、粘着材を用いて一旦貼り合わせた後、剥離する場合には、従来は、2つの画像表示装置構成用部材間に板材やワイヤー材などを挿入して強引に剥離することが行われていた。しかし、このような方法では、画像表示装置構成用部材を引き剥がす際に、画像表示装置構成用部材を損傷させてしまう可能性があった。
また、このように剥離することが想定される場合には、粘着材の接着力を初めから低く設計しておいて、剥離し易いようにすることもあった。しかし、そのような場合、粘着材の接着強度が低いために、接着界面から発泡等が生じる可能性が高くなるという問題を抱えていた。
【0010】
また、屈曲性を持たない板状部材同士の積層体は、一旦貼合した後に分離するのは容易ではなく、貼合が難しい大型画面に係る部材や、高価な部材を貼合する場合などでは、一旦貼合した後の分離のしやすさ、すなわち“リワーク性”を備えた粘着材が求められることがあった。そのため、光学装置構成用積層体の“リワーク性”を客観的に評価することができる、光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法が求められていた。
【0011】
そこで本発明は、透明粘着材を介して、2つの光学装置構成用部材を一旦貼合してなる光学装置構成用積層体から、2つの光学装置構成用部材を引き離して、光学装置構成用部材をリサイクルする新たな方法と共に、光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、加熱すると軟化し、光照射により架橋する透明粘着材であって、且つ、架橋前の状態の透明粘着材を介して、2つの光学装置構成用部材が貼合されてなる構成を備えた光学装置構成用積層体をリサイクル原料とし、光学装置構成用積層体の少なくとも透明粘着材を加熱すると共に、該光学装置構成用積層体の透明粘着材の端縁部に沿って線状部材を掛けると共に、該線状部材により荷重を与えることで前記透明粘着材を分断して、分断された片側透明粘着材が付着した2つの光学装置構成用部材を作製する工程を備えた、光学装置構成用部材のリサイクル方法を提案する。
【0013】
本発明はまた、加熱すると軟化し、光照射により架橋する透明粘着材であって、且つ、架橋前の状態の透明粘着材を介して、2つの光学装置構成用部材が貼合されてなる構成を備えた光学装置構成用積層体を評価対象とし、光学装置構成用積層体の少なくとも透明粘着材を加熱すると共に、該光学装置構成用積層体の透明粘着材の端縁部に沿って線状部材を掛けると共に、該線状部材により荷重を与えることで前記透明粘着材を2つに分断し、この際、線状部材により与える荷重の大きさと、分断されるまでの経過時間とを計測することを特徴とする、光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する光学装置構成用部材のリサイクル方法によれば、透明粘着材を介して、2つの光学装置構成用部材を一旦貼合してなる光学装置構成用積層体から、2つの光学装置構成用部材を引き離して、光学装置構成用部材をリサイクルすることができる。
【0015】
また、本発明が提案する光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法によれば、一旦貼合した後の分離のしやすさ、すなわち光学装置構成用積層体の“リワーク性”の程度を、客観的に且つ簡単で安価に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る光学装置構成用部材のリサイクル方法並びに光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法において、リサイクル原料又は評価対象とする光学装置構成用積層体の一例を示した図であり、(A)はその斜視図、(B)は分解斜視図、(C)は側面図である。
図2】本発明に係る光学装置構成用部材のリサイクル方法並びに光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法の一例の一連の流れを示した図であり、(A)は光学装置構成用積層体を立てて線状部材を掛けた状態、(B)は線状部材の両端に錘をそれぞれ吊り下げた状態、(C)は分断された状態を示した図である。
図3】本発明に係る光学装置構成用部材のリサイクル方法並びに光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法において、リサイクル原料又は評価対象とする光学装置構成用積層体の他例を示した図であり、(A)はその側面図、(B)は正面図である。
図4】光学装置構成用積層体を吊下した状態の一例を示した正面図である。
図5】光学装置構成用積層体を吊下した状態の一例を示した側面図である。
図6】光学装置構成用積層体を吊下して、線状部材を掛けて錘を吊り下げた状態の一例を示した側面図である。
図7図6の状態から、片側透明粘着材が付着した2つの光学装置構成用部材に分断した状態を示した側面図である。
図8】本発明に係る光学装置構成用部材のリサイクル方法並びに光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法の他例の一連の流れを示した図であり、光学装置構成用積層体を垂直に立てて、線状部材を掛けて、線状部材の両端に錘をそれぞれ吊り下げて、分断する工程を示した側面図である。
図9】本発明に係る光学装置構成用部材のリサイクル方法並びに光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法の他例の一連の流れを示した図であり、光学装置構成用積層体を垂直に立てて、線状部材を掛けて、線状部材の両端に錘をそれぞれ吊り下げて、分断する工程を示した側面図である。
図10】片側透明粘着材が付着した光学装置構成用部材から、片側透明粘着材を剥がす方法の一例を示した工程図である。
図11】片側透明粘着材が付着した光学装置構成用部材から、片側透明粘着材を剥がす方法の他例を示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<リサイクル原料・評価対象>
本実施形態の一例として説明する光学装置構成用部材のリサイクル方法(「本リサイクル方法」と称する)並びに光学装置構成用積層体のリワーク性評価方法(「本リワーク性評価方法」と称する)は、加熱すると軟化し、光照射により架橋する透明粘着材(「本透明粘着材」と称する)であって、且つ、架橋前の状態の透明粘着材(「本透明粘着材」と称する)1を介して、2つの光学装置構成用部材2,3が貼合されてなる構成を備えた光学装置構成用積層体4をリサイクル原料又は評価対象とする方法である。
【0019】
(光学装置構成用部材)
本リサイクル方法及び本リワーク性評価方法において、リサイクル原料又は評価対象とする光学装置構成用積層体4を構成する光学装置構成用部材2,3としては、光学装置を構成するための部材であって、粘着材を介して貼り合せることが可能な部材であればよい。
【0020】
かかる光学装置としては、例えばパソコン、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレット、太陽電池部材などの光学装置を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0021】
光学装置構成用部材2,3の具体例としては、例えばタッチパネル、画像表示パネル、表面保護パネル、位相差フィルム、偏光フィルムなどを挙げることができ、これらのうちの何れかであってもよいし、これらのうちの2種類以上が既に積層された積層体であってもよい。但し、これらに限定するものではない。
【0022】
(本透明粘着材)
本透明粘着材は、架橋前の状態であっても、光学装置構成用部材を貼着する機能を備え、且つ、加熱すると軟化する性質を備え、且つ、光照射により架橋することができる性能を有しており、且つ、未架橋状態にあるものが好ましい。
【0023】
本透明粘着材は、60℃〜100℃に加熱すると軟化する性質を備えているものが好ましい。
かかる性質を備えていることにより、本透明粘着材を60℃以上に加熱することで、分離し易くなる。また、本透明粘着材が、60℃より低温の温度域では、形状を保持することができるから、常態における貼合前の状態では、保管安定性や裁断などの取り回しに係るハンドリング性に優れたものとなる。
他方、100℃より高温に加熱しないと軟化しないようでは、100℃を超える加熱によって光学装置構成用部材が損傷する可能性がある。
よって、上記観点から、本透明粘着材は、60〜100℃に加熱すると軟化するのが好ましく、中でも63℃以上或いは98℃以下、その中でも特に65℃以上或いは95℃以下に加熱すると軟化する性質を備えたものが特に好ましい。
【0024】
また、本透明粘着材が既に架橋された状態であると、加熱によって軟化させることが難しいばかりか、後述するように、線状部材を掛けて一定の力で引くことでは、当該透明粘着材を分断することは難しい。よって、リサイクル原料又は評価対象としての光学装置構成用積層体における本透明粘着材は、未架橋状態である必要がある。
【0025】
本透明粘着材は、光学装置構成用部材を貼合する前の状態では、シート状であっても、液状乃至ゲル状であってもよい。ハンドリング性及び貼合効率の観点からは、シート状であるのが好ましい。
【0026】
本透明粘着材は、単層でも多層でもよい。
本透明粘着材が多層の場合には、全体として、上記性質、すなわち、架橋前の状態であっても光学装置構成用部材を貼着する機能を備え、且つ、加熱すると軟化する性質を備え、且つ、光照射により架橋することができる性能を有しており、且つ、未架橋状態であればよく、そのうちの少なくとも一層が、加熱すると軟化する性質を備えていればよい。
【0027】
本透明粘着材の総厚さは、50μm〜1mmであるのが好ましく、より好ましくは75μm以上或いは500μm以下である。
本透明粘着材の総厚さが50μm以上であれば、高印刷段差等の凹凸部へ追従することができるばかりか、線状部材を粘着材の端縁部に掛け易いためリサイクル性に優れているという点で好ましい。他方、総厚さが1mm以下であれば、光学装置等に対する薄肉化の要求にこたえることができる。
さらに、従来の画像表示装置における周縁の隠蔽層の印刷高さがより高く、具体的には80μm程度の段差までをも埋める観点から、本透明粘着材の総厚さは75μm以上がより好ましく、特に100μm以上であるのがさらに好ましい。他方、薄肉化の要求にこたえる観点からは、500μm以下であるのが好ましく、特に350μm以下であるのがさらに好ましい。
【0028】
多層構成とする場合には、各最外層の厚さと中間層の厚さの比率は1:1〜1:20であるのが好ましく、中でも1:2〜1:10であるのがさらに好ましい。
中間層の厚みが、上記範囲であれば、積層体における粘着材層の厚みの寄与が大きくなりすぎず、柔軟すぎて裁断や取回しに係る作業性が劣るようになることがなく好ましい。
また、最外層が上記範囲であれば、凹凸や屈曲した面への追随性に劣ることがなく、被着体への接着力や濡れ性を維持することができて、好ましい。
【0029】
本透明粘着材は、架橋前の状態で、次の(1)及び(2)を満たすことが好ましい。
(1)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmのシートについて、JIS−Z−0237に準じて行う保持力測定において、SUS板に対する温度40℃でのズレ長さが5mm未満。
(2)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmのシートについて、JIS−Z−0237に準じて行う保持力測定において、SUS板に対する温度80℃でのズレ長さが10mm以上。
【0030】
上記(1)にように、架橋前の状態で、温度40℃でのズレ長さが5mm未満であれば、加熱前の常状において、優れた形状安定性や、加工適正を発揮することができる。
また、上記(2)のように、架橋前の状態で、温度80℃でのズレ長さが10mm以上であれば、例えば、2〜4インチの比較的サイズの小さい積層体のみならず、たとえば、7インチ以上の比較的大きなサイズの積層体においても、60℃〜100℃に加熱することで、貼合した部材を容易に分離することが可能となる。
【0031】
本透明粘着材は、架橋前の状態で、次の(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
(3)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した直後に、23℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が5N/cm以上。
(4)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した直後に、85℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が2N/cm未満。
【0032】
上記(3)にように、架橋前の状態で、温度23℃での180°剥離力が5N/cm以上であれば、通常状態、すなわち、室温状態において、剥離可能な程度の接着性(“タック性”と称する)を発現することができ、このようなタック性を備えていれば、貼合する際の位置決めを行いやすく、作業上とても便利である。
また、上記(4)にように、架橋前の状態で、温度85℃での180°剥離力が2N未満であれば、貼合した後の部材について、加熱時の優れた再剥離性を付与することができる。
【0033】
本透明粘着材は、架橋後に、次の(5)及び(6)を満たすことが好ましい。
(5)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した後、波長365nmの光が2000mJ/cm到達するように光を照射して前記透明粘着材を架橋させた状態で、温度23℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が5N/cm以上。
(6)架橋前の前記透明粘着材からなる厚さ150μmの粘着シートをソーダライムガラスに重ねて、2kgのロールを1往復させてロール圧着した後、波長365nmの光が2000mJ/cm到達するように光を照射して前記透明粘着材を架橋させた状態で、温度85℃にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で、ソーダライムガラスから前記粘着シートを引き剥がした際の180°剥離力が3N/cm以上。
【0034】
上記(5)にように、架橋後の状態で、温度23℃での180°剥離力が5N/cm以上であれば、貼合した積層体の、常態における剥離などに対する信頼性を担保できるから好ましい。
また、上記(6)にように、架橋後の状態で、温度85℃での180°剥離力が3N/cm以上であれば、耐久性に優れた積層体とすることができる。
【0035】
(本透明粘着材・粘着組成物)
本透明粘着材は、光硬化前の状態では、加熱することで軟化し、好ましくは流動性を有することから、一旦貼合した積層体に、作業ミス等で剥離の必要が生じたときでも、加熱することで貼合部分を分離し易くすることができる。
よって、本透明粘着材によれば、粘着剤層の剥離力を低下させる必要がなく、部材貼合後の剥離や発泡に対する高い信頼性と、再剥離性を両立させることができる。
【0036】
このような透明粘着材を形成するのに好ましい粘着組成物については、後述することにする。
【0037】
<本リサイクル方法>
本リサイクル方法は、リサイクル原料である上記光学装置構成用積層体4の透明粘着材1を加熱すると共に、該光学装置構成用積層体4の透明粘着材1の端縁部に沿って線状部材5を掛けて、前記線状部材5により荷重を与えることで、前記透明粘着材1を分断して、分断された片側透明粘着材1Aが付着した2つの光学装置構成用部材2,3を作製する、という工程を備えた方法である。
なお、線状部材5を掛ける工程と、透明粘着材1を加熱する工程とは、どちらが先でもよいし、同時でもよい。また、前記線状部材5により荷重を与える工程と、透明粘着材1を加熱する工程とは、どちらが先でもよいし、同時でもよい。
【0038】
線状部材5を掛ける工程において、リサイクル原料である上記光学装置構成用積層体4を立てて、上記光学装置構成用積層体4の透明粘着材1を加熱すると共に、該光学装置構成用積層体4の透明粘着材1の端縁部に沿って線状部材5を掛けるのが好ましい。
【0039】
リサイクル原料である光学装置構成用積層体4を立てる方法は、任意の方法で構わない。例えば、図2(A)〜(C)に示すように、光学装置構成用積層体4を両側から支持して垂直になるように固定してもよいし、図4及び図6に示すように、光学装置構成用積層体4を吊下して垂直にしてもよい。
【0040】
この際、例えば図2(A)〜(C)に示すように、上面に適宜間隔を置いて立設された複数の支柱6A、6A・・を備えた台座6を用いて、光学装置構成用積層体4を縦に立てて、台座6の上面の支柱6A、6A間に置いて、支柱6A、6A間で支持して固定することができる。但し、このような方法に限定するものではない。
この際、光学装置構成用積層体4を立てることができれば、支持手段は任意である。例えばブックエンドのような支持部材で支持してもよし、機械的に支持してもよいし、その他の手段を採用してもよい。
【0041】
他方、図3図5に示すように、光学装置構成用積層体4の左右両側にそれぞれベルト7、7を巻きつけて、このベルト7,7をフック8,8に掛けて、光学装置構成用積層体4を吊下して垂直に立てることもできる。
この際、分断後も光学装置構成用部材2,3を吊下することができるように、一回り大きな光学装置構成用部材3は、上述のように、左右両側にそれぞれベルト7、7を巻きつけて、このベルト7,7をフック8,8に掛けて吊下する一方、一回り小さな光学装置構成用部材2の方は、支持テープ9を光学装置構成用部材2の側面の左右両側にそれぞれ貼りつけて、この支持テープ9をフック10,10に掛けて支持するのが好ましい。
支持テープ9は、耐熱性を有する粘着テープであるのが好ましい。例えばガラスクロス基材にシリコン系粘着材が積層してなる構成の粘着テープなどを例示することができる。
【0042】
なお、上記光学装置構成用積層体4を垂直に立てた際、光学装置構成用部材2,3の上側端縁と透明粘着材1の上側端部が面一となっていても、或いは、光学装置構成用部材2,3の上側端縁よりも透明粘着材1の上側端部が低くなって凹溝部となっていても、いずれでもよい。
【0043】
光学装置構成用積層体4の少なくとも透明粘着材1を加熱する方法としては、例えば、光学装置構成用積層体4全体を加熱炉などの加熱装置内に入れて全体を加熱する方法のほか、光学装置構成用積層体4をドライヤーやヒートガン等で部分的に加熱する方法や、線状部材5自身を電気抵抗加熱により発熱させて透明粘着材1を局所的に加熱する方法を挙げることができる。中でも、作業の簡便性の点で、光学装置構成用積層体全体を加熱する方法が好ましい。但し、これらの加熱方法に限定するものではない。
【0044】
光学装置構成用積層体4の少なくとも透明粘着材1を加熱する温度は、60〜100℃にするのが好ましい。60℃以上に加熱すると、上記透明粘着材1を軟化させて分断し易くなる一方、100℃以下より低温であれば、光学装置構成用部材2,3に熱損傷を与える可能性が低いからである。
【0045】
光学装置構成用積層体4を立てて、該光学装置構成用積層体4の上側端縁部4aに位置する透明粘着材1の端縁部1aに沿って線状部材5を掛けて、線状部材5により荷重を与える方法としては、例えば図2(A)〜(C)或いは図3〜6に示すように、光学装置構成用積層体4の上側端面4aに位置する透明粘着材層1の端縁部1aに沿って重なるように線状部5材を掛けて、線状部材5の両端を掛け下げて、この両端を垂直下方向に一定の力で下げる方法を挙げることができる。
透明粘着材1を加熱して軟化させた状態で、線状部材5を掛けて垂直下方向に一定の力で引くことで、透明粘着材1の層内を線状部材5が徐々に下がって、無理な力が掛からずに透明粘着材1を分断することができる。
【0046】
ここで、線状部材5の両端部を垂直下方向に一定の力で下げる方法としては、例えば、機械的に引っ張るようにしてもよいし、例えば図2(B)(C)或いは図6に示すように、線状部材5の両端部に錘11を付けるようにしてもよい。この方法によれば、錘11を付けて放置しておけばよいから、特別な機械や装置を使用する必要もなく、簡単かつ安価にリサイクルを行うことができる。
【0047】
また、例えば図8図9に示すように、線状部材5の一端を、躯体などの固定壁に止めておき、該線状部材5を、光学装置構成用積層体4の上側端面4aに位置する透明粘着材1の端縁部1aに沿って掛けて、線状部材5の他端を掛け下げて、該他端に錘11を吊り下げるなどして、垂直下方向に一定の力で引くようにしてもよい。
この際、図8に示すように、線状部材5の一端を、光学装置構成用積層体4の上側端面4aよりも上方に位置する固定壁に止めて、該線状部材5を透明粘着材1の他端側の角部に掛けるようにしてもよいし、また、図9に示すように、線状部材5の一端を、光学装置構成用積層体4の上側端面4aよりも下方に位置する固定壁に止めて、該線状部材5を透明粘着材1の端縁部1aに密接するように掛け下げてもよい。
【0048】
(線状部材)
線状部材5としては、例えば、繊維からなる糸状部材、釣り糸の如き合成樹脂からなる糸状部材、ピアノ線の如き金属製ワイヤー、カーボンファイバーなどからなる糸状部材などを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
中でも、光学装置構成用部材を傷付けない観点から、繊維からなる糸状部材、釣り糸の如き合成樹脂からなる糸状部材、カーボンファイバーなどからなる糸状部材などが好ましい。
線状部材5の径は、透明粘着材1の厚さに対して0.1〜1.5倍であることが好ましく、中でも、透明粘着材1の厚さの0.3倍以上或いは1.0倍以下、その中でも0.5倍以上或いは0.9倍以下の範囲の径であるのが好ましい。
【0049】
(分断)
上記の如く、光学装置構成用積層体4を立てて、該光学装置構成用積層体4の透明粘着材1の端縁部1aに線状部材5を掛けて、該光学装置構成用積層体5の少なくとも透明粘着材1を加熱し、線状部材5を引き下げることにより、図2(C)或いは図7に示すように、線状部材5によって前記透明粘着材1からなる層を2つに分断することができ、片側透明粘着材1A、1Aがそれぞれ付着した2つの光学装置構成用部材2,3に分離することができる。
【0050】
(透明粘着材分離)
次に、図10に示すように、片側透明粘着材1Aが付着した光学装置構成用部材2(3)から、片側透明粘着材1Aを剥離すれば、光学装置構成用部材2(3)をリサイクルできる。
この際、片側透明粘着材1Aが付着した光学装置構成用部材2(3)から、片側透明粘着材1Aを剥離する方法は、任意である。例えば、ヘラのような部材を用いて強引に剥がすことも、溶剤を用いて化学的に剥がすことも可能である。また、図10(A)〜(C)に示すように、片側透明粘着材1Aが付着した光学装置構成用部材2(3)の片側透明粘着材1Aに、粘着材料12を重ねて接着して、粘着材料12を剥がすと共に、片側透明粘着材1Aを剥がすようにすればよい。
【0051】
粘着材料12がゴム弾性を有する粘着材であれば、図10(C)に示すように、粘着材料12を、片側透明粘着材と光学装置構成用部材との粘着界面の面方向と平行方向、すなわちせん断方向に引っ張ることで、粘着材料12を剥がすと共に、片側透明粘着材1Aを剥がすことができる。
この際必要に応じて、粘着材料12を貼り合せる前もしくは貼り合わせた後に、片面透明粘着材1Aに紫外線を照射して硬化させた上で、光学装置構成用部材2(3)から粘着材料12及び片側透明粘着材1Aを剥がしてもよい。片側透明粘着材1Aを除去する前に片側透明粘着材1Aを硬化させておくことにより、光学装置構成用部材2(3)表面への糊残りを低減させる効果がある。
【0052】
図11に示すように、片側透明粘着材1Aが付着した光学装置構成用部材2(3)の片側透明粘着材1Aに、ゴム弾性を持たないシート乃至フィルム状の支持体13を重ねて貼り合せた後、当該支持体13と共に片面透明粘着材1Aを光学装置構成用部材2(3)から剥離するようにしてもよい。この際も、必要に応じて片側透明粘着材1Aを紫外線照射し硬化させてもよい。
ここで、上記支持体13は、少なくとも光学装置構成用部材2(3)に対する片側透明粘着材1Aの剥離力よりも、片側透明粘着材1Aに対して高い接着力を持っていれば任意の材料を用いることができる。例えばPETフィルムなどでもよいし、ガムテープなど粘着付きの支持体であってもよい。
【0053】
光学装置構成用部材2(3)から片側透明粘着材1Aを剥がした後、必要に応じて、光学装置構成用部材2(3)の剥離面に残った粘着材成分を、エタノールなどの有機溶剤で溶解除去するようにしてもよい。こうして、光学装置構成用部材2(3)を新たな材料として利用することができる。
【0054】
<本リワーク性評価方法>
本リワーク性評価方法は、上記の光学装置構成用積層体4を評価対象とし、上記リサイクル方法同様に、透明粘着材1を加熱すると共に、光学装置構成用積層体4を線状部材5により荷重を与えることで前記透明粘着材1を2つに分断し、この際、線状部材5より与える荷重の大きさと、線状部材5により荷重を与え初めてから分断されるまでの経過時間を計測し、これらの値を基準として、光学装置構成用積層体のリワーク性を評価することができる。
例えば、線状部材5を垂直下方向に引く力の大きさと、分断されるまでの経過時間の積を基準として、光学装置構成用積層体のリワーク性を評価することができる。
また、例えば、分断にかかる目標時間を15分と設定し、目標時間内に分断できれば合格とするように、光学装置構成用積層体のリワーク性を評価することができる。
【0055】
[粘着組成物]
本透明粘着材1、すなわち、未架橋状態でも接着性を備え、60〜100℃に加熱すると軟化し、光照射により架橋する透明粘着材を形成する粘着組成物としては、次の粘着組成物A、Bなどを好ましい例として挙げることができる。
これら粘着組成物A、Bから粘着材層を形成し、必要に応じて、他の粘着材層又は光硬化層を積層することで、本透明粘着材を作成することができる。
但し、本透明粘着材を形成する粘着組成物として、次の粘着組成物A、Bに限定するものではない。
【0056】
なお、本透明粘着材を、多層の透明両面粘着シートとする場合には、最外層は、上記単層の場合と同様に、凹凸追随性と耐発泡信頼性とを兼ね備えているのが好ましいから、粘着組成物、例えば粘着組成物A、Bを用いて形成するのが好ましい。
他方、中間層は、画像表示装置構成部材との粘着には寄与しないため、透明性を損なわず、かつ最外層の2次硬化反応を阻害しない程度の光透過性を有し、かつ、カット性及びハンドリング性を高める性質を有しているのが好ましい。
中間層を形成するベースポリマーの種類は、透明樹脂であれば、特に限定するものではない。中間層を形成するベースポリマーは、最外層のベースポリマーと同一の樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。中でも、透明性の確保や作製し易さ、さらには積層境界面での光の屈折を防ぐ観点から、最外層のベースポリマーと同一のアクリル系樹脂を用いるのが好ましい。
中間層及び他の樹脂層は、活性エネルギー線硬化性を有していてもいなくてもよい。例えば紫外線架橋によって硬化するように形成してもよいし、熱によって硬化するように形成してもよい。また、特に後硬化しないように形成してもよい。但し、最外層との密着性等を考慮すると、後硬化するように形成するのが好ましく、特に紫外線架橋するように形成するのが好ましい。
その際、架橋開始剤の含有量が多くなると光透過率が低下するため、中間層における架橋開始剤の外層における含有率よりも低い含有率で紫外線架橋剤を含むのが好ましい。
【0057】
本透明粘着材を多層の透明両面粘着シートとする場合、積層構成としては、具体的には、例えば粘着組成物A、Bと、他の粘着組成物とを積層した2種2層構成や、中間樹脂層を介して表裏に、粘着組成物A、Bを配した2種3層構成や、粘着組成物A、Bと、中間樹脂組成物と、他の粘着組成物とをこの順に積層してなる3種3層構成などを挙げることができる。
【0058】
<粘着組成物A>
粘着組成物Aとして、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体(A1)と、架橋剤(B1)と、光重合開始剤(C1)とを含有する樹脂組成物を挙げることができる。
なお、粘着組成物Aの詳しい組成及び特性については、特願2014−045936の段落[0018]〜[0091]の記載内容を引用する。
【0059】
<アクリル系共重合体(A1)>
前記アクリル系共重合体(A1)は、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体である。
【0060】
(幹成分)
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分は、(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含有する共重合体成分から構成されるのが好ましい。
【0061】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する共重合体のガラス転移温度は−70〜0℃であるのが好ましい。
この際、幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度とは、アクリル系共重合体(A1)の幹成分を組成するモノマー成分のみを共重合して得られるポリマーのガラス転移温度をさす。具体的には、当該共重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
【0062】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での粘着組成物Aの柔軟性や、被着体への粘着組成物Aの濡れ性、すなわち接着性に影響するため、粘着組成物Aが室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、−70℃〜0℃であるのが好ましく、中でも−65℃以上或いは−5℃以下、その中でも−60℃以上或いは−10℃以下であるのが特に好ましい。
【0063】
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0064】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等を挙げることができる。これらに、親水基や有機官能基などをもつヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルアクリレート、アクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリロニトリル等を用いることもできる。
また、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な酢酸ビニルやアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
【0065】
また、アクリル系共重合体(A1)の幹成分は、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として含有するのが好ましい。
アクリル系共重合体(A1)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
具体的には、上記アクリル系共重合体(A1)の幹成分として、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる共重合体成分を挙げることができる。
【0066】
ここで、上記の疎水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、メチルメタクリレート、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0067】
上記の親水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0068】
(枝成分:マクロモノマー)
アクリル系共重合体(A1)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含有することが重要である。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
【0069】
マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、上記アクリル系共重合体(A1)を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、粘着組成物Aの加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃〜120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度をさし、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0070】
また、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って粘着組成物として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、しかも、適度な温度に加熱することで前記物理的架橋が解れて流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの含有量を調整することも好ましいことである。
かかる観点から、マクロモノマーは、アクリル系共重合体(A1)中に5質量%〜30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
【0071】
マクロモノマーの高分子量骨格成分は、アクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
前記マクロモノマーの高分子量骨格成分としては、例えば、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルの共重合体、ポリ(t−ブチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリメチルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0072】
前記マクロモノマーの末端重合性官能基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基などを挙げることができる。
【0073】
(アクリル系共重合体(A1)の物性)
前記アクリル系共重合体(A1)は、温度130℃、周波数0.02Hzにおける複素粘度が100〜800Pa・sであることが好ましく、150〜700Pa・sがより好ましく、170〜600Pa・sがさらに好ましい。
前記アクリル系共重合体(A1)の温度130℃における複素粘度は、当該透明両面粘着材をホットメルトさせて使用するときの粘着組成物Aの流動性に影響するため、かかる複素粘度が100〜800Pa・sであれば、優れたホットメルト適性を持たせることができる。
【0074】
前記アクリル系共重合体(A1)の複素粘度を前記範囲に調整するには、例えばアクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度を調整することが挙げられる。好ましくは−70℃〜0℃、中でも−65℃以上或いは−5℃以下、その中でも−60℃以上或いは−10℃以下に調整すると共に、当該共重合体成分の分子量を調整して粘弾性を調整する方法を挙げることができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0075】
<架橋剤(B1)>
架橋剤(B1)としては、例えばエポキシ架橋剤やイソシアネート架橋剤、オキセタン化合物、シラン化合物、アクリル化合物等からなる架橋剤を適宜選択可能である。中でも、反応性や得られる硬化物の強度の点で、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0076】
画像表示装置構成部材を貼合一体化させた後、架橋剤(B1)を粘着材中で架橋することで、当該シートはホットメルト性を失う代わりに、高温環境下における高い凝集力を発現し、優れた耐発泡信頼性を得ることができる。
【0077】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類を挙げることができる。
【0078】
上記に挙げた中でも、被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、水酸基等の極性官能基を含有する多官能モノマーもしくはオリゴマーが、好ましい。
その中でも、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
よって、湿熱白化を防止する観点からは、前記アクリル系共重合体(A1)、すなわちグラフト共重合体の幹成分として、疎水性のアクリレートモノマーと、親水性のアクリレートモノマーとを含有するのが好ましく、さらには、架橋剤(B)として、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
【0079】
架橋剤(B1)の含有量は、特に制限されるものではない。目安としては、アクリル系共重合体(A1)100質量部に対して0.5〜20質量部、中でも1質量部以上或いは15質量部以下、その中でも2質量部以上或いは10質量部以下の割合であるのが好ましい。
架橋剤(B1)を上記範囲で含有することで、未架橋状態における本透明粘着材の形状安定性と、架橋後の粘着材における耐発泡信頼性とを両立させることができる。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0080】
<光重合開始剤(C1)>
光重合開始剤(C1)は、前述の架橋剤(B1)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たす。光重合開始剤は、現在公知のものを適宜使用することができる。中でも、波長380nm以下の紫外線に感応する光重合開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
【0081】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0082】
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着材中に活性種として残存することがなく、粘着材に予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0083】
前記開裂型光開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0084】
前記水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルぎ酸メチル、ビス(2‐フェニル‐2‐オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノンやその誘導体などを挙げることができる。
但し、光重合開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。粘着組成物Aは、開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤のいずれか一種を使用してもよいし、両者を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
光重合開始剤(C1)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、アクリル系共重合体(A1)100質量部に対して0.1〜10質量部、中でも0.5質量部以上或いは5質量部以下、その中でも1質量部以上或いは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。
光重合開始剤(C1)の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0086】
<その他の成分(D1)>
粘着組成物Aは、上記以外の成分として、通常の粘着組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、必要に応じて、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有してもよい。
【0087】
<粘着組成物B>
粘着組成物Bとして、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のモノマーa1と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上80℃未満のモノマーa2と、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のモノマーa3とが、a1:a2:a3=10〜40:90〜35:0〜25のモル比率で共重合してなり、重量平均分子量50000〜400000の(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体を含有するベースポリマー(A2)と、架橋剤(B2)と、光重合開始剤(C2)とを含有する樹脂組成物を挙げることができる。
なお、粘着組成物Bの詳しい組成及び特性については、特願2014−32074の段落[0014]〜[0072]の記載内容を引用する。
【0088】
なお、ベースポリマーとは、粘着組成物Bの主成分を為す樹脂の意味である。具体的な含有量を規定するものではないが、目安としては、粘着組成物Bに含まれる樹脂の50質量%以上、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)質量%以上を占める樹脂である(なお、ベースポリマーが2種類以上の場合は、それらの合計量が前記含有量に該当する。)。
【0089】
<ベースポリマー(A2)>
ベースポリマー(A2)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体であるのが好ましい。
【0090】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体は、室温状態での形状保持性とホットメルト性とを両立させる観点から、重量平均分子量は50000〜400000であるのが好ましく、中でも60000以上或いは350000以下、その中でも70000以上或いは300000以下であるのがさらに好ましい。
【0091】
アクリル酸エステル系共重合体は、これを調整するために用いるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等を適宜選択することによって、ガラス転移温度(Tg)や分子量等の物性を適宜調整することが可能である。
この際、アクリル酸エステル共重合体を構成するアクリルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート等を主原料として挙げることができる。
これらの他に、凝集力付与や極性付与等の目的に応じて、さまざまな官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを上記アクリルモノマーと共重合させてもよい。
当該官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート、N−置換アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含フッ素アルキルアクリレート、オルガノシロキシ基含有アクリレートなどを挙げることができる。
【0092】
他方、ビニル共重合体としては、上記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な酢酸ビニルや、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーも適宜重合してなるビニル共重合体を挙げることができる。
【0093】
本粘着シートのベースポリマー(A2)としては、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のモノマーAと、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上80℃未満のモノマーBと、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上のモノマーCとが、A:B:C=10〜40:90〜35:0〜25のモル比率で共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体であるのが好ましい。
この際、モノマーA、B及びCの各ガラス転移温度(Tg)は、当該モノマーからポリマーを作製した際(ホモポリマー化)の各ガラス転移温度(Tg)の意味である。
【0094】
前記モノマーAは、例えば炭素数4以上の側鎖を有するアルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるのが好ましい。
この際、炭素数4以上の側鎖は、直鎖からなるものであっても、分岐した炭素鎖からなるものであってもよい。
より具体的には、前記モノマーAは、炭素数4〜10の直鎖アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるか、或いは、炭素数6〜18の分岐アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるのが好ましい。
【0095】
ここで、「炭素数4〜10の直鎖アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレートなどを挙げることができる。
他方、「炭素数6〜18の分岐アルキル基構造をもつ(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0096】
前記モノマーBは、炭素数4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、炭素数4以下のビニルモノマー、又は、側鎖に環状骨格を有するビニルモノマーであるのが好ましい。
中でも、上記モノマーBは、側鎖の炭素数が4以下のビニルモノマーであるのが特に好ましい。
【0097】
ここで、「炭素数4以下の(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレートなどを挙げることができる。
「側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、4−エトキシ化クミルフェノールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−トなどを挙げることができる。
「炭素数4以下のビニルモノマー」としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
「側鎖に環状骨格を有するビニルモノマー」としては、スチレン、シクロヘキシルビニルエーテル、ノルボルニルビニルエーテル、ノルボルネニルビニルエーテルなどを挙げることができる。中でも、側鎖の炭素数が4以下であるビニルモノマー、または側鎖の炭素数が4以下であるアクリル酸エステルモノマーが特に好適である。
【0098】
前記モノマーCは、側鎖の炭素数が1以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー、又は、側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるのが好ましい。
ここで、「側鎖の炭素数が1以下である(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
「側鎖に環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー」としては、イソボルニルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレ−トなどを挙げることができる。
【0099】
ベースポリマー(A2)が、モノマーAと、モノマーBと、モノマーCとが、A:B:C=10〜40:90〜35:0〜25のモル比率で共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体を含んでいれば、Tanδのピークを0〜20℃に調整することができ、通常状態、すなわち、室温状態において、シート状の形状を保持することができ、しかも、剥離可能な程度の接着性(“タック性”と称する)を発現させることができる。また、ホットメルト可能な温度に加熱すると、流動性を発現するようになり、貼合面の段差部に追従して隅々まで充填することができる。
よって、かかる観点から、ベースポリマー(A2)を構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体におけるモノマーAと、モノマーBと、モノマーCとのモル比率は、A:B:C=10〜40:90〜35:0〜25であるのが好ましく、中でも13〜40:87〜35:0〜23、その中でも15〜40:85〜38:2〜20であるのが好ましい。
【0100】
また、上記と同様の観点から、ベースポリマー(A2)を構成する(メタ)アクリル酸エステル共重合体もしくはビニル共重合体におけるモノマーAと、モノマーBと、モノマーCとのモル比率は、B>A>Cであるのが好ましい。
【0101】
<架橋剤(Y)>
本粘着シート中で架橋剤(Y)が架橋することで、本粘着シートは、高温環境下における高い凝集力を発現し、優れた耐発泡信頼性を得ることができる。
【0102】
このような架橋剤(Y)としては、例えばエポキシ架橋剤やイソシアネート架橋剤、オキセタン化合物、シラン化合物、アクリル化合物等からなる架橋剤を適宜選択可能である。中でも、反応性や得られる硬化物の強度の点で、(メタ)アクリロイル基を2個以上、中でも3個以上有する多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0103】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類を挙げることができる。
【0104】
上記に挙げた中でも、被着体への密着性や耐熱性、湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、極性官能基を含有する多官能モノマーもしくはオリゴマーが、好ましい。その中でも、イソシアヌル環骨格を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
【0105】
架橋剤(Y)の含有量は、特に制限されるものではない。目安としては、ベースポリマー(A2)100質量部に対して0.5〜20質量部、中でも1質量部以上或いは15質量部以下、その中でも2質量部以上或いは10質量部以下の割合であるのが好ましい。
架橋剤(Y)を上記範囲で含有することで、未架橋状態における本粘着シートの形状安定性と、架橋後の粘着シートにおける耐発泡信頼性とを両立させることができる。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
【0106】
<光重合開始剤(Z)>
光重合開始剤(Z)は、前述の架橋剤(Y)の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たす。活性エネルギー線を引き金としてラジカルを発生する有機過酸化物や、光重合開始剤等を適宜使用することができる。中でも、光重合開始剤、とくに波長380nm以下の紫外線に感応する光重合開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの観点から好ましい。
一方、波長380nmより長波長の光に感応する光重合開始剤は、紫外線を透過しにくい光学装置構成用部材積層体であっても光硬化可能である点および感応する光が本粘着シートの深部まで十分到達できる点で好ましい。
【0107】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0108】
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、架橋反応が終了した後の粘着シート中に活性種として残存することがなく、粘着シートに予期せぬ光劣化等をもたらす可能性がないため、好ましい。
他方、水素引抜型光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる点で有用である。
【0109】
前記開裂型光重合開始剤としては、例えばベンゾインブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシアセトフェノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイドやそれらの誘導体などを挙げることができる。
前記水素引抜型光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−エチルアントラキノン、チオキサンソンやその誘導体などを挙げることができる。
但し、光重合開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。粘着組成物Bは、開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤のいずれか一種を単独もしくは2種以上を混合して使用してもよいし、両者を組み合わせて使用してもよい。
【0110】
光重合開始剤(Z)の含有量は特に制限されるものではない。目安としては、ベースポリマー(A2)100質量部に対して0.1〜10質量部、中でも0.5質量部以上或いは5質量部以下、その中でも1質量部以上或いは3質量部以下の割合で含有するのが好ましい。光重合開始剤(Z)の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0111】
<他の成分(W)>
粘着組成物Bは、上記以外の成分として、通常の粘着組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、必要に応じて、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤などの各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有してもよい。
【0112】
<用語の説明>
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JIS K6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シートおよびフィルムを包含するものである。
【0113】
本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例】
【0114】
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
[サンプル1]
主成分(A)としての、数平均分子量2400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー15重量部とブチルアクリレート81重量部とアクリル酸4重量部とがランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体(A−1)(重量平均分子量23万)1kgに対し、架橋剤(B)として、グリセリンジメタクリレート(G101P 共栄社化学社製)(B−1)100gと、光重合開始剤(C)としての2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(エザキュアTZT Lanberti社製)(C−1)15gを均一混合し、粘着組成物1を作製した。
前記粘着組成物1を剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(「剥離フィルム」と称する。三菱樹脂社製 ダイアホイルMRV−V06 厚さ100μm/三菱樹脂社製 ダイアホイルMRQ 厚さ75μm)で挟み、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形して、粘着シート1を作製した。
【0116】
180mm×238mm×厚さ1mmのソーダライムガラスの周縁部に、長辺側に幅17mm、短辺側に巾21mm、厚み40μmの白色の印刷(全光線透過率0%)を施し、周縁部に40μmの印刷段差をもつ評価用ガラス基板を作製した。この評価用ガラス基板は、段差部及び平坦面部を貼合面に有する画像表示装置構成用部材の代替品である。
この評価用ガラス基板に貼合する評価用被着体として、偏光板(サンリッツ社製「HLC2−5618」)を、予めガラス板上(150×200mm×t0.5mm)の片面に全面貼合したものを作製した。
【0117】
前記粘着シート1の一方の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面を、上記評価用ガラス基板の印刷段差を有する面に、当該印刷段差部を覆うようにハンドローラにて貼着した。次いで、残る剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面に、上記評価用被着体の偏光板面を、減圧下(絶対圧5kPa)にてプレス貼合し、オートクレーブ処理(60℃0.2MPa20分)を施して仕上げ貼着し、評価用積層体1を作成した。
【0118】
なお、アクリル酸エステル共重合体(A−1)は、ソフトセグメントとして、ブチルアクリレートと、アクリル酸と、マクロモノマーの末端の重合性官能基であるメタクリロイル基とがランダム共重合してなる主鎖を備え、ハードセグメントとして、ポリメタクリル酸メチルマクロモノマーからなる側鎖成分を備えた、グラフト共重合体である。
アクリル酸エステル共重合体(A−1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度(当該共重合体成分をポリマー化して得られるポリマーの理論値で求められるガラス転移温度)は−50℃であった。
アクリル酸エステル共重合体(A−1)の枝成分を構成するポリメタクリル酸メチルマクロモノマーの数平均分子量は2400であり、該マクロモノマーのガラス転移温度は60℃であり、該マクロモノマーは、アクリル酸エステル共重合体(A−1)中に15質量%の割合で含有されていた。
【0119】
[サンプル2]
主成分(A)として、2−エチルヘキシルアクリレート55質量部と、酢酸ビニル40質量部と、アクリル酸5質量部とがランダム共重合してなるビニル共重合体(A−2)(重量平均分子量:17万)1kgに対して、架橋剤としての(2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジナン−1,3,5−トリイル)トリエチレントリアクリラート(B−2)(東亜合成製 アロニックスM315)75gと、光重合開始剤としてのエザキュアKTO46(C−2)(Lanberti社製)15gとを均一混合し、粘着組成物2を作製した。そして、この粘着組成物2を用いる以外は実施例1と同様にして、評価用積層体2を作成した。
【0120】
[サンプル3]
サンプル1の作成例に準じて評価用積層体を作成し、当該積層体の評価用ガラス基板側から、波長365nmの積算光量が2000mJ/cmとなるように紫外線を照射して粘着シートを硬化させ、評価用積層体3とした。
なお、サンプル3に対応する粘着シートについては、サンプル1にて作成した粘着シート1に、波長365nmの紫外線が2000mJ波長365nmの積算光量が2000mJ/cmとなるように紫外線を照射して粘着シートを硬化させ、粘着シート3とした。
【0121】
[サンプル4]
特許4971529号公報の実施例3に準じて粘着シート4を作製した。
すなわち、2−エチルヘキシルアクリレート75質量部と酢酸ビニル20質量部とアクリル酸5質量部とをランダム共重合してなるアクリル酸エステル共重合体前記アクリル酸エステル共重合体(A−4)1kgに、架橋剤(B)としてノナンジオールジアクリレート(ビスコート260 大阪有機化学社製)(B−4)50g及び光重合開始剤(C)として4−メチルベンゾフェノン(C−3)10gを混合添加して粘着組成物4を調製した。
前記粘着組成物4を剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製 ダイアホイルMRV−V06 厚さ100μm/三菱樹脂社製 ダイアホイルMRQ 厚さ75μm)で挟み、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形した。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムを介して、粘着層に波長365nmの紫外線が1000mJ/cm到達するよう紫外線を照射し、架橋剤を一部反応させて、粘着シート4(厚さ150μm)を作製した。
そして、この粘着シート4を用いて実施例1と同様に評価用積層体4を作製した。
【0122】
[サンプル5]
サンプル4で調製した粘着組成物4を、剥離処理した2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製 ダイアホイルMRV−V06 厚さ100μm/三菱樹脂社製 ダイアホイルMRQ 厚さ75μm)を介して、ラミネータを用いて厚さ150μmとなるようシート状に賦形し、粘着シート5とした。粘着シート5に光照射せず、そのままサンプル4の作成例に準じた評価用積層体を作製し、評価用積層体5とした。
【0123】
[サンプルの評価]
(保持力)
作製した粘着シート1〜5について、JIS−Z−0237に準じて保持力測定を行った。すなわち、実施例及び比較例で作成した粘着シート1〜5について、40mm×50mmに裁断して片面の離型フィルムを剥がし、裏打用のPETフィルム(三菱樹脂製 ダイアホイルS−100、厚さ38μm)をハンドローラで背貼りした後、これを巾25mm×長さ100mmの短冊状に裁断して試験片とした。
次に、残る離型フィルムを剥がして、SUS板(120mm×50mm×厚さ1.2mm)に対して、貼着面積が20mm×20mmとなるようハンドローラで貼着した。
その後、試験片を40℃の雰囲気下で15分養生させた後、試験片に500gf(4.9N)の錘を垂直方向に取り付けて掛けて30分静置した後、30分後の、SUSと試験片との貼着位置が下方にズレた長さ(mm)、すなわちズレ量を測定した。このとき、錘が落下したものについては、錘の落下時間(分)を測定した。このとき、40℃における試験片のズレ長さが5mm以下であれば十分な保持力を有しており、加工性および保管安定性が優れていることを示唆している。
なお、表中の「<0.5mm」はズレ長さが0.5mm未満で、ほとんどズレのない状態を意味している。
上記試験を80℃の雰囲気下でも同様にして行い、30分静置した後の貼着位置のズレ長さ、もしくは錘の落下時間を測定した。このとき、80℃におけるズレ長さが10mm以上もしくは30分以内に落下したものについては、加熱による再剥離性に優れているといえる。
【0124】
(透明性)
粘着材1〜5の一方の離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、ソーダライムガラス(82mm×53mm×0.5mm厚)にロール圧着した。次いで残る離型フィルムを剥がし、ソーダライムガラス(82mm×53mm×0.5mm厚)をロール貼合した後、オートクレーブ処理(80℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、積層体を作製した。
前記積層体について、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH5000)を用いて、全光線透過率(JIS K7361−1準拠)並びにヘイズ値(JIS K7136準拠)を測定した。
【0125】
(接着力)
粘着シート1、2、4、5の一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとして50μmのPETフィルム(三菱樹脂製ダイアホイルT100 厚さ50μm)を貼合した。
上記積層品を長さ150mm、巾10mmに裁断した後、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面をソーダライムガラスにロール圧着した。貼合品にオートクレーブ処理(80℃,ゲージ圧0.2MPa,20分)を施して仕上げ貼着して、硬化前の剥離力測定試料とした。
また、上記と同手順で作成した試料について、裏打ちフィルム側から、紫外線を365nmの積算光量が2000mJ/cmとなるよう照射して粘着シートを硬化し、23℃、50%RHで15時間養生して、硬化後の剥離力測定試料とした。
【0126】
(加工適性)
粘着シート1〜5を、離型フィルムを積層したままトムソン打抜機を用いて50mm×80mmのトムソン刃で100枚カットし、端部の形状を観察した。端部の潰れや糊はみだし、離型フィルムの浮きが20枚以上みられたものを「×」と評価し、20枚以上無かったものを「○」と判定した。
【0127】
【表1】
【0128】
(考察)
サンプル1、2及び5の粘着シートは、80℃における保持力のズレ量が大きく、加熱流動性が高いため、後述する再剥離性評価においていずれも15分以内で速やかに貼合部材が分離し、リワークにすぐれるものであった。また、サンプル1〜4の粘着シートは40℃における保持力は高い事から、加熱前は形状はしっかりと保持されており、加工適正にも優れている結果となった。さらには、サンプル1、2の粘着シートは光硬化性をもつため、貼合品に光照射する事で部材をしっかりと接着することができた。
【0129】
これに対し、サンプル3及び4の粘着シートは、紫外線による1次架橋を施した粘着材であるため、加熱しても十分な加熱流動性が得られず、貼合後の部材を分離する事ができなかった。
サンプル5の粘着シートは、サンプル4の粘着組成物に紫外線架橋を施していない状態のまま使用したものである。加熱流動性は高く再剥離は容易であるものの、40℃における保持力も低く、常温でも粘着シートが流動してしまう事から、ベタツキや糊はみだしによる裁断不良がみられ、加工適正に劣るものであった。
【0130】
<光学装置構成用部材のリサイクル/光学装置構成用積層体のリワーク性評価>
作成した評価用積層体1〜5について、温度80℃で15分保管して試料を予熱した。
図2に示すように、予熱した積層体の部材の間に、一方の長辺側から、線状部材としてのナイロンワイヤー(0.21mmΦ)をかけて、ワイヤーの両端に各1kgの錘を垂直に釣り下げた。このようにして評価用積層体の粘着シートに合計2kgの荷重をかけ、ワイヤーが粘着シートを通過して貼合部材が分離するかを確認した。
【0131】
この際、線状部材5により与える荷重の大きさと、線状部材5により荷重を与え初めてから分断されるまでの経過時間を計測し、これらの値を基準として、次のように評価した。
すなわち、15分以内に粘着シートが分断されて部材が分離できたものを○、ワイヤーが通過するのに15分以上かかるもの、もしくはワイヤーが通らず、分離できなかったものを×と判定した。
【0132】
上記のように分離した、片側透明粘着材1Aが付着した光学装置構成用部材2(3)から、図10(A)〜(C)に示すように、片側透明粘着材1Aが付着した光学装置構成用部材2(3)の片側透明粘着材1Aに、粘着材料12を重ねて接着して、粘着材料12を、片側透明粘着材と光学装置構成用部材との粘着界面の面方向と平行方向、すなわちせん断方向に引っ張ることで、粘着材料12を剥がすと共に片側透明粘着材1Aを剥がした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11