(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
この出願は、日本国で2015年3月31日に出願された特願2015−074274号に基づいており、その内容は本出願の内容として、その一部を形成する。本発明は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本発明の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0022】
[コーティング剤]
本願の第1の実施の形態に係るコーティング剤は、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)と、フッ素系化合物(b)と、光重合開始剤(d)とを含み、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)は、10,000〜800,000の重量平均分子量(Mw)を有し、フッ素系化合物(b)は、少なくとも2個の重合性官能基を有する。例えば
図1に示すように、基材フィルム11上にコーティング剤を塗布して硬化させると、自己修復性、防汚性、伸張性に優れた表面層12を形成することができる。
なお、コーティング剤は、さらに、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)を含んでもよい。フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)は、少なくとも1個の重合性官能基を有する。フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)により、表面層の防汚性を向上させるとともに優れた滑り性を付与することができる。
なお、コーティング剤は、さらに、溶剤(e)、添加剤(f)を含んでもよい。
【0023】
[ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ウレタン骨格をもつ活性エネルギー線硬化性樹脂であり、例えば紫外線硬化性樹脂を挙げることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)は、表面層に屈曲性(柔軟性)を付与する。
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)は、1分子中にイソシアネート基を複数個有する有機イソシアネート系化合物(ポリイソシアネート)と、水酸基を2個以上有するポリオール系化合物(ポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類)とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させることによって得ることができる、ラジカル重合性不飽和基含有オリゴマー、プレポリマー、ポリマーであってもよい。
【0024】
特に、ポリヒドロキシ化合物としてポリカーボネートポリオールを用いたポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、形成された表面層は優れた伸縮性と強靭性を供えることができる。
または、ポリヒドロキシ化合物としてポリエステルポリオールを用いたポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートも好ましい。ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、形成された表面層は優れた伸縮性と強靭性を供えることができる。
【0025】
前記ポリイソシアネートとしては、具体的には2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バーノックD−750(商品名:DIC(株)製)、クリスボンNK(商品名:DIC(株)製)、デスモジュールL(商品名:住友バイエルウレタン(株)製)、コロネートL(商品名:日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートD102(商品名:三井武田ケミカル(株)製)、イソネート143L(商品名:三菱化学(株)製)などが挙げられる。
前記ポリヒドロキシ化合物としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられ、具体的にはグリセリン−エチレンオキシド付加物、グリセリン−プロピレンオキシド付加物、グリセリン−テトラヒドロフラン付加物、グリセリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−テトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記多価アルコール類としては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコールなどが挙げられる。
【0026】
前記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)は、公知の方法で合成することが可能である。一例として、所定量の有機ポリイソシアネート(a−1)およびポリカーボネートポリオール(a−2)を70℃〜80℃の条件下で残存イソシアネート濃度が所定量になるまで反応させ、その後、さらに所定量の分子内に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレート(a−3)を添加して、重合禁止剤(例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル)の存在下、70℃〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1重量%以下になるまで反応させることにより得ることができる。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は10,000〜800,000、好ましくは50,000〜500,000の範囲である。この範囲とすることで、表面層に柔軟性を付与することができる。10,000以上の場合、表面層中の架橋密度が高くなりすぎることがない。
【0029】
[フッ素系化合物(b)]
フッ素系化合物(b)は、少なくとも2個の重合性官能基を有していれば、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれであってもよい。例えば、フッ素系化合物(b)として、(メタ)アクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルを挙げることができる。なお、本願においてフッ素系化合物(b)という場合は、下記フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)を含まない。
【0030】
前記パーフルオロポリエーテルとしては、例えば炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有するものが挙げられる。炭素原子数1〜3の2価フッ化炭素基は、1種類であっても2種類以上の組合せであってもよい。
前記パーフルオロポリエーテル鎖としては、具体的には下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【0032】
上記式(1)中、Xは下記式(1−1)〜(1−5)である。また、Xは下記式(1−1)〜(1−5)のいずれか1種類のものであってもよいし、下記式(1−1)〜(1−5)のうち2種以上を有するのものであってもよい。例えば、前記Xとして下記式(1−1)〜(1−5)のうち2種以上を有する構造としては、−(CF
2CF
2−O)
n−(CF
2−O)
n−で示されるような構造が挙げられる。前記Xとして式(1−1)〜(1−5)で示される構造を2種類以上含む場合には、−(X−O)−の構造単位からなるランダム構造またはブロック構造を有していてもよい。また、nは繰り返し単位を表す2〜200の整数である。
【0034】
フッ素系化合物(b)は、少なくとも両末端に重合性官能基を有することが好ましい。重合性官能基としては、ラジカル重合する基であれば特に制限はなく、例えばメタクリロイル、アクリロイル、アリル、スチリル、α−メチルスチリル、ビニル、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルアミド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、N−置換マレイミドなどが含まれ、中でも(メタ)アクリルまたはスチリルを含む基が好ましい。ここに(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0035】
フッ素系化合物(b)は、公知の方法で合成することが可能である。
【0036】
フッ素系化合物(b)の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)とフッ素系化合物(b)の合計量に対して、1〜9重量%であることが好ましく、より好ましくは、1〜7重量%である。1重量
%以上であると、表面層に十分に防汚性を付与することができ、9重量%以下であると表面層の柔軟性が低下し自己修復性が劣るのを回避できる。
【0037】
[フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)]
フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)は、少なくとも1個の重合性官能基を有していれば、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれであってもよい。
・フルオロシルセスキオキサンモノマー
シルセスキオキサンとは、[(R−SiO
1.5)n]で示される(Rは任意の置換基である)ポリシロキサンの総称である。このシルセスキオキサンの構造は、そのSi−O−Si骨格に応じて、一般的にランダム型構造、ラダー型構造、かご型構造に分類される。さらに、かご型構造は含まれるSiの数に応じてT8、T10、T12型などに分類される。
フルオロシルセスキオキサンは、疎水性雰囲気下(例えば、空気中)において、空気と固体(または液体)の界面に集積しやすい性質を有するものであればよい。界面に集積するフルオロシルセスキオキサンであれば、本願発明の効果を十分に発揮することができる。このようなフルオロシルセスキオキサンの優れた表面集積特性により、少量かつ効果的に表面層12の表面改質を行うことができる。
【0038】
フルオロシルセスキオキサンの一例として下記式(2)に示される分子構造を有するフルオロシルセスキオキサンを挙げることができる。
【0040】
すなわち、シルセスキオキサンの構造であるランダム型構造、ラダー型構造、かご型構造のうち、特にかご型構造であることが好ましい。かご型構造のフルオロシルセスキオキサンを用いると、界面に集積するスピードを他の構造のものに比べ高めることができる。
入手のし易さを考慮すると、T8型、T10型、T12型のいずれか1の型であることが好ましい。
前述の式[(R−SiO
1.5)n]における置換基(R)は、フルオロアルキル基(R
f)であることが好ましい。溶剤への溶解性を考慮すると、R
fの炭素数は、1〜8であることが好ましい。R
fは、直鎖の基であってもよく、分岐した基であってもよい。具体的には、直鎖の基として、−CH
2CH
2CF
3、−CH
2CH
2CF
2CF
3、−CH
2CH
2CF
2CF
2CF
3、−CH
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
3、−CH
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
3、−CH
2CH
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
3、分岐した基として、−CH
2CH
2CF(CF
3)
2、−CH
2CH(CF
3)CF
2CF
3、−CH(CF
3)CH
2CF
2CF
3、−CH
2C(CF
3)
2CF
3、−C(CF
3)
2CH
2CF
3−CH
2CH
2CF
2CF(CF
3)
2、−CH
2CH
2CF(CF
3)CF
2CF
3、−CH
2CH
2C(CF
3)
2CF
3等を例示することができる。なお、R
fは、それぞれ相違する基であっても、すべて同一の基であってもよい。
【0041】
上記式(2)には、1つのSiに「3−(メタクリロイルオキシ)プロピル」を有するフルオロシルセスキオキサンを例示しているが、この重合性官能基に限られるものではない。例えば、「3−(メタクリロイルオキシ)プロピル」の位置をZとした場合、この位置を他の官能基に置き換えることができる。具体的には、Zとして、水素、水酸基、アルケニル、またはハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素)、アルコキシ、フェノキシ、ポリアルキレンオキシ、−COOH、2−オキサプロパン−1,3−ジオイル、アルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、オキシラニル、3,4−エポキシシクロヘキシル、オキセタニル、オキセタニレン、−NH−、−NH
2、−CN、−NCO、アルキニル、シクロアルケニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ウレタンアクリロイル、ウレタンメタクリロイル、−SHおよび−PH
2のいずれかの基とすることができる。さらに、Zとして、アルキレンを介した上記基(水素〜−PH
2)としてもよい。Siに結合するアルキレンは特に限定されないが、炭素数が1〜8のアルキレンが好ましく、炭素数が3のプロピレンが特に好ましい。但し、選択範囲には、アルカノイルオキシを有する基、ハロゲン化スルフォニルを有する基およびα−ハロエステル基を有する基は含まれない。
ただし特に好ましくは、Siに結合する重合性官能基が少なくとも2個であるフルオロシルセスキオキサンである。例えば、上記式(2)では、1つのSiに「3−(メタクリロイルオキシ)プロピル」を有するフルオロシルセスキオキサンを例示しているが、他の1つ以上のSiにこの「3−(メタクリロイルオキシ)プロピル」を有するフルオロシルセスキオキサンであることがより好ましい。さらに、重合性官能基はラジカル重合性官能基であることが好ましい。
【0042】
・フルオロシルセスキオキサンオリゴマー、プレポリマー、ポリマー
以下では、フルオロシルセスキオキサンオリゴマー、プレポリマー、ポリマーを総じてフルオロシルセスキオキサン重合体と称する。
フルオロシルセスキオキサン重合体は、官能基が重合性の基である場合には、フルオロシルセスキオキサンの単一重合体とすることができるし、他の一般的な単量体(例えば、付加重合性単量体)との共重合体とすることもできる。異なる重合性の基を有するフルオロシルセスキオキサン同士の共重合体としてもよい。このとき、重合の方法は公知の方法のいずれであっても採用できる。このように、本願のコーティング剤に用いるフルオロシルセスキオキサンは、フルオロシルセスキオキサン重合体であってもよい。
ただし、重合後のフルオロシルセスキオキサン重合体は、少なくとも1個の重合性官能基を有する。さらに、重合性官能基はラジカル重合性官能基であることが好ましい。
【0043】
すなわち、上記式(2)のフルオロシルセスキオキサンは、Zとして付加重合性官能基を有してもよい。または、Zとしてアルキレンを介して付加重合性官能基を有してもよい。付加重合性官能基の例としては、末端オレフィン型または内部オレフィン型のラジカル重合性官能基を有する基;ビニルエーテル、プロペニルエーテルなどのカチオン重合性官能基を有する基;およびビニルカルボキシル、シアノアクリロイルなどのアニオン重合性官能基を有する基が含まれるが、好ましくはラジカル重合性官能基が挙げられる。
【0044】
上記のラジカル重合性官能基には、ラジカル重合する基であれば特に制限はなく、例えばメタクリロイル、アクリロイル、アリル、スチリル、α−メチルスチリル、ビニル、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルアミド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、N−置換マレイミドなどが含まれ、中でも(メタ)アクリルまたはスチリルを含む基が好ましい。ここに(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0045】
上記の(メタ)アクリルを有するラジカル重合性官能基の例には、以下の式(3)に示される基が含まれる。式(3)においてY
1は、炭素数2〜10のアルキレンを示し、好ましくは炭素数2〜6のアルキレンを示し、さらに好ましくはプロピレンを示す。またXは、水素または炭素数1〜3のアルキルを示し、好ましくは水素またはメチルを示す。
【0046】
また、上記のスチリルを有するラジカル重合性官能基の例には、以下の式(4)に示される基が含まれる。式(4)においてY
2は、単結合または炭素数1〜10のアルキレンを示し、好ましくは単結合または炭素数1〜6のアルキレンを示し、より好ましくは単結合またはエチレンを示す。またビニルは、ベンゼン環のいずれかの炭素に結合しており、好ましくはY
2に対してパラ位の炭素に結合している。
【0048】
付加重合性単量体には、架橋性官能基を有するものと架橋性官能基を有さないものがある。前記の架橋性官能基を有する付加重合性単量体は、1つまたは2つ以上の付加重合性二重結合を有する化合物であればよく、例えば、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物のいずれでもよく、さらに具体的には、(メタ)アクリル酸化合物またはスチレン化合物などが例示される。
【0049】
上記の(メタ)アクリル酸化合物の例には、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの他、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリロニトリルなどが含まれる。
【0050】
前記の付加重合性単量体の(メタ)アクリル酸化合物の例として架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートがある。かかる架橋性官能基の例には、グリシジルおよびエポキシシクロヘキシルなどのエポキシ、オキセタニル、イソシアナト、酸無水物、カルボキシル、ならびにヒドロキシルなどが含まれるが、好ましくはグリシジルなどのエポキシやオキセタニルである。上記の架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートの具体例には、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ含有(メタ)アクリレート;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ含有(メタ)アクリレート;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタニル含有(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート;γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン;(メタ)アクリレート−2−アミノエチル、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート;1−(メタ)アクリロキシ−2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)エタン、1−(4−((4−(メタ)アクリロキシ)エトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート;などが含まれる。
【0051】
上記の1つの付加重合性二重結合を有するスチレン化合物の例には、架橋性官能基を有するスチレン化合物がある。かかる架橋性官能基の具体例には、グリシジルなどのエポキシ、オキセタニル、ハロ、アミノ、イソシアナト、酸無水物、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、シロキシなどが含まれる。
架橋性官能基を有するスチレン化合物の例には、o−アミノスチレン、p−スチレンクロロスルホン酸、スチレンスルホン酸およびその塩、ビニルフェニルメチルジチオカルバメート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)スチレン、1−(2−((4−ビニルフェニル)メトキシ)−1−フェニルエトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンや、下記式に示される化合物が含まれる。
【0053】
前記の付加重合性単量体に加え、硬化性樹脂との相溶性、レベリング性、共重合体中の架橋性官能基量などをコントロールするため、必要に応じて前記付加重合性単量体以外の付加重合性単量体も併用することができる。
【0054】
架橋性官能基を有さない付加重合性単量体としては、1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリル酸化合物および1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さないスチレン化合物が挙げられる。かかる(メタ)アクリル酸化合物の具体例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアリールアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物;などが含まれる。
【0055】
上記の1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリル酸化合物の具体例には、さらに、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、および2−パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0056】
さらに、1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリル酸化合物の例には、シルセスキオキサン骨格を有する(メタ)アクリル酸化合物がある。かかるシルセスキオキサン骨格を有する(メタ)アクリル酸化合物の具体例には、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチル−ペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレートなどが含まれる。上記の1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さないスチレン化合物の具体例には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン;などが含まれる。
【0057】
上記の1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さないスチレン化合物の例としては、さらに、シルセスキオキサンを含むスチレン化合物が含まれる。かかるシルセスキオキサンを含むスチレン誘導例には、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン、および1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサンなどの、4−ビニルフェニル基を有するオクタシロキサン(T8型シルセスキオキサン);および、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、および3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.1
3,9.1
5,15.1
7,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンなどの、4−ビニルフェニルエチル基を有するオクタシロキサン(T8型シルセスキオキサン);などが含まれる。
【0058】
さらに、前記付加重合性単量体以外の付加重合性単量体として、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン、およびアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどから誘導された主鎖を有し、一つの重合性二重結合を有するマクロ単量体も例示される。
【0059】
付加重合性単量体の例には、二つの付加重合性二重結合を有する化合物も含まれる。二つの付加重合性二重結合を有する化合物の例には、1,3−ブタンジオール=ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール=ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール=ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール=ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール=ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン=ジ(メタ)アクリレート、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕ビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕テトラブロモビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクリロキシポリエトキシ〕ビスフェノールA、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)5,5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオール=ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール化合物のジ(メタ)アクリレートおよびビス〔(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕テトラメチルジシロキサン等のジ(メタ)アクリレート系単量体、ジビニルベンゼンが含まれる。
さらに、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン、およびアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどから誘導された主鎖を有し、二つの重合性二重結合を有するマクロ単量体も例示される。
【0060】
付加重合性単量体の例には、付加重合性二重結合を三つ以上有する化合物も含まれる。付加重合性二重結合を三つ以上有する化合物の例には、トリメチロールプロパン=トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール=トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール=テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール=モノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアネート)=トリ(メタ)アクリレート、トリス(ジエチレングリコール)トリメリ
テート=トリ(メタ)アクリレート、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニルトリシクロ[7.3.3.1
5,11]ヘプタシロキサン、オクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンおよびオクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)オクタシルセスキオキサンが含まれる。
さらに、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン、およびアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどから誘導された主鎖を有し、重合性二重結合を三つ以上有するマクロ単量体も例示される。
【0061】
付加重合性単量体は、好ましくは(メタ)アクリル酸化合物であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸の、低級アルキル(例えば炭素数1〜3)エステルや、架橋性官能基を有するエステルなどである。
【0062】
重合体は、フルオロシルセスキオキサンの付加重合体または、他の付加重合性単量体との付加共重合体であり、共重合体である場合は、ブロック共重合などの定序性共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよいが、好ましくはランダム共重合体である。また、重合体は架橋構造を有していてもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0063】
フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)、フッ素系化合物(b)、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)の合計量に対して、0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜5重量%である。0.1重量%以上であると、表面層の防汚性を向上させるとともに滑り性を付与することができ、10重量%以下であると表面層の柔軟性が低下し自己修復性が劣るのを回避できる。
【0064】
[光重合開始剤(d)]
光重合開始剤は、特に限定しない。活性エネルギー線でラジカルを発生する開始剤であればよい。例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤等を挙げることができる。
活性エネルギー線重合開始剤として用いられる化合物としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4′−イソプロピルプロピオフェノン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4′−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4′−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2′−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4′−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3′−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジ(メトキシカルボニル)−4,4′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4′−ジ(メトキシカルボニル)−4,3′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′−ジ(メトキシカルボニル)−3,3′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ―2―メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどがある。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することも有効である。
ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性樹脂の総量(100重量部)に対して0.01重量部〜20重量部であることが好ましい。より好ましくは、1重量部〜10重量部である。
【0065】
[溶剤(e)]
本願のコーティング剤に含まれる上記(a)(b)(c)(d)成分は、有機溶剤等の溶剤に溶解させて用いてもよい。溶剤は特に限定しない。一般的な有機溶剤等を使用できる。
溶剤の具体例としては、炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチルなど)、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶媒(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶媒(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶媒(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶媒(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶媒(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、芳香族系フッ素溶媒(α,α,α−トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン)、水が含まれる。これらを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。例えば、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤を挙げることができる。メチルイソブチルケトン以上に、樹脂に対する溶解性を上げることが期待できるメチルエチルケトン等の溶媒を加えることで、コーティング剤の調合の際に、溶液均一化の作業性を向上できる。また、溶解性の向上によりコーティング剤の安定化を図ることができる。混合比率(重量基準)は、例えば、メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=1〜99/99〜1の範囲が利用でき、好ましくは、20〜80/80〜20の範囲である。
【0066】
溶剤の含有量は、硬化膜を形成する樹脂組成物の総量(100重量部)に対して20重量部〜500重量部である。好ましくは、50重量部〜400重量部である。
【0067】
[添加剤(f)]
コーティング剤には、上記の他に添加剤を添加してもよい。例えば、膜の硬度、耐擦傷性を付与するために、フィラーを添加してもよい。塗工性を上げるために、レベリング剤を添加してもよい。その他、耐候剤、消泡剤等の添加剤を添加してもよい。
より詳細には、コーティング剤により形成される硬化膜が有する効果に悪影響をおよぼさない範囲において、活性エネルギー線増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、シリカやアルミナに代表される無機フィラー、有機フィラーなど、任意の成分をさらにコーティング剤に含有させてもよい。
【0068】
レベリング剤の例として、市販品としてアクリル系表面調整剤BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−356、BYK−381、BYK−392、BYK−394、BYK−3441、BYK−3440、BYK−3550(いずれも商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
また、シリコーン系表面調整剤としては、BYK−UV3500、BYK−UV−3570(いずれも商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製)、TEGO Rad2100、2200N、2250、2500、2600、2700(いずれも商品名:エボニックデグサジャパン(株)製)、X−22−2445、X−22−2455、X−22−2457、X−22−2458、X−22−2459、X−22−1602、X−22−1603、X−22−1615、X−22−1616、X−22−1618、X−22−1619、X−22−2404、X−22−2474、X−22−174DX、X−22−8201、X−22−2426、X−22−164A、X−22−164C(いずれも商品名:信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0069】
耐候剤の例として、ベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類、ベンゾフェノン類、サリシレート類、シアノアクリレート類、トリアジン類、または、ジベンゾイルレゾルシノール類の紫外線吸収剤が挙げられる。
ベンゾトリアゾール類の例として、BASF社製TINUVIN PS、TINUVIN 99−2、TINUVIN326、TINUVIN384−2、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130、TINUVINCarboprotect、ヒドロキシフェニルトリアジン類の例として、BASF社製TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477、TINUVIN479、ベンゾフェノン類の例として、ADEKA社製1413、住化ケムテックス社製Sumisorb130、サリシレート類の例として、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、シアノアクリレート類の例として、2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、トリアジン類の例として、ADEKA社製LA−46、LA−F70、ジベンゾイルレゾルシノール類の例として、4,6−ジベンゾイルレゾルシノールなどが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤を単独で用いてもよいし、複数の紫外線吸収剤を組合せて用いてもよい。紫外線吸収剤は、吸収したい紫外線の波長に基づいて種類や組合せを適宜選択することが好ましい。
また、光安定剤(HALS)としては、BASF社製TINUVIN(登録商標)5100(中性タイプの汎用HALS)、TINUVIN292(化合物名:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート)、TINUVIN152(化合物名:2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)、TINUVIN144(化合物名:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート)、TINUVIN123(化合物名:デカン二酸、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4ピペリジニル)エステルの反応生成物(1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドおよびオクタン存在下))、TINUVIN111FDL(約50%、TINUVIN622、化合物名:(ブタン二酸ポリマー(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル ピペリジニル−イル)エタノール存在下)、約50%、CHIMASSORB119、化合物名:N−N’−N’’−N’’’−テトラキス(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン)、または、(株)アデカ製アデカスタブLAシリーズ等、具体的には、LA−52((5)−6116)、LA−57((5)−5555)、LA−62((5)−5711)、LA−67((5)−5755)、LA−82((5)−6023)、LA−87((5)−6022)を挙げることができる。なお、括弧内は、既存化学物質番号である。
無機フィラーの例として、市販品では日産化学工業製MEK−ST―40、MEK−ST−L、MEK−ST−ZL、PGM−AC−2140Y、PGM−AC−4130Y、AS−200、AS−520、CIKナノテック社製アナターゼTiO
2、Al
2O
3、ZnO、ZrO
2、コバルトブルー、御国色素製酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、MUAフィラーを挙げることができる。
有機フィラーの例として、積水化成品工業性製テクポリマーMBXシリーズ、SBXシリーズ、根上工業製アートパール架橋アクリルビーズ、アートパール架橋ウレタンビーズ、アイカ工業製ガンツパールを挙げることができる。
これらのフィラーを単独で用いてもよいし、複数のフィラーを組合せて用いてもよい。
【0070】
コーティング剤には、その他の樹脂成分を添加してもよい。例えば、熱可塑性樹脂、ゴムを挙げることができる。
その他の樹脂として、熱可塑性樹脂、ゴムを添加することにより、樹脂本来の特性(力学物性、表面・界面特性、相溶性など)を改質することができる。
【0071】
熱可塑性樹脂としては、例えば以下のようなものがある。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート(Uポリマー:ユニチカ(株)商品名、ベクトラ:ポリプラスチックス(株)商品名、など)、ポリイミド(カプトン:東レ(株)商品名、AURUM:三井化学(株)商品名、など)、ポリエーテルイミドおよびポリアミドイミド。
ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロンMXD6、ナイロン6,T(いずれも商品名:デュポン(株)製)などのポリアミド。
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシラートなどのポリエステル。
さらに、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂。
【0072】
表面層12に用いる硬化性樹脂は、基材フィルム上に塗布するためにコーティング剤として用いる。そのため、コーティング剤は液状であることが好ましい。硬化性樹脂が固体である場合には、既述したように、溶剤に溶解してコーティング剤として用いればよい。
コーティング剤中の硬化性樹脂の濃度は、コーティング剤の粘度がウェットコーティング法等のコーティング方法に応じた粘度になるように選択することができる。前記濃度は、1〜80重量%が好ましく、より好ましくは、3〜60重量%である。コーティング剤中の硬化性樹脂の濃度は、溶剤を用いることで調整することができる。溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の一般的な有機溶剤を用いることができる。なお、硬化性組成物に含まれるフッ素化合物が有するフルオロアルキル基の長さ等により、溶剤への溶解性が低下した場合には、フッ素系の有機溶剤を用いてもよい。また、コーティング剤には、必要に応じて公知の他の添加剤、例えば、界面活性剤などのレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤を添加すると、コーティング剤の表面張力をコントロールすることができ、ハジキ、クレーター等の層形成時に生ずる表面欠陥を抑制することができる。
【0073】
硬化性樹脂を硬化させるための硬化処理としては、紫外線照射、加熱、電子線照射等の硬化処理が挙げられる。なお、塗膜に溶剤を含む場合には、通常、70〜200℃の範囲内で数十分、塗膜を加熱し、塗膜中に残留している溶剤を除いた後に、硬化処理を行うことが好ましい。紫外線照射による硬化としては、UVランプ(例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ)から200〜400nmの波長の紫外線を塗布液に短時間(数秒〜数十秒の範囲内)照射すればよい。また、電子線照射による硬化としては、300keV以下の自己遮蔽型の低エネルギー電子加速器から低エネルギー電子線を塗布液に照射すればよい。
【0074】
フッ素系化合物(b)およびフルオロシルセスキオキサン誘導体(c)は、疎水性雰囲気下(例えば空気中)において、空気と固体(または液体)の界面に集積しやすい性質を有する。これは、フッ素基を含む(b)(c)成分は、樹脂よりも高い疎水性を有するため、空気側に引き寄せられることによると考えられる。このため、コーティングの過程において、(b)(c)成分が表面層12の表面付近に集積し、(b)(c)成分の濃度は表面側に偏る。この結果、表面層12の表面付近は、
図1、
図2に示すように(b)(c)成分の濃度の傾斜構造を形成する。
また、(b)(c)成分は、防汚材料として優れた特性を有するため、表面層12の表面の防汚性を高めることができる。
【0075】
[積層体100、200]
本発明の第2の実施の形態に係る積層体100、200は、
図1、
図2に示すように、表面層12を備えた基材フィルム11と、粘着層13とを備える。積層体100、200は、製造時には剥離フィルム14を備えるが、被着体である物品の表面へ貼り付ける際には剥離フィルム14を剥がして用いる。
【0076】
[基材フィルム11]
基材フィルム11としては、熱可塑性樹脂で形成されたフィルムを用いることが望ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ノルボルネン系樹脂等の樹脂を挙げることができる。具体的には、熱可塑性ポリウレタン、ポリカプロラクトン(PCL)、アクリル酸重合体、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、または、これらの誘導体が好ましい。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組合せて用いてもよい。
さらに好ましくは、熱可塑性ポリウレタンである。熱可塑性ポリウレタンの例として、Argotec社製Argotec49510、Argotec49510−DV、日本マタイ社製エスマーURSPX86、エスマーURSPX93、エスマーURSPX98、シーダム社製DUS202、DUS213、DUS235、DUS501、DUS601、DUS605、DUS614、DUS203、DUS220、DUS701、XUS2086、XUS2098、DUS451、DUS450、日本ユニポリマー社製ユニグランドXN2001、XN2002、XN2004を挙げることができる。なかでも、ポリヒドロキシ化合物としてポリカプロラクトンポリオールを用いたポリカプロラクトン系熱可塑性ポリウレタンや、ポリカーボネートポリオールを用いたポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンや、ポリエーテルポリオールを用いたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
基材フィルム11の膜厚は特に制限するものではないが、本願発明を積層体として用いる場合には、基材フィルムの膜厚は好ましくは25〜300μmであり、より好ましくは100〜200μmである。基材フィルムの膜厚が25μm以上であると基材の機械的強度が充分であり、基材上に層を形成することが可能になる。また、膜厚が300μm以下であると、積層体の厚みが厚くなりすぎることがない。
【0077】
[表面層12]
表面層12は、まず硬化性組成物を含有するコーティング剤を基材フィルム11の面上に塗布する。乾燥・硬化により表面層12を形成する。表面層12では、空気との界面に(b)および/または(c)成分が集積して構成される。なお「硬化性組成物」とは、コーティング剤中の架橋成分(有効成分)であり、(a)(b)(c)(d)成分をいう。
表面層12の膜厚は典型的には1〜100μmであり、好ましくは10〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。表面層12の膜厚が1μm以上であると機械的強度が充分であり、膜厚が100μm以下であると、積層体の厚みが厚くなりすぎることがない。なお、基材フィルムに熱可塑性ポリウレタンを用いた場合は、熱可塑性ポリウレタンの柔軟性により表面層12の膜厚をさらに薄くすることができる。好ましい膜厚は1〜50μmであり、より好ましくは3〜30μmである。
【0078】
硬化性組成物を含有するコーティング剤のコーティングには、硬化性組成物を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法としては、グラビアコート法やダイコート法等を用いることができる。
グラビアコート法は、表面に凸凹の彫刻加工が施されたグラビアロールを塗布液に浸し、グラビアロール表面の凸凹部に付着したコーティング剤をドクターブレードで掻き落とし凹部に液を貯めることで正確に計量し、基材に転移させる方式である。グラビアコート法により、低粘度の液を薄くコーティングすることができる。
ダイコート法は、ダイと呼ばれる塗布用ヘッドから液を加圧して押出しながらコーティングする方式である。ダイコート法により、高精度なコーティングが可能となる。さらに、塗布時に液が外気にさらされないため、乾きによるコーティング剤の濃度変化などが起こりにくい。
その他のウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などを挙げることができる。コーティングする方法は、これらの方法から必要とする膜厚に応じて適宜選択することができる。さらに、ウェットコーティング法を用いることにより、毎分数十メートルのライン速度(例えば約20m/分)でコーティングできるため、大量に製造でき、生産効率を上げることができる。
【0079】
[粘着層13/剥離フィルム14]
粘着層13は、
図1、
図2に示すように、表面層12により防汚処理した(または防汚処理する)基材フィルム11の逆面側に粘着剤を塗布して形成される。基材フィルム11の面上に直接形成してもよく、基材フィルム11との間に他層を介して積層してもよい。
粘着層13に用いる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを使用することが可能である。製品設計の面から長期間の耐久性を必要とする用途では耐熱性・耐候性に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0080】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステルを主体とするモノマー成分にカルボキシル基やヒドロキシル基などの官能基を有するモノマー成分を共重合したアクリル系共重合体を含むアクリル系粘着剤を挙げることができる。
アクリル酸エステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種または2種以上を用いることができる。
【0081】
上記アルキル(メタ)アクリレートに下記モノマー成分を共重合することができる。共重合可能なモノマー成分としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシへキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルピロリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素モノマー、スチレンやスチレンの誘導体、酢酸ビニル等のモノマー等が挙げられる。これらのモノマーを必要に応じて、1種または2種以上を、(メタ)アクリル酸エステルに共重合させて使用することができる。
【0082】
本発明に用いられる粘着剤は、例えば、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルからなる群から選ばれた少なくとも1種類と、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれた少なくとも1種類のカルボキシル基含有モノマーを含むことが好ましい。
本発明に用いられる粘着剤は、耐熱性・耐候性の向上に、例えば、アクリル酸メチルおよび酢酸ビニル等の硬質成分を添加しガラス転移温度(Tg)を上げた。このようなガラス転移温度の調整に用いる硬質成分としては、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルが挙げられる。
なお、耐候性等の各種物性のさらなる向上のため、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤等を添加してもよい。
硬質成分の割合としては、粘着剤全量に対して10〜80重量%であり、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。
【0083】
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は5万〜200万であり、10万〜150万が好ましく、15万〜100万がより好ましい。
数平均分子量(Mn)は1万〜50万であり、1万〜40万が好ましく、1万〜30万にがより好ましい。
分散値は1〜20であり、1〜15が好ましく、2〜10がより好ましい。
ガラス転移温度は−70〜0℃であり、−40〜0℃が好ましく、−30〜0℃がより好ましく、−20〜0℃が特に好ましい。
【0084】
粘着層13となる組成物を剥離フィルム14または基材フィルム11に塗布するには、通常行われているグラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ホットメルトコート法、カーテンコート法等で行うことができる。
粘着層13の厚みは、貼り付け後の密着性の面から10μm〜100μmであり、15μm〜50μmが好ましく、25μm〜45μmがより好ましい。
【0085】
剥離フィルム14としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などのプラスチックフィルム、セロハン、グラシン紙などの目止処理された紙を用いることができる。さらに、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤を片面または両面にコーティングした、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンの樹脂フィルム等を用いることができる。
剥離フィルムの厚さは使用する材料によって多少異なるが、通常は10〜250μmであり、20〜200μmが好ましい。
【0086】
本願の積層体は、表面層により優れた自己修復性、高い撥水性・防汚性、さらに伸張性、滑り性を有する。また、表面層により表面を平滑にでき、反射率を抑えられ、光沢感を持たせることができる。また、被着体に貼りつけるまでは、粘着層の粘着面は剥離性の高い剥離フィルムにより保護されるため、粘着性を劣化させることなく流通、運搬することができる。
【0087】
[表面保護物品]
本発明の第3の実施の形態に係る表面保護物品について説明する。本願の積層体を貼付する被着体としての物品には、例えば、自動車、航空機、船舶等を挙げることができる。これらの物品の各種本体部分、特に飛んでくる破片(例えば、砂、石など)、昆虫類などの危険に晒される部分(例えば、前側フードの先端および他の先端表面、ロッカーパネル等)の塗面保護に有効である。
さらに、例えば、窓、建築材、デジタルサイネージ、包装、オフィス用品に利用でき、エレクトロニクス、保安、産業等の幅広い分野で利用できる。さらに、介護、医療分野において、廃棄物のパッキングや、医療機器表面の保護等にも応用できる。加えて、保護された物品の表面を平滑にできるため、意匠性を向上させることができる。
【実施例】
【0088】
≪試験1≫
[製造例1:ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(a)の合成]
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(商品名:デスモジュール(登録商標)、住化バイエルウレタン(株)製)を306g(1.2モル)、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたポリカーボネートジオール(商品名:ETERNACOLL(登録商標)UC−100、宇部興産(株)製)を1000g(1モル)、2−ブタノン(MEK、メチルエチルケトン)1700gを仕込み、70℃〜80℃の条件にて反応を行い、所定の残存イソシアネート濃度になるまで反応させた。次いで、2−ヒドロキシエチルアクリレート(商品名:BHEA、(株)日本触媒製)255g(2.2モル)および重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル(商品名:MQ、川口化学工業(株)製)0.85gを添加後、さらに70℃〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1重量%になるまで反応させ、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート樹脂(a)を得た。さらに、MEK642gを追加して、固形分濃度40重量%に調整した。得られた重合体のGPC分析により求めた重量平均分子量は100,000であった。
【0089】
[製造例2:重合性官能基を有するフッ素系化合物(b)の合成]
窒素雰囲気下、室温にてパーフルオロポリエーテルとして両末端が水酸基のSo
lvay Solexis製Fomblin Zdol−4000(平均分子量4000)50gをヘキサフロロ−m−キシレン(70g)に溶解し、これに、アクリロイルオキシエチルイソシアナート(商品名:カレンズAOI、昭和電工(株)製)3.5gを添加し、窒素雰囲気下45℃まで加熱した。ジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成(株)製)0.076gをメチルエチルケトン(和光純薬(株)製)0.55gに溶かした溶液を滴下し、45℃〜50℃で2時間攪拌した。さらに、ジラウリン酸ジブチルスズ(東京化成(株)製)0.043gをメチルエチルケトン(和光純薬(株)製)0.55gに溶かした溶液を添加し、同温度で2時間攪拌した。その後、反応液を氷冷し、メタノール(2.0g)を滴下した。同温度で30分攪拌し、メチルエチルケトン(7.4g)で希釈をおこない、両末端に重合性官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(b)の溶液を得た。(134g 固形分40重量%)
【0090】
[製造例3:フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)の合成;重合体A−1の合成]
還流器、滴下漏斗を取り付けた窒素シールされた4口丸底フラスコ中に下記化合物A(25g)、サイラプレーンFM0721(6.3g、JNC(株)製)、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル(18.8g)、メタクリル酸メチル(12.5g)、メチルエチルケトン(62g)を加え、オイルバスを用い15分還流・脱気させた後、アゾビスイソブチロニトリル(0.48g)、メルカプト酢酸(0.054g)をメチルエチルケトン(4.8g)に溶解させた溶液を投入し、重合を開始させた。重合開始3時間後にアゾビスイソブチロニトリル(0.48g)をメチルエチルケトン(4.3g)に溶解させ添加し、5時間熟成させ得られた共重合体の溶液を得た。さらに重合禁止剤としてパラメトキシフェノール(0.16g)、ジラウリル酸ジブチルスズ(0.15g、昭和電工(株)製)をメチルエチルケトン(1.5g)に溶解させ添加した後、カレンズAOI(26.4g)を液温35℃から50℃となるように滴下漏斗を用いて滴下し、滴下後3時間45℃で熟成させた。
その後メタノール(9g)を添加し処理した後、さらにパラメトキシフェノール(0.16g)を加え、これをメチルイソブチルケトン(107.3g)で希釈することで目的とする重合体(A−1)の30重量%溶液を得た。
得られた重合体(A−1)は、重量平均分子量:Mw42,000、多分散指数:Mw/Mn1.9であった。重量平均分子量、多分散指数は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、型番:アライアンス2695、ウォーターズ社製、カラム:Shodex GPC KF−804L × 2本(直列)、ガードカラム:KF−G)を用いて測定した。
【0091】
化合物Aは、下記式(5)に示される分子構造を有する。
【0092】
【化6】
【0093】
[製造例4:コーティング剤Aの調製]
紫光UV1700B(固形成分100重量%、分子量2,000、日本合成化学(株)製)30g、メチルイソブチルケトン68.5g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5gを0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a’))30重量%のコーティング剤Aを得た。コーティング剤Aは、ウレタンアクリレートのモノマーを含む。
【0094】
[製造例5:コーティング剤Bの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)75g、メチルイソブチルケトン23.5g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a))30重量%のコーティング剤Bを得た。コーティング剤Bは、(a)成分を含む。
【0095】
[製造例6:コーティング剤Cの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)71.3g、フッ素系化合物(b)3.8g、メチルイソブチルケトン23.6g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5gを0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b))30重量%のコーティング剤Cを得た。コーティング剤Cは、(a)(b)成分を含む。
【0096】
[製造例7:コーティング剤Dの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)74.3g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)1g、メチルイソブチルケトン23.3g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(c))30重量%のコーティング剤Dを得た。コーティング剤Dは、(a)(c)成分を含む。
【0097】
[製造例8:コーティング剤Eの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)70.5g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)1g、メチルイソブチルケトン23.3g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Eを得た。コーティング剤Eは、(a)(b)(c)成分を含む。
【0098】
[製造例9:粘着剤Aの調製]
アクリル酸ブチル40〜55重量部、アクリル酸メチル40〜55重量部、酢酸ビニル1〜15重量部およびカルボキシル基含有アクリル酸化物0.1〜3重量部を含む共重合体であるアクリル粘着剤Aに酢酸エチル30重量部を加え、撹拌羽で30分、23℃で撹拌し、固形分23重量%、粘度1000CPSに調整した。粘着剤Aの重量平均分子量(Mw)は55万、ガラス転移温度は−16℃である。
【0099】
[実施例1:積層体1の調製]
片面に50μmのポリエチレンテレフタラート製保護フィルムを貼り合わせた熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:Argotec 49510、Argotec社製、厚み6mil=152.4μm)の熱可塑性ポリウレタンフィルム上に、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、30μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、50μmのポリエチレンテレフタラート製保護フィルムを引き剥がし、その面にコーティング剤CをコーティングロッドNo.8(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm
2)光硬化させ、塗膜厚が5μmの表面層を有する積層体1を得た。
【0100】
[実施例2:積層体2の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Eを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体2を得た。
【0101】
[比較例1:積層体3の調製]
片面に50μmのポリエチレンテレフタラート製保護フィルムを貼り合わせた熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:Argotec 49510、Argotec社製、厚み6mil=152.4μm)の熱可塑性ポリウレタンフィルム上に、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、30μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行い、積層体3を得た。
【0102】
[比較例2:積層体4の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Aを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体4を得た。
【0103】
[比較例3:積層体5の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Bを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体5を得た。
【0104】
[比較例4:積層体6の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Dを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体6を得た。
【0105】
[試験方法]
(1)自己修復性:真鍮ブラシ傷復元性テスト
幅40mm、長さ130mmの大きさに裁断した積層体の剥離フィルムを引き剥がし、水1Lにベビーシャンプー(ベビー全身シャンプー、ジョンソン・エンド・ジョンソン製)を2〜3滴混合した水溶液をスプレーにて粘着層面側、表面および自動車用黒色塗料が塗布されている塗装板(幅50mm、縦150mm、厚み1.2mm)上へ吹きつけ、積層体の粘着層面をゴム製のスキージで、気泡、水泡を押し出しながら、塗装板に貼り付けた。その後、粘着層面と塗装板に残存する気泡、水泡が目視にて無くなるまで室温で放置することでサンプルを得た。自己修復試験は、4行真鍮ブラシ(AS ONE)を用いて、試験片の表面を荷重1000kgf、速度3000mm/min、片道100mmの距離、10往復(表面性試験機 HEIDON Type:14W新東科学(株)製)擦った後、真鍮ブラシを速やかに除去して表面についた擦傷が消失するまでの時間を観察した。
○:1分以内に擦傷が消失した。
×:1分超えても擦傷が消失しなかった。
(2)撥水性:接触角測定
積層体の表面層を、プローブ液体として蒸留水(窒素・りん測定用、関東化学(株)製)を用い、接触角計(Drop Master 400、協和界面科学(株)製)を使用して、積層体の表面層の水の接触角を測定した。
(3)防汚性(撥油性):マジックインキ拭き取りテスト
積層体の表面層を黒色油性マーカー(Sharpie製)で描画し、油性インキのはじき、およびダスパーK−3(小津産業(株)製)での拭き取り性を評価した。
○:インキがはじかれ、きれいに拭き取れた。
×:拭き取れなかった。
(4)伸長性:引張試験破断伸び率
幅35mm、長さ200mmの大きさに裁断した積層体の剥離フィルムを引き剥がし、引張試験機(ストログラフVG、(株)東洋精機製作所製)の上下のクロスヘッドにチャック間距離が100mmになるように設置し、クロスヘッド速度127mm/分で上方に移動させ、目視にて表面にクラックが発生する移動距離を測定し、下記式にて破断伸び率を算出した。
破断伸び率(%)=クロスヘッド移動距離(mm)/チャック間距離(mm)×100
(5)滑り性:スキージ摺動テスト
幅40mm、長さ130mmの大きさに裁断した積層体の剥離フィルムを引き剥がし、水1Lにベビーシャンプー(ベビー全身シャンプー、ジョンソン・エンド・ジョンソン製)を2〜3滴混合した水溶液をスプレーにて粘着層面側、表面および自動車用黒色塗料が塗布されている塗装板(幅50mm、縦150mm、厚み1.2mm)上へ吹きつけ、積層体の粘着層面をゴム製のスキージで、気泡、水泡を押し出しながら、塗装板に貼り付けた。
○:スムーズに貼り付けられた。
×:ひっかかりが発生した。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例1、2の処方にて自己修復性、撥水撥油性(防汚性)、伸長性の性能の両立が付与される。また、実施例2においてさらに表面の滑り性が向上する。
【0108】
≪試験2≫
[製造例10:コーティング剤Fの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)74.2g、フッ素系化合物(b)0.1g、メチルイソブチルケトン23.3g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b))30重量%のコーティング剤Fを得た。コーティング剤Fは、(a)(b)成分を含む。
【0109】
[製造例11:コーティング剤Gの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)73.5g、フッ素系化合物(b)0.8g、メチルイソブチルケトン23.3g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b))30重量%のコーティング剤Gを得た。コーティング剤Gは、(a)(b)成分を含む。
【0110】
[製造例12:コーティング剤Hの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)69.0g、フッ素系化合物(b)5.3g、メチルイソブチルケトン23.4g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b))30重量%のコーティング剤Hを得た。コーティング剤Hは、(a)(b)成分を含む。
【0111】
[製造例13:コーティング剤Iの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)66.8g、フッ素系化合物(b)7.5g、メチルイソブチルケトン23.4g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b))30重量%のコーティング剤Iを得た。コーティング剤Iは、(a)(b)成分を含む。
【0112】
[実施例3:積層体7の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Fを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体7を得た。
【0113】
[実施例4:積層体8の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Gを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体8を得た。
【0114】
[実施例5:積層体9の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Hを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体9を得た。
【0115】
[実施例6:積層体10の調製]
コーティング剤Cのかわりにコーティング剤Iを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体10を得た。
【0116】
[試験方法]
試験方法は≪試験1≫と同様とする。
【0117】
【表2】
【0118】
(a)(b)成分の重量比((a):(b))において、(b)成分の割合が1〜7重量部のときに性能を発揮する。
【0119】
≪試験3≫
[製造例14:コーティング剤Jの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)71.2g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)0.01g、メチルイソブチルケトン23.6g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Jを得た。コーティング剤Jは、(a)(b)(c)成分を含む。
【0120】
[製造例15:コーティング剤Kの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)71.2g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)0.1g、メチルイソブチルケトン23.6g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Kを得た。コーティング剤Kは、(a)(b)(c)成分を含む。
【0121】
[製造例16:コーティング剤Lの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)69.0g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)3g、メチルイソブチルケトン22.9g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Lを得た。コーティング剤Lは、(a)(b)(c)成分を含む。
【0122】
[製造例17:コーティング剤Mの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)67.5g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)5g、メチルイソブチルケトン22.4g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、を0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Mを得た。コーティング剤Mは、(a)(b)(c)成分を含む。
【0123】
[実施例7:積層体11の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Jを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体11を得た。
【0124】
[実施例8:積層体12の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Kを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体12を得た。
【0125】
[実施例9:積層体13の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Lを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体13を得た。
【0126】
[実施例10:積層体14の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Mを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体14を得た。
【0127】
[試験方法]
試験方法は≪試験1≫と同様とする。
【0128】
【表3】
【0129】
(a)(b)(c)成分の重量比((a):(b):(c))において、(c)成分の割合が0.1〜5重量部のときに性能を発揮する。
【0130】
≪試験4≫
[実施例11:積層体15の調製]
コーティングロッドNo.8のかわりにNo.4を用いる以外は積層体2と同様にして、塗膜厚3μmの積層体15を得た。
【0131】
[実施例12:積層体16の調製]
コーティングロッドNo.8のかわりにNo.16を用いる以外は積層体2と同様にして、塗膜厚10μmの積層体16を得た。
【0132】
[実施例13:積層体17の調製]
コーティングロッドNo.8のかわりにNo.30を用いる以外は積層体2と同様にして、塗膜厚20μmの積層体17を得た。
【0133】
[実施例14:積層体18の調製]
コーティングロッドNo.8のかわりにNo.55を用いる以外は積層体2と同様にして、塗膜厚30μmの積層体18を得た。
【0134】
[試験方法]
試験方法は≪試験1≫と同様とする。
【0135】
【表4】
【0136】
表面層の膜厚が5μm以上のときに性能を発揮する。
【0137】
≪試験5≫
[製造例18:コーティング剤Nの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)70.5g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)1g、メチルイソブチルケトン20.4g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、紫外線吸収剤(f)(商品名:Tinuvin384−2、BASF社製、固形分95重量%)3gを0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Nを得た。コーティング剤Nは、(a)(b)(c)(f)成分を含む。
【0138】
[製造例19:コーティング剤Oの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)70.5g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)1g、メチルイソブチルケトン20.4g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、光安定剤(f)(商品名:Tinuvin292、BASF社製、固形分100重量%)2.8gを0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Oを得た。コーティング剤Oは、(a)(b)(c)(f)成分を含む。
【0139】
[製造例20:コーティング剤Pの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)70.5g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)1g、メチルイソブチルケトン4.5g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、無機フィラー(f)(商品名:コバルトブルー、CIKナノテック社製、固形分15重量%)18.8gを0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Pを得た。コーティング剤Pは、(a)(b)(c)(f)成分を含む。
【0140】
[製造例21:コーティング剤Qの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)70.5g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)1g、メチルイソブチルケトン17.6g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、紫外線吸収剤(f)(商品名:Tinuvin384−2、BASF社製、固形分95重量%)3g、光安定剤(f)(商品名:Tinuvin292、BASF社製、固形分100重量%)2.8gを0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Qを得た。コーティング剤Qは、(a)(b)(c)(f)成分を含む。
【0141】
[製造例22:コーティング剤Rの調製]
ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂(a)70.5g、フッ素系化合物(b)3.8g、フルオロシルセスキオキサン誘導体(c)1g、メチルイソブチルケトン0.1g、光重合開始剤(d)(商品名:イルガキュア184、BASF社製)1.5g、紫外線吸収剤(f)(商品名:Tinuvin384−2、BASF社製、固形分95重量%)3g、光安定剤(f)(商品名:Tinuvin292、BASF社製、固形分100重量%)2.8g、無機フィラー(f)(商品名:コバルトブルー、CIKナノテック社製、固形分15重量%)18.8gを0.3Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分(a)(b)(c))30重量%のコーティング剤Rを得た。コーティング剤Rは、(a)(b)(c)(f)成分を含む。
【0142】
[実施例15:積層体19の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Nを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体19を得た。
【0143】
[実施例16:積層体20の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Oを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体20を得た。
【0144】
[実施例17:積層体21の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Pを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体21を得た。
【0145】
[実施例18:積層体22の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Qを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体22を得た。
【0146】
[実施例19:積層体23の調製]
コーティング剤Eのかわりにコーティング剤Rを用いる以外は積層体2と同様にして、積層体23を得た。
【0147】
[試験方法]
試験方法は≪試験1≫と同様とする。
【0148】
【表5】
【0149】
(f)成分を添加した場合も、自己修復性、撥水撥油性(防汚性)、伸長性、表面の滑り性への影響はない。
【0150】
≪試験6≫
[実施例20:積層体24の調製]
熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:Argotec49510、Argotec社製、厚み6mil=152.4μm)のかわりに熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:エスマーURS PX98、日本マタイ社製、厚み150μm)を用いる以外は積層体2と同様にして、積層体24を得た。
【0151】
[実施例21:積層体25の調製]
熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:Argotec49510、Argotec社製、厚み6mil=152.4μm)のかわりに熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:XUS2098、シーダム社製、厚み150μm)を用いる以外は積層体2と同様にして、積層体25を得た。
【0152】
[実施例22:積層体26の調製]
熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:Argotec49510、Argotec社製、厚み6mil=152.4μm)のかわりに熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:DUS451、シーダム社製、厚み150μm)を用いる以外は積層体2と同様にして、積層体26を得た。
【0153】
[比較例5:積層体27の調製]
熱可塑性ポリウレタンフィルム(商品名:Argotec49510、Argotec社製、厚み6mil=152.4μm)のかわりにポリエステルフィルム(商品名:ルミラーT60、東レ社製、厚み125μm)を用いる以外は積層体2と同様にして、積層体27を得た。
【0154】
[試験方法]
試験方法は≪試験1≫と同様とする。
【0155】
【表6】
【0156】
熱可塑性ポリウレタンフィルムを基材に用いると、その種類に関わらず伸長性の良い積層体が得られる。
【0157】
≪試験7≫
[製造例23:被着体Aの作成]
ポリカーボネートシート(商品名:PC1151、帝人社製、パンライト厚み:2mm、幅:70mm、長さ:150mm)の片面をサンドペーパー(#800)を用いて傷を付け、被着体Aを作成した。
【0158】
[実施例23:試験体Aの作成]
幅40mm、長さ130mmの大きさに裁断した積層体2の剥離フィルムを引き剥がし、水1Lにベビーシャンプー(ベビー全身シャンプー、ジョンソン・エンド・ジョンソン製)を2〜3滴混合した水溶液をスプレーにて粘着層面側、表面およびポリカーボネートシート(商品名:PC1151、帝人社製、パンライト厚み:2mm、幅:70mm、長さ:150mm)上へ吹きつけ、積層体の粘着層面をゴム製のスキージで、気泡、水泡を押し出しながら、ポリカーボネートシートに貼り付け、試験体Aを作成した。
【0159】
[実施例24:試験体Bの作成]
ポリカーボネートシート(商品名:PC1151、帝人社製、パンライト厚み:2mm、幅:70mm、長さ:150mm)のかわりに被着体Aを用いる以外は実施例23と同様にして試験体Bを作成した。
【0160】
[試験方法]
(1)光学特性:全光線透過率とヘイズ
ヘイズメーター(スガ試験機Hz−2)を用いて、試料測定室内の積分球の開口側に試料押さえでセットし、全光線透過率とヘイズを測定した。(JIS K7105)
(2)耐久性:チッピング試験
簡易チッピング試験機(JNC自作)を用いて、粉砕石(7号)50gを時速40kmで衝突させ、目視にて基材の外観を確認した。基材に積層体が貼り付けている場合は、基材からフィルムを引き剥がし外観を確認した。
○:傷なし
×:傷有り
【0161】
【表7】
【0162】
積層体の貼り付けにより表面を平滑にできるためヘイズ値が低下し、被着体の意匠性が向上する。また、積層体の貼り付けにより、基材を保護でき耐久性が向上する。
【0163】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ程度で、参照してここに組み込む。
【0164】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0165】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを予期しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の変更および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。