【実施例】
【0047】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、水酸基価は、樹脂試料1gをJIS K−0070の規定の方法に基づきアセチル化剤を用いて、規定温度及び時間で反応させた時に生成した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を測定した。
【0048】
(合成例1:ビニルエステル(A−1)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)661質量部、ビスフェノールA 58.8質量部、及び2−メチルイミダゾール0.36質量部を仕込み、120℃に昇温して3時間反応させ、エポキシ当量を測定した。エポキシ当量が設定通り240になったことを確認後、60℃付近まで冷却した後、メタクリル酸253質量部、及びt−ブチルハイドロキノン0.28質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール0.25質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下になったので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価206mg/KOHのビニルエステル(A−1)を得た。
【0049】
(合成例2:ビニルエステル(A−2)の合成)
合成例1と同様のフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)667質量部、ビスフェノールA 96.9質量部、及び2−メチルイミダゾール0.38質量部を仕込み、120℃に昇温して3時間反応させ、エポキシ当量を測定した。エポキシ当量が設定通り283になったことを確認後、60℃付近まで冷却した後、メタクリル酸228質量部、及びt−ブチルハイドロキノン0.29質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール0.23質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下になったので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価204mgKOH/gのビニルエステル(A−2)を得た。
【0050】
(合成例3:ビニルエステル(A−3)の合成)
合成例1と同様のフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)656質量部、ビスフェノールA 147質量部、及び2−メチルイミダゾール0.4質量部を仕込み、120℃に昇温して3時間反応させ、エポキシ当量を測定した。エポキシ当量が設定通り365になったことを確認後、60℃付近まで冷却した後、メタクリル酸185質量部、及びt−ブチルハイドロキノン0.29質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール0.18質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下になったので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価202mgKOH/gのビニルエステル(A−3)を得た。
【0051】
(合成例4:ビニルエステル(A−4)の合成)
合成例1と同様のフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)677質量部、メタクリル酸310質量部、及びt−ブチルハイドロキノン0.29質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール0.60質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下になったので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価213mgKOH/gのビニルエステル(A−4)を得た。
【0052】
(合成例5:ビニルエステル(RA−1)の合成)
合成例1と同様のフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン 850−CRP」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量170)680質量部、メタクリル酸337質量部、及びt−ブチルハイドロキノン0.29質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール0.67質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下になったので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価210mgKOH/gのビニルエステル(RA−1)を得た。
【0053】
(実施例1:繊維強化成形材料(1)の作製及び評価)
合成例1で得たビニルエステル(A−1)60質量部をフェノキシエチルメタクリレート40質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(三井化学株式会社製「コスモネートLL」、以下、「ポリイソシアネート(C−1)」と略記する。)23.3質量部、及び重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製「カヤカルボンAIC−75」、有機過酸化物、以下、「重合開始剤(D−1)」と略記する。)1部を混合し、樹脂組成物(X−1)を得た。この樹脂組成物(X−1)における
モル比(NCO/OH)は0.71であった。
【0054】
上記で得られた樹脂組成物(X−1)を、ポリエチレンとポリプロピレンのラミネートフィルム上に塗布量が平均1kg/m
2となるよう塗布し、この上に、炭素繊維ロービング(東レ株式会社製「T700SC−12000−50C」)を25mmにカットした炭素繊維(以下、炭素繊維(E−1)と略記する。)を繊維方向性が無く厚みが均一で炭素繊維含有率が50質量%になるよう空中から均一落下させ、同様に樹脂組成物(X−1)を塗布したフィルムで挟み込み炭素繊維に樹脂を含浸させた後、45℃恒温機中に24時間放置し、シート状の繊維強化成形材料(1)を得た。このシート状の繊維強化成形材料(1)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0055】
[取り扱い性(フィルム剥ぎ性)の評価]
上記で得られた繊維強化成形材料(1)を室温でフィルムから剥がす際の取り扱い性を下記の基準に従って評価した。
○:フィルムに樹脂の付着がなし
△:フィルムに樹脂の付着が少しあり
×:フィルムに樹脂の付着があり
【0056】
[取り扱い性(タック性)の評価]
上記で得られた繊維強化成形材料(1)を室温でフィルムから剥がした後のタック性を下記の基準に従って評価した。
○:指に成形材料の付着がなし
△:指に成形材料の付着が少しあり
×:指に成形材料の付着があり
【0057】
[成形品の作製]
上記で得られたシート状の繊維強化成形材料(1)をフィルムから剥離し、30cm×15cmにカットしたものを3枚重ね、30×30cm
2の平板金型の左半分にセットし、プレス金型温度150℃、プレス時間2分間、プレス圧力8MPaで成形し、厚み2mmの平板状の成形品(1)を得た。
【0058】
[成形性(流動性)の評価]
上記の成形品(1)作製時の成形性を下記の基準に従い評価した。
○:成形材料の流動性あり、成形品欠損なし
×:成形材料の流動性不十分で、成形品欠損あり
【0059】
[成形性(外観)の評価]
上記で得られた成形品(1)のうち、繊維強化成形材料(1)が金型内に流動して得られた右半分について、外観を目視により下記の基準に従い評価した。
○:ふくれなし
×:ふくれあり
【0060】
[曲げ強さ・曲げ弾性率の評価]
上記で得られた成形品(1)のうち、繊維強化成形材料(1)が流動して得られた右半分について、JIS K7074に準拠し、3点曲げ試験を行い、曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。
【0061】
(実施例2:繊維強化成形材料(2)の作製及び評価)
合成例2で得たビニルエステル(A−2)55質量部をフェノキシエチルメタクリレート45質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)21.9質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(X−2)を得た。この樹脂組成物(X−2)におけるモル比(NCO/OH)は0.74であった。
【0062】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(X−2)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(2)を作製し、各評価を行った。
【0063】
(実施例3:繊維強化成形材料(3)の作製及び評価)
合成例2で得たビニルエステル(A−2)55質量部をベンジルメタクリレート45質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)21.9質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(X−3)を得た。この樹脂組成物(X−3)におけるモル比(NCO/OH)は0.74であった。
【0064】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(X−3)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(3)を作製し、各評価を行った。
【0065】
(実施例4:繊維強化成形材料(4)の作製及び評価)
合成例3で得たビニルエステル(A−3)50質量部をフェノキシエチルメタクリレート50質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)14.6質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(X−4)を得た。この樹脂組成物(X−4)におけるモル比(NCO/OH)は0.55であった。
【0066】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(X−4)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(4)を作製し、各評価を行った。
【0067】
(実施例5:繊維強化成形材料(5)の作製及び評価)
合成例4で得たビニルエステル(A−4)60質量部をフェノキシエチルメタクリレート40質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)24.9質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(X−5)を得た。この樹脂組成物(X−5)におけるモル比(NCO/OH)は0.74であった。
【0068】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(X−5)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(5)を作製し、各評価を行った。
【0069】
(比較例1:繊維強化成形材料(R1)の作製及び評価)
合成例3で得たビニルエステル(A−3)55質量部をスチレン45質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)10.7質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(RX−1)を得た。この樹脂組成物(RX−1)におけるモル比(NCO/OH)は0.37であった。
【0070】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(RX−1)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(R1)を作製し、各評価を行った。
【0071】
(比較例2:繊維強化成形材料(R2)の作製及び評価)
合成例3で得たビニルエステル(A−3)70質量部をメチルメタクリレート30質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)10.7質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(RX−2)を得た。この樹脂組成物(RX−2)におけるモル比(NCO/OH)は0.29であった。
【0072】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(RX−2)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(R2)を作製し、取り扱い性及び成形性の評価を行った。
【0073】
(比較例3:繊維強化成形材料(R3)の作製及び評価)
合成例5で得たビニルエステル(RA−1)60質量部をフェノキシエチルメタクリレート40質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)24.2質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(RX−3)を得た。この樹脂組成物(RX−3)におけるモル比(NCO/OH)は0.74であった。
【0074】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(RX−3)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(R3)を作製し、取り扱い性の評価を行った。
【0075】
(比較例4:繊維強化成形材料(R4)の作製及び評価)
合成例1で得たビニルエステル(A−1)35質量部をフェノキシエチルメタクリレート65質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)15.4質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(RX−4)を得た。この樹脂組成物(RX−4)におけるモル比(NCO/OH)は0.80であった。
【0076】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(RX−4)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(R4)を作製し、取り扱い性の評価を行った。
【0077】
(比較例5:繊維強化成形材料(R5)の作製及び評価)
合成例2で得たビニルエステル(A−2)55質量部をフェノキシエチルメタクリレート45質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)28.1質量部、及び重合開始剤(D−1)1部を混合し、樹脂組成物(RX−5)を得た。この樹脂組成物(RX−5)におけるモル比(NCO/OH)は0.95であった。
【0078】
実施例1で用いた樹脂組成物(X−1)を樹脂組成物(RX−5)に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、繊維強化成形材料(R5)を作製し、取り扱い性及び成形性の評価を行った。
【0079】
上記で得られた繊維強化成形材料(1)〜(5)の評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
上記で得られた繊維強化成形材料(R1)〜(R5)の評価結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
実施例1〜5の本発明の繊維強化成形材料は、取り扱い性及び成形性に優れ、得られる成形品は曲げ強さ及び曲げ弾性率に優れることが確認された。
【0084】
一方、比較例1は不飽和単量体として、引火点が100℃未満であるスチレンを用いた例であるが、成形品にふくれが生じた。また、金型内流動部の曲げ強さに劣ることが確認された。
【0085】
比較例2は不飽和単量体として、引火点が100℃未満であるメチルメタクリレートを用いた例であるが、成形性に劣ることが確認された。そのため、曲げ強さ・曲げ弾性率の評価に進めなかった。
【0086】
比較例3はエポキシ樹脂のエポキシ当量が下限である180未満の例であるが、取り扱い性に劣ることが確認された。そのため、成形評価に進めなかった。
【0087】
比較例4は質量比((A)/(B))が40/60〜85/15の範囲外である例であるが、取り扱い性に劣ることが確認された。そのため、成形評価に進めなかった。
【0088】
比較例5はモル比(NCO/OH)が上限である0.85より大きい例であるが、成形性に劣ることが確認された。そのため、曲げ強さ、曲げ弾性率の評価に進めなかった。