(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルコキシシラン誘導体化合物は、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート及びトリメトキシシリルエチルスチレンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のコア−シェル構造の重合体粒子。
前記架橋剤は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、アリールメタクリレート及び1,3−ブチレングリコールジアクリレートからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のコア−シェル構造の重合体粒子。
前記ゴムは、ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、天然ゴム、イソプレン系ゴム、ニトリルゴム、ウレタン系ゴム、ブチル系ゴム及びこれら組合せからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項9に記載のゴム組成物。
【背景技術】
【0002】
ゴムは、独特な粘弾性的性質によって多くの分野で手広く用いられており、最近には用途によってより良い特性を発現するために多様な添加剤を用いて特定の特性を表すゴムを製造して用いている。
【0003】
特に、タイヤ産業においてゴムは、タイヤを製造するのに用いられる必須材料であって、タイヤを構成する多くの部品及び部位がゴムからなっているので、タイヤの性能はゴムの特性によって多くの影響を受けている。
【0004】
タイヤは多様な性能を必要とし、このうち特に重要な特性は、乾燥表面及び湿潤表面に対する優れた凝着力である。すなわち、滑り抵抗、回転抵抗及び摩耗性が適切に均衡をなすことが重要である。しかし、タイヤの回転抵抗及び摩耗性を損傷させずに滑り抵抗を改善させることは非常に難しい。ここで、滑り抵抗は、制動性能のために重要であり、回転抵抗は燃料性能、耐磨耗性はタイヤ寿命に決定的な因子である。
【0005】
一般的に、タイヤの滑り抵抗(制動性能)と回転抵抗(燃費性能)は、タイヤの製造に用いられたゴムの粘弾性特性によって大きく変化する。粘弾性特性の中で0℃における動的損失係数(tan δ)は湿潤滑り抵抗(濡れた路面での制動性能)、60℃における動的損失係数は回転抵抗(燃費性能)と密接な関係を有している。具体的に、回転抵抗を低めるためにはタイヤ(特に、トレッド)に用いられるゴムが比較的高い温度(60℃から100℃)で高い反発弾性を有しなければならず、湿潤滑り抵抗を改善するためには、タイヤに用いられるゴムが低温(0℃)で高い減衰因子を有するとともに0℃から23℃範囲で低い反発弾性を有しなければならない。
【0006】
したがって、0℃における動的損失係数を湿潤滑り抵抗(制動性能)の対応値として、60℃における動的損失係数を回転抵抗(燃費性能)の対応値として用いるとき、0℃における動的損失係数が大きく、60℃における動的損失係数が小さいと、制動性能及び燃費性能を全て満たすことができることが分かる。
【0007】
前記複雑な要求プロファイルに符合するため、多様なゴムで構成された混合物をタイヤに用いている。通常の方法は比較的高いガラス転移温度を有する1種以上のゴム(例えば、スチレン−ブタジエンゴム)及び比較的低いガラス転移温度を有する1種以上のゴム(例えば、高い1,4−シス含量を有するポリブタジエン)、またはそれぞれ低いスチレン含量及び非常に低いビニル含量を有するスチレン−ブタジエンゴム、または低いビニル含量を有し、溶液中で製造されたポリブタジエンで構成された混合物を用いるものである。
【0008】
しかし、前記ゴム混合物は、タイヤの滑り抵抗(制動性能)、回転抵抗(燃費性能)及び耐磨耗性(タイヤ寿命)特性を全て満たすのに充分でなかったので、よってゴム材料にシリカを充填剤として配合して用いる方法が研究開発された。
【0009】
しかし、シリカは、それ自体で表面に機能基が過多に集中されて酸度が高く、充填剤−充填剤の間には高い反応性をみせて相対的に充填剤−ゴムとは低い反応性をみせることにより、理想的な加硫物性を得るためには特別な加工条件を必要とし、多量のカップリング剤を必要とするなどの多様な問題を抱いているので、広く用いられていない状況である。よって、このような問題を解決しようとする研究努力が多方面に進められている。
【0010】
前記のような背景の下で、本発明者らはゴムを必要とする多くの産業、特にタイヤ産業でタイヤ材料として容易に適用することができる、引張強度、引張伸び率などの機械的特性に優れるとともに、耐磨耗性(寿命特性)、回転抵抗性(燃費性能)及び湿潤滑り抵抗性(制動性能)が改善したゴムの研究中、ジエン系ラテックスコア上にビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物を含むシェルがグラフトされたコア−シェル構造の重合体粒子を製造し、これを含むゴム試片の特性を分析した結果、前記試片が優れた引張強度、引張伸び率、比重特性を有しながら、耐磨耗性、Payne effect、回転抵抗性及び湿潤滑り抵抗性が向上したことを確認することにより本発明を完成した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は通常的且つ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はそれ自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0021】
本発明は、ゴムの比重、引張強度、引張伸び率を改善させるとともに、耐磨耗性(寿命特性)、回転抵抗性(燃費性能)及び湿潤滑り抵抗性(wet slip resistance、制動性能)を向上させることができるコア−シェル構造の重合体粒子を提供する。
【0022】
ゴムは、独特の粘弾性的性質によって多くの分野で手広く用いられており、特にタイヤ全般に用いられる材料であって、タイヤ性能、例えば滑り抵抗性(制動性能)、回転抵抗性(燃費性能)及び耐磨耗性(寿命特性)を決定づける重要な要素として知られている。
【0023】
一般的に、タイヤの制動性能と燃費性能は、ゴムの粘弾性特性と高い相関関係を有し、粘弾性特性の中で0℃における動的損失係数は濡れた路面での制動性能(wet slip resistance)、60℃における動的損失係数は回転抵抗(rolling resistance)、すなわち、燃費性能と非常に密接な関係を有している。0℃における動的損失係数が高いほど制動性能が有利であり、60℃における動的損失係数が低いほど燃費性能で有利であるものと知られている。しかし、燃費性能を改善させるため、タイヤと路面との摩擦を減らすと、タイヤの制動性能が低下されるようになる。よって、制動性能と燃費性能を同時に満たすために、多様なゴムで構成された混合物をタイヤ(例えば、タイヤトレッド)に用いるか、ゴム混合物にシリカを配合する方法が研究開発された。
【0024】
しかし、シリカは、それ自体で表面に機能基が過多に集中されて酸度が高く、充填剤−充填剤の間に高い反応性をみせ、相対的に充填剤−ゴムとは低い反応性をみせることにより、理想的な加硫物性を得るためには特別な加工条件を必要とするとともに多量のカップリング剤を必要とする問題がある。また、シリカ物質自体の比重などの理由によって重合体との配合時に飛散されて分散が難しく、加硫物性では低調な摩耗性の問題など、多数の問題点を抱いているため、広く用いられていない状況である。
【0025】
よって、本発明は、ゴム用充填剤、特にタイヤ製造用ゴムの充填剤として用いられ、前記タイヤの比重、引張強度、引張伸び率を改善させるとともに、耐磨耗性、回転抵抗性及び湿潤滑り抵抗性を向上させることができる、ジエン系ラテックスコア及び前記コア上に形成されたビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物を含むグラフトシェルを含むコア−シェル構造の重合体粒子を提供する。
【0026】
本発明の一実施例による前記コア−シェル構造の重合体粒子は、ジエン系ラテックスコア40重量%から80重量%;及び前記コア上に形成されたビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物を含むグラフトシェル20重量%から60重量%を含み、前記グラフトシェルは60重量%から90重量%の前記ビニル化合物及び10重量%から40重量%のアルコキシシラン誘導体化合物を含むことを特徴とする。
【0027】
前記コア−シェル構造の重合体粒子の平均粒径は、30nmから100nmであり得る。
【0028】
本発明の一実施例による前記ジエン系ラテックスコアは、共役ジエン系単量体25重量%から55重量%;エチレン不飽和性芳香族単量体25重量%から55重量%;及び架橋剤10重量%から30重量%を含む単量体混合物から由来された重合体のものであり得る。
【0029】
また、前記ジエン系ラテックスコアは、共役ジエン系単量体とエチレン不飽和性芳香族単量体を7:3から3:7の重量比で含むことができ、好ましくは3:5から5:3の重量比で含むことができる。
【0030】
前記共役ジエン系単量体は、前記コア−シェル構造の重合体粒子のガラス転移温度を低める役割、すなわち優れた耐寒性を付与する物質として作用することができ、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群から選択された1種以上のものであり得る。好ましくは、ブタジエンであり得る。
【0031】
前記共役ジエン系単量体は、前記で言及したように前記ジエン系ラテックスコアに25重量%から55重量%で含まれ得る。もし、前記共役ジエン系単量体が25重量%未満で含まれる場合には、これを含む前記コア−シェル構造の重合体粒子のガラス転移温度が上昇することができ、結果的に前記粒子を含むゴム組成物の耐寒性が低下され得る。
【0032】
前記エチレン不飽和性芳香族単量体は、前記コア−シェル構造の重合体粒子のガラス転移温度が過度に低下されずに適切な数値を有し得るように調節する役割をすることができ、スチレン、α−メチルスチレン、イソプロピルフェニルナフタレン、ビニルナフタレン、C
1−3のアルキル基が置換されたアルキルスチレン及びハロゲンが置換されたスチレンからなる群から選択された1種以上のものであってもよい。好ましくはスチレンであってもよい。
【0033】
前記エチレン不飽和性芳香族単量体は、前記で言及したように前記ジエン系ラテックスコアに25重量%から55重量%で含まれ得る。もし、前記エチレン不飽和性芳香族単量体が
55重量%を超えて含まれる場合には、相対的に前記共役ジエン系単量体の含量が減少してガラス転移温度が上昇する問題が発生することができる。
【0034】
前記架橋剤は、前記ジエン系ラテックスコアの架橋度を調節する役割をすることができ、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、アリールメタクリレート及び1,3−ブチレングリコールジアクリレートからなる群から選択された1種以上を用いることができる。好ましくは、ジビニルベンゼンであってもよい。
【0035】
前記架橋剤は、前記で言及したように前記ジエン系ラテックスコアに10重量%から30重量%で含まれ得る。
【0036】
本発明による前記ジエン系ラテックスコアは、前記で言及したように前記コア−シェル構造の重合体粒子に40重量%から80重量%で含まれ得る。もし、前記ジエン系ラテックスコアが40重量%未満で含まれる場合には、これを含むゴム組成物から製造されたゴム成形品、例えばタイヤの湿潤滑り抵抗性(wet slip resistance)が低下され得る。
【0037】
本発明の一実施例によるビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物を含むグラフトシェルは、前記ジエン系ラテックスコアを取り囲んで形成されたものであり得、60重量%から90重量%の前記ビニル化合物及び10重量%から40重量%のアルコキシシラン誘導体化合物を含むことができる。
【0038】
前記ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、イソプロピルフェニルナフタレン、ビニルナフタレン、C
1−3のアルキル基が置換されたアルキルスチレン、ハロゲンが置換されたスチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸及びマレイミド系化合物からなる群から選択された1種以上のものであってもよく、好ましくはアルキルメタアクリレートであってもよい。さらに好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0039】
前記アルコキシシラン誘導体化合物は、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート及びトリメトキシシリルエチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはトリメトキシシリルプロピルメタクリレートであってもよい。
【0040】
一方、本発明の一実施例による前記コア−シェル構造の重合体粒子は、特に限定されず、当分野に通常公知された方法によって製造して用いるか、市販される物質を購入して用いることができる。
【0041】
例えば、前記コア−シェル構造の重合体粒子を製造して用いる場合には、前記コア−シェル構造の重合体粒子はジエン系ラテックスコアを製造し、前記製造されたジエン系ラテックスコアにビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物を含むシェルをグラフト共重合して製造することができる。
【0042】
具体的に、前記ジエン系ラテックスコアは特に限定されず、当分野に通常の方法によって製造され得るが、例えば共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族単量体及び架橋剤にイオン交換水、乳化剤、重合開始剤、電解質及び分子量調節剤などの添加剤を投入して乳化重合して製造したものであり得る。
【0043】
前記乳化重合は特に限定されず、当分野に公知された通常の方法によって行うことができるが、例えば共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族単量体及び架橋剤を含む単量体混合物にイオン交換水、乳化剤、重合開始剤、電解質及び分子量調節剤などの添加剤を一括的に反応器に投入して反応させるか、または重合転換率時点で分けて連続で投入しながら反応させて行うことができる。
【0044】
具体的に、共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族単量体及び架橋剤を含む単量体混合物、前記単量体混合物100重量部に対してイオン交換水150重量部から300重量部、乳化剤0.5重量部から4重量部、重合開始剤0.1重量部から1.5重量部、電解質0.5重量部から2重量部、分子量調節剤0.1重量部から1重量部を一括的に重合反応器に投入し、30℃から90℃の温度範囲で反応させる段階を含む方法によって行うことができる。このとき、前記単量体混合物及び架橋剤は、前記乳化剤、重合開始剤などの添加剤と一括添加されて反応させるか、前記添加剤を反応器に初期充填させた後、投入させるか、重合反応中に何回にかけて分割投入または連続投入することができる。
【0045】
前記共役ジエン系単量体、エチレン不飽和性芳香族単量体及び架橋剤の種類と含量は、前記で言及したところと同一である。
【0046】
前記重合開始剤は、特に限定されるものではないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムまたは過硫酸アンモニウムなどの水溶性過硫酸塩系重合開始剤、過酸化水素、クメンヒドロペルオキシド 、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、3級ブチルヒドロペルオキシド 、パラメンタンヒドロペルオキシドなどの過酸化物を一成分とするレドックス系重合開始剤などを単独または混合して用いることができる。
【0047】
前記分子量調節剤は、特に限定されず、メルカプタン類など通常の物質を用いることができるが、例えばn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどを用いることができる。
【0048】
前記乳化剤は、特に限定されるものではないが、例えばアルキルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルサルフェート、スルホネート化されたアルキルエステル、脂肪酸のせっけん及びロジン酸のアルカリ塩からなる群から選択された1種または2種以上の組合せを用いることができる。
【0049】
前記電解質は、特に限定されるものではないが、例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜黄酸水素カリウム、亜黄酸水素ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二カリウム及びリン酸数水素二ナトリウムからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0050】
前記ジエン系ラテックスコアは、前記記載した有効成分及び添加剤以外に必要に応じて、反応媒体、還元剤、触媒、安定剤などの添加剤をさらに用いて製造することができる。
【0051】
前記ビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物を含むグラフトシェルは、前記製造されたジエン系ラテックスコアにビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物と乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤などの添加剤を投入してグラフト共重合して前記ジエン系ラテックスコア上に形成させることができる。このとき、前記グラフトシェルは、前記コアの外表面を取り囲んで形成されるのが好ましい。
【0052】
このとき、前記グラフト共重合は特に限定されず、当分野に通常公知された方法によって行うことができるが、例えば前記で言及した乳化重合と同一の重合条件で行うことができる。
【0053】
前記ビニル化合物及びアルコキシシラン誘導体化合物と乳化剤、重合開始剤、分子調節剤などの添加剤は、前記で言及したところと同一である。
【0054】
前記グラフトシェルは、前記記載した有効成分及び添加剤以外に必要に応じて反応媒体、還元剤、触媒、安定剤などの添加剤をさらに用いて製造することができる。
【0055】
本発明による前記コア−シェル構造の重合体粒子は、凝集を介して粉末状態の粒子に製造され得る。前記凝集は、特に限定されず当分野に通常公知された方法によって行うことができ、また凝集の際に用いられる凝集剤も特に限定されず、通常の物質及び含量で用いられ得る。
【0056】
また、本発明は、前記のコア−シェル構造の重合体粒子を含むゴム組成物を提供する。
【0057】
本発明の一実施例による前記ゴム組成物は、ゴム100重量部;及び前記ゴム100重量部に対して20重量部から80重量部の前記コア−シェル構造の重合体粒子を含むことを特徴とする。もし、前記コア−シェル構造の重合体粒子が20重量部未満で含まれる場合には、これを含んだゴム組成物から製造されたゴム成形品、例えばタイヤの引張強度及び引張伸び率の改善効果が僅かであり得、80重量部を超えて含まれる場合には前記タイヤの耐磨耗性、回転抵抗性及び湿潤滑り抵抗性が低下され得る。
【0058】
前記ゴム組成物は、前記ゴムに前記コア−シェル構造の重合体粒子が分散されている混合物のものであり得、前記混合物は、前記ゴムのエマルジョンに前記コア−シェル構造の重合体粒子を混合して凝集した凝集体の形態であるか、または前記ゴムに前記コア−シェル構造の重合体粒子を単純混合した形態であり得る。
【0059】
前記ゴムは、特に限定されるものではないが、例えばジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、天然ゴム、イソプレン系ゴム、ニトリルゴム、ウレタン系ゴム、ブチル系ゴム及びこれら組合せからなる群から選択された1種以上のものであり得る。
【0060】
前記ゴム組成物は、前記記載した有効成分以外に必要に応じて当分野で通常公知されたカーボンブラック、シリカなどの充填剤、架橋剤、酸化防止剤、加硫促進剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0061】
さらに、本発明は、前記のゴム組成物から製造されたゴム成形品を提供する。
【0062】
本発明の一実施例による前記ゴム成形品はタイヤであってもよく、好ましくはタイヤトレッドであってもよい。
【0063】
本発明によるコア−シェル構造の重合体粒子を含むゴム組成物から製造された前記ゴム成形品、特にタイヤは、比重、引張強度、引張伸び率が改善されるとともに、耐磨耗性、回転抵抗性及び湿潤滑り抵抗性(wet slip resistance)が改善され得る。
【0064】
以下、下記実施例及び実験例によって本発明をさらに詳しく説明する。しかし、下記実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらだけに限定されるものではない。
【0065】
実施例1
1)架橋されたスチレン−ブタジエンラテックスコアの製造
撹拌機が装着された120l高圧重合容器に単量体混合物100重量部に対して、イオン交換水280重量部、緩衝溶液0.3重量部、ソジウムアルキルアリールナフタレンスルホネート3.6重量部、エチレンジアミンテトラナトリウム酢酸塩0.0047重量部、硫酸第1鉄0.003重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシ酸0.02重量部及びジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド0.1重量部を初期充填させた。ここに、ブタジエン30重量%、スチレン50重量%及びジビニルベンゼン20重量%を含む単量体混合物を投入して50℃から6時間重合して架橋されたジエン系ラテックスコアであって、粒子の大きさが260Åである架橋されたスチレン−ブタジエンラテックスコアを製造した。製造されたスチレン−ブタジエンラテックスの重合転換率は96%であった。
【0066】
2)コア−シェル構造の重合体粒子の製造
前記製造された架橋されたスチレン−ブタジエンラテックスコア60重量%(固形粉基準)を密閉された反応器に投入した後、窒素を充填し、ここにエチレンジアミンテトラナトリウム酢酸塩0.0094重量部、硫酸第1鉄0.006重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホネート0.04重量部を投入した後、メチルメタクリレート30重量%とトリメトキシシリルプロピルメタクリレート10重量%及びソジウムアルキルアリールナフタレンスルホネート1.0重量部、イオン交換水30重量部及びt−ブチルヒドロペルオキシド0.1重量部を50℃から1時間の間連続投入した後、1時間の間さらにグラフト重合して前記架橋されたスチレン−ブタジエンラテックスコア上にグラフトシェルを形成することにより、コア−シェル構造の重合体粒子を製造した。ここで、前記重量部は、前記架橋されたスチレン−ブタジエンラテックスコア、メチルメタクリレート及びトリメトキシシリルプロピルメタクリレートの全量を100重量部にして表したものである。
【0067】
前記製造されたコア−シェル構造の重合体粒子をスプレードライヤー(NIRO社)で190℃、10,000rpm条件で噴霧乾燥して、コア−シェル構造の重合体粒子粉末を収得した。
【0068】
3)ゴム組成物の製造
300ccバンバリータイプHaakミキサー(Termo−fisher scientific)にブタジエンゴム(SSBR 3626、(株)LG化学、TDAE(treated distillate aromatic extract)37.5%含む)137.5重量部、前記実施例1−2)で製造したコア−シェル構造の重合体粒子粉末50重量部、ステアリン酸2.0重量部、
X50S(EVONIK DEGUSSA、50% カーボンブラック/50% ビス(3−トリメトキシシリルプロピルテトラ
スルフィド)11.2重量部、酸化亜鉛3.0重量部、ポリマライズド2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(Flexsys)2.0重量部、ワックス1.0重量部、ジフェニルグアニジン(Flexsys)1.75重量部を投入して、70℃から150℃まで昇温させながら(約6分所要)80rpmで撹拌し、150℃の温度を維持しながら4分間さらに撹拌して、1次配合物を収得した。得られた1次配合物は常温で2時間以上充分に冷却させた後、冷却した1次配合物を前記バンバリータイプHaakミキサーに再び投入し、架橋剤である硫黄1.5重量部と架橋促進剤であるN−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルホンアミド(Flexsys)2.0重量部を添加して、40℃の温度で40rpmで1分30秒間撹拌して2次配合物を収得した。
【0069】
製造された2次配合物を50℃、6インチのロールを用いて厚さ4mmのシートで成形してゴム試片を製造した。
【0070】
実施例2
架橋されたスチレン−ブタジエンラテックスコアの製造の際に、ブタジエンを50重量%、スチレンを30重量%で添加したことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してゴム試片を製造した。
【0071】
比較例1
ゴム組成物の製造の際に、コア−シェル構造の重合体粒子粉末を添加せずにシリカ充填剤を70重量部で添加したことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してゴム試片を製造した。
【0072】
比較例2
スチレン−ブタジエンラテックスコアの製造の際に、ジビニルベンゼンを添加せずにブタジエン37.5重量%、スチレン62.5重量%で用いたことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してゴム試片を製造した。
【0073】
比較例3
コア−シェル構造の重合体粒子の製造の際に、トリメトキシシリルプロピルメタクリレートを添加せずに架橋されたスチレン−ブタジエン重合体ラテックスコア60重量%にメチルメタクリレートを40重量%で添加したことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してゴム試片を製造した。
【0074】
比較例4
コア−シェル構造の重合体粒子の製造の際に、架橋されたスチレン−ブタジエン重合体ラテックスコア20重量%にメチルメタクリレート60重量%、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート20重量%を添加したことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してゴム試片を製造した。
【0075】
比較例5
コア−シェル構造の重合体粒子の製造の際に、架橋されたスチレン−ブタジエン重合体ラテックスコア90重量%にメチルメタクリレート7.5重量%、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート2.5重量%を添加したことを除いては、前記実施例1と同じ方法を介してゴム試片を製造した。
【0076】
実験例
前記実施例1から2及び比較例1から5で製造した各ゴム試片の特性を比較分析するために、下記方法によって比重、引張強度、300%モジュラス、引張伸び率、耐磨耗性、Payne effect(ΔG’)及び回転抵抗性/湿潤滑り抵抗性を測定した。結果を下記表1に示した。
【0077】
1)比重
前記実施例1及び2と比較例1から5で製造した各試片を2cm(横)×2cm(縦)×3mm(厚さ)のサンプルで製造し、METTLER TOLEDO社の model AG245を用いて比重を測定した。
【0078】
2)引張強度(TS)、300%モジュラス及び引張伸び率(TE)の分析
引張強度、300%モジュラス及び引張伸び率は、ASTM D638に基づいて分析を行った。前記実施例1及び2と比較例1から5で製造した各試片を300℃で射出成形し、1/8″の各サンプルを製造し、23℃から24時間放置した後、サンプルの両端を引張試験機(INSTRON, 4465 model)の口金にかけた後、一方の口金は固定し、他方の口金を500mm/minの速度で引いて各試片が300%に伸びる際の荷重値及び切断の際の荷重値を得て、下記数式1、数式2及び数式3を介して、それぞれ300%モジュラス(kgf/cm
2)、引張強度(kgf/cm
2)及び引張伸び率(%)を求めた。
【0082】
3) 耐磨耗性
前記実施例1及び2と比較例1から5で製造した各ゴム試片を160℃で20分間架橋して各サンプルを製造し、No.152 Akron Type Abrasion Tester(Yasuda)を用いて、10 lbの積載下で500回の予備摩耗を行った後、3000回の本格摩耗を行って体積減少分を測定した。
【0083】
4)Payne effect(G’)及び動的損失係数(tan δ、回転抵抗性/湿潤滑り抵抗性)
Payne effect及び動的損失係数(回転抵抗性/湿潤滑り抵抗性)を分析するために、前記実施例1及び2と比較例1から5で製造した各試片に対する動的粘弾性試験を行った。
【0084】
先ず、前記各試片を160℃で20分間架橋して動的粘弾性試験用試片を製造しており、前記Payne effectは各試片の動的粘弾性試験中にstrain sweepテストを介して得た。
【0085】
また、回転抵抗性/湿潤滑り抵抗性を分析するために動的粘弾性試験を行って動的損失係数(tan δ)を測定した。動的粘弾性試験は、粘弾性機(DMTS 500N, Gabo, ドイツ)を用いて周波数10Hz、Prestrain 5%、 Dynamic strainを0.5%で−40℃から70℃まで分当たり2℃に昇温しながら行った。このとき、0℃における動的損失係数は、ゴムの湿潤滑り抵抗性(タイヤの制動性能)の程度を示す値であり、60℃における動的損失係数は、ゴムの回転抵抗性(タイヤの燃費性能)の程度を示す値であって、0℃における動的損失係数が高いほど、湿潤滑り抵抗性に優れたことを意味し、60℃における動的損失係数が低いほど、回転抵抗性に優れたことを意味する。
【0087】
前記表1に示すように、本発明によるアルコキシシラン誘導体化合物を含むシェルがグラフトされたコア−シェル構造の重合体粒子を用いて製造した実施例1及び実施例2のゴムが、比較例1から5で製造したゴムと比べて多少優れた比重、引張強度、引張伸び率、300%モジュラス特性を表しながら、Payne effectが顕著に低く、0℃に動的損失係数が高く、60℃に動的損失係数が低いことを確認した。
【0088】
具体的に、本発明による前記実施例1及び実施例2で製造したゴムが、コア−シェル構造の重合体粒子に代えてシリカを充填剤として用いた比較例1のゴムに比べて多少低い引張強度、引張伸び率、300%モジュラス特性を表すが、高い耐磨耗性と顕著に低いPayne effect及び優れた動的損失係数特性(0℃では高い数値を示し、60℃では低い数値を示す)を表した。これは、本発明によるコア−シェル構造の重合体粒子が比較例1で用いられたシリカと比べて類似の程度の機械的特性(引張強度など)をゴムに付与しながら、耐磨耗性(寿命特性)、回転抵抗性(燃費性能)及び湿潤滑り抵抗性(制動性能)は向上させることができることを示す。
【0089】
また、架橋されないコアを含むコア−シェル構造の重合体粒子を含む比較例2のゴムと比べた結果、本発明による実施例1及び2のゴムが優れた引張強度、300%モジュラスを表すことはもちろん、顕著に低いPayne effectを表し、顕著に向上した耐磨耗性と回転抵抗性を表した。これは、比較例2のゴムは、コア−シェル構造の重合体粒子の製造の際に、コアが架橋されないため、ゴムの製造中に粒子形態を持続的に維持することができないことにより、前記ゴムの物性が低下されたものであり、したがってコアの架橋の可否が目的とするゴムの物性(例えば、耐磨耗性、回転抵抗性)を得るのに重要な要素であることを示す。
【0090】
また、本発明と類似の形態であるが、アルコキシシラン誘導体化合物を含まないシェルがグラフトされたコア−シェル構造の重合体粒子を含む比較例3のゴムと比べた結果、引張伸び率の特性を除いた残りの全ての特性が顕著に高く表れた。これは、シェルの形成の際にアルコキシシラン誘導体化合物を含まないことにより、コア−シェル構造の重合体粒子とゴムとの間に相互作用が十分に行われないため、前記コア−シェル構造の重合体粒子が充填剤としての役割を十分に行うことができなかったことを示すものであり、したがって、アルコキシシラン誘導体化合物の添加の可否が目的とするゴムの物性(例えば、耐磨耗性、回転抵抗性及び湿潤滑り抵抗性)を得るのに重要な要素であることを示す。
【0091】
また、本発明と同一の構成を有するが、コアとシェルの割合が本発明で提示する割合を外れたコア−シェル構造の重合体粒子を含む比較例4のゴム、コアとシェルが割合及びシェルを構成する成分の割合が本発明で提示する割合を外れたコア−シェル構造の重合体粒子を含む比較例5のゴムと比べた結果でも、優れた物性(例えば、耐磨耗性、湿潤滑り抵抗性、Payne effect)を表した。これは、コアの割合が低すぎる場合には、最終生成されたゴムの強度が低下されることがあり、前記コアの割合が高すぎる場合には、相対的にシェルの割合が減少してゴムとの相互作用性が低下され最終生成されたゴム内に分散されないため、ゴムの物性を低下させ得ることを示し、したがって、本発明によるコア−シェル構造の重合体粒子の製造の際に、コアとシェルの適切な割合が目的とするゴムの物性を得るのに重要な要素であることを示す。