特許第6241801号(P6241801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241801
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】高温剥離性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/05 20060101AFI20171127BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171127BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C09J183/05
   C09J11/06
   C09J7/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-522177(P2016-522177)
(86)(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公表番号】特表2016-529342(P2016-529342A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】CN2013078759
(87)【国際公開番号】WO2015000150
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ウェンファ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、 シャオヤン
(72)【発明者】
【氏名】コン、 シェンチァン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ、 シャオ アリソン
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ、 ステファン
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン、 ジャンボ
(72)【発明者】
【氏名】スン、 チュンユー
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/133138(WO,A1)
【文献】 特開2007−154008(JP,A)
【文献】 特表平10−513499(JP,A)
【文献】 特開平10−140127(JP,A)
【文献】 特開2009−132867(JP,A)
【文献】 特開2011−119427(JP,A)
【文献】 特開平05−098240(JP,A)
【文献】 特開平02−075681(JP,A)
【文献】 特表2011−516626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン上のビニル基と、末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサン上の末端Si−H水素との反応のヒドロシリル化反応生成物、
(B)ヒドロシリル化反応生成物のための架橋剤、および
(C)金属触媒および/またはラジカル開始剤
を含む剥離性接着剤であって、
ヒドロシリル化反応生成物のための架橋剤(B)が、ポリ(メチルヒドロ)シロキサン、メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルシリルフェニルエーテル、ポリメチルフェニルシロキサン、およびポリ(メチルヒドロ)フェニルシロキサンから成る群より選択される、剥離性接着剤。
【請求項2】
(A)の末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサンが以下の構造を有する、請求項1に記載の剥離性接着剤。
【化1】
(式中、Rは、C〜C10アルキル基、アリール基、酸素、−(O−SiMe−O−、−(O−SiAr−O−、−(O−SiMeAr)−O−およびこれらの基の何れかの組合せからなる群より選択され、nは、少なくとも1の数であり、Meは、メチル基であり、Arは、アリール基であり、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、C〜C10アルキル基またはアリール基である。)
【請求項3】
末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、およびテトラメチルジシロキサンから成る群より選択される、請求項2に記載の剥離性接着剤。
【請求項4】
ラジカル開始剤が光開始剤である、請求項1に記載の剥離性接着剤。
【請求項5】
(B)架橋剤に対する(A)ヒドロシリル化反応生成物のモル当量比が、6〜0.6:1の範囲である、請求項1に記載の剥離性接着剤。
【請求項6】
更に、アクリル化および/またはメタクリル化ポリシロキサンを含む、請求項1に記載の剥離性接着剤。
【請求項7】
剥離性接着剤が間に配置されている、基板とキャリアとのアセンブリであって、剥離性接着剤が、
(A)1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン上のビニル基と、末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサン上の末端Si−H水素との反応のヒドロシリル化反応生成物、
(B)ヒドロシリル化反応生成物のための架橋剤、および
(C)金属触媒またはラジカル開始剤
を含み、
ヒドロシリル化反応生成物のための架橋剤(B)が、ポリ(メチルヒドロ)シロキサン、メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルシリルフェニルエーテル、ポリメチルフェニルシロキサン、およびポリ(メチルヒドロ)フェニルシロキサンから成る群より選択される、アセンブリ。
【請求項8】
(A)の末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサンが以下の構造を有する、請求項に記載のアセンブリ。
【化2】
(式中、Rは、C〜C10アルキル基、アリール基、酸素、−(O−SiMe−O−、−(O−SiAr−O−、−(O−SiMeAr)−O−およびこれらの基の何れかの組合せからなる群より選択され、nは、少なくとも1の数であり、Meは、メチル基であり、Arは、アリール基であり、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、C〜C10アルキル基またはアリール基である。)
【請求項9】
末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、およびテトラメチルジシロキサンから成る群より選択される、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
剥離性接着剤中のラジカル開始剤が光開始剤である、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
(B)架橋剤に対する(A)ヒドロシリル化反応生成物のモル当量比が、6〜0.6:1の範囲である、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
剥離性接着剤が、更に、アクリル化および/またはメタクリル化ポリシロキサンを含む、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
(A)基板およびキャリアを提供する工程と、
(B)基板および/またはキャリア上に請求項1に記載の剥離性接着剤を配置する工程と、
(C)請求項1に記載の剥離性接着剤が間に配置されるように基板およびキャリアを接触させ、アセンブリを形成する工程と、
(D)基板を接着するための温度または温度範囲でアセンブリを加熱する工程、または、(E)基板を接着するための放射線にアセンブリを暴露する工程、または(F)基板を接着するために、アセンブリを放射線に曝露し、その後加熱する工程と、
(G)アセンブリを環境温度にし、機械的に基板を剥離する工程と、
を含む基板をキャリアから剥離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用途で使用するための硬化性の仮止め接着剤、特に、1つの基板を別の基板に一時的に取り付けるための接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業で、柔軟であり、および/または非常に薄い基板、例えば、ステンレス鋼、シリコンウエハ、ガラス、セラミック、ポリイミドおよびポリエステルフィルムの使用への関心が高まっている。柔軟で非常に薄い基板は、川下での製造条件において独自に取り扱うにはあまりにも脆弱であり、破損しないために適切なキャリアに担持されている必要がある。製造工程が完了した後、基板は、好ましくは環境温度で、傷つけられずにキャリアから取り外し可能でなければならない。
【0003】
一例として、エレクトロニクス産業では、撮像ディスプレイ、センサー、太陽電池およびRFIDが、携帯電話、携帯情報端末、iPad、またはテレビのディスプレイ用途に、薄く、および/または柔軟な基板をますます必要としている。典型的な基板は、機能を持たせた非常に薄い(100μm)ガラスである。ガラスは、薄膜トランジスタ(TFT)を配置するために400℃で、または、透明導電体として酸化インジウムスズ(ITO)を付着させるために350℃で処理される。ガラスの脆さと過酷なプロセス条件のために、このガラスを強化する、または製造中に、より安定な基板によって保護する必要がある。
【0004】
このような用途では、簡単かつきれいな剥離が可能であり、高い処理温度で仮接着が可能であり、および基板の処理性や性能を損なわない、高温安定接着剤が必要とされる。これは、特にエレクトロニクス業界内での要求である。このような接着剤の開発により、半導体、アクティブマトリクス薄膜トランジスタ、タッチ膜、または光電池などの、既存の製造方法で、一般に導入されている製造工具や機械の基部を使用可能となる。ほとんどの現在利用されている仮止め接着剤は、400℃程度になり得る製造工程で最大処理のとき、熱的に安定でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的とする部品に損傷を与えることなく、後で室温にて除去できる高温仮止め用途に適した接着剤は、様々な業界にわたって、より薄い、またはより柔軟な基板の使用を促進するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書および特許請求の範囲内で使用される場合、「基板」は製造工程での目的とする部品を指し、「キャリア」は、「基板」のための支持物を指す。
【0007】
本発明は、(A)1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン上のビニル基と、末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサン上の末端Si−H水素との反応のヒドロシリル化反応生成物、(B)ヒドロシリル化反応生成物のための架橋剤、および(C)金属触媒および/またはラジカル開始剤を含む接着剤組成物である。
【0008】
本明細書中において、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサンとの反応のヒドロシリル化反応生成物(A)をビニルカルボシロキサン、VCS樹脂、またはVCSRと呼ぶ。
【0009】
架橋剤(B)はVCSR上のビニル基とビニル付加反応で反応するシロキサンである。触媒は、金属触媒および/またはラジカル開始剤であり、硬化は、熱または光硬化であろう。適切な金属触媒としては、市販の白金及びロジウム触媒が挙げられる。適切なラジカル開始剤は多数あり、当業者によく知られている。そのようなラジカル開始剤の1つはジクメンパーオキサイドである。適切なラジカル開始剤はまた、例えば、商品名DAROCURE1173およびIRGACURE184または2100で販売されているものなどの光開始剤が挙げられる。
【0010】
接着剤組成物は、300℃以上440℃以下の温度でその接着力を維持し、5N/25mm以下、ある実施形態では3N/25mm以下、およびある実施形態では2N/25mm以下の力で、室温にて機械的に剥離可能である。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、接着剤組成物が基板間に配置されている、基板とキャリアとのアセンブリである。
【0012】
さらなる実施形態では、本発明は、(a)基板およびキャリアを提供する工程と、(b)、基板および/またはキャリアに剥離性接着剤を配置する工程と、(c)間に剥離性接着剤が配置されるように基板とキャリアを接触させ、アセンブリを形成する工程と、(d)基板を接着するための温度または温度範囲でアセンブリを加熱する工程、または(e)基板を接着するための放射線にアセンブリを暴露する工程、または(f)基板を接着するために、アセンブリを放射線に曝露し、その後加熱する工程と、(g)アセンブリを環境温度にし、機械的に基板を剥離する工程と、を含むキャリアから基板を剥離する方法である。
【0013】
工程(d)を使用する場合、加熱は、1〜30分間、100℃〜175℃の温度範囲である温度または温度範囲で実施される。工程(e)を使用する場合、UV放射は、約1〜4分間、400ワットランプを使用して実施できる。その他の放射線の供給源も実施者の裁量の範囲内で使用してよい。工程(f)を使用する場合、工程(d)および(e)のパラメータの組み合わせを、所望の硬化を得るために使用する。適切な硬化条件は、工程(d)および(e)のパラメータの知見を有する当業者によって過度の実験をせずに決定され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の接着剤は、300℃〜450℃の範囲の加工温度で、キャリアに対する基板の適切な仮接着を提供するために、および基板を傷つけることなく環境温度で基板とキャリアの界面での接着破壊によって剥離するために開発された。
【0015】
成分(A)、VCSRは、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのビニル基と、末端Si−H水素を有するシランまたはシロキサン上の末端Si−H水素との反応のヒドロシリル化反応生成物である。1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンは、以下の構造を有する。
【0016】
【化1】
【0017】
1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンと反応するための、少なくとも2個の末端Si−H水素を有する、好適なシランまたはシロキサンは以下の構造を有するものが挙げられる。
【0018】
【化2】
(式中、Rは、C〜C10アルキル基、アリール基、酸素、−(O−SiMe−O−、−(O−SiAr−O−、−(O−SiMeAr)−O−およびこれらの何れかの組合せからなる群より選択され、nは、少なくとも1の数であり、Meは、メチル基であり、Arは、アリール基であり、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、C〜C10アルキル基またはアリール基である。)
【0019】
例示的なシランまたはシロキサンとしては、シリコン元素上のアルキル基がC〜C10アルキル基である、ポリアルキルシランおよびポリアルキルシロキサンが挙げられる。様々な実施形態におけるシランおよびシロキサンとして、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンおよびテトラメチルジシロキサンが挙げられる。これらの化合物は、Gelestより市販されている。
【0020】
好ましいVCSR反応生成物(A)は、以下に表される構造を有する(ただし、分子量は、重量平均分子量である。)。様々な実施形態において、VCSR反応生成物のシリコン元素上のアルキル基としては、C〜C10アルキル基が挙げられる。以下に表される構造にメチル基が記載されているが、これは、他のC〜C10アルキル基により置換されていてもよいことを理解すべきである。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
接着剤組成物の成分(B)は、ヒドロシリル化反応生成物(A)のための架橋剤であり、様々な実施形態においては、シリコン元素上にC〜C10アルキル基を含有するであろう。特定の実施形態において、ビニルカルボシロキサン反応生成物(A)との架橋ヒドロシリル化反応での使用に適した架橋化合物(B)としては、ポリ(メチルヒドロ)シロキサン、メチルヒドロシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルシリルフェニルエーテル、ポリメチルフェニルシロキサンおよびポリ(メチルヒドロ)フェニルシロキサンが挙げられる。これらの化合物は、Gelestより市販されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、Si−H架橋化合物(B)を延長し、接着剤の分子量を増やすために、連鎖延長剤を使用することができる。適切な連鎖延長剤は、α,ω−ビニル末端直鎖状ポリシロキサン、ジビニルシランおよびジビニルシロキサンから選択される。様々な実施形態において、シリコン元素上のアルキル基は、C〜C10アルキル基であろう。特定の実施形態において、連鎖延長剤は、ジビニルテトラメチルジシロキサンである。
【0025】
連鎖延長剤が、架橋シランまたはシロキサンを延長するために、反応混合物中で使用されるとき、成分(A)と成分(B)のモル当量比は、連鎖延長後の1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよび架橋剤の有効モル数で計算される。
【0026】
接着剤組成物の成分(C)は、金属触媒および/またはラジカル開始剤である。光学的透明度が要求されるとき、適切な触媒は、最終の樹脂混合物において20ppm以下の濃度で使用される、液体の白金触媒である。より高い濃度は黄変を生じるが、黄変を避ける必要がないときは必要に応じて使用できる。多くの反応で、この触媒濃度は、依然として活性であり、そのうえ、反応生成物から触媒を分離する必要がないほど、十分低い。
【0027】
硬化性の仮止め接着剤は、金属触媒および/またはラジカル開始剤の存在下で、0.6〜6:1のモル当量比のビニルカルボシロキサン反応生成物(A)および選択された架橋化合物(B)より調製される。
【実施例】
【0028】
これらの剥離性接着剤の2つの好ましい特性は、300℃以上〜440℃の温度で安定且つその強度を維持し、環境温度で容易に、きれいに剥がせることである。以下の例では、高温での細い線状亀裂の目視での証拠、および5N/25mm超の剥離強度の証拠は、接着剤をきれいに取り除けないことを示している。
【0029】
試験体は、2枚のスライド間に配置された接着剤組成物を有する、2枚の5cm×7.5cmのスライドガラス(VWRinternational製)のアセンブリとした。他に記載がなければ、全ての試料のボンドライン厚は、0.125mmであった。アセンブリを150℃のコールパーマーデジタルホットプレート上に30分間空気中に置き、接着剤を硬化させた。
【0030】
高温安定性を試験するため、Thermo Scientific BF5800 Furnaceを使用してアセンブリを加熱し、温度を測定した。加熱後の接着剤の目視確認で細線または亀裂が見られたとき、接着剤は不安定であるとした。
【0031】
試験体の接着剤の重量ロスを別の安定性指標として使用した。重量ロスが少ないほど、より安定な接着剤である。熱重量測定装置(TGA)、Pyris 1(Perkin Elmer製)を使用して、400℃で1時間加熱した前後で試料の重量を測定し、重量ロスを計算した。9.6%未満の重量ロスを許容とし、接着剤が安定であるとした。一実施形態において、好ましい重量ロスは7.3%以下である。
【0032】
硬化方法としてUVを使用した例では、Dymax ECシリーズの450WのUVランプを使用し、一定時間、試験体を照射した。
【0033】
Shimpo FGV−20XYデジタルフォースゲージを使用して、剥離試験を行った。試験体の上側スライドガラスを固定した下側スライドガラスから剥がし、剥離力(接着解除力(debonding force)とみなす)を計算し、N/25mmに標準化した。
【0034】
例で使用した物質は以下の通りである。
【0035】
【表1】
【0036】
比較例である、SYLGUARD184およびECCOCOAT SC3613樹脂に基づく試料を除いて、下記のその他全ての試料は、SIP6830.3白金錯体に由来する約20ppmの白金触媒を含有する。
【0037】
この例についての配合および試験結果は、以下の表に記載され、成分(B)に対する成分(A)のモル当量比が、高温安定接着剤の生成に影響することを示している。
【0038】
例1〜24において接着剤組成物は、成分(A)としてVCSR−2と、成分(B)として様々な架橋剤と、を含有するよう調製された。それぞれの試験体を300℃で30分間加熱し、次いで、細線または亀裂を目視で検査した。細線または亀裂の目視での証拠は何れも、接着剤組成物が不合格であるとみなした。この結果は、表1に記載され、効果的な高温接着剤を生成するために効果的な、架橋剤に対するVCSR比率は、6〜0.6:1の範囲内であることを示している。
【0039】
いくつかの例では、この比率範囲外で良好な性能を示している。しかしながら、6〜0.6:1モル当量比範囲の端部の比率では、反応条件の小さな変化が、接着剤の安定性に影響を及ぼす特性において差異が生じた。よって、好ましいモル当量比範囲は、このより広い許容な性能の範囲の中央にある。従って、上記範囲である6〜0.6:1から外れた、いくつかの各例においても、良好な安定性を与える場合がある。
【0040】
【表2】
【0041】
例25および26における接着剤組成物は、成分(A)としてVCSR−2と、成分(B)としてSIB1090.0架橋剤を含有していた。これらの組成物は、また、AEROSIL R972フュームドシリカを充填剤として含有していた。ボンドライン厚は、0.125mmであった。各試験体を300℃で30分間加熱し、次いで、細線または亀裂を目視で検査した。細線または亀裂の目視での証拠は何れも、接着剤組成物が不合格であるとみなした。この結果は、表2に記載され、高温性能を失うことなく、配合物に充填剤を使用できることを示している。
【0042】
【表3】
【0043】
例27および28における接着剤組成物は、成分(A)としてVCSR−2と、成分(B)として表3に記載される2種の架橋剤を組み合わせたものと、を含有していた。例27は、SIB1090.0およびHMS−301R架橋剤を含有し、例28は、SIP6826.0およびPDV−0535架橋剤を含有していた。ボンドライン厚は0.150mmであった。各試験体を300℃で30分間加熱し、次いで、細線または亀裂を目視で検査した。細線または亀裂の目視での証拠は何れも、接着剤組成物が不合格であるとみなした。モル当量比は、成分(B)の総量に対して与えられる。Pt(IV)触媒を使用する例30は、400WのUVランプ下で、合計で8W/cmのUVエネルギーで、4分間UV照射によって加熱された。結果を表3に記載する。
【0044】
【表4】
【0045】
高温および低いボンドライン厚での性能について、例27、28、29および33を試験した。℃での温度の加熱条件および分での時間、mmでのボンドライン厚および性能結果が表4に記載され、モル比の重要性を示している。
【0046】
【表5】
【0047】
表5における例では、更に、TGA使用した重量ロスについて、および上述した接着解除力について試験した。試験条件および結果は、表5に記載され、許容される重量安定性と、容易な除去をもたらす低い接着力を示している。
【0048】
【表6】
【0049】
例31および32は、市販のシリコーン製品を使用した比較例である。これらの物質から調製された組成物は、30分間、300℃を耐えられるが、高温で割れを示し、5N/25mm以下の力を用いての剥離ができない。TGAで測定したときの許容されない重量ロスのため、これらは、350℃以上では熱安定性を有していない。℃での温度の加熱条件および分での時間、mmでのボンドライン厚および性能結果を表6に記載する。
【0050】
【表7】
【0051】
例35〜38を、DAROCURE1173光開始剤の更なる添加とともに、例27と同じ成分から調製した。硬化を120秒間、約120mW/cmで、UVAloc 1000を使用して実施した。照射硬化後、試料を150℃で15分間、熱的に硬化し、次いで350℃で30分間保持した。剥離力として接着解除力を試験し、TGAを測定した。結果は、表7に記載され、接着剤が安定であり、きれいに除去できることを示している。
【0052】
【表8】
【0053】
例39〜41を、89重量%の例27と同じ成分、1重量%のDAROCURE1173光開始剤、および10重量%の追加のアクリル化またはメタクリル化シロキサン樹脂から調製した。例42〜44を89重量%の例28と同じ成分、1重量%のDAROCURE1173光開始剤、および10重量%の追加のアクリル化またはメタクリル化シロキサン樹脂から調製した。硬化を約120mW/cmで、UVAloc 1000を使用して実施し、試験体であるスライドガラスが固定されるのに要する硬化時間を手動で測定した。この時間は、6例全てが30秒であった。剥離強度として測定される接着解除力を計算し、N/25mmに標準化した。接着解除力、および10重量%で添加された、特定の追加のアクリル化またはメタクリル化シロキサン樹脂を表8に記載する。
【0054】
【表9】
【0055】
これらの結果は、光開始剤および追加のアクリル化および/またはメタクリル化シロキサン樹脂が、接着剤をより早期に硬化または固定させるのに役立ち、全体の製造プロセスをより速くすることを示している。