【文献】
宮崎美智子 他,"対成人・対幼児発話におけるオノマトペ表出の違い −母子絵本読み調査における検討から−",電子情報通信学会技術研究報告,2010年 5月21日,Vol.110,No.63,pp.27-31
【文献】
橋本智也,"子どもに対する大人の助詞「ハ」の使用 言語獲得研究用コーパスCHILDESを用いた検討",言語処理学会第13回年次大会発表論文集 Proceedings of The Thirteenth Annual Meeting of The Association for Natural Language Processing,2007年 3月19日,pp.732-735
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
<発明の原理>
本実施の形態において、育児語使用傾向の測定にあたっては、まず、PCやタブレットを用いてその画面上に動画を提示し、養育者などの被測定者に見てもらう。提示する動画としては、育児語が存在する動物(ワンワン、ニャーニャー)や乗り物(ぶーぶー、ピーポー)などを登場させて、育児語(ピョンピョン、ぐるぐる)が存在する動作(跳躍、回転)をそれらに演じさせた動画を用いる。また育児語が存在する食べ物(チュルチュル)などに対して育児語が存在する動作(パクパク、ペロペロ)をしている動画を用いてもよい。PC画面上に動画を提示する理由としては、動作を実際に提示できることにより、オノマトペを含む育児語が動作と同期して発話させやすくするためである。
【0017】
そして、動画を被測定者に提示しながら、動画の内容を子どもに説明する(語りかける)ように被測定者に指示する。これにより、被測定者は、考える間もなく発話を促されるので、日常生活で語りかける場面とよく似たスタイルで子どもに語りかける可能性が高くなり、現実の発話に近いスタイルを測定することができる。その際に、タブレットやPCに備わる(もしくは接続した)ビデオカメラとマイクロフォンで、被測定者の発話を記憶媒体に記録しておく。記録された発話は、計算機上で既存の音声認識アプリケーション等を利用することにより自動的にテキスト化した上で、動画ごとにあらかじめ決めておいた得点化方式(1.物体に対する育児語の有無、2.動作に対する育児語の有無、3.ガ格やヲ格の有無など)に基づいてアルゴリズムを実行し、育児語使用傾向の測定を計算機上で実行する。こうした動画を約10種類ほど提示し、様々なアクション事象に対する発話を記録・測定することにより、被測定者ごとの育児語使用傾向を包括的に且つ高精度で測定することが可能となる。
【0018】
<第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置の構成>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置の構成について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置100は、CPUとRAMと後述する育児語使用傾向測定処理ルーチンを実行するためのプログラムや各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することが出来る。この育児語使用傾向測定装置100は、機能的には
図1に示すように入力部10と、演算部20と、表示部40と、出力部50とを備えている。
【0019】
入力部10は、被測定者に提示される動画の各々に対応して入力される被測定者の発話からなるユーザ発話の各々を受け付ける。なお、受け付けるユーザ発話は、被測定者のそばに子どもが存在し、一緒に動画を見ながら発話されたユーザ発話とする。
【0020】
演算部20は、動画データセット記憶部22と、動画刺激提示部24と、対応付け部25と、発話記録部26と、音声認識部28と、形態素解析部30と、ターゲット文抽出部34と、ターゲット語リスト記憶部32と、育児語発話解析部36と、測定値生成部38とを備えている。
【0021】
動画データセット記憶部22には、育児語の存在する動作主(例えば、犬(ワンワン)やカエル(ケロケロ)など)が、育児語の存在する動作(例えば、跳躍(ピョンピョン)や回転(ぐるぐる)など)を行う複数の動画が記憶されている。なお、動画を識別するために、動画の各々には識別番号情報が付加されている。また、第1の実施の形態では、動作主が自律的に動作する自動詞的な事象に関する動画を用いる。
【0022】
動画刺激提示部24は、動画データセット記憶部22に記憶されている動画を一つずつ選択し、表示部40により、選択した動画を表示させる。また、動画刺激提示部24は、選択した動画に付加されている識別番号情報を対応付け部25に出力する。
【0023】
対応付け部25は、入力部10から入力されたユーザ発話の各々と、動画刺激提示部24から入力された識別番号情報の各々とを対応付け、発話記録部26に記録する。ユーザ発話に識別番号情報を付加することで、どの動画に対して発話されたユーザ発話であるかを特定することができる。
【0024】
発話記録部26は、対応付け部25から入力された動画の識別番号情報が付加されたユーザ発話の各々の音声情報を記録している。
【0025】
音声認識部28は、発話記録部26に記録されている動画の識別番号情報が付加されたユーザ発話の各々の音声情報を取得し、音声認識処理を行って、音声情報の各々をテキスト化し、動画の識別番号情報が付加された、テキスト化されたユーザ発話である発話テキストを出力する。
【0026】
形態素解析部30は、音声認識部28から入力される発話テキストの各々について品詞単位での分割、品詞付与、及び文分割の形態素解析処理をする。
【0027】
ターゲット語リスト記憶部32は、
図2aに示すような、提示される動画の各々について、当該動画が表す動作主を示す主語の育児語及び成人語と、当該動画が表す動作を示す述語の育児語及び成人語とを対応付けたターゲット語リストを記憶している。また、ターゲット語リスト記憶部32は、ターゲット語リストのうち、主語の育児語及び成人語に対応するリストを動作主リストとして記憶し、主語の育児語に対応するリストを動作主育児語リストとして記憶し、述語の育児語及び成人語に対応するリストを述語の育児語成人語リストとして記憶している。なお、ターゲット語リストの「No.」は、動画の識別番号情報の番号と同一の番号とする。また、第1の実施の形態において、述語は、動詞及び形容詞とする。
【0028】
ターゲット文抽出部34は、発話テキストの各々の形態素解析処理結果と、ターゲット語リスト記憶部32に記憶されているターゲット語リストとに基づいて、発話テキストの各々から、ターゲット文を抽出する。具体的には、発話テキストの各々について、当該発話テキストに含まれる語のうち少なくとも1つの語と、ターゲット語リスト記憶部32に記憶されているターゲット語リストのうち、当該発話テキストに付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する主語及び述語の育児語及び成人語の少なくとも1つの語とが一致する場合、当該発話テキストに評価対象とするタグ付けを行うと共に、当該一致する語を含む文を、ターゲット文として抽出する。
【0029】
育児語発話解析部36は、特徴検出部362と、スコア算出部364とを含んで構成される。また、特徴検出部362は、ターゲット文抽出部34において抽出されたターゲット文の各々について、当該ターゲット文の形態素解析処理結果と、ターゲット語リスト記憶部32に記憶されているターゲット語リストとに基づいて、育児語に特有の特徴として、動作主を指し示す主語の育児語の存在と、動作主を指し示す主語に助詞が付随されていないことと、動作に対応する述語の育児語の存在と、動作に対応する述語の育児語に述部語尾が付随されていないこととを検出する。
【0030】
ここで、動作主を指し示す主語の育児語の存在を検出する方法について説明する。具体的には、まず、ターゲット文に含まれる語の各々について、ターゲット語リストに含まれる動作主リストのうち、当該ターゲット文に付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する主語の育児語及び成人語の少なくとも1つと一致するかを判定し、ターゲット文に含まれる語の少なくとも1つについて一致すると判定された場合には、当該ターゲット文に動作主を指し示す主語が有ると判定し、ターゲット文に含まれる語の全てについて一致しない場合には、当該ターゲット文に動作主を指し示す主語が無いと判定する。なお、一致した語の各々をターゲット文の主語と認定する。また、主語の育児語又は成人語と一致する語が連続して繰り返して出現している場合には、当該連続する範囲を1つの動作主を指し示す主語とする。例えば、「ブーブーブーブー」は育児語「ブーブー」が連続して出現しているため、当該「ブーブーブーブー」を1つの動作主を指し示す主語とする。また、「ワンワンだよ」、「にゃんにゃんや」などの「だ」や「や」などのコピュラが育児語又は成人語に付加されている場合は、例外的に動作主を指し示す主語としない。
【0031】
次に、動作主を指し示す主語があると判定されたターゲット文について、当該ターゲット文の動作主を指し示す主語の各々が、当該動作主を指し示す主語と、ターゲット語リストに含まれる動作主育児語リストのうち、当該ターゲット文に付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する主語の育児語のうち少なくとも1つと一致するか判定する。一致する場合には、当該ターゲット文の動作主を指し示す主語の育児語が存在することを検出する。
【0032】
次に、動作主を指し示す主語に助詞が付随していないことを検出する方法について説明する。動作主を指し示す主語があると判定されたターゲット文について、当該ターゲット文の動作主を指し示す主語に助詞が付随しているかを判定し、助詞が付随していない場合には、当該ターゲット文の動作主を指し示す主語に助詞が付随していないことを検出する。第1の実施の形態においては、ガ格の有無を判定し、ガ格が有る場合は助詞が付随していると判定し、ガ格がない場合は助詞が付随していないと判定する。
【0033】
次に、動作に対応する述語の育児語の存在、及び述部語尾が付随されていないことを検出する方法について説明する。具体的には、まず、ターゲット文に含まれる語の各々について、ターゲット語リストに含まれる述語の育児語成人語リストのうち、当該ターゲット文に付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する述語の育児語及び成人語の少なくとも1つの語と一致するかを判定し、ターゲット文に含まれる語の少なくとも1つについて一致すると判定された場合には、当該ターゲット文に動作に対応する述語が有ると判定し、ターゲット文に含まれる語の全てについて一致しないと判定された場合には、当該ターゲット文に動作に対応する述語が無いと判定する。なお、一致した語の各々をターゲット文の述語と認定する。また、述語の育児語又は成人語と一致する語が連続して繰り返して出現している場合には、当該連続する範囲を1つの動作に対応する述語とする。例えば、「ゴロゴロゴロゴロ」は育児語「ゴロゴロ」が連続して出現しているため、当該「ゴロゴロゴロゴロ」を1つの動作に対応する述語とする。
【0034】
次に、動作に対応する述語が有ると判定されたターゲット文について、当該ターゲット文の述語の各々が、述語の育児語成人語リストのうち、当該ターゲット文に付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する述語の育児語の少なくとも1つとが一致するかを判定し、一致する場合には、当該ターゲット文に育児語の述語が含まれているとし、当該ターゲット文の動作に対応する述語の育児語の存在を検出する。また、当該ターゲット文に含まれている述語の育児語に、「してる」、「する」、「だ」、「や」、「だよ」などの述部語尾が付随しているか否か判定し、述部語尾が付随していない場合には、当該ターゲット文の動作に対応する述語の育児語に述部語尾が付随していないことを検出する。
【0035】
スコア算出部364は、ターゲット文の各々について、特徴検出部362における検出結果に基づいて、育児語の使用傾向を表すスコアを算出する。具体的には、動作主を指し示す主語の育児語の存在が検出された場合、主語に助詞が付随されていないことが検出された場合、動作に対応する述語の育児語の存在が検出された場合、及び述部語尾が付随されていないことが検出された場合の各々を、1点とし、ターゲット文について得点を加算することにより、当該ターゲット文に対するスコアが算出される。
【0036】
測定値生成部38は、提示した動画の各々について、スコア算出部364から入力された当該動画に対応するターゲット文のスコアに基づいて、当該動画に対する育児語使用傾向スコアを算出する。具体的には、動画に対応するターゲット文が1文である場合には、スコア算出部364により算出されたスコアを、当該動画に対する育児語使用傾向スコアとする。動画に対応するターゲット文が複数の文である場合には、スコア算出部364により算出された各ターゲット文のスコアの平均を、当該動画に対する育児語使用傾向スコアとして算出する。また、測定値生成部38は、提示した動画の各々に対して算出された育児語使用傾向スコアの合計を、測定値として算出する。被測定者について算出された動画の各々に対する育児語使用傾向スコア、及び測定値が、出力部50により出力される。
【0037】
<第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置の作用>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置100の作用について説明する。まず、複数の動画の各々を表示部40に表示させて、被測定者に提示し、動画の各々について、当該動画が提示されているときに被測定者から入力されたユーザ発話に、当該動画の識別番号情報が付加されて、発話記録部26に記録される。そして、育児語使用傾向測定装置100は、
図3に示す育児語使用傾向測定処理ルーチンを実行する。
【0038】
まず、ステップS100では、ターゲット語リスト記憶部32に記憶されているターゲット語リストを読み込む。
【0039】
そして、ステップS102では、被測定者に提示された複数の動画のうちの何れか1つを、処理対象の動画として設定する。
【0040】
次に、ステップS110では、音声認識部28により、発話記録部26から、処理対象の動画の識別番号情報が付加されたユーザ発話の音声情報を読み込み、読み込んだユーザ発話の音声情報について、音声認識処理を行って、当該音声情報をテキスト化し、処理対象の動画の識別番号情報が付加された発話テキストを生成する。
【0041】
次に、ステップS112では、ステップS110において取得した発話テキストについて、形態素解析処理を行う。
【0042】
次に、ステップS114では、ステップS110において取得した発話テキストから、ステップS100において取得したターゲット語リストと、ステップS112において取得した発話テキストの形態素解析処理結果とに基づいて、ターゲット文の各々を抽出する。
【0043】
次に、ステップS115では、ステップS114においてターゲット文が抽出されたか否かの判定を行う。ターゲット文が抽出された場合には、ステップS116へ移行し、ターゲット文が抽出されなかった場合には、ステップS123へ移行する。
【0044】
次に、ステップS116は、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、動作主を指し示す主語に関するスコアを付加する。
【0045】
次に、ステップS118は、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、動作に対応する述語に関するスコアを付加する。
【0046】
次に、ステップS119は、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文の、ステップS116において付与したスコアと、ステップS118において付与したスコアとを加算して、処理対象となるターゲット文に対する育児語使用傾向スコアを算出する。
【0047】
次に、ステップS120は、ステップS114において抽出した全てのターゲット文について、上記ステップS116〜ステップS119の処理を終了したか否かを判定する。全てのターゲット文について、上記ステップS116〜ステップS119の処理を終了した場合には、ステップS122へ移行し、全てのターゲット文について上記ステップS116〜S119の処理を終了していない場合には、処理対象となるターゲット文を変更してステップS116へ移行する。
【0048】
次に、ステップS122では、処理対象の動画に対応するターゲット文の各々の、ステップS119において算出したスコアに基づいて、処理対象の動画に対する育児語使用傾向スコアを算出する。
【0049】
次に、ステップS123では、提示した全ての動画について、上記ステップS102〜ステップS122の処理を終了したか否かを判定する。提示した全ての動画について、上記ステップS102〜ステップS122の処理を終了している場合には、ステップS124へ移行し、提示した全ての動画について、上記ステップS102〜ステップS122の処理を終了していない場合には、ステップS102へ移行する。
【0050】
次に、ステップS124では、ステップS122において算出した提示した動画の各々の育児語使用傾向スコアに基づいて、測定値を算出する。
【0051】
次に、ステップS125では、ステップS122において算出した提示した動画の各々の育児語使用傾向スコアと、上記ステップS124において算出した測定値とを出力部50に出力して育児語使用傾向測定処理ルーチンの処理を終了する。
【0052】
上記ステップS116は、
図4に示す動作主を指し示す主語に関するスコア付与処理ルーチンによって実現される。
【0053】
図4に示す、ステップS202では、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、ステップS100において取得したターゲット語リストと、ステップS112において取得した処理対象のターゲット文の形態素解析処理結果とに基づいて、処理対象となるターゲット文に、動作主を指し示す主語が含まれるか否かを判定する。処理対象となるターゲット文に動作主を指し示す主語が含まれている場合には、ステップS204へ移行し、処理対象となるターゲット文に動作主を指し示す主語が含まれていない場合には、動作主を指し示す主語に関するスコア付与処理ルーチンの処理を終了する。
【0054】
次に、ステップS204では、ステップS202において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、動作主を指し示す主語のうちの、処理対象となる主語について、ステップS100において取得したターゲット語リストに基づいて、当該主語が育児語化しているか否かを判定する。当該主語が育児語化している場合には、当該ターゲット文の動作主を指し示す主語の育児語が存在することを検出すると共に、ステップS206へ移行し、当該主語が育児語化していない場合には、ステップS208へ移行する。
【0055】
次に、ステップS206では、ステップS204において検出された動作主を指し示す主語の育児語に応じて、1点のスコアを付与する。
【0056】
次に、ステップS208では、ステップS202において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、動作主を指し示す全ての主語について、上記ステップS204、S206の処理を終了したか否かを判定する。処理対象の動作主を指し示す全ての主語について、上記ステップS204、S206の処理を終了している場合には、ステップS210へ移行し、一方、処理対象の動作主を指し示す全ての主語について、上記ステップS204、S206の処理を終了していない場合には、処理対象となる動作主を指し示す主語を変更し、ステップS204へ移行する。
【0057】
次に、ステップS210では、ステップS202において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、処理対象となる動作主を指し示す主語について、ステップS112において取得した処理対象となるターゲット文の形態素解析処理結果に基づいて、当該動作主を指し示す主語に助詞が付随しているか否かを判定する。当該動作主を指し示す主語にガ格がある場合には助詞が付随していると判定し、ステップS214へ移行し、当該動作主を指し示す主語にガ格がない場合には当該動作主を指し示す主語に助詞が付随していないと判定し、当該動作主を指し示す主語に助詞が付随していないことを検出すると共に、ステップS212へ移行する。
【0058】
次に、ステップS212では、ステップS210において検出された、動作主を指し示す主語に助詞が付随していないことに応じて、1点のスコアを付与する。
【0059】
次に、ステップS214では、ステップS202において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる全ての動作主を指し示す主語について上記ステップS210、S212の処理を終了したか否かを判定する。処理対象となるターゲット文に含まれる、動作主を指し示す全ての主語について、上記ステップS210、S212の処理を終了している場合には、動作主を指し示す主語のスコア付与処理ルーチンの処理を終了する。一方、処理対象となるターゲット文に含まれる、動作主を指し示す全ての主語について、上記ステップS210、S212の処理を終了していない場合には、処理対象となる動作主を指し示す主語を変更しステップS210へ移行する。
【0060】
上記ステップS118は、
図5に示す動作に対応する述語に関するスコア付与処理ルーチンによって実現される。
【0061】
図5に示す、ステップS302では、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、ステップS100において取得したターゲット語リストと、ステップS112において取得した処理対象のターゲット文の形態素解析処理結果とに基づいて、処理対象となるターゲット文に、動作に対応する述語が含まれるか否かを判定する。処理対象となるターゲット文に動作に対応する述語が含まれている場合には、ステップS304へ移行し、処理対象となるターゲット文に動作に対応する述語が含まれていない場合には動作に対応する述語に関するスコア付与処理ルーチンの処理を終了する。
【0062】
次に、ステップS304では、ステップS302において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、処理対象となる動作に対応する述語について、ステップS100において取得したターゲット語リストに基づいて、当該述語が育児語化しているか否かを判定する。当該述語が育児語化している場合には、当該ターゲット文中に動作に対応する述語の育児語が存在することを検出すると共に、ステップS306へ移行し、一方、当該述語が育児語化していない場合には、ステップS309へ移行する。
【0063】
次に、ステップS306では、ステップS304において検出した、処理対象となるターゲット文中に動作に対応する述語の育児語が存在することに応じて、1点のスコアを付与する。
【0064】
次に、ステップS307は、ステップS112の形態素解析結果に基づいて、ステップS304において検出された動作に対応する述語の育児語に、述部語尾が付随されているか否か判定する。当該動作に対応する述語の育児語に述部語尾が付随されていると判定された場合には、ステップS309へ移行し、当該動作に対応する述語の育児語に述部語尾が付随していないと判定された場合には、当該動作に対応する述語の育児語に述部語尾が付随していないことを検出すると共に、ステップS308へ移行する。
【0065】
次に、ステップS308では、ステップS307において検出した、処理対象となるターゲット文中の動作に対応する述語の育児語に述部語尾が付随していないことに応じて、1点のスコアを付与する。
【0066】
次に、ステップS309では、ステップS202において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、動作に対応する述語の全てについて、上記ステップS304の処理を終了したか否かを判定する。処理対象のターゲット文に含まれる動作に対応する述語の全てについて、上記ステップS304〜S308の処理を終了している場合には、動作に対応する述語のスコア付与処理ルーチンの処理を終了する。一方、処理対象のターゲット文に含まれる、動作に対応する述語の全てについて、上記ステップS304〜S308の処理を終了していない場合には、処理対象となる動作に対応する述語を変更し、ステップS304へ移行する。
【0067】
<実施例>
以下に、第1の実施の形態における育児語使用傾向測定装置100の実施例について説明する。上記
図2aに示すターゲット語リストを用いた場合を例に説明する。まず、表示部40に、動画データセット記憶部22に記憶されている動画を提示し、子供の母親にその内容を説明してもらうように促す。当該母親の発した音声は、入力部10において受け付ける。
【0068】
次に、育児語発話解析部36及び測定値生成部38のスコア化方式の具体例を示す。
図6に、「豚が坂を転がる」動画を提示した時の、ある母親の実際の発話例を示す。当該母親は、当該動画に対して多くの発話をし、6文中4文がターゲット文抽出部34においてターゲット文として抽出された。ターゲット文として抽出された4つに対し、それぞれ育児語発話解析部36及び測定値生成部38においてスコア化を行った結果、ターゲット文の各々に対するスコアは「3点、1点、1点、2点」となった。このように、複数のターゲット文がある場合には、その平均(Mean=1.75)を当該動画に対する育児語使用傾向スコアとして算出する。
【0069】
次に、6名の母親に4つの動画を提示した場合、測定値生成部38において、
図7に示すような結果を得ることができた。このように、育児語使用に関する測定値は、母親間でばらつきがあり、育児語使用の個人性をとらえる1つの方法として有望な方式である可能性が確認できる。
【0070】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置によれば、入力された発話の、幼児に対して使用する育児語に特有の特徴(育児語の存在、主語に助詞が付随しないこと、及び育児語である述部に述部語尾が付随しないこと)から、育児語使用傾向を精度良く測定することができる。
【0071】
また、子供に語りかける状況を実際に作り出し、その際に発話される内容を解析してスコア化することにより、各個人の育児語使用傾向を測定することができる。
【0072】
また、動画に対して発話を行うことで、絵本のような静止画を使用するより、育児語の発話をより促進する環境を提供することができる。
【0073】
また、被測定者(主に養育者)の育児語使用傾向を容易に且つ高精度に測定することが可能となり、子どもに対する語りかけの特徴の定量化を実現することができる。これにより、例えば、地方自治体や医療機関(産婦人科や小児科)などでの養育者向けの育児教室などで、子どもへの語りかけの特徴分析が、物理的及び時間的拘束条件もなく容易に実施可能になる。
【0074】
また、言語発達に遅れのある子どもに対して養育者がどのような点を意識して発話すればよいかに関して気づきの情報を与えることが可能になる。
【0075】
また、幼稚園教諭や保育士、及びそれらを目指す学生などの人材育成及びスキルアップ指導場面においても、発話の質に関する定量的評価は有用であり、第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置を利用することができる。これらの利用場面で第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置を実施する場合に、「幼児語彙発達データベース」から各語彙の獲得月齢(age of acquisition: AoA)(特許文献1:特開2011-018155号公報)などを参照して、子どもの成長に応じた発話の質に対する気づきに利用することにより、相乗効果がより見込まれる。
【0076】
また、発達心理学の分野では、養育者による、視線を合わせたり指差しをしたりする社会的インタラクションの特徴(非特許文献2:Carpenter, M., Nagel, K., & Tomasello, M.「 Social cognition, joint attention, and communicative competence from 9 to 15 months of age. Monograph of the Society for Research in Child Development」, 63 (4, No.255).1998.)や、養育者の語りかけの量(非特許文献3:Weisleder, A., & Fernald, A.「Talking to Children Matters: Early Language Experience Strengthens Processing and Builds Vocabulary」, 24(11), pp.2143-2152, 2013.)が幼児の語彙発達に影響を及ぼすことを実証しており、この点を考慮すると第1の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置による養育者発話傾向の測定技術は、育児支援及び発達支援という点で重要な意義を持つ。
【0077】
また、育児語使用傾向については子どもの成長に応じて変化していくものであり、成長に応じた育児語使用及びバランスが重要となる。その際に、その時点での発話の仕方が養育者ごとに客観的に分析できる。
【0078】
また、日本語においては、発話が育児語化及び口語化する場合に助詞が脱落する場合が多いため、ユーザ発話が日本語の場合であっても、文法的な観点から育児語使用を測定することができる。
【0079】
また、事物や動作のタイプが異なる動画を複数提示することによって、各個人の育児語使用傾向が精度よく測定することができる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0081】
第1の実施の形態においては、入力部10において受け付けるユーザ発話は、子どもがそばにいる状況において発話された場合について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、子どもがそばにいない場合において発話されたユーザ発話を入力部10において受け付けてもよい。
【0082】
また、第1の実施の形態においては、音声認識部28及び形態素解析部30の処理を、人手を介さない場合について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、測定の厳密化を伴う場合は、音声認識部28及び形態素解析部30の処理の後に、人手で、音声認識及び品詞付与の処理の整合性について確認を行ってもよい。
【0083】
また、第1の実施の形態においては、ターゲット文に含まれる主語又は述語が育児語化されていない場合には、特徴として検出しない場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、犬という対象に対し接頭辞、接尾辞などの付加による部分的な育児語化(「イヌさん」「お犬」など)についても、育児語に特有の特徴として検出し、当該特徴については0.5前後の中間的な重み付けをした得点を付与してもよい。
【0084】
また、第1の実施の形態においては、主語への助詞の付随があるかどうかを、ガ格の有無により判断していたが、これに限定されるものではない。例えば、トピックを示す「ハ格」が無い場合に、主語への助詞の付随がないと判断して特徴として検出し、当該特徴については0.5の中間的な重み付けをした得点を付与してもよい。
【0085】
また、第1の実施の形態においては、付与するスコアの重みを0及び1に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、実際に発話頻度データ等に基づいて、任意に付与するスコアの重みを設定してもよい。
【0086】
また、第1の実施の形態においては、動作主を指し示す主語に関するスコアと、動作に対応する述語に関するスコアとを加算して、ターゲット文の育児語使用傾向スコアとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ターゲット文の育児語使用傾向スコアを、動作主を指し示す主語に関するスコアと、動作を表す述語に関するスコアとを各々保持する形式としてもよい。
【0087】
また、第1の実施の形態においては、育児語又は成人語の一致する語が連続して繰り返して出現している場合には、当該連続する範囲を1つの動作主を指し示す主語又は動作を表す述語とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、育児語又は成人語の一致する語が連続して繰り返して出現している場合において、それぞれの育児語又は成人語を1つの動作主を指し示す主語又は動作を表す述語としてもよい。
【0088】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能であるし、ネットワークを介して提供することも可能である。
【0089】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0090】
第2の実施の形態では、被測定者に提示される画像として、動作主が受動対象に働きかけるような使役事象に関する動画を使用し、かつ、ターゲット文に含まれる目的語についてもスコアの付与対象としている点が第1の実施の形態と異なっている。使役事象に関する動画は、例えば、「猫が鳥を咥えて歩く」ことを表す動画である。
【0091】
<第2の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置の構成>
次に、第2の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置200の構成について説明する。
【0092】
本発明の第2の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置200は、
図8に示すように、入力部10と、演算部220と、表示部40と、出力部50とを備えている。
【0093】
演算部220は、動画データセット記憶部222と、動画刺激提示部24と、対応付け部25と、発話記録部26と、音声認識部28と、形態素解析部30と、ターゲット語リスト記憶部232と、ターゲット文抽出部234と、育児語発話解析部236と、測定値生成部38とを備えている。
【0094】
動画データセット記憶部222には、育児語の存在する動作主が、育児語の存在する動作を行う複数の動画が記憶されている。なお、動画を識別するために、動画の各々には識別番号情報が付加されている。また、第2の実施の形態では、動作主が受動対象に働きかけるような使役事象に関する動画を用いる。動作主が、育児語の存在する受動対象に働きかける使役事象に関する動画を用いることが好ましい。
【0095】
ターゲット語リスト記憶部232は、
図2bに示すように、提示される動画の各々について、当該動画が表わす動作主を示す主語の育児語及び成人語と、当該動画が表わす操作を示す述語の育児語及び成人語と、当該動画が表わす受動対象を指し示す目的語の育児語及び成人語とを対応付けたターゲット語リストを記憶している。また、ターゲット語リスト記憶部232は、上記の第1の実施の形態と同様に、動作主リスト、動作主育児語リスト、述語の育児語成人語リストを記憶すると共に、目的語の育児語及び成人語に対応するリストを目的語育児語成人語リストとして記憶し、目的語の育児語に対応するリストを目的語育児語リストとして記憶している。なお、ターゲット語リストの「No.」は、動画の識別番号情報の番号と同一の番号とする。
【0096】
ターゲット文抽出部234は、発話テキストの各々の形態素解析処理結果と、ターゲット語リスト記憶部232に記憶されているターゲット語リストとに基づいて、発話テキストの各々から、ターゲット文を抽出する。具体的には、発話テキストの各々について、当該発話テキストに含まれる語のうち少なくとも1つの語と、ターゲット語リスト記憶部232に記憶されているターゲット語リストのうち、当該発話テキストに付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する主語、述語、及び目的語の育児語及び成人語の少なくとも1つの語とが一致する場合、当該発話テキストに評価対象とするタグ付けを行うと共に、当該一致する語を含む文を、ターゲット文として抽出する。
【0097】
育児語発話解析部236は、特徴検出部2362と、スコア算出部2364とを含んで構成される。また、特徴検出部2362は、ターゲット文抽出部234において抽出されたターゲット文の各々について、当該ターゲット文の形態素解析処理結果と、ターゲット語リスト記憶部232に記憶されているターゲット語リストとに基づいて、育児語に特有の特徴として、動作主を指し示す主語の育児語の存在と、動作主を指し示す主語に助詞が付随されていないことと、動作に対応する述語の育児語の存在と、動作に対応する述語の育児語に述部語尾が付随されていないことと、受動対象を指し示す目的語の育児語の存在と、受動対象を指し示す目的語に助詞が付随されていないことを検出する。
【0098】
ここで、受動対象を指し示す目的語の育児語の存在を検出する方法について説明する。具体的には、まず、ターゲット文に含まれる語の各々について、ターゲット語リストに含まれる目的語育児語成人語リストのうち、当該ターゲット文に付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する目的語の育児語及び成人語の少なくとも1つと一致するかを判定し、ターゲット文に含まれる語の少なくとも1つについて一致すると判定された場合には、当該ターゲット文に、受動対象を指し示す目的語が有ると判定し、ターゲット文に含まれる語の全てについて一致しない場合には、当該ターゲット文に、受動対象を指し示す目的語が無いと判定する。なお、一致した語の各々をターゲット文の目的語と認定する。また、目的語の育児語又は成人語と一致する語が連続して繰り返して出現している場合には、当該連続する範囲を1つの目的語とする。
【0099】
次に、受動対象を指し示す目的語があると決定されたターゲット文について、当該ターゲット文の目的語の各々が、当該目的語と、ターゲット語リストに含まれる目的語育児語リストのうち、当該ターゲット文に付加されている動画の識別番号情報と一致する「No.」の動画に対応する目的語の育児語のうち少なくとも1つと一致するか判定する。一致する場合には、当該ターゲット文の目的語の育児語が存在することを検出する。
【0100】
次に、目的語に助詞が付随していないことを検出する方法について説明する。目的語があると判定されたターゲット文について、当該ターゲット文の目的語に助詞が付随しているか判定し、助詞が付随していない場合には、当該ターゲット文の目的語に助詞が付随していないことを検出する。第2の実施の形態においては、ヲ格の有無を判定し、ヲ格が有る場合は助詞が付随していると判定し、ヲ格がない場合は助詞が付随していないと判定する。
【0101】
スコア算出部2364は、ターゲット文の各々について、特徴検出部2362における検出結果に基づいて、育児語の使用傾向を表すスコアを算出する。具体的には、動作主を指し示す主語の育児語の存在が検出された場合、主語に助詞が付随されていないことが検出された場合、動作に対応した述語の育児語の存在が検出された場合、及び述部語尾が付随されていないことが検出された場合、受動対象を指し示す目的語の育児語の存在が検出された場合、受動対象を指し示す目的語に助詞が付随されていないことが検出された場合、の各々を、1点とし、ターゲット文について得点を加算することにより、当該ターゲット文に対するスコアが算出される。
【0102】
<第2の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置の作用>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置200の作用について説明する。まず、複数の動画の各々を表示部40に表示させて、被測定者に提示し、動画の各々について、当該動画が提示されているときに被測定者から入力されたユーザ発話に、当該動画の識別番号情報が付加されて、発話記録部26に記録される。そして、育児語使用傾向測定装置200は、
図9に示す育児語使用傾向測定処理ルーチンを実行する。
【0103】
まず、ステップS100では、ターゲット語リスト記憶部232に記憶されているターゲット語リストを読み込む。
【0104】
そして、ステップS102では、被測定者に提示された複数の動画のうちの何れか1つを、処理対象の動画として設定する。
【0105】
次に、ステップS110では、音声認識部28により、発話記録部26から、処理対象の動画の識別番号情報が付加されたユーザ発話の音声情報を読み込み、読み込んだユーザ発話の音声情報について、音声認識処理を行って、当該音声情報をテキスト化し、処理対象の動画の識別番号情報が付加された発話テキストを生成する。
【0106】
次に、ステップS112では、ステップS110において取得した発話テキストについて、形態素解析処理を行う。
【0107】
次に、ステップS114では、ステップS110において取得した発話テキストから、ステップS100において取得したターゲット語リストと、ステップS112において取得した発話テキストの形態素解析処理結果とに基づいて、ターゲット文の各々を抽出する。
【0108】
次に、ステップS115では、ステップS114においてターゲット文が抽出されたか否かの判定を行う。ターゲット文が抽出された場合には、ステップS116へ移行し、ターゲット文が抽出されなかった場合には、ステップS123へ移行する。
【0109】
次に、ステップS116は、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、動作主を指し示す主語に関するスコアを付加する。
【0110】
次に、ステップS118は、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、動作に対応する述語に関するスコアを付加する。
【0111】
次に、ステップS400では、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、目的語に関するスコアを付与する。
【0112】
次に、ステップS402では、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文の、ステップS116において付与したスコアと、ステップS118において付与したスコアと、ステップS400において付与したスコアとを加算して、処理対象となるターゲット文に対する育児語使用傾向スコアを算出する。
【0113】
次に、ステップS120は、ステップS114において抽出した全てのターゲット文について、上記ステップS116〜ステップS402の処理を終了したか否かを判定する。全てのターゲット文について、上記ステップS116〜ステップS402の処理を終了した場合には、ステップS404へ移行し、全てのターゲット文について上記ステップS116〜S402の処理を終了していない場合には、処理対象となるターゲット文を変更してステップS116へ移行する。
【0114】
次に、ステップS404では、処理対象の動画に対応するターゲット文の各々の、ステップS402において算出したスコアに基づいて、処理対象の動画に対する育児語使用傾向スコアを算出する。
【0115】
次に、ステップS123では、提示した全ての動画について、上記ステップS102〜ステップS404の処理を終了したか否かを判定する。提示した全ての動画について、上記ステップS102〜ステップS404の処理を終了している場合には、ステップS124へ移行し、提示した全ての動画について、上記ステップS102〜ステップS404の処理を終了していない場合には、ステップS102へ移行する。
【0116】
次に、ステップS124では、ステップS404において算出した提示した動画の各々の育児語使用傾向スコアに基づいて、測定値を算出する。
【0117】
次に、ステップS125では、ステップS404において算出した提示した動画の各々の育児語使用傾向スコアと、上記ステップS124において算出した測定値とを出力部50に出力して育児語使用傾向測定処理ルーチンの処理を終了する。
【0118】
上記ステップS400は、
図10に示す受動対象を指し示す目的語に関するスコア付与処理ルーチンによって実現される。
【0119】
図10に示す、ステップS502では、ステップS114において取得した処理対象となるターゲット文について、ステップS100において取得したターゲット語リストと、ステップS112において取得した処理対象のターゲット文の形態素解析処理結果とに基づいて、処理対象となるターゲット文に、受動対象を指し示す目的語が含まれるか否かを判定する。処理対象となるターゲット文に、受動対象を指し示す目的語が含まれている場合には、ステップS504へ移行し、処理対象となるターゲット文に、受動対象を指し示す目的語が含まれていない場合には、受動対象を指し示す目的語に関するスコア付与処理ルーチンの処理を終了する。
【0120】
次に、ステップS504では、ステップS502において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、受動対象を指し示す目的語のうちの、処理対象となる目的語について、ステップS100において取得したターゲット語リストに基づいて、当該目的語が育児語化しているか否かを判定する。当該目的語が育児語化している場合には、当該ターゲット文に目的語の育児語が存在することを検出するとともに、ステップS506へ移行し、一方、当該目的語が育児語化していない場合には、ステップS508へ移行する。
【0121】
次に、ステップS506では、ステップS504において検出された目的語の育児語の存在に応じて、1点のスコアを付与する。
【0122】
次に、ステップS508では、ステップS502において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、受動対象を指し示す全ての目的語について、上記ステップS504、S506の処理を終了したか否かを判定する。受動対象を指し示す全ての目的語について、上記ステップS504、S506の処理を終了している場合には、ステップS510へ移行し、一方、受動対象を指し示す全ての目的語について、上記ステップS504、S506の処理を終了していない場合には、処理対象となる目的語を変更し、ステップS504へ移行する。
【0123】
次に、ステップS510では、ステップS502において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる、受動対象を指し示す目的語のうちの、処理対象となる目的語について、ステップS112において取得した処理対象となるターゲット文の形態素解析処理結果に基づいて、当該目的語に助詞が付随しているか否かを判定する。当該目的語にヲ格がある場合には助詞が付随していると判定し、ステップS514へ移行し、当該目的語にヲ格がない場合には助詞が付随していないと判定し、当該目的語に助詞が付随していないことを検出すると共に、ステップS512へ移行する。
【0124】
次に、ステップS512では、ステップS510において検出された受動対象を指し示す目的語に助詞が付随していないことに応じて、1点のスコアを付与する。
【0125】
次に、ステップS514では、ステップS502において取得した処理対象となるターゲット文に含まれる受動対象を指し示す全ての目的語について上記ステップS510、S512の処理を終了したか否かを判定する。処理対象となるターゲット文に含まれる、受動対象を指し示す全ての目的語について上記ステップS510、S512の処理を終了している場合には、受動対象を指し示す目的語に関するスコア付与処理ルーチンの処理を終了する。一方、処理対象となるターゲット文に含まれる、受動対象を指し示す全ての目的語について、上記ステップS510、S512の処理を終了していない場合には、処理対象となる目的語を変更しステップS510へ移行する。
【0126】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る育児語使用傾向測定装置によれば、入力された発話の、幼児に対して使用する育児語に特有の特徴(育児語の存在、主語に助詞が付随しないこと、育児語である述部に述部語尾が付随しないこと、及び目的語に助詞が付随しないこと)から、育児語使用傾向を精度良く測定することができる。
【0127】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0128】
第2の実施の形態においては、被測定者に提示される動画を、動作主が受動対象に働きかけるような使役事象に関する動画とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、被測定者に提示される複数の動画が、動作主が自律的に動作する自動詞的な事象を表す動画、及び動作主が受動対象に働きかける使役事象に関する動画の双方を含んでいてもよい。
【0129】
また、第2の実施の形態においては、動作主を指し示す主語に関するスコアと、動作に対応する述語に関するスコアと、目的語に関するスコアとを加算して、ターゲット文の育児語使用傾向スコアとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ターゲット文の育児語使用傾向スコアを、動作主を指し示す主語に関するスコアと、動作に対応する述語に関するスコアと、受動対象を指し示す目的語に関するスコアとを各々保持する形式としてもよい。
【0130】
また、第2の実施の形態においては、育児語又は成人語の一致する語が連続して繰り返して出現している場合には、当該連続する範囲を1つの動作主を指し示す主語、動作を表す述語、又は受動対象を指し示す目的語とする場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、育児語又は成人語の一致する語が連続して繰り返して出現している場合において、それぞれの育児語又は成人語を、1つの動作主を指し示す主語、動作を表す述語、又は受動対象を指し示す目的語としてもよい。