【実施例】
【0062】
(試料調製)
<試験体>
ペーパーハニカム(基材)として、新日本フェザーコア株式会社製の積層板を用いた。試験体は、
図1に示すように、A(50mm)×B(15mm)×C(30mm)の大きさに調整した。
【0063】
<水ガラスの調製と浸漬方法>
各濃度のケイ酸アルカリ金属塩水溶液(水ガラス)に試験体を浸漬させた後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温にて2時間程度放置した。なお、一部の試験体については、水ガラスへの浸漬と室温放置とを繰り返した。試験体は半乾き状態にしてから次のシリカ被膜形成処理を行った。
【0064】
<炭酸化及び蒸気養生によるシリカ被膜形成処理>
図2に示したように、乾燥器内に小型蒸気養生装置1を準備し、その内部にステンレス製の網2を置き、その網2上にケイ酸アルカリ金属塩を含浸させた試験体3を載せた。蒸気養生装置1の下部には水4を入れ、さらに炭酸ガス5を充填して蒸気養生を行い、シリカ被膜形成処理を行った。次に、シリカ被膜処理した試験体を流水中に浸漬し、Na
2CO
3の残存やアルカリ金属の内部からの溶出がないことを確認するために、リトマス試験紙を用いて試験体表面のpHが中性であることを判定の基準とした。
【0065】
(物性測定)
<シリカ被膜の膜厚測定>
膜厚は、デジタルマイクロスコープVHX−200(株式会社キーエンス製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
<圧縮強度測定(強度試験)>
圧縮強度は、島津製作所製のAutograph AG−100kNGを用いて、クロスヘッド移動速度2mm/min.で、試験体の垂直方向(B方向)に圧縮して強度を測定した。なお、湿度は75%であった。測定結果を表1と
図4に示す。
【0067】
<BET比表面積測定>
BET比表面積測定装置(湯浅アイオニクス株式会社製オートソーブ−1−AG)を用いて、十分に加熱脱気した試験体について、窒素ガスを吸着させる3点法により測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0068】
<吸湿率測定>
ガラス製デシケータの底部に過飽和塩化ナトリウム水溶液を入れ、デシケータ用中板の上に試験体を置き、湿度70%で15時間吸湿させた後に吸湿率測定を行った。測定結果を表1に示す。過飽和塩化ナトリウム水溶液を用いることで湿度75%を想定したが、試験体の吸湿により15時間後のデシケータ内の湿度は70%であった。測定結果を表1に示す。
【0069】
<燃焼試験(難燃性試験)>
ガスバーナーを用いて、バーナーの出口より炎の高さが50mmになるように調整した。その位置にステンレス製網をセットし、網の上に試験体を置いて30秒間燃焼試験を行った。その時の炎の温度は950℃であった。具体的には、試験体の形体が全く変化しなかった状態を「◎」、燃焼せずに形体の変形が確認できた状態を「○」、燃焼によって変化した状態を「×」とした。試験結果を表1に示す。
【0070】
<流水試験(耐水性試験)>
流水試験は、試験体を流水中に一週間浸漬させ、その後の試験体の状態を目視により評価した。具体的には、試験体に全く変化がない状態を「◎」、試験体にほとんど変化がない状態を「○」、試験体の積層状態に変化が見られた状態(崩れた状態)を「×」とした。評価結果を表1に示す。
【0071】
<SEM観察>
走査型顕微鏡(日本電子製のJSM−5200LV)により各試験体の表面を観察した。比較例1と実施例2の観察結果を
図3(a)及び(b)に示す。
【0072】
(実施例1)
試験体を水溶液濃度5質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝すと、白煙が上がり、変形が始まった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0073】
(実施例2)
試験体を水溶液濃度20質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
未処理の試験体(後述する比較例1)とシリカで被覆処理された試験体(実施例2)とのSEM観察写真を
図3(a)と(b)に示す。未処理の試験体は、
図3(a)に示すようにセルロース繊維が絡み合って構成されているのが観察される。シリカで被覆された試験体は、
図3(b)に示すように全面に小さな斑点状の模様は観察されるが、亀裂はなく滑らかな表面状態であった。左側の白い2つの大きな斑点は異物である。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0074】
(実施例3)
試験体を水溶液濃度20質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、40℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:74hPa)を5時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0075】
(実施例4)
試験体を水溶液濃度30質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、120℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:2019hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0076】
(実施例5)
試験体を水溶液濃度30質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、140℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:3707hPa)を1時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0077】
(実施例6)
試験体を水溶液濃度20質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置し、その後、水ガラスに浸漬し、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置するという工程を3回繰り返し、前記繰り返し工程における最後の放置は2時間程度の放置として、半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
未処理の試験体(後述する比較例1)とシリカで被覆処理された試験体(実施例6)との圧縮強度を
図4(a)と(b)に示す。未処理の試験体は、
図4(a)に示すように圧縮強度は弱く、圧縮応力に対して急激には破壊されないが、少しずつ歪みながら破壊されていくのがわかる。一方、シリカで被覆された試験体は、
図4(b)に示すように圧縮強度は強く、シリカ被膜を形成することによって圧縮応力に対する抵抗力が大きく、破壊は急激に進むことがわかる。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0078】
(実施例7)
試験体を水溶液濃度30質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置し、その後、水ガラスに浸漬し、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置するという工程を3回繰り返し、前記繰り返し工程における最後の放置は2時間程度の放置として、半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0079】
(実施例8)
試験体を水溶液濃度30質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置し、その後、水ガラスに浸漬し、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に1時間程度放置するという工程を6回繰り返し、前記繰り返し工程における最後の放置は2時間程度の放置として、半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、60℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:200hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0080】
(実施例9)
試験体を水溶液濃度20質量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)30gと水溶液濃度20質量%のK
2O・SiO
2水溶液(水ガラス)30gを混合した水ガラスに浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置して半乾き状態にした。
次に、
図2に示すような蒸気養生装置内の下部に水を入れ、ステンレス網の上に試験体を載せた。さらに、炭酸ガスを充填して、90℃で蒸気養生処理(蒸気の分圧:706hPa)を3時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが中性であることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸漬しても形体の変化は全く見られず、浸漬前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0081】
(実施例10)
試験体を水溶液濃度30重量%のNa
2O・3.4SiO
2水溶液(水ガラス)に浸漬した後、表面の過剰な水ガラスを除去して室温に2時間程度放置として、半乾き状態にした。
次に、ステンレス網の上に試験体を載せ、
図2に示すような蒸気養生装置(下部に水を入れていない)内に入れた。さらに、炭酸ガスを充填して、23℃(室温)で養生処理(蒸気の分圧:28hpa)を72時間行い、試験体表面にシリカ被膜を形成させた。
その後、試験体は流水中に浸漬し、リトマス試験紙を用い、試験体表面のpHが9.2あることを確認した。
得られたシリカ被膜が形成された試験体について、シリカ被膜の膜厚測定、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸水率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、30秒間バーナーの炎に曝しても形体を保持したまま燃焼しなかった。
流水試験においては、水中に1週間浸透しても形態の変化は全く見られず、浸水前後の強度を指圧によって比較した結果、変化はなかった。
【0082】
(比較例1)
未処理の試験体(シリカ被膜が形成されていない試験体)について、圧縮強度測定、BET比表面積測定、吸湿率測定、燃焼試験、流水試験を行った。結果を表1に示す。
燃焼試験においては、バーナーの炎に曝されると5秒間で燃焼し始めた。
流水試験においては、10分間浸漬後に試験体の積層部分が膨潤したようになり、水を緩やかに掻き回すと積層の接着面が剥がれて試験体はバラバラになった。
【0083】
【表1】
【0084】
水ガラス濃度や塗布回数の増加により、膜厚は厚くなり、強度、比表面積、吸湿率は大きくなり、燃焼温度は高くなり、流水中での試験体の形体もより安定する傾向がある。
処理温度が低くなると、比表面積が大きくなり、それに伴い吸湿率も大きくなる傾向がある。しかしながら、処理温度が高くなると、シリカ分子同士の結合が進み、細孔が減少するために、比表面積が小さくなり、それに伴って吸湿率も小さくなるが、強度が大きくなり、燃焼温度が高くなり、流水中での試験体の形体はより安定性を増す傾向がある。