【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ローマは一日にして成らずというように、上述したように進化し、完成形に近づきつつあるミニマルファブであるが、その完成度の“スペクトル”の全体に亘って、実際に使えるようにする下支えをする方法があれば、それは重要である。スペクトルの最上位端である、
図12および
図13に示したようなミニマルファブモジュールは、塵埃の多い通常空間にあっても、所定の方式に則って連結するだけで、ユーザーの目的に適う多品種少量生産システムが形成されると期待される。
【0010】
一方で、大学や中小企業等、資金的に潤沢でなく、最上位端のミニマルファブは買えないけれども、必要最小限の機能を備えたミニマルファブは是非欲しいといったニーズは非常に多い。そこで、このようなユーザーに応えるような、上記のスペクトルの下位に属する謂わば「廉価版ミニマルファブ」を、いち早く試用しかつ、実働ミニマルファブの構成要素として実際に用いられるよう持って行くことは重要である。これを実現するためには、ミニマルファブを簡易な構成で低コストに生産可能であることが要求される。
【0011】
この廉価版ミニマルファブの一例を挙げると、単位処理装置のプロセス処理部を密閉して接続することで、使用の際に上述した密閉搬送容器を用いない形態が挙げられる。この形態においては、各ミニマルファブモジュールの主目標機能は十分満たすも、複数のミニマルファブモジュールを連結する場合における気密性の確保(気密連結性)、ミニマルファブモジュールへの原料(材料)供給時の気密性の確保(気密原料(材料)補給可能性)などの、連結時、分離時等においてミニマルファブモジュールにあまねく要求される“プロトコル”機能に関しては、必ずしも完璧に備えていない。
【0012】
また、
図12に示したような密閉搬送容器を用いるミニマルファブにおいても、ミニマルファブモジュールのメンテナンス時における気密性の確保(気密メンテナンス性)の問題があった。すなわち、複数のミニマルファブモジュールが連結されることで構成されるミニマルファブにおいては、密閉搬送容器を用いた局所クリーン生産方式をとっているため、ウェハはミニマルファブの設置環境には依存せず常に高清浄環境の下に置くことができる。このことから、通常のプロセス操作では、ミニマルファブモジュール群が設置されている環境の清浄度をことさら向上させる必要が無い。しかしながら、例えば、ミニマルファブモジュールのメンテナンス時などにおいては、ミニマルファブモジュールの内部を開放するために、設置環境における汚染物質がミニマルファブモジュールのプロセス処理部などの内部へ侵入してしまう。このため、メンテナンス時においては、ミニマルファブを大型のクリーンルームに移設する必要が生じたり、ミニマルファブ自体を大型のクリーンルーム内に設置する必要が生じたりする。このように、メンテナンスを含めたミニマルファブシステムの実用化においては、ミニマルファブシステムの大きな特長である局所クリーン化のメリットが殆ど生かせないという大きな問題を抱えている。すなわち、上述のミニマルファブを実用に供するシステムとするには、メンテナンス時などにおける、内部への汚染進入の問題を解決しなければならない。
また、災害や事故等の現場での、緊急を要する手術や医療行為のための環境として、エアテント(非特許文献1、2参照。)があるが、清浄度が高いものは得られていない。
【0013】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、ミニマルファブモジュール等の単位処理装置を複数用いて構成されるデバイス製造装置の、単位処理装置のメンテナンス時や、単位処理装置を複数連結する場合等において、1つまたは複数の単位処理装置単位で局所クリーン化を実現することができ、単位処理装置の内部の汚染を防止することができる高清浄環境装置およびこれを用いた高清浄環境システムを提供することである。
【0014】
また、この発明が解決しようとする別の課題は、ミニマルファブ等の単位処理装置による生産システムによって、できるだけ早期に既存の生産システムを置き換え、今後のシステム半導体等のデバイス製造に関する研究開発の成果を、実際の製造ラインに早期かつ容易に組み込むことができるデバイス製造装置の組み立て、立ち上げまたはメンテナンス方法を提供することである。
さらに、装置価格や製造物製造コスト、あるいはメンテナンスコストを大きく低減することができるミニマルファブを早期に実現し、社会資本化することである。
【0015】
また、この発明が解決しようとする別の課題は、高度半導体素子作製環境に勝るともおとらない無塵・無菌環境を要する、災害や事故等の現場での、緊急を要する手術や医療行ための機動性に富む高清浄環境プラットフォームを提供することである。
また、この発明が解決しようとする別の課題は、単位処理装置のメンテナンス、連結等を行う場合に単位処理装置の内部の汚染を防止することができ、人や動物が無塵・無菌環境で生活、居住、滞在等することができ、あるいは治療等を受けることができる高清浄環境装置の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、この発明は、
移動可能かつ折り畳み可能な包囲体を有し、
上記包囲体は、上記包囲体を支える折り畳み可能な骨格と、上記骨格を覆うようにして上記骨格に対し着脱自在に設けられたシート状の包囲部とを有し、上記包囲部は上記骨格によって張られることで密閉可能な閉空間を形成し、上記骨格は折り畳み時に、上記閉空間の体積の十分の一以下の体積に縮小可能であり、
上記閉空間内に吸入口および排気口を有し、上記閉空間と隔絶して、上記排気口から流出する気体の全量が上記吸気口から再流入する気体流路が設けられており、上記気体流路の一部にファン・フィルターユニットが組み込まれており、上記包囲部の少なくとも一部が防塵作用をもつ材料で構成されていることを特徴とする高清浄環境装置である。
【0017】
包囲体の形状は、種々の形状であってよく、必要に応じて選ばれるが、具体例を挙げると、直方体状または立方体状、直方体または立方体を変形した形状などであってよい。また、包囲体によって形成される閉空間の大きさは、基本的には使用目的等に応じて設計により適宜決定することができる。
【0018】
また、骨格は、包囲部と組み合わせることで閉空間が形成されるようなものであれば基本的にはどのような構成を有していてもよく、例えば、中空の棒状・丸太状構造体や、中空の断面がI字状やL字状の構造体等が挙げられる。例えば、棒状構造体は、複数の棒状体を組み合わせて形成されたもの、一体の棒状体を彎曲、屈曲、折り曲げ等させて形成されたもの、これらを組み合わせて形成されたもの等が挙げられる。骨格を複数の棒状体を組み合わせて構成する場合にあっては、例えば、棒状体同士を回転可能なヒンジなどで接続することが好ましい。このヒンジを回転させることで、例えば、複数の棒状体を一体に纏めることができ、格納時に少数本数の棒状構造体に縮約することができる。また、目的のサイズに応じて、大小のエアテント様の構造を取ることもできる。
【0019】
また、棒状体の形状は、直柱形状を有することが好ましく、その断面形状は適宜選択することができるが、例えば、円形状、正方形状、長方形状などであることが好ましい。また、棒状体は、例えば、中空部を有する中空形状を有することが好ましく、その中空率は例えば70%以上であることが好ましい。また、棒状体を構成する材料は、例えば、弾性を有する材料で構成されることが好ましい。中空部を有する棒状体としては、具体的には、例えば、パイプ、チューブ、ホース等が挙げられる。この中空部を有する棒状体が、例えば弾性体で構成され、中空部に、例えば空気等の気体などが封入されると内部圧力によって弾性体に張力が発生し、これにより剛性を得て包囲体の躯体を支える骨格を構成することができる。この場合、骨格は、空気等の気体が封入されていない折り畳み時における体積が、空気等の気体が封入される骨格形成時の体積と比較して100分の1以下の体積に縮小可能であることが好ましい。また、中空部に空気等の気体が封入されていない場合には、例えば、人間が容易に折り曲げられる程度の可撓性を有することが好ましく、また、例えば、中空部に空気等の気体が封入されている場合には、人間が容易に折り曲げられない程度の剛性を有することが好ましい。弾性体は、特に限定されるものではなく、従来公知の弾性体を用いることができるが、具体的には、例えば、ゴム、樹脂等の高分子材料が挙げられる。また、中空部に封入されるものは、気体に限られず水等の液体であってもよい。骨格12が上記のように構成されることで、その場立ち上げ、その場しまいこみの可能な骨格12を形成することが可能となる。
【0020】
また、例えば、複数の、中空部を有する棒状体を組み合わせて骨格を形成することで、骨格の一部を気体流路として用いることもできる。この場合、例えば、チューブに空気等の気体を封入して骨格を形成する場合においては、気体が封入されない気体流路を構成する骨格の一部と、気体が封入される骨格の一部とが一体に構成される。また、骨格は、例えば、棒状体による閉じた回路によって形成されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば、端部を有する「盲腸様」の回路によって形成されていてもよい。
【0021】
シート状の包囲部は、骨格と組み合わせることで、閉空間が形成されるようなものであれば基本的にはどのようなものであってもよく、一体に形成されたものであっても、複数の部材を組み合わせて形成されたものであってもよいが、少なくとも一部が防塵作用を有する壁材で構成されることが好ましい。この壁材としては、防塵作用を有していれば基本的には限定されるものではないが、例えば、軽量で可撓性を有するものであることが好ましく、この可撓性は、例えば、人間の力で容易に折れ曲る程度の可撓性であることが好ましい。この可撓性を有する壁材としては、例えば、シート状、フィルム状等の可撓体である薄膜体が挙げられる。薄膜体としては、具体的には、例えば、フレキシブルシート、フレキシブルフィルム等が挙げられ、例えば、ビニールシート、ポリエチレンシート等の樹脂シート、PETフィルム等の樹脂フィルム、ゴムシート、不織布、障子紙等の紙パルプ等が挙げられる。
【0022】
また、高清浄環境装置の用途によっては、包囲部は、例えば、短波長光成分を包囲体の内部へ透過させないように構成された透明壁材で構成されることが好ましい。この透明壁材は、短波長光成分を透過させないように構成されていれば、基本的には限定されるものではないが、それ以外の構成を、例えば、上述した壁材と同様な構成とすることができ、例えば、薄膜体で構成することが特に好ましい。この透明壁材としては、例えば、紫外線吸収材、紫外線反射材等を混入して形成されたもの、紫外線吸収材、紫外線反射材等が、可視光が入射または透過する面に設けられているものが挙げられ、具体的には、例えば、UVカット透明ガラス・樹脂、UVカット透明シート、UVカット透明フィルム等の他、外観上は典型的にはオレンジ色を有する透明ガラス・樹脂、透明シート、透明フィルム等が挙げられる。また、これらから選ばれる少なくとも2つの材料の積層構造であってもよい。また、例えば、包囲部の少なくとも一部が上記の透明壁材で構成される場合にあっては、上記の透明壁材以外の壁材が、例えば、光を完全に遮断するもので構成されていることが好ましい。光を完全に遮断するものとしては、具体的には、例えば、光入射面が光、特に可視光を全反射するように構成されているもの、例えば、光入射面に金属を蒸着させて鏡面とした壁材が挙げられる、また、例えば、光入射面が光、特に可視光を全吸収するように構成されているもの、例えば、光入射面が黒色の材料、黒色に染色された材料で構成された壁材等が挙げられ、また、例えば、これらの構成を組み合わせた構造、例えば、これらの構成の積層構造等が挙げられる。また、壁材は、例えば、上記に挙げたものの中から適宜選択ができ、例えば、薄膜体で構成されることが好ましい。また、包囲体の内壁を構成する包囲部の面には、発塵を抑えるために、例えば、この包囲部のうち可視光透過部を除く全部または一部にポリテトラフルオロエチレンのコーティングを施すようにしてもよい。典型的な一例を挙げると、包囲部は、短波長光成分を透過させない透明シートおよびダスト微粒子を100%は通さず、気体分子は通す隔壁で構成される。
【0023】
また、例えば、包囲部の少なくとも一部が、ダスト微粒子を100%は通さず、気体分子は通す隔壁により形成されていてもよい。こうすることで、包囲体の内外で酸素濃度や二酸化炭素濃度を平衡に保つことができる。ここで、「ダスト微粒子を100%は通さず」とは、例えば、ダスト微粒子の阻止率(透過率)が、100%(0%)ではなくとも、少なくとも95%以上(5%以下)、望ましくは99%以上(1%以下)である。また、ダスト微粒子を100%は通さず、気体分子は通す隔壁は、典型的には、ガス交換膜が挙げられる。また、ダスト微粒子を100%は通さず、気体分子は通す隔壁は、例えば、非光透過性、すなわち光遮断性を有することが好ましく、例えば、光吸収材、光反射材等で構成されたガス交換膜などが挙げられ、具体的には、例えば、黒色の材料で構成されたガス交換膜、全体が黒色に着色されたガス交換膜、例えば、墨汁を含浸させた不織布、フィルター材、障子紙等が挙げられる。
【0024】
気体流路は、包囲体の内部に設けられてもよく、外部に設けられてもよいが、包囲体の内部に設けられることが好ましい。包囲体の内部に設けられる場合にあっては、気体流路は、例えば、包囲体の床部に載置されたファン・フィルターユニットの排気口に気密性を持って接続され、この気体流路が天井部まで延び、先端部に排気口が設けられる。
【0025】
ここで、この高清浄環境装置において包囲体の内部が清浄化される原理について説明する。
【0026】
包囲体の内部のダスト微粒子密度nは場所の関数となり、同じく単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子脱離レートσも最も一般的に場所の関数と考えられる。注目している閉空間の内部で、塵が発生したり、消滅したりすることはない。このとき、注目している閉空間内の場所xにおける時刻tのダスト微粒子密度n(x,t)は、その閉空間の境界(エッジ)(閉空間の内側の2次元面)からの影響が伝播して来て、その変化が決まる。包囲体の内部の清浄化する閉空間の体積をV、その閉空間の内面積をS、単位面積・単位時間当たりのダスト微粒子の脱離レートをσ、包囲体の設置環境(即ち外気) のダスト微粒子密度をN
0 、塵埃フィルターのダストの捕集効率をγとすると、ダスト微粒子密度nは、
【数1】
なる微分方程式を満たす。
【0027】
閉空間内の空気の流れが至るところ均一で場所依存性がないと近似することができる場合は、
【数2】
が得られる(特許文献2、非特許文献3、4参照。)。十分時間が経ち、定常状態になると、式(2)の左辺はゼロとなり、到達ダスト微粒子密度nは
【数3】
となる。
【0028】
この包囲体では、清浄度を支配するパラメータが、従来のクリーンルームとは全く異なる。従来のクリーンルームの性能で重要な要素は塵埃フィルターのダスト捕集効率γであり、これが1に限りなく近い方が良い(中性能フィルターよりHEPAフィルター、HEPAフィルターよりULPAフィルターが求められる所以である)。こうして、フィルターのダスト微粒子の除去能力がクリーンルームの性能に直接効いてくるために、高価なHEPAフィルターやULPAフィルターが使われるが、このフィルターの片側は、常に外気に接しているために、プレフィルターが用いられてはいるものの、フィルターは2〜3年程度で取り替えられている。他方、上記の包囲体では、フィルターのダスト捕集効率はそれほど支配的ではなく、むしろ包囲体の内部空間におけるダストの湧き出しの方が重要になってくる。到達清浄度は包囲体の内部環境にのみ支配され、式(3)にN
0 が現れないことから分かる通り、包囲体の設置環境には全く影響されないという好ましい特性を有する。これは従来のスーパークリーンルームとは大きく異なる利点である。即ち、上記の包囲体は、建設コストの高い従来型スーパークリーンルームと異なり、製造ラインでも研究室でも、雨露をしのげる環境であれば、場所を選ばず設置が可能となる。また、式(3)から分かるように、γが1に近くなくても、γ=1の究極の場合に比べても、清浄度の劣化がほとんどない点が大きな特長である。
【0029】
この高清浄環境装置は、必要に応じて、例えば、包囲体に接して設けられた前室を備えるようにすることができる。以下においては、必要に応じて、前室が設けられる包囲体に囲まれる空間を主室と呼ぶ。この前室は、例えば、高清浄環境装置として上記に挙げたものと同様に構成することができる。前室は、具体的には、例えば、移動可能かつ折り畳み可能な前室包囲体を有し、この前室包囲体は、前室包囲体を支える折り畳み可能な前室骨格と、前室骨格を覆うようにして前室骨格に対し着脱自在に設けられた前室包囲部とを有して構成される。前室包囲部は前室骨格によって張られることで密閉可能な閉空間を形成することができる。また、前室骨格は、例えば、折り畳み時に、上記の前室閉空間の体積の十分の一以下の体積に縮小可能である。前室骨格としては、高清浄環境装置の骨格として上記に挙げたものの中から適宜選択することができる。また、前室骨格は、骨格(主室骨格)と別々に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。また、前室包囲部も、高清浄環境装置の包囲部として上記に挙げたものの中から適宜選択することができる。また、前室包囲部は、前室と主室との全体を一体に包囲することで前室包囲体を含む包囲体を形成してもよい。
【0030】
また、前室閉空間内には吸入口および排気口を有し、前室閉空間と隔絶して、前室閉空間内の排気口から流出する気体の全量が前室閉空間内の吸気口から再流入する気体流路が設けられている。この気体流路の一部には、例えば、ファン・フィルターユニットが組み込まれている。また、例えば、主室の閉空間と前室閉空間とは、少なくとも一部に、ダスト微粒子を100%は通さず、気体分子は通す隔壁を備えた開閉可能な包囲部および/または前室包囲部(間仕切り)を介して接しており、包囲部および/または前室包囲部は開閉部を有する。
【0031】
また、この発明は、
少なくとも1つの高清浄環境装置と、
少なくとも1つの単位処理装置とを有し、
上記高清浄環境装置は、
移動可能かつ折り畳み可能な包囲体を有し、
上記包囲体は、上記包囲体を支える折り畳み可能な骨格と、上記骨格を覆うようにして上記骨格に対し着脱自在に設けられたシート状の包囲部とを有し、上記包囲部は上記骨格によって張られることで密閉可能な閉空間を形成し、上記骨格は折り畳み時に、上記閉空間の体積の十分の一以下の体積に縮小可能であり、
上記閉空間内に吸入口および排気口を有し、上記閉空間と隔絶して、上記排気口から流出する気体の全量が上記吸気口から再流入する気体流路が設けられており、上記気体流路の一部にファン・フィルターユニットが組み込まれており、上記包囲部の少なくとも一部が防塵作用をもつ材料で構成されており、
上記単位処理装置は、デバイス製造プロセスのうちの単一プロセスを処理する密閉された内部空間を有し、
上記包囲体の内部に上記単位処理装置が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする高清浄環境システムである。
【0032】
単位処理装置(例えば、ミニマルファブモジュール)は、デバイス製造装置(例えば、ミニマルファブ)の構成のうち最小のものであって、デバイス製造プロセスのうちの単一プロセスを処理する内部空間を有するものであれば、基本的には限定されないが、ワーク対象のウェハを、極小単位のデバイスを作製するウェハサイズとすることが好ましい。また、上記ウェハを1枚毎に処理する枚葉式処理方式とすることが好ましい。また、「単一の処理プロセス」とは、従来のデバイス処理プロセスのうちの1つの処理プロセスを示すほかに、従来の処理プロセスを複数含むものや、あるいは従来は1つの処理プロセスで行っているものを複数に分割したものであってもよい。この単位処理装置は、例えば、プロセス処理が割り当てられたものが複数連結されることによってデバイス製造装置が構成される。
【0033】
また、単位処理装置は、上記の内部空間が外部空間と連通する場合に高清浄環境装置の内部に設けられることが好ましい。すなわち、典型的には、ファン・フィルターユニットを駆動することによって包囲体の内部を清浄化した状態で、上記の閉空間と上記の内部空間とを連通させる。高清浄環境装置の内部に設けられる単位処理装置は、基本的にはどのように配置されてもよいが、例えば、単位処理装置の境界(エッジ)の部分が、高清浄環境装置の包囲体で囲い込まれるようにして設けられることが好ましく、この場合、複数の単位処理装置の中央に上記包囲体が来るように設けられることが好ましいが、隣接する単位処理装置とセカンドニアレストユニットとの中間の接続部が中央となるように上記包囲体が設けられてもよい。また、高清浄環境装置を、例えば、上述した、その場立ち上げ、その場しまいこみの可能なように構成すると、複数の単位処理装置のうち、一部の単位処理装置に高清浄環境が必要になったときに、その単位処理装置を迅速に高清浄環境下に置くことが可能となる。
【0034】
また、この発明は、
高清浄環境装置の使用方法であって、
上記高清浄環境装置は、
移動可能かつ折り畳み可能な包囲体を有し、
上記包囲体は、上記包囲体を支える折り畳み可能な骨格と、上記骨格を覆うようにして上記骨格に対し着脱自在に設けられたシート状の包囲部とを有し、上記包囲部は上記骨格によって張られることで密閉可能な閉空間を形成し、上記骨格は折り畳み時に、上記閉空間の体積の十分の一以下の体積に縮小可能であり、
上記閉空間内に吸入口および排気口を有し、上記閉空間と隔絶して、上記排気口から流出する気体の全量が上記吸気口から再流入する気体流路が設けられており、上記気体流路の一部にファン・フィルターユニットが組み込まれており、上記包囲部の少なくとも一部が防塵作用をもつ材料で構成されており、
上記包囲体の内部で、単位処理装置のメンテナンス、単位処理装置の連結、生活、居住、滞在または治療を行う高清浄環境装置の使用方法である。
ここで、単位処理装置のメンテナンスには、修理、クリーニング、原料(材料)供給等が含まれる。
【0035】
また、この発明は、
複数の単位処理装置で構成されたデバイス製造装置の組み立て、立ち上げまたはメンテナンス方法であって、
移動可能かつ折り畳み可能な包囲体を有し、
上記包囲体は、上記包囲体を支える折り畳み可能な骨格と、上記骨格を覆うようにして上記骨格に対し着脱自在に設けられたシート状の包囲部とを有し、上記包囲部は上記骨格によって張られることで密閉可能な閉空間を形成し、上記骨格は折り畳み時に、上記閉空間の体積の十分の一以下の体積に縮小可能であり、
上記閉空間内に吸入口および排気口を有し、上記閉空間と隔絶して、上記排気口から流出する気体の全量が上記吸気口から再流入する気体流路が設けられており、上記気体流路の一部にファン・フィルターユニットが組み込まれており、上記包囲部の少なくとも一部が防塵作用をもつ材料で構成されており、
上記単位処理装置は、デバイス製造プロセスのうちの単一プロセスを処理する密閉可能な内部空間を有し、
上記包囲体の内部に上記単位処理装置が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする高清浄環境システムである。
【0036】
この高清浄環境システムを、例えば、ミニマルファブに適用する場合には、例えば、高清浄環境装置を適用するミニマルファブモジュールに対してその場で立ち上げ、高清浄環境装置内にミニマルファブモジュール(単位処理装置)を収納し、高清浄環境装置内においてミニマルファブモジュールの条件出しや、ミニマルファブ(デバイス製造装置)への接続を行うことができる。
【0037】
このように、この高清浄環境システムを例えば上述のミニマルファブに適用することにより、ミニマルファブを構成するミニマルファブモジュールを、そのミニマルファブモジュールの本来の目標が達成される仕様となった時点にて、全体ラインへの接続が可能となるので、ミニマルファブの早期立ち上げが可能であり、また、雨露さえ凌げる環境さえあれば、どこでもミニマルファブを立ち上げることができる。また、ミニマルファブの立上げ、(移設等に伴う)立ち下げという、謂わば“併進対称性”を破る地点の助けとなる。また、ミニマルファブの各ユニットの完成版、完全自律版の露払い役を果たすことで、ミニマルファブ完全版の辺縁系を成す。これにより、廉価なシステムの構築を結果として可能とし、大学等、高価なフルバージョン、セルフコンテインド(self-contained)バージョンのミニマルファブシステムを費用的に持てないユーザーにも、ミニマルファブシステムのミニマルコアエッセンスのエンジョイを可能とすることができ、トータルな導入のユーザーの裾野が広がる。また、この高清浄環境システムを、例えば、高清浄度医療環境に適用することで、災害現場等でその場立上げができる高清浄度医療環境を提供することができる。すなわち、この高清浄環境システムは、包囲体を構成する骨格を収納時には大幅に縮小するように構成したので、装置のメンテナンス、医療活動等のオペレーションが必要となった時に、その場で即時に立ち上げが可能で、このオペレーションが終り次第、直ちに撤収でき、かつ、移動時にかさばることの無い、総合高清浄環境を提供することができる。
【0038】
また、任意の単位処理装置を高清浄環境下で接続することが可能であるので、密閉容器を有しなくても、連結時における気密性の確保など(気密連結性、気密原料(材料)補給可能性など)の、連結時、分離時等においてミニマルファブモジュールにあまねく要求される“プロトコル”機能を備えることができる。これによって、密閉搬送容器を有しないデバイス製造装置においても、製造レシピに応じてミニマルファブの構成を簡易に変更することができる「廉価版ミニマルファブ」とすることができる。これによって、ミニマルファブのラインアップを側面支援することができる。また、異なる構成の単位処理装置であっても高清浄環境下での連結が容易に可能となるので、ミニマルファブの同工異曲版が出てきても、それごと、この高清浄環境システムとすることで、逆に、ミニマルファブの併置版の存在を許さず、ミニマルファブの“真似システム”を、本家ミニマルに収斂させる、側面支援システムを形成することができる。