特許第6241869号(P6241869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241869コンクリートキャスクの除熱装置およびコンクリートキャスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241869
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】コンクリートキャスクの除熱装置およびコンクリートキャスク
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20171127BHJP
   G21F 5/10 20060101ALI20171127BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G21C19/32 W
   G21F5/00 Q
   G21F9/36 501J
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-159061(P2013-159061)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31523(P2015-31523A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】竹田 浩文
【審査官】 右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−145111(JP,A)
【文献】 特開平07−183680(JP,A)
【文献】 特開昭62−272559(JP,A)
【文献】 特開2008−192751(JP,A)
【文献】 特開2005−291960(JP,A)
【文献】 特開2006−275730(JP,A)
【文献】 特開昭63−159795(JP,A)
【文献】 特開2011−047670(JP,A)
【文献】 実開昭55−042143(JP,U)
【文献】 特表平07−504501(JP,A)
【文献】 特開2007−024424(JP,A)
【文献】 特表2007−533944(JP,A)
【文献】 特開2005−024514(JP,A)
【文献】 米国特許第07628287(US,B1)
【文献】 特開平10−297678(JP,A)
【文献】 特開2003−121584(JP,A)
【文献】 特表2008−513765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
G21F 5/00− 5/12
G21F 9/36
F28F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート容器内に収容されたキャニスタを冷却する内部冷却空気を、給気口から取り込んで前記給気口よりも高い位置に設けられた排気口から排出するコンクリートキャスクの除熱装置において、
前記コンクリート容器の外側に配置され、前記排気口と前記給気口とを連通して前記排気口から排出された前記内部冷却空気を冷却しながら前記給気口へと導く循環通路と、
前記循環通路の上部に設けられる放熱手段とを備え、
前記放熱手段は蓋状部材によって塞がれた開口部であり、
前記蓋状部材は前記内部冷却空気の温度が予め想定された温度よりも高くなると前記内部冷却空気の熱によって変形し又は溶融する固着手段によって前記循環通路に固着され、前記固着手段の変形又は溶融により自重で外れて前記開口部を開くものである
ことを特徴とするコンクリートキャスクの除熱装置。
【請求項2】
前記放熱手段は、前記循環通路の下部にも設けられていることを特徴とする請求項1記載のコンクリートキャスクの除熱装置。
【請求項3】
前記蓋状部材の落下を防止する連結手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートキャスクの除熱装置。
【請求項4】
前記循環通路の途中に前記内部冷却空気の検査用サンプルを採取可能なサンプリング用パイプを備えてガスサンプリング可能としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のコンクリートキャスクの除熱装置。
【請求項5】
前記サンプリング用パイプに前記内部冷却空気の圧力を測定する圧力計を備えることを特徴とする請求項4記載のガスサンプリング可能なコンクリートキャスクの除熱装置。
【請求項6】
コンクリート容器内に収容されたキャニスタを冷却する内部冷却空気を、給気口から取り込んで前記給気口よりも高い位置に設けられた排気口から排出するコンクリートキャスクにおいて、請求項1から5のいずれか一つに記載された除熱装置を備えることを特徴とするコンクリートキャスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートキャスクの除熱装置及びこれを備えたコンクリートキャスクに関する。更に詳しくは、本発明は、流路を閉ループにして外部の塩分環境から遮断した内部冷却空気を自然対流によって循環させながらコンクリートキャスク内を冷却するコンクリートキャスクの除熱装置、及びこれを備えたコンクリートキャスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電で発生した使用済燃料はコンクリートキャスクに収容され、適切な管理の下で貯蔵される。コンクリートキャスクは、使用済燃料を収容するキャニスタと、このキャニスタを収容するキャスク本体を備えている。原子炉から取り出した後も使用済燃料中の核分裂生成物(FP)の崩壊は続くので、貯蔵中もキャニスタは発熱する。このため、例えば特開2003−194729号公報に記載されたコンクリートキャスクでは、図5に示すように、FPを収容するキャニスタ101とキャスク本体102との間に流路103が設けられており、冷却空気104を流すことでキャニスタ101の熱を除去している。キャスク本体102の下部には空気導入口105が、上部には空気導出口106がそれぞれ設けられており、キャニスタ101を冷却することで加熱された冷却空気104は空気流路103を上昇して空気導出口106から排出され、これに伴い空気導入口105から新たな空気が冷却空気104として取り込まれる。即ち、外部から取り込まれた冷却空気104は、加熱による自然対流によって空気導入口105→流路103→空気導出口106へと流通する。
【0003】
ところで、貯蔵中のキャニスタ101には応力腐食割れ(SCC)が生じる虞があり、応力腐食割れの発生には冷却空気104中に含まれる塩分が大きく影響することが知られている。そのため、空気導出口106と空気導入口105とを空気通路で連結することで冷却空気104の流路を閉ループにし、空気導出口106から排出された冷却空気104を空気導入口105へと循環させることで外部の塩分環境から遮断してキャニスタ101に塩分が付着するのを防止することが考えられている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−194729号公報
【特許文献2】特開2010−145111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷却空気104の流路を閉ループにした場合には、冷却空気104が外部環境から遮断されることからその温度変化の把握がより重要になり、冷却空気104の温度管理を常時継続する必要がある。使用済燃料の貯蔵は長期にわたるものであり、冷却空気104の温度管理を常時継続するのでは管理負担が膨大なものとなる。
【0006】
本発明は、冷却空気の流路を閉ループにした場合であっても継続的な温度管理を不要にできるコンクリートキャスクの除熱装置、及びこれを備えたコンクリートキャスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、コンクリート容器内に収容されたキャニスタを冷却する内部冷却空気を、給気口から取り込んで給気口よりも高い位置に設けられた排気口から排出するコンクリートキャスクの除熱装置において、コンクリート容器の外側に配置され、排気口と給気口とを連通して排気口から排出された内部冷却空気を冷却しながら給気口へと導く循環通路と、循環通路の上部に設けられる放熱手段とを備え、放熱手段が蓋状部材によって塞がれた開口部であり、蓋状部材が内部冷却空気の温度が予め想定された温度よりも高くなると内部冷却空気の熱によって変形し又は溶融する固着手段によって循環通路に固着され、固着手段の変形又は溶融により自重で外れて開口部を開くものである。
【0008】
したがって、内部冷却空気は、コンクリートキャスク内でキャニスタを冷却した後、排気口から排出され、循環通路を流れながら外気で冷却されて給気口へと循環される。即ち、内部冷却空気の流路は閉ループになり、内部冷却空気は外部の塩分環境から遮断される。内部冷却空気には、コンクリートキャスク内では加熱による上昇力が作用し、コンクリートキャスクの外の循環通路内では冷却による下降力が作用する。このため、内部冷却空気は自然対流によって循環する。また、内部冷却空気の温度が異常に上昇し想定温度を超えると、蓋状部材が外れて開口部が開かれて循環通路内が大気に開放される。これにより、内部冷却空気の温度が低下する。
【0009】
また、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置は、放熱手段が循環通路の下部にも設けられている。したがって、内部冷却空気の温度が異常に上昇し想定温度を超えた場合、循環通路の上部に加えて下部も開放され、循環通路の下部でも空気の流通が行われる。
【0010】
また、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置は、循環通路の途中に内部冷却空気の検査用サンプルを採取可能なサンプリング用パイプを備えるものである。したがって、サンプリング用パイプから内部冷却空気を採取して検査することができ、キャニスタの密封性が破れ、キャニスタ内のヘリウムガス等の封入ガスが冷却空気内に漏えいした場合には、外界への漏えいを未然に防ぐとともに、定期的なガスサンプリングを行うことで、キャニスタの健全性をチェックすることができる。
さらに、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置は、サンプリング用パイプに内部冷却空気の圧力を測定する圧力計を備えるものである。したがって、キャニスタの密封性が破れ、キャニスタ内のヘリウムガス等の封入ガスが冷却空気内に漏えいした場合、外界への漏えいを未然に防ぐとともに、定期的なガスサンプリングを行うことで、キャニスタの健全性をチェックすることができる。また、圧力計の監視により内部冷却空気の圧力異常を検出することができる。
【0011】
また、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置は、蓋状部材の落下を防止する連結手段を備えるものである。したがって、外れた蓋状部材は連結手段によって吊り下げられる。
【0012】
さらに、請求項記載の発明は、コンクリート容器内に収容されたキャニスタを冷却する内部冷却空気を、給気口から取り込んで給気口よりも高い位置に設けられた排気口から排出するコンクリートキャスクにおいて、請求項1からのいずれか一つに記載された除熱装置を備えるものである。したがって、上記除熱装置を備えるコンクリートキャスクが構成される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のコンクリートキャスクの除熱装置では、コンクリート容器内を冷却する内部冷却空気の流路を閉ループにしているので、コンクリート容器内を外部環境から遮断することができ、塩分等を含んだ外気がコンクリート容器内に流入するのを防止することができる。そのため、外気に含まれる塩分や水分に起因したキャニスタの腐食を防止することができる。
【0014】
また、内部冷却空気の温度が異常上昇し想定温度を超えた場合、蓋状部材が外れて開口部が開かれて循環通路内が大気に開放されるので、内部冷却空気の温度を自動的に下げることができる。そのため、内部冷却空気の流路を閉ループにしても、内部冷却空気の常時の温度監視を不要にすることができ、管理負担を軽減できると共に、受動的な安全性を確保することができる。
【0015】
また、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置では、放熱手段が循環通路の下部にも設けられているので、内部冷却空気の温度が異常に上昇し想定温度を超えた場合、循環通路の上部に加えて下部も開放することができ、より効率よく内部冷却空気の温度を下げることができる。
【0017】
なお、コンクリートキャスク構造規格におけるコンクリートの温度制限値については、機械学会の告示452号に、175℃(短時間)と記載されていることから、たとえば、給気口閉塞事故等で、コンクリート温度の上昇が観られても、この温度制限値以下であれば、許容されると考えられる。
【0018】
また、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置では、蓋状部材の落下を防止する連結手段を備えているので、蓋状部材の高い位置からの落下を防止することができると共に、蓋状部材の紛失を防止することができる。また、蓋状部材を吊り下げた状態で保持できるので、保守点検を行う者が蓋状部材の外れに気づき易くて放熱手段の作動を確認し易くなり、内部冷却空気の温度異常に気づき易くなる。
また、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置では、サンプリング用パイプから内部冷却空気を採取することができるので、外部環境から遮断されている内部冷却空気を簡単に採取することができる。採取した内部冷却空気中からキャニスタに封入されているガス例えばヘリウムガス等の不活性ガスが検出された場合には、キャニスタに亀裂等の異常が発生していると考えられる。本発明では、内部冷却空気を簡単に採取することができるので、内部冷却空気の成分分析に基づくキャニスタの健全性検査を簡単に行うことができる。しかも、内部冷却空気の流路は閉ループであり、キャニスタから漏出したガスは内部冷却空気中に蓄積されて濃度が高くなるので、その検出は容易である。この点からも内部冷却空気の成分分析に基づくキャニスタの健全性検査を行うのに適している。
さらに、請求項記載のコンクリートキャスクの除熱装置では、サンプリング用パイプに内部冷却空気の圧力を測定する圧力計を設けているので、圧力計を常時監視することで内部冷却空気の圧力異常を早期に検出することができる。キャニスタ内は、ゲージ圧で0.5〜8気圧に加圧されており、キャニスタの亀裂が進み、大漏えいが発生した場合は、内部冷却空気の圧力が上昇することとなる。そのため、キャニスタの密封性異常を圧力上昇という形で早期に且つ容易に検出することができる。
【0019】
さらに、請求項記載の発明では、上記の除熱装置を備えるコンクリートキャスクが構成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の除熱装置の実施形態の一例を示す断面図である。
図2】同除熱装置の放熱手段を拡大して示す断面図である。
図3】同除熱装置をコンクリートキャスクに取り付けた様子を示す平面図である。
図4】本発明の除熱装置の他の実施形態を示し、コンクリートキャスクに取り付けた様子を示す平面図である。
図5】従来のコンクリートキャスクを一部切り欠いて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1から図3に、本発明のコンクリートキャスクの除熱装置(以下、単に除熱装置と記す)の実施形態の一例を示す。除熱装置1は、コンクリートキャスク2のコンクリート容器3内に収容されたキャニスタ4を冷却する内部冷却空気5を、給気口6から取り込んで給気口6よりも高い位置に設けられた排気口7から排出するコンクリートキャスク2に適用されるものであり、コンクリート容器3の外側に配置され、排気口7と給気口6とを連通して排気口7から排出された内部冷却空気5を冷却しながら給気口6へと導く循環通路8を備えている。また、本発明は、除熱装置1を備えるコンクリートキャスク2としても把握される。
【0023】
使用済燃料を収容するキャニスタ4は支持脚11の上に載せられてコンクリート容器3内に収容されている。コンクリート容器3の上部開口は蓋12によって塞がれている。キャニスタ4とコンクリート容器3との間には、内部冷却空気5が流れる冷却通路13が設けられている。コンクリート容器3の底部には冷却通路13へと通じる給気口6が設けられている。また、コンクリート容器3と蓋12との間には冷却通路13へと通じる排気口7が設けられている。給気口6と排気口7は循環通路8によって連通されるものであることから、例えば図3に示すように上から見て同じ位置に同じ数だけ設けられることが好ましい。ただし、循環通路8によって内部冷却空気5を排気口7から給気口6へと循環させることが可能であれば、給気口6と排気口7とを上から見て同じ位置に設ける必要はなく、また、給気口6と排気口7の設置数が異なっていても良い。また、給気口6と排気口7は循環通路8によって連通されるものであることから、コンクリートキャスク2の周面に開口することが好ましい。ただし、給気口6と排気口7を循環通路8によって連通させることが可能であれば、給気口6と排気口7をコンクリートキャスク2の周面に開口させる必要はなく、給気口6をコンクリートキャスク2の例えば底面に開口させても良く、排気口7をコンクリートキャスク2の例えば上面に開口させても良い。本実施形態では、コンクリートキャスク2の周面に例えば周方向に等間隔で4箇所に給気口6と排気口7が設けられている。
【0024】
除熱装置1は一つの給気口6と一つの排気口7から構成される組毎に1台ずつ設けられている。本実施形態のコンクリートキャスク2には4組の給気口6と排気口7とが設けられているので、コンクリートキャスク2には、最大4台の除熱装置1が取り付けられている。
【0025】
循環通路8は熱伝導性に優れ且つ通路としての剛性を確保できる材料、例えば銅,アルミニウム,ステンレス等の金属材料によって形成されている。循環通路8の管壁8aを介して内部冷却空気5と外気との間で熱交換が行われる。即ち、循環通路8の管壁8aは冷却壁となっており、内部冷却空気5は循環通路8内を流れながら外気によって冷却される管壁8aによって冷却される。
【0026】
循環通路8の上端には冷却通路13の排気口7に接続される装着側給気口16が、下端には冷却通路13の給気口6に接続される装着側排気口17がそれぞれ設けられている。本実施形態では、装着側給気口16及び装着側排気口17を筒状に形成し、筒状部分の先端を冷却通路13の排気口7又は給気口6内に挿入することで、接続部分からの内部冷却空気5の漏出と外気の流入を防止している。
【0027】
除熱装置1には、循環通路8の上部に設けられ、内部冷却空気5の温度が予め想定された温度よりも高くなると循環通路8内を大気に開放する放熱手段21が設けられている。本実施形態では、循環通路8の装着側給気口16から水平に進んだ位置に放熱手段21が設けられているが、この位置には限られない。本実施形態の放熱手段21は蓋状部材22によって塞がれた開口部23であり、蓋状部材22は内部冷却空気5の熱によって変形し又は溶融する固着手段24によって循環通路8に固着されており、固着手段24の変形又は溶融により自重で外れて開口部23を開くものである。
【0028】
蓋状部材22を循環通路8に取り付ける固着手段24は、例えば低融点接合金属等の接着剤である。低融点接合金属としては、コンクリートキャスクの制限温度として機械学会告示452号に定められている通常時温度制限値である90℃と異常時温度制限値である175℃(短時間)の間に融点をもつものが望ましい。例えば、Uアロイ等の使用が可能である。Uアロイ138Gの融点は138℃であり、冷却空気の温度が異常上昇してUアロイの温度が138℃に達すると溶融する。これにより、蓋状部材22が自重によって外れて塞がれていた開口部23を開く。なお、低融点接合金属としてはUアロイ138Gに限られない。また、接着剤としては低融点接合金属に限られない。蓋状部材22を外したい温度(想定温度)に応じて適宜選択される。また、蓋状部材22の周縁は全周に亘り接着されてシールされており、通常時において冷却空気の漏出が防止されている。
【0029】
本実施形態では、循環通路8の開口部23が設けられている部分は斜め下向きになっており、蓋状部材22は斜め下向きに設けられている。したがって、固着手段24が溶融又は変形すると蓋状部材22は自重により外れて落下する。
【0030】
本実施形態では、循環通路8の下部にも放熱手段21が設けられている。循環通路8の下部に設けられた放熱手段21は、上部に設けられた放熱手段21と同様に構成されている。本実施形態では、循環通路8の装着側排気口17から水平に進んだ位置に下部の放熱手段21が設けられているが、この位置には限られない。
【0031】
なお、本実施形態では、上部の放熱手段21に加えて下部の放熱手段21を設けているが、下部の放熱手段21を省略しても良い。
【0032】
上部の放熱手段21には、蓋状部材22の落下を防止する連結手段25が設けられている。連結手段25は、例えば蓋状部材22を循環通路8に連結するワイヤである。ただし、連結手段25はワイヤに限られず、例えばチェーン,ロープ,紐等、蓋状部材22の落下を防止できるものであれば他のものでも良い。連結手段25は外れた蓋状部材22の地面への落下を防止すると共に紛失を防止する。また、蓋状部材22を吊り下げた状態で保持できるので、保守点検を行う者が蓋状部材22の外れに気づき易くて放熱手段22の作動を確認し易くなり、内部冷却空気5の温度異常に気づき易くなる。
【0033】
除熱装置1は、循環通路8の途中に設けられ、内部冷却空気5の検査用サンプルを採取可能なサンプリング用パイプ26を備えている。本実施形態のコンクリートキャスクには除熱装置1が4台取り付けられているが、4台全ての除熱装置1に対してサンプリング用パイプ26を設けても良いし、4台のうち一部の除熱装置1のみにサンプリング用パイプ26を設けても良い。
【0034】
サンプリング用パイプ26は、例えば保守点検を行う者の手の届く高さの位置に設けられていることが好ましいが、必ずしもこの高さでなくても良い。
【0035】
サンプリング用パイプ26には開閉弁27が設けられている。開閉弁27を開くことで内部冷却空気5を採取することができると共に、開閉弁27を閉じることで内部冷却空気5の漏出を防止することができる。開閉弁27は内部冷却空気5のサンプル採取時に開かれる。
【0036】
また、本実施形態では、内部冷却空気5の圧力を測定する圧力計29をサンプリング用パイプ26に設けている。キャニスタ4内は、ゲージ圧で例えば0.5〜8気圧に加圧されており、キャニスタ4の亀裂が進み、大漏えいが発生した場合は、内部冷却空気5の圧力が上昇することとなる。サンプリング用パイプ26に圧力計29を設けることで内部冷却空気5の圧力の常時監視が容易になり、内部冷却空気5の圧力異常を早期に検出することができる。そのため、キャニスタ4の密封性異常を早期に且つ容易に検出することができる。なお、圧力計29に通信機能を持たせて遠隔地で計測値を確認できるようにしても良い。
【0037】
本実施形態の除熱装置1は、コンクリート容器3に対して着脱可能になっている。循環通路8は例えば台車28に載置されており、移動可能になっている。循環通路8を台車28に載置することで給気口6と装着側排気口17の高さ、排気口7と装着側給気口16の高さがそれぞれ一致する。したがって、循環通路8を台車28に載せて移動させることで、装着側排気口17を給気口6に、装着側給気口16を排気口7にそのまま挿入させて接続することができる。これらを接続した後、台車28を固定することで除熱装置1の設置が完了する。また、除熱装置1の接続を切り離す場合には、台車28の固定を解いて移動させ、装着側給気口16を排気口7から、装着側排気口17を給気口6からそれぞれ引き抜けば良い。このように循環通路8の移動によって着脱を簡単に行うことができる。
【0038】
除熱装置1はコンクリートキャスク2の使用開始時(使用済燃料の貯蔵初期)からコンクリートキャスク2に取り付けておき、必要に応じて取り外すようにしても良いし、コンクリートキャスク2の使用開始時には除熱装置1を取り付けておかずに、使用開始後ある程度の期間が経過してから除熱装置1をコンクリートキャスク2に取り付けるようにしても良い。例えば、応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)等の腐食が問題になるのは結露が生じる虞のある場合、例えばキャニスタ4がある程度低温になる貯蔵末期の場合や、低発熱燃料を貯蔵している場合等である。したがって、例えば結露が生じる虞がある時期にだけ除熱装置1をコンクリートキャスク2に取り付けるようにし、結露が生じる可能性の低い時期等には除熱装置1をコンクリートキャスク2から取り外しておいても良い。除熱装置1は着脱可能であることから上述のような種々の使い方が可能である。
【0039】
次に、除熱装置1の作動について説明する。
【0040】
コンクリートキャスク2に除熱装置1が取り付けられて装着側給気口16が排気口7に、装着側排気口17が給気口6にそれぞれ接続されると、冷却通路13と循環通路8は内部冷却空気5を循環させる閉ループを形成する。コンクリート容器3内では内部冷却空気5はキャニスタ4を冷却することで加熱されるので、内部冷却空気5には上昇力が作用する。一方、コンクリートキャスク2の外、即ち循環通路8内では、内部冷却空気5は管壁8aを介して外気との間で熱交換を行って冷却されるので、内部冷却空気5には下降力が作用する。そのため、内部冷却空気5は冷却通路13→排気口7→循環通路8→給気口6→冷却通路13へと自然対流によって循環し、キャニスタ4の熱をコンクリート容器3の外に運搬する。
【0041】
循環通路8に設けられた放熱手段21は内部冷却空気5によって加熱される。内部冷却空気5の温度が異常に上昇し、放熱手段21の固着手段24の温度が想定温度を超えると、固着手段24が溶融又は変形する。そのため、蓋状部材22が自重で外れ、開口部23が開かれる。開かれた開口部23を通して外気が循環通路8内に取り込まれ、内部冷却空気5の温度が下げられる。
【0042】
本実施形態では循環通路8の上部と下部の両方に放熱手段21を設けているが、コンクリート容器3内を通り抜けて循環通路8に流入した直後の内部冷却空気5の方が、循環通路8を通り抜けてコンクリート容器3内に流入する直前の内部冷却空気5よりも温度が高いので、先ず、最初に上部の放熱手段21が作動した後、下部の放熱手段21が作動する。上下の放熱手段21,21が作動して開口部23,23が開かれた場合、除熱装置1を装着していないコンクリートキャスク2と同様に、内部冷却空気5はキャニスタ4の加熱による自然対流によって下部の放熱手段21の開口部23→供給口6→冷却通路13→排気口7→上部の放熱手段21の開口部23→外へと流れる。即ち、内部冷却空気5を外部の塩分環境から遮断したものとすることは出来ないが、冷たい外気を取り込んで冷却を続けることができる。
【0043】
なお、上部の放熱手段21の作動により内部冷却空気5の温度が下がり、下部の放熱手段21が作動しない場合もある。この場合には、上部の放熱手段21の開口部23を通じて空気の流出と流入が生じ、内部冷却空気5の温度が下げられる。
【0044】
このように、内部冷却空気5の温度が異常上昇し想定温度を超えた場合、放熱手段21が循環通路8内を大気に開放するので、内部冷却空気5の温度を自動的に下げることができる。そのため、内部冷却空気5の流路を閉ループにしても、内部冷却空気5の常時の温度監視を不要にすることができ、管理負担を軽減できると共に、受動的な安全性を確保することができる。
【0045】
また、循環通路8の下部にも放熱手段21を設けているので、内部冷却空気5の温度が異常に上昇し想定温度を超えた場合に循環通路8の上部に加えて下部も開放することができ、より効率よく内部冷却空気5の温度を下げることができる。
【0046】
また、放熱手段21が蓋状部材22によって塞がれた開口部23であり、内部冷却空気5の温度が異常上昇し想定温度を超えると蓋状部材22が外れて開口部23が開き循環通路8内を大気に開放するので、内部冷却空気5の熱を利用して放熱手段21を作動させて内部冷却空気5の温度を下げることができ、受動的な安全性を確保することができる。
【0047】
さらに、上部の放熱手段21の蓋状部材22の落下を防止する連結手段25を備えているので、蓋状部材22の高い位置からの落下を防止することができると共に、蓋状部材22の紛失を防止することができる。また、蓋状部材22を吊り下げた状態で保持できるので、保守点検を行う者が蓋状部材22の外れに気づき易くて放熱手段21の作動を確認し易くなり、内部冷却空気5の温度異常に気づき易くなる。
【0048】
また、サンプリング用パイプ26から内部冷却空気5を採取することができるので、外部環境から遮断されている内部冷却空気5を簡単に採取することができる。採取した内部冷却空気5中からキャニスタ4に封入されているガス例えばヘリウムガス等の不活性ガスが検出された場合には、キャニスタ4に亀裂等の異常が発生していると考えられる。この除熱装置1では、内部冷却空気5の採取が簡単であるので、内部冷却空気5の成分分析に基づくキャニスタ4の健全性検査が容易である。しかも、内部冷却空気5の流路は閉ループであり、キャニスタ4から漏出したガスは内部冷却空気5中に蓄積されて濃度が高くなるので、その検出は容易である。この点からもキャニスタ4の健全性検査が容易である。
【0049】
本発明では内部冷却空気5を循環させてキャニスタ4を冷却するので、コンクリート容器3内を外部環境から遮断することができ、塩分等を含んだ外気がコンクリート容器3内に流入するのを防止することができる。そのため、外気に含まれる塩分や水分に起因したキャニスタ4の腐食を防止することができる。特に、放射性廃棄物の貯蔵施設は海辺に建てられることが多く、外気には多くの塩分が含まれている。本発明では、このような状態の外気がコンクリート容器3内に導入されることがないので、キャニスタ4の溶接部分等に外気中の塩分が付着することがなく、外気に含まれる塩分によって応力腐食割れ等が発生・進行するのを確実に防止することができる。
【0050】
また、キャニスタ4の熱を利用して内部冷却空気5を自然循環させることができるので、これらを駆動する動力が不要になり、装置1の維持管理が容易になるとともに、装置1の信頼性・耐久性を向上させることができる。
【0051】
また、除熱装置1をコンクリートキャスク2から取り外すことができるので、除熱装置1のメンテナンスを容易に行なうことができる。また、既存のコンクリートキャスク2への後付けが可能になる。
【0052】
また、内部冷却空気5の冷却に外気を使用しているので、冷却のための空気を喪失することがなく、内部冷却空気5の冷却を確実に行なうことができて信頼性に優れている。
【0053】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、一つの給気口6と一つの排気口7に対して1台の除熱装置1を設けるようにしていたが、必ずしもこの構成に限るものではなく、複数の給気口6と複数の排気口7に対して1台の除熱装置1を設けるようにしても良い。例えば図4に示すように、全ての給気口6と全ての排気口7に対して一つの除熱装置1を設けるようにしても良い。この場合には、除熱装置1を複数のユニットに分割してコンクリートキャスク2に対する着脱を可能にすることが好ましい。
【0054】
また、上述の説明では、内部冷却空気5の冷却に外気を使用していたが、外気には限られない。例えば、外気以外の気体を使用しても良く、水等の液体を使用しても良い。
【0055】
また、内部冷却空気5を冷却する気体や冷却液を流す流路を設けても良く、この場合には内部冷却空気5をより効率良く冷却することができる。例えば、循環通路8の表面を冷却する二次冷却空気が流れる流路を設け、低温の二次冷却空気を常に循環通路8の表面に接触させるようにしても良い。
【0056】
また、上述の説明では、除熱装置1を台車28に載置することで移動可能にしていたが、除熱装置1を移動させる手段としては必ずしも台車28に限るものではなく、例えばフォークリフトやクレーン等の搬送手段を使用して移動させるようにしても良く、又は除熱装置1に車輪を設けて移動させるようにしても良い。
【0057】
また、上述の説明では装着側給気口16及び装着側排気口17を筒状に形成し、これらを冷却通路13の排気口7又は給気口6に挿入することで各通路8,13を接続するようにしていたが、接続する手段はこれに限るものではなく、接続部分からの内部冷却空気5の漏出と外気の流入を防止することができれば他の手段でも良い。
【0058】
また、上述の説明では、サンプリング用パイプ26に圧力計29を設けていたが、圧力計29を省略しても良い。
【0059】
また、上述の説明では、サンプリング用パイプ26を備えていたが、サンプリング用パイプ26を省略しても良い。
【0060】
また、上述の説明では、連結手段25を上部の放熱手段21にのみ設けていたが、上部の放熱手段21に加えて又は代えて、下部の放熱手段21に連結手段25を設けても良い。
【0061】
また、上述の説明では、除熱装置1をコンクリートキャスク2に対して着脱可能にしていたが、着脱可能にしなくても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 除熱装置
2 コンクリートキャスク
3 コンクリート容器
4 キャニスタ
5 内部冷却空気
6 給気口
7 排気口
8 循環通路
21 放熱手段
22 蓋状部材
23 開口部
24 固着手段
25 連結手段
図1
図2
図3
図4
図5