【0025】
本発明の水素細菌の代謝制御方法を適用する対象となる水素細菌は、水素(遊離水素)をエネルギー源とし、二酸化炭素を唯一炭素源として増殖可能な独立栄養生物であれば特に限定されるものではない。例示すると、Alcaligenes eutrophus (Cupriavidus necator), Alcaligenes hydrogenophilus, Alcaligenes ruhlandii, Alcaligenes latus, Alcaligenes paradoxus, Aquaspirillum autotrophicum, Azospirillum lipoferum, Calderobacterium hydrogenophilum, Derxia gummosa, Flavobacterium autothermophilum, Hydrogenobacter thermophilus, Microcyclus aquaticus, Microcyclus ebruneus, Paracoccus denitrificans, Pseudomonas facilis, Pseudomonas flava, Pseudomonas pseudoflava, Pseudomonas hydrogenovora, Pseudomonas hydrogenothermophila, Pseudomonas palleronii, Pseudomonas thermophila, Pseudomonas saccharophila, Renobacter vacuolatum, Rhizobium j
aponicu
m, Xanthobacter autotrophicus, Xanthobacter flavus, Arthrobacter spp., Bacillus schlegelii, Bacillus tusciae, Mycobacterium gordonae, Nocardia autotrophica, Nocardia opaca, Hydrogenovibrio marinus等が挙げられ、特にHydrogenobacter the
rmophilusが好適である。また、Hydrogenobacter the
rmophilusの中でも、特にHydrogenobacter the
rmophilus TK-6が好適である。Hydrogenobacter the
rmophilus TK-6は、増殖速度が速く(1.5時間で2倍に増殖)、二酸化炭素の固定能を有する微生物の中でも最高レベルの増殖速度を有している。尚、水素細菌は自然界の至る所から簡単に単離することのできる微生物であることから、本発明は入手が容易な細菌を利用して実施できるという利点もある。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(使用菌体)
1.ハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻応用微生物研究室より分譲を受けたハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter the
rmophilus TK-6)を水素細菌として用いた。以降の説明では、この水素細菌を単に「TK−6」と呼ぶこともある。尚、TK−6は、理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室からも入手可能である。
【0049】
2.TK−6 pMKT201KLDH
以下に説明する手法により、サーマス サーモフィラス由来LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)導入株であるTK−6 pMKT201KLDHを作製した。クローニングベクターpEX18T (Accession No. AF004910) のマルチクローニングサイトのEcoRI/SacIサイトにrpoDプロモーター (TK-6株由来 HTH_PproD) を挿入し、その下流のSacI/SalIサイトにThermus thermophilus HB27由来 乳酸脱水素酵素遺伝子 (Accession No. TTC0748)、PstIサイトにカナマイシン耐性遺伝子 (Accession number AB121443) およびPstI/SphIサイトに相同組み換えに必要であるHTH_1029 (TK-6株由来 sensor protein) 断片を挿入することで組換え用プラスミドpMKT201KLDHを作製した。このpMKT201KLDHを大腸菌S17-1 (DSM9079) を介した接合伝達によってTK-6株に導入し、相同組み換えによりTK-6株ゲノム上に乳酸脱水素酵素遺伝子を組み込むことで組換え株TK-6 pMKT201KLDHを作製した。以降の説明では、この遺伝子組換え株を単に「TK−6組換え株」と呼ぶこともある。尚、TK−6組換え株は、乳酸産生能を恒常発現し、カナマイシン(Km)耐性は500μg/mLであった。
【0050】
(培地)
TK−6及びTK−6組換え株の培養に使用した培地の組成を以下に示す。尚、後述する培養試験(実施例1及び2)においても、以下の組成を有する培地を使用した。
【0051】
[培地組成(脱イオン水1L中)]
(NH
4)
2SO
4 3g
KH
2PO
4 1g
K
2HPO
4 2g
NaCl 0.25g
FeSO
4・7H
2O 0.014g
MgSO
4・7H
2O 0.5g
CaCl
2 0.03g
微量元素溶液 500μL
【0052】
[微量元素溶液(脱イオン水1L中)]
MoO
3 4mg
ZnSO
4・7H
2O 28mg
CuSO
4・5H
2O 2mg
H
3BO
3 4mg
MnSO
4・5H
2O 4mg
CoCl
2・6H
2O 4mg
【0053】
TK−6及びTK−6組換え株は、前培養してから後述する培養試験に供した。即ち、上記培地を使用し、嫌気条件下(培養容器であるガラスバイアル瓶内の気相部分のガス組成をH
2:N
2:CO
2=75:10:15(1.5kPa)に制御)にて、70℃で振とう培養してから、後述する培養試験に供した。
【0054】
(実施例1)
TK−6に対し、電子媒体物質を介して電気化学的に電子を供給することによる影響について検討した。換言すると、TK−6細胞内の電子の流れ(酸化還元バランス)を、電気化学的に変化させることによる影響について検討した。
【0055】
本実施例においては、TK−6に対し、電子媒体物質を介した電子の供給を行うために、
図2に示す電気培養装置1を使用した。
【0056】
図2に示す電気培養装置1は、その側面に2つのサンプル採取口20a及び20bを備える250mL容ガラスバイアル瓶(Duran)(以下、容器20と呼ぶ)を培養槽としたものである。容器20には蓋30を取り付けた。蓋30の上面30aにはシリコーンゴム栓を設けて、配線や電極、管を通した際の容器20の密閉性を確保した。サンプル採取口20a及び20bのキャップについても同様とした。
【0057】
対極槽としての小容器21は、イオン交換膜6を成型して袋状(以下、袋21と呼ぶこともある)とした。具体的には、陽イオン交換膜(デュポン製、ナフィオンK)をヒートシーラーで熱圧着により加工し上部はシリコン系接着剤で埋めて密閉した。陽イオン交換膜6の片側面積は21.25cm
2に相当するものとした。袋21の内部には電解液4aを収容すると共に対電極10を収容して電解液4aに浸した。電解液4aは、上記培地とした。
【0058】
容器20に培養液4(上記培地)を230mL収容し、培養液4に小容器21と作用電極9を浸した。作用電極9と対電極10の配線は、蓋30に設けたシリコーンゴム栓を介して容器20の外側に引き出した。銀・塩化銀参照電極11(RE−1B、BAS株式会社)は容器20のサンプル採取口20aのキャップに突き刺して培養液4と接触させた。作用電極9と対電極10と参照電極11は電源12に結線し、作用電極9の電位を3電極方式で制御するようにした。また、容器内には撹拌子40を投入し、培養期間中は培養液4をホットプレートスターラー41で加熱しながら撹拌するようにした。
【0059】
ガス供給源60から供給されたガスは、ガスブレンダー61によりH
2:N
2:CO
2=75:10:15(体積比)に制御した後、滅菌用フィルター(製品名:ポリベントディスク型、GEヘルスケアジャパン)62を介して容器20のサンプル採取口2bから供給した。また、容器20のヘッドスペースと容器20の外とを連通する配管63からヘッドスペースに滞留するガスを排出し、前段の2つのトラップ66、67で当該ガス中の蒸気を捕捉した後、活性炭を充填したトラップ68を介して屋外に排気した。
【0060】
作用電極9と対電極10は共に炭素板とした。作用電極9のサイズは7.5cm×2.5cmとした。対電極10のサイズは6.0cm×1.0cmとした。
【0061】
電子媒体物質5は、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸ジナトリウム(以下、AQDSと呼ぶ)とし、培養液4中の濃度を0.2mMとした。
【0062】
また、最終電子受容体は硝酸とし、培養液4中に、NaNO
3を60mMとなるように添加した。
【0063】
培養温度は70℃とした。
【0064】
以下の5条件で通電試験を実施した。通電有りの場合、作用電極9への印加電位は−0.6Vとした。通電無しの場合には、作用電極9への電位の印加は行わなかった。
(a)TK−6有り、AQDS無し、通電有り
(b)TK−6有り、AQDS有り、通電有り
(c)TK−6無し、AQDS有り、通電有り
(d)TK−6無し、AQDS無し、通電有り
(e)TK−6有り、AQDS有り、通電無し
【0065】
まず、(a)〜(d)の培養試験中における電流値の経時変化を
図3に示す。(b)の条件、即ちTK−6とAQDSの両者が存在するときにのみ、電流が検出された。このことから、AQDSを介して作用電極9からTK−6細胞内に電子が供給されたことが明らかとなった。
【0066】
次に、(b)と(e)の培養試験中における菌体密度の経時変化と硝酸濃度の経時変化を
図4に示す。図中、◆が(b)の培養試験中の菌体密度変化を示し、■が(e)の培養試験中の菌体密度変化を示し、▲が(b)の培養試験中の硝酸濃度変化を示し、×が(e)の培養試験中の硝酸濃度変化を示している。
図4に示される結果から、通電及び非通電時でTK−6の増殖状態はほぼ変わらないことが明らかとなった。このことから、供給された電子は増殖ではなく、代謝や呼吸に用いられているものと推定された。
【0067】
次に、以下の3種類の試料を採取し、メタボローム解析に供した。
・試料1:培養試験(e)において、菌体密度が2×10
8cells/mLに達した時
に培養液を5mL回収
・試料2:培養試験(b)において、菌体密度が1×10
8cells/mLに達した時
(対数増殖期初期)に培養液を10mL回収
・試料3:培養試験(b)において、菌体密度が2×10
8cells/mLに達した時
(対数増殖期中期)に培養液を5mL回収
【0068】
回収した培養液に含まれる菌体を吸引ろ過装置を用いて、フィルター(Millipore Isopore Membrane Filter HTTP 0.4μm pore 47mm diameter, Millipore)上に回収した。フィルター上に回収した菌体を10mLのMilliQ水で2回洗浄し、内部標準(H3304−1002,HMT)を含有するメタノール(LC/MS用,Wako)2mLを入れた密閉シャーレにフィルターの菌体付着面を下にしてフィルターをメタノールに浸漬させた。メタノールに浸漬させたフィルターを30秒、超音波処理を行い、代謝産物抽出液を得た。回収した菌数は試験1〜3のいずれにおいても、1×10
9cellsであった。
【0069】
回収した菌体は、1600μLのクロロホルム及び640μLのMilliQ水を加えて撹拌し、遠心分離(2300×g、4℃、5分)を行った。遠心分離後、水層を限外ろ過チューブ(MILLIPORE、ウルトラフリーMC PLHCC HMT 遠心式フィルターユニット 5kDa)に325μL×4本移し取った。これを遠心(9100×g、4℃、120分)し、限外ろ過処理を行った。ろ液を乾固させ、再び50μLのMilli−Q水に溶解し、代謝産物の測定に供した。
【0070】
代謝産物の分析はCE−TOF MS system(Agilent)を使用し、陽イオン性物質および陰イオン性物質をカチオンモード、アニオンモードでそれぞれ測定した。カチオンモードとアニオンモードの測定条件を以下に示す。
【0071】
[カチオンモードの測定条件]
Run buffer : Cation Buffer Solution (p/n : H3301-1001)
Rinse buffer : Cation Buffer Solution (p/n : H3301-1001)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 10 sec
CE voltage : Positive, 27 kV
MS ionization : ESI Positive
MS capillary voltage : 4,000 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
【0072】
[アニオンモードの測定条件]
Run buffer : Anion Buffer Solution (p/n : H3302-1021)
Rinse buffer : Anion Buffer Solution (p/n : H3302-1022)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 25 sec
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization : ESI Negative
MS capillary voltage : 3,500 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
【0073】
CE−TOF MSで検出されたピークは自動積分ソフトウェアのMasterHands ver.2.9.0.9(慶應義塾大学開発)を用いて自動抽出し、ピーク情報として質量電荷比(m/z)、泳動時間(Migration time:MT)とピーク面積値を得た。得られたピーク面積値は下記の[式1]を用いて相対面積値に変換した(菌体試料については、採取細胞数による補正を行った。つまり、下記の式[1]中の試料数を採取細胞数として計算した。)。また、これらのデータにはNa
+やK
+などのアダクトイオン及び、脱水、脱アンモニウムなどのフラグメントイオンが含まれているので、これらの分子量関連イオンを削除した。しかし、物質特異的なアダクトやフラグメントも存在するため、すべてを精査することはできなかった。精査したピークについて、m/zとMTの値をもとに、各試料間のピークの照合・整列化を行った。
相対面積値=目的ピークの面積値/(内部標準物質の面積値×試料量)・・・[式1]
【0074】
検出されたピークに対してm/zとMTの値をもとにHMT代謝物質データベースに登録された全物質との照合、検索を行った。検索のための許容誤差はMTで±0.5min、m/zでは±10ppmとした。
質量誤差(ppm)=(実測値−理論値×10
6)/実測値
【0075】
主要代謝産物として108物質について定量解析を行った。検量線は内部標準物質により補正したピーク面積を用い、各物質について100μMの一点検量(内部標準物質200μM)として濃度を算出した。
【0076】
メタボローム解析を行った結果、79ピーク(カチオン46、アニオン33)を検出し、このうち42物質(カチオン26、アニオン16)を定量可能であった。
【0077】
非通電時よりも通電時(培養初期)の方が増加した代謝産物を表1に示す。尚、表1中、「1<」は非通電時には検出されず、通電時においてのみ検出された物質である。また、太字とした物質は、培養中期まで通電を行った場合にも増産が確認された物質である。
【0078】
【表1】
【0079】
具体的には、以下の有用物質の生産量が増大した。
・GABA(γ−アミノ酪酸)
・5−Oxohexanoic acid(5−オキソヘキサン酸)
・FAD_divalent(フラビンアデニンジヌクレオチド(二価))
・CMP(シチジル酸)
・Asp(アスパラギン酸)
・2−Hydroxyvaleric acid(2−ヒドロキシ吉草酸)
・Ethanolamine(エタノールアミン)
・Lactic acid(乳酸)
・m−Toluic acid(m−トルイル酸)
・Triethanolamine(トリエタノールアミン)
・2−Furoic acid(2−フランカルボン酸)
・Trp(トリプトファン)
・Ornithine(オルニチン)
・Arg(アルギニン)
・Benzoic acid(安息香酸)
・Glu(グルタミン酸)
【0080】
また、非通電時よりも通電時(培養中期)の方が増加した代謝産物を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
具体的には、以下の有用物質の生産量が増大した。
・GABA(γ−アミノ酪酸)
・UMP(ウリジル酸)
・5−Oxohexanoic acid(5−オキソヘキサン酸)
・Mevalonolactone(メバロノラクトン)
・FAD_divalent(フラビンアデニンジヌクレオチド(二価))
・CMP(シチジル酸)
・2−Hydroxyvaleric acid(2−ヒドロキシ吉草酸)
・m−Toluic acid(m−トルイル酸)
・Benzoic acid(安息香酸)
・GMP(グアニル酸)
・Lactic acid(乳酸)
・Malic acid(リンゴ酸)
・NADP
+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)
・Trehalose 6−phosphate(トレハロース 6−リン酸)
・GDP(グアノシン二リン酸)
・2−Furoic acid(2−フランカルボン酸)
・AMP(アデノシン一リン酸)
・Triethanolamine(トリエタノールアミン)
・3−Phenylpropionic acid(3−フェニルプロピオン酸)
・Glu(グルタミン酸)
【0083】
以上の結果から、通電を行う期間を、培養開始時から対数増殖期初期及び中期までのいずれとした場合においても、γ−アミノ酪酸、5−オキソヘキサン酸、フラビンアデニンジヌクレオチド(二価)、シチジル酸、2−ヒドロキシ吉草酸、乳酸、m−トルイル酸、トリエタノールアミン、2−フランカルボン酸、安息香酸及びグルタミン酸を増産可能であることが明らかとなった。したがって、これらの有用物質を生産する際には、微生物数がより多くなっている対数増殖期中期まで通電を行うことで、生産量をより向上させることができると考えられた。
【0084】
また、通電を行う期間を、培養開始時から対数増殖期初期までとすることで、上記有用物質に加えて、さらにアスパラギン酸、エタノールアミン、トリプトファン、オルニチン及びアルギニンを増産可能であることが明らかとなった。
【0085】
さらに、通電を行う期間を、培養開始時から対数増殖期中期までとすることで、上記有用物質に加えて、さらにウリジル酸、メバロノラクトン、グアニル酸、リンゴ酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、トレハロース 6−リン酸、グアノシン二リン酸、アデノシン一リン酸及び3−フェニルプロピオン酸を増産可能であることが明らかとなった。
【0086】
尚、乳酸の生産量に着目した場合、非通電時では1536±591pmol/10
9cells、通電時(対数増殖期初期まで)では3254±146pmol/10
9cells、通電時(対数増殖期中期まで)3043±467pmol/10
9cellsであった。したがって、菌体を回収して乳酸を回収する場合、乳酸回収量を向上させるという点においては、対数増殖期中期まで通電を行うことが効果的であると考えられた。
【0087】
(実施例2)
TK−6組換え株に対し、電子媒体物質を介して電気化学的に電子を供給することによる影響について検討した。換言すると、TK−6組換え株の細胞内の電子の流れ(酸化還元バランス)を、電気化学的に変化させることによる影響について検討した。
【0088】
実験に使用した電気培養装置は実施例1と同様とした。培養試験条件は、以下の(a)〜(c)以外は、実施例1と同様とした。通電有りの場合、作用電極9への印加電位は−0.8Vとした。通電無しの場合には、作用電極9への電位の印加は行わなかった。
(a)TK−6組換え株有り、AQDS有り、通電有り
(b)TK−6組換え株有り、AQDS有り、通電無し
(c)TK−6有り、AQDS有り、通電無し
【0089】
まず、(b)と(c)の培養試験結果を比較し、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の導入による生育への影響について検討した結果を
図5に示す。図中、「wt」がTK−6の実験結果であり、「201」がTK−6組換え株の実験結果である。
図5に示す結果から、TK−6とTK−6組換え株の増殖傾向に差異は見られず、TK−6への乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の導入による生育への影響はないと判断された。
【0090】
次に、(b)と(c)の培養試験において、培養開始後 33時間のタイミングで菌体を回収し、乳酸生産量を測定した。乳酸生産量の測定は、以下の方法により実施した。菌体を超音波処理後、Lactate Assay Kit (Biovision) を用い、乳酸の存在に起因する吸光度(570 nm)を分光光度計(Hitachi U-3010 spectrophotometer)にて測定することにより乳酸の定量を行った。結果を
図6に示す。
図6に示す結果から、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の導入されたTK−6組換え株において、TK−6よりも乳酸の生産量が増大していることが明らかとなった。
【0091】
次に、(a)の培養試験中における電流値の経時変化を
図7に示す。電流が検出されたことから、AQDSを介して作用電極9からTK−6組換え株の細胞内に電子が供給されていることが明らかとなった。
【0092】
次に、(a)の培養試験において、(b)と(c)の培養試験における乳酸生産量測定のための菌体の回収タイミングと同じタイミングで菌体を回収し、乳酸生産量を測定した。(a)〜(c)の培養試験における乳酸生産量の測定結果を
図8に示す。TK−6組換え株に通電を行うことで、非通電の場合の10倍程度、乳酸生産量が向上することが確認された。この結果から、細胞内への電子供給によって、遺伝子組換えされた水素細菌についても代謝を制御し得ることが明らかとなった。
【0093】
TK−6組換え株に通電を行うことによる乳酸発生量の増加メカニズムを
図9に示す。電極から供給される電子が、電子媒体物質(AQDS)を介してTK−6組換え株の細胞内でNAD
+をNADHに還元する還元力として機能し、これが乳酸生産量の増大に寄与しているものと推定される。