【実施例】
【0045】
以下、実施例等に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例等になんら限定されるものではない
【0046】
<モノマー(A)の合成>
[多座配位子としてジピコリルアミン(DPA)を有するモノマー(A)の合成]
常温、アルゴン雰囲気下で、2−(クロロメチル)ピリジン塩酸塩(10.0g,61.0mmol,3−アミノ−1−プロパノールに対して2.90当量)、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロマイド)(322mg,1mmol)、炭酸カリウム(28.1g,203mmol,3−アミノ−1−プロパノールに対して9.67当量)を脱水アセトニトリルに溶解させた。その後、95℃、還流下で3−アミノ−1−プロパノール(1.6mL,21.0mmol)を添加し、4日間攪拌を行った。攪拌後、TLCプレート(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=9/1)で反応進行を確認し、セライトろ過した。濃縮した後、カラムクロマトグラフィーによる分離精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/9)を行った。得られた生成物が式(1)で表される化合物(DPA−OH)であることを、
1H−NMRによる構造解析より確認した(4.67g、収率:89.3%)。
【0047】
常温、アルゴン雰囲気下で、式(1)で表される化合物(2.70g,10.5mmol)を脱水THF(テトラヒドロフラン)5mLに溶解させ、TEA(トリエチルアミン)(2.0mL,14.3mmol,式(1)で表される化合物に対して1.37当量)を加えた。その後、氷浴下で塩化アクリル(1.1mL,13.5mmol,式(1)で表される化合物に対して1.28当量)を滴下し、1日間攪拌した。攪拌後、セライトろ過、濃縮し、ジエチルエーテルに溶解させ、セライトろ過した。その後、溶液を濃縮し、酢酸エチルに溶解させ、炭酸水素ナトリウムと食塩水で洗浄を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濃縮した後、カラムによる分離精製(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=9/1)を行った。得られた生成物が式(2)で表されるDPAモノマーであることを
1H−NMRによる構造解析より確認した(1.52g,収率:46.5%)。反応スキームを以下に示す。
【0048】
【化1】
【0049】
<モノマー(B)−マクロ−RAFT剤の合成>
[RAFT剤の合成]
常温、アルゴン雰囲気下で1−ブタンチオール(6.0mL,55.9mmol,式(3)で表される化合物に対して1.20当量)を脱水THFで溶解させた。その後、DBU(ジアザビシクロウンデセン)(8.3mL,55.5mmol,式(3)で表される化合物に対して1.19当量)を添加し、氷浴下で二硫化炭素(3.3mL,55.8mmol,式(3)で表される化合物に対して1.20当量)を滴下し、室温で30分攪拌した。その後、脱水THF(テトラヒドロフラン)に溶解させた4−ブロモ安息香酸(式(3))(10.0g,46.5mmol)を滴下し、一晩攪拌した。攪拌後、セライトろ過し、濃縮し、IPE(イソプロピルエーテル)に溶解させ、1N塩酸により洗浄を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで脱水後、凍結乾燥させた。得られた生成物が式(4)で表されるRAFT剤(CTA)であることを、
1H−NMRによる構造解析により確認した(9.23g,収率:66.1%)。反応スキームを以下に示す。
【0050】
【化2】
【0051】
[PEG−マクロ−RAFT剤の合成]
常温、アルゴン雰囲気下でポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(式(5))(10.0g,2.00mmol)を脱水THFに溶解させた。その後、TEA(0.9mL,6.46mmol,式(5)で表される化合物に対して3.23当量)を添加し、氷浴下でメタンスルホニルクロリド(0.5mL,6.45mmol,式(5)で表される化合物に対して3.23当量)を滴下し、3時間攪拌した。攪拌後、セライトろ過、濃縮し、IPE(イソプロピルエーテル)により再沈殿を行い、凍結乾燥させた。得られた生成物が式(6)で表されるPEG−OMsであることを、
1H−NMRによる構造解析により確認した(10.4g,収率:99.9%)。
【0052】
式(6)で表されるPEG−OMs(5.00g,0.99mmol)をアンモニウム溶液100mLに溶解させ、3日間常温で攪拌した。攪拌後、濃縮し、IPEによる再沈殿を行い、凍結乾燥させた。得られた生成物が式(7)で表されるPEG−NH
2であることを、
1H−NMRによる構造解析により確認した(4.88g,収率:99.9%)。反応スキームを以下に示す。
【0053】
【化3】
【0054】
常温、アルゴン雰囲気下で、式(4)で表されるRAFT剤(1.496g,4.98mmol,式(7)で表される化合物に対して4.73当量)をトルエン約100mLに溶解させ、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)(1.042g,5.05mmol,式(7)で表される化合物に対して4.80当量)を加え、10分間攪拌した。攪拌後、PEG−NH
2(式(7))(4.88g,1.05mmol)とDMAP(ジメチルアミノピリジン)(0.017g,0.115mmol,式(7)で表される化合物に対して10.9mol%)を加え、90℃、還流下で2日間攪拌した。その後、セライトろ過、濃縮し、IPEによる再沈殿を行い、凍結乾燥させた。得られた生成物が式(8)で表されるPEG−マクロ−RAFT剤であることを
1H−NMRによる構造解析より確認した(4.20g,収率:81.1%)。反応スキームを以下に示す。
【0055】
【化4】
【0056】
<両親媒性高分子の合成>
[PEG−b−DPAの合成]
式(2)で表されるDPAモノマー(3026mg,9.72mmol,式(8)で表される化合物に対して100当量)、式(8)で表されるPEG−マクロ−RAFT剤(478.6mg,0.0972mmol)、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)(4.79mg,0.0292mmol,式(8)で表される化合物に対して0.3当量)をDMF(ジメチルホルムアミド)9.72mL(モノマー濃度1M)に溶解させた。凍結脱気、アルゴン置換を行い、70℃において348時間攪拌した。反応後、ジエチルエーテルで再沈殿を行い、凍結乾燥により生成物を得た。
1H−NMRによる構造解析より、DPAモノマーのユニットが56個連なったPEG−b−DPA
56(式(9))の合成を確認した(2.12g,収率:60.5%)。反応スキームを以下に示す。
【0057】
【化5】
【0058】
DPA−OH−Ptのスペクトルを確認したところ、0.5当量のスペクトルにおいて、DPA由来のピークとDPA−Pt由来のピークが観察できた。また、1.0当量のスペクトルはDPA由来のピークが観察されず、DPA−Pt由来のピークが観察された。2.0当量のスペクトルもDPA−Pt由来のピークが観察された。ピリジン環のアミンにPtが配位することによりピリジン環の電子状態が変化し、プロトンピークが低磁場側にシフトしたと考えられる。このピークシフトによりPEG−b−DPA−PtのPt錯体化率を決定できることを確認した。
【0059】
<PEG−b−DPA−Ptの合成>
式(9)で表されるPEG−b−DPA(48.85mg,2.18μmol)をメタノール5mLに溶解させた溶液にPt(DMSO)
2Cl
2(69.08mg,0.164mmol,DPAユニットに対して1.337当量)をメタノール5mLに溶解させた溶液を滴下し、1日間攪拌した。その後、透析(MWCO:3500)による精製を行い、凍結乾燥を行った。得られた生成物が式(10)で表されるPEG−b−DPA−Ptであることを、
1H−NMRのピークシフトより確認した(82.9mg,収率:92.9%)。PEG−b−DPAの白金錯体化は、DPAのピリジン環のアミンにPtが配位したことによるピリジン環の電子状態の変化を表した
1H−NMRの低磁場側への定量的なピークシフトにより確認した。反応スキームを以下に示す。
【0060】
【化6】
【0061】
<PEG−b−DPAのミセル化>
PEG−b−DPA(式(9))50mgをジメチルスルホキシド5mLに溶解し、透析膜(MWCO:3500)を用いて、Milli−Q水に対する透析を行った。3日後、回収した溶液を1mg/mLに調整し、これを母液とした。母液から1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、0.001、0.0001、0.00001mg/mLの各濃度の溶液4mLを調製し、3日間静置した。
【0062】
<PEG−b−DPA−Ptのミセル化>
PEG−b−DPA−Pt(式(10))50mgをジメチルスルホキシド5mlに溶解し、透析膜(MWCO:3500)を用いて、PBSに対する透析を行った。3日後、回収した溶液を1mg/mLに調整し、これを母液とした。母液から1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、0.001、0.0001、0.00001mg/mLの各濃度の溶液4mLを調製し、3日間静置した。
【0063】
<PEG−b−DPA、PEG−b−DPA−Ptの物性評価>
[臨界ミセル濃度の評価]
上記にて得られたPEG−b−DPA(式(9))、PEG−b−DPA−Pt(式(10))のミセル溶液を用いて、ピレンの蛍光プローブ法により、それぞれの臨界ミセル濃度(cmc)を求めたところ、PEG−b−DPAのcmcは0.02597mg/mLと算出された。また、PEG−b−DPA−Ptのcmcは0.2277mg/mLと算出された。PBS中においてPEG−b−DPA−Ptの会合挙動が観察されたので、電荷的反発をイオン添加により緩和し会合体を形成したと考えられる。しかし、錯体化していないPEG−b−DPAと比較したところ、錯体化後のPEG−b−DPA−Ptのcmcがおよそ10倍であることが確認された。これは、Pt錯体化による親疎水バランスの変化によるものであると考えられ、電荷的反発のみが会合挙動に影響を及ぼしているわけではないと考えられる。
【0064】
[ダイナミック光散乱光度計による評価]
上記にて得られたPEG−b−DPAの母液(1.0mg/mL)を3mLとり、0.22μmフィルターでろ過後、ダイナミック光散乱光度計(DLS(Dinamic Light Scattaring)−7000(大塚電子(下部)、大阪、日本))を用いて、Arレーザー(488nm)により、測定を行った。また、PEG−b−DPA−Ptについても同様の操作を行った。その結果、PEG−b−DPA、PEG−b−DPA−Ptにおけるそれぞれのミセルの粒径は80.8nm、87.1nmであることが確認された。また、PEG−b−DPA、PEG−b−DPA−Ptにおけるミセルの多分散指数(P.D.)は、それぞれ0.06936、0.08488であり、いずれもミセルの多分散指数が0.1を下回る値を示していた。これにより、それぞれのミセルが非常に単分散であることが確認された。
【0065】
<Ptナノ粒子の作製>
上記にて得られたPEG−b−DPA−Ptミセル溶液(2mg/mL)を、150mM PBSを用いて希釈し、PEG−b−DPA−Pt(0.3533mg/mL)ミセル溶液6mLを調製した。調製したミセル溶液にNaBH
4(12.71mg,DPAユニットに対して100当量)を直接加え、室温で1日間攪拌した。
【0066】
ミセル溶液は還元剤を加えて1時間以内に黄色から茶色に変色した。還元剤の添加量の増加に伴い、溶液はよりこい茶色を呈し、Ptイオンの還元が示唆された。所定時間経過後も溶液は茶色の分散溶液であったことから、ミセルコア部でPt粒子が生成し、ブロック両親媒性高分子が分散剤としての役割を果たしていると考えられる。
【0067】
[ダイナミック光散乱光度計による評価]
上記NaBH
4の添加後の1日間の攪拌後、DLS測定とTEM観察を行った。DLS測定によると、ミセルの粒径は87.7nm、多分散指数(P.D.)は0.1144であった。還元前のミセル溶液は、粒径87.1nm、多分散指数(P.D.)は0.08488であった。このように、ミセルの粒径、多分散指数に大きな変化はみられなかった。これは、還元前後においてミセルが単分散性を維持していることを示しており、ミセルが崩壊することなくコアを反応場として還元が起きたことを示唆している。
【0068】
[TEM観察]
攪拌後のミセルにおいて、TEM観察を行ったところ、37.5−50nmのぼんやりとした黒い塊内に1−2nmの黒点が観察された。透過型電子顕微鏡(TEM)は試料を透過した電子の密度により画像のコントラストを得るため、画像のコントラストが濃い場所は電子線が透過しにくい金属、薄い場所は電子線が透過しやすい有機物が観察される。すなわち、TEMにより観察された黒点はPtナノ粒子であると考えられる。
【0069】
この結果より、ミセル溶液においてPEG−b−DPA−Pt会合体が一定の形状を保っていることや、1−2nmと非常にサイズ均一なPtナノ粒子が観察され、ミセルの形状を保ったままコア部にてPtナノ粒子が生成したことが考えられる。このミセルについて、STEMを用いて観察した画像を
図1に示す。
図1から、66nmのミセル内に1−2nmのPtナノ粒子が生成していることが確認された。
【0070】
以上の結果より、NaBH
4のDPAユニットに対して100当量加えることで、Ptナノ粒子が合成されることが確認された。なお、以下、還元剤の添加による1回目の還元後のPEG−b−DPA−Ptを「1
streduced PEG−b−DPA−Pt」と呼称する。
【0071】
<Ptナノ粒子の触媒活性評価>
1
streduced PEG−b−DPA−Pt溶液(0.7377mg/mL)0.5677mL、4−ニトロフェノール水溶液(2mM)0.037mL、Milli−Q1.321mLを加えて溶液を調製し、全量を1.926mLにした。29.7mMに調製したNaBH
4水溶液0.074mLを素早く加え、よく振り混ぜた後、直ちにUV−visスペクトル測定を開始した。その結果、4−ニトロフェノールの吸収波長である400nmにおけるピークの減少が確認された。これは、4−ニトロフェノールが4−アミノフェノールに変化したためであると考えられる。4−ニトロフェノールは触媒存在下においてのみ4−アミノフェノールに変化するため、1
streduced PEG−b−DPA−Ptが触媒としてこの反応の進行に貢献したことが示唆された。
【0072】
<異種複合金属ナノ粒子の調製>
下記表1に示すとおりの組成で、実施例1、2の溶液を光学セルに調製し、各温度において静置した。一定時間ごとにUV−visスペクトル測定を行い、反応終了を確認後、DLS測定、TEM観察を行った。
【0073】
【表1】
【0074】
[UV−visスペクトル測定]
実施例1、2の溶液において、時間経過とともに金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴に由来するピークが観察された。しかし、1
streduced PEG−b−DPA−Pt由来のベースライン上昇が観察されており、金属ナノ粒子由来のピークトップ波長の観察が困難なため、ブランクを1
streduced PEG−b−DPA−Ptにし、各溶液についてUV−visスペクトル測定を行った。その結果を
図2に示す。
図2より、各溶液のピークトップ波長が、実施例1:408nm、実施例2:410nmであることが確認された。ピークトップ波長からも、Agイオンが還元されて、Agナノ粒子が生成していることが確認された。このように、Agイオンの還元が起こった理由は、Ptナノ粒子がラジカル移動の触媒になっているからであると考えられる。一般的に、Ptナノ粒子がラジカルスカベンジャーとしての能力を有しており、安定ラジカルとして有名な2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(DPPH)のラジカルをスカベンジすることが知られている。つまり、DPAから発生したラジカル、又は溶媒から発生したラジカルをPtナノ粒子がスカベンジし、Ptナノ粒子上に局所的にラジカルが集積されることにより、Agイオンの還元が起こったのではないかと考えられる。
【0075】
反応条件ごとに、各溶液の比較を行った。まず、30℃(実施例1)と50℃(実施例2)の比較を行った。その結果、50℃の方が金属イオンの還元スピードが速いことが確認された。これは、熱を加えたことによりDPAの活性化エネルギーが減少し、金属イオンの還元が促進されたからであると考えられる。また、熱を加えたことにより会合数が上昇し、ミセル反応場のDPA濃度が上昇し、還元されやすくなったとも考えられる。
【0076】
[ダイナミック光散乱光度計による評価]
DLSによる測定結果を、表2に示す。いずれの溶液においても金属イオン添加前と還元後では、ミセルの粒径、多分散指数には大きな変化はみられなかった。これは、還元前後においてミセルが単分散性を維持していることを示しており、ミセルが崩壊することなくコアを反応場として還元が起きたことを示唆している。
【0077】
【表2】
【0078】
[TEM観察]
各ミセルのTEM観察結果を
図3に示す。
図3において、実施例1、2では40nmのPEG−b−DPA−Ptミセルと1−2nmの黒点が観察された。この1−2nmの黒点が、Ptナノ粒子とAgナノ粒子の複合金属であると考えられる。
【0079】
<PEG−b−DPAを用いた金属ナノ粒子の作製>
下記表3に示す組成のとおりに、試験例1の溶液を光学セルに調製し、各温度において静置した。一定時間ごとにUV−visスペクトル測定を行った。
【0080】
【表3】
【0081】
試験例1のUV−visスペクトル測定結果を
図4に示す。
図4より、Auイオン添加系(試験例1)において、金属ナノ粒子のプラズモン共鳴に由来するピークが観察された。これは、DPAの3級アミンから発生するラジカルによりAuイオンが還元されAuナノ粒子が生成したものと考えられる。
【0082】
<異種複合金属ナノ粒子の触媒活性評価>
4−ニトロフェノール水溶液(2mM)0.037mL、実施例1、2の溶液(いずれも0.5mg/mL)0.838mL、Milli−Q1.051mLを光学セルに添加し、全量を1.926mLにした。29.7mMに調整したNaBH
4水溶液0.074mLを素早く加え、よく振り混ぜた後、直ちにUV−visスペクトル測定を開始した。
【0083】
[触媒活性評価]
UV−visスペクトル測定結果に基づき、λ=400nmにおける吸光度の時間依存的変化を対数で表したグラフを
図5に示す。
図5から反応速度定数kを算出した。kは以下の式を用いて算出し、その結果を表4に示す。
【0084】
【数1】
【0085】
【表4】
【0086】
表4より、実施例1、2においては、1
streduced PEG−b−DPA−Ptと比較すると反応速度定数が500倍と飛躍的に向上した。このように、実施例1、2は、1
streduced PEG−b−DPA−Ptと比較して、触媒活性が極めて優れていることが確認された。また、実施例1(30℃還元)と、実施例2(50℃還元)を比較すると、実施例2の方が、触媒活性が若干高かった。これは、rigidな相構造を有する金属結晶の形成のためであると考えられる。
【0087】
<2回還元によるPtナノ粒子の作製及び触媒活性評価>
PEG−b−DPA−Ptミセル溶液(1mg/mL)6mLにNaBH
436.00mg(Ptに対して100当量)を加え1日攪拌した後、PBSに対して1日透析を行った(1回還元)。透析後の溶液に対し、再度NaBH
433mg(Ptに対して100当量)を加え1日攪拌した後、1日PBSに対して透析を行っている(2回還元)。1回還元、2回還元のそれぞれの溶液を用いて、4−ニトロフェノールによる触媒活性評価を行った。以下の表5に示すとおりの組成の溶液を調製し(比較例1、比較例2)、時間依存的なUV−visスペクトル測定結果より評価を行った。
【0088】
【表5】
【0089】
比較例1、2のそれぞれのサンプルの400nmにおけるピーク変化を
図6に示す。
図6に示すように、2回還元することによって、作製されたPtナノ粒子の触媒活性は、1回目のみ還元されたものより若干触媒活性が高いが、大きな差は確認されなかった。
【0090】
上記に示したとおり、実施例1、2(Pt/Agナノ粒子)は、1
streduced PEG−b−DPA−Pt(Ptナノ粒子)と比較して、触媒活性が極めて優れていることが確認された。また、Ptナノ粒子を、還元剤を利用して2回還元して作製したPtナノ粒子(比較例2)も、1回還元したもの(比較例1、すなわち1
streduced PEG−b−DPA−Pt)と触媒活性において大きな差がみられなかったことから、実施例1、2(Pt/Agナノ粒子)は、2回還元して作製したPtナノ粒子(比較例2)と比較しても、極めて優れた触媒活性を有していることが示された。ここで、Ptナノ粒子は、Agナノ粒子よりも、触媒活性が極めて高いことが、従来から知られている(Kunio Esumi,et al., Langmuir, vol.20, No.1,p237−243(2004)を参照)。そうすると、Ptナノ粒子とAgナノ粒子との触媒活性を併せても、Ptナノ粒子のみのものの触媒活性とほとんど変わらないはずである。にもかかわらず、上記のとおり、実施例1、2(Pt/Agナノ粒子)は、Ptナノ粒子と比較して、極めて高い活性を有する。これは、上記方法により調製したPt/Agナノ粒子が、コア/シェル構造をとるか、あるいは、PtとAgとからなる合金構造をとり、Pt/Ag間で何らかの相互作用が働き、結果として極めて高い触媒活性を示しているからであると考えられる。