【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明の地下排水ポンプ設備は、流入水路からの流入水を受け入れる吸込水槽と該吸込水槽内の水を揚水する排水ポンプとを備えた地下排水ポンプ設備において、前記吸込水槽の底部に、降雨の初期段階で前記流入水路から前記吸込水槽に流れ込むし渣もしくは塵芥を含む流入水を貯留する初期塵芥貯槽を設け
、前記流入水路を形成した前記吸込水槽の前壁と、前記吸込水槽の底版の前面との間に、前記流入水路からの流入水を前記初期塵芥貯槽に導入するための導入路として機能する開口部を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、汚水と雨水とを集めて処理する合流式下水道や地下放水路を使用した排水システムにおいて、降雨の初期段階にポンプ設備に流れ込む初期塵芥を吸込水槽の底部に設けた初期塵芥貯槽に貯留することができるので、これらの初期塵芥を吐出側河川に排出することなく適切に処理することが可能となり、環境性に優れた地下排水ポンプ設備を構築することが可能となる。
本発明によれば、吸込水槽の前壁と吸込水槽の底版の前面との間に、開口部が形成されており、この開口部は、流入水路から流入する初期塵芥を含む流入水を初期塵芥貯槽内に導入するための導入路として機能する。
【0012】
本発明の一態様は、前記初期塵芥貯槽は、前記吸込水槽の底面を規定する底版(底盤もしくは底板ともいう)の下方に設置されていることを特徴とする。
本発明によれば、吸込水槽の底面を構成する底版の下方に初期塵芥貯槽を設けている。初期塵芥貯槽は、吸込水槽の底壁、両側壁および底版とによって形成された略直方体状の貯留空間を有しており、初期塵芥を含む流入水の所定量を貯留可能としている。
【0014】
本発明の
地下排水ポンプ設備の他の態様は、
流入水路からの流入水を受け入れる吸込水槽と該吸込水槽内の水を揚水する排水ポンプとを備えた地下排水ポンプ設備において、前記吸込水槽の底部に、降雨の初期段階で前記流入水路から前記吸込水槽に流れ込むし渣もしくは塵芥を含む流入水を貯留する初期塵芥貯槽を設け、前記吸込水槽の底版の前面に、下方に延びる垂下部を設け、前記初期塵芥貯槽に流入したし渣もしくは塵芥が前記吸込水槽へ浮遊や逆流しないようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、吸込水槽の底版の前面に、下方に延びる垂下部を設けている。底版の垂下部は、初期塵芥貯槽内に浮遊する初期塵芥が吸込水槽に戻らないようにするための逆流防止手段として機能する。
【0015】
本発明の一態様は、前記初期塵芥貯槽に隣接して、前記初期塵芥貯槽に貯留されたし渣もしくは塵芥を含む流入水の一部を回収するための残水排水槽を設置したことを特徴とする。
本発明によれば、初期塵芥貯槽に隣接して、初期塵芥貯槽内に貯留された初期塵芥を含む水を回収して排出するための残水排水槽を設置している。そのため、初期塵芥を含む流入水を残水排水槽から処理施設へ排出することができ、初期塵芥を吐出側河川に排出することなく適切に処理を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の一態様は、前記残水排水槽に、該残水排水槽内に回収された流入水を排出するための残水排水ポンプを設けたことを特徴とする。
本発明によれば、残水排水槽内には残水排水ポンプが設置されているため、残水排水ポンプにより残水排水槽内に回収された初期塵芥を含む水を処理施設へ排出することができる。残水は処理施設にて適切に処理される。
【0017】
本発明の一態様は、前記初期塵芥貯槽内に散水して清掃する散水栓設備を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、初期塵芥貯槽内の残水および残水排水槽内に残留する塵芥を排出した後に、散水栓設備を作動させ、初期塵芥貯槽内に残ったゴミや泥などを清掃することができる。すなわち、散水ポンプから散水用の水を散水配管を介して各散水栓に給水し、各散水栓から水を噴出し、初期塵芥貯槽内を清掃することで異臭を防止することができる。
【0018】
本発明の一態様は、前記初期塵芥貯槽の底面は、前記残水排水槽に向かって下り勾配になっていることを特徴とする。
本発明によれば、初期塵芥貯槽内と残水排水槽とは開口によって連通しており、また、初期塵芥貯槽の底面は、初期塵芥貯槽側から残水排水槽側に向かって下り勾配になっている。残水排水槽の底面は初期塵芥貯槽の底面より下方に位置しているため、残水排水槽内に初期塵芥貯槽から流入した初期塵芥を含む水を効果的に回収することができる。
【0019】
本発明のその他の態様は、前記開口部に、前記流入水が落下する際の勢いを弱める複数の減勢板を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、開口部の位置において、吸込水槽の前壁および吸込水槽の底版の前面に、上下方向に多段状に複数の減勢板が設置されている。複数の減勢板は、流入水路から落下する流入水が蛇行して下方に流れるように配置される。このように、流入水路から落下した流入水が蛇行して下方に流れるため、流入水路から初期塵芥貯槽へ落下する際の水の勢いが減衰され、開口部を形成している箇所の土木構造物への負担を軽減することができる。また、開口部に多段状に複数の減勢板を設けることにより、初期塵芥貯槽から吸込水槽への初期塵芥の浮遊や逆流を抑制できる。
【0020】
本発明のその他の態様は、前記流入水路を形成した前記吸込水槽の前壁から張り出した張出部と、前記吸込水槽の底版の前面との間に、前記流入水路からの流入水を前記初期塵芥貯槽に導入するための導入路として機能する開口部を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、吸込水槽の前壁に、該前壁から底版に向かって張り出す張出部を設け、流入水路からの流入水を前記初期塵芥貯槽に導入するための導入路として機能する開口部を前記張出部と底版の前面との間に設けている。
【0021】
本発明の好ましい態様は、前記初期塵芥貯槽と残水排水槽とを連通している開口部分に連通ゲートを設け、吸込水槽の水位により連通ゲートを開閉させることを特徴とする。
本発明によれば、初期塵芥を含む流入水が流入する場合は、連通ゲートを開とし、初期塵芥を含む流入水を残水排水槽に貯留させる。排水ポンプが運転した後に、吸込水槽水位が所定の水位まで下がった場合に、連通ゲートを閉とし、残水排水槽の貯留水が初期塵芥貯槽内の水を吸込水槽側に逆流させることを助長することを防止する。また、常時連通ゲートを閉にして、排水ポンプ停止後、残水排水を行う時に連通ゲートを開としてもよい。
【0022】
本発明のその他の態様は、前記吸込水槽内の水を揚水する排水ポンプの運転中に、前記残水排水ポンプの運転を開始することを特徴とする。
通常、排水ポンプによる排水終了後(排水ポンプ停止後)、残水排水ポンプの運転を開始するが、本発明によれば、排水ポンプの運転中に残水排水ポンプの運転を開始し、初期塵芥貯槽内の水を早めに排出することにより砂・泥などが初期塵芥貯槽の底面に沈殿することはなくなる。また、排水ポンプの運転中に残水排水ポンプを運転することにより、初めに貯留した一番汚れた初期塵芥を排出することができ、さらに初期塵芥を回収できるようになるため、河川へ排出される水もさらにきれいになる。
また、前記残水排水槽に水位計を設け、前記残水排水槽の水位が所定の水位になったら前記残水排水ポンプを運転させてもよい。
【0023】
本発明のその他の態様は、前記残水排水ポンプによる前記残水排水槽の排水後に、前記残水排水槽内に残留した塵芥を掻き上げるための塵芥掻き上げ装置を設けたことを特徴する。
本発明によれば、残水排水ポンプにより排水された後に、残水排水ポンプで排水できない大きさの塵芥が残水排水槽内に残留する場合に、塵芥掻き上げ装置を作動させてバケット等により残留した塵芥を掻き上げることができる。また、前記塵芥が残水排水ポンプに流入し、閉塞することを防止するために残水排水ポンプの周囲にスクリーンを設けてもよい。
【0024】
本発明のその他の態様は、前記残水排水ポンプをカッター付又はボルテックス型としたことを特徴とする。
本発明によれば、残水排水ポンプで排出できない大きさの塵芥が流入してきた場合に、残水排水ポンプをカッター付にすることにより塵芥を破砕することができ、また、残水排水ポンプをボルテックス型とすることにより残水排水ポンプと同口径までの塵芥を排出することができるので、残水排水ポンプが閉塞することを防止できる。
【0025】
本発明のその他の態様は、前記初期塵芥貯槽と前記残水排水槽を連通させる開口に破砕機を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、残水排水ポンプで排出できない大きさの塵芥が流入してきた場合に、破砕機により塵芥を破砕することができるので、残水排水ポンプが閉塞することを防止できる。
【0026】
本発明のその他の態様は、前記初期塵芥貯槽及び吸込水槽に脱臭設備を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、初期塵芥貯槽及び吸込水槽に脱臭設備を設けるため、市街地のポンプ設備において、流入水や残水から発生する悪臭の防臭対策ができ、環境性に優れた設備を構築することができる。また、初期塵芥貯槽内の残水を排出した後に、清掃員が初期塵芥貯槽内や吸込水槽内の清掃をする時の酸欠などの対策もできる。