(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3の技術はいずれも、中栓に形成された溝、通気経路等を利用して液漏れを防止する技術に関するものである。この点、本願の中栓は、新たな方法による液漏れ防止技術を提供するものである。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、液体の漏出を抑制する中栓、および当該中栓を備えた吸い上げ式液体容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る中栓は、上記の課題を解決するために、吸い上げ式液体容器の容器本体内に挿入され、当該容器本体内の液体を吸い上げる吸液芯を当該容器本体の開口部において保持するための中栓であって、上記開口部に保持される中栓本体と、上記中栓本体に連結する、上記吸液芯を保持する吸液芯保持部と、上記中栓本体が上記開口部に保持されたときに上記容器本体の内部空間に位置し、上記吸液芯保持部に沿う方向に移動可能な可動部と、を備え、上記中栓本体には、上記容器本体に収容される液体の側に配置される当該中栓本体の表面である液側表面に、上記容器本体の内部空間を外気に連通させる貫通孔が形成されており、上記可動部は、上記吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、重力により上記液側表面に近接することを特徴としている。
【0012】
本発明に係る中栓は、中栓本体の液側表面に、容器本体の内部空間を外気に連通させる貫通孔が形成されている。つまり、本発明に係る中栓では、上記貫通孔が通気構造として機能することから、吸液部が吸液することによる容器本体の内圧の低下は抑制される。また、本発明に係る中栓では、上記貫通孔が通気構造として機能することから、気温の上昇等による容器本体の内圧の増加は抑制される。このように、本発明に係る中栓は、液側表面に上記貫通孔が形成されていることで、容器本体の内圧を安定させ、吸い上げ式液体容器からの液体の放散速度のばらつきを抑えることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る中栓は、上記中栓本体が上記開口部に保持されたときに上記容器本体の内部空間に位置し、上記吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、重力により上記液側表面に近接する可動部を備える。これにより、本発明に係る中栓は、吸い上げ式液体容器からの液体の漏出を抑制することができる。
【0014】
この効果を説明するために、吸い上げ式液体容器が横倒しになったときを考える。
【0015】
一般に、吸い上げ式液体容器が横倒しになったとき、容器本体の外部から内部への空気経路が存在する場合に、言い換えれば、容器本体の外部から内部へ空気が流入する場合に、容器本体に収容された液体は容器本体の外部へ漏出しやすくなる。そのため、吸い上げ式液体容器が横倒しになったときには、液側表面に形成された貫通孔を介して容器本体の外部から内部へ空気が流入し、容器本体の外部へ液体が漏出する。また、貫通孔が液側表面に複数形成されている場合には、吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、液面よりも上方に位置する貫通孔を介して容器本体の外部から内部へ空気が流入し、それにより容器本体の外部へ液体が漏出する。
【0016】
しかしながら、本発明に係る中栓では、吸い上げ式液体容器が横倒しになったとき、重力により可動部が中栓本体の液側表面に近接するため、可動部と液側表面との間のクリアランスは狭くなる。そして、容器本体に収容された液体は、毛細管現象によって可動部と液側表面との間を上昇し、液側表面に形成された貫通孔を液体で満たすことになる。
【0017】
このように、本発明に係る中栓は、吸い上げ式液体容器が横倒しになったときには、毛細管現象を利用して、液側表面の貫通孔、言い換えれば、空気経路を液体で遮断し、容器本体からの液体の漏出を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る中栓では、上記可動部は、筒体であり、当該筒体内に上記吸液芯保持部が嵌入される構成であってもよい。
【0019】
一般に、吸い上げ式液体容器は小型であって、容器本体の内部空間における空間的制約は大きい。
【0020】
この点、可動部は、筒体であり、筒体内に吸液芯保持部が嵌入される。そのため、中栓本体は、可動部を取り付けるための部材を新たに備える必要がない。これにより、中栓本体が保持される容器本体の開口部には空間的に余裕が生まれ、可動部のサイズを大きくするなど、設計の自由度を高めることができる。
【0021】
なお、筒体とは、管、くだのように、中が空洞になっている形状をいう。また、筒体は、内部空間の断面形状を、円形、四角形、三角形等の種々の形状とすることができ、特定の形状に限られない。
【0022】
また、本発明の一態様に係る中栓では、
上記可動部は、上記筒体の内周面において突出する第1突出部を備え、
上記第1突出部は、上記可動部が上記液側表面の方向へ移動するときに、上記吸液芯保持部と接触する構成であってもよい。
【0023】
上記可動部が筒体の内周面において突出する第1突出部を備えていない場合を考える。この場合、上記可動部は、内周面そのものを接触面として上記吸液芯保持部と接触する。
【0024】
一方、上記可動部が筒体の内周面において突出する第1突出部を備え、上記第1突出部が、上記可動部が上記液側表面の方向へ移動するときに、上記吸液芯保持部と接触する場合を考える。この場合、上記可動部が上記液側表面の方向へ移動するときに、第1突出部が上記吸液芯保持部と接触する。そのため、筒体である可動部の内周面に第1突出部が存在しない場合と比べると、上記可動部と上記吸液芯保持部との接触面積を小さくすることができる。
【0025】
これにより、上記可動部と上記吸液芯保持部との間の摺動抵抗を低減することができ、吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、上記可動部が上記貫通孔に近接しやすくなる。そして、容器本体に収容された液体は、毛細管現象によって可動部と液側表面との間を上昇し、液側表面に形成された貫通孔を液体で満たし、容器本体の外部への液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0026】
また、本発明の一態様に係る中栓では、
上記第1突出部は、上記吸液芯保持部に沿う方向における上記可動部の重心位置を基準に、上記貫通孔とは反対側に位置する構成であってもよい。
【0027】
上記の構成により、上記可動部は、上記吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、上記第1突出部を支点として傾きやすくなる。これにより、吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、たとえ吸液芯保持部と上記第1突出部との間の摺動性が芳しくないときであっても、上記可動部は上記貫通孔の方向に倒れ込みやすくなり、可動部と液側表面との間の距離を狭くすることができる。そして、容器本体に収容された液体は、毛細管現象によって可動部と液側表面との間を上昇し、液側表面に形成された貫通孔を液体で満たし、容器本体の外部への液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る中栓では、
上記可動部は、上記液側表面と対向する側の表面において突出する第2突出部を備え、 上記第2突出部は、上記可動部が上記液側表面に近接したときに、上記貫通孔と対向する位置に位置決めされている構成であってもよい。
【0029】
上記可動部は、上記液側表面と対向する側の表面(以下、対向面と称する)に第2突出部を有することにより、第2突出部を対向面に有していない可動部と比べて、上記第2突出部と上記貫通孔との間の距離をさらに短くすることができる。加えて、第2突出部は、上記可動部が上記液側表面に近接したときに、上記貫通孔と対向する位置に位置決めされている。
【0030】
これにより、容器本体に収容された液体は、毛細管現象によって可動部と液側表面との間を上昇し、液側表面に形成された貫通孔を液体で満たし、容器本体の外部への液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る中栓では、
上記吸液芯保持部は、上記可動部の内周面と対向する面において突出する第3突出部を備え、
上記第3突出部は、上記可動部が上記液側表面の方向へ移動するときに、上記可動部と接触する構成であってもよい。
【0032】
上記構成によれば、上記第3突出部が上記可動部の内周面と接触するため、第3突出部が存在しない場合と比べて、上記可動部が上記液側表面の方向へ移動するときに、上記可動部と上記吸液芯保持部との接触面積を小さくすることができる。
【0033】
これにより、上記可動部と上記吸液芯保持部との間の摺動抵抗は低減し、吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、上記可動部が上記貫通孔に近接しやすくなる。その結果、容器本体の外部への液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0034】
また、本発明の一態様に係る中栓では、上記液側表面に、上記液側表面と上記可動部との解離を容易にする突起部を備える構成であってよい。
【0035】
本発明に係る中栓では、吸い上げ式液体容器が横倒しになると、可動部が中栓本体の液側表面に近接する。このとき、可動部が、液側表面に張り付き、液側表面から外れにくくなることも考えられる。可動部が液側表面に張り付いて解離しなくなると、液側表面に形成された貫通孔は、空気経路として機能しなくなり、容器本体の内圧を安定に保持する通気機能としての役割を果たさなくなる。
【0036】
そこで、本発明の一態様に係る中栓は、上記構成を備えることにより、上記液側表面と上記可動部との解離を容易にする。これにより、液側表面に形成された貫通孔は、容器本体の内圧を安定にする通気機能を保持することができる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る中栓では、上記貫通孔は、上記突起部を貫通して形成されている構成であってよい。
【0038】
上記の構成によれば、本発明の一態様に係る中栓は、容器本体の内部空間を外気に連通させる貫通孔が形成された突起部を備える。
【0039】
これにより、突起部は、それ自体で、容器本体の内圧を安定に保持する通気機能、および、上記液側表面と上記可動部との解離を容易にする機能を兼ね備えることができる。そして、上記構成により、中栓本体の液側表面の構造を簡素化することができる。
【0040】
また、本発明の一態様に係る中栓では、上記可動部は、上記吸液芯保持部とは異なる材質で形成されている構成であってもよい。
【0041】
上記可動部は、上記吸い上げ式液体容器が横倒しになると上記液側表面に近接する。
【0042】
この点、上記吸液芯保持部とは異なる材質で上記可動部を形成することで、上記可動部は、上記吸液芯保持部に対する移動性、摺動性を高めることができる。一例として、可動部は、吸い上げ式液体容器内の液体よりも比重が大きい材質であって、上記吸液芯保持部とは異なる材質で形成される。
【0043】
また、本発明の一態様に係る中栓では、上記可動部は、環状であり、内周内に上記吸液芯保持部が嵌入される構成であってもよい。
【0044】
一般に、吸い上げ式液体容器は小型であって、容器本体の内部空間における空間的制約は大きい。
【0045】
この点、可動部は、環状であり、内周内に吸液芯保持部が嵌入される。そのため、中栓本体は、可動部を取り付けるための部材を新たに備える必要がない。これにより、中栓本体が保持される容器本体の開口部には空間的に余裕が生まれ、可動部のサイズを大きくするなど、設計の自由度を高めることができる。
【0046】
また、本発明の一態様に係る吸い上げ式液体容器では、上記何れかの中栓を備える構成であってよい。
【0047】
これにより、上述した種々の効果を奏する吸い上げ式液体容器をユーザに提供することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る中栓は、上記開口部に保持される中栓本体と、上記中栓本体に連結する、上記吸液芯を保持する吸液芯保持部と、上記中栓本体が上記開口部に保持されたときに上記容器本体の内部空間に位置し、上記吸液芯保持部に沿う方向に移動可能な可動部と、を備え、上記中栓本体には、上記容器本体に収容される液体の側に配置される当該中栓本体の表面である液側表面に、上記容器本体の内部空間を外気に連通させる貫通孔が形成されており、上記可動部は、上記吸い上げ式液体容器が横倒しになったときに、重力により上記液側表面に近接する構成である。
【0049】
それゆえ、液体の漏出を抑制する中栓を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態に係る吸い上げ式液体容器1について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0052】
〔吸い上げ式液体容器1の構成〕
図2は、吸い上げ式液体容器1の外観斜視図を示す。吸い上げ式液体容器1は、容器本体2と、外栓3と、中栓10と、吸液芯30とを備える。吸い上げ式液体容器1は、容器本体2に収容された液体を吸液芯30による毛細管現象により吸い上げ、吸い上げた液体を、加熱、蒸発、振動等によって装置外部へと放散する。
【0053】
ここで、本実施の形態において、「液体」とは、芳香剤、消臭剤、殺虫剤などを含む、芳香、消臭、殺虫機能を有する液体をいう。ただし、液体は、上記の各機能を有するものに限られない。例えば、液体は、加湿目的の水であってもよい。
【0054】
容器本体2は、内部に液体を収容する。容器本体2は、ガラス、プラスチック等の材質で形成されてよい。容器本体2は、円筒状であり、開口部が胴体部よりも幅狭に形成されている。容器本体2は、吸液芯30を保持する中栓10を開口部の内側に装着する。また、容器本体2は、着脱自在の外栓3を開口部の外側に装着する。
【0055】
容器本体2は、円筒状に限らず種々の形状で形成されてよく、例えば、四角柱状、球状、半球状など、用途や使用状態、デザイン等に対応して自由に設計されてよい。また、容器本体2に外栓3を装着する方法として、螺着、嵌め込みなどの周知の方法を用いることができる。
【0056】
外栓3は、容器本体2の開口部に着脱自在に装着され、蓋として機能する。つまり、外栓3は、容器本体2からの液体の漏出を防止するキャップともいえる。外栓3は、ガラス、プラスチック等の材質で形成されてよい。
【0057】
次に、中栓10を
図1等により説明する。
図1は、中栓10の外観図である。
図3は、中栓10の断面図である。
【0058】
ここで、本実施の形態において、重力方向を下方向、重力方向と反対の方向を上方向と規定する。
図1、
図3では、図面下側が重力方向(下方向)であり、図示しない容器本体2は中栓10の下側に位置する。
【0059】
中栓10は、吸液芯30を保持し、かつ、容器本体2の開口部に装着される。中栓10は、中栓本体12と、ボトルプラグ14と、突起部16と、吸液芯保持部17と、リング18(可動部)と、リング係止部20と、を備える。
【0060】
ここで、中栓本体12、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、およびリング係止部20は、一体で形成されてもよいし、別々に形成されていてもよい。ただし、プラスチック樹脂による射出成型で一体成形する方が、製造、コスト等の観点で好ましい。以下では、中栓本体12、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、およびリング係止部20は、一体成形されているものとして説明する。また、中栓本体12、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、およびリング係止部20が一体で形成されている場合、中栓本体12は、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、およびリング係止部20を備える、と表現されてもよい。
【0061】
なお、中栓本体12、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、リング18、およびリング係止部20は、プラスチックに限らず、金属等の材質で形成されてよい。
【0062】
以下、
図1、
図3により各部材を説明する。
【0063】
中栓本体12は、円筒状であり、容器本体2の開口部の口径よりも僅かに小さい。そのため、容器本体2の開口部に中栓本体12を嵌め込むと、容器本体2の開口部と中栓本体12とは密着する。これにより、容器本体2が逆さ姿勢になっても、容器本体2と中栓本体12との間から液体が流出することはない。
【0064】
中栓本体12には、ボトルプラグ14、および、吸液芯保持部17が一体に設けられている。あるいは、ボトルプラグ14、および、吸液芯保持部17は、中栓本体12に連結されているとも表現できる。中栓本体12は、リング18と対向する対向面が、平坦、あるいは、略平坦である(
図1、
図3の平坦面15)。言い換えると、平坦面15は、中栓本体12の表面であって、容器本体2に収容される液体の側に配置される液側表面である。
【0065】
中栓本体12は、円筒状に限らず、四角状、三角状等の他の形状であってよく、容器本体2の開口部に嵌め込まれたときに、容器本体2の開口部と中栓本体12とが密着する形状であればよい。
【0066】
また、中栓本体12は中空であり、突起部16に上下方向に貫通する貫通孔を介して、容器本体2の内部と連通する。
【0067】
ボトルプラグ14は、中栓本体12に一体に設けられ、また、中栓本体12との間に隙間Gが存在する。中栓本体12が容器本体2に嵌め込まれると、容器本体2の開口部の端部が隙間Gに嵌入される。このとき、容器本体2の開口部の内側が中栓本体12の外表面に密着し、容器本体2の開口部の外側および上端部がボトルプラグ14に密着する。これにより、容器本体2が中栓本体12に嵌め込まれたとき、容器本体2の開口部は、内側、上端部、外側が中栓本体12および/またはボトルプラグ14と密着する。それゆえ、容器本体2を逆さの姿勢に保持しても、容器本体2の開口部と中栓本体12との間からの液体の漏出が抑制される。
【0068】
次に、突起部16を
図4により説明する。
図4は、中栓本体12を下方から視たときの外観図である。
【0069】
突起部16は、中栓本体12の下部の平坦面(液側表面)15に形成され、中栓本体12が容器本体2の開口部に保持されたときに容器本体2の内部空間に位置する。突起部16は、平坦面15から突起している。突起部16の内部には、上下方向に延びる貫通孔が形成されている(
図3参照)。言い換えると、貫通孔は、平坦面15および突起部16を貫通して形成されている。このため、容器本体2の開口部に中栓本体12が嵌め込まれると、中栓本体12の内部と容器本体2の内部とが突起部16の貫通孔を介して連通する。突起部16は、平坦面15の何れの位置に形成されてもよい。
【0070】
突起部16に形成される貫通孔には、好ましくは、吸い上げ式液体容器1を起立させたときに、上側が幅広、下側が幅狭となるようテーパが付けられている(
図3参照)。突起部16は、内部に形成された貫通孔の直径が、例えば、上側で2mm、下側で1.8mmである。
【0071】
貫通孔の形状は、円形に限らず、四角状、三角状等の他の形状であってもよい。突起部16は、その高さが、例えば平坦面15から0.5mm〜1mmに形成されている。
【0072】
突起部16に貫通孔を形成する理由は次のとおりである。吸い上げ式液体容器1から液体が放散されると、容器本体2の内圧が低下し、吸い上げ式液体容器1から液体が放散されにくくなる。そのため、突起部16に貫通孔を形成することで、容器本体2の内部を外気に連通させて内圧を一定に保ち、液体の放散量を安定に保持している。
【0073】
図3に示すように、吸液芯保持部17は、中栓本体12と一体に、かつ、中栓本体12の内部から容器本体2の方向に向かって細長に形成されている。吸液芯保持部17は、長手方向に貫通孔が形成されており、その貫通孔に差し込まれた吸液芯30を貫通孔の内壁等により保持する。これにより、吸液芯保持部17は、中栓本体12の内部に吸液芯30の一端が位置し、容器本体2内の液体中に吸液芯30の他端が位置するよう吸液芯30を保持することができる。
【0074】
リング係止部20は、吸液芯保持部17に設けられ、吸い上げ式液体容器1を起立させたときのリング18の下方向への移動を規制する。
図1では、リング係止部20は、吸液芯保持部17に2つ設けられている。しかしながら、リング係止部20は、2個に限られず、1個、あるいは3個以上存在してもよい。また、リング係止部20は、吸い上げ式液体容器1を起立させたときのリング18の下方向への移動を規制するのであれば、その形状、構造は特定のものに限定されない。
【0075】
吸液芯30は、容器本体2に挿入されており、一端から容器本体2に収容された液体を毛細管現象によって吸い上げ、他端から、吸い上げた液体を、加熱、蒸発、振動等によって吸い上げ式液体容器1の外部へ放散する。
【0076】
吸液芯30の材質としては、連通孔を有する多孔質体、連続気泡を有する樹脂体又は樹脂繊維の集合体が好ましいものとして例示できる。具体的には、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルホルマール、ポリスチレン等からなる連続気泡を有する樹脂体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等の樹脂微粒子を主成分として打錠焼結させた多孔質体、ポリフッ化エチレン等からなる多孔質体、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、レーヨン、ウール等からなるフェルト部材、あるいはポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリフラール繊維、アラミド繊維等からなる不織布等の樹脂繊維の集合体、セラミック等の無機粉体を主成分として打錠焼結した多孔質の無機粉焼結体が例示できるが、何らこれらに限定されるものではない。また、これらに界面活性剤を処理したものでもよい。
【0077】
次に、リング18を
図5、
図1により説明する。
図5は、リング18の外観図である。
【0078】
リング18は、環状に形成され、内周内に吸液芯保持部17が嵌入される。言い換えれば、リング18は、吸液芯保持部17を取り囲む環状である。リング18は、吸液芯保持部17には固定されず、吸液芯保持部17の長手方向に沿って、突起部16および平坦面15とリング係止部20とに規制される範囲内を移動する。リング18は、吸液芯保持部17に対する可動性(摺動性)を高くするために、吸液芯保持部17に対して緩めに取り付けられている。
【0079】
これにより、リング18は、吸い上げ式液体容器1が起立した状態では、自身の重力により下方向へ移動し、その下方への動きは、リング係止部20により係止される。一方、リング18は、突起部16がリング係止部20よりも下方に位置するとき、例えば、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったとき、平坦面15および突起部16の方向に向かって移動し、平坦面15および突起部16に近接する。
【0080】
ここで、「近接」とは、接近すること、すぐ近くで接している状態、すぐ近くに存在することを言う。したがって、「リング18が平坦面15および突起部16に近接する」とは、リング18が平坦面15および突起部16に接していること、極めて近い位置に存在すること、などを意味する。
【0081】
リング18は、容器本体2に収容される液体よりも比重が大きい。リング18は、容器本体2に収容される液体よりも比重を大きくすることで、リング18を液中に沈め、突起部16に形成された貫通孔の通気構造としての機能を維持させている。
【0082】
また、中栓本体12、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、リング18、およびリング係止部20がプラスチックで形成される場合、次のようにプラスチック材料を選定することが好ましい。すなわち、中栓本体12、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、およびリング係止部20の材質と、リング18の材質とを異なるプラスチック材料で形成する。これにより、リング18は、吸液芯保持部17等に対する移動性、摺動性を高めることができる。一例として、中栓本体12、ボトルプラグ14、突起部16、吸液芯保持部17、リング18、およびリング係止部20がポリプロピレンにより形成され、リング18がポリアセタールにより形成される。
【0083】
なお、リング18は、吸液芯保持部17と異なる材質で形成されることで、吸液芯保持部17に対する移動性、摺動性を高めることができる。これは、分子的な結合力(ファンデルワールス力など)が、一般的には同種材間の場合は大きく、異種材間の場合は小さいことによる。リング18および吸液芯保持部17は、例えば、金属、樹脂など異種材料であってもよい。
【0084】
リング18は、〔リング18の動作とその効果2〕(後述)の機能を果たすのであれば、厚み、材質は特定のものに限られない。したがって、リング18は、ワッシャ等の薄い環状の部材で形成されていてもよい。また、リング18は、〔リング18の動作とその効果2〕の機能を果たすのであれば、完全に閉じた環状でなくともよく、例えば、一部が欠けた形状(ローマ字の「C」状)等であってもよい。
【0085】
ここで、リング18との関係において、突起部16を設ける理由を説明する。上述したように、突起部16は、平坦面15から突起している。突起部16が存在する場合と、突起部16が存在せず平坦面15に貫通孔のみが形成されている場合とを比較する。
【0086】
突起部16が存在せず平坦面15に貫通孔のみが形成されている場合、リング18が平坦面15に一旦張り付くと、リング18が平坦面15から解離しにくくなる場合がある。この場合、平坦面15に形成された貫通孔は、中栓本体12と容器本体2とを連通するという通気機能を失い、吸い上げ式液体容器1の安定運転が損なわれうる。さらに、この場合、中栓本体12の内部に溜まった液体を容器本体2に還流させることができなくなる。このような理由から、吸い上げ式液体容器1では、平坦面15に突起部16を設け、平坦面15とリング18との解離を容易にしている。
【0087】
ただし、平坦面15は、突起部16を備えている必要はない。平坦面15に微小の凹凸を形成しておくことで、平坦面15とリング18との解離を促すことができるためである。平坦面15が突起部16を備えていない場合には、突起部16の貫通孔は、平坦面15に形成された構成で代替されうる。
【0088】
次に、吸液芯保持部17に形成される排液孔22について、
図6を用いて説明する。
図6は、中栓10の断面図である。なお、
図6に示す断面は、吸液芯保持部17の中心と突起部16とを結ぶ線分に垂直で、かつ、吸液芯保持部17の中心を通る面を断面とする断面図である。
【0089】
図示するように、吸液芯保持部17には排液孔22が2か所形成されている。排液孔22は、中空に形成された中栓本体12の底面部近傍の吸液芯保持部17の壁面であって、かつ、互いに対向する位置に2か所形成されている。排液孔22を吸液芯保持部17に形成する理由は次のとおりである。
【0090】
吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときを考える。このとき、容器本体2に収容された液体が吸液芯30に吸い上げられ、吸い上げられた液体が容器本体2から漏出しうる。そこで、排液孔22が存在することにより、吸液芯30が吸収した液体は、排液孔22から中栓本体12に排液され、中栓本体12の内部に溜まる。中栓本体12の内部に溜まった液体は、突起部16の貫通孔を通って容器本体2に還流される。こうして、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときであっても、排液孔22を設けることにより、吸い上げ式液体容器1の外部への液体の漏出を抑制することができる。
【0091】
特に、吸い上げ式液体容器1からの液体の放散量が多い場合には、毛細管現象による吸液芯30の吸液速度を高める必要があり、吸液芯30の空隙率を高くすることになる。このとき、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったとき、吸液芯30を介した液体の漏出が問題となりやすい。そこで、吸液芯保持部17に排液孔22を形成することで、吸い上げ式液体容器1からの液体の漏洩を抑え、かつ、漏洩した液体を早期に容器本体2の内部に還流することができる。
【0092】
なお、吸液芯保持部17に形成される排液孔22の数は、2つに限らず、1、または3以上であってもよい。また、吸液芯保持部17に形成される排液孔22の位置も、互いに対向する位置ではなく、適宜決められてよい。排液孔22の直径は0.5mm〜1mm程度でよい。排液孔22の形状は、円状でなくとも、四角状、三角状など、適宜決められてよい。
〔リング18の動作とその効果1〕
吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときのリング18の動作を
図7等により説明する。
図7は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに突起部16が吸液芯30よりも上側に位置する場合の、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった直後のリング18の位置を示す図である。
図8は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに突起部16が吸液芯30よりも上側に位置する場合の、吸い上げ式液体容器1が横倒しになりしばらく時間が経過した後におけるリング18の位置を示す図である。
【0093】
図7に示すように、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった直後、リング18は、突起部16から離間している。
【0094】
しかしながら、吸い上げ式液体容器1が横倒しになりしばらく時間が経過した後では、
図8に示すように、リング18は、重力により突起部16の方向に移動し、突起部16と接触する。このとき、
図8では、リング18は、突起部16に形成された貫通孔を塞ぐように、突起部16と接触している。これにより、吸い上げ式液体容器1では、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出が抑制される。
【0095】
次に、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに突起部16が吸液芯30よりも下側に位置する場合を
図9、
図10により説明する。
図9は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに突起部16が吸液芯30よりも下側に位置する場合の、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった直後のリング18の位置を示す図である。
図10は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに突起部16が吸液芯30よりも下側に位置する場合の、吸い上げ式液体容器1が横倒しになりしばらく時間が経過した後におけるリング18の位置を示す図である。
【0096】
図9に示すように、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった直後、リング18は、突起部16から離間している。
【0097】
しかしながら、吸い上げ式液体容器1が横倒しになりしばらく時間が経過した後では、
図10に示すように、リング18は、重力により突起部16の方向に移動し、突起部16と接触する。このとき、
図10では、リング18は、突起部16に形成された貫通孔を塞ぐように、突起部16と接触している。これにより、吸い上げ式液体容器1では、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出が抑制される。
【0098】
このように、吸い上げ式液体容器1では、リング18が突起部16に形成された貫通孔を塞ぐ場合には、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出は抑制される。
【0099】
ただし、リング18と突起部16との接触の仕方、容器本体2に収容された液体の残量によっては、リング18が突起部16に形成された貫通孔を塞がない場合もある。そこで、以下の〔気液交換と液体の漏出との関係について〕、および、〔リング18の動作とその効果2〕では、リング18が突起部16に形成された貫通孔を完全に塞いでいない状態において、吸い上げ式液体容器1が、突起部16に形成された貫通孔からの液体の漏出を抑制する原理を説明する。
〔気液交換と液体の漏出との関係について〕
容器本体2に収容された液体が貫通孔を通って容器本体の外部へ漏出する様子を、容器本体2内の液面高さとの関係で
図11により説明する。
【0100】
図11は、液面高さ(液面1、液面2)と貫通孔Hからの液体漏出の関係を説明するための図である。なお、
図11では、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに貫通孔Hが吸液芯30よりも上側に位置する場合に該当する。また、
図11では、説明の便宜のため、リング18の記載は省略している。また、
図11では、説明の便宜のため、平坦面15に直接貫通孔Hが形成されている。
【0101】
図示するように、液面1は、貫通孔Hよりも高い位置にある。つまり、貫通孔Hは液体で満たされている。この場合、貫通孔Hを介した気液交換は行われにくい。具体的に、
図11の液面1の状態では、貫通孔Hが液体で満たされていることから、中栓本体12から容器本体2への空気の移動が生じにくく、そのため、容器本体2から中栓本体12へ液体が流れにくくなる。
【0102】
次に、液面2の場合を考える。貫通孔Hは、液面2と同じ高さにあり、液体によって完全に満たされた状態にはない。この場合、貫通孔Hを介した気液交換が行われやすい。具体的には、
図11の液面2の状態では、貫通孔Hが液体で満たされた状態にないことから、中栓本体12から容器本体2への空気の移動が生じやすい。このため、容器本体2から中栓本体12へ液体が流れやすくなる。
【0103】
つまり、中栓本体12から容器本体2へ空気が移動するとき、容器本体2から中栓本体12へ向かって液体が流れやすくなる。逆に言えば、容器本体2から中栓本体12への液体の漏出を抑制するためには、容器本体2から中栓本体12への空気の流れを抑制すればよい。そのため、
図11の液面1のように、容器本体2中の液体の液面高さを貫通孔Hよりも高い位置にすることで、容器本体2からの液体の漏出を抑制することができる。
【0104】
ここで、
図11とは異なるケースを
図12により説明する。
図12は、液面高さ(液面3)と貫通孔Hからの液体漏出の関係を説明するための図である。なお、
図12では、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに貫通孔Hが吸液芯30よりも下側に位置する場合に該当する。また、
図12では、説明の便宜のため、リング18の記載は省略している。また、
図12では、説明の便宜のため、平坦面15に直接貫通孔Hが形成されている。
【0105】
図示するように、液面3は、貫通孔Hと同じ高さにあり、液体によって完全に満たされた状態にはない。この場合、貫通孔Hを介した気液交換が行われやすい。また、貫通孔Hは吸液芯30よりも下側に位置する場合には、吸液芯30と吸液芯保持部17との隙間等から空気が容器本体2の内部に入り込み、液漏れが発生しうる。しかしながら、この場合にも、リング18が平坦面15に近接することにより、平坦面15とリング18との間の液面が上昇し、貫通孔Hからの液漏れが抑制される。
〔リング18の動作とその効果2〕
上記の〔リング18の動作とその効果1〕では、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった後に、リング18が突起部16に形成された貫通孔を塞ぐことで、容器本体2からの液体の漏出が抑制されることを説明した。
【0106】
しかしながら、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった後に、リング18が突起部16に形成された貫通孔を完全に塞ぐことができない場合もある。そのような場合においても、吸い上げ式液体容器1は、
図13等を用いて後述する方法によって、容器本体2からの液体の漏出を抑制することができる。
【0107】
図13は、突起部16が吸液芯30よりも上側に位置する場合において、リング18が突起部16の方向に倒れ込んだ様子を説明する図である。
【0108】
図示する例では、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった後に、リング18は、突起部16に形成された貫通孔を完全に塞いではいない。そのため、突起部16の貫通孔を介した気液交換によって、突起部16に形成された貫通孔を介して、容器本体2から液体が漏出することが予想される。
【0109】
しかしながら、リング18は、重力によって突起部16に対して近接している。そのため、平坦面15とリング18との間を毛細管現象により液体が上昇し、それにより図中の破線で示す位置に液体膜が形成される。つまり、その液体膜の存在する位置が、坦面15とリング18との間にある液体の液面高さとなる。
【0110】
これにより、突起部16の貫通孔は液体で満たされ、突起部16の貫通孔を介した気液交換が行われにくくなり、容器本体2からの液体の漏出を抑制することができる。
【0111】
図14は、リング18が平坦面15に近接したときの液面高さを説明する写真である。このうち、
図14(a)は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときの、容器本体2の開口部側から吸い上げ式液体容器1を視たときの液面高さを示す写真である。
図14(b)は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときの、容器本体2の開口部における液面高さを示す写真である。
【0112】
図14(a)の矢印は、突起部16の貫通孔を示す。
図14(a)に示すように、容器本体中の液体の液面は、突起部16の貫通孔の位置よりも低い(図中のL1)。
【0113】
しかしながら、
図14(b)に示すように、容器本体2の開口部では、液面高さは、L1からL2へと変化し、L2は突起部16の貫通孔の位置よりも高くなっている。これは、リング18が平坦面15に対して近接することで、平坦面15とリング18との間を毛細管現象により液体が上昇したことによる。その結果、容器本体2の開口部において、液面高さがL1からL2へと上昇している。その結果、上述したように、吸い上げ式液体容器1では、容器本体2から中栓本体12への液体の漏出が抑制される。
【0114】
図15は、
図14(b)の様子を簡略化して説明するための図である。図示するように、リング18が平坦面15に近接することで、平坦面15とリング18との間で毛細管現象が働き、液面高さがL1からL2へと上昇している。そして、突起部16の貫通孔は、液体で満たされた状態となる。突起部16の貫通孔が液体で満たされると、突起部16の貫通孔を介した気液交換が起こりにくくなり、その結果、容器本体2から中栓本体12への液体の漏出が抑制される。この液体の漏出抑制効果は、液面高さが
図11の液面2(つまり、突起部16の貫通孔と同じ位置が液面高さとなる場合)の場合に特に有効である。
【0115】
図16は、突起部16が吸液芯30よりも下側に位置する場合において、リング18が突起部16の方向に倒れ込んだ様子を説明する図である。
【0116】
この場合においても、
図13〜
図15により説明した理由により、リング18が平坦面15に近接することで生じる毛細管現象によって容器本体2からの液体の漏出が抑制される。
【0118】
図17は、リング18が存在しない場合の液面高さを説明する写真である。このうち、
図17(a)は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときの、容器本体2の開口部側から吸い上げ式液体容器1を視たときの液面高さを示す写真である。
図17(b)は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときの、容器本体2の開口部における液面高さを示す写真である。
図18は、
図17(b)の様子を簡略化して説明するための図である。
【0119】
図17では、吸い上げ式液体容器はリング18を有していない。そのため、液面L3は表面張力によって液面高さがL3からL4へと高くなるものの(
図17(b)参照)、液面L4は、突起部16の貫通孔を塞ぐほどには高くならない。そのため、突起部16の貫通孔は、液体で満たされない状態となる。突起部16の貫通孔が液体で満たされていないと、突起部16の貫通孔を介した気液交換が起こりやすく、その結果、容器本体2から中栓本体12へ液体が漏出しやすくなる。
【0120】
このように、吸い上げ式液体容器1は、リング18が平坦面15に倒れ込み、リング18が平坦面15に近接する場合に、平坦面15とリング18との間に生じる毛細管現象を利用して、突起部16の貫通孔からの液体の漏出を抑制する。このことは、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときにリング18が突起部16の貫通孔を完全に塞ぐように吸い上げ式液体容器1を詳細に設計することが不要であることを意味する。この点においても、中栓本体12、および中栓本体12を備えた吸い上げ式液体容器1によって、設計の簡略化が促進される。
【0121】
また、吸い上げ式液体容器1では、使用する液体は、芳香剤、消臭剤、殺虫剤、水など液体特性の異なる様々な液体を扱う。この点、吸い上げ式液体容器1は、可動のリング18を利用するため、また、リング18を平坦面15に近接させることができるため、粘度等の液体特性が変化する場合であっても、液体の漏出を効果的に抑制することができる。
【0122】
このように、本実施の形態に係る吸い上げ式液体容器1は、表面張力、毛細管現象といった自然現象を利用するものであり、重力による作用のみを考慮する技術ではない。表面張力、毛細管現象は、平坦面15とリング18との距離が非常に大きなファクターとなるものであり、吸い上げ式液体容器1が安定的な運転を行う上で重要な役割を果たしている。この点、吸い上げ式液体容器1は、リング18を平坦面15に近接させることで、毛細管現象を取り入れた液体の漏出抑制機構を提供している。
〔リング40〕
〔突出部41(第1突出部)について〕
次に、リング18と比較しつつ、リング18とは異なる他のリング40を説明する。
図19は、リング18の断面図である。
図20は、リング40の断面図である。
【0123】
リング18は、筒体であって、筒体内に吸液芯保持部17が嵌入される。リング18は、吸液芯保持部17には固定されておらず、吸液芯保持部17の長手方向に沿って、突起部16および平坦面15とリング係止部20とによって規制される範囲内を移動可能である。リング18は、吸液芯保持部17に対する可動性(摺動性)を高くするために、吸液芯保持部17に対して緩めに取り付けられている。
【0124】
なお、筒体とは、管、くだのように、中が空洞になっている形状をいう。また、筒体は、内部空間の断面形状を、円形、四角形、三角形等の種々の形状とすることができ、特定の形状に限られない。また、筒体は、その空洞が伸びる方向(
図18の、吸液芯保持部17の長手方向)に一定の長さ(幅)を有する。また、筒体は環状でもある。
【0125】
ただし、以下では、リング18、および後述するリング40、リング50はいずれも円筒体であるものとして説明する。また、以下の説明では、吸液芯保持部17と対向する側のリング18の面を内周面と称している。
【0126】
リング18では、内周面は平らに形成されている。具体的には、リング18の内周面には突出部や溝などは形成されていない。そのため、リング18は、吸液芯保持部17の長手方向に沿って移動するときに、内周面全体で吸液芯保持部17と接触する。
【0127】
次にリング40を説明する。なお、リング18における説明と同様の説明は繰り返さない。
【0128】
図20に示すように、リング40は、内周面において突出する突出部41を有する。突出部41は、吸液芯保持部17側に突出している。突出部41は、吸液芯保持部17を取り囲むようにリング40の内周面の全周にわたって形成されている。
【0129】
リング40は、吸液芯保持部17に対する摺動性を高くするために、吸液芯保持部17に対して緩めに取り付けられており、突出部41の高さは、吸液芯保持部17に対するリング40の摺動性を損なわないよう、リング40の内周面と吸液芯保持部17との間の距離に応じて適宜決められうる。また、吸液芯保持部17の長手方向における突出部41の幅は、リング40の内周面の吸液芯保持部17の長手方向の幅に比べて十分に短い。
【0130】
なお、リング40の内周面は突出部41以外が平らであり、突出部41は内周面と一体に形成されているが、これに限られない。
【0131】
ここで、「内周面において突出する」突出部とは、当該突出部が、内周面から突き出ていることを示す。言い換えると、「内周面において突出する」とは、吸液芯保持部17の長手方向における内周面の端部を第1端部、他端を第2端部としたときに、第1端部と第2端部とを結ぶ線よりも突出部が吸液芯保持部17側に突き出ていることを言う。このことは、後述する〔リング50〕の頂点51aについても同様である。
【0132】
リング40が内周面において突出する突出部41を有することの効果は次のとおりである。
【0133】
まず、リング18を考える。リング18は、突出部41を備えておらず、内周面そのものを接触面として吸液芯保持部17と接触する。
【0134】
一方、リング40は、内周面において突出する突出部41が吸液芯保持部17と接触する。そのため、リング40は、リング18と比べると、突起部16の貫通孔の方向へ移動するときに、吸液芯保持部17との接触面積を小さくすることができる。
【0135】
これにより、リング18と吸液芯保持部17との間の摺動抵抗は低減し、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに、リング40が突起部16の貫通孔に近接しやすくなる。その結果、リング40は、リング18よりも、容器本体2の外部への液体の漏出を抑制することができる。
【0136】
図21、
図22は吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときのリング40の動作を説明するための図である。
図21は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになった直後のリング40を示す図である。
図22は、
図21の状態から僅かに時間が経過した後のリング40の様子を示す図である。
【0137】
上述したように、リング18は、リング18の内周面全体で吸液芯保持部17と接触する。これに対して、リング40は、内周面から突出した突出部41が吸液芯保持部17と接触する。そのため、リング40は、リング18と比べて、吸液芯保持部17との間の摺動抵抗が低減し、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに、リング18よりも早く突起部16に近接しうる。その結果、リング40を用いることで、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0138】
なお、吸液芯保持部17の長手方向における突出部41の幅は、リング40の内周面の吸液芯保持部17の長手方向の幅に比べて短くなるほど、リング40と吸液芯保持部17との間の摺動抵抗を低減することができる。
【0139】
また、突出部41は、吸液芯保持部17を取り囲むようにリング40の内周面の全周にわたって、連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。
【0140】
〔突出部41と重心位置との関係について〕
続いて、リング40の他の構成と効果を説明する。
【0141】
図20に示すように、リング40は、吸液芯保持部17の長手方向に沿って厚みが変化している。リング40では、突起部16側(図面右側)が突起部16とは反対の側(図面左側)よりも厚みがある。そのため、吸液芯保持部17の長手方向におけるリング40の重心位置は、突起部16側寄りとなる。
図20では、吸液芯保持部17の長手方向におけるリング40の重心位置がCG(Center of Gravity)で示されている。
【0142】
そして、突出部41は、CGを基準に、突起部16とは反対側に位置する。これにより、リング40は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに、突出部41を支点にして傾きやすくなる。そのため、たとえ吸液芯保持部17と突出部41との間の摺動性が芳しくないときであっても、リング40が突起部16の方向に倒れ込みやすくなる。その様子が
図23に記載されている。
図23は、突起部16が吸液芯30よりも上側に位置する場合において、リング40が突起部16の方向に倒れ込んだ様子を示す図である。
【0143】
図23に示すように、リング40は、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに、突出部41を支点にして傾き、突起部16の方向に倒れ込みやすくなる。これにより、リング40は突起部16の貫通孔に近接しやすくなる。そして、容器本体2に収容された液体は、毛細管現象によってリング40と平坦面15との間を上昇し、突起部16の貫通孔を液体で満たし、容器本体2の外部への液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0144】
なお、リング40では、突起部16側が突起部16とは反対の側よりも厚みがあるが、厚みに差がない他のリングを使用した場合であっても、突出部41がCGを基準に突起部16とは反対側に位置するようにすることで、上記の効果を実現することができる。
【0145】
〔突出部42(第2突出部)について〕
続いて、
図19のリング18と対比しつつ、リング40のさらに他の構成と効果を説明する。なお、以下の説明では、リング18およびリング40における突起部16に対向する側の面を対向面と称している。
【0146】
図19に示すように、リング18では、対向面は、全面にわたって平らに形成されている。具体的には、リング18の対向面には突出部や溝などは形成されていない。
【0147】
これに対して、
図20に示すように、リング40の対向面には突出部42が形成されている。突出部42は、対向面の所定の位置に位置決めされている。ここで、所定の位置とは、リング40が突起部16に近接したときに、突起部16、または、突起部16の貫通孔に対向する位置であり、突出部42は、対向面上を環状に形成されている。
【0148】
なお、リング40の対向面は、突出部42以外は平らに形成されていてよい。また、突出部42は、微小の高さであってもよい。また、突出部42は、内周面と一体に形成されているが、これに限られない。
【0149】
リング40が対向面に突出部42を有することの効果は次のとおりである。
【0150】
リング40は、対向面において突出する突出部42を有することにより、突出部42を対向面に有していないリング18と比べて、突出部42と突起部16との間の距離を短くすることができ、かつ、突起部16へより早く近接することができる。これにより、容器本体2に収容された液体は突出部42と突起部16との間に浸透されやすくなり、突出部42と突起部16との間への液体の吸い上げが容易になる。その結果、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0151】
このように、リング40は、リング18に対して種々の工夫を加えることで、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出をさらに抑制することを可能としている。
〔リング50〕
次に、リング18およびリング40と比較しつつ、さらに他のリング50を説明する。
図24は、リング50の断面図である。なお、リング18およびリング40における説明と同様の説明は繰り返さない。
【0152】
上述したように、リング18は、内周面が平らに形成されている。つまり、吸液芯保持部17の長手方向の位置によらず、リング18の内径は一定(あるいは、略一定)である。
【0153】
また、リング40は、内周面上に突出部41が形成されている。突出部41は、リング40の内周面の全周にわたって形成されている。リング40の内周面は、突出部41以外は平らである。つまり、リング40の内径は、突出部41が形成された箇所を除き、吸液芯保持部17の長手方向の位置にかかわらず、一定(あるいは、略一定)である。
【0154】
一方、リング50では、内周面上に傾斜51が形成されている。具体的に、
図24に示すように、吸液芯保持部17の長手方向に沿って、頂点51aの方向に向かうほどリング50の内径は小さくなり、頂点51aから離れる方向に向かうほどリング50の内径は大きくなる。
【0155】
リング50が内周面上に傾斜51、および傾斜51の頂点51aを有することによる効果は次のとおりである。
【0156】
リング50は、内周面上に傾斜51を有することにより、傾斜51の頂点である頂点51aを介して吸液芯保持部17と接触する。そのため、リング50は、内周面全体で吸液芯保持部17と接触するリング18と比べて、突起部16の貫通孔の方向へ移動するときに、吸液芯保持部17との接触面積を小さくすることができる。これにより、リング50は、リング18と比べて、吸液芯保持部17との間の摺動抵抗が低減し、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに、リング18よりも早く、突起部16に近接する、あるいは、突起部16へ倒れ込みやすくなる。それゆえ、リング50を用いることで、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0157】
このように、リング50は、リング40と同様に、吸液芯保持部17との接触面積を小さくすることで吸液芯保持部17との間の摺動抵抗を低減し、突起部16に形成された貫通孔を介した液体の漏出をさらに抑制するというものである。
【0158】
なお、吸液芯保持部17との接触面積を小さくすることで吸液芯保持部17との間の摺動抵抗を低減する構成は、上記のリング40およびリング50に限らず、他の構成を採用することも当然に可能であり、リング40およびリング50はその一例である。
〔吸液芯保持部60の突出部24(第3突出部)について〕
次に、吸液芯保持部17と比較しつつ、吸液芯保持部17とは異なる他の吸液芯保持部60を説明する。
図25は、中栓10の外観図であり、
図25(a)は中栓10の正面図であり、
図25(b)は中栓10の下面図である。また、
図26は、中栓10aの外観図であり、
図26(a)は、中栓10aの正面図であり、
図26(b)は中栓10aの下面図である。
【0159】
図25および
図26に示すように、吸液芯保持部17と吸液芯保持部60との構成上の差異は、吸液芯保持部60には突出部24が形成されており、吸液芯保持部17には突出部24が形成されていないという点にある。
【0160】
具体的に、
図26(a)に示すように、吸液芯保持部60では、リングの内周面と対向する面において、吸液芯保持部17の長手方向に沿って2つの突出部24が形成されている。また、
図26(b)に示すように、突出部24は、リングの内周面と対向する面において、微小な高さで形成されている。
【0161】
なお、突出部24は、吸液芯保持部17の長手方向に沿って連続的に形成されてもよいし、断続的に形成されてもよい。また、
図24では、突出部24は2つ形成されているが、1つ、あるいは3以上の複数が形成されていてもよい。また、突出部24の高さは、リングの内周面と吸液芯保持部17との間の距離に応じて適宜決められてよい。
【0162】
吸液芯保持部60が突出部24を有することの効果は次のとおりである。
【0163】
上記の構成によれば、リング18が突起部16の貫通孔の方向へ移動するときに、吸液芯保持部60の突出部24がリング18の内周面と接触するため、吸液芯保持部17と比べて、リング18と吸液芯保持部60との接触面積を小さくすることができる。これにより、リング18と吸液芯保持部60との間の摺動抵抗は低減し、吸い上げ式液体容器1が横倒しになったときに、リング18が突起部16の貫通孔に近接しやすくなる。そして、容器本体2に収容された液体は、毛細管現象によってリング18と平坦面15との間を上昇し、突起部16の貫通孔を液体で満たし、容器本体2の外部への液体の漏出をさらに抑制することができる。
【0164】
なお、上記の説明において、リング18は、リング40またはリング50と書き換えられてもよい。
【0165】
このように、リング40、リング50だけではなく、吸液芯保持部に対する工夫によっても、吸液芯保持部とリングとの間の接触面積を小さくし、容器本体2の外部への液体の漏出をさらに抑制する効果を実現することができる。吸液芯保持部60はその一例であって、他の構成を採用することも当然に可能である。
〔用途〕
本実施の形態に係る吸い上げ式液体容器1には以下の用途がある。なお、用途は、以下の用途に限定されない。
【0166】
吸い上げ式液体容器1では、吸液芯30は、一端が容器本体2に収容された液体中に浸漬し、他端が中栓本体12の上方へ伸長する。
【0167】
そこで、中栓本体12の上方へ伸長する吸液芯30の他端にヒータ等で熱を加え、吸液芯30の他端から液体を蒸散させる加熱蒸散装置に吸い上げ式液体容器1を組み込む用途が考えられる。あるいは、中栓本体12の上方へ伸長する吸液芯30の他端に振動板を接触、または、近接させて、振動子の振動を振動板に伝え、吸液芯30の他端から液体を噴霧させる振動噴霧装置に吸い上げ式液体容器1を組み込む用途が考えられる。あるいは、吸液芯30の上記他端から液体を自然蒸発させることで、液体を外部へ放散させる液体放散装置に吸い上げ式液体容器1を組み込む用途が考えられる。
【0168】
このように、吸い上げ式液体容器1は、種々の用途に用いられ、何れの用途においても、液体の漏出を抑制することができる。
【0169】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。