特許第6242657号(P6242657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242657ナトリウム二次電池およびナトリウム二次電池用非水電解液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242657
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ナトリウム二次電池およびナトリウム二次電池用非水電解液
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/054 20100101AFI20171127BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01M10/054
   H01M10/0567
   H01M10/0568
   H01M4/525
   H01M4/505
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-226426(P2013-226426)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-112538(P2014-112538A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-246171(P2012-246171)
(32)【優先日】2012年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】影浦 淳一
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−224282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/054
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 10/0567
H01M 10/0568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープできる正極活物質を有する正極と、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープできる負極活物質を有する負極と、非水溶媒にナトリウム塩が溶解した非水電解液とを有するナトリウム二次電池であって、
該非水電解液が、フッ素原子を含有する環状炭酸エステルとテトラフルオロホウ酸アニオンとを含み、
該非水電解液は、該フッ素原子を含有する環状炭酸エステルを、非水電解液に対して0.01体積%以上10体積%以下の範囲で含み、
該非水電解液が、該非水溶媒に、該非水電解液に対して0.01重量%以上0.42重量%以下の範囲でテトラフルオロホウ酸アニオンを有する化合物が溶解した非水電解液であるナトリウム二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質が、下記式(A)で表される複合金属酸化物である請求項1に記載のナトリウム二次電池。
Na (A)
(ここで、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Mは、Mn、Fe、Co、Cr、V、TiおよびNiからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、aは0.5以上1以下の範囲の値であり、bは0以上0.5以下の範囲の値であり、かつa+bは0.5以上1以下の範囲の値である。)
【請求項3】
非水溶媒にナトリウム塩が溶解したナトリウム二次電池用非水電解液であって、
該非水電解液が、フッ素原子を含有する環状炭酸エステルとテトラフルオロホウ酸アニオンとを含み、
該非水電解液は、該フッ素原子を含有する環状炭酸エステルを、非水電解液に対して0.01体積%以上10体積%以下の範囲で含み、
該非水電解液が、該非水溶媒に、該非水電解液に対して0.01重量%以上0.42重量%以下の範囲でテトラフルオロホウ酸アニオンを有する化合物が溶解した非水電解液であるナトリウム二次電池用非水電解液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム二次電池およびナトリウム二次電池用非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液を用いるナトリウム二次電池は、水系電解液の電池と比較して高い電圧を発生できるため、高エネルギー密度を有する電池として好適である。しかも、ナトリウムは資源量が豊富でしかも安価な材料であることから、これを実用化することにより、大型電源を大量に供給できることが期待されている。
【0003】
ナトリウム二次電池は、通常、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープすることができる正極活物質を含む正極と、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープすることができる負極活物質を含む負極との少なくとも一対の電極と、電解質とを有する。
【0004】
ナトリウム二次電池の非水電解液として、プロピレンカーボネートなどの飽和型環状炭酸エステルからなる非水溶媒に、六フッ化リン酸ナトリウムからなる電解質塩が溶解した非水電解液を用いたナトリウム二次電池が検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−35283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような非水電解液を用いたナトリウム二次電池は、4.0Vより高い電圧で充電を行った場合、充放電効率(充電容量に対する放電容量の割合)は、充分ではなかった。そこで、本発明の目的は、4.0Vより高い電圧で充電を行っても、充放電効率が高いナトリウム二次電池および該ナトリウム二次電池に用いることができる非水電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープできる正極活物質を有する正極と、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープできる負極活物質を有する負極と、非水溶媒にナトリウム塩が溶解した非水電解液とを有するナトリウム二次電池であって、該非水電解質液が、フッ素原子を含有する環状エステルとテトラフルオロホウ酸アニオンとを含み、該非水電解質液は、該フッ素原子を含有する環状炭酸エステルを、非水電解液に対して0.01体積%以上10体積%以下の範囲で含むナトリウム二次電池を提供する。
【0008】
また、本発明は、非水溶媒にナトリウム塩が溶解したナトリウム二次電池用非水電解液であって、該非水電解液が、フッ素原子を含有する環状炭酸エステルとテトラフルオロホウ酸アニオンとを含み、該非水電解液は、該フッ素原子を含有する環状炭酸エステルを、非水電解液に対して0.01体積%以上10体積%以下の範囲で含むナトリウム二次電池用非水電解液を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充放電効率の高いナトリウム二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ナトリウム二次電池>
本発明のナトリウム二次電池は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープできる正極活物質を有する正極と、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープできる負極活物質を有する負極と、非水電解液とを有し、通常、さらにセパレータを有する。
【0011】
ナトリウム二次電池は、通常、負極、セパレータ及び正極を、積層および巻回することによって電極群を得て、この電極群を電池缶内に収納し、非水電解液を電極群に含浸させることによって、製造することができる。
【0012】
ここでこの電極群の形状としては例えば、この電極群を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面が、円、楕円、長方形、角がとれたような長方形等となるような形状をあげることができる。また、電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型などの形状をあげることができる。
【0013】
<非水電解液>
本発明のナトリウム二次電池に用いられる非水電解質液は、非水溶媒にナトリウム塩が溶解した非水電解液であって、フッ素原子を含有する環状炭酸エステルとテトラフルオロホウ酸アニオンとを含み、該非水電解質液は、該フッ素原子を含有する環状炭酸エステルを、非水電解液に対して0.01体積%以上10体積%以下の範囲で含む。
【0014】
<テトラフルオロホウ酸アニオン>
前記テトラフルオロホウ酸アニオンは、テトラフルオロホウ酸アニオンを有する化合物を非水電解液に溶解させることで得ることが好ましい。テトラフルオロホウ酸アニオンを有する化合物としては、例えば、HBF、LiBF、NaBF、KBF、NHBF、Mg(BF、Ca(BF、Zn(BF、Fe(BF、Ni(BF、Mn(BF、Sr(BF、Sn(BF、Pb(BF、Cu(BF、Cr(BF、Sb(BF等があげられ、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、LiBF、NaBF、KBF、Mg(BF、Ca(BFからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物を用いることが好ましく、NaBFを用いると、ナトリウム塩としても作用するため、より好ましい。
【0015】
本発明においては、前記テトラフルオロホウ酸アニオンを有する化合物は、充放電効率をより高める観点から、非水電解液に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、非水溶媒に溶解させる。また、内部抵抗を軽減させる観点から、非水電解液に対して、10重量%以下、好ましくは2重量%以下、非水溶媒に溶解させる。
【0016】
本発明に用いられる非水電解液に前記テトラフルオロホウ酸アニオンが含まれると、充放電効率が高まる理由は必ずしも定かではないが、充電状態で高温環境下に晒された際の電池内でのガス発生が抑制され、内部抵抗増大を抑制できるためと考えられる。
【0017】
<ナトリウム塩>
非水電解液に用いられるNaBF以外のナトリウム塩としては、NaClO、NaPF、NaAsF、NaSbF、NaCFSO、NaN(SOCF、NaBC、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlClなどがあげられ、これらのうちの2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、NaPF、NaAsF、NaSbF、NaCFSOおよびNaN(SOCFからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むフッ素原子を含有するナトリウム塩を用いることが好ましく、NaPF、NaN(SOCFからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むフッ素原子を含有するナトリウム塩を用いることがより好ましい。
【0018】
非水電解液におけるナトリウム塩の濃度は、通常0.1〜2モル/L程度であり、好ましくは0.3〜1.5モル/Lであり、より好ましくは0.5〜1.3モル/Lである。
【0019】
<非水溶媒>
本発明に用いられる非水電解液における非水溶媒は、フッ素原子を含有する環状炭酸エステルを含む。また、該非水溶媒はその他の非水溶媒を含んでもよく、フッ素原子を含有しない環状炭酸エステル、環状スルホン、ラクトンおよび環状スルホン酸エステルからなる群より選ばれる一種以上を有してもよい。
【0020】
前記環状炭酸エステルとしては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートをあげることができる。
【0021】
前記環状スルホンとしては、例えば、スルホラン、メチルスルホラン、エチルスルホランをあげることができる。
【0022】
前記ラクトンとしては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンをあげることができる。
【0023】
前記環状スルホン酸エステルとしては、例えば、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンをあげることができる。
【0024】
前記非水溶媒は比誘電率が高いため、本発明に用いられるナトリウム塩を溶解しやすく、良好な伝導度を示す非水電解液が得られる。なかでも、非水溶媒は、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートからなる群より選ばれる1種以上の溶媒を有することが好ましい。
【0025】
フッ素原子を含有する環状炭酸エステルとしては、フルオロエチレンカーボネート(FEC:4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC:トランスまたはシス−4,5−ジフルオロ−1、3−ジオキソラン−2−オン)等があげられる。
【0026】
フッ素原子を含有する環状炭酸エステルとして、好ましくはフルオロエチレンカーボネートである。
【0027】
本発明においては、前記フッ素原子を含有する環状炭酸エステルは、充放電効率をより高め、充放電サイクル特性の向上観点から、非水電解液に対して、0.01体積%以上含み、好ましくは0.1体積%以上含み、より好ましくは0.5体積%以上含み、さらに好ましくは0.7体積%以上含む。また、電池の内部抵抗を増大を防止するの観点から、10体積%以下含み、好ましくは8体積%以下含み、より好ましくは5体積%以下含み、さらに好ましくは2.5体積%以下含む。
【0028】
前記非水溶媒は、粘度を下げることを目的に、低粘度溶媒を含有してもよい。低粘度溶媒としては、例えば、
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル;
テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、12−クラウン−4−エーテル、18−クラウン−6−エーテルなどの環状エーテル;
ジメトキシメタン、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテルをあげることができる。上記低粘度溶媒を含有する非水電解液は、良好な伝導度を示す場合が有り、電池の内部抵抗を低減できる。
【0029】
前記非水電解液には、セパレータとの濡れ性を良くするために、トリオクチルフォスフェート、パーフルオロアルキル基を有するポリオキシエチレンエーテル類、パーフルオロオクタンスルホン酸エステル類等の界面活性剤の1種または2種以上を添加しても良い。界面活性剤の添加量は、好ましくは電解液総重量に対して3重量%以下であり、より好ましくは0.01〜1重量%である。
【0030】
<正極>
本発明において、正極は、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープできる正極活物質を有する。また、正極は、集電体と、集電体の上に担持された、上記正極活物質を含む正極合剤とから構成されてよい。正極合剤は、上記正極活物質以外にも必要に応じて導電材やバインダーを含む
【0031】
<正極活物質>
本発明において、正極活物質は、ナトリウム含有遷移金属化合物からなり、該ナトリウム含有遷移金属化合物は、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる。
【0032】
前記ナトリウム含有遷移金属化合物としては、次の化合物をあげることができる。
すなわち、NaFeO、NaMnO、NaNiOおよびNaCoO等のNaMa1で表される酸化物、Na0.44Mn1−a2a2で表される酸化物、Na0.7Mn1−a2a22.05で表される酸化物(Mは1種以上の遷移金属元素、0<a1<1、0≦a2<1);
NaFeSi1230およびNaFeSi1230等のNab1Si1230で表される酸化物(Mは1種以上の遷移金属元素、2≦b1≦6、2≦c≦5);
NaFeSi18およびNaMnFeSi18等のNaSi18で表される酸化物(Mは1種以上の遷移金属元素、2≦d≦6、1≦e≦2);
NaFeSiO等のNaSiで表される酸化物(Mは遷移金属元素、MgおよびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素、1≦f≦2、1≦g≦2)
NaFePO、NaMnPO、NaFe(PO等のリン酸塩;
NaFePOF、NaVPOF、NaMnPOF、NaCoPOF、NaNiPOF等のフッ化リン酸塩;
NaFeSOF、NaMnSOF、NaCoSOF、NaFeSOF等のフッ化硫酸塩;
NaFeBO、NaFe(BO等のホウ酸塩;
NaFeF、NaMnF等のNaで表されるフッ化物(Mは1種以上の遷移金属元素、2≦h≦3);等があげられる。
【0033】
本発明において、前記正極活物質としては、以下の式(A)で表される複合金属酸化物を好ましく用いることができる。以下の式(A)で表される複合金属酸化物を正極活物質として用いることで、電池の充放電容量を向上させることができる。
Na (A)
(ここで、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、Mは、Mn、Fe、Co、Cr、V、TiおよびNiからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、aは0.5以上1以下の範囲の値であり、bは0以上0.5以下の範囲の値であり、かつa+bは0.5以上1以下の範囲の値である。)
【0034】
<導電材>
前記導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として、黒鉛粉末、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等)、繊維状炭素材料(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維等)などをあげることができる。上記炭素材料は、表面積が大きく、電極合剤中に少量添加されることにより、得られる電極内部の導電性を高め、充放電効率および大電流放電特性を向上させることも可能である。通常、正極合剤中の導電材の割合は、正極活物質100重量部に対して5〜20重量部であり、2種以上含有してもよい。
【0035】
<バインダー>
前記の電極に用いられるバインダーとしては、例えば、フッ素化合物の重合体があげられる。フッ素化合物としては、例えば、
パーフロオロヘキシルエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素化オレフィン;
パーフロオロヘキシルエチレン、ペルフルオロヘキシルエチレン等のフッ素化アルキル置換オレフィン;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレートおよびペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル置換(メタ)アクリレート;
ヘキサフルオロプロピレンオキシド等のフルオロアルキレンオキシド;
パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロヘキシルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;
ペンタフルオロエチルケトン、ヘキサフルオロアセトン等のフルオロケトン
などがあげられる。
【0036】
フッ素化合物の重合体以外のバインダーの例示としては、フッ素原子を含まないエチレン性二重結合を含む単量体の付加重合体があげられる。かかる単量体としては、例えば、 エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン等のオレフィン;
1,2−プロパジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル; スチレン、2−ビニルナフタレン、9−ビニルアントラセン、ビニルトリル等のビニルアリール;
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸;
マレイン酸、フマル酸、メタコン酸、グルタコン酸、メタコン酸、クロトン酸等の不飽和ジカルボン酸;
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル;
ビニルリン酸、ビニルスルホン酸等のビニル無機酸;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、アクリル酸グリシジル、リン酸アクリレート、スルホン酸アクリレート等のアクリル酸エステル;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、ベンジルメタクリレート、フェニルエチルメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、リン酸アクリレート、スルホン酸アクリレート等のメタクリル酸エステル;
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸ブチル、クロトン酸イソブチル、クロトン酸ターシャリーブチル、クロトン酸ペンチル、クロトン酸n−ヘキシル、クロトン酸2−エチルヘキシル、クロトン酸ヒドロキシプロピル等のクロトン酸エステル;
マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル等の不飽和ジカルボン酸エステル;
ビニルリン酸メチル、ビニルリン酸エチル、ビニルリン酸プロピル、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸プロピル等の無機酸エステル;
ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、および、ダイアセトンアクリルアミド]などの(メタ)アクリルアミド系単量体;
塩素、臭素又はヨウ素原子含有単量体、塩化ビニル及び塩化ビニリデンなどのフッ素以外のハロゲン原子含有単量体
N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等のビニル環状ラクタム;
などがあげられる。
【0037】
本発明において、バインダーのガラス転移温度は−50〜0℃が好ましい。ガラス転移温度を上記範囲内とすることにより、得られる電極の柔軟性を向上させ、また、低温環境下においても十分使用可能な非水電解質二次電池を得ることができる。
【0038】
本発明において、バインダーの好ましい例としては、
ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂;
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等のフッ素ゴム;
ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アルカリ塩(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸リチウム等)、ポリアクリル酸アルキル(アルキル部分の炭素数は1から20)、アクリル酸−アクリル酸アルキル(アルキル部分の炭素数は1から20)共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリル酸−アクリル酸アルキル−アクリロニトリル共重合体、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体水素化物等のアクリル系ポリマー;
ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アルキル(アルキル基はアルキル部分の炭素数は1から20)、メタクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体等のメタクリル系ポリマー;
ポリビニルアルコール(部分ケン化または完全ケン化)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸アルキル(アルキル基はアルキル部分の炭素数は1から20)共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、エチレン−アクリル酸アルキル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体等のオレフィン系ポリマー;
アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン、アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体水素化物等のスチレン含有ポリマーがあげられる。
特に、ハロゲン化ビニリデン由来の構造単位を有する共重合体を用いた場合、電極合剤密度の高い電極が得られやすく、電池の体積エネルギー密度が向上するため好ましい。
【0039】
上記ポリマーは、乳化重合、懸濁重合、分散重合により得ることができる。また、溶液重合、放射線重合、プラズマ重合によっても得ることができる。
【0040】
乳化重合、懸濁重合、分散重合において用いられる乳化剤や分散剤は、通常の乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などにおいて用いられるものでよく、具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの保護コロイド;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルなどのアニオン系界面活性剤を用いることができる。これらは単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤や分散剤の添加量は任意に設定でき、モノマー総量100重量部に対して、通常0.01〜10重量部程度であるが、重合条件によっては乳化剤や分散剤を使用しなくてもよい。
【0041】
また、上記バインダーは市販のものを用いてもよい。
【0042】
<正極の製造方法>
正極は、例えば、ナトリウムイオンでドープかつ脱ドープできる正極活物質を含む正極合剤を、正極集電体に担持することで製造される。正極集電体に正極合剤を担持する方法としては、例えば、正極活物質、導電材、バインダーおよび溶媒からなる正極合剤ペーストを作製、混練し、得られた正極合剤ペーストを、集電体へ塗布、乾燥する方法があげられる。正極合剤ペーストを、集電体へ塗布する方法としては特に制限されない。例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等の方法があげられる。また、塗布後に行う乾燥としては、熱処理によって行ってもよいし、送風乾燥、真空乾燥などにより行ってもよい。熱処理により乾燥を行う場合には、その温度は、通常50〜150℃程度である。また、乾燥後にプレスを行ってもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法をあげることができる。以上にあげた方法により、電極を製造することができる。また、電極合剤の厚みは、通常5〜500μm程度である。
【0043】
前記正極合剤ペーストにおける正極合剤成分の割合、すなわち、正極合剤ペースト中の正極活物質、導電材およびバインダーの割合は、得られる電極の厚み、塗布性の観点から、通常40〜70重量%である。
【0044】
本発明の正極において、集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの導電体をあげることができ、薄膜に加工しやすく、安価であるという点でAlが好ましい。集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状およびエンボス状であるもの、ならびに、これらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)があげられる。集電体表面にエッチング処理による凹凸を形成させてもよい。
【0045】
<正極活物質の製造方法>
本発明に用いられるナトリウム含有遷移金属化合物は、焼成により本発明に用いられるナトリウム含有遷移金属化合物となり得る組成を有する金属含有化合物の混合物を焼成することによってを製造できる。具体的には、対応する金属元素を含有する金属含有化合物を所定の組成となるように秤量し混合した後に、得られた混合物を焼成することによって製造できる。例えば、好ましい金属元素比の一つであるNa:Mn:Fe:Ni=1:0.3:0.4:0.3で表される金属元素比を有する複合金属酸化物は、Na2CO3、MnO2、Fe34、Niの各原料を、Na:Mn:Fe:Niのモル比が1:0.3:0.4:0.3となるように秤量し、それらを混合し、得られた混合物を焼成することによって製造できる。
【0046】
本発明に用いられるナトリウム含有遷移金属化合物を製造するために用いることができる金属含有化合物としては、酸化物、ならびに高温で分解および/または酸化したときに酸化物になり得る化合物、例えば水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物またはシュウ酸塩を用いることができる。ナトリウム化合物としては、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、蓚酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物をあげることができ、これらの水和物をあげることもできる。取り扱い性の観点で、より好ましくは炭酸ナトリウムである。マンガン化合物としてはMnO2が好ましく、鉄化合物としてはFe34が好ましく、ニッケル化合物としてはNiが好ましい。また、これらの金属含有化合物は、水和物であってもよい。
【0047】
金属含有化合物の混合物は、例えば以下の沈殿法により金属含有化合物の前駆体を得、得られた金属含有化合物の前駆体と前記ナトリウム化合物とを混合して得ることができる。
具体的には、M(ここで、Mは前記と同義)の原料として、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩等の化合物を用いて、これらを水に溶解し、沈殿剤と接触させることで金属含有化合物の前駆体が含有した沈殿物を得ることができる。これらの原料の中でも、塩化物が好ましい。また、水に溶解し難い原料を用いる場合、すなわち、例えば、原料として、酸化物、水酸化物、金属材料を用いる場合には、これらの原料を、塩酸、硫酸、硝酸等の酸またはこれらの水溶液に溶解させて、Mを含有する水溶液を得ることもできる。
【0048】
さらに、前記沈殿剤としては、LiOH(水酸化リチウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、Li2CO3(炭酸リチウム)、Na2CO3(炭酸ナトリウム)、K2CO3(炭酸カリウム)、(NH42CO3(炭酸アンモニウム)および(NH22CO(尿素)からなる群より選ばれる化合物を1種以上用いることができ、該化合物の水和物を1種以上用いてもよく、化合物と水和物とを併用してもよい。また、これらの沈殿剤を水に溶かして、水溶液状で用いることが好ましい。水溶液状の沈殿剤における前記化合物の濃度は、0.5〜10モル/L程度、好ましくは、1〜8モル/L程度である。また、沈殿剤としてはKOHを用いることが好ましく、より好ましくは、これを水に溶かしたKOH水溶液である。また、水溶液状の沈殿剤として、アンモニア水をあげることもでき、これと前記化合物の水溶液とを併用してもよい。
【0049】
を含有する水溶液と沈殿剤とを接触させる方法としては、Mを含有する水溶液に、沈殿剤(水溶液状の沈殿剤を含む。)を添加する方法、水溶液状の沈殿剤に、Mを含有する水溶液を添加する方法、水に、Mを含有する水溶液および沈殿剤(水溶液状の沈殿剤を含む。)を添加する方法をあげることができる。これらの添加時には、攪拌を伴うことが好ましい。また、上記の接触する方法の中では、水溶液状の沈殿剤に、Mを含有する水溶液を添加する方法が、pHを保ちやすく、粒径を制御しやすい点で好ましく用いることができる。この場合、水溶液状の沈殿剤に、Mを含有する水溶液を添加していくに従い、そのpHが低下していく傾向にあるが、このpHが9以上、好ましくは10以上となるように調節しながら、Mを含有する水溶液を添加するのがよい。また、この調節は、水溶液状の沈殿剤を添加することによっても行うことができる。
【0050】
上記の接触により、沈殿物を得ることができる。この沈殿物は、金属含有化合物の前駆体を含有する。
【0051】
また、Mを含有する水溶液と沈殿剤との接触後は、通常、スラリーとなり、これを固液分離して、沈殿物を回収すればよい。固液分離はいかなる方法によってもよいが、操作性の観点では、ろ過などの固液分離による方法が好ましく用いられ、噴霧乾燥などの加熱して液体分を揮発させる方法を用いてもよい。また、回収された沈殿物について、洗浄、乾燥などを行ってもよい。固液分離後に得られる沈殿物には、過剰な沈殿剤の成分が付着していることもあり、洗浄により当該成分を減らすことができる。洗浄のときに用いる洗浄液としては、水を用いることが好ましく、アルコール、アセトンなどの水溶性有機溶媒を用いてもよい。また、乾燥は、加熱乾燥によって行えばよく、送風乾燥、真空乾燥等によってもよい。加熱乾燥によって行う場合には、通常50〜300℃で行い、好ましくは100〜200℃程度である。また、洗浄、乾燥は2回以上行ってもよい。
【0052】
混合方法としては、乾式混合、湿式混合のいずれによってもよいが、簡便性の観点では、乾式混合が好ましい。混合装置としては、攪拌混合、V型混合機、W型混合機、リボン混合機、ドラムミキサーおよびボールミルをあげることができる。また、焼成は、用いるナトリウム化合物の種類にもよるが、通常400〜1200℃程度の温度で保持して行えばよく、好ましくは500〜1000℃程度である。また、前記保持温度で保持する時間は、通常0.1〜20時間であり、好ましくは0.5〜10時間である。前記保持温度までの昇温速度は、通常50〜400℃/時間であり、前記保持温度から室温までの降温速度は、通常10〜400℃/時間である。また、焼成の雰囲気としては、大気、酸素、窒素、アルゴンまたはそれらの混合ガスを用いることができるが、大気が好ましい。
【0053】
金属含有化合物として、フッ化物、塩化物等のハロゲン化物等を適量用いることによって、生成する複合金属酸化物の結晶性、複合金属酸化物を構成する粒子の平均粒径を制御することができる。この場合、ハロゲン化物は、反応促進剤(フラックス)としての役割を果たす場合もある。フラックスとしては、例えばNaF、MnF3、FeF2、NiF2、CoF2、NaCl、MnCl2、FeCl2、FeCl3、NiCl2、CoCl2、NH4ClおよびNH4Iをあげることができ、これらを混合物の原料(金属含有化合物)として、または、混合物に適量添加して用いることができる。また、これらのフラックスは、水和物であってもよい。
その他の金属含有化合物として、Na2CO3、NaHCO323およびH3BO3をあげることができる。
【0054】
本発明に用いられるナトリウム含有遷移金属化合物をナトリウム二次電池用正極活物質として用いる場合、上記のようにして得られるナトリウム含有遷移金属化合物に、任意にボールミル、ジェットミル、振動ミル等の工業的に通常用いられる装置を用いた粉砕を行い、洗浄、分級等を行って、粒度を調節することが好ましいことがある。また、焼成を2回以上行ってもよい。また、ナトリウム含有遷移金属化合物の粒子表面をSi、Al、Ti、Y等を含有する無機物質で被覆する等の表面処理をしてもよい。
なお、上記の表面処理後、熱処理する場合においては、その熱処理の温度にもよるが、熱処理後の粉末のBET比表面積が、上記の表面処理前のBET比表面積の範囲より小さくなる場合がある。
【0055】
<本発明のナトリウム二次電池−負極>
本発明のナトリウム二次電池で用いることができる負極としては、負極活物質を含む負極合剤を負極集電体に担持した電極、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープ可能なナトリウム金属またはナトリウム合金電極を用いることができる。負極活物質としては、前記のナトリウム金属またはナトリウム合金以外に、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることができる天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭素材料、金属、があげられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、または微粉末の凝集体などのいずれでもよい。ここで、炭素材料は、導電材としての役割を果たす場合もある。
【0056】
炭素材料としては、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機材料焼成体などの非黒鉛化炭素材料(以下、ハードカーボンともいうことがある。)をあげることができる。ハードカーボンとしては、例えば、非黒鉛化炭素材料からなるカーボンマイクロビーズをあげることができ、具体的には、日本カーボン社製のICB(商品名:ニカビーズ)があげられる。
炭素材料を構成する粒子の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、または微粒子の凝集体形状などがあげられる。炭素材料を構成する粒子の形状が球状である場合、その平均粒径は好ましくは0.01μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
【0057】
負極活物質に用いられる金属の例として、具体的には、スズ、鉛、シリコン、ゲルマニウム、リン、ビスマス、アンチモンなどがあげられる。合金の例としては、上記金属からなる群から選ばれる2種以上の金属からなる合金、上記金属と遷移金属からなる群から選ばれる2種以上の金属からなる合金があげられ、また、Si−Zn、CuSb、LaNiSnなどの合金があげられる。これらの金属、合金は炭素材料と併用して集電体に担持されて、電極活物質として用いられる。
【0058】
負極活物質に用いられる酸化物の例としては、Li4Ti512等があげられる。硫化物の例としては、TiS2、NiS2、FeS2、Fe34等があげられる。窒化物の例としては、Na3N、Na2.6Co0.4N等のNa3-xN(但し、Mは遷移金属元素、0≦x≦3)等があげられる。
これらの炭素材料、金属、酸化物、硫化物、窒化物は、併用してもよく、結晶質または非晶質のいずれでもよい。これらの炭素材料、金属、酸化物、硫化物、窒化物は、主に、集電体に担持されて、電極として用いられる。
【0059】
負極合剤は、必要に応じて、バインダー、導電材を含有してもよい。バインダー、導電材としては、上記正極に用いられるバインダーと同様のものをあげることができる。
【0060】
上記負極合剤に含まれるバインダーとしては、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸カリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体等をあげることができ、これらは単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
負極合剤におけるバインダーの割合としては、炭素材料100重量部に対し、通常0.5〜30重量部程度、好ましくは2〜20重量部程度である。
【0062】
負極集電体としては、Al、Cu、Niおよびステンレスをあげることができ、薄膜に加工しやすく、安価であるという点でAlが好ましい。集電体の形状としては、例えば、箔状、平板状、メッシュ状、ネット状、ラス状、パンチングメタル状およびエンボス状であるもの、ならびに、これらを組み合わせたもの(例えば、メッシュ状平板など)があげられる。集電体表面にエッチング処理による凹凸を形成させてもよい。
【0063】
<本発明のナトリウム二次電池−セパレータ>
本発明のナトリウム二次電池で用いることができるセパレータとしては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質フィルム、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いた単層または積層セパレータとしてもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータをあげることができる。セパレータの厚みは、電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。セパレータの厚みは一般に、5〜200μm程度が好ましく、より好ましくは5〜40μm程度である。
【0064】
セパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。二次電池においては、通常、正極−負極間の短絡等が原因で電池内に異常電流が流れた際に、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止する(シャットダウンする。)ことが重要である。したがってセパレータは、通常の使用温度を越えた場合に、できるだけ低温でシャットダウンする(セパレータが、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する場合には、多孔質フィルムの微細孔を閉塞する。)こと、およびシャットダウンした後、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持すること、換言すれば、耐熱性が高いことが求められる。セパレータとして、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが積層されてなる積層多孔質フィルムを有するセパレータを用いることにより、本発明の二次電池の熱破膜をより防ぐことが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
【0065】
前記耐熱多孔層は、多孔質フィルムよりも耐熱性の高い層であり、該耐熱多孔層は、無機粉末から形成されていてもよいし、耐熱樹脂を含有していてもよい。
【0066】
前記耐熱樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、芳香族ポリエステル、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドをあげることができ、耐熱性をより高める観点で、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドが好ましく、より好ましくは、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドである。さらにより好ましくは、芳香族ポリアミド(パラ配向芳香族ポリアミド、メタ配向芳香族ポリアミド)、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等の含窒素芳香族重合体であり、とりわけ好ましくは芳香族ポリアミド、製造面で、特に好ましいのは、パラ配向芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」ということがある。)である。
【0067】
前記無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉末があげられ、これらの中でも、導電性の低い無機物からなる粉末が好ましく用いられる。具体的に例示すると、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、または炭酸カルシウム等からなる粉末があげられる。該無機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの無機粉末の中でも、化学的安定性の点で、アルミナ粉末が好ましい。ここで、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であることがより好ましく、さらにより好ましいのは、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であり、その一部または全部が略球状のアルミナ粒子である実施形態である。因みに、耐熱多孔層が、無機粉末から形成される場合には、上記例示の無機粉末を用いればよく、必要に応じてバインダーと混ぜて用いればよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、ナトリウム含有遷移金属化合物の各種評価は、以下の測定により行った。
【0069】
1.ナトリウム含有遷移金属化合物の粉末X線回折測定
ナトリウム含有遷移金属化合物の粉末X線回折測定は株式会社リガク製RINT2500TTR型を用いて行った。測定は、ナトリウム含有遷移金属化合物を専用のホルダーに充填し、CuKα線源を用いて、回折角2θ=10〜90°の範囲にて行い、粉末X線回折図形を得た。
【0070】
2.ナトリウム含有遷移金属化合物の組成分析
粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析法(SII製、SPS3000、以下ICP−AESと呼ぶことがある。)を用いて測定した。
【0071】
<製造例1>(複合金属酸化物Aおよび正極AEの製造)
ポリプロピレン製ビーカー内で、蒸留水300mlに、水酸化カリウム44.88gを添加、攪拌により溶解し、水酸化カリウムを完全に溶解させ、水酸化カリウム水溶液(沈殿剤)を調製した。また、別のポリプロピレン製ビーカー内で、蒸留水300mlに、塩化鉄(II)四水和物21.21g、塩化ニッケル(II)六水和物19.02g、塩化マンガン(II)四水和物15.83gを添加、攪拌により溶解し、鉄−ニッケル−マンガン含有水溶液を得た。前記沈殿剤を攪拌しながら、これに前記鉄−ニッケル−マンガン含有水溶液を滴下することで、沈殿物が生成したスラリーを得た。次いで、該スラリーについて、ろ過・蒸留水洗浄を行い、100℃で乾燥させて沈殿物を得た。沈殿物と炭酸ナトリウムと水酸化カルシウムとをモル比でFe:Na:Ca=0.4:0.99:0.01となるようにして秤量した後、メノウ乳鉢を用いて乾式混合して混合物を得た。次いで、該混合物をアルミナ製焼成容器に入れ、電気炉を用いて大気雰囲気中850℃で6時間保持して焼成を行い、室温まで冷却し、複合金属酸化物Aを得た。複合金属酸化物Aの粉末X線回折分析を行うと、α−NaFeO2型の結晶構造に帰属されることがわかった。また、ICP−AESにより、複合金属酸化物Aの組成を分析すると、Na:Ca:Fe:Ni:Mnのモル比は0.99:0.01:0.4:0.3:0.3であった。そして、上記のようにして得られた複合金属酸化物Aを導電材としてアセチレンブラック(HS100、電気化学工業(株)製)、バインダー溶液としてVT471(ダイキン工業(株)製)、溶媒としてNMP(キシダ化学(株)製)を用いた正極合剤ペーストを作製した。複合金属酸化物A:導電材:バインダー:NMP=90:5:5:100(重量比)の組成となるように秤量し、ディスパーマット(VMA−GETZMANN社製)を用い2,000rpm、5分間攪拌、混合することで、正極合剤ペーストを得た。得られた正極合剤ペーストを、厚さ20μmのアルミ箔にドクターブレードを用いて塗工し、60℃で2時間乾燥後、ロールプレス(SA−602、テスター産業株式会社製)を用いて、200kN/mの圧力で圧延することで正極AEを得た。
【0072】
<製造例2>(炭素材料Cおよび炭素電極CEの製造)
日本カーボン社製のICB(商品名:ニカビーズ)を焼成炉に導入し、炉内をアルゴンガス雰囲気下とした後、アルゴンガスを毎分0.1L/g(炭素材料の重量)の割合で流通させながら、室温から毎分5℃の速度で1600℃まで昇温し、1600℃で1時間保持した後、冷却し、炭素材料Cを得た。炭素材料C、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬株式会社製、セロゲン4H)とスチレン・ブタジエンラバー(SBR)(日本エイアンドエル社製、AL3001)、溶媒として水を用いた電極合剤ペーストを作製した。該バインダーを水に溶解させたバインダー液を作製し、炭素材料C:CMC:SBR:水=97:2:1:150(重量比)の組成となるように秤量し、ディスパーマット(VMA−GETZMANN社製)を用い攪拌、混合することで、電極合剤ペーストを得た。回転羽の回転条件は、2,000rpm、5分間とした。得られた電極合剤ペーストを、銅箔にドクターブレードを用いて塗工し、60℃で2時間乾燥後、ロールプレスを用いて、125kN/mで圧延することで炭素電極CEを得た。
【0073】
<実施例1>(ナトリウム二次電池Bの製造)
コインセル(宝泉株式会社製)の下側パーツの窪みに、直径14.5mmに打ち抜いた正極AEを置き、1.0mol/LのNaPF/プロピレンカーボネート溶液(1.0M NaPF/PC)(キシダ化学株式会社製)に、NaBF(和光純薬工業(株)製)が0.05M(最終的な非水電解液総重量に対して0.42重量%)となるように溶解し、該溶液にフッ素原子を含有する環状炭酸エステルであるフルオロエチレンカーボネート(以下、FEC)(キシダ化学株式会社製)を体積比で98.0:2.0とした混合溶液を非水電解液として用い、セパレータとしてポリエチレン多孔質フィルム(厚み20μm)を、負極として直径15.0mmに打ち抜いた炭素電極CEを組み合わせて、ナトリウム二次電池Bを作製した。なお、電池の組み立てはアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0074】
<実施例2>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、NaBFが最終的な非水電解液総重量に対して0.42重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で99.5:0.50とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0075】
<実施例3>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、KBF(和光純薬工業(株)製)が最終的な非水電解液総重量に対して0.38重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で98.0:2.0とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0076】
<実施例4>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、NaBFが最終的な非水電解液総重量に対して0.025重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で98.0:2.0とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0077】
<実施例5>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、NaBFが最終的な非水電解液総重量に対して0.10重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で98.0:2.0とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0078】
<実施例6>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、NaBFが最終的な非水電解液総重量に対して0.10重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で99.9:0.1とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0079】
<実施例7>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、NaBFが最終的な非水電解液総重量に対して0.10重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で99.5:0.5とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0080】
<実施例8>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、NaBFが最終的な非水電解液総重量に対して0.10重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で92.6:7.4とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0081】
<実施例9>(ナトリウム二次電池Bの製造)
1.0M NaPF/PCに、KBFが最終的な非水電解液総重量に対して0.19重量%となるように溶解し、該溶液にFECを体積比で99.0:1.0とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0082】
<比較例1>(ナトリウム二次電池Eの製造)
1.0M NaPF/PCと、FECを体積比で98:2とした混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0083】
<比較例2>(ナトリウム二次電池Eの製造)
1.0M NaPF/PCに対して、NaBFを0.42重量%加えた混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0084】
<比較例3>(ナトリウム二次電池Eの製造)
1.0M NaPF/PCに対して、KBFを0.38重量%加えた混合溶液を非水電解液として用いた以外は、実施例1と同様の操作でナトリウム二次電池Eを作製した。
【0085】
<充放電試験>
レストポテンシャルから4.1Vに達するまで、0.1Cレート(10時間で完全充電する速度)でCC−CV(コンスタントカレント−コンスタントボルテージ:定電流−定電圧、0.02C電流値到達で充電終了)充電を行った後、0.1Cレート(10時間で完全充電する速度)で2.0Vに達するまでCC(コンスタントカレント)放電した。表2にナトリウム二次電池IB〜IB、IE〜IEの充放電試験の結果を示す。充放電効率は、以下式により算出した。放電容量は正極材重量あたりの値を示す。
充放電効率(%)=[(各ナトリウム二次電池の放電容量)/(各ナトリウム二次電池の充電容量)]×100
【0086】
【表1】
【0087】
表1より、本発明の有用性が確かめられた。