【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、第1の方向に伝搬する入来レーザビームを受けて第1の方向とは異なる第2の方向へ反射するための少なくとも1つの第1のミラーの高反射面を備えた、レーザ機構の光パワー増幅器用のビーム反転モジュールによって達成される。
本発明のこの態様によるビーム反転モジュールがレーザビームを反転するために使用するのはTIR面ではなく、既知のビーム反転モジュールのTIR面のうち少なくとも1つを置換する少なくとも1つの高反射ミラーである。
TIR面での吸収が大きければ熱勾配が大きくなり、反射面の変形が熱的に誘起され、したがってレーザビームの波面も変形することになる。既知のビーム反転モジュールのTIR面を少なくとも1つの高反射性ミラーで置換することによって、熱レンズ効果を低減することができる。
【0007】
好ましい改良では、ビーム反転モジュールは、少なくとも1つの反射面の下流に配置された下流のビーム偏向素子をさらに備え、これは、少なくとも1つの反射面で反射されたレーザビームを、ビーム偏向素子で偏向されたレーザビームが第1の方向に伝搬するレーザビームと交差させるように、第1の方向および第2の方向とは異なる第3の方向へ偏向する。
下流のビーム偏向素子により、既知のビーム反転モジュールと同一の光学的機能を、既知のビーム反転モジュールの場合よりも熱レンズ効果のリスクを低減して得ることができる。
前述の改良の状況では、下流のビーム偏向素子は、入射面および出口面を有する透過性の光学素子であることがさらに好ましく、透過性の光学素子は、少なくとも1つの反射面で反射されたレーザビームに対して、レーザビームが入射面から出口面へ透過性の光学素子を通って内部全反射なしで伝搬するように配置されている。
【0008】
この改良は、ビーム反転モジュールにおける熱レンズ効果を防止するかまたは少なくとも低減するために、ビーム反転モジュールにおけるTIR面を、可能な限り、好ましくは完全に回避するという本発明の概念に従うものである。
さらに、前述の改良に伴う状況では、入射面および/または出口面は反射防止コーティングでコーティングされている。
反射防止コーティングにより、透過性のビーム偏向素子の入射面および/または出口面における反射によるレーザ光損失が低減する。
さらなる好ましい改良では、下流のビーム偏向素子はプリズムである。
この改良には、ビーム偏向素子の生産に関して単純設計という利点がある。
さらなる好ましい改良では、ビーム反転モジュールは、少なくとも1つの反射面の上流に配置された上流のビーム偏向素子をさらに備え、これによって入来ビームが第1の方向に偏向される。
上流のビーム偏向素子は、下流のビーム偏向素子の代わりに、または下流の偏向素子に加えて使用され得る。
下流のビーム偏向素子の場合と同様に、上流のビーム偏向素子は、好ましくは入射面および出口面を有する透過性の光学素子であって、入来レーザビームに対して、レーザビームが入来面から出口面へ透過性の光学素子を通って内部全反射なしで伝搬するように配置されている。
【0009】
さらに、上流のビーム偏向素子の透過性の光学素子の入来面および/または出口面は、反射防止コーティングでコーティングされている。
上流のビーム偏向素子は、好ましくはプリズムである。
さらなる好ましい改良では、上流のビーム偏向素子および下流のビーム偏向素子は、単一のモノリシック光学素子として、好ましくは単一のプリズムとして一緒に実施される。
【0010】
この改良には、上流のビーム偏向素子と下流のビーム偏向素子の両方を、1つの単一のプリズムとして簡単に生産することができるという利点がある。
さらなる好ましい改良では、少なくとも1つの反射面は第1の反射面であり、ビーム反転モジュールがさらに備える少なくとも1つの第2の反射面が、第1の反射面で反射されたレーザビームを受けて第1の方向とは異なる方向に反射し、少なくとも1つの第2の反射面は、少なくとも1つの第2のミラーの高反射面である。
【0011】
この改良では、既知のビーム反転モジュールの両方のTIR面が高反射性のミラー面で置換され、したがって熱レンズ効果がさらに低減される。さらに、この改良により、さらなる好ましい改良によって提供されるように、既知のビーム反転モジュールの場合と同様、第1の反射面と少なくとも1つの第2の反射面が、少なくとも1つの第2の反射面で反射されたレーザビームが入来レーザビームと交差するように設定された角を形成するように配置され得るので、下流のビーム偏向素子および/または上流のビーム偏向素子を省くことができる。
前述の改良の状況では、第1のミラーおよび少なくとも1つの第2のミラーは、第1の反射面と少なくとも1つの第2の反射面の間に形成される角度を定義するベースプレート上に、光学的に接合されている。
【0012】
さらなる好ましい改良では、前述の角度は約85°〜約95°の範囲に設定され、好ましくは約90°に設定される。
さらに、第1のミラーおよび第2のミラーは、レーザビームが約40°〜約50°の範囲の入射角で、好ましくは約45°の入射角で第1の反射面および少なくとも1つの第2の反射面に当たるように配置されるのが好ましい。
本発明の第2の態様によれば、本発明の基をなす目的は、入来レーザビームが入るレーザビーム入射面を有するプリズムと、プリズムに入って来るレーザビームを受けるための第1のTIR面と、第1のTIR面で反射されたレーザビームを受けるための第2のTIR面であって、60°を上回る角度を形成する第1のTIR面および第2のTIR面と、第2のTIR面で反射されたレーザビームがプリズムから出るレーザビーム出口面とを備える、レーザ機構の光パワー増幅器用のビーム反転モジュールであって、入射面が、入来レーザビームに対して、入来レーザビームの入射角がブルースター角を上回るように配置され、その結果、レーザビームが、増加したビーム幅を有してプリズムを通って伝搬するビーム反転モジュールを提供することによって達成される。
本発明のこの態様によれば、このビーム反転モジュールは、既知のビーム反転モジュールと同様にプリズムを備える。しかしながら、既知のビーム反転モジュールのプリズムは、入来ビームに対して、入射角が(レーザ光の波長に応じて)ブルースター角に等しくなるように配置されるのに対し、本発明のこの態様によるビーム反転モジュールでは入射角がブルースター角よりも大きく、その結果、プリズムを通って伝搬するレーザビームのビーム幅が、既知のビーム反転モジュールのプリズムを伝搬するレーザ光のビーム幅と比較して増加される。
プリズムを通って伝搬するレーザビームの内部のビーム幅が増加することにより、エネルギー密度およびTIR面上の熱負荷の勾配が低減し、したがって熱レンズ効果のリスクを低減することができる。
さらに、プリズムの入射面および/または出口面は、高いレーザ耐久性(HLD:High Laser Durability)の反射防止コーティングでコーティングされているのが好ましい。
【0013】
さらなる好ましい改良では、第1および第2の内部全反射面は、面吸収を最小化するやり方でこれらの面に関する電界条件を変化させる面保護コーティングを有する。
本発明のこの態様によるビーム反転モジュールを改良するための別の方策には、プリズムを通るレーザビームの光学的伝搬路を短縮するようにプリズムの厚さを低減することがある。
本発明のこの態様のさらなる改良には、0.2×10
-4cm/mJ未満のリニアレーザ誘起吸収係数を有するCaF
2で製作されたプリズムを提供するものがある。
【0014】
第1の態様によるビーム反転モジュールならびに第2の態様によるビーム反転モジュールに関連して用いられ得るさらなる好ましい改良では、ビーム反転モジュールがさらに備えるパージ装置が、ビーム反転モジュールの光学素子のうち少なくとも1つを、この光学素子の表面上またはその内部におけるレーザビームの位置に従って光学素子の面にわたって変化するパージ率で直接パージするように適合されている。
この改良は、ビーム反転モジュールの光学素子上またはその内部における熱勾配を低減することにより、熱レンズ効果を低減することするためのさらなる方策を提供するものである。たとえば、本発明の第1の態様による上流のビーム偏向素子および/または下流のビーム偏向素子あるいは本発明の第2の態様によるビーム反転プリズムは、レーザビームによって部分的にしか使用されず、これらの光学素子において、上記で説明された熱勾配がもたらされる。これらの光学素子を、光学素子上またはその内部におけるレーザビームの位置に従って光学素子の面にわたって変化するパージ率でパージすることにより、光学素子の熱勾配を低減することができる。したがって、パージ率は、光学素子の、レーザビームが通過する部分に相当する「熱い部位」ではより高く設定され、レーザビームが通過しない位置またはレーザビームの強度が低い位置に相当する「冷たい部位」では低いものになる。
【0015】
本発明によるレーザ機構の光増幅器が備えるビーム反転モジュールは、本発明の第1の態様、または本発明の第2の態様、および/または前述の改良のうちの任意のものによるものである。
以下の説明および添付図面から、さらなる特徴および利点が明らかになるであろう。
前述の特徴および以下でさらに説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、所与の組合せばかりなく他の組合せで、または独立して用いられ得ることを理解されたい。
本発明の例示的実施形態が、添付図面を参照しながら以下で説明される。