(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体上に下層及び上層よりなる画像記録層を有してなるポジ型平版印刷版原版であって、前記感光性樹脂組成物を下層及び/又は上層に含有する、請求項8又は9に記載の平版印刷版原版。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本願明細書において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本発明において、「式A−1で表される連結基」等を、単に「連結基A−1」等ともいう。
更に、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0031】
本発明者等が鋭意検討した結果、感光性樹脂組成物に式A−1で表される連結基、及び、赤外線吸収剤を含有することにより、耐刷性、耐薬品性及び、アルカリ水溶液現像性に優れた平版印刷版原版を提供することができることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
本発明者等の検討により、印刷における耐刷性には樹脂の膜強度が重要であり、膜強度はバインダー間の相互作用の影響が大きいことが分かってきた。特に、低品質な印刷資材においてはこの効果が顕著であり、一般的なアクリル樹脂やポリウレタン樹脂では十分な膜強度を付与することは難しい。これは印刷資材(紙、インキ等)に含まれる無機塩粒子(炭酸カルシウムやカオリン等)が印刷中に溶出し、これが印刷版の画像部に研磨的に作用することで、磨耗が促進されてしまうためであると考えられる。これに対し、本発明に用いられる特定高分子化合物は、主鎖に相互作用が非常に高い連結基を複数有するため、耐刷性に優れる。これは、樹脂の膜強度が向上し、印刷版の画像部の磨耗を抑制する効果によるものと推定している。
また、本発明に用いられる特定高分子化合物は、主鎖にウレア結合に直結したフェノール基を複数有する。そのため画像形成層中では、ポリマー中のウレア基の凝集部の近くにフェノール基が存在し、現像液の浸透性が高くなる。以上のメカニズムにより、現像性に優れた平版印刷版原版が得られると推定している。
本発明者等の検討により、バインダーポリマーの極性を上げることが耐薬品性に有効であることが分かってきた。本発明に用いられる特定高分子化合物は、非常に極性の高いウレア結合を主鎖に有するため、耐薬品性に優れる。その結果、本発明の平版印刷版においては、画像部の強度と耐薬品性の両立が可能となったものと考えている。
【0032】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、式A−1で表される連結基を主鎖に有する高分子化合物(以下、「特定高分子化合物」ともいう。)と、赤外線吸収材料とを含有することを特徴とする。
以下、まずは本発明の感光性樹脂組成物の必須成分である、特定高分子化合物及び赤外線吸収材料について説明する。
【0033】
<連結基A−1を主鎖に有する高分子化合物>
本発明に用いられる特定高分子化合物は、式A−1で表される連結基を主鎖に有する。本発明において、「主鎖」とは樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている炭素鎖を表す。
【0035】
式A−1中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、又は一価の有機基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、水素原子、又は、炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子を表すことが特に好ましく、R
1及びR
2のいずれもが水素原子を表すことが特に好ましい。
X
1は式A−2〜式A−6のいずれかで表される連結基を表し、A−2、A−4、A−5で表される連結基であることが好ましく、A−2で表される連結基であることがより好ましい。
また、特定高分子化合物は、X
1が表す連結基が異なる複数のA−1で表される連結基を有していてもよく、そのうち少なくとも1つがA−2で表される連結基を含む基であることが好ましい。
【0037】
式A−2〜式A−6中、R
3は、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、a2iは1〜4の整数を表し、a2jは0〜3の整数を表し、a2i+a2jは1〜4であり、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、a3i及びa3jはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、a3k及びa3lはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、a3i+a3kは1〜6であり、a3j+a3lは0〜6−(a3i+a3k)であり、R
6及びR
7はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、a4i及びa4kはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、a4i+a4kは1〜4であり、a4j及びa4lはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、a4j+a4lは0〜4−(a4i+a4k)であり、Y
A1は芳香族炭化水素環又は脂肪族炭化水素環を表し、R
8及びR
9はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、a5i及びa5kはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、a5i+a5kは1〜6であり、a5j及びa5lはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、a5j+a5lは0〜6−(a5i+a5k)であり、R
10及びR
11はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、a6kは0〜2の整数、a6iは0〜3の整数を表し、a6i+a6kは1〜5であり、a6lは0〜2の整数、a6jは0〜3の整数を表し、a6l+a6jは0〜5−(a6i+a6k)である。Y
A2は芳香族炭化水素環又は脂肪族炭化水素環を表す。
【0038】
R
3はハロゲン原子又は一価の有機基を表し、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、ハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
a2iは1〜4の整数を表し、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
a2i+a2jは1〜4であり、a2jは0〜3の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることが更に好ましい。
また、二価の連結基を表す式A−2中には2箇所の他の構造との結合部位があるが、式A−2中に記載されているベンゼン環に存在する一方の結合部位に対し、別の一方の結合部位はパラ位又はメタ位に存在することが好ましい。
式A−2中のヒドロキシ基は、上記2箇所の他の構造との結合部位のオルト位に結合することが好ましい。
【0039】
R
4及びR
5はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は、炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、ハロゲン原子、又は、炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
a3i及びa3jはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、a3k及びa3lはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
a3i+a3kは1〜6であり、1又は2であることが好ましい。a3i+a3kが2である場合、a3iが1を、a3kが1をそれぞれ表すことが好ましい。
a3j+a3lは0〜6−(a3i+a3k)であり、0であることが好ましい。
また、二価の連結基を表す式A−3中には2箇所の他の構造との結合部位があるが、いずれも式A−3中に記載されているナフタレン環のα位の炭素原子に結合することが好ましい。
式A−3中のヒドロキシ基は、式A−3中に記載されているナフタレン環のα位の炭素原子に結合することが好ましい。
【0040】
R
6及びR
7はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、ハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
a4i及びa4kはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。
a4i+a4kは1〜4であり、1又は2であることが好ましい。a4i+a4kが2である場合、a4iが0を、a4kが2をそれぞれ表すことが好ましい。
a4j及びa4lはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。
a4j+a4lは0〜4−(a4i+a4k)であり、0であることが好ましい。
Y
A1は芳香族炭化水素環又は脂肪族炭化水素環を表し、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
Y
A1がベンゼン環を表す、即ち、式A−4がアントラセン環構造を含む場合、式A−4中のヒドロキシ基は、アントラセン環の9位及び/又は10位の炭素原子に結合していることが好ましい。
また、二価の連結基を表す式A−4中には2箇所の他の構造との結合部位があるが、アントラセン環の1位及び4位の炭素原子にそれぞれ結合していることが好ましい。
【0041】
R
8及びR
9はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、ハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
a5i及びa5kはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
a5i+a5kは1〜6であり、1又は2であることが好ましい。
a5j及びa5lはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表し、a5j+a5lは0〜6−(a5i+a5k)であり、0であることが好ましい。
また、二価の連結基を表す式A−5中には2箇所の他の構造との結合部位があるが、いずれも式A−5中に記載されているナフタレン環のα位の炭素原子に結合することが好ましく、ナフタレン環の1位と5位の炭素原子にそれぞれ結合することがより好ましい。
式A−5中のヒドロキシ基は、式A−5中に記載されているナフタレン環のα位の炭素原子に結合することが好ましい。
【0042】
R
10及びR
11はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、ハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
a6kは0〜2の整数、a6iは0〜3の整数を表す。
a6i+a6kは1〜5で表され、1又は2であることが好ましい。
a6lは0〜2の整数を、a6jは0〜3の整数を表す。
a6l+a6jは0〜5−(a6i+a6k)であり、0であることが好ましい。
Y
A2は芳香族炭化水素環又は脂肪族炭化水素環を表し、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
Y
A2がベンゼン環を表す、即ち、式A−6がアントラセン環構造を含む場合、式A−6中のヒドロキシ基は、アントラセン環の9位及び/又は10位の炭素原子に結合していることが好ましい。
また、二価の連結基を表す式A−6中には2箇所の他の構造との結合部位があるが、アントラセン環の1位及び8位の炭素原子にそれぞれ結合していることが好ましい。
【0043】
〔連結基A−7〕
特定高分子化合物は、下記式A−7で表される連結基を主鎖に含むことが好ましい。
【0045】
式A−7中、R
12は、単結合又は二価の連結基を表し、R
13及びR
14はそれぞれ独立に、水素原子、又は一価の有機基を表し、X
2及びX
3はそれぞれ独立に、式A−2〜式A−6のいずれかで表される連結基を表す。
【0046】
R
12は、単結合又は二価の連結基を表し、単結合、炭素数6以下のアルキレン基、又は、スルホニル基であることが好ましく、単結合又は炭素数5以下のアルキレン基であることがより好ましく、単結合又はメチレン基であることが更に好ましく、単結合であることが特に好ましい。R
12におけるアルキレン基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、R
12におけるアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては炭素数4以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が好ましく例示される。また、上記アリール基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としてはヒドロキシ基が挙げられる。
R
13及びR
14はそれぞれ独立に、水素原子、又は一価の有機基を表し、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
X
2及びX
3はそれぞれ独立に、式A−2〜式A−6で表される連結基を表し、少なくとも一方が式A−2で表される連結基であることが好ましく、いずれもが式A−2で表される連結基であることがより好ましい。
【0047】
式A−7で表される連結基は、式A−8で表される連結基であることが好ましい。
【0049】
式A−8中、R
15は単結合又は二価の連結基を表し、R
16及びR
17はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、R
18及びR
19はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、a、b、c及びdはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、a+bは1〜8であり、c+dは0〜8−(a+b)である。
【0050】
R
15は単結合又は二価の連結基を表し、単結合、炭素数6以下のアルキレン基、又は、スルホニル基であることが好ましく、単結合又は炭素数5以下のアルキレン基であることがより好ましく、単結合又はメチレン基であることが更に好ましく、単結合であることが特に好ましい。R
12におけるアルキレン基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、R
12におけるアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては炭素数4以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が好ましく例示される。また、上記アリール基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としてはヒドロキシ基が挙げられる。
R
16及びR
17はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、ハロゲン原子又は炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
R
18及びR
19はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましい。
a、b、c及びdはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表し、a+bは1〜8であり、c+dは0〜8−(a+b)である。
a及びbはそれぞれ独立に、1又は2であることが好ましく、いずれもが1であるか、いずれもが2であることがより好ましく、いずれもが1であることが更に好ましい。
c及びdはそれぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、いずれもが0であることがより好ましい。
【0051】
〔連結基a−1〕
また、式A−1で表される連結基は、下記式a−1で表される連結基であることが好ましい。
【0053】
式a−1中、R’
1は単結合又は二価の連結基を表し、Q’
1は二価の連結基を表し、lは0以上の整数を表し、X’
1は二価の連結基を表し、式A−1中のX
1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0054】
式a−1中、R’
1は単結合又は炭素数6以下のアルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素数5以下のアルキレン基であることがより好ましく、単結合又はメチレン基であることが更に好ましく、単結合であることが特に好ましい。R’
1におけるアルキレン基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、R’
1におけるアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が好ましく例示される。
【0055】
X’
1が式A−2で表される連結基である場合、Q’
1は二価の連結基を表し、ウレア結合を含む二価の連結基であることが好ましく、ウレア結合とヒドロキシ基を有するフェニレン基とを含む二価の連結基であることがより好ましく、ウレア結合とヒドロキシ基を有するフェニレン基とが直接結合した連結基を含む二価の連結基であることが更に好ましく、ウレア結合とヒドロキシ基を有するフェニレン基とが直接結合した二価の連結基であることが特に好ましい。また、上記連結基のいずれにおいてもフェニレン基がR
1と結合していることが好ましい。
X’
1が式A−3〜式A−6のいずれかで表される連結基である場合、Q’
1は二価の連結基を表し、ウレア結合を含む二価の連結基であることが好ましく、ウレア結合であることがより好ましい。
lは0以上の整数を表し、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0056】
〔連結基a−2〕
また、連結基a−1は下記式a−2で表される連結基であることが好ましい。
【0058】
式a−2中、R’
2及びR’
3は、それぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、Q’
2は二価の連結基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0059】
式a−2中、R’
2は二価の連結基を表し、ウレア結合を含む二価の連結基であることが好ましく、ウレア結合であることが好ましい。
Q’
2は単結合又は二価の連結基を表す。Q’
2は単結合がより好ましい。
mは3以下の整数であることが好ましく、1以下の整数であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
式a−2中、R’
3は単結合、炭素数6以下のアルキレン基、又はスルホニル基であることが好ましく、単結合又は炭素数5以下のアルキレン基であることがより好ましく、単結合又はメチレン基であることが更に好ましく、単結合であることが特に好ましい。R’
3におけるアルキレン基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、R’
3におけるアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては炭素数4以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子が好ましく例示される。また、上記アリール基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としてはヒドロキシ基が挙げられる。
また、R’
3が単結合を表す場合、式a−2中のR’
2と結合していない側のベンゼン環に結合しているウレア結合は、R’
3のパラ位に結合することが好ましい。また、その場合式a−2中のヒドロキシ基は、ウレア結合のオルト位に結合することが好ましい。
R’
2がウレア結合を表し、かつ、R’
3が単結合を表す場合、式a−2中のベンゼン環に結合している2つのウレア結合は、どちらもR’
3のパラ位に結合することが好ましい。また、その場合式a−2中のヒドロキシ基は、ウレア結合のオルト位に結合することが好ましい。
R’
3がアルキレン基を表す場合、式a−2中の、R’
2と結合していない側のベンゼン環に結合しているウレア結合は、R’
3のメタ位に結合することが好ましい。また、その場合式a−2中のヒドロキシ基は、ウレア結合のオルト位に結合することが好ましい。
R’
2がウレア結合を表し、かつ、R’
3がアルキレン基を表す場合、式a’−2中のベンゼン環に結合している2つのウレア結合は、どちらもR’
3のメタ位に結合することが好ましい。また、その場合式a−2中のヒドロキシ基は、ウレア結合のオルト位に結合することが好ましい。
上記式A−2中のベンゼン環上において、ヒドロキシ基がウレア結合のオルト位に結合していることにより、現像性に優れた印刷版原版が得られる。
【0060】
〔連結基a−2’〕
また、連結基a−1は下記式a−2’で表される連結基であることが好ましい。
【0061】
【化14】
式a−2’中、R
a'
3は二価の連結基を表す。
上記式a−2’中のR
a'
3の説明は、上記式A−2中のR’
3の説明と同様のため省略する。
また、R
a'
3が単結合を表す場合、式a−2’中の2つのベンゼン環に結合している2つのウレア結合は、どちらもR
a'
3のパラ位に結合することが好ましい。また、その場合式a−2’中のヒドロキシ基は、ウレア結合のオルト位に結合することが好ましい。
R
a'
3がアルキレン基を表す場合、式a−2’中の、2つのベンゼン環に結合している2つのウレア結合は、どちらもR
a'
3のメタ位に結合することが好ましい。また、その場合式a−2’中のヒドロキシ基は、ウレア結合のオルト位に結合することが好ましい。
上記式a−2’中のベンゼン環上において、ヒドロキシ基がウレア結合のオルト位に結合していることにより、現像性に優れた印刷版原版が得られる。
【0062】
また、本発明に用いられる特定高分子化合物中の連結基A−1は、下記ジアミン化合物にジイソシアネート化合物を反応させて得られる連結基であることが好ましい。
【0065】
上記ジアミン化合物の中でも、連結基を得るためには、DADHB、1.3−DAP、DAMDH、PDABP、AHPHFP又は、AHPFLを使用することが好ましく、DADHBを使用することがより好ましい。
【0066】
また、本発明に用いられる特定高分子化合物は、下記ジアミン化合物とジイソシアネート化合物とを少なくとも反応させて得られるポリウレアであることが好ましい。
【0067】
特定高分子化合物を合成するために好適に使用されるジイソシアネート化合物を以下に例示する。
【0070】
特定高分子化合物を合成するために好適に使用される、他のジアミン化合物を以下に例示する。
【0073】
なお、上記式中、m及びnはそれぞれ独立に1〜100の整数を表す。
【0074】
連結基A−1を主鎖に有する高分子化合物は、例えば、イソシアネート基を2つ以上有する化合物とアミノ基を2つ以上有する化合物の逐次重合により生成される。
本発明に用いられる特定高分子化合物は、ジイソシアネート化合物と、ジアミン化合物の逐次重合反応により生成することがより好ましい。
連結基A−1のウレア結合を除いた部分はジアミン化合物に含まれることが好ましい。
ジイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2つ有する炭素数20以下の脂肪族又は芳香族炭化水素であることが好ましく、アルキレンジイソシアネートであることがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートであることが更に好ましい。
また、更にジアミン化合物を加えて反応させることも可能である。
【0075】
本発明に用いられる連結基A−1を主鎖に有する高分子化合物の好ましい具体例を下記表1及び表2に示す。例示化合物PU−1〜PU−29は、表1及び表2に記載されたジアミン化合物とジイソシアネート化合物とを表1及び表2に記載の割合(モル比)で反応してできた高分子化合物を意味する。
また、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC法により測定した値である。
本発明に用いられる連結基A−1を含有する高分子化合物は、下記表1及び表2に記載された具体例に限定されるものではない。
【0078】
上記の中でも、連結基A−1を有する高分子化合物としては、PU−1、PU−4、PU−5、及びPU−7が好ましい。
【0079】
本発明に用いられる特定高分子化合物の一例として、表1中のPU−1の構造式を下記に記載する。なお、括弧の右下の数字はモル比を表す。
【0081】
連結基A−1を有する高分子化合物中、連結基A−1の含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることが更に好ましい。
連結基A−1の含有量が上記範囲であれば、耐薬品性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0082】
〔連結基A−9〕
本発明に用いられる、連結基A−1を主鎖に有する高分子化合物は、式A−9で表される連結基を主鎖に更に有することが好ましい。
【0084】
式A−9中、R
A9は水素原子又は一価の有機基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0085】
〔連結基a−3〕
本発明に用いられる、連結基A−1を主鎖に有する高分子化合物は、下記式a−3で表される連結基(構成単位)を主鎖に更に有することが好ましい。
【0086】
【化20】
式a−3中、R’
4及びR’
5はそれぞれ独立に、二価の連結基を表し、Q’
3はスルホンアミド基を含む二価の基を表し、nは0以上の整数を表す。
【0087】
上記式a−3中、R’
4はアルキレン基又はアリーレン基であることが好ましく、炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数6〜10のアリーレン基であることがより好ましく、フェニレン基であることが更に好ましい。
また、R’
5はアリーレン基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリーレン基であることがより好ましく、フェニレン基であることが更に好ましい。
上記R’
4及びR’
5は、共にアリーレン基であることが好ましく、共にフェニレン基であることがより好ましい。
R’
4及びR’
5におけるアルキレン基又はアリーレン基は置換されていてもよく、置換基としては、炭素数6以下のアルキ基、炭素数6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、炭素数4以下のアルキル基がより好ましい。
Q’
3はスルホンアミド基を含む二価の基を表し、下記式Q−1で表される構造であることが好ましい。
【0089】
式Q−1中、R
Q1及びR
Q2はそれぞれ独立に、単結合、又は、二価の連結基を表す。
【0090】
式Q−1中、R
Q1は単結合、アルキレン基、アリーレン基、であることが好ましく、アルキレン基又はアリーレン基であることがより好ましく、炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数6〜10のアリーレン基であることが更に好ましく、フェニレン基であることが特に好ましい。R
Q1におけるアリーレン基又はアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては、炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、炭素数4以下のアルキル基がより好ましい。
式Q−1中、R
Q2は単結合、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、アミド結合、スルホニル基、又はこれらの連結基の組み合わせにより表される基であることが好ましく、単結合、アリーレン基、若しくは、アリーレン基と、スルホニル結合又はエーテル結合とを組み合わせた基であることがより好ましい。
R
Q2がアリーレン基と、スルホニル結合又はエーテル結合とを組み合わせた基を表す場合、アリーレン基は式Q−1中のスルホンアミド基の硫黄原子と直接結合していることが好ましい。
R
Q2におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、炭素数6以下のアルキレン基であることが好ましく、R
Q2におけるアルキレン基が更にハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基により置換されていてもよい。
式a−3中で、式Q−1で表される構造は、R
Q1が式a−3中のR’
5と結合していてもよく、R
Q2がR’
5と結合していてもよいが、R
Q2がR’
5と結合していることが好ましい。
nは0以上の整数を表し、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0091】
また、連結基a−3は下記式a−4で表される連結基であることが好ましい。
【0093】
式a−4中、R
a1、R
a2及びR
a3はそれぞれ独立に、二価の連結基を表す。
【0094】
式a−4中、R
a1及びR
a3はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であることが好ましく、炭素数4以下のアルキレン基又は炭素数6〜10のアリーレン基であることがより好ましく、フェニレン基であることが更に好ましい。
上記R
a1及びR
a3は、共にアリーレン基であることが好ましく、共にフェニレン基であることがより好ましい。
R
a1又はR
a3におけるアリーレン基又はアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては、炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、炭素数4以下のアルキル基がより好ましい。
上記式a−4中、R
a2は二価の連結基を表し、アリーレン基、若しくは、−R
a4−O−R
a5−、又は、−R
a4−SO
2−R
a5−で表される連結基であることが好ましく、アリーレン基であることがより好ましく、フェニレン基であることが更に好ましい。R
a4及びR
a5はそれぞれ独立に、アリーレン基を表し、フェニレン基であることが好ましい。
R
a2におけるアリーレン基又はフェニレン基は置換されていてもよく、置換基としては、炭素数6以下のアルキル基、炭素数6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、炭素数4以下のアルキル基がより好ましい。
【0095】
また、本発明に用いられる特定高分子化合物中の連結基a−3は、下記例示化合物から2つのアミノ基を除いた構造に由来する連結基であることが好ましい。
【0097】
〔連結基B−1及びB−2〕
特定高分子化合物は、主鎖に、下記式B−1又は式B−2で表される連結基を有することが好ましい。
【0099】
式B−1及び式B−2中、L
1は単結合、又は、二価の連結基を表し、R
B21は水素原子、又は一価の有機基を表す。
【0100】
式B−1中、L
1は単結合、アルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、アミド結合、アリーレン基、スルホニル基、又はそれらの連結基の組み合わせにより表される基を表すことが好ましい。
また、式B−1中のベンゼン環は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
式B−2中、R
B21は水素原子又は一価の有機基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、水素原子、又は、炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子を表すことが特に好ましい。
【0101】
上記式B−1又はB−2で表される連結基は、後述する連結基B−3〜B−7の一部として、本発明の高分子化合物の主鎖中に含まれることが好ましい。
【0102】
〔連結基B−3〜B−7〕
本発明に用いられる特定高分子化合物は、下記式B−3〜B−7で表される連結基(構成単位)よりなる群から選ばれた、少なくとも一つを主鎖に有することが好ましい。
【0104】
式B−3〜B−7中、R
B31、R
B51、R
B61、及び、R
B71はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、R
B72は水素原子、又は一価の有機基を表し、Y
1〜Y
5はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素環又は脂肪族炭化水素環を表す。
【0105】
上記式B−3中、R
B31は単結合、アルキレン基、又は、アリーレン基を表すことが好ましく、単結合であることがより好ましい。
R
B31がアルキレン基を表す場合、上記アルキレン基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
上記直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜14であることがより好ましく、炭素数1〜10であることが更に好ましい。上記アルキレン基は、置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基が挙げられる。
R
B31がアリーレン基を表す場合、上記アリーレン基は炭素数6〜20であることが好ましく、炭素数6〜16であることがより好ましい。上記アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0106】
上記式B−4中、Y
1は芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
また、Y
1が脂肪族炭化水素環を表す場合には、炭素数4〜20の脂肪族炭化水素環であることが好ましく、炭素数4〜10の脂肪族炭化水素環であることがより好ましい。
Y
1は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0107】
上記式B−5中、Y
2は芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
また、Y
2が脂肪族炭化水素環を表す場合には、炭素数4〜20の脂肪族炭化水素環であることが好ましく、炭素数4〜12の脂肪族炭化水素環であることがより好ましい。
Y
2は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基が挙げられる。
上記式B−5中、R
B51は単結合、アルキレン基、又は、アリーレン基を表すことが好ましく、単結合であることがより好ましい。
R
B51がアルキレン基を表す場合、上記アルキレン基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
上記直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜14であることがより好ましく、炭素数1〜10であることが更に好ましい。上記アルキレン基は、置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基が挙げられる。
【0108】
上記式B−6中、Y
3及びY
4は共に芳香族炭化水素環であることが好ましく、共にベンゼン環であることがより好ましい。
Y
3及びY
4は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、炭素数1〜6の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。
上記式B−6中、R
B61は単結合、アルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、アミド結合、アリーレン基、スルホニル基、又はそれらの連結基の組み合わせにより表される基を表すことが好ましく、単結合であることがより好ましい。
上記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、炭素数6以下のアルキレン基であることが好ましく、上記アルキレン基が更にハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基により置換されていてもよい。
また、Y
3及びY
4の少なくとも一方が脂肪族炭化水素環を表す場合、R
B61はアリーレン基を含むことが好ましい。
【0109】
上記式B−7中、Y
5は芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
Y
5は置換されていてもよく、好ましい置換基としては炭素数1〜12の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。
上記式B−7中、R
B71は単結合、アルキレン基、アリーレン基を表すことが好ましく、単結合であることがより好ましい。
R
B72は水素原子、又は一価の有機基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましく、水素原子、又は、炭素数3以下のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子を表すことが特に好ましい。
【0110】
また、本発明で用いられる特定高分子化合物は、得られる平版印刷版の耐刷性の観点から、式B−4、又は、式B−7で表される連結基を主鎖に有することが好ましい。
【0111】
また、本発明に用いられる特定高分子化合物中の連結基B−3〜B−7は、下記例示化合物をジアミン化合物と反応させて得られる連結基であることが好ましい。
【0113】
〔連結基a−3、及び/又は、連結基B−3〜B−7のうち少なくとも1つを有する高分子化合物〕
連結基a−3を主鎖に有する本発明の高分子化合物は、例えば、イソシアネート基を2つ以上有する化合物とアミノ基を2つ以上有する化合物の逐次重合により生成される。
上記特定高分子化合物は、ジイソシアネート化合物と、ジアミン化合物との逐次重合反応により生成することがより好ましい。
連結基A−1のウレア結合を除いた部分、及び、連結基a−3は、どちらもジアミン化合物に含まれることが好ましい。
ジイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2つ有する炭素数20以下の脂肪族又は芳香族炭化水素であることが好ましく、フェニレンジイソシアネート又はアルキレンジイソシアネートであることがより好ましく、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネートであることが更に好ましい。
【0114】
また、連結基B−3〜B−7のうち少なくとも1つを有する本発明の高分子化合物は、例えば、酸無水物基を2つ以上有する化合物、あるいは酸ハライド基と酸無水物基とを少なくとも1つずつ有する化合物と、アミノ基を1つ以上有する化合物との縮合反応により生成される。
上記特定高分子化合物は、2つの酸無水物基を有する化合物、あるいは酸ハライド基と酸無水物基とを1つずつ有する化合物と、ジアミン化合物の縮合反応により生成することが好ましい。
連結基A−1のウレア結合を除いた部分は、ジアミン化合物に含まれることが好ましい。
また、更にジイソシアネート化合物を加えて反応させることも好ましい。ジイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2つ有する炭素数20以下の脂肪族又は芳香族炭化水素であることが好ましく、アルキレンジイソシアネートであることがより好ましく、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネートであることが更に好ましい。
【0115】
連結基a−3及び連結基B−3〜B−7のうち少なくとも1つを有する本発明の高分子化合物は、例えば、酸無水物基を2つ以上有する化合物、あるいは酸ハライド基と酸無水物基とを少なくとも1つずつ有する化合物と、アミノ基を1つ以上有する化合物との縮合反応により生成される。
上記特定高分子化合物は、酸無水物基を2つ以上有する化合物、あるいは酸ハライド基と酸無水物基とを少なくとも1つずつ有する化合物と、ジアミン化合物との縮合反応により生成することがより好ましい。
連結基A−1のウレア結合を除いた部分、及び、連結基a−3は、ジアミン化合物に含まれることが好ましい。
また、更にジイソシアネート化合物を加えて反応させることも好ましい。ジイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2つ有する炭素数20以下の脂肪族又は芳香族炭化水素であることが好ましく、アルキレンジイソシアネートであることがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートであることが更に好ましい。
【0116】
本発明に用いることができる連結基a−3及び連結基B−3〜B−7のうち少なくとも1つを有する高分子化合物の好ましい具体例を下記表3に示す。PX−1〜PX−15は、表2に記載された酸無水物基を有する化合物とジアミン化合物とを表2に記載の割合(モル比)で反応してできた特定高分子化合物を意味する。
また、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC法により測定した値である。
本発明に用いられる連結基a−3及び連結基B−3〜B−7のうち少なくとも1つを有する特定高分子化合物は、下記表3に記載された具体例に限定されるものではない。
【0118】
中でも、本発明の特定高分子化合物としては、PX−1、PX−3、PX−4、PX−7、PX−10及びPX−14が好ましく、PX−10及びPX−14がより好ましい。
本発明に用いられる特定高分子化合物の一例として、表3中のPX−4の構造式を下記に記載する。なお、括弧の右下の数字はモル比を表す。
【0120】
連結基A−1及び連結基a−3を有する高分子化合物中、連結基A−1と連結基a−3に含まれる全連結基とのモル比は、3:1〜1:3であることが好ましく、2:1〜1:2であることがより好ましく、1.5:1〜1:1であることが更に好ましい。
連結基A−1及び連結基B−3〜B−7のうち少なくとも1つを有する高分子化合物中、連結基A−1と連結基B−3〜B−7に含まれる全連結基とのモル比は、20:1〜1:3であることが好ましく、20:1〜1:1であることがより好ましく、10:1〜2:1であることが更に好ましい。
連結基A−1、連結基a−3及び連結基B−3〜B−7のうち少なくとも1つを有する高分子化合物中、連結基A−1と、連結基a−3のモル量の合計と連結基B−3〜B−7に含まれる全連結基とのモル比は、20:1〜1:3であることが好ましく、20:1〜1:1であることがより好ましく、10:1〜2:1であることが更に好ましい。
連結基A−1、連結基a−3及び連結基B−4〜B−6の含有量が上記範囲であれば、耐薬品性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0121】
本発明の感光性樹脂組成物中における特定高分子化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることが更に好ましい。含有量がこの範囲であると、現像した際のパターン形成性が良好となる。なお、感光性樹脂組成物の全固形分質量とは、溶剤などの揮発性成分を除いた量を表す。
【0122】
本発明の感光性樹脂組成物中における特定高分子化合物の重量平均分子量は、5,000〜300,000であることが好ましく、10,000〜200,000であることがより好ましく、30,000〜100,000であることが更に好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量や数平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いた標準ポリスチレン換算法により測定することが好ましい。本発明におけるゲル浸透クロマトグラフィ法による測定は、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(TSKgel SuperAWM−H;東ソー(株)製)、GPC溶媒としてN−メチルピロリドン(リン酸、臭化リチウム各0.01mol/L)を用いて測定することが好ましい。
【0123】
<赤外線吸収剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、赤外線吸収剤を含有する。
赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外光又は近赤外光を発光するレーザーでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
【0124】
そのような赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式I、IIとして記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0125】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。更に、下記式aで示されるシアニン色素は、本発明における上層に使用した場合に、高い重合活性を与え、かつ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0127】
式a中、X
1は、水素原子、ハロゲン原子、ジアリールアミノ基(−NPh
2)、X
2−L
2又は以下に示す基を表す。X
2は、酸素原子又は硫黄原子を示す。L
2は、炭素数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0129】
上記式中、X
a-は後述するZ
a-と同様に定義され、R
aは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0130】
R
21及びR
22は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R
21及びR
22は、炭素数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R
21とR
22とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0131】
Ar
1、Ar
2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。
Y
11、Y
12は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R
23及びR
24は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。
R
25、R
26、R
27及びR
28は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z
a-は、対アニオンを示す。但し、式aで示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Z
a-は必要ない。好ましいZ
a-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0132】
好適に用いることのできる式aで示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落0017〜0019、特開2002−40638号公報の段落0012〜0038、特開2002−23360号公報の段落0012〜0023に記載されたものを挙げることができる。
上層が含有する赤外線吸収剤として特に好ましくは、以下に示すシアニン染料Aである。
【0134】
本発明の感光性樹脂組成物に赤外線吸収剤を添加する際の添加量としては、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜30質量%であることが特に好ましい。添加量が0.01質量%以上であると、高感度となり、また、50質量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
【0135】
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、所望により他の成分を含有してもよい。
以下、本発明の感光性樹脂組成物の任意成分である、他のアルカリ可溶性樹脂、酸発生剤、酸増殖剤、及び、その他の添加剤について説明する。
【0136】
<他のアルカリ可溶性樹脂>
本発明において、「アルカリ可溶性」とは、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味する。
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる、特定高分子化合物以外のアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の酸性の官能基を有するものが好ましく、このような、アルカリ可溶性を付与する酸性の官能基を有するモノマーを10モル%以上含む樹脂が挙げられ、20モル%以上含む樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
【0137】
また、アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂も好ましく挙げられる。
本発明に用いることができるノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
【0138】
上記他のアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、上記他のアルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に所望により含まれる他のアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。
本発明における感光性樹脂組成物の全固形分中に対する他のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、0〜98質量%の添加量が好ましく、0〜80質量%であることがより好ましい。また、本発明に用いられる特定高分子化合物100質量部に対し、80質量部以下の割合で含むことが好ましい。
【0139】
<酸発生剤>
本発明の感光性樹脂組成物には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、上記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、画像記録層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
【0140】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。更に、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特開平9−197671号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
更に、上記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、あるいは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
【0141】
中でも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、中でも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF
4-、PF
6-、ClO
4-などが好ましい。
本発明において酸発生剤として用いうるオニウム塩としては、下記式III〜Vで表されるオニウム塩が挙げられる。
【0143】
上記式III中、Ar
11とAr
12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数12個以下のアルキル基、炭素数12個以下のアルコキシ基、又は炭素数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z
11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、スルホン酸イオン、及び、ペルフルオロアルキルスルホン酸イオン等フッ素原子を有するスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、アリールスルホン酸イオン、及びペルフルオロアルキルスルホン酸である。
上記式IV中、Ar
21は、置換基を有していてもよい炭素数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数12個以下のアルキル基、炭素数12個以下のアルコキシ基、炭素数12個以下のアリールオキシ基、炭素数12個以下のアルキルアミノ基、炭素数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z
21-はZ
11-と同義の対イオンを表す。
上記式V中、R
31、R
32及びR
33は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数12個以下のアルキル基、炭素数12個以下のアルコキシ基、又は炭素数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z
31-はZ
11-と同義の対イオンを表す。
【0144】
本発明において、好適に用いることのできる式IIIで示されるオニウム塩(OI−1〜OI−10)、式IVで示されるオニウム塩(ON−1〜ON−5)、及び式Vで示されるオニウム塩(OS−1〜OS−6)の具体例を以下に挙げる。
【0149】
また、上記式III〜式Vで表される化合物の別の例としては、特開2008−195018号公報の段落0036〜0045において、ラジカル重合開始剤の例として記載の化合物を、本発明における酸発生剤として好適に用いることができる。
【0150】
本発明に用いられる酸発生剤として好ましいオニウム塩の別の例として、下記式VIで表されるアジニウム塩化合物が挙げられる。
【0152】
式VI中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、及びR
46は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の置換基を表す。
一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、等が挙げられ、導入可能な場合には更に置換基を有していてもよい。
【0153】
式VIで表される化合物としては、式VIで表される化合物における特定構造の骨格(カチオン部)が、R
41を介して結合し、カチオン部が分子中に2個以上含まれる化合物(多量体型)も包含され、このような化合物も好適に用いられる。
Z
41-はZ
11-と同義の対イオンを表す。
上記式VIで示されるアジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落0047〜0056に記載の化合物を挙げることができる。
また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
本発明に用いうる酸発生剤のより好ましい例として、下記化合物(PAG−1)〜(PAG−5)が挙げられる。
【0155】
これらの酸発生剤を本発明の感光性樹脂組成物中に含有させる場合、これらの化合物は単独で使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸発生剤の好ましい添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られると共に、非画像部における残膜の発生が抑制される。
【0156】
<酸増殖剤>
本発明の画像記録層には、酸増殖剤を添加してもよい。本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。即ち、酸触媒反応によって分解し、再び酸(以下、式でZOHと記す。)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、更に2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると、酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
【0157】
酸増殖剤は、国際公開第95/29968号、国際公開第98/24000号、特開平8−305262号、特開平9−34106号、特開平8−248561号、特表平8−503082号、米国特許第5,445,917号、特表平8−503081号、米国特許第5,534,393号、米国特許第5,395,736号、米国特許第5,741,630号、米国特許第5,334,489号、米国特許第5,582,956号、米国特許第5,578,424号、米国特許第5,453,345号、米国特許第5,445,917号、欧州特許第665,960号、欧州特許第757,628号、欧州特許第665,961号、米国特許第5,667,943号、特開平10−1598号等の各公報に記載の酸増殖剤を1種、あるいは二種以上組み合わせて用いることができる。
【0158】
本発明における酸増殖剤の好ましい具体例としては、例えば、特開2001−66765号公報の段落0056〜0067に記載される化合物を挙げることができる。中でも、例示化合物(ADD−1)、(ADD−2)、(ADD−3)として記載された下記化合物を好適に用いることができる。
【0160】
これらの酸増殖剤を上層中に添加する場合の添加量としては、固形分換算で、0.01〜20質量%,好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。酸増殖剤の添加量が上記範囲において、酸増殖剤を添加する効果が充分に得られ、感度向上が達成されると共に、画像部の膜強度低下が抑制される。
【0161】
<その他の添加剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、その他の添加剤として、現像促進剤、界面活性剤、焼き出し剤/着色剤、可塑剤、ワックス剤等を含んでもよい。
【0162】
〔現像促進剤〕
本発明の感光性樹脂組成物には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の感光性樹脂組成物の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0163】
〔界面活性剤〕
本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−57820号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の感光性樹脂組成物の全固形分に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2.0質量%が更に好ましい。
【0164】
〔焼出し剤/着色剤〕
本発明の感光性樹脂組成物には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤及び着色剤としては、例えば、特開2009−229917号公報の段落0122〜0123に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも適用しうる。
これらの染料は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0165】
〔可塑剤〕
本発明の感光性樹脂組成物には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.5〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
【0166】
〔ワックス剤〕
本発明の感光性樹脂組成物には、傷に対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
添加量として好ましいのは、感光性樹脂組成物の固形分中に占める割合が0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0167】
<各成分の組成比>
本発明の感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して、特定高分子化合物の含有量は10〜90質量%であることが好ましく、赤外線吸収剤の含有量は0.01〜50質量%であることが好ましく、他のアルカリ可溶性樹脂の含有量は0〜80質量%であることが好ましく、酸発生剤の含有量は0〜30質量%であることが好ましく、酸増殖剤の含有量は0〜20質量%であることが好ましく、現像促進剤の含有量は0〜20質量%であることが好ましく、界面活性剤の含有量は0〜5質量%であることが好ましく、焼き出し剤/着色剤の含有量は0〜10質量%であることが好ましく、可塑剤の含有量は0〜10質量%であることが好ましく、ワックス剤の含有量は0〜10質量%であることが好ましい。
【0168】
上記本発明の感光性樹脂組成物は、耐久性に優れた樹脂パターン形成を必要とする種々の分野、例えば、レジスト、ディスプレイ、平版印刷版原版などの種々の分野に適用することができるが、好感度で記録可能であり、画像形成性に優れ、形成された画像部の耐久性が良好であることから、以下に詳述する赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版へ適用することにより本発明の効果が著しいといえる。
【0169】
(平版印刷版原版)
本発明の平版印刷版原版は、本発明の感光性樹脂組成物を含む画像記録層を有する。
また、本発明の平版印刷版原版は、ポジ型の平版印刷版原版であることが好ましい。
更に、本発明の平版印刷版原版は、親水性表面を有する支持体上に下層及び上層をこの順に配設した画像記録層を有してなるポジ型平版印刷版原版であって、上記感光性樹脂組成物を下層及び/又は上層に含有することが好ましく、下層又は上層に含有することがより好ましく、下層のみに含有することが更に好ましい。
【0170】
<画像記録層>
本発明に用いられる画像記録層は、上記の感光性樹脂組成物の各成分を溶剤に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。
【0171】
〔下層及び上層の形成〕
また、本発明の画像記録層は、支持体上に下層及び上層をこの順に配設した画像記録層(以下、「2層構造の平版印刷版原版」ともいう。)であることが好ましい。
下層及び上層は、原則的に2つの層を分離して形成することが好ましい。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、特開2011−209343号公報の段落0068−0069に記載されているように、下層に含まれる成分と、上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、又は、上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去さる方法等が挙げられる。後者の方法を併用することにより、層間の分離が一層良好に行われることになるため好ましい。
【0172】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記の上層及び/又は下層に含まれることが好ましく、下層のみに含まれることがより好ましい。
【0173】
本発明の上層及び/又は下層に含まれる感光性樹脂組成物中における特定高分子化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して、10〜100質量%であることが好ましく、50〜98質量%であることがより好ましく、60〜95質量%であることが更に好ましい。含有量がこの範囲であると、現像した際のパターン形成性が良好となる。なお、感光性樹脂組成物の全固形分質量とは、溶剤などの揮発性成分を除いた量を表す。
【0174】
本発明の平版印刷版原版の支持体上に塗布される下層成分の乾燥後の塗布量は、0.5〜4.0g/m
2の範囲にあることが好ましく、0.6〜2.5g/m
2の範囲にあることがより好ましい。0.5g/m
2以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m
2以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
また、上層成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.0g/m
2の範囲にあることが好ましく、0.08〜0.7g/m
2の範囲であることがより好ましい。0.05g/m
2以上であると、現像ラチチュード、及び、耐傷性に優れ、1.0g/m
2以下であると、感度に優れる。
下層及び上層を合わせた乾燥後の塗布量としては、0.6〜4.0g/m
2の範囲にあることが好ましく、0.7〜2.5g/m
2の範囲にあることがより好ましい。0.6g/m
2以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m
2以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
【0175】
<上層>
本発明における2層構造の平版印刷版原版の上層は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することもできるが、本発明の感光性樹脂組成物以外の樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
本発明における2層構造の平版印刷版原版の上層は、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する赤外線感応性のポジ型記録層であることが好ましい。
上層における熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する機構には特に制限はなく、バインダー樹脂を含み、加熱された領域の溶解性が向上するものであれば、いずれも用いることができる。画像形成に利用される熱としては、赤外線吸収剤を含む下層が露光された場合に発生する熱が挙げられる。
熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する上層としては、例えば、ノボラック、ウレタン等の水素結合能を有するアルカリ可溶性樹脂を含む層、水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂と溶解抑制作用のある化合物とを含む層、アブレーション可能な化合物を含む層、などが好ましく挙げられる。
【0176】
また、上層に、更に赤外線吸収剤を添加することにより、上層で発生する熱も画像形成に利用することができる。赤外線吸収剤を含む上層の構成としては、例えば、赤外線吸収剤と水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂と溶解抑制作用のある化合物とを含む層、赤外線吸収剤と水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂と酸発生剤とを含む層などが好ましく挙げられる。
【0177】
〔水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂〕
本発明に係る上層は、水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂を含有することで、赤外線吸収剤と水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂が有する極性基との間に相互作用が形成され、ポジ型の感光性を有する層が形成される。
一般的な水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂については以下に詳述するが、中でも、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等を好ましく挙げることができる。
本発明に用いることができる水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、又は、これらの混合物であることが好ましい。
このような酸性基を有する水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有することが好ましい。したがって、このような樹脂は、上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を共重合することによって好適に生成することができる。上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物及びその混合物が好ましく例示できる。なお、下式中、R
40は水素原子又はメチル基を表す。
【0179】
本発明に用いることができる水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂としては、上記重合性モノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーのようなアルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
【0180】
使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他のエチレン性不飽和モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
【0181】
また、アルカリ可溶性樹脂としては、本発明の感光性樹脂組成物の任意成分として挙げた他のアルカリ可溶性樹脂樹脂として挙げたノボラック樹脂も好ましく挙げられる。
また、上記の水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂を本発明の樹脂組成物に用いることも可能である。
【0182】
更に、本発明における上層中には、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂を併用することができる。上層自体は、特に非画像部領域において、アルカリ可溶性を発現することを要するため、この特性を損なわない樹脂を選択する必要がある。この観点から、併用可能な樹脂としては、水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。一般的な水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂については以下に詳述するが、中でも、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等を好ましく挙げることができる。
また、混合する量としては、上記水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0183】
上記水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、上記アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物の他の樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、二種以上を併用してもよい。
本発明における他の樹脂組成物の全固形分中に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、全固形分中、2.0〜99.5質量%であることが好ましく、10.0〜99.0質量%であることがより好ましく、20.0〜90.0質量%であることが更に好ましい。アルカリ可溶性樹脂の添加量が2.0質量%以上であると記録層(感光層)の耐久性に優れ、また、99.5質量%以下であると、感度、及び、耐久性の両方に優れる。
【0184】
〔赤外線吸収剤〕
上記、他の樹脂組成物は、赤外線吸収剤を含んでもよい。
赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、前述した、本発明の樹脂組成物において用いられる赤外線吸収剤を同様に用いることができる。
特に好ましい染料は、上記式aで表されるシアニン染料である。
【0185】
上層に赤外線吸収剤を含有することで、高感が良好となる。
上層における赤外線吸収剤の添加量としては、上層全固形分に対し、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、1.0〜10質量%であることが特に好ましい。添加量が0.01質量%以上であることで感度が改良され、また、50質量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
【0186】
〔その他の成分〕
その他、2層構造の平版印刷版原版における上層は、酸発生剤、酸増殖剤、現像促進剤、界面活性剤、焼き出し剤/着色剤、可塑剤、ワックス剤等を含んでもよい。
これらの成分は、前述した、本発明の樹脂組成物において用いられるそれぞれの成分を同様に用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0187】
<下層>
本発明における2層構造の平版印刷版原版の下層は、本発明の感光性樹脂組成物を塗布することにより形成されることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物を下層に用いることにより、画像形成性や耐刷性に優れた印刷版を得ることができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物を下層に用いることにより、特に低品質のインキ、紙等の資材を用いた場合に耐刷性が向上する。
上記のような効果が得られる詳細な機構は不明であるが、印刷における耐刷性は下層に用いられる樹脂の膜強度が重要であると推測されることから、バインダー間の相互作用が強いため膜強度の高い本発明の感光性樹脂組成物を下層に用いることにより、耐刷性が向上すると推定している。
【0188】
本発明の感光性樹脂組成物を上層に用いる場合、下層も本発明の感光性樹脂組成物により形成することが好ましいが、下層を本発明の感光性樹脂組成物以外の樹脂組成物を用いて形成してもよい。その場合の下層の好ましい態様は、上記で説明した上層の好ましい態様と同様である。
【0189】
<支持体>
本発明の感光性樹脂組成物に使用される支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙、又は、プラスチックフィルム等が挙げられる。
【0190】
なお、本発明の感光性樹脂組成物を平版印刷版原版に適用する場合の支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
【0191】
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
【0192】
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。アルミニウム支持体の表面処理については、例えば、特開2009−175195号公報の段落0167〜0169に詳細に記載されるような、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理、表面の粗面化処理、陽極酸化処理などが適宜、施される。
陽極酸化処理を施されたアルミニウム表面は、必要により親水化処理が施される。
親水化処理としては、2009−175195号公報の段落0169に開示されているような、アルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法、フッ化ジルコン酸カリウムあるいは、ポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
また、特開2011−245844号公報に記載された支持体も好ましく用いられる。
【0193】
<下塗層>
本発明の感光性樹脂組成物を平版印刷版原版に適用する場合には、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、二種以上混合して用いてもよい。下塗層に使用される化合物の詳細、下塗層の形成方法は、特開2009−175195号公報の段落0171〜0172に記載され、これらの記載は本発明にも適用される。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m
2であることが好ましく、5〜100mg/m
2であることがより好ましい。被覆量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
【0194】
<バックコート層>
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH
3)
4、Si(OC
2H
5)
4、Si(OC
3H
7)
4、Si(OC
4H
9)
4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
【0195】
(平版印刷版の作製方法)
本発明の平版印刷版の作製方法は、上記平版印刷版原版を画像露光する露光工程、及び、現像液を用いて現像する現像工程、をこの順で含む。
本発明の平版印刷版の作製方法によれば、焼きだめ性が良好となり、得られた平版印刷版は、非画像部の残膜に起因する汚れの発生がなく、画像部の強度、耐久性に優れる。
以下、本発明の作製方法の各工程について詳細に説明する。
【0196】
<露光工程>
本発明の平版印刷版の作製方法は、本発明の平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程を含む。なお、上記平版印刷版原版はポジ型の平版印刷版原版であることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザーの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10〜300mJ/cm
2であることが好ましい。上記範囲であると、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
【0197】
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
【0198】
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0199】
<現像工程>
本発明の平版印刷版の作製方法は、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液(以下、「現像液」ともいう。)を用いて現像する現像工程を含む。
現像工程に使用される現像液は、pH12.5〜13.5であることが好ましい。
また、上記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
上記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、及び、両性の界面活性剤のいずれも用いることができるが、既述のように、アニオン性、ノニオン性の界面活性剤が好ましい。
本発明における現像液に用いられるアニオン性、ノニオン性、カチオン性、及び、両性界面活性剤としては、特開2013−134341号公報の段落0128〜0131に記載の物を使用することができる。
【0200】
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、HLB値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
上記現像液に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン性界面活性剤及び、芳香環とエチレンオキサイド鎖を有するノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0201】
上記現像液をpH8.5〜13.5に保つためには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することで、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0202】
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、現像液の全質量に対して、0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。総量が0.3質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、更に現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0203】
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的に他のアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は二種以上を組み合わせて用いられる。
上記現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。ただし、水溶性高分子化合物を添加すると、特に現像液が疲労した際に版面がベトツキやすくなるため、添加しないことが好ましい。
【0204】
湿潤剤としては、特開2013−134341号公報の段落0141に記載の湿潤剤を好適に用いることができる。湿潤剤は単独で用いてもよいが、二種以上併用してもよい。湿潤剤は、現像剤の全質量に対し、0.1〜5質量%の量で使用されることが好ましい。
【0205】
防腐剤としては、特開2013−134341号公報の段落0142に記載の防腐剤を好適に用いることができる。種々のカビ、殺菌に対して効力があるように二種以上の防腐剤を併用することが好ましい。防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全質量に対して、0.01〜4質量%の範囲が好ましい。
【0206】
キレート化合物としては、特開2013−134341号公報の段落0143に記載のキレート化合物を好適に用いることができる。キレート剤は現像液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量は、現像液の全質量に対して、0.001〜1.0質量%が好適である。
【0207】
消泡剤としては、特開2013−134341号公報の段落0144に記載の消泡剤を好適に用いることができる。消泡剤の含有量は、現像液の全重量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲が好適である。
【0208】
有機酸としては、特開2013−134341号公報の段落0145に記載の消泡剤を好適に用いることができる。有機酸の含有量は、現像液の全質量に対して、0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0209】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)、ガソリン、若しくは、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、又は、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
【0210】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、その他(トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0211】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が好ましい。
【0212】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0213】
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。また、特開平9−96910号公報に記載されているような自動現像装置を用いて、現像補充液を補充するタイミングを決定する基準電導度を処理疲労と炭酸ガス疲労との比を配慮して適性な値に、自動的に設定することにより、現像液の活性度を長期に渡って良好な状態に維持してもよい。
現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。得られた平版印刷版に不必要な画像部がある場合には、その不必要な画像部の消去が行われる。このような消去は、例えば特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行う方法が好ましいが、特開平5−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0214】
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0215】
本発明に使用する回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、更には、平版印刷版原版の支持体における腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報、特開平3−100554号公報に記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20〜400μm、毛の長さは5〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
【0216】
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去が更に確実となる。更に、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0217】
現像工程の後、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
本発明の平版印刷版の作製方法においては、平版印刷版原版に対して、現像槽で、現像とガム引きとが行われ、その後、乾燥部で乾燥されて平版印刷版が得られる自動処理機を用いてもよい。
【0218】
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、200〜500℃の範囲であることが好ましい。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
【実施例】
【0219】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「部」、「%」とは、特に断りのない限り、「質量部」、「質量%」を意味する。
【0220】
(合成例)
<スルホンアミド含有ジアミン(SA−1)の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、クロロスルホン酸350.0gを秤取し、次いで、氷冷中、トルエン(和光純薬工業(株)製)46.1gを添加し、氷冷にて1時間撹拌した。反応液を60℃まで昇温し、3時間撹拌した。本反応液を撹拌しながら、室温まで冷却し、1Lの氷水と1Lのクロロホルム混合液に滴下し、30分撹拌した後、これを分液ロートに移し、有機層(クロロホルム層)を取り出した。本クロロホルム溶液を再度分液ロートに移し、飽和重層水にて洗浄した後、純水にて2回分液洗浄し、次いで、飽和食塩水にて分液洗浄した。有機層(クロロホルム層)を三角フラスコに移し、硫酸マグネシウム30gを添加し、撹拌し、固形物を濾過で取り除いた後、エバポレーターを用いてクロロホルムを留去し、室温で24時間真空乾燥し、目的物の前駆体S−1(4−メチルベンゼン−1.3−ジスルホン酸クロリド体)を70.0g得た。前駆体(S−1)であることはNMRスペクトルから確認した。前駆体S−1について
1NMRによる分析を行った。その結果を以下に示す。
1H−NMRデータ(重クロロホルム、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)
δ(ppm)=2.95(s、3H)、7.73−7.75(d、1H)、8.24−8.27(d、1H)、8.70(s、1H)
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、1.4−フェニレンジアミン(東京化成工業(株)製)97.3g、アセトニトリル400gを秤量し、0〜5℃に冷却しながら撹拌した。上記で得られた前駆体(S−1)43.4gをテトラヒドロフラン400gに溶解した後、滴下ロートに移し、撹拌中の上記三口フラスコ内に1時間かけて滴下し、次いで1時間撹拌した。本反応液を室温に戻し、2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液615g、純水500gを添加し、溶解した。本反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル500mLで3回分液洗浄し、水層を回収した。5Lのビーカーに塩化アンモニウム(関東化学(株)製)33.7gを秤量し、純水2Lに溶解し、室温にて撹拌した。上記水層を5Lビーカーに滴下し、析出した結晶を濾収し、結晶を純水1Lでリスラリー洗浄後、結晶を濾収し、次いで結晶をクロロホルム500mLでリスラリー洗浄後、結晶を濾収し、40℃で24時間真空乾燥し、目的物(SA−1)56.5gを得た。目的物であることはNMRスペクトルから確認した。
目的物(SA−1)について
1NMRによる分析を行った。その結果を以下に示す。
1H−NMRデータ(重DMSO、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)
δ(ppm)=2.55(s,3H)、5.00(s,4H)、6.35−6.38(t,4H)、6.55−6.57(d,2H)、6.60−6.62(d,2H)、7.46−7.48(d,1H)、7.58−7.61(d,1H)、8.10(s,1H)、9.61(s,1H)、9.75(s,1H)
同様にして、SA−2〜7を合成することができる。
【0221】
<ポリウレア樹脂(PU−1)の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、3,3’−ジヒドロキシベンジジン(DADHB、東京化成工業(株)製)を4.32g、シクロヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.0083g、N,N-ジメチルアセトアミド(関東化学(株)製)33.6gを秤取し、反応液を室温とし、均一溶液とした。
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、東京化成工業(株)製)3.36gをN,N-ジメチルアセトアミド(関東化学(株)製)10.00gに溶解させ、室温中、滴下ロートを用いて15分かけて滴下し、その後室温で30分撹拌して反応させた後、シクロヘキシルアミン(東京化成工業(株)製)0.30g、添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール15mLを反応液に加え、65℃、2時間反応させた後、室温まで冷却し、溶解させた。
上記反応液を純水0.3L、メタノール0.3Lの混合液にあけ、ポリマーを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、重量平均分子量56,000のバインダーポリマー(PU−1)7.01gを得た。
目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。同様にして、PU−2〜29を合成することができる。
【0222】
<スルホンアミドを含むポリウレア樹脂(PX−1)の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、上記合成法と同様の方法で得られたSA−1を3.24g、3,3’−ジヒドロキシベンジジン(東京化成工業(株)製)を1.62g、N,N−ジメチルアセトアミドにて1質量%に希釈したo−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)0.5g、N,N−ジメチルアセトアミド27.54gを秤量し、室温で撹拌し、均一溶液とした。
1.4−フェニレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製)2.40gを室温中、反応液に添加し、60℃、2時間撹拌して反応させた後、o−アミノフェノール(東京化成工業(株)製)0.3g添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール20mLを反応液に加え、65℃、3時間反応させた。反応液を純水0.1L、メタノール0.2Lの混合液にあけ、ポリマーを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、重量平均分子量65,000のバインダーポリマー(PX−1)7.2gを得た。
目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。
同様にして、PX−2〜9を合成することができる。
【0223】
<イミドを含むポリウレア樹脂(PX-10)の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けた3つ口フラスコに、3,3’−ジヒドロキシベンジジン(DADHB、東京化成工業(株)製)を2.16g、N−メチルピロリドン26.2g、トリエチルアミン0.22gを秤量し、氷冷しながら撹拌し、均一溶液とした。無水トリメリット酸クロリド(東京化成工業(株)製)0.42g、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、東京化成工業(株)製)1.35gをこの順に添加し、室温で3時間反応させた。次いでピリジン3.2g、無水酢酸2.2gをこの順に添加し、80℃、3時間反応させた。反応液を純水0.4L、メタノール0.4Lの混合液にあけ、析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、平均分子量59,000のバインダーポリマー(PX−10)3.54gを得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。同様にして、PX−11〜15を合成することができる。
【0224】
(実施例1〜31、比較例1〜2)
<支持体の作製>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム合金板に対し、下記(A)から(F)のうち下記表4に示す処理を施し、平版印刷版用支持体を製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラーで液切りを行った。
【0225】
〔処理A〕
(A−a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
パミスの懸濁液(比重1.1g/cm
3)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。
研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
【0226】
(A−b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/m
2であった。
【0227】
(A−c)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0228】
(A−d)電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm
2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0229】
(A−e)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.5g/m
2であった。
【0230】
(A−f)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0231】
(A−g)電気化学的粗面化処理
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm
2であり、塩酸電解における電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0232】
(A−h)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/m
2であった。
【0233】
(A−i)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。具体的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0234】
(A−j)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0235】
(A−k)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0236】
〔処理B〕
(B−a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
パミスの懸濁液(比重1.1g/cm
3)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。
研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
【0237】
(B−b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/m
2であった。
【0238】
(B−c)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0239】
(B−d)電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。。電流密度は電流のピーク値で30A/dm
2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0240】
(B−e)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.5g/m
2であった。
【0241】
(B−f)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0242】
(B−g)電気化学的粗面化処理
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm
2であり、塩酸電解における電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0243】
(B−h)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/m
2であった。
【0244】
(B−i)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。具体的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0245】
(B−j)第1段階の陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解浴としては硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン7g/Lを溶解した溶液を使用し、液温43℃、電流密度30A/dm
2の条件下で陽極酸化処理を行った。マイクロポアの深さは27μm、得られた被膜量は0.13g/m
2であった。
【0246】
(B−k)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度35℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に1秒間浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0247】
(B−l)第2段階の陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。 電解浴としては硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン7g/Lを溶解した溶液を使用し、液温55℃、電流密度20A/dm
2の条件下で陽極酸化処理を行った。得られた被膜量は2.6g/m
2であった。
【0248】
(B−m)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0249】
〔処理(C)〕
(C−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、1.0g/m
2であった。
【0250】
(C−b)酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)
次に、酸性水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。デスマット液はスプレーにより吹き付けて、3秒間デスマット処理した。その後、水洗処理を行った。
【0251】
(C−c)塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電解粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dm
2であった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dm
2であり、電解処理は125C/dm
2ずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0252】
(C−d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度35℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.1g/m
2であった。その後、水洗処理を行った。
【0253】
(C−e)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、酸性水溶液中でのデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5.0g/L溶解)を用いた。液温は30℃であった。デスマット液はスプレーに吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0254】
(C−f)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0255】
(C−g)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0256】
〔処理(D)〕
(D−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/m
2であった。
【0257】
(D−b)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0258】
(D−c)電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm
2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0259】
(D−d)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.2g/m
2であった。
【0260】
(D−e)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0261】
(D−f)電気化学的粗面化処理
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm
2であり、塩酸電解における電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0262】
(D−g)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/m
2であった。
【0263】
(D−h)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。具合的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0264】
(D−i)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0265】
(D−j)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0266】
〔処理(E)〕
(E−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/m
2であった。
【0267】
(E−b)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0268】
(E−c)電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm
2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0269】
(E−d)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.2g/m
2であった。
【0270】
(E−e)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0271】
(E−f)電気化学的粗面化処理
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm
2であり、塩酸電解における電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0272】
(E−g)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/m
2であった。
【0273】
(E−h)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。具合的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0274】
(E−i)第1段階の陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。
電解浴としては硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン7g/Lを溶解した溶液を使用し、液温43℃、電流密度30A/dm
2の条件下で陽極酸化処理を行った。マイクロポアの深さは27μm、得られた被膜量は0.13g/m
2であった。
【0275】
(E−j)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度35℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に1秒間浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0276】
(E−k)第2段階の陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。電解浴としては硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン7g/Lを溶解した溶液を使用し、液温40℃、電流密度20A/dm
2の条件下で陽極酸化処理を行った。得られた被膜量は2.6g/m
2であった。
【0277】
(E−l)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0278】
〔処理(F)〕
(F−a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/m
2であった。
【0279】
(F−b)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0280】
(F−c)電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm
2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0281】
(F−d)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.2g/m
2であった。
【0282】
(F−e)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0283】
(F−f)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0284】
(F−g)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0285】
〔処理(G)〕
(G−a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
パミスの懸濁液(比重1.1g/cm
3)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。
機械的粗面化処理は、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
【0286】
(G−b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/m
2であった。
【0287】
(G−c)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、酸性水溶液中でのデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5.0g/L溶解)を用いた。液温は30℃であった。デスマット液はスプレーに吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0288】
(G−d)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0289】
(G−e)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0290】
〔処理(H)〕
(H−a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
パミスの懸濁液(比重1.1g/cm
3)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。
機械的粗面化処理は、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
【0291】
(H−b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/m
2であった。
【0292】
(H−c)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0293】
(H−d)電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形としては、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm
2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm
2)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dm
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0294】
(H−e)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.5g/m
2であった。
【0295】
(H−f)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
【0296】
(H−g)陽極酸化処理
二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0297】
(H−h)シリケート処理
非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて50℃で7秒間ディップしてシリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m
2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0298】
〔下塗層の形成〕
上述のように作製された支持体〔A〕〜〔H〕上に、以下に示す下塗り層塗布液1を塗布した後、80℃で15秒間乾燥し、下塗層を設けて支持体〔A−1〕〜〔H−1〕とした。乾燥後の被覆量は、15mg/m
2であった。
(下塗層塗布液1)
・重量平均分子量2.8万の下記共重合体 0.3部
・メタノール 100部
・水 1部
【0299】
【化40】
【0300】
<画像記録層の形成>
得られた支持体〔A−1〕〜〔H−1〕に、下記組成の下層形成用塗布液組成物(I)を、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.0g/m
2となるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の上層形成用塗布液組成物(II)をワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃、40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.2g/m
2となる平版印刷版原版を得た。
【0301】
(下層形成用塗布液組成物(I))
・表4に記載の特定高分子化合物:3.5部
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量6,000):0.6部
・赤外線吸収剤(IR色素(1):下記構造):0.2部
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン:0.3部
・テトラヒドロフタル酸:0.4部
・p−トルエンスルホン酸:0.02部
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート:0.06部
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシナフタレンスルホン酸に変えたもの:0.15部
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製):0.07部
・メチルエチルケトン:30部
・1−メトキシ−2−プロパノール:15部
・N,N−ジメチルアセトアミド:15部
【0302】
【化41】
【0303】
(上層形成用塗布液組成物(II))
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール/フェノール=3/2/5、Mw8,000):0.68部
・赤外線吸収剤(IR色素(1):上記構造):0.045部
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製):0.03部
・メチルエチルケトン:15.0部
・1−メトキシ−2−プロパノール:30.0部
・1−(4−メチルベンジル)−1−フェニルピペリジニウムの5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホン酸塩:0.01部
【0304】
得られた平版印刷版原版を用いて、以下の評価を行い、結果を下記表4に示す。
【0305】
<非画像部現像時間の評価>
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter VXにて露光エネルギーを変えてテストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液XP−D(希釈して、電導度を43mS/cmとしたもの、pH13.1)を仕込んだ現像浴に浸漬させ、現像温度30℃で非画像部の現像に要する時間を測定した。画像濃度が、Al支持体の画像濃度と同等となった浸漬時間を非画像部現像時間とした。結果を表4に示す。
非画像部現像時間が短いほど、アルカリ水溶液現像性が良好である。結果を表4に示す。
【0306】
<耐刷性の評価>
平版印刷版原版をCreo社製Trendsetterにて、ビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmで、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液XP−D(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの、pH13.1)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサーLP940Hを用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像を行った。これを、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて連続して印刷した。インキとしては、低品位資材のモデルとして、炭酸カルシウムを含有させた東洋特練墨インキを使用した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。枚数が多いほど耐刷性に優れるものと評価する。結果を表4に示す。
また、PSプロセッサーLP940Hの代わりにPSプロセッサーXP−940Rを用い電導度を管理しながら現像を行った以外は、上記と同じ条件で耐刷性を評価したところ、全ての実施例及び比較例において、PSプロセッサーLP940Hを使用した場合と結果は変わらなかった。
【0307】
<耐薬品性の評価>
実施例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光・現像及び印刷を行った。この際、5,000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム(株)製、MC-E)を含ませたPSスポンジで版面を5往復拭く工程を加え、耐薬品性を評価した。この時の耐刷性が、前述の耐刷枚数の95%以上100以下%であるものを1、80%以上95%未満であるものを2、60以上80%未満であるものを3、60%未満を4とした。クリーナーで版面を拭く工程を加えた場合であっても、耐刷指数に変化が小さいほど耐薬品性に優れるものと評価する。結果を以下の表4に示す。
【0308】
【表4】
【0309】
<CP−1の合成例>
コンデンサー、撹拌機を取り付けた三口丸底フラスコに、下記化合物CP−1−1を62.53g、1,4−フェニレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製)を48.0g、イソホロンジイソシアネート(東京化成工業(株)製)を44.45g、下記化合物CP−1−2(82.08g)、N,N−ジメチルアセトアミド(800g、和光純薬工業(株)製)、及びジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ(5滴、東京化成工業(株)製)を入れ、100℃で8時間加熱した。その後、メタノール(100ml)、N,N−ジメチルアセトアミド(800g)にて希釈した。反応溶液を水(4L)中に撹拌しながら投入し、白色のポリマーを析出させた。このポリマーを濾別し、水で洗浄後、真空乾燥させることにより、ポリウレタン樹脂(CP−1)(51.35g)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(CP−1)の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算で5.1万であり、酸価は0.72meq/gであった。
【0310】
【化42】
【0311】
撹拌機及び加熱装置付きのフラスコ中に、メタノール30gと、N,N−ジメチルアセトアミド5gを投入した。次いで、カテコール13.87g(0.126モル)と、N,N’−ジメチロールウレア13.76g(0.115モル)を添加した。これを室温で撹拌しながら濃塩酸6g(12規定)を加えた後、加熱を開始し55℃に達したら、そのまま温度を保ち、55〜60℃で5時間反応させた。この反応溶液を400mlの水中に撹拌しながら注ぐと、淡黄色の固形物が析出した。これを濾別後、乾燥して、20gのCP−2を得た。この際の収率は72%であった。得られたポリウレア樹脂(CP−2)の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算で4.7万であった。
【0312】
【化43】
【0313】
表4の結果より明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合、現像性及び耐刷性が向上していることが分かる。
【0314】
(実施例32〜62、比較例3〜4)
<支持体の作製>
実施例1〜31及び比較例1〜2と同様にして、支持体〔A〕〜〔H〕を作製した。
【0315】
<下塗層の形成>
上述のように作製された支持体〔A〕〜〔H〕上に、以下に示す下塗層塗布液2を塗布した後、80℃で15秒間乾燥し、下塗層を設けて支持体〔A−1〕〜〔H−1〕とした。乾燥後の被覆量は、15mg/m
2であった。
(下塗層塗布液2)
・β−アラニン:0.5部
・メタノール:95部
・水:5部
【0316】
<記録層の形成>
得られた支持体〔A−1〕〜〔H−1〕に、下記組成の下層形成用塗布液組成物(V)を、塗布量が1.5g/m
2となるようワイヤーバーで塗布したのち、160℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却し、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の上層形成用塗布液組成物(VI)を塗布量が0.5g/m
2になるようワイヤーバーで塗布したのち、130℃で40秒間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷し、上層を設け、平版印刷版原版を得た。
【0317】
(下層形成用塗布液組成物(V))
・表5に記載の特定高分子化合物:0.8部
・赤外線吸収剤(IR色素(1):上記構造):0.017部
・クリスタルヴァイオレット(保土ヶ谷化学(株)製):0.017部
・メガファックF−177(DIC(株)製、フッ素系界面活性剤):0.015部
・N,N−ジメチルアセトアミド:10部
・メチルエチルケトン:10部
・1−メトキシ−2−プロパノール:8部
【0318】
(上層形成用塗布液組成物(VI))
・スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマー(組成比69mol%/25mol%/6mol%、重量平均分子量 45,000):20部
・アルカリ可溶性樹脂:下記ポリウレタン1:10部
・エチルバイオレット:0.03部
・メガファックF−177(DIC(株)製、フッ素系界面活性剤):0.05部
・3−ペンタノン:60部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル−2−アセテート:8部
【0319】
(ポリウレタン1)
下記式で表されるジイソシアネート化合物とジオール化合物とを1:1のモル比となるように重合させた(重量平均分子量36,000)。
【0320】
【化44】
【0321】
得られた平版印刷版原版に対して、現像処理にKodak(株)製現像液Goldstar Premium Plate Developer(pH13.0)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー FLH 85Pを用い、液温を23℃に保ち、現像時間を40秒とした以外は実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0322】
【表5】
【0323】
表5の結果より明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合、現像性、耐刷性が向上していることが分かる。
【0324】
(実施例63〜93、比較例5〜6)
<支持体の作製>
実施例1〜31及び比較例1〜2と同様にして、支持体〔A〕〜〔H〕を作製した。
<下塗層の形成>
実施例1〜31と同様にして、下塗層を有する支持体〔A−1〕〜〔H−1〕を作製した。
【0325】
<記録層の形成>
得られた支持体〔A−1〕〜〔H−1〕に、下記組成の塗布液組成物(IX)を、ワイヤーバーで塗布したのち、140℃の乾燥オーブンで50秒間乾燥して塗布量を1.0g/m
2となる平版印刷版原版を得た。
【0326】
(塗布液組成物(IX))
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量5,000):0.474部
・表6に記載の特定高分子化合物:2.37部
・赤外線吸収剤(上記IR色素(1)):0.155部
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート:0.03部
・テトラヒドロ無水フタル酸:0.19部
・エチルバイオレット対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの:0.11部
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製):0.07部
・p−トルエンスルホン酸:0.008部
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン:0.13部
・3,3’−チオジプロピオン酸ジミリスチル:0.04部
・ラウリルステアレート:0.02部
・N,N−ジメチルアセトアミド:13部
・メチルエチルケトン:24部
・1−メトキシ−2−プロパノール:11部
【0327】
得られた平版印刷版原版に対して、現像処理に富士フイルム(株)製現像液LH−DS(pH13.5)を用いた以外は実施例1と同様の条件で評価を行った結果を下記表6に示す。
【0328】
【表6】
【0329】
表6の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合、現像性、耐刷性が向上していることが分かる。
【0330】
(実施例94〜124、比較例7〜8)
下層形成用塗布液組成物(I)のN,N’−ジメチルアセトアミドをジメチルスルホキシドに変更した以外は、実施例1〜31及び比較例1〜2と同様にして、平版印刷版原版の作製、評価を行った。評価結果は表7に記載した。
【0331】
【表7】
【0332】
表7の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合、現像性、耐刷性が向上していることが分かる。
【0333】
(実施例125〜155、比較例9〜10)
下層形成用塗布液組成物(V)のN,N’−ジメチルアセトアミドをジメチルスルホキシドに変更した以外は、実施例32〜62及び比較例3〜4と同様にして、平版印刷版原版の作製、評価を行った。評価結果は表8に記載した。
【0334】
【表8】
【0335】
表8の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合、現像性、耐刷性が向上していることが分かる。
【0336】
(実施例156〜186、比較例11〜12)
塗布液組成物(IX)のN,N’−ジメチルアセトアミドをジメチルスルホキシドに変更した以外は、実施例63〜93及び比較例5〜6と同様にして、平版印刷版原版の作製、評価を行った。評価結果は表9に記載した。
【0337】
【表9】
【0338】
表9の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合、現像性、耐刷性が向上していることが分かる。