特許第6243032号(P6243032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243032有機半導体膜形成用組成物、並びに、有機半導体素子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243032
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】有機半導体膜形成用組成物、並びに、有機半導体素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20171127BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 513/06 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 495/22 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 495/14 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 498/06 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 517/06 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 493/04 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 498/04 20060101ALI20171127BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20171127BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   H01L29/28 220A
   H01L29/78 618B
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 310J
   H01L29/78 618A
   C07D513/06
   C07D495/04 101
   C07D495/22
   C07D495/14 A
   C07D498/06
   C07D517/06
   C07D487/04 136
   C07D495/04 103
   C07D493/04 101A
   C07D487/04 137
   C07D498/04 101
   C07F7/18 X
   !C07F7/08 W
【請求項の数】20
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2016-534377(P2016-534377)
(86)(22)【出願日】2015年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2015069504
(87)【国際公開番号】WO2016009890
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2016年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2014-147505(P2014-147505)
(32)【優先日】2014年7月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-132597(P2015-132597)
(32)【優先日】2015年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 俊博
(72)【発明者】
【氏名】益居 健介
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴文
(72)【発明者】
【氏名】金山 修二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕之
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/098372(WO,A1)
【文献】 特開2009−283786(JP,A)
【文献】 特開2010−180151(JP,A)
【文献】 特開2014−082248(JP,A)
【文献】 特開2014−082247(JP,A)
【文献】 特開2014−063969(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/147523(WO,A1)
【文献】 米国特許第8372312(US,B1)
【文献】 国際公開第2010/000670(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/204295(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/062598(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/30
H01L 51/05
H01L 51/40
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合多環芳香族基を有し、前記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、前記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、前記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体と、
ガラス転移温度が−100℃以上−30℃以下、かつ弾性回復率が30%以下となるポリマーを含むことを特徴とする
有機半導体膜形成用組成物。
【請求項2】
前記ポリマーの表面エネルギーが、30mN/m以下である、請求項1に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂である、請求項1又は2に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン−天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー及びポリブタジエンゴムよりなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【請求項5】
前記縮合多環芳香族基中の環数が5又は6である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【請求項6】
前記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、前記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子が含まれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【請求項7】
前記有機半導体が、式1〜式16のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
式1中、A1a及びA1bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R1a〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1a〜R1fのうち少なくとも1つが下記式Wで表される基である。
−L−R (W)
式W中、Lは下記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表し、Rはアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、トリアルキルシリル基を表す。
【化5】
式L−1〜式L−25中、*はRとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表し、式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、式L−20及び式L−24におけるRは水素原子又は置換基を表し、式L−25におけるRsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式2中、X2a及びX2bはそれぞれ独立に、NR2i、O原子又はS原子を表し、A2aはCR2g又はN原子を表し、A2bはCR2h又はN原子を表し、R2iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、R2a〜R2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R2a〜R2hのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式3中、X3a及びX3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR3gを表し、A3a及びA3bはそれぞれ独立に、CR3h又はN原子を表す。R3a〜R3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R3a〜R3hのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式4中、X4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、R4a〜R4j、R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は前記式Wで表される基を表し、かつ、R4a〜R4j、R4k及びR4mのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基であり、ただし、R4e及びR4fのうち少なくとも一方が前記式Wで表される基である場合はR4e及びR4fが表す前記式WにおいてLは前記式L−2又は式L−3で表される二価の連結基である。
式5中、X5a及びX5bはそれぞれ独立に、NR5i、O原子又はS原子を表し、A5aはCR5g又はN原子を表し、A5bはCR5h又はN原子を表し、R5iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R5a〜R5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R5a〜R5hのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式6中、X6a〜X6dはそれぞれ独立に、NR6g、O原子又はS原子を表し、R6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R6a〜R6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R6a〜R6fのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式7中、X7a及びX7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR7iを表し、X7b及びX7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R7a〜R7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7a〜R7iのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式8中、X8a及びX8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR8iを表し、X8b及びX8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R8a〜R8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R8a〜R8iのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式9中、X9a及びX9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は前記式Wで表される基を表し、R9a、R9b、R9e及びR9fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
式10中、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは前記式Wで表される置換基を表し、X10a及びX10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR10iを表し、R10iはそれぞれ独立に、水素原子又は前記式Wで表される基を表す。
式11中、X11a及びX11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR11nを表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式12中、X12a及びX12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR12nを表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式13中、X13a及びX13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR13nを表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式14中、X14a〜X14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR14iを表し、R14a〜R14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R14a〜R14iのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式15中、X15a〜X15dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR15gを表し、R15a〜R15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R15a〜R15gのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式16中、X16a〜X16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR16gを表し、R16a〜R16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R16a〜R16gのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
【請求項8】
前記有機半導体が、前記式1〜式9又は式15で表される化合物を少なくとも1種含む、請求項7に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【請求項9】
更に、ポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物。
【請求項10】
縮合多環芳香族基を有し、前記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、前記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、前記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体と、
ガラス転移温度が−100℃以上−30℃以下、かつ弾性回復率が30%以下となるポリマーと、を含むことを特徴とする
有機半導体素子。
【請求項11】
前記ポリマーの表面エネルギーが、30mN/m以下である、請求項10に記載の有機半導体素子。
【請求項12】
前記ポリマーが、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂である、請求項10又は11に記載の有機半導体素子。
【請求項13】
前記ポリマーが、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン−天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー及びポリブタジエンゴムよりなる群から選択された少なくとも1種である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
【請求項14】
前記有機半導体とゲート絶縁膜との間に前記ポリマー層を有する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
【請求項15】
前記有機半導体と前記ポリマー層との間に、ポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む層を有する、請求項14に記載の有機半導体素子。
【請求項16】
前記縮合多環芳香族基中の環数が5又は6である、請求項10〜15のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
【請求項17】
前記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、前記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子が含まれる、請求項10〜16のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
【請求項18】
前記有機半導体が、式1〜式16のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含む、請求項10〜17のいずれか1項に記載の有機半導体素子。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
式1中、A1a及びA1bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R1a〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1a〜R1fのうち少なくとも1つが下記式Wで表される基である。
−L−R (W)
式W中、Lは下記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表し、Rはアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、トリアルキルシリル基を表す。
【化10】
式L−1〜式L−25中、*はRとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表し、式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、式L−20及び式L−24におけるRは水素原子又は置換基を表し、式L−25におけるRsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式2中、X2a及びX2bはそれぞれ独立に、NR2i、O原子又はS原子を表し、A2aはCR2g又はN原子を表し、A2bはCR2h又はN原子を表し、R2iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、R2a〜R2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R2a〜R2hのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式3中、X3a及びX3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR3gを表し、A3a及びA3bはそれぞれ独立に、CR3h又はN原子を表す。R3a〜R3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R3a〜R3hのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式4中、X4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、R4a〜R4j、R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は前記式Wで表される基を表し、かつ、R4a〜R4j、R4k及びR4mのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基であり、ただし、R4e及びR4fのうち少なくとも一方が前記式Wで表される基である場合はR4e及びR4fが表す前記式WにおいてLは前記式L−2又は式L−3で表される二価の連結基である。
式5中、X5a及びX5bはそれぞれ独立に、NR5i、O原子又はS原子を表し、A5aはCR5g又はN原子を表し、A5bはCR5h又はN原子を表し、R5iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R5a〜R5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R5a〜R5hのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式6中、X6a〜X6dはそれぞれ独立に、NR6g、O原子又はS原子を表し、R6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R6a〜R6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R6a〜R6fのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式7中、X7a及びX7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR7iを表し、X7b及びX7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R7a〜R7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7a〜R7iのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式8中、X8a及びX8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR8iを表し、X8b及びX8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R8a〜R8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R8a〜R8iのうち少なくとも1つが前記式Wで表される基である。
式9中、X9a及びX9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は前記式Wで表される基を表し、R9a、R9b、R9e及びR9fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
式10中、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは前記式Wで表される置換基を表し、X10a及びX10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR10iを表し、R10iはそれぞれ独立に、水素原子又は前記式Wで表される基を表す。
式11中、X11a及びX11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR11nを表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式12中、X12a及びX12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR12nを表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式13中、X13a及びX13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR13nを表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式14中、X14a〜X14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR14iを表し、R14a〜R14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R14a〜R14iのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式15中、X15a〜X15dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR15gを表し、R15a〜R15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R15a〜R15gのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
式16中、X16a〜X16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR16gを表し、R16a〜R16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R16a〜R16gのうち少なくとも1つは前記式Wで表される基である。
【請求項19】
前記有機半導体が、前記式1〜式9又は式15で表される化合物を少なくとも1種含む、請求項18に記載の有機半導体素子。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機半導体膜形成用組成物を基板上に塗布する塗布工程、を含む有機半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体膜形成用組成物、並びに、有機半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化、低コスト化、柔軟化が可能であることから、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに用いられるFET(電界効果トランジスタ)、RFID(Radio Frequency Identifier、RFタグ)等に、有機半導体膜(有機半導体層)を有する有機トランジスタが利用されている。
有機半導体膜の作製方法としては、種々の方法が提案されている。例えば、有機半導体膜を形成する組成物としては、特許文献1及び2に記載された組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−516054号公報
【特許文献2】特開2014−13920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、得られる有機半導体膜の移動度及び熱安定性に優れる有機半導体膜形成用組成物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、有機半導体膜の移動度及び熱安定性に優れる有機半導体素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<10>又は<20>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<9>及び<11>〜<19>とともに以下に記載する。
<1>縮合多環芳香族基を有し、上記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、上記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、上記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体と、ガラス転移温度が−100℃以上−30℃以下、かつ弾性回復率が30%以下となるポリマーを含むことを特徴とする有機半導体膜形成用組成物、
<2>上記ポリマーの表面エネルギーが、30mN/m2以下である、<1>に記載の有機半導体膜形成用組成物、
<3>上記ポリマーが、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂である、<1>又は<2>に記載の有機半導体膜形成用組成物、
<4>上記ポリマーが、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン−天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー及びポリブタジエンゴムよりなる群から選択された少なくとも1種である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の有機半導体膜形成用組成物、
<5>上記縮合多環芳香族基中の環数が5又は6である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の有機半導体膜形成用組成物、
<6>上記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、上記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子が含まれる、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の有機半導体膜形成用組成物、
<7>上記有機半導体が、式1〜式16のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含む、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の有機半導体膜形成用組成物、
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】
【0010】
式1中、A1a及びA1bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R1a〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1a〜R1fのうち少なくとも1つが下記式Wで表される基である。
−LW−RW (W)
式W中、LWは下記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表し、RWはアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、トリアルキルシリル基を表す。
【0011】
【化5】
【0012】
式L−1〜式L−25中、*はRWとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表し、式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、式L−20及び式L−24におけるRNは水素原子又は置換基を表し、式L−25におけるRsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式2中、X2a及びX2bはそれぞれ独立に、NR2i、O原子又はS原子を表し、A2aはCR2g又はN原子を表し、A2bはCR2h又はN原子を表し、R2iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、R2a〜R2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R2a〜R2hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式3中、X3a及びX3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR3gを表し、A3a及びA3bはそれぞれ独立に、CR3h又はN原子を表す。R3a〜R3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R3a〜R3hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式4中、X4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、R4a〜R4j、R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式Wで表される基を表し、かつ、R4a〜R4j、R4k及びR4mのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基であり、ただし、R4e及びR4fのうち少なくとも一方が上記式Wで表される基である場合はR4e及びR4fが表す上記式WにおいてLWは上記式L−2又は式L−3で表される二価の連結基である。
【0013】
式5中、X5a及びX5bはそれぞれ独立に、NR5i、O原子又はS原子を表し、A5aはCR5g又はN原子を表し、A5bはCR5h又はN原子を表し、R5iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R5a〜R5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R5a〜R5hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式6中、X6a〜X6dはそれぞれ独立に、NR6g、O原子又はS原子を表し、R6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R6a〜R6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R6a〜R6fのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式7中、X7a及びX7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR7iを表し、X7b及びX7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R7a〜R7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7a〜R7iのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式8中、X8a及びX8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR8iを表し、X8b及びX8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R8a〜R8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R8a〜R8iのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
【0014】
式9中、X9a及びX9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式Wで表される基を表し、R9a、R9b、R9e及びR9fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
式10中、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは上記式Wで表される置換基を表し、X10a及びX10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR10iを表し、R10iはそれぞれ独立に、水素原子又は上記式Wで表される基を表す。
式11中、X11a及びX11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR11nを表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式12中、X12a及びX12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR12nを表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
【0015】
式13中、X13a及びX13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR13nを表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式14中、X14a〜X14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR14iを表し、R14a〜R14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R14a〜R14iのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式15中、X15a〜X15dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR15gを表し、R15a〜R15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R15a〜R15gのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式16中、X16a〜X16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR16gを表し、R16a〜R16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R16a〜R16gのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
【0016】
<8>上記有機半導体が、上記式1〜式9又は式15で表される化合物を少なくとも1種含む、<7>に記載の有機半導体膜形成用組成物、
<9>更に、ポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の有機半導体膜形成用組成物、
<10>縮合多環芳香族基を有し、上記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、上記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、上記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体と、ガラス転移温度が−100℃以上−30℃以下、かつ弾性回復率が30%以下となるポリマーと、を含むことを特徴とする有機半導体素子、
<11>上記ポリマーの表面エネルギーが、30mN/m2以下である、<10>に記載の有機半導体素子、
<12>上記ポリマーが、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂である、<10>又は<11>に記載の有機半導体素子、
<13>上記ポリマーが、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン−天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー及びポリブタジエンゴムよりなる群から選択された少なくとも1種である、<10>〜<12>のいずれか1つに記載の有機半導体素子、
<14>上記有機半導体とゲート絶縁膜との間に上記ポリマー層を有する、<10>〜<13>のいずれか1つに記載の有機半導体素子、
<15>前記有機半導体と前記ポリマー層との間に、ポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む層を有する、<14>に記載の有機半導体素子、
<16>上記縮合多環芳香族基中の環数が5又は6である、<10>〜<15>のいずれか1つに記載の有機半導体素子、
<17>上記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、上記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子が含まれる、<10>〜<16>のいずれか1つに記載の有機半導体素子、
<18>上記有機半導体が、上記式1〜式16のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含む、<10>〜<17>のいずれか1つに記載の有機半導体素子、
<19>上記有機半導体が、上記式1〜式9又は式15で表される化合物を少なくとも1種含む、<18>に記載の有機半導体素子、
<20><1>〜<9>のいずれか1つに記載の有機半導体膜形成用組成物を基板上に塗布する塗布工程、を含む有機半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、得られる有機半導体膜の移動度及び熱安定性に優れる有機半導体膜形成用組成物を提供することができた。
また、本発明によれば、有機半導体膜の移動度及び熱安定性に優れる有機半導体素子及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の有機半導体素子の一態様の断面模式図である。
図2】本発明の有機半導体素子の別の一態様の断面模式図である。
図3】実施例で使用したメタルマスクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものとともに置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本発明において、「移動度」との記載は、キャリア移動度を意味し、電子移動度及びホール移動度のいずれか、又は、双方を意味する。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい。
【0020】
(有機半導体膜形成用組成物)
本発明の有機半導体膜形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、縮合多環芳香族基を有し、前記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、前記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、前記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体と、ガラス転移温度が−100℃以上−30℃以下、かつ弾性回復率が30%以下となるポリマーを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記特定構造の有機半導体と、上記特定のポリマーとを含有することにより、得られる有機半導体膜の移動度及び熱安定性に優れることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
詳細な効果の発現機構については不明であるが、熱安定性については、上記特定のポリマーを併用することにより、加熱時に有機半導体膜における有機半導体結晶にかかる応力を緩和することができ、熱安定性に優れるものと推定され、移動度については、上記特定のポリマーを用いることにより、上記特定構造の有機半導体の成膜性や結晶形成性が向上し、移動度に優れるものと推定される。
【0022】
<有機半導体>
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、縮合多環芳香族基を有し、上記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、上記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、上記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択される少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体(以下、「特定有機半導体」又は「成分A」ともいう。)を含有する。
ただし、成分Aにおける縮合多環芳香族基中の部分構造には、アントラセン環は含まれない。上記部分構造にアントラセン環を含んだ場合、理由は不明であるが、得られる有機半導体膜の移動度及び熱安定性がともに劣化する。
なお、縮合多環芳香族基とは、芳香族環が複数縮合して得られる基である。
芳香族環としては、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環)及び芳香族複素環(例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、イミダゾール環)が挙げられる。
【0023】
成分A中には、縮合多環芳香族基(縮合多環芳香族構造)が含まれるが、この基が主成分として含まれることが好ましい。ここで主成分とは、縮合多環芳香族基の分子量の含有量が、成分Aの全分子量に対して、30%以上であることを意図し、40%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、溶解性の点から、80%以下であることが好ましい。
縮合多環芳香族基は、複数の環が縮合して形成される環構造であり、芳香族性を示す。
成分Aにおける縮合多環芳香族基中の環数は4以上であり、有機半導体としての移動度の観点から、4〜9が好ましく、4〜7がより好ましく、5又は6が更に好ましい。
また、上記縮合多環芳香族基中、少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1種の原子を含み、有機半導体としての移動度の観点から、2〜6つの環が上記原子を含むことが好ましく、2〜4つの環が上記原子を含むことがより好ましい。
また、有機半導体としての移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、上記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子を有することが好ましい。ヘテロ原子の種類は特に制限されず、O原子(酸素原子)、S原子(硫黄原子)、N原子(窒素原子)、Se原子(セレン原子)などが挙げられる。
成分Aにおける縮合多環芳香族基中には、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造が含まれる。なお、上記部分構造としては、アントラセン環は含まれない。
また、成分Aは、有機半導体としての移動度の観点から、チオフェン環構造及び/又はセレノフェン環構造を少なくとも有することが好ましく、チオフェン環構造を少なくとも有することがより好ましく、成分Aが有する複素環構造が全てチオフェン環構造であることが更に好ましい。
【0024】
上記縮合多環芳香族基としては、有機半導体としての移動度の観点から、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択されたいずれか少なくとも1つの構造を含み、2つ以上のチオフェン環を含み、環数が4つ以上の縮合多環芳香族基が好ましい。中でも、部分構造として、ベンゼン環を含み、2つ以上のチオフェン環とを含み、環数が4つ以上の縮合多環芳香族基がより好ましい。
また、上記縮合多環芳香族基としては、有機半導体としての移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中のチオフェン環の数は、3つ以上が好ましく、3〜5つがより好ましく、3〜4つが更に好ましく、3つが特に好ましい。
また、有機半導体としての移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中の環数は、4〜6つが好ましく、5〜6つがより好ましく、5つが更に好ましい。上記縮合多環芳香族基としては、2つのベンゼン環と、3つのチオフェン環とを含み、かつ、環数が5つである縮合多環芳香族基であることが特に好ましい。
【0025】
更に、縮合多環芳香族基としては、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1種の原子を含む環(複素環。好ましくは、チオフェン環)と、ベンゼン環とが交互に縮合(縮環)した基(縮合してなる基)が好ましく挙げられる。
【0026】
成分Aとしては、有機半導体としての移動度の観点から、式1〜式16のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、式1〜式16のいずれかで表される1種以上の化合物であることがより好ましい。
本発明の組成物中には、1種のみの成分Aが含まれていても、2種以上の成分Aが含まれていてもよい。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
式1中、A1a及びA1bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R1a〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1a〜R1fのうち少なくとも1つが下記式Wで表される基である。
−L−R (W)
式W中、Lは下記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表し、Rはアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、トリアルキルシリル基を表す。
【0032】
【化10】
【0033】
式L−1〜式L−25中、*はRとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表し、式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、式L−20及び式L−24におけるRは水素原子又は置換基を表し、式L−25におけるRsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式2中、X2a及びX2bはそれぞれ独立に、NR2i、O原子又はS原子を表し、A2aはCR2g又はN原子を表し、A2bはCR2h又はN原子を表し、R2iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、R2a〜R2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R2a〜R2hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式3中、X3a及びX3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR3gを表し、A3a及びA3bはそれぞれ独立に、CR3h又はN原子を表す。R3a〜R3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R3a〜R3hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式4中、X4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、R4a〜R4j、R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式Wで表される基を表し、かつ、R4a〜R4j、R4k及びR4mのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基であり、ただし、R4e及びR4fのうち少なくとも一方が上記式Wで表される基である場合はR4e及びR4fが表す上記式WにおいてLは上記式L−2又は式L−3で表される二価の連結基である。
【0034】
式5中、X5a及びX5bはそれぞれ独立に、NR5i、O原子又はS原子を表し、A5aはCR5g又はN原子を表し、A5bはCR5h又はN原子を表し、R5iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R5a〜R5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R5a〜R5hのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式6中、X6a〜X6dはそれぞれ独立に、NR6g、O原子又はS原子を表し、R6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R6a〜R6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R6a〜R6fのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式7中、X7a及びX7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR7iを表し、X7b及びX7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R7a〜R7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7a〜R7iのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
式8中、X8a及びX8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR8iを表し、X8b及びX8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R8a〜R8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R8a〜R8iのうち少なくとも1つが上記式Wで表される基である。
【0035】
式9中、X9a及びX9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式Wで表される基を表し、R9a、R9b、R9e及びR9fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
式10中、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは上記式Wで表される置換基を表し、X10a及びX10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR10iを表し、R10iはそれぞれ独立に、水素原子又は上記式Wで表される基を表す。
式11中、X11a及びX11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR11nを表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式12中、X12a及びX12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR12nを表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
【0036】
式13中、X13a及びX13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR13nを表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式14中、X14a〜X14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR14iを表し、R14a〜R14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R14a〜R14iのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式15中、X15a〜X15dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR15gを表し、R15a〜R15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R15a〜R15gのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
式16中、X16a〜X16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR16gを表し、R16a〜R16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R16a〜R16gのうち少なくとも1つは上記式Wで表される基である。
【0037】
−式1で表される化合物−
【0038】
【化11】
【0039】
式1において、A1a及びA1bはそれぞれ独立に、S原子(硫黄原子)、O原子(酸素原子)又はSe原子(セレン原子)を表す。A1a及びA1bはS原子又はO原子が好ましい。また、A1a及びA1bは互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
式1において、R1a〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R1a〜R1fのうち少なくとも1つが後述する式Wで表される基である。
【0040】
式1で表される化合物は、後述する式Wで表される基以外のその他の置換基を有していてもよい。
式1のR1a〜R1fがとり得る置換基の種類は特に制限されないが、以下に説明する置換基Xが挙げられる。置換基Xとしては、後述する式Wで表される基、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む。)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。なお、本明細書の式1〜式16においては、「置換基」としては、上記置換基Xが好ましく挙げられる。
これらの中でも、後述する式Wで表される基以外の基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜3の置換又は無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のメチルチオ基、フェニル基がより好ましく、フッ素原子、炭素数1〜3の置換又は無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のメチルチオ基が特に好ましい。
【0041】
式1で表される化合物中において、R1a〜R1fのうち、式Wで表される基以外のその他の置換基の個数は0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
また、これら置換基は、更に上記置換基Xを有していてもよい。
中でも、R1c〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、置換若しくは無置換のメチルチオ基であることが好ましい。
【0042】
次に、式Wで表される基について説明する。
−L−R (W)
式W中、Lは下記式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基、又は、二以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表す。
【0043】
【化12】
【0044】
式L−1〜式L−25中、*はRとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表す。より具体的には、例えば、式1で表される化合物においては、波線部分は式1で表される骨格を形成する環と結合する。なお、後述するように、式Wが他の化合物に含まれる場合、波線部分は各化合物の骨格を形成する環と結合する。
なお、Lが式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基が2つ以上結合した二価の連結基を表す場合、一方の連結基の*が、他方の連結基の波線部分と結合する。
式L−13〜式L−24におけるR’の結合位置及びRとの結合位置*は、芳香環又は複素芳香環上の任意の位置をとることができる。
式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式L−1及び式L−2中のR’はそれぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよい。
【0045】
これらの中でも、式L−17〜式L−21、式L−23及び式L−24のいずれかで表される二価の連結基は、下記式L−17A〜式L−21A、式L−23A及び式L−24Aで表される二価の連結基であることがより好ましい。
【0046】
【化13】
【0047】
ここで、置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、式Wにおける−R単独と解釈することもでき、式Wにおける−L−Rと解釈することもできる。
本発明では、主鎖が炭素数N個の置換又は無置換のアルキル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で式Wにおける−L−Rと解釈することとし、具体的には「式WにおけるLに相当する式L−1で表される基1個」と「式WにおけるRに相当する主鎖が炭素数N−1個の置換又は無置換のアルキル基」とが結合した置換基として解釈する。例えば、炭素数8のアルキル基であるn−オクチル基が置換基の末端に存在する場合、2個のR’が水素原子である式L−1で表される基1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。
一方、本発明では、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で、式WにおけるR単独と解釈する。例えば、−(OCHCH)−(OCHCH)−(OCHCH)−OCH基が置換基の末端に存在する場合、オキシエチレン単位の繰り返し数vが3のオリゴオキシエチレン基単独の置換基として解釈する。
【0048】
が式L−1〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基が結合した連結基を形成する場合、式L−1〜式L−25のいずれかで表される2価の連結基の結合数は、2〜4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0049】
式L−1、式L−2、式L−6及び式L−13〜式L−24中の置換基R’としては、上記の式1のR1a〜R1fがとり得る置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも、式L−6中の置換基R’はアルキル基であることが好ましく、式L−6中のR’がアルキル基である場合は、アルキル基の炭素数は1〜9であることが好ましく、4〜9であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、5〜9であることが更に好ましい。式L−6中のR’がアルキル基である場合は、アルキル基は直鎖アルキル基であることが、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
式L−20及び式L−24中のRは水素原子又は置換基を表し、Rとしては、上記の式1のR1a〜R1fがとり得る置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも、Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
式L−25中のRsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、アルキル基であることが好ましい。Rsiがとり得るアルキル基としては、特に制限はないが、Rsiがとり得るアルキル基の好ましい範囲は、Rがトリアルキルシリル基である場合にトリアルキルシリル基がとり得るアルキル基の好ましい範囲と同様である。Rsiがとり得るアルケニル基としては、特に制限はないが、置換又は無置換のアルケニル基が好ましく、分枝アルケニル基であることがより好ましく、アルケニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。Rsiがとり得るアルキニル基としては、特に制限はないが、置換又は無置換のアルキニル基が好ましく、分枝アルキニル基であることがより好ましく、アルキニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。
【0050】
は、式L−1〜式L−5、式L−13、式L−17若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基、又は、式L−1〜式L−5、式L−13、式L−17若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基が2以上結合した二価の連結基であることが好ましく、式L−1、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基、又は、式L−1、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基が2以上結合した二価の連結基であることがより好ましく、式L−1、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれかで表される二価の連結基、又は、式L−3、式L−13若しくは式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基とを結合した二価の連結基であることが特に好ましい。
式L−3、式L−13又は式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基が結合した二価の連結基は、式L−1で表される二価の連結基がR側に結合することが好ましい。
また、Lは、化学的安定性、キャリア輸送性の観点から式L−1で表される二価の連結基を含む二価の連結基であることが特に好ましく、式L−1で表される二価の連結基であることがより特に好ましく、Lが式L−1で表される二価の連結基であり、Rが置換又は無置換のアルキル基であることが最も好ましい。
【0051】
式Wにおいて、Rは置換又は無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、置換若しくは無置換のトリアルキルシリル基を表す。
式Wにおいて、Rに隣接するLが式L−1で表される二価の連結基である場合は、Rは置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基であることが好ましく、置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式Wにおいて、Rに隣接するLが式L−2又は式L−4〜式L−25のいずれかで表される二価の連結基である場合は、Rは置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式Wにおいて、Rに隣接するLが式L−3で表される二価の連結基である場合は、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0052】
が置換又は無置換のアルキル基の場合、炭素数は4〜17であることが好ましく、6〜14であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。Rが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
がアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
これらの中でも、式WにおけるRとLの組み合わせとしては、式1中、Lが式L−1で表される二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基であるか、あるいは、Lが式L−3、式L−13又は式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基が結合した二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖のアルキル基であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
が式L−1で表される二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基である場合、Rが直鎖の炭素数7〜14のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点からより好ましく、直鎖の炭素数7〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
が式L−3、式L−13又は式L−18のいずれか1つで表される二価の連結基と式L−1で表される二価の連結基が結合した二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖のアルキル基である場合、Rが直鎖の炭素数4〜17のアルキル基であることがより好ましく、直鎖の炭素数6〜14のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、直鎖の炭素数6〜12のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点から特に好ましい。
一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、Rが分枝アルキル基であることが好ましい。
が置換基を有するアルキル基である場合の置換基としては、ハロゲン原子などを挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、Rがフッ素原子を有するアルキル基である場合はアルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。ただし、Rは無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
がオキシエチレン基の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基の場合、Rが表す「オリゴオキシエチレン基」とは本明細書中、−(OCHCH−OYで表される基のことを言う(オキシエチレン単位の繰り返し数vは2以上の整数を表し、末端のYは、水素原子又は置換基を表す。)。なお、オリゴオキシエチレン基の末端のYが水素原子である場合はヒドロキシ基となる。オキシエチレン単位の繰り返し数vは、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
オリゴオキシエチレン基の末端のヒドロキシ基は封止されていること、すなわちYが置換基を表すことが好ましい。この場合、ヒドロキシ基は、炭素数が1〜3のアルキル基で封止されること、すなわち、Yが炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、Yがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0054】
が、シロキサン基、又は、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基の場合、シロキサン単位の繰り返し数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることが更に好ましい。また、ケイ素原子(Si原子)には、水素原子やアルキル基が結合することが好ましい。ケイ素原子にアルキル基が結合する場合、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基が結合することが好ましい。ケイ素原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基又は水素原子が結合してもよい。また、オリゴシロキサン基を構成するシロキサン単位はすべて同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。
【0055】
に隣接するLが式L−3で表される二価の連結基である場合、Rが置換又は無置換のトリアルキルシリル基であることも好ましい。Rが置換又は無置換のトリアルキルシリル基である場合はその中でも、シリル基の置換基としては、置換又は無置換のアルキル基であれば特に制限はないが、分枝アルキル基であることがより好ましい。ケイ素原子に結合するアルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基やイソプロピル基が結合することが好ましい。ケイ素原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基が結合してもよい。Rがアルキル基上に更に置換基を有するトリアルキルシリル基である場合の置換基としては、特に制限はない。
【0056】
式Wにおいて、L及びRに含まれる炭素数の合計は5〜18であることが好ましい。L及びRに含まれる炭素数の合計が上記範囲の下限値以上であると、キャリア移動度が高くなり、駆動電圧を低くなる。L及びRに含まれる炭素数の合計が上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒に対する溶解性が高くなる。
及びRに含まれる炭素数の合計は、5〜14であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましく、8〜12であることが特に好ましい。
【0057】
式1で表される化合物中において、R1a〜R1fのうち、式Wで表される基の個数は1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
【0058】
本発明では、式1において、R1a及びR1bのうち少なくとも1つが式Wで表される基であることが好ましい。式1における置換位置として、これらの位置が好ましいのは、化合物の化学的安定性に優れ、最高被占軌道(HOMO)準位、分子の膜中でのパッキングの観点からも好適であるためであると考えられる。特に、式1において、R1a及びR1bの2箇所を置換基とすることにより、高いキャリア濃度を得ることができる。
また、式1において、R1c〜R1fがそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、置換若しくは無置換のメチルチオ基であることが好ましい。
【0059】
−式2で表される化合物−
【0060】
【化14】
【0061】
式2中、X2a及びX2bはそれぞれ独立に、NR2i(>N−R2i)、O原子又はS原子を表す。X2a及びX2bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X2a及びX2bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
2a及びX2bは、同じ連結基であることが好ましい。X2a及びX2bはいずれもS原子であることがより好ましい。
2iは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
2iがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0062】
式2中、A2aは、CR2g又はN原子を表し、A2bは、CR2h又はN原子を表し、R2g及びR2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。A2aがCR2gであるか、A2bがCR2hであることが好ましく、A2aがCR2gであり、かつA2bがCR2hであることがより好ましい。A2a及びA2bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
式2において、R2eとR2gとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式2において、R2fとR2hとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
【0063】
式2中、R2a〜R2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つは式Wで表される置換基を表す。
2a〜R2hがそれぞれ独立に、とり得る置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
2a〜R2hがそれぞれ独立に、とり得る置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、式Wで表される置換基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、式Wで表される基がより好ましく、後述の連結基鎖長が3.7Å以下の基及び式Wで表される基が特に好ましく、式Wで表される基がより特に好ましい。
【0064】
式2で表される化合物中、R2a〜R2hのうち、式Wで表される基は1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
2a〜R2hのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R2e又はR2fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
【0065】
2a〜R2hのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0066】
2a〜R2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å(=0.37nm)以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。
ここで、連結基鎖長とはC(炭素原子)−R結合におけるC原子から置換基Rの末端までの長さのことを指す。構造最適化計算は、密度汎関数法(Gaussian03(米ガウシアン社)/基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZ)を用いて行うことができる。なお、代表的な置換基の分子長としては、プロピル基は4.6Å、ピロール基は4.6Å、プロピニル基は4.5Å、プロペニル基は4.6Å、エトキシ基は4.5Å、メチルチオ基は3.7Å、エテニル基は3.4Å、エチル基は3.5Å、エチニル基は3.6Å、メトキシ基は3.3Å、メチル基は2.1Å、水素原子は1.0Åである。
【0067】
2a〜R2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。
2a〜R2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
2a〜R2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
2a〜R2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
2a〜R2hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0068】
−式3で表される化合物−
【0069】
【化15】
【0070】
式3において、R3a〜R3f並びに後述するR3g及びR3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R3a〜R3hのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。
3a〜R3hで表される置換基としては、上記置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
3a〜R3fがそれぞれ独立にとり得る置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又は、式Wで表される置換基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、又は、式Wで表される基がより好ましい。
【0071】
式3において、X3a及びX3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR3g(>N−R3g)を表し、R3gは水素原子又は置換基を表す。Xは、S原子、O原子が好ましい。式3において、X3a及びX3bは、同じであることが好ましい。
3gは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4〜12のアルキル基であることが特に好ましい。R3gが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
3gがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0072】
式3において、A3a及びA3bはそれぞれ独立に、CR3h又はN原子を表し、CR3hを表すことが好ましい。式3において、A3a及びA3bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
3hは連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
3hは、水素原子、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、水素原子、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、又は、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、又は、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、又は、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0073】
−式4で表される化合物−
【0074】
【化16】
【0075】
式4中、X4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。
4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが好ましく、X4a及びX4bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点からより好ましい。X4a及びX4bは、同じ連結基であることが好ましい。X4a及びX4bはいずれもS原子であることが特に好ましい。
【0076】
式(4)中、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。4p及び4qがそれぞれ独立に、0又は1であることが移動度と溶解性を両立する観点から好ましく、4p=4q=0又は4p=4q=1であることがより好ましい。
【0077】
式4中、R4a〜R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、式Wで表される基を表し、かつ、R4a〜R4k及びR4mのうち少なくとも一つは式Wで表される基であり、ただし、R4e及びR4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合は、R4eとR4fとが表す式Wにおいて、Lは上記式L−2又は式L−3で表される二価の連結基である。なお、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0078】
4e及びR4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合は、すなわちR4e及びR4fのうちいずれか一方でも水素原子でもなくハロゲン原子でもない場合に相当する。
4e及びR4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合、R4e及びR4fが表す式Wにおいて、Lは上記式L−3で表される二価の連結基であることが好ましい。
4e及びR4fのうち少なくとも一方が式Wで表される基である場合、R4e及びR4fは、いずれも式Wで表される基であることが好ましい。
なお、R4e及びR4fがともに水素原子又はハロゲン原子の場合、R4a〜R4d、R4g〜R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基であり、かつ、R4a〜R4d、R4g〜R4k及びR4mのうち少なくとも1つ以上は式Wで表される基となる。
【0079】
式4中、R4a〜R4k及びR4mが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子又は塩素原子であることがより好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
【0080】
式4で表される化合物中、R4a〜R4k及びR4mのうち、ハロゲン原子は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0081】
式4で表される化合物中、R4a〜R4k及びR4mのうち、式Wで表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
4a〜R4k及びR4mのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はない。その中でも、本発明では、式4中、R4a、R4d〜R4g、R4j、R4k及びR4mがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子であり、R4b、R4c、R4h及びR4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基であり、かつ、R4b、R4c、R4h及びR4iのうち少なくとも1つは式Wで表される基であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
本発明では、R4a、R4c〜R4h及びR4jがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R4b及びR4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基であり、かつ、少なくとも1つは式Wで表される基であることがより好ましい。
本発明では、R4b及びR4iがともに式Wで表される基であり、かつR4c及びR4hがともに水素原子又はハロゲン原子であるか、R4c及びR4hがともに式Wで表される基であり、かつR4b及びR4iがともに水素原子又はハロゲン原子であることが更に好ましい。
本発明では、R4b及びR4iがともに式Wで表される基であり、かつR4c及びR4hがともに水素原子又はハロゲン原子であるか、R4c及びR4hがともに式Wで表される基であり、かつR4b及びR4iがともに水素原子又はハロゲン原子であることが特に好ましい。
式4において、2以上のR4a〜R4k及びR4mは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
【0082】
−式5で表される化合物−
【0083】
【化17】
【0084】
式5中、X5a及びX5bはそれぞれ独立に、NR5i、O原子又はS原子を表す。X5a及びX5bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X5a及びX5bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X5a及びX5bは、同じ連結基であることが好ましい。X5a及びX5bはいずれもS原子であることがより好ましい。
5iは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
5iがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0085】
式5中、A5aはCR5g又はN原子を表し、A5bはCR5h又はN原子を表し、R5g及びR5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。A5aがCR5gであるか、A5bがCR5hであることが好ましく、A5aがCR5gかつA5bがCR5hであることがより好ましい。A5a及びA5bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0086】
式5において、R5eとR5gとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式5において、R5eとR5iとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式5において、R5fとR5hとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式5において、R5fとR5iは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
【0087】
式5中、R5a〜R5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R5a〜R5hのうち少なくとも1つが式Wで表される基である。
なお、R5a〜R5hで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0088】
式5で表される化合物中、R5a〜R5hのうち、式Wで表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
5a〜R5hのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R5e又はR5fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
5a〜R5hのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
【0089】
5a〜R5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
5a〜R5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
5a〜R5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
5a〜R5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、又は、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
5a〜R5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
5a〜R5hが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、又は、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0090】
−式6で表される化合物−
【0091】
【化18】
【0092】
式6中、X6a〜X6dはそれぞれ独立に、NR6g、O原子又はS原子を表し、R6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
6a〜X6dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X6a〜X6dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X6a〜X6dは、同じ連結基であることが好ましい。X6a〜X6dはいずれもS原子であることがより好ましい。
6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
6gがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0093】
式6中、R6a〜R6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つは式Wで表される基を表す。
なお、R6a〜R6fで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
これらの中でも、R6a〜R6fがそれぞれ独立にとり得る置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、又は、アルキルチオ基、式Wで表される基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、又は、式Wで表される基がより好ましく、後述の連結基鎖長が3.7Å以下の基、又は、式Wで表される基が更に好ましく、式Wで表される基が特に好ましい。
【0094】
式6で表される化合物中、R6a〜R6fのうち、式Wで表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
6a〜R6fのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R6c〜R6fであることが好ましく、R6e又はR6fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点からより好ましい。
【0095】
6a〜R6fのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
6a〜R6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
6a〜R6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
6a〜R6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
6a〜R6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
6a〜R6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
6a〜R6fが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0096】
−式7で表される化合物−
【0097】
【化19】
【0098】
式7中、X7a及びX7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR7i(>N−R7i)を表し、X7b及びX7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表す。X7a〜X7dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X7a〜X7dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X7a〜X7dは、同じ連結基であることが好ましい。X7a〜X7dはいずれもS原子であることがより好ましい。
【0099】
式7中、R7a〜R7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7a〜R7iのうち少なくとも1つが式Wで表される基である。
なお、R7a〜R7iで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R7iは、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数5〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
7iがアルキル基を表す場合、直鎖のアルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖のアルキル基であることが、HOMO軌道の重なりの観点から好ましい。
【0100】
式7で表される化合物中、R7a〜R7iのうち、式Wで表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
7a〜R7iのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R7d又はR7hであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R7d及びR7hがより好ましい。
式7のR7a〜R7iのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
7a〜R7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
7a〜R7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
7a〜R7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
7a〜R7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
7a〜R7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
7a〜R7iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0101】
−式8で表される化合物−
【0102】
【化20】
【0103】
式8中、X8a及びX8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR8iを表し、X8b及びX8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表す。X8a〜X8dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X8a〜X8dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X8a〜X8dは、同じ連結基であることが好ましい。X8a〜X8dはいずれもS原子であることがより好ましい。
【0104】
式8中、R8a〜R8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R8a〜R8iのうち少なくとも1つが式Wで表される基である。
なお、R8a〜R8iで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R8iは、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数5〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
8iがアルキル基を表す場合、直鎖のアルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖のアルキル基であることが、HOMO軌道の重なりの観点から好ましい。
【0105】
式8で表される化合物中、R8a〜R8iのうち、式Wで表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
8a〜R8iのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R8c又はR8gであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R8c及びR8gがより好ましい。
また、式8のR8a〜R8iのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
【0106】
8a〜R8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
8a〜R8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
8a〜R8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
8a〜R8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
8a〜R8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
8a〜R8iが式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式Wで表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
【0107】
−式9で表される化合物−
【0108】
【化21】
【0109】
式9中、X9a及びX9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。中でも、S原子が好ましい。
9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される置換基を表す。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
9a、R9b、R9e及びR9fは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。なお、R9a、R9b、R9e及びR9fで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。
なお、R9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基(ただし、Lは式L−3、式L−5、式L−7〜式L−9、式L−12〜式L−24のいずれかで表される基である。)を表すことが好ましい。中でも、R9c、R9d及びR9g〜R9jは、水素原子がより好ましい。
なお、Lとしては、式L−3、式L−5、式L−13、式L−17又は式L−18のいずれかで表される基であることが好ましい。
9a〜R9iのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表すことが好ましい。
【0110】
式9で表される化合物中、R9a〜R9iのうち、式Wで表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
9a〜R9iのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はないが、R9b又はR9fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R9b及びR9fがより好ましい。
また、式9のR9a〜R9iのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
【0111】
−式10で表される化合物−
【0112】
【化22】
【0113】
式10中、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは式Wで表される基を表す。なお、R10a〜R10hで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
中でも、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。
式10のR10a〜R10hは、R10b及びR10fのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基であることがより好ましく、R10b及びR10fのいずれもが、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基であることが更に好ましく、置換若しくは無置換のフェニルチオ基又は下記群Aから選ばれるヘテロアリールチオ基であることが特に好ましく、置換若しくは無置換のフェニルチオ基又は下記式A−17、式A−18、式A−20で表されるヘテロアリールチオ基であることが最も好ましい。
【0114】
アリールチオ基としては、炭素数6〜20のアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、ナフチルチオ基又はフェニルチオ基がより好ましく、フェニルチオ基が特に好ましい。
ヘテロアリールチオ基としては、3〜10員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、5又は6員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基がより好ましく、下記群Aが特に好ましい。
【0115】
【化23】
【0116】
群A中、R”及びR”はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
群A中、R’はそれぞれ独立に、水素原子又は式Wで表される基を表すことが好ましい。
群A中、R”は、置換基を表すことが好ましく、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基、アルキル基で置換されたアリール基、又は、アルキル基で置換されたヘテロアリール基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基、又は、炭素数1〜4のアルキル基で置換された5員のヘテロアリール基が特に好ましい。
【0117】
アルキルオキシカルボニル基としては、炭素数1〜20のアルキル基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は、2〜15がより好ましく、5〜10が特に好ましい。
【0118】
アリールオキシカルボニル基としては、炭素数6〜20のアリール基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アリール基の炭素数は、6〜15がより好ましく、8〜12が特に好ましい。
【0119】
アルキルアミノ基としては、炭素数1〜20のアルキル基にアミノ基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は、2〜15がより好ましく、5〜10が特に好ましい。
10a〜R10hのうち、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基以外の置換基(以下、他の置換基ともいう。)は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
【0120】
10a及びX10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR(>N−R)を表す。X10a及びX10bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X10a及びX10bは、同じ連結基であることが好ましい。X10a及びX10bは、いずれもS原子であることがより好ましい。
はそれぞれ独立に、水素原子又は式Wで表される基を表す。式Wで表される基の定義は上述の通りである。
【0121】
−式11で表される化合物−
【0122】
【化24】
【0123】
式11中、X11a及びX11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR11nを表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
【0124】
式11中、X11a及びX11bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X11a及びX11bは、同じ連結基であることが好ましい。X11a及びX11bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式11のR11a〜R11k及びR11mは、R11c及びR11iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R11c及びR11iのいずれもが、置換若しくは無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
【0125】
−式12で表される化合物−
【0126】
【化25】
【0127】
式12中、X12a及びX12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR12nを表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nのうち少なくとも1つは式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される置換基の定義は、上述の通りである。
【0128】
式12中、X12a及びX12bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X12a及びX12bは、同じ連結基であることが好ましい。X12a及びX12bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式12のR12a〜R12k及びR12mは、R12c及びR12iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R12c及びR12iのいずれもが、置換又は無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
【0129】
−式13で表される化合物−
【0130】
【化26】
【0131】
式13中、X13a及びX13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR13nを表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0132】
式13中、X13a及びX13bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X13a及びX13bは、同じ連結基であることが好ましい。X13a及びX13bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式13のR13a〜R13k及びR13mは、R13c及びR13iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R13c及びR13iのいずれもが、置換若しくは無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
【0133】
−式14で表される化合物−
【0134】
【化27】
【0135】
式14中、X14a〜X14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR14iを表し、R14a〜R14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R14a〜R14iのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R14a〜R14hの少なくとも1つが式Wで表される基であり、Rがアルキル基である場合には、Lは式L−2〜式L−25のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0136】
式14中、X14a〜X14cのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X14a〜X14cは、同じ連結基であることが好ましい。X14a〜X14cはいずれもS原子であることがより好ましい。
がアルキル基である場合のLとしては、式L−2〜式L−5、式L−13、式L−17、又は、式L−18のいずれかで表される基が好ましく、式L−3、式L−13、又は、式L−18のいずれかで表される基がより好ましい。
式14のR14a〜R14hは、R14b及びR14gのうち少なくとも1つが、式Wで表される基であることが好ましく、R14b及びR14gのいずれもが、式Wで表される基であることがより好ましい。
【0137】
−式15で表される化合物−
【0138】
【化28】
【0139】
式15中、X15a〜X15dはそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子又はNR15gを表し、R15a〜R15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R15a〜R15gのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
【0140】
式15中、X15a〜X15dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X15a〜X15dは、同じ連結基であることが好ましい。X15a〜X15dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式15のR15a〜R15fは、R15b及びR15eのうち少なくとも1つが、式Wで表される基であることが好ましく、R15b及びR15eのいずれもが、式Wで表される基であることがより好ましい。
【0141】
−式16で表される化合物−
【0142】
【化29】
【0143】
式16中、X16a〜X16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR16gを表す。R16a〜R16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R16a〜R16gのうち少なくとも1つは、式Wで表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式Wで表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R16c及びR16fは、水素原子、ハロゲン原子又は式Wで表される基(ただし、Lは、式L−3、式L−5、式L−7〜式L−9、式L−12〜式L−24のいずれかで表される基である。)であることが好ましい。R16a、R16b、R16d、R16e及びR16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表すことが好ましい。
なお、式16において、Lは、式L−3、式L−5、式L−7〜式L−9、式L−12〜式L−24のいずれかで表される基であり、R16c及びR16fが式Wで表される基の場合、式L−3、式L−5、式L−13、式L−17、式L−18のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0144】
式16中、X16a〜X16dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X16a〜X16dは、同じ連結基であることが好ましい。X16a〜X16dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式16のR16a〜R16fは、R16a及びR16dのうち少なくとも1つが、式Wで表される基であることが好ましく、R16a及びR16dのいずれもが、式Wで表される基であることがより好ましい。
また、R16c及びR16fは、水素原子であることが好ましい。
【0145】
成分Aは、上記縮合多環芳香族基における縮合多環芳香環上に、アルキル基を有することが好ましく、炭素数6〜20のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数7〜14のアルキル基を有することが更に好ましい。上記態様であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
また、成分Aは、上記縮合多環芳香族基における縮合多環芳香環上に、1つ以上のアルキル基を有することが好ましく、2〜4つのアルキル基を有することがより好ましく、2つのアルキル基を有することが更に好ましい。上記態様であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
【0146】
成分Aの分子量は、特に制限されないが、分子量が3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることが更に好ましく、850以下であることが特に好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、溶媒への溶解性を高めることができる。一方で、薄膜の膜質安定性の観点からは、分子量は300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましく、400以上であることが更に好ましい。
【0147】
成分Aの合成方法は、特に制限されず、公知の方法を参照して合成できる。上記式1〜式16で表される化合物の合成方法としては、例えば、Journal of American Chemical Society,116, 925(1994)、Journal of Chemical Society, 221(1951)、Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、Tetrahedron,2002,58,10197、特表2012−513459号公報、特開2011−46687号公報、Journal of Chemical Research.miniprint,3,601−635(1991)、Bull.Chem.Soc.Japan,64,3682−3686(1991)、Tetrahedron Letters,45,2801−2803(2004)、欧州特許公開第2251342号明細書、欧州特許公開第2301926号明細書、欧州特許公開第2301921号明細書、韓国特許公開第10−2012−0120886号公報、J.Org.Chem.,2011,696、Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、J.Org.Chem.,2013,78,7741、Chem.Eur.J.,2013,19,3721、Bull.Chem.Soc.Jpn.,1987,60,4187、J.Am.Chem.Soc.,2011,133,5024、Chem.Eur.J.2013,19,3721、Macromolecules,2010,43,6264−6267、J.Am.Chem.Soc.,2012,134,16548−16550などが挙げられる。
【0148】
なお、有機半導体における移動度の観点から、成分Aは、式1〜式9、式14、又は、式15のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0149】
以下に成分Aの好ましい具体例を示すが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0150】
【化30】
【0151】
【化31】
【0152】
【化32】
【0153】
【化33】
【0154】
【化34】
【0155】
【化35】
【0156】
【化36】
【0157】
【化37】
【0158】
【化38】
【0159】
【化39】
【0160】
<ポリマー>
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、ガラス転移温度(Tg)が−100℃以上−30℃以下、かつ弾性回復率が30%以下となるポリマー(以下、単に「特定ポリマー」又は「成分B」ともいう。)と、を含む。
【0161】
成分Bとしては、上記Tg及び弾性回復率の範囲を満たすポリマーであれば、特に制限はなく、種々のポリマーを用いることができる。
成分Bとしては、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、エチレン−プロピレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化されたニトリルゴム、フッ素ゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレンプロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリネオプレン、ブチルゴム、メチルフェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルビニルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、フルオロシリコーン樹脂、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロポリエチレン、エピクロロヒドリン共重合体、ポリイソプレン−天然ゴム共重合体、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、ポリエステルウレタン共重合体、ポリエーテルウレタン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー及びポリブタジエンゴムよりなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましく、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム及びブチルゴムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であることが更に好ましく、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体又はポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーであることがより更に好ましく、エチレン−プロピレンゴム又はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体であることが特に好ましく、エチレン−プロピレンゴムが最も好ましい。上記態様であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体の合成に用いられるジエンとしては、特に制限はないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、及び、1,4−ヘキサジエン(HD)が好ましく挙げられ、5−エチリデン−2−ノルボルネンがより好ましく挙げられる。
【0162】
成分Bのガラス転移温度(Tg)は、−100℃以上−30℃以下であり、−90℃以上−35℃以下であることが好ましく、−80℃以上−40℃以下であることがより好ましく、−70℃以上−45℃以下であることが更に好ましく、−70℃以上−50℃以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
本発明におけるポリマーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(Differential scanning Calorimetry;DSC)により測定される値である。
例えば、示差走査熱量計((株)マック・サイエンス製:DSC3110、熱分析システム001)を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定し、得られたチャートのTgに相当する吸熱点の低温側の肩の温度をTgとすることができる。
【0163】
成分Bの弾性回復率は、30%以下であり、1%以上25%以下であることが好ましく、1%以上22%以下であることがより好ましく、1%以上20%以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、得られる有機半導体膜の熱安定性により優れる。弾性回復率が上記範囲にあるポリマーを使用することで加熱時において有機半導体の熱膨張に追随してポリマーも膨張するが、冷却時に収縮することがないため、応力を緩和していると推定している。
【0164】
本発明におけるポリマーの弾性回復率は、以下から得られる値を意味する。
弾性回復率は、押し込み硬度試験によって測定する。圧子として対面角115°のダイヤモンド製三角錐圧子(ベルコビッチ圧子)を試料表面に押し込み、このときにかかる荷重と変位の関係を求める。具体的な測定手法としては、フィッシャー・インスツルメンツ社製HM−2000型硬度計を用い、ガラス上に塗布したサンプルに対し、10秒間かけて最大荷重5mNまで押し込み、5秒間保持する。このときの押し込みになされた全仕事量をWt(N・m)とする。その後、10秒かけて荷重を開放し、弾性変形で回復した仕事量をWe(N・m)とする。この仕事量の比で表されるWe/Wtを弾性回復率(%)とする。
【0165】
成分Bの表面エネルギーは、30mN/m以下であることが好ましく、10mN/m以上30mN/m以下であることがより好ましく、15mN/m以上30mN/m以下であることが更に好ましく、20mN/m以上30mN/m以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、得られる有機半導体膜の熱安定性により優れる。
メカニズムについては定かではないが、表面エネルギーがこの範囲にあることで有機半導体と基板との、有機半導体と電極との密着性がともに良好になるためと推定している。
本発明におけるポリマーの表面エネルギーは、以下から得られる値を意味する。
まず、ポリマー1%溶液を硝子基板上に滴下し、スピンコート(1,000rpm、120秒)によりコートし、150℃/30分加熱し、ポリマー膜を得る。
次いで、接触角測定(例えば、協和界面科学(株)製接触角計DM−501を用いることができる。)として、ポリマー膜の表面に対する水とジヨードメタンの接触角を測定する。
得られた接触角と液体の表面張力値を用い、下記式B’に示すFowkes式を拡張したOwens式、及び、Young式から表面エネルギー分散成分(γ)と極性成分(γ)を求め、両者の和を表面エネルギー(γ)とした。
【0166】
【数1】
【0167】
γ=γ+γ
γ:接触媒体の表面張力
γ:接触媒体の表面張力分散成分
γ:接触媒体の表面張力極性成分
γ:表面エネルギー
γ:表面エネルギー分散成分
γ:表面エネルギー極性成分
【0168】
成分Bの重量平均分子量は、特に制限されないが、1,000〜200万が好ましく、3,000〜100万がより好ましく、5,000〜60万が更に好ましい。
本発明におけるポリマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0169】
また、本発明の有機半導体膜形成用組成物により得られた有機半導体膜において、成分Aと成分Bとが少なくとも混合されている部分を有することが好ましく、成分Aの結晶構造部分と、成分Aと成分Bとが少なくとも混合されている部分とを有することがより好ましい。
更に、成分Bは、使用する溶媒への溶解度が、成分Aよりも高いことが好ましい。上記態様であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
本発明の有機半導体膜形成用組成物における成分Bの含有量は、成分Aの含有量100質量部に対し、1〜200質量部であることが好ましく、10〜150質量部であることがより好ましく、20〜120質量部であることが更に好ましい。上記範囲であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
【0170】
<溶媒>
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、溶媒を含むことが好ましく、有機溶媒を含むことがより好ましい。
溶媒としては、公知の溶媒を用いることができる。
具体的には、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン等のアミド又はイミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒が挙げられる。
【0171】
溶媒は、1種単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒及び/又はエーテル系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジクロロベンゼン又はアニソールがより好ましく、o−ジクロロベンゼンが特に好ましい。
溶媒を含有する場合、本発明の有機半導体膜形成用組成物における成分Aの含有量は、0.01〜80質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましく、また、成分Bの含有量は、0.01〜80質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、塗布性に優れ、容易に有機半導体膜を形成することができる。
【0172】
本発明の有機半導体膜形成用組成物の粘度は、特に制限されないが、塗布性がより優れる点で、3〜100mPa・sが好ましく、5〜50mPa・sがより好ましく、9〜40mPa・sが更に好ましい。なお、本発明における粘度は、25℃での粘度である。
粘度の測定方法としては、JIS Z8803に準拠した測定方法であることが好ましい。
【0173】
<ポリスチレン又はポリスチレン誘導体>
本発明の有機半導体膜形成用組成物は、以下に示される構成繰り返し単位を有するポリスチレン又はポリスチレン誘導体(以下、「成分C」ということがある。)を含むことが、有機半導体膜形成用組成物の塗布性を向上させ、得られる有機半導体膜の移動度及び熱安定性をより向上させる点で好ましい。
【0174】
【化40】
【0175】
式(PS)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0176】
成分Cは、式(PS)で表される構成繰り返し単位以外に、異なる構成繰り返し単位を有していてもよいが、式(PS)で表される構成繰り返し単位のみからなることが好ましい。つまり、成分Cは、ポリスチレン又はポリ−α−メチルスチレンであることが好ましい。
【0177】
成分Cの重量平均分子量は、特に制限されないが、10,000〜10,000,000が好ましく、500,000〜8,000,000がより好ましく、1,000,000〜6,000,000が更に好ましい。
【0178】
本発明の有機半導体膜形成用組成物において、成分Cは、成分A(有機半導体)100質量部に対して、10〜500質量部含むことが好ましく、50〜200質量部含むことがより好ましく、80〜150質量部含むことが更に好ましい。
【0179】
<その他の成分>
本発明の有機半導体膜形成用組成物には、成分A、成分B、成分C及び溶媒以外に他の成分が含まれていてもよい。
その他の成分としては、公知の添加剤等を用いることができる。
本発明の有機半導体膜形成用組成物における成分A、成分B、成分C及び溶媒以外の成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、膜形成性に優れ、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
【0180】
本発明の有機半導体膜形成用組成物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、溶媒中に所定量の成分A及び成分Bを同時又は逐次に添加して、適宜撹拌処理を施すことにより、所望の組成物を得ることができる。
【0181】
(有機半導体膜及び有機半導体素子)
本発明の有機半導体膜は、縮合多環芳香族基を有し、上記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、上記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、上記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体と、ガラス転移温度が−100℃以上−30℃以下かつ表面エネルギーが30mN/m以上45mN/m以下のポリマーと、を含むことを特徴とする。
ただし、上記部分構造としてアントラセン環は含まれない。
本発明の有機半導体素子は、縮合多環芳香族基を有し、上記縮合多環芳香族基中の環数が4以上であり、上記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1つの原子を含み、上記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体と、ガラス転移温度が−100℃以上−30℃以下かつ表面エネルギーが30mN/m以上45mN/m以下のポリマーと、を含むことを特徴とする。
ただし、上記部分構造としてアントラセン環は含まれない。
【0182】
本発明の第1の実施態様における有機半導体素子は、本発明の有機半導体膜形成用組成物を用いて形成した有機半導体膜を有する有機半導体素子である。第1の実施態様であると、膜形成性に優れ、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れる。
本発明の第2の実施態様における有機半導体素子は、上記有機半導体を含む層と絶縁膜との間に上記ポリマーを含む層を有する有機半導体素子である。第2の実施態様であると、生産性及びコストに優れる。
本発明の第3の実施態様における有機半導体素子は、上記有機半導体を含む層と上記ポリマーを含む層との間に成分Cを含む層を有する有機半導体素子である。第3の実施態様であると、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性がより優れる。
上記第2及び第3の実施態様における有機半導体を含む層は、上記有機半導体からなる層であることが好ましい。
また、上記第2及び第3の実施態様における絶縁膜は、ゲート絶縁膜であることが好ましい。
更に、上記第2及び第3の実施態様におけるポリマーを含む層は、上記ポリマーからなる層であることが好ましい。
【0183】
本発明の有機半導体膜及び本発明の有機半導体素子は、本発明の有機半導体膜形成用組成物を用いて製造されたものであることが好ましい。
本発明の有機半導体膜形成用組成物を用いて有機半導体膜や有機半導体素子を製造する方法は、特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、組成物を所定の基材上に付与して、必要に応じて乾燥処理を施して、有機半導体膜を製造する方法が挙げられる。
基材上に組成物を付与する方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法などが挙げられ、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法が好ましい。
なお、フレキソ印刷法としては、フレキソ印刷版として感光性樹脂版を用いる態様が好適に挙げられる。態様によって、組成物を基板上に印刷して、パターンを容易に形成することができる。
中でも、本発明の有機半導体膜の製造方法、及び、本発明の有機半導体素子の製造方法は、本発明の有機半導体膜形成用組成物を基板上に塗布する塗布工程、を含むことが好ましく、本発明の有機半導体膜形成用組成物が溶媒を含み、本発明の有機半導体膜形成用組成物を基板上に塗布する塗布工程、及び、塗布された組成物から溶媒を除去する除去工程を含むことがより好ましい。
【0184】
上記除去工程における乾燥処理は、必要に応じて実施される処理であり、使用される成分A及び溶媒の種類により適宜最適な条件が選択される。中でも、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性により優れ、また、生産性に優れる点で、加熱温度としては30℃〜100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましく、加熱時間としては10〜300分が好ましく、30〜180分がより好ましい。
【0185】
形成される有機半導体膜の膜厚は、特に制限されないが、得られる有機半導体の移動度及び熱安定性の観点から、10〜500nmが好ましく、30〜200nmがより好ましい。
【0186】
本発明の組成物より製造される有機半導体膜は、有機半導体素子に好適に使用することができ、有機トランジスタ(有機薄膜トランジスタ)に特に好適に使用することができる。
有機半導体素子としては、特に制限はないが、2〜5端子の有機半導体素子であることが好ましく、2又は3端子の有機半導体素子であることがより好ましい。
また、有機半導体素子としては、光電機能を用いない素子であることが好ましい。
2端子素子としては、整流用ダイオード、定電圧ダイオード、PINダイオード、ショットキーバリアダイオード、サージ保護用ダイオード、ダイアック、バリスタ、トンネルダイオード等が挙げられる。
3端子素子としては、バイポーラトランジスタ、ダーリントントランジスタ、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、ユニジャンクショントランジスタ、静電誘導トランジスタ、ゲートターンサイリスタ、トライアック、静電誘導サイリスタ等が挙げられる。
これらの中でも、整流用ダイオード、及び、トランジスタ類が好ましく挙げられ、電界効果トランジスタがより好ましく挙げられる。
【0187】
本発明の有機薄膜トランジスタの一態様について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の有機半導体素子(有機薄膜トランジスタ(TFT))の一態様の断面模式図である。
図1において、有機薄膜トランジスタ100は、基板10と、基板10上に配置されたゲート電極20と、ゲート電極20を覆うゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30のゲート電極20側とは反対側の表面に接するソース電極40及びドレイン電極42と、ソース電極40とドレイン電極42との間のゲート絶縁膜30の表面を覆う有機半導体膜50と、各部材を覆う封止層60とを備える。有機薄膜トランジスタ100は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタである。
なお、図1においては、有機半導体膜50が、上述した組成物より形成される膜に該当する。
以下、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び封止層並びにそれぞれの形成方法について詳述する。
【0188】
<基板>
基板は、後述するゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などを支持する役割を果たす。
基板の種類は特に制限されず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、セラミック基板などが挙げられる。中でも、各デバイスへの適用性及びコストの観点から、ガラス基板又はプラスチック基板であることが好ましい。
プラスチック基板の材料としては、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)又は熱可塑性樹脂(例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォンなど)が挙げられる。
セラミック基板の材料としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイドなどが挙げられる。
ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダガラス、カリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルミケイ酸ガラス、鉛ガラスなどが挙げられる。
【0189】
<ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極>
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の材料としては、例えば、金(Au)、銀、アルミニウム(Al)、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、タンタル、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属;InO、SnO、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性の酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン等の導電性高分子;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等の半導体;フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料などが挙げられる。中でも、金属であることが好ましく、銀又はアルミニウムであることがより好ましい。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の厚みは特に制限されないが、20〜200nmであることが好ましい。
【0190】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を形成する方法は特に制限されないが、例えば、基板上に、電極材料を真空蒸着又はスパッタする方法、電極形成用組成物を塗布又は印刷する方法などが挙げられる。また、電極をパターニングする場合、パターニングする方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法;マスク蒸着法などが挙げられる。
【0191】
<ゲート絶縁膜>
ゲート絶縁膜の材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリベンゾキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー;二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物;窒化珪素等の窒化物などが挙げられる。これらの材料のうち、有機半導体膜との相性から、ポリマーであることが好ましい。
ゲート絶縁膜の材料としてポリマーを用いる場合、架橋剤(例えば、メラミン)を併用するのが好ましい。架橋剤を併用することで、ポリマーが架橋されて、形成されるゲート絶縁膜の耐久性が向上する。
ゲート絶縁膜の膜厚は特に制限されないが、100〜1,000nmであることが好ましい。
【0192】
ゲート絶縁膜を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極が形成された基板上に、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法、ゲート絶縁膜材料を蒸着又はスパッタする方法などが挙げられる。ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法(バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法)を使用することができる。
ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布してゲート絶縁膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0193】
<有機半導体膜>
本発明の有機半導体膜は、本発明の有機半導体膜形成用組成物より形成される膜である。
有機半導体膜の形成方法は特に制限されず、上述した組成物を、ソース電極、ドレイン電極、及び、ゲート絶縁膜上に付与して、必要に応じて乾燥処理を施すことにより、所望の有機半導体膜を形成することができる。
【0194】
<ポリマー層>
本発明の有機半導体素子は、上記有機半導体を含む層と絶縁膜との間に上記ポリマー層を有することが好ましく、上記有機半導体とゲート絶縁膜との間に上記ポリマー層を有することがより好ましい。上記ポリマー層の膜厚は特に制限されないが、20〜500nmであることが好ましい。上記ポリマー層は、上記ポリマーを含む層であればよいが、上記ポリマーからなる層であることが好ましい。
【0195】
ポリマー層を形成する方法は特に制限されないが、公知の方法(バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法、インクジェット法)を使用することができる。
ポリマー層形成用組成物を塗布してポリマー層を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0196】
<成分Cを含む層>
本発明の有機半導体素子は、上記有機半導体を含む層と上記ポリマー層との間に成分Cを含む層を有することが好ましい。成分Cを含む層の膜厚は特に制限されないが、1〜500nmであることが好ましい。成分Cを含む層は、成分Cを含む層であればよいが、成分Cからなる層であることが好ましい。
【0197】
成分Cを含む層は、成分Cを有機半導体膜形成用組成物に添加し、有機半導体膜形成用組成物をソース電極、ドレイン電極、及び、ゲート絶縁膜上に付与して、必要に応じて乾燥処理を施すことにより、有機半導体を含む層と相分離させながら、有機半導体を含む層と上記ポリマー層との間に形成することが好ましい。
【0198】
<封止層>
本発明の有機薄膜トランジスタは、耐久性の観点から、最外層に封止層を備えるのが好ましい。封止層には公知の封止剤を用いることができる。
封止層の厚さは特に制限されないが、0.2〜10μmであることが好ましい。
【0199】
封止層を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極とゲート絶縁膜とソース電極とドレイン電極と有機半導体膜とが形成された基板上に、封止層形成用組成物を塗布する方法などが挙げられる。封止層形成用組成物を塗布する方法の具体例は、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法と同じである。封止層形成用組成物を塗布して有機半導体膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0200】
また、図2は、本発明の有機半導体素子(有機薄膜トランジスタ)の別の一態様の断面模式図である。
図2において、有機薄膜トランジスタ200は、基板10と、基板10上に配置されたゲート電極20と、ゲート電極20を覆うゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30上に配置された有機半導体膜50と、有機半導体膜50上に配置されたソース電極40及びドレイン電極42と、各部材を覆う封止層60を備える。ここで、ソース電極40及びドレイン電極42は、上述した本発明の組成物を用いて形成されたものである。有機薄膜トランジスタ200は、トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタである。
基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び封止層については、上述のとおりである。
【0201】
上記では図1及び図2において、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、ボトムゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタの態様について詳述したが、本発明の組成物はトップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、トップゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタにも適用できる。
なお、上述した有機薄膜トランジスタは、電子ペーパー、ディスプレイデバイスなどに好適に使用できる。
【実施例】
【0202】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定し、得られたチャートのTgに相当する吸熱点の低温側の肩の温度をTgとした。
表面エネルギーは、以下に述べる方法で測定した。各ポリマー1%溶液を硝子基板上に滴下し、スピンコート(1,000rpm、120秒)によりコートし、150℃/30分加熱し、ポリマー膜を得た。協和界面科学(株)製接触角計DM−501を用いて各種ポリマー膜の表面に対する水とジヨードメタンの接触角を測定した。得られた接触角と液体の表面張力値を用い、Fowkes式を拡張したOwens式、及び、Young式から表面エネルギー分散成分(γ)と極性成分(γ)とを求め、両者の和を表面エネルギー(γ)とした。
弾性回復率は、HM−2000型硬度計(フィッシャー・インスツルメンツ社製)を用いて、以下の方法で測定した。ガラス上に塗布したサンプルに対し、10秒間かけて最大荷重5mNまで押し込み、5秒間保持した。このときの押し込みになされた全仕事量をWt(N・m)とした。その後、10秒かけて荷重を開放し、弾性変形で回復した仕事量をWe(N・m)とした。この仕事量の比で表されるWe/Wtを弾性回復率(%)とした。
【0203】
(実施例1〜27、及び、比較例1〜7)
<有機半導体膜形成用組成物の調製>
有機半導体化合物/o−ジクロロベンゼン(溶媒)/ポリマーを、下記表1に記載の種類及び所定比率で硝子バイヤルに秤量し、ミックスローター(アズワン(株)製)で10分間撹拌混合した。0.5μmメンブレンフィルターでろ過することで、有機半導体膜形成用組成物を得た。
【0204】
<TFT素子形成>
以下の要領で、ボトムゲートボトムコンタクトTFT素子を形成した。
【0205】
−ゲート電極形成−
無アルカリ硝子基板上(5cm×5cm)に、銀ナノインク(H−1、三菱マテリアル(株)製)を、DMP2831(1ピコリットルヘッド、富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製インクジェットプリンター)を用いたインクジェット印刷により、幅100μm、膜厚100nmの配線パターンを形成し、その後、200℃90分間、ホットプレート上、大気下で焼成することで、ゲート電極配線を形成した。
【0206】
−ゲート絶縁膜形成−
ポリビニルフェノール(Mw25,000、アルドリッチ社製)5質量部、及び、メラミン5質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部を撹拌混合し、0.2μmメンブレンフィルターでろ過することで、溶液を作製した。得られた溶液を、上記ゲート電極を作製した硝子基板上に滴下し、スピンコート(1,000rpm、120秒)によりコートし、150℃/30分加熱することで、ゲート絶縁膜を形成した。
【0207】
−ソースドレイン(SD)電極形成−
上記絶縁膜がコートされた基板中央上に、図3に示すパターンを複数個有するメタルマスクを載せ、UVオゾン30分照射することで、マスク開口部が親水処理表面に改質した。上記改質部分周辺にDMP2831(1ピコリットルヘッド)を用いたインクジェット印刷により、チャネル長50μm、チャネル幅320μmのソースドレイン電極パターンを形成した。得られた基板をN雰囲気下(グローブボックス中、酸素濃度20ppm以下の環境)にて、ホットプレート上200℃で90分焼成することで、膜厚200nmの銅電極が形成された。
【0208】
−ポリマー層形成−
実施例27において下記要領でポリマー層を形成した。エチレン−プロピレンゴムEPT0045(三井化学(株)製)2質量部、トルエン98質量部を撹拌混合し、0.5μmメンブレンフィルターでろ過することで、溶液を作製した。得られた溶液を、上記SD電極を作製した硝子基板上に滴下し、スピンコート(1,000rpm、120秒)によりコートし、100℃/10分加熱することで、ポリマー層を形成した。
【0209】
−有機半導体層:インクジェット法−
作製した有機半導体膜形成用組成物を、上記ソースドレイン電極を形成した基板上に、インクジェット法によりコートした。インクジェット装置としては、DPP2831(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)、10pLヘッドを用い、吐出周波数2Hz、ドット間ピッチ20μmでベタ膜を形成した。その後70℃で1時間乾燥することで、有機半導体膜を作製した。
なお、実施例27においては、有機半導体膜形成用組成物にポリマーを添加しなかった。
【0210】
−有機半導体層:フレキソ印刷法−
作成した有機半導体膜形成用組成物を、上記ソースドレイン電極を形成した基板上に、フレキソ印刷法によりコートした。印刷装置として、フレキソ適性試験機F1(アイジーティ・テスティングシステムズ(株)製)を用い、フレキソ樹脂版として、AFP DSH1.70%(旭化成(株)製)/ベタ画像を用いた。版と基板との間の圧力は、60N、搬送速度0.4m/秒で印刷を行った後、そのまま、40℃下室温で2時間乾燥することで、有機半導体膜を作製した。
【0211】
<評価>
−移動度測定−
半導体特性評価装置B2900A(アジレントテクノロジーズ社製)を用い、キャリア移動度を測定した。移動度の値に応じて、1〜5のスコア付けを行った。移動度の値が大きいほど、有機半導体としての性能に優れる。
5:0.2cm/Vs以上
4:0.1cm/Vs以上、0.2cm/Vs未満
3:0.02cm/Vs以上、0.1cm/Vs未満
2:0.002cm/Vs以上、0.02cm/Vs未満
1:0.002cm/Vs未満
【0212】
−熱安定性評価−
有機半導体膜を作製したTFT素子を更に120℃1時間加熱し、移動度の変化を評価した。具体的には、30個の有機トランジスタについて加熱後の移動度Yと加熱前の移動度Xの差を加熱前の移動度Xで割った値に100をかけた値[{(Y−X)/X}×100]をそれぞれ算出し、その平均値を算出し変化率とした。変化率が少ないほど、熱安定性に優れる。
5:変化率が20%未満
4:変化率が20%以上30%未満
3:変化率が30%以上50%未満
2:変化率が50%以上100%未満
1:変化率が100%以上
【0213】
評価結果をまとめて表1に示す。
【0214】
【表1】
【0215】
表1に記載の略称は、以下の通りである。
実施例で使用したOSC−1〜17は、上述したOSC−1〜17とそれぞれ同じ化合物である。
【0216】
【化41】
【0217】
上記有機半導体(OSC−1〜18)の合成方法又は製造元は、以下の通りである。
なお、OSC−1は、Journal of American Chemical Society, 116, 925(1994)、Journal of Chemical Society, 221(1951)などを参考にして合成した。
OSC−2は、公知文献(Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、Tetrahedron,2002,58,10197)を参考に合成した。
OSC−3は、特表2012−513459号公報、特開2011−46687号公報、Journal of Chemical Research.miniprint,3,601−635(1991)、Bull.Chem.Soc.Japan,64,3682−3686(1991)、Tetrahedron Letters,45,2801−2803(2004)などを参考にして合成した。
OSC−4は、欧州特許公開第2251342号明細書、欧州特許公開第2301926号明細書、欧州特許公開第2301921号明細書、韓国特許公開第10−2012−0120886号公報などを参考にして合成した。
OSC−5は、公知文献(J.Org.Chem.,2011,696、Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、J.Org.Chem.,2013,78,7741、Chem.Eur.J.,2013,19,3721)を参考にして合成した。
OSC−6は、公知文献(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1987,60,4187、J.Am.Chem.Soc.2011,133,5024、Chem.Eur.J.2013,19,3721)を参考にして合成した。
OSC−7及び8は、公知文献(Macromolecules,2010,43,6264−6267、J.Am.Chem.Soc.,2012,134,16548−16550)を参考にして合成した。
【0218】
OSC−9は、文献A(K.Muellen,Chem.Commun.,2008,1548−1550.)、文献B(K.Takimiya,Org.Lett.,2007,9,4499‐4502.)、文献C(Rao;Tilak,Journal of Scientific and Industrial Research,1958,vol.17 B,p.260−265.)、文献D(Ghaisas;Tilak,Journal of Scientific and Industrial Research,1955,vol.14 B,p.11.)を参考にして合成した。
OSC−10〜13は、公知文献(Journal of American Chemical Society, 129, 15732 (2007))を参考にして合成した。
OSC−14は、国際公開第2005/087780号に記載された方法に準じて合成を行った。
OSC−15は、特開2009−190999号公報に記載された方法に準じて合成を行った。
OSC−16は、特開2012−206953号公報に記載された方法に準じて合成を行った。
OSC−17としては、C8BTBT(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
OSC−18としては、5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(シグマアルドリッチ社製)を用いた。
【0219】
EPT0045:エチレン−プロピレンゴム、三井化学(株)製
EP22:エチレン−プロピレンゴム、JSR EP22、JSR(株)製
EP43:エチレン−プロピレンゴム、JSR EP43、JSR(株)製
EP24:エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、共重合されたジエン=エチリデンノルボルネン、JSR EP24、JSR(株)製
EP65:エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、共重合されたジエン=エチリデンノルボルネン、JSR EP65、JSR(株)製
D1161:スチレン−イソプレンブロック共重合体、Kraton D1161、Kraton Polymers社製
D1102:スチレン−ブタジエンゴム、Kraton D1102、Kraton Polymers社製
IR2200L:ポリイソプレンゴム、Nipol IR2200L、日本ゼオン(株)製
PVS:ポリステアリン酸ビニル、シグマアルドリッチ社製
ポリスチレン:重量平均分子量40万、シグマアルドリッチ社製
ポリαメチルスチレン:ポリ−α−メチルスチレン、重量平均分子量40万、シグマアルドリッチ社製
【0220】
(実施例28〜37)
<有機半導体膜形成用組成物の調製>
下記表2に記載の有機半導体化合物/o−ジクロロベンゼン(溶媒)/ポリスチレン又はポリαメチルスチレンを、下記表2に記載の所定比率で硝子バイヤルに秤量し、ミックスローター(アズワン(株)製)で10分間撹拌混合した。0.5μmメンブレンフィルターでろ過することで、有機半導体膜形成用組成物を得た。
下記表2におけるポリスチレン(PS)又はポリαメチルスチレン(PMS)としては、以下に示す化合物を使用した。
ポリスチレン:重量平均分子量:200万、シグマアルドリッチ社製
ポリαメチルスチレン:ポリ−α−メチルスチレン、重量平均分子量:85万、Polysciences社製
【0221】
−ポリマー層形成−
実施例28〜37において、実施例27と同様な方法でポリマー層を形成した。
【0222】
−有機半導体層:フレキソ印刷法−
実施例28〜37において、上記有機半導体膜形成用組成物を用いた以外は実施例1〜26と同様な方法で有機半導体層及びポリスチレン又はポリαメチルスチレン層を形成した。
【0223】
評価結果をまとめて表2に示す。なお、表2に記載のOSC−10〜14及びEPT0045は上述した化合物と同じ化合物である。
【0224】
【表2】
【0225】
ポリマー層を形成し、ポリスチレン又はポリ−α−メチルスチレンを有機半導体膜形成用組成物に添加し、ポリスチレン又はポリ−α−メチルスチレン層を形成することで、移動度及び熱安定性に優れる有機半導体素子を得ることができた。
【符号の説明】
【0226】
10:基板、20:ゲート電極、30:ゲート絶縁膜、40:ソース電極、42:ドレイン電極、50:有機半導体膜、51:メタルマスク、52:マスク部、53,54:開口部、60:封止層、100、200:有機薄膜トランジスタ
図1
図2
図3