(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書において「化合物」ないし「樹脂」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは特定の化合物をその名称や式で示すときには、上記化合物そのものに加え、その化学構造式中に解離性の部分構造を有するのであれば、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、本明細書において置換基に関して「基」という語を末尾に付して呼ぶとき、あるいは特定の化合物をその名称で呼ぶときには、その基若しくは化合物に任意の置換基を有していてもよい意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
更に、各式における二重結合の置換様式である幾何異性体は、表示の都合上、異性体の一方を記載したとしても、特段の断りがない限り、E体であってもZ体であっても、これらの混合物であっても構わない。
また、各式において、特に断りがない限り、複数存在する同一符号の基がある場合、これらは互いに同一であっても異なってもよく、複数の部分構造の繰り返しがある場合は、これらの繰り返しが同一の繰り返しであっても、また規定する範囲で異なった繰り返しの混合であってもよい。
【0040】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリル及びメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイル及びメタクリロイルを表す。
本発明において、「アクリル」とは、アクリルやメタクリルのようなアシル基のα位にメチル基が置換したものだけでなくアルキル基が置換したものを含み、これらの酸若しくはその塩、ならびにエステル若しくはアミドを総称するものとして使用する。すなわち、アクリル酸エステル、アクリルアミド又は酸若しくはその塩と、α−アルキル置換アクリル酸エステル、アミド又はα−アルキル置換アクリル酸若しくはその塩、の両方を包含するものである。
【0041】
また、各式で規定する置換基、例えば、アルキル基等は、特段の断りがない限り、更に置換基で置換されていてもよく、本願では、このような置換基として、以後に説明する置換基群αを挙げている。更に、特段の断りがない限り、隣接する置換基は互いに結合して、環を形成してもよい。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0042】
(高分子機能性膜)
本発明の高分子機能性膜は、イオン交換、燃料電池、イオンの選択的透過、プロトン伝導及びタンパク質凝集物若しくはウイルス除去等を行うために用いることができる。以下、本発明の好ましい実施形態について、上記高分子機能性膜がイオン交換膜としての機能を有する場合を例に挙げて説明する。
【0043】
本発明の高分子機能性膜(以下、単に「膜」ともいう。)は、多孔質性の支持体を有し、下記式1で表される構成単位を含むイオン交換性ポリマーを、上記支持体の少なくとも内部に含有し、下記式2で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0045】
式1中、L
1及びL
2はそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、又は、単結合を表し、R
1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Z
1はそれぞれ独立に、−O−又は−NRa−を表し、Raは水素原子又はアルキル基を表し、A
1は下記式a、又は下記式bで表される基を有する2価の連結基を表す。
【0047】
式a中、L
3は2価の連結基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリル基を表し、X
1-及びX
2-はそれぞれ独立に、無機アニオン又は有機アニオンを表し、波線部分は他の結合との結合位置を表す。
【0049】
式b中、M
Aは水素イオン、無機イオン又は有機イオンを表す。
【0051】
式2中、R
4、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基又はハロゲン原子を表し、Q
1は炭素原子とともにヘテロ環を形成する原子群を表す。
【0052】
これまでの研究により、イオン性基と架橋可能な2つ以上の重合性基を併せ持つ化合物(チャージドクロスリンカー)を用いて作製したアクリルアミド系ポリマーからなるイオン交換膜は、膜の電気抵抗、選択透過性等のイオン交換膜としての主要性能に優れることが明らかになっている(例えば、特許文献1、2)。また、水性インク(例えば、特許文献3)や、表面親水処理膜(例えば、特許文献4)でも防腐剤(抗菌剤、防カビ剤)を添加することで保存安定性を付与している例が知られている。そのほかの膜においても、多孔性支持体に防腐剤を導入したり、抗菌性スペーサーなどが検討されてきた(特許文献5〜9)。
【0053】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、高分子機能性膜、電解質膜、又は、イオン交換性ポリマー製造用組成物(以下、「組成物」ともいう。)の水溶液に式2で表される化合物特定のヘテロ環構造を有する化合物を含有させることにより、低電気抵抗と低透水率を両立させながら、細菌や真菌の繁殖を抑制し、保存安定性に優れたポリマー形成用組成物及び高分子機能性膜を提供することができることを見出した。添加剤は一般的に、膜中の空孔を増加させてしまうため、陽イオン/陰イオン選択性が悪化したり、塩水が抜け漏れてしまうなどの弊害が知られていたが、本発明で導入した化合物は少ない量で効果を発揮するため、イオン交換膜の基本性能を悪化させることなく、課題の解決に至った。
【0054】
<多孔質性の支持体>
本発明の高分子機能性膜は、多孔質性の支持体(以下、「多孔質支持体」ともいう。)を有する。
電解質膜の機械的強度を付与するために、膜の補強材料として多孔質性の支持体を使用する。多孔質支持体に、後述する本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物を多孔質性の支持体に塗布及び/又は含浸させた後、重合硬化反応させることにより、イオン交換性ポリマーを、上記支持体の少なくとも内部に有する高分子機能性膜を作製することができる。
本発明において、イオン交換性ポリマーは、上記支持体の少なくとも内部にあればよく、上記支持体の内部及び表面にあってもよい。
【0055】
多孔質支持体としては、例えば、織布又は不織布、スポンジ状フィルム、微細な貫通孔を有するフィルム等が挙げられる。中でも、織布又は不織布が好ましい。多孔質支持体を形成する素材は、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド及びそれらのコポリマーであるか、あるいは、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルミド(polyethermide)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びそれらのコポリマーに基づく多孔質膜であることができる。これらのうち、本発明では、ポリオレフィンが好ましい。
【0056】
市販の多孔質支持体は、例えば、日本バイリーン(株)やFreudenbergFiltration Technologies社(Novatexx材料)及びSefar AG社から市販されている。
【0057】
なお、多孔質性の支持体は光重合硬化反応を行う場合には、照射光の波長領域を遮らない、すなわち、重合硬化に用いられる波長の光の照射を透過させることが要求されるが、熱重合硬化反応を行う場合には、この点を考慮する必要はない。
また、光重合硬化反応を行う場合には、上記支持体の両面から光を照射することにより、片面のみからでの照射では十分に光が透過しないような材料であっても使用することが可能である。
また、多孔質支持体は、電解質膜を形成する上記組成物である塗布液が浸透可能なものであることが好ましい。
【0058】
多孔質支持体は親水性を有することが好ましい。支持体に親水性を付与するには、コロナ処理、オゾン処理、硫酸処理、シランカップリング剤処理などの一般的な処理方法を使用することができる。
【0059】
<イオン交換性ポリマー>
本発明の高分子機能性膜は、式1で表される構成単位を含むイオン交換性ポリマーを、上記支持体の少なくとも内部に含有する。
式1中、L
1及びL
2はそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、又は、単結合を表し、アルキレン基又は単結合であることが好ましい。
L
1とL
2は異なる基を表していてもよいが、同一の基であることが好ましい。
また、後述するA
1が式aで表される基を有する場合、L
1及びL
2はどちらもアルキレン基であることが好ましく、A
1が式bで表される基を有する場合、L
1及びL
2はどちらも単結合であることが好ましい。
アルキレン基の炭素数は1〜9が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜8が更に好ましく、3〜5が特に好ましい。
上記アルキレン基は、分岐を有していてもよいし、環構造を有していてもよいが、直鎖構造であることが好ましい。
上記アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、炭素数は6〜12が好ましい。
【0060】
複数のR
1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、どちらも水素原子であることが好ましい。
R
1がアルキル基を表す場合、炭素数は、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、メチルが好ましい。
【0061】
複数のZ
1はそれぞれ独立に−O−又は−NRa−を表し、硬化後のイオン交換膜の酸やアルカリに対する耐性の観点から、どちらも−NRa−であることが好ましい。ここで、Raは水素原子又はアルキル基を表す。
【0062】
A
1は式a、又は式bで表される基を有する2価の連結基を表す。
【0063】
式aにおいて、L
3は2価の連結基を表す。L
3における2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基及びこれらを組み合わせた2価の連結基が好ましく、アルキレン基、又は、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせた基がより好ましく、アルキレン基が更に好ましい。
なお、式aで表される基は、構成単位中に少なくとも1つ有していればよいが、構成単位中に1つのみ有することが好ましい。
アルキレン基の炭素数は1〜9が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜8が更に好ましく、3〜5が特に好ましい。
上記アルキレン基は、分岐を有していてもよいし、環構造を有していてもよいが、直鎖構造であることが好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレンが挙げられ、炭素数は6〜12が好ましい。
アルキレン基とアリーレン基を組み合わせた基としては、例えば、アルキレン−アリーレン−アルキレン基が挙げられ、メチレンフェニレンメチレン又はメチレンナフチレンメチレンが好ましく、メチレンフェニレンメチレンがより好ましい。
【0064】
R
2及びR
3はそれぞれ独立にアルキル基又はアリル基を表し、アルキル基であることが好ましい。計4つのR
2及びR
3はアルキル基又はアリル基である限り、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0065】
R
2及びR
3におけるアルキル基の炭素数は、1〜9が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが好ましく、メチル、エチルがより好ましく、メチルが更に好ましい。メチル基により単位構造の分子量を小さくすることができ、その結果として単位構造当たりのイオン交換容量を高めることが可能となり、膜の導電率を高めることができる。
上記アルキル基は、分岐を有していてもよいし、環構造を有していてもよい。
【0066】
X
1-及びX
2-は各々独立に、無機アニオン又は有機アニオンを表す。X
1-及びX
2-は、どのような無機アニオン、有機アニオンでも構わないが、有機アニオンより無機アニオンが好ましい。
無機アニオンとしては、ハロゲンアニオンが好ましく、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンが好ましく、塩素アニオン、臭素アニオンがより好ましい。
有機アニオンとしては、有機カルボン酸イオンや有機スルホン酸イオンが挙げられ、例えば、酢酸アニオン、メタンスルホン酸アニオンが挙げられ、酢酸アニオンが好ましい。
【0067】
式bにおいて、M
Aは水素イオン、無機イオン、又は有機イオンを表す。ここで、無機イオン及び有機イオンは2価以上のイオンであってもよい。
【0068】
M
Aは水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表す。有機塩基イオンとしては、
アンモニウムイオン(例えば、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジベンジルアンモニウム)、有機へテロ環イオン(含窒素ヘテロ環イオンが好ましく、上基含窒素ヘテロ環イオンにおけるヘテロ環としては、5又は6員環が好ましく、芳香環であっても単なるヘテロ環であっても構わない。またベンゼン環などの他の環で縮環されていてもよく、スピロ環、架橋環を形成していてもよい。例えば、ピリジニウム、N−メチルイミダゾリウム、N−メチルモルホリニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデカニウム、1,8−ジアザビシクロ[4.3.0]−7−ノネニウム、グアニジウム)から選択される有機塩基イオンが挙げられる。金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン)から選択される金属イオンが挙げられ、アルカリ金属イオンが好ましい。M
Aが複数存在する場合、複数存在するM
Aは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0069】
M
Aは、水素イオン、有機塩基イオン又はアルカリ金属イオンが好ましく、水素イオン、有機へテロ環イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン又はカリウムイオンがより好ましく、より好ましくは水素イオン、ピリジニウム、N−アルキルモルホリニウム(好ましくは、N−メチルモルホリニウム)、N−アルキルイミダゾリウム(好ましくは、N−メチルイミダゾリウム)、リチウムイオン又はナトリウムイオンが特に好ましい。
【0070】
A
1が式bで表される基を有する場合、A
1は式bで表される基により置換されたアルキレン基又はアリーレン基、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
アルキレン基とアリーレン基の組み合わせには、アリーレン基のみを複数組み合わせた態様も含むものとする。
上記アルキレン基の炭素数は、炭素数1〜9が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜8が更に好ましく、3〜5が特に好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、炭素数は6〜12が好ましい。
式bで表される基は、上記アルキレン基やアリーレン基に結合することが好ましい。
また、上記アルキレン基や上記アリーレン基は、アルキレン基により更に置換されていてもよく、更に置換されているアルキレン基に式bで表される基が結合していてもよい。
【0071】
〔その他の構造〕
本発明のイオン交換膜におけるイオン交換性ポリマーは、式1で表される構成単位以外の他の構造、例えば、他の構成単位を有していてもよいが、上記他の構造は、イオン交換膜の全質量に対し、50質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、5質量%未満であることが特に好ましい。
上記イオン交換性ポリマーが有していてもよい他の構成単位としては、上述した以外の(メタ)アクリレート化合物由来の構成単位、ビニルエーテル化合物由来の構成単位等が挙げられる。
【0072】
式1で表される構成単位としては、後述する式MA又は式MBで表される化合物由来の構成単位であることが好ましい。
式1で表される構成単位の好ましい例は、後述する式MA又は式MBで表される化合物の好ましい例として挙げられている化合物由来の構成単位と同様である。
【0073】
〔式3で表される陰イオン交換性ポリマー〕
本発明の高分子機能性膜は、式3で表される構成単位を含む陰イオン交換性ポリマーを含むことが好ましい。
【0074】
【化21】
式3中、L
31及びL
32はそれぞれ独立にアルキレン基、アリーレン基又は単結合を表し、R
31はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Z
31はそれぞれ独立に、−O−又は−NRa−を表し、Raは水素原子又はアルキル基を表し、L
33は2価の連結基を表し、R
32及びR
33はそれぞれ独立にアルキル基又はアリル基を表し、X
31-及びX
32-はそれぞれ独立に、無機アニオン又は有機アニオンを表す。
【0075】
式3で表される構成単位は、イオン交換性ポリマーにおけるポリマー鎖中に、組み込まれている。これによって、ポリマーの架橋性を高め、架橋密度の向上に寄与するものである。
また、式3で表される構成単位は、2つのアンモニウム基が架橋鎖中に組み込まれ、アニオン交換性を高めている。
式3中、L
31及びL
32はそれぞれ独立にアルキレン基、アリーレン基又は単結合を表し、R
31はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Z
31はそれぞれ独立に、−O−又は−NRa−を表し、Raは水素原子又はアルキル基を表し、L
33は2価の連結基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立にアルキル基又はアリル基を表し、X
31-及びX
32-はそれぞれ独立に、無機アニオン又は有機アニオンを表す。
また、式3中の、R
31、Z
31、R
32、R
33、X
31-及びX
32-の好ましい範囲は、上記式1及び式aで説明したR
1、Z
1、R
2、R
3、X
1-及びX
2の好ましい範囲と同様である。
【0076】
L
33は2価の連結基を表し、アルキレン基、アリーレン基及びこれらを組み合わせた2価の連結基が好ましく、アルキレン基、又は、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせた基がより好ましく、アルキレン基が更に好ましい。
アルキレン基の炭素数は1〜9が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜8が更に好ましく、3〜5が特に好ましい。アルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ノナメチレンが挙げられる。
アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレンが挙げられ、炭素数は6〜12が好ましい。
アルキレン基とアリーレン基を組み合わせた基としては、例えば、アルキレン−アリーレン−アルキレン基が挙げられ、メチレンフェニレンメチレンが好ましい。
式3で表される構成単位の好ましい例は、後述する式MAで表される化合物の好ましい例として挙げられている化合物由来の構成単位と同様である。
【0077】
−式3a’で表される構成単位−
本発明の高分子機能性膜が、式3で表される構成単位を含む陰イオン交換性ポリマーを含む場合、上記陰イオン交換性ポリマーは、更に式3a’で表される構成単位を含む構成単位を含むことが好ましい。
なお、式3で表される構成単位と、式3a’で表される構成単位のモル比は、式3で表される構成単位:式3a’で表される構成単位=100:0〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがより好ましく、75:25〜25:75であることが更に好ましい。であることが好ましい。式3a’で表される構成単位の含有量が上記範囲であれば、式3で表される構成単位が果す機能を妨げずにイオン交換性ポリマーの特性を調整することができる。
【0079】
式3a’中、R
3a1はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子が好ましい。R
3a1がアルキル基を表す場合、炭素数は、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、メチルが好ましい。
【0080】
窒素原子に置換するR
3a2は3つ存在するが、それぞれ独立にアルキル基又はアリル基を表し、水素原子、アルキル基又はアリル基である限り、互いに同一でも異なっていてもよいが、本発明では、同一であることが好ましい。ただし、アリル基の場合、3つのR
2のうち1つのみがアリル基であることが好ましい。
【0081】
R
3a2におけるアルキル基の炭素数は、1〜9が好ましく、1〜3がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニルが挙げられ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが好ましく、メチル、エチルがより好ましく、メチルが中でも好ましい。
【0082】
X
3a2-は、無機アニオン又は有機アニオンを表し、どのような無機アニオン、有機アニオンでも構わないが、有機アニオンより無機アニオンが好ましい。
無機アニオンとしては、ハロゲンアニオンが好ましく、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンが好ましく、塩素アニオン、臭素アニオンがより好ましい。
有機アニオンとしては、有機カルボン酸イオンや有機スルホン酸イオンが挙げられ、例えば、酢酸アニオン、メタンスルホン酸アニオンが挙げられ、酢酸アニオンが好ましい。
【0083】
L
3a1はアルキレン基、アリーレン基又は単結合を表し、アルキレン基が好ましい。上記アルキレン基の炭素数は、1〜9が好ましく、2〜8がより好ましく、3〜8が更に好ましく、3〜5が特に好ましい。
【0084】
Z
3a1は、−O−又は−NRa−を表すが、−NRa−が好ましい。
ここで、Raは、水素原子又はアルキル基を表すが、水素原子が好ましい。Raがアルキル基である場合、上記アルキル基としては、R
3a2におけるアルキル基と同じ基が例示され、好ましい範囲も同じである。
式3a’で表される構成単位の好ましい例は、後述する式M−aで表される化合物の好ましい例として挙げられている化合物由来の構成単位と同様である。
【0085】
式3や式3a’中の各基は、更に置換基で置換されていてもよいが、本発明では、特にL
3a1における2価の連結基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基のような水和若しくは水と水素結合しやすい置換基で置換されていないものが好ましい。
ここで、更に置換基で置換される場合、上記置換基としては、以下の置換基群αが挙げられる。
【0086】
(置換基群α)
ここで、置換基群αを説明する。
【0087】
置換基群αとしては、以下の基を挙げることができる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数3〜20、特に好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリ−ルアミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10のアミノ基であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のヘテロ環オキシ基であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0088】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
【0089】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アルキル若しくはアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(スルファモイル基、アルキル若しくはアリールスルファモイル基を含み、好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0090】
カルバモイル基(カルバモイル基、アルキル若しくはアリールカルバモイル基を含み、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12のヘテロ環チオ基であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0091】
アルキル若しくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル若しくはアリールスルホニル基であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、アルキル若しくはアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル若しくはアリールスルフィニル基であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子が挙げられる。)、
【0092】
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、オキソ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基であり、環構成ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましく、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、チアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリル基であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0093】
これらの置換基は、更に上記置換基群αより選択されるいずれか1つ以上の置換基により置換されてもよい。
なお、本発明において、1つの構造部位に複数の置換基があるときには、それらの置換基は互いに連結して環を形成していたり、上記構造部位の一部又は全部と縮環して芳香族環若しくは不飽和複素環を形成していてもよい。
【0094】
〔式4で表される陽イオン交換性ポリマー〕
本発明の高分子機能性膜は、式4で表される構成単位を含む陽イオン交換性ポリマーを含むことが好ましい。
【0095】
【化23】
式4中、L
42はそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基又は単結合を表し、R
41はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Z
41はそれぞれ独立に、−O−又は−NRa−を表し、ここで、Raは水素原子又はアルキル基を表し、A
42は式bで表される基を有する2価の連結基を表す。
式4中、L
42、R
41、Z
41及びA
42の好ましい範囲は、上記式1及び式bで説明したL
1、R
1、Z
1及びA
1の好ましい範囲と同様である。
【0096】
本発明の高分子機能性膜は、式4で表される陽イオン交換性ポリマーの中でも、式4aで表される陽イオン交換性ポリマーを含むことが好ましい。
【0098】
式4a中、R
15は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R
11、R
12、R
13及びR
14は、各々独立に、置換基を表し、k1、k2、k3及びk4は、各々独立に、0〜4の整数を表す。R
11、R
12、R
13及びR
14が複数存在する場合、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、環を形成してもよい。A
1、A
2、A
3及びA
4は、各々独立に、単結合又は二価の連結基を表す。M
Aは水素イオン、有機塩基イオン又は金属イオンを表す。M
Aが複数存在する場合、M
Aは同一でも異なっていてもよい。n1及びn2は、各々独立に、1〜4の整数を表し、m1及びm2は、各々独立に、0又は1を表す。R
8及びR
9は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
式4aで表される構成単位の好ましい例は、後述する式MBで表される化合物の好ましい例として挙げられている化合物由来の構成単位と同様である。
【0099】
−式4a’で表される構成単位−
本発明の高分子機能性膜が、式4で表される構成単位を含む陽イオン交換性ポリマーを含む場合、上記陰イオン交換性ポリマーは、更に式4a’で表される構成単位を含む構成単位を含むことが好ましい。
なお、式4で表される構成単位と、式4a’で表される構成単位のモル比は、式4で表される構成単位:式4a’で表される構成単位=100:0〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがより好ましく、75:25〜25:75であることが更に好ましい。式3a’で表される構成単位の含有量が上記範囲であれば、式3で表される構成単位が果す機能を妨げずにイオン交換性ポリマーの特性を調整することができる。
式4a’で表される構成単位の好ましい例は、後述する式M−bで表される化合物の好ましい例として挙げられている化合物由来の構成単位と同様である。
【0101】
式4a’中、R
4a1は水素原子又はアルキル基を表し、水素原子が好ましい。R
4a1がアルキル基を表す場合、炭素数は、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、メチルが好ましい。
Z
4a1は−O−又は−NRa−を表し、L
4a3は2価の連結基を表し、M
4aAは水素イオン、無機イオン又は有機イオンを表す。
Z
4a1及びL
4a3の好ましい態様は式1中のZ
1及びL
1の好ましい態様と同様であり、M
4aAの好ましい態様は式bのM
Aの好ましい態様と同様である。
【0102】
〔イオン交換性ポリマーの特性〕
イオン交換容量とは、単位重量当たりのイオン性基の物質量を示すものである。
本発明のイオン交換性ポリマーは、支持体を除く乾燥重量当たりのイオン交換容量が3.50〜10.00meq/gであることが好ましく、3.80〜10.00meq/gがより好ましく、3.95〜5.00meq/gが更に好ましい。
【0103】
[イオン交換容量]
下記式により膜のイオン交換容量を算出した。
乾燥重量当たりのイオン交換容量(meq/g)=(アニオン交換膜のアンモニウム基量、又は、カチオン交換膜のスルホン酸基量(mmol))/(高分子イオン交換膜の乾燥重量(g))
支持体を除く乾燥重量当たりのイオン交換容量(meq/g)=(乾燥重量当たりのイオン交換容量(meq/g))/α
上記式中、αは支持体の空隙率を表す。支持体の空隙率は国際公開第2013−042388に記載の水銀圧入法により測定することができる。
また、空隙率αは下記式により測定することもできる。
空隙率α=(1−不織布を構成する繊維の総体積/不織布体積)×100(%)
上記式中、不織布を構成する繊維の総体積は支持体を構成する材料の密度から計算することができる。
カチオン交換膜のスルホン酸基量の測定は下記の手法にて実施した。カチオン交換膜を1.0M塩酸水溶液中に室温で24時間浸漬し、完全に酸型(H
+型)とした。その後、24時間純水中に浸漬し、高分子イオン交換膜中に遊離イオンを洗浄した後、3.0Mの食塩水溶液中に、室温、24時間浸漬してナトリウム型(Na
+型)とし、置換されたH
+を0.02MのNaOHで中和滴定しスルホン酸基量を求めた。
アニオン交換膜のアンモニウム塩基量の測定は下記の手法にて実施した。アニオン交換膜を、0.5mol・L
-1−NaCl水溶液に10時間以上浸漬し、塩化物イオン型とした後、0.2M−硝酸ナトリウム水溶液で硝酸イオン型に置換したときに遊離した塩化物イオンを、硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置で定量した。
支持体を除く乾燥重量当たりのイオン交換容量は、支持体の空隙率が70%であることを考慮し、0.7で除することで算出した。
【0104】
<式2で表される化合物>
本発明の高分子機能性膜は、式2で表される化合物を含有する。
本発明における式2で表される化合物は、抗真菌(防カビ)作用を有する。
【0105】
【化26】
式2中、R
4、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基又はハロゲン原子を表し、好ましくは水素原子、アルキル基又は水酸基であり、より好ましくは水素原子である。
Q
1は炭素原子とともにヘテロ環を形成する原子群を表す。原子群には、炭素、窒素、酸素、珪素、りん、及び/又は硫黄が含まれ、好ましくは炭素、窒素、酸素及び/又は硫黄が含まれる。これらの原子群により構成されるヘテロ環は飽和であっても不飽和であってもよく、置換可能である場合、置換基群αより選択される置換基を有していてもよい。
【0106】
〔式2a又は式2bで表される化合物〕
式2で表される化合物は、式2a又は式2bで表される化合物を含むことが好ましい。
【0108】
式2a中、R
2a4、R
2a5、R
2a6及びR
2a7は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基又はハロゲン原子を表し、好ましくは水素原子、アルキル基又は水酸基であり、より好ましくは水素原子である。
R
2a8は水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式2b中、R
2b4、R
2b5、R
2b6及びR
2b7は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基又はハロゲン原子を表し、好ましくは水素原子、アルキル基又は水酸基であり、より好ましくは水素原子である。
R
2b9は水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
R
2b10は水素原子又は置換基を表す。R
2b10が置換基を表す場合、R
2b10は上述の置換基群αより選択され、好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基であり、炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基、又は、炭素数1〜12のヘテロ環基がより好ましく、メトキシカルボキサミド基、又は、チアゾリル基が更に好ましい。
本発明の高分子機能性膜は、式2で表される化合物を単独で有していてもよく、2種以上併用していてもよい。
【0109】
以下に、式2a又は式2bで表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
上記化合物の中でも、防カビ性、膜抵抗及び透水率及び化合物の水溶性の観点から、2a−1、2a−2、2b−2及び2b−3が好ましく、2a−1及び2b−3がより好ましい。
【0112】
<高分子機能性膜の特性>
本発明の高分子機能性膜の厚さは、用途や使用形態により異なるが、支持体を有する場合は支持体を含めて、30〜150μmが好ましく、60〜130μmがより好ましく、70〜110μmが特に好ましい。
【0113】
(電解質膜)
本発明の高分子機能性膜は、電解質膜であることが好ましい。
また、本発明の電解質膜は、後述する本発明の電解質の製造方法により製造されることが好ましい。
電解質膜が含むイオン交換性ポリマーのうち、本発明の高分子機能性膜に用いられるイオン交換性ポリマーは、全イオン交換性ポリマー100質量部に対して、60〜99質量部が好ましく、70〜99質量部がより好ましく、80〜99質量部が更に好ましい。
【0114】
<電解質膜の特性>
〔透水率〕
本発明の電解質膜の透水率は、低いほど好ましく、10.0×10
-5ml/m
2/Pa/hr以下がより好ましく、9.0×10
-5ml/m
2/Pa/hr以下が更に好ましく、本発明では、5.0×10
-5〜7.6×10
-5ml/m
2/Pa/hrが特に好ましい。
【0115】
〔選択透過性(輸率)〕
本発明の電解質膜のアニオン又はカチオンの選択透過性は、好ましくは0.90を超え、より好ましくは0.93を超え、更に好ましくは0.95を超え、理論値の1.0に近づくことが特に好ましい。本発明では、0.960〜0.999が好ましい。
【0116】
〔電気抵抗〕
本発明の電解質膜の電気抵抗(膜抵抗)は、2.8Ω・cm
2未満が好ましく、2.0Ω・cm
2未満がより好ましく、1.0〜1.95Ω・cm
2が更に好ましい。
【0117】
(イオン交換性ポリマー製造用組成物)
本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物は、式MAで表される化合物又は式MBで表される化合物と、水と重合禁止剤とを含有することを特徴とする。
【0118】
【化29】
式MA中、R
MA1はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R
MA2及びR
MA3はそれぞれ独立にアルキル基を表し、L
MA1及びL
MA2はそれぞれ独立にアルキレン基を表し、L
MA3は2価の連結基を表し、X
MA1-及びX
MA2-はそれぞれ独立に、無機アニオン又は有機アニオンを表し、Z
MA1はそれぞれ独立に−O−又は−NRa−を表し、Raは水素原子又はアルキル基を表し、L
MA3は2価の連結基を表し、R
MA2及びR
MA3はそれぞれ独立にアルキル基又はアリル基を表す。
【0119】
【化30】
式MB中、L
MB1及びL
MB2はそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基又は単結合を表し、R
MB1はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、Z
MB1はそれぞれ独立に−O−又は−NRa−を表し、Raは水素原子又はアルキル基を表し、A
MB2は式bで表される基を有する2価の連結基を表す。
【0120】
本発明のイオン交換性ポリマーは、式1で表される構成単位を含む。
上記構成単位、及び、好ましい他の構成単位を形成するために、イオン交換性ポリマー製造用組成物中に重合性の化合物を含有する。
【0121】
<式MAで表される化合物>
式MAで表される化合物は、重合性基を2つ有することから、架橋剤としての役割を果し、またイオン性基を有することから、チャージドクロスリンカーと称されるものである。
【0122】
式MAにおいて、R
MA1〜R
MA3、L
MA1、L
MA2、L
MA3、X
MA1-、X
MA2-及びZ
MA1は、式1及び式aにおけるR
1〜R
3、L
1、L
2、L
3、X
1-、X
2-及びZ
1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0123】
以下に、式MAで表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
式MAで表される化合物の含有量は、上記組成物の総モノマー含有量に対し、30〜99質量%が好ましく、40〜98質量%がより好ましく、45〜98質量%が更に好ましく、50〜95質量%が中でも好ましい。
【0127】
<式M−aで表される化合物>
本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物は、式MAで表される重合性化合物を含む場合、更に下記式M−aで表される化合物を含有することが好ましい。
式M−aで表される化合物は、式3a’で表される構成単位を形成する。
【0129】
式M−aにおいて、R
Ma1、R
Ma2、L
Ma1、X
MA2-及びZ
Ma1は上記式1及び式aにおけるR
1、R
2、L
1、X
2-及びZ
1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0130】
以下に、式M−aで表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
式M−aで表される化合物の含有量は、上記組成物の固形分含有量で、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0133】
<式MBで表される化合物>
式MB中、L
MB1及びL
MB2はそれぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基又は単結合を表し、R
MB1は水素原子又はアルキル基を表し、Z
MB1は−O−又は−NRa−を表し、Raは水素原子又はアルキル基を表す。
【0134】
式MB中、R
MB1〜R
MB3、L
MB1、L
MB2、L
MB3、X
MB1-及びZ
MB1は、式1及び式aにおけるR
1〜R
3、L
1、L
2、L
3、X
1-及びZ
1と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0135】
式MBで表される化合物の含有量は、上記組成物の総モノマー含有量に対し、30〜99質量%が好ましく、40〜98質量%がより好ましく、45〜98質量%が更に好ましく、50〜95質量%が中でも好ましい。
【0136】
以下に、式MBで表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
<式MBで表される化合物の製造方法>
式MBで表される化合物の製造方法を、式MB−4に代表されるアミド化合物の製造方法を例に挙げて説明する。
式MB−4に代表されるアミド化合物は、下記式5aで表される化合物に重合性基を導入することにより製造するのが好ましい。
【0140】
式5a中、R
12、R
13、k2、k3、n1、n2、A
2、A
3及びM
Aは式4a中のR
12、R
13、k2、k3、n1、n2、A
2、A
3及びM
Aと同義であり、好ましい態様も同様である。
重合性基の導入の方法の例としては、式5aで表される化合物を、式6aで表される化合物と反応させる、又は式6bで表される化合物と反応後、塩基によりハロゲンを脱離させる方法が挙げられる。
【0142】
式6a及び6b中、R
15は式4a中のR
15と同義であり、好ましい範囲も同様であり、Xはハロゲン原子を表す。
Xとしては、F原子、Cl原子、Br原子、又は、I原子が好ましく、Cl原子がより好ましい。
【0143】
式5aで表される化合物と、式6a又は6bで表される化合物との反応において用いられる反応溶媒としては、水又は水溶性溶媒が好ましい。水溶性溶媒は、酸又はアルカリ条件で加水分解もしくは分解しない溶媒であり、ニトリル溶媒、ケトン溶媒が好ましい。
反応溶媒は、具体的には、水、アセトニトリル、アセトン等が好ましく、また、これらを混合して用いてもよい。好ましくは、水である。
塩基としては、有機又は無機の塩基が挙げられ、有機塩基としては、アルキルアミン(中でも第三級アミンが好ましい。)、ヘテロ環アミン(5又は6員環のアミン、例えば、ピロリジン、ピペラジン、ピリジン化合物)が好ましく、無機塩基としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩が好ましい。
塩基として好ましい化合物としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられ、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
反応温度としては、反応が十分に進行し、かつ生成したアクリルアミド化合物の重合が進行しない温度が適切である。反応温度は、−10〜100℃が好ましく、0〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
式6bで表される化合物との反応後に行う、塩基によるハロゲンの脱離反応について、好ましくは、式6bで表される化合物との反応の生成物を分離精製せず、前工程より連続で行うことが好ましい。従って溶媒は、式6bで表される化合物との反応と同じものであることが好ましい。
上記塩基によるハロゲンの脱離反応に用いられる塩基としては、有機又は無機の塩基が挙げられ、有機塩基としては、アルキルアミン(中でも第三級アミンが好ましい。)、ヘテロ環アミン(5または6員環のアミン、例えば、ピロリジン、ピペラジン、ピリジン化合物)が好ましく、無機塩基としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩が好ましい。
塩基として、具体的に好ましいものは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムであり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムがより好ましい。
反応温度としては、反応が十分に進行し、かつ生成したアクリルアミドの重合が進行しない温度が適切である。反応温度は、−10〜100℃が好ましく、0〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
また、式5aで表される化合物と、式6a又は6bで表される化合物との反応により得られた化合物中の無機物の含有量は、10質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0144】
<式M−bで表される化合物>
本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物は、式MBで表される構成単位を含む場合、更に下記式M−bで表される化合物を含有することが好ましい。
式M−bで表される化合物は、式4a’で表される構成単位を形成する。
【0146】
式M−b中、R
Mb1は水素原子又はアルキル基を表し、水素原子が好ましい。R
Mb1がアルキル基を表す場合、炭素数は、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、メチルが好ましい。
Z
Mb1は−O−又は−NRa−を表し、L
Mb1は2価の連結基を表し、M
MbAは水素イオン、無機イオン又は有機イオンを表す。
Z
Mb1及びL
Mb1の好ましい態様は式1中のZ
1及びL
1の好ましい態様と同様であり、M
MbAの好ましい態様は式bのM
Aの好ましい態様と同様である。
【0148】
式M−bで表される化合物は、上記組成物の固形分含有量で、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0149】
〔その他の重合性化合物〕
本発明のイオン交換膜におけるイオン交換性ポリマーは、式MA、式MB、式M−a、又は式M−bで表される構成単位以外の他の重合性化合物を含有してもよいが、上記他の構造は、イオン交換膜の全質量に対し、50質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、5質量%未満であることが特に好ましい。
上記イオン交換性ポリマーが有していてもよい他の重合性化合物としては、上述した以外の(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
また、本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物は、重合硬化に使用する際に、上記その他の重合性化合物を別途追加してもよい。
【0150】
<溶媒>
本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物は、溶媒として水を含む。水に対して自由に混合するものが好ましい。
水は、水溶性溶媒を含んでいてもよい。
水溶性溶媒としては、水に対する溶解度が5質量%以上の溶媒が好ましく用いられる。
水溶性溶媒としては、特に、アルコール系溶媒、非プロトン性非極性溶媒であるエーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒、有機リン系溶媒が好ましい。
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは1種類単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
また、非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶媒として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランが好ましい。これらは1種類単独で又は2種類以上を併用して用いることができる。
組成物中の溶媒の含有量は、全組成物に対し、5〜42質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、10〜38質量%が更に好ましい。
すなわち、本発明の組成物は溶液であることが好ましい。
溶媒を含むことで、重合硬化反応が、均一にしかもスムーズに進行する。また、多孔質支持体へ組成物を含浸させる場合に含浸がスムーズに進行する。
【0151】
<重合開始剤>
本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物は、重合開始剤の共存下で重合硬化を行うことが好ましく、従って、組成物中に重合開始剤を含むことが好ましい。
【0152】
重合開始剤の中でも、本発明においては、活性放射線照射で重合させることが可能な光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機化酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びにアルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0153】
芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキシド化合物及びチオ化合物の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」,pp.77〜117(1993)に記載のベンゾフェノン骨格又はチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい例としては、特公昭47−6416号公報に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報に記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報に記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報に記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号明細書、欧州特許出願公開第0284561A1号明細書に記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報に記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報に記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報に記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報に記載のクマリン類等を挙げることができる。また、特開2008−105379号公報、特開2009−114290号公報に記載の重合開始剤も好ましい。また、加藤清視著「紫外線硬化システム」((株)総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている重合開始剤などを挙げることができる。
【0154】
本発明では、水溶性の重合開始剤が好ましい。
ここで、重合開始剤が水溶性であるとは、25℃において蒸留水に0.1質量%以上溶解することを意味する。上記水溶性の光重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが更に好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。
【0155】
本発明において、重合開始剤の含有量は、上記組成物中の全固形分質量100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.3〜2質量部が更に好ましい。
【0156】
<重合禁止剤>
本発明においては、上記組成物中に重合禁止剤を含む。
重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、アミン化合物、メルカプト化合物などが挙げられる。
フェノール化合物の具体例としては、ヒンダードフェノール(オルト位にtert−ブチル基を有するフェノールで、代表的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。)、ビスフェノールが挙げられる。ハイドロキノン化合物の具体例としては、モノメチルエーテルハイドロキノンが挙げられる。また、アミン化合物の具体例としては、N−ニトロソ―N−フェニルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
なお、これらの重合禁止剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合禁止剤の含有量は、上記組成物中の全固形分質量100質量に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部が更に好ましい。
【0157】
<その他の成分>
本発明の上記組成物は、上記成分の他に、界面活性剤、高分子分散剤及びクレーター防止剤等を含んでいてもよい。
【0158】
(イオン交換性ポリマーの製造方法)
本発明のイオン交換性ポリマーは、本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物を準備する工程、及び、活性放射線を照射する照射工程、をこの順で含む。
【0159】
<活性放射線を照射する照射工程>
照射工程においては、本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物に活性放射線を照射する。
上記組成物を支持体に塗布若しくは含浸する場合、塗布若しくは含浸してから、好ましくは60秒以内、より好ましくは15秒以内、特に5秒以内、最も好ましくは3秒以内に照射を開始する。
重合硬化のための光照射は、好ましくは10秒未満、より好ましくは5秒未満、特に好ましくは3秒未満、最も好ましくは2秒未満である。連続法では照射を連続的に行い、イオン交換性ポリマー製造用組成物が照射ビームを通過して移動する速度を考慮して、重合硬化反応時間を決める。
【0160】
活性放射線としては紫外線が好ましい。照射波長は、イオン交換性ポリマー製造用組成物中に包含され得る任意の重合開始剤の吸収波長と照射波長が適合することが好ましく、例えばUV−A(400〜320nm)、UV−B(320〜280nm)、UV−C(280〜200nm)の波長が挙げられる。
【0161】
強度の高い紫外線(UV光)を用いて重合硬化反応を行う場合、かなりの量の熱が発生するため、過熱を防ぐために、支持体と膜及び/又は光源のランプを冷却用空気などで冷却することが好ましい。著しい線量の赤外光(IR光)がUVビームと一緒に照射される場合、IR反射性石英プレートをフィルターにしてUV光を照射する。
【0162】
紫外線源は、水銀アーク灯、炭素アーク灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、旋回流プラズマアーク灯、金属ハロゲン化物灯、キセノン灯、タングステン灯、ハロゲン灯、レーザー及び紫外線発光ダイオードである。中圧又は高圧水銀蒸気タイプの紫外線発光ランプがとりわけ好ましい。これに加えて、ランプの発光スペクトルを改変するために、金属ハロゲン化物などの添加剤が存在していてもよい。200〜450nmに発光極大を有するランプがとりわけ適している。
【0163】
照射源のエネルギー出力は、好ましくは20〜1,000W/cm、より好ましくは40〜500W/cmであるが、所望の暴露線量を実現することができるならば、これより高くても低くても構わない。暴露強度により、膜の硬化を調整する。暴露線量は、High Energy UV Radiometer(EIT−Instrument Markets製のUV Power Puck
TM)により、UV−A範囲で測定して、好ましくは少なくとも40mJ/cm
2以上、より好ましくは100〜3,000mJ/cm
2、最も好ましくは150〜1,500mJ/cm
2である。暴露時間は自由に選ぶことができるが、短いことが好ましく、最も好ましくは2秒未満である。
【0164】
なお、塗布速度が速い場合、必要な暴露線量を得るために、複数の光源を使用しても構わない。この場合、複数の光源は暴露強度が同じでも異なっていてもよい。
【0165】
(電解質膜の製造方法)
本発明の電解質膜の製造方法は、本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物を支持体に含浸させる工程、及び、活性放射線を照射する照射工程、をこの順で含むことが好ましい。
【0166】
<イオン交換性ポリマー製造用組成物を多孔質性の支持体に含浸させる工程>
本発明の電解質膜は、固定された支持体を用いてバッチ式で調製(バッチ方式)することが可能であるが、移動する支持体を用いて連続式で調製(連続方式)することもできる。支持体は、連続的に巻き戻されるロール形状でもよい。なお、連続方式の場合、連続的に動かされるベルト上に支持体を載せ、イオン交換性ポリマー製造用組成物である塗布液の連続的な塗布と、重合硬化して膜を形成する工程とを連続して行うことができる。ただし、塗布工程と膜形成工程の一方のみを連続的に行ってもよい。
なお、支持体と別に、イオン交換性ポリマー製造用組成物を多孔質支持体に浸漬させ、硬化反応が終わるまでの間、仮支持体(硬化反応終了後、仮支持体から膜を剥がす)を用いてもよい。
このような仮支持体は、物質透過を考慮する必要がなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやアルミ板等の金属板を含め、膜形成のために固定できるものであれば、どのようなものでも構わない。
また、イオン交換性ポリマー製造用組成物を多孔質支持体に浸漬させ、多孔質支持体以外の支持体を用いずに重合硬化させることもできる。
【0167】
イオン交換性ポリマー製造用組成物は、種々の方法、例えば、カーテンコーティング、押し出しコーティング、エアナイフコーティング、スライドコーティング、ニップロールコーティング、フォワードロールコーティング、リバースロールコーティング、浸漬コーティング、キスコーティング、ロッドバーコーティング又は噴霧コーティングにより、多孔質支持体に塗布若しくは浸漬することができる。複数の層の塗布は、同時又は連続して行うことができる。同時重層塗布するには、カーテンコーティング、スライドコーティング、スロットダイコーティング及び押し出しコーティングが好ましい。
【0168】
高速塗布機で塗布する場合、イオン交換性ポリマー製造用組成物からなる塗布液の35℃での粘度は、4,000mPa・s未満が好ましく、1〜1,000mPa・sがより好ましく、1〜500mPa.sが最も好ましい。なお、スライドビードコーティングの場合は、35℃での粘度は1〜100mPa・sが好ましい。
【0169】
高速塗布機では、イオン交換性ポリマー製造用組成物である塗布液を、15m/分を超える速度で、移動する支持体に塗布することができ、400m/分を超える速度で塗布することもできる。
【0170】
特に機械的強度を高めるために支持体を使用する場合、本発明の組成物を支持体の表面に塗布する前に、支持体の湿潤性及び付着力を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理などを施すのが好ましい。
【0171】
電解質膜の製造方法は、好ましくは、(i)本発明のイオン交換性ポリマー製造用組成物を支持体(好ましくは多孔質支持体)に塗布及び/又は含浸し、(ii)上記組成物に活性放射線を照射し、(iii)必要な場合(特に、仮支持体の場合)、形成された膜を支持体から取り外す、という過程を含む。
なお、工程(ii)において、活性放射線を照射することに加えて加熱を行ってもよい。ここで、工程(i)では、イオン交換性ポリマー製造用組成物を支持体に含浸させることが好ましい。
【0172】
電解質膜の連続方式での製造は、イオン交換性ポリマー製造用組成物を、移動している支持体に連続的に、より好ましくは、組成物塗布部と、上記組成物を重合硬化するための照射源と、形成された膜を収集する膜収集部と、支持体を上記組成物塗布部から照射源及び膜収集部に移動させるための手段とを含む製造ユニットにより製造する。
【0173】
<活性放射線を照射する照射工程>
本発明の電解質膜の製造方法における照射工程は、上記本発明のイオン交換性ポリマーの製造方法における照射工程と同様の工程であり、好ましい範囲もまた同様である。
【0174】
<電解質膜の用途>
本発明の電解質膜は、特にイオン交換膜として有用であり、電気脱塩、連続的な電気脱塩、電気透析、逆電気透析等に使用することができ、しかも一般用途だけでなく、医療用途でも使用、最近では固体高分子電解質型燃料電池でも使用することができる。
【実施例】
【0175】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0176】
(合成例)
<チャージドクロスリンカーの合成>
〔化合物(M−1)の合成〕
以下に、化合物(M−1)の合成スキームを示す。
【0177】
【化40】
【0178】
〔化合物(M−1)の合成〕
1,3−ジブロモプロパン16.2g(80.2mmol、和光純薬工業(株)製)、超純水11.0g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン 1−オキシル210mg(東京化成工業(株)製)の混合溶液に対し、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド25.1g(160mmol、東京化成工業(株)製)を加え、混合溶液を50℃で9時間撹拌した後、ろ過を行い化合物(M−1)の水溶液47.9g(含水率20.0%、収率92%)を得た。
【0179】
〔化合物(M−6)の合成〕
以下に、化合物(M−6)の合成スキームを示す。
【0180】
【化41】
【0181】
〔化合物(M−6)の合成〕
p−キシレンジクロリド77.5g(443mmol、東京化成工業(株)製)、超純水116g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−1−オキシル108mg(東京化成工業(株)製)の混合溶液に対し、N−[3−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド]139g(890mmol、東京化成工業(株)製)を加え、混合溶液を60
oCで6時間撹拌後、ろ過を行い化合物(M−6)の水溶液32g(含水率32.6%、収率100%)を得た。
【0182】
〔化合物(M−11)、(M−19)の合成〕
【0183】
【化42】
【0184】
〔化合物(M−11)の合成〕
三口フラスコに炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製、製品番号:195−01303)288.29g(3.43mol)、イオン交換水1,343mLを加えて、室温下で溶液を撹拌しながら、そこへ、4,4’−ベンジジン−2,2’−ジスルホン酸(東京化成工業(株)製、製品番号:B0395)268.6g(0.78mol)を少しずつ加えた。室温下で30分撹拌し、次いで、氷冷下で撹拌して溶液を冷却した。溶液を氷冷下で撹拌しながら、塩化アクリロイル(和光純薬工業(株)製、製品番号:013−12485)138.7mL(1.53mol)を、系内が10℃以下を保つように、少しずつ滴下した。滴下後の溶液を、氷冷下で1時間撹拌し、その後、室温下で3時間撹拌した。反応混合物にイソプロピルアルコール2,686mLを少しずつ加えて、生じた不溶物をろ過により取り除いた。得られたろ液をステンレスバケツに移し、室温下で撹拌しながら、そこへ、イソプロピルアルコール10,744mLを少しずつ加えた。得られた結晶をろ過し、その後、イソプロピルアルコール:水(5:1)の混合溶液1,074mLで結晶を洗浄し、目的の化合物(M−11)を339g(収率:87%)得た。
【0185】
〔化合物(M−11)の合成2〕
下記合成工程、精製工程1、及び、精製工程2をこの順で行うことにより合成した。
合成工程
窒素雰囲気下で、三口フラスコにイオン交換水650mLを加えて、室温で撹拌しながら、4,4’−ベンジジン−2,2’−ジスルホン酸(東京化成工業(株)製、製品番号:B0395)650.0g(1.89mol)を加えた。その後、溶液を氷冷下で撹拌し、そこへ、25w/v%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製、製品番号:191−11675)604.0g(3.78mol)を系内が15℃以下を保つように滴下した。滴下後の溶液に、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製、製品番号:195−01303)301.3g(3.59mol)を添加し、さらに、3−クロロプロピオニルクロライド(東京化成工業(株)製、製品番号:C0654)443.4g(3.49mol)を、系内が15℃以下を保つように滴下した。次いで、滴下後の溶液を、室温下で2時間撹拌した。得られた反応液をろ過して、新たな三口フラスコに移し、そこへ、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製、製品番号:H0865)1.8g(0.01mol)を加え、撹拌し溶解させた。得られた溶液を氷冷下で撹拌しながら、そこへ50w/v%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製、製品番号:198−13625)604.0g(7.55mol)を系内が15℃以下を保つように滴下した。次いで、滴下後の溶液を、氷冷下で2時間撹拌した。撹拌後の溶液に塩酸(和光純薬工業(株)製、製品番号:080−01061)を、pHが8〜11になるように滴下し、滴下後30分間攪拌することで結晶を得た。得られた結晶をろ過し、その後、あらかじめ4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル0.18g(1.05mmol)を溶解させたアセトン1000.0mLで洗浄した。
【0186】
精製工程1
三口フラスコにアセトン2,166.7mLおよびイオン交換水433.3mLを加え、10℃以下に冷却した。そこへ前工程(合成工程)で得られた結晶を添加し、2時間撹拌し、精製された結晶をろ過して取り出した。
【0187】
精製工程2
三口フラスコにアセトン2,166.7mL、イオン交換水433.3mL及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル フリーラジカル0.70g(4.08mmol)を加え、10℃以下に冷却した。冷却後の溶液に、前工程(精製工程1)で精製された結晶を添加し、2時間撹拌した。次いで、結晶をろ過して取り出し、40℃で12時間乾燥することにより、目的の化合物(M−11)を609.1g(収率:65%)得た。
【0188】
〔化合物(M−19)の合成〕
米国特許第4034001号に記載の方法を参考として、216gのイソブチルアルデヒド(和光純薬工業(株)製、製品番号:026−03946)から、目的の化合物(M−19)を115g(収率19%)得た。
【0189】
(イオン交換膜の作製)
<実施例1>
下記表1に示す組成(単位:g)の組成物(イオン交換性ポリマー製造用組成物)を、巻き線径(ミル)が150μm(No.6)のワイヤ巻き棒を用いて、手動で約5m/分の速さで、アルミ板に塗布し、続いて、不織布(Freudenberg社製 FO−2223−10、空隙率:70%)にイオン交換性ポリマー製造用組成物(塗布液)を含浸させた。ワイヤを巻いていないロッドを用いて、アルミ板上の余分な塗布液を除去した。塗布時の塗布液の温度は約50℃であった。UV露光機(Fusion UV Systems社製、型式Light Hammer LH6、D−バルブ、速度15m/min、100%強度)を用いて、上記組成物含浸不織布(支持体)を露光し、硬化反応することにより、イオン交換膜を調製した。硬化時間は0.8秒であった。露光時間は0.47秒であった。得られたイオン交換膜をアルミ板から取り外し、0.1M NaCl溶液中で少なくとも12時間保存した。得られたイオン交換膜の厚さは、134μmであった。
【0190】
<実施例2〜7及び比較例1〜8>
実施例1のイオン交換膜の作製において、イオン交換性ポリマー製造用組成物の組成を下記表1又は表2に記載の組成に変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜7、比較例1〜8のイオン交換膜を作製した。
【0191】
<比較例9>
〔ペースト混合物1の調製〕
クロロメチルスチレン80質量部、スチレン10質量部、工業用ジビニルベンゼン5質量部、スチレン−ブタジエンゴム5質量部、ジオクチルフタレート5質量部及びラジカル重合開始剤ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度74℃)6質量部を混合して、ペースト混合物1を得た。
次いで、下記表2に示す組成の塗布液を調製し、次いで塩化ビニル製の基材シート(厚さ100μm)に上記ペースト混合物1を含む組成物を塗布し、組成物を塗布した基材シートを、圧力0.4Mpaの窒素ガス中で65℃、7時間と95℃、2時間の2段階で加熱して膜を得た。得られた膜をトリメチルアミン中に室温24時間浸漬して、第4級化反応を行い、イオン交換膜を調製した。
<比較例10>
〔ペースト混合物2の調製〕
クロロメチルスチレン10質量部、スチレン80質量部、工業用ジビニルベンゼン5質量部、クエン酸トリブチル15質量部、塩化ビニル粉末40質量部及びラジカル重合開始剤ラウリルパーオキサイド(10時間半減期温度62℃)3質量部を混合して、ペースト混合物2を得た。
また、下記表2に示す組成の塗布液を調製し、次いで塩化ビニル製の基材シート(厚さ100μm)に上記ペースト混合物2を含む組成物を塗布し、組成物を塗布した基材シートを、圧力0.4Mpaの窒素ガス中で50℃、10時間と90℃、2時間の2段階で加熱して膜を得た。得られた膜を98%濃硫酸と90%クロロスルホン酸の1:1混合溶液中に40℃で60分間浸漬し、イオン交換膜を調製した。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
なお、表1及び表2中の略称の詳細については、以下の通りである。
DMAPAA−Q:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(東京化成工業(株)製)
AMPS:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東京化成工業(株)製)
MBA:メチレンビスアクリルアミド(東京化成工業(株)製)
MEHQ:モノメチルエーテルハイドロキノン(和光純薬工業(株)製)
Darocure 1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製)
【0195】
【化43】
【0196】
実施例1〜7及び比較例1〜10で作製したイオン交換膜について、下記項目を評価した。
【0197】
(イオン交換膜の評価)
<選択透過性(輸率)>
選択透過性は、静的膜電位測定により膜電位(V)を測定し、算出した。2つの電解槽(cell)は、測定対象の膜により隔てられている。測定前に、膜を0.05M NaCl水溶液中で約16時間平衡化した。その後、異なる濃度のNaCl水溶液を、測定対象の膜により隔てられている2つの電解槽のそれぞれに、注いだ。
一方のcellに0.05M NaCl水溶液100mLを注いだ。また、他方のcellに0.5M NaCl水溶液100mLを注いだ。
恒温水槽を用いて、cell中のNaCl水溶液の温度を25℃に安定化させ、次いで、両液を膜面に向かって流しながら、両電解槽とAg/AgCl参照電極(Metrohm社製)を、塩橋で接続して膜電位(V)を測定し、下記式(a)により選択透過性tを算出した。
なお、膜の有効面積は1cm
2であった。
【0198】
t=(a+b)/2b 式(a)
【0199】
上記式(a)における各符号の詳細を以下に示す。
a:膜電位(V)
b:0.5915log(f
1c
1/f
2c
2)(V)
f
1,f
2:両cellのNaCl活量係数
c
1,c
2:両cellのNaCl濃度(M)
【0200】
<透水率(ml/m
2/Pa/hr)>
膜の透水率を
図1に示す流路10を有する装置により測定した。
図1において、符号1は膜を表し、符号3及び4は、それぞれ、フィード溶液(純水)及びドロー溶液(3M NaCl)の流路を表す。また、符号2の矢印はフィード溶液から分離された水の流れを表す。
フィード溶液400mLとドロー溶液400mLとを、膜を介して接触させ(膜接触面積18cm
2)、各液はペリスタポンプを用いて符号5の矢印の向きに流速8cm/秒で流した。フィード溶液中の水が膜を介してドロー溶液に浸透する速度を、フィード液とドロー液の質量をリアルタイムで測定することによって解析し、透水率を求めた。
【0201】
<膜の電気抵抗(膜抵抗、Ω/cm
2)>
0.5M NaCl水溶液中に約2時間浸漬した膜の両面を乾燥ろ紙で拭い、2室型セル(有効膜面積1cm
2、電極には白金電極を使用)に挟んだ。2室型セルの両室に0.5M NaClを20mL満たし、2室型セルを25℃の恒温水槽中に置いて平衡に達するまで放置した。セル中の液温が正しく25℃になってから、交流ブリッジ(周波数1,000Hz)により電気抵抗r
1を測定した。
次に膜を取り除き、0.5M NaCl水溶液のみとなるようにして、両極間の電気抵抗r
2を測り、膜の電気抵抗R(Ω/cm
2)をr
1−r
2として求めた。
【0202】
<防カビ性>
上記のイオン交換膜の形成に用いた組成物及び得られたイオン交換膜を、60℃、90%RH環境下で5時間暴露したのち、60℃dry(20%RH)環境に1時間暴露する暴露試験を行った。上記暴露試験を100サイクル行ったのち、膜表面のカビの発生を目視で観察し、防カビ性を評価した。防カビ性は、黒コウジカビと青カビの2種のカビの発生について、下記評価基準に基づきそれぞれ評価した。評価結果は表1及び表2に示した。
(評価基準)
良:塗膜表面積の5%未満の面積にカビが発生した。
不良:塗膜表面積の5%以上の面積にカビが発生した。
【0203】
表1から、本発明の高分子機能性膜、および電解質膜に、式2で表される化合物を防カビ剤として使用することにより、低透水率と低膜抵抗を維持しながら、膜に防カビ性が付与されていることがわかる。
【0204】
<ピンホール試験>
測定用の膜を厚さ1.5nmのPtでコーティングし、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ピンホール数を調べた。
【0205】
〔測定条件〕
加速電圧:2kV
作動距離:4mm
絞り:4
倍率:×100,000倍
視野の傾斜:3°
【0206】
SEM画像を下記評価基準で観察し、ピンホール評価を行った。
【0207】
〔評価基準〕
A:欠陥、ピンホールが観察されなかった。
B:欠陥、ピンホールが1〜2個観察された。
C:欠陥、ピンホールが3個以上観察された。